JP2012176907A - フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、疾患の予防又は治療剤、及び飲食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規のミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及び上記の促進剤を含有する飲食品を提供する。
【解決手段】フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及び上記の促進剤を含有する飲食品。
【選択図】図1
【解決手段】フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及び上記の促進剤を含有する飲食品。
【選択図】図1
Description
本発明は、フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、疾患の予防又は治療剤、及び飲食品に関する。
アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、炎症性腸疾患等のアレルギー疾患においてしばしば腸管透過性の亢進が報告されており、これらの疾患の病因の1つとして重要であると考えられている(例えば、特許文献1、2を参照)。
つまり、腸管透過性の亢進による、アレルゲンや病原性物質の体内への侵入の増加が、これらの疾患の悪化、増悪につながると考えられている。腸管透過性とは、腸上皮細胞の間隙の透過性を指し、タイトジャンクション(TJ)と呼ばれる細胞間接着機構により制御、律速されている。タイトジャンクションは細胞外に突き出る膜貫通タンパク(オクルーディン、クローディン)、それを細胞内で支える足場タンパク(ZO−1、ZO−2、ZO−3)および細胞骨格であるF−アクチンから構成される。タイトジャンクションの調節には、ミオシン軽鎖(Myosin Light Chain、MLC)のリン酸化に伴うアクチンの収縮が深く関与している。MLCのリン酸化は、MLCK及びROCKの2種の酵素により制御されている。
MLCは細胞骨格であるF−アクチンの構成分子であり、MLCがリン酸化、脱リン酸化することによって細胞骨格の伸縮を調節している。つまり、リン酸化MLC(pMLC)が増加すると細胞骨格が収縮し、腸管透過性の亢進につながる。逆に、pMLCが減少すると細胞骨格の収縮が是正され腸管透過性が是正する。
また、MLCのリン酸化は、血管の異常収縮にも関与しており、高血圧等の循環器系疾患の原因の1つとなっていることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
したがって、MLCのリン酸化を制御することは、アレルギー疾患、循環器系疾患等のMLCのリン酸化を原因とする疾患の予防や治療に有効であると考えられる。そこで、本発明は、新規のMLC脱リン酸化促進剤、MLCのリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及び上記の促進剤を含有する飲食品を提供することを目的とする。
本発明は、フラクトオリゴ糖を有効成分とするMLC脱リン酸化促進剤を提供する。上記本発明のMLC脱リン酸化促進剤によれば、MLCの脱リン酸化を促進することができる。
上記のMLC脱リン酸化促進剤は、フラクトオリゴ糖のなかでもケストースを有効成分とするものであることが好ましい。ケストースは、食経験が長く、安全性が確認されているオリゴ糖であり、副作用が少ない。
上記のMLCの脱リン酸化の促進は、ROCK依存的であることが好ましい。発明者らは、ケストースが、ROCK依存的なMLCのリン酸化経路に作用することにより、MLCの脱リン酸化を促進することを、今回初めて明らかにした。
本発明はまた、フラクトオリゴ糖を有効成分とし、MLCの脱リン酸化を促進することにより予防又は治療効果を発揮する、MLCのリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤を提供する。上記本発明の予防又は治療剤は、フラクトオリゴ糖のなかでもケストースを有効成分とするものであることが好ましい。
上記本発明の予防又は治療剤は、MLCのリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療に、効果的に用いることができる。MLCのリン酸化を原因とする疾患としては、アレルギー疾患、循環器系疾患、炎症性腸疾患、癌、腎機能障害、喘息、緑内障、勃起障害、インスリン耐性等が挙げられる。
本発明はさらに、上記のミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤を含有する飲食品を提供する。
上記本発明の飲食品は、手軽に摂取することができ、アレルギー疾患、循環器系疾患等のMLCのリン酸化を原因とする疾患の予防に効果的であることが期待できる。
本発明により、新規のMLC脱リン酸化促進剤、MLCのリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及びこれらの促進剤を含有する飲食品を提供することができる。
フラクトオリゴ糖は、ショ糖にβ−フルクトフラノシダーゼを作用させることにより得られる、ケストース、ニストース及びフルクトシルニストースの混合物を意味する。
フラクトオリゴ糖は、単独で、あるいは、フラクトオリゴ糖を有効成分とする組成物の形態で、ミオシン軽鎖の脱リン酸化促進剤、疾患の予防剤又は治療剤として利用することができる。
フラクトオリゴ糖を構成するオリゴ糖のなかでも、特にケストースは、高いミオシン軽鎖の脱リン酸化促進効果を有する。ケストースは、グルコース1分子にフルクトースが2分子結合した3糖類のオリゴ糖である。ケストースとしては、1−ケストース、6−ケストース等を使用することができ、1−ケストースであることが好ましい。
腸上皮細胞において、MLCがリン酸化されることにより細胞骨格が収縮し、腸管透過性が亢進する。この腸管透過性の亢進により、アレルゲンや病原性物質等の異物の体内への無秩序な侵入がおこり、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、炎症性腸疾患等のアレルギー疾患の原因の1つとなっている。フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤を、これらの疾患を有する患者に投与すると、腸上皮細胞におけるMLCの脱リン酸化が促進され、タイトジャンクションの形成が促進される。その結果、腸管透過性が是正され、腸管バリア機能が回復する。これにより、アレルギー疾患の治療効果が期待できる。また、健常人においてもこれらの疾患に対する予防効果が期待できる。
また、MLCのリン酸化は、血管の異常収縮を引き起こし、高血圧や虚血性心疾患等の循環器系疾患の原因の1つとなっている。フラクトオリゴ糖を有効成分とするミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤を、循環器系疾患を有する患者に投与すると、血管におけるMLCの脱リン酸化が促進され、血管の異常収縮が正常化する。これにより、循環器系疾患の治療効果が期待できる。また、健常人においてもこれらの疾患に対する予防効果が期待できる。
したがって、フラクトオリゴ糖は、単独で、あるいは、フラクトオリゴ糖を有効成分とする医薬組成物の形態で、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤として利用することができる。
フラクトオリゴ糖を有効成分とする、ミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、又は疾患の予防又は治療剤の投与方法は特に限定されず、内用剤および外用剤のいずれでもよい。内用剤は、注射剤、輸液剤等として、静脈注射により投与してもよいし、経口的に投与してもよい。外用剤は、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等として経皮的に、又は点眼薬、点鼻薬、点耳薬等として投与することができる。フラクトオリゴ糖の投与量は、投与目的が予防用であるか、治療用であるか、患者の体重や年齢、疾患の種類や症状によって適宜調整することができる。フラクトオリゴ糖の投与量は、例えばケストースが0.01〜1.0g/kg体重投与される量である。
フラクトオリゴ糖を有効成分とする、ミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤、又は疾患の予防又は治療剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、液剤等の製剤の形態であってもよい。
これらの製剤は、フラクトオリゴ糖を、薬理学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤と混合し、周知の方法で製造することができる。
賦形剤は、有機系賦形剤又は無機系賦形剤であり得る。有機系賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのようなデンプン誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルラン等であり得る。無機賦形剤は、例えば、軽質無機ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は硫酸カルシウムのような硫酸塩等であり得る。
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーガムのようなワックス類;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DL−ロイシン;脂肪酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水ケイ酸、ケイ酸水和物のようなケイ酸類;又は上記デンプン誘導体であり得る。
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、又は上記賦形剤と同様の化合物であり得る。
崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;又はカルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類であり得る。
安定剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなクレゾール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又はソルビン酸であり得る。
矯味矯臭剤は、例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料であり得る。
希釈剤は、例えば、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖液等の通常使用されるものであり得る。
一実施形態に係る飲食品は、フラクトオリゴ糖を含有する。飲食品としては、健康食品、即席食品類、嗜好飲料類、小麦粉製品、菓子類、基礎調味料、複合調味料、乳製品、冷凍食品、水産加工品、畜産加工品及び農産加工品等が挙げられる。フラクトオリゴ糖は、砂糖に近い良質な甘さを有し、カロリーが砂糖の約半分であることから、砂糖の代替あるいは一部代替として利用することもできる。飲食品中のフラクトオリゴ糖の含有量は、例えばケストースが0.1〜80質量%となる量である。
以下、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
(実施例1)
(MLCリン酸化酵素阻害剤を用いたシグナル伝達経路の解析)
MLCK阻害剤であるML−7及びROCK阻害剤であるY−27632が腸管透過性に与える影響を検討した。後述する腸上皮細胞層モデルを用い、腸管透過性の指標として経上皮抵抗値(TEER)を測定した。TEERの測定には、Millicell ERS(ミリポア)を用いた。
(MLCリン酸化酵素阻害剤を用いたシグナル伝達経路の解析)
MLCK阻害剤であるML−7及びROCK阻害剤であるY−27632が腸管透過性に与える影響を検討した。後述する腸上皮細胞層モデルを用い、腸管透過性の指標として経上皮抵抗値(TEER)を測定した。TEERの測定には、Millicell ERS(ミリポア)を用いた。
(腸上皮細胞層モデル)
培地にD−MEM(GIBCO)を用いて、ヒト結腸がん由来の細胞株Caco−2(ATCC HTB−37)を培養した。D−MEMには、ウシ胎児血清(fetal bovine serum、GIBCO)100ml/L、D−グルコース3.5g/L、ペニシリン(明治製菓株式会社)及びストレプトマイシン(明治製菓株式会社)各100mg/Lを添加した。培養は、ポアサイズ0.33cm2のトランスウェル(24ウェル、コーニング)内で、下層600μl、上層100μlの培地を用いて行った。Caco−2は、2×104細胞/ウェルで播種し、19〜21日間培養した。培養は37℃、5%CO2の条件で行い、培地の交換は2日に1度行った。
培地にD−MEM(GIBCO)を用いて、ヒト結腸がん由来の細胞株Caco−2(ATCC HTB−37)を培養した。D−MEMには、ウシ胎児血清(fetal bovine serum、GIBCO)100ml/L、D−グルコース3.5g/L、ペニシリン(明治製菓株式会社)及びストレプトマイシン(明治製菓株式会社)各100mg/Lを添加した。培養は、ポアサイズ0.33cm2のトランスウェル(24ウェル、コーニング)内で、下層600μl、上層100μlの培地を用いて行った。Caco−2は、2×104細胞/ウェルで播種し、19〜21日間培養した。培養は37℃、5%CO2の条件で行い、培地の交換は2日に1度行った。
(TEERの測定)
上記の腸上皮細胞層モデルを用いて、MLCリン酸化酵素阻害剤が腸管透過性に与える影響を検討した。腸上皮細胞層モデルの培地をCa2+(−)に交換すると共に、ML−7を10μg/mL添加した群、Y27632を20μg/mL添加した群、ML−7を10μg/mL及びY27632を20μg/mLを添加した群、並びに対照として、いずれの阻害剤も含まない群を用意し、培地交換から0、0.5、1及び2時間後のTEERを測定した。図1は、MLCリン酸化酵素阻害剤が腸管透過性に与える影響を検討した結果を示すグラフである。測定した各TEER値は、培地交換時(0時間)におけるTEER値を100%とした百分率で示した。
上記の腸上皮細胞層モデルを用いて、MLCリン酸化酵素阻害剤が腸管透過性に与える影響を検討した。腸上皮細胞層モデルの培地をCa2+(−)に交換すると共に、ML−7を10μg/mL添加した群、Y27632を20μg/mL添加した群、ML−7を10μg/mL及びY27632を20μg/mLを添加した群、並びに対照として、いずれの阻害剤も含まない群を用意し、培地交換から0、0.5、1及び2時間後のTEERを測定した。図1は、MLCリン酸化酵素阻害剤が腸管透過性に与える影響を検討した結果を示すグラフである。測定した各TEER値は、培地交換時(0時間)におけるTEER値を100%とした百分率で示した。
その結果、MLCK阻害剤を添加した細胞では、対照群と比較して有意な差は認められなかった。一方、ROCK阻害剤を添加した細胞では、対照群と比較して、TEERの低下が有意に抑制された。このことから、MLCのリン酸化に伴う腸管透過性の亢進はROCKにより制御されていることが明らかとなった。
(実施例2)
(ケストース添加によるMLCの脱リン酸化)
後述するカルシウムスイッチによる腸管透過性亢進モデルを用いて、1−ケストースの存在下及び非存在下でCaco−2細胞を培養し、ウェスタンブロットによりMLCの脱リン酸化を検討した。
(ケストース添加によるMLCの脱リン酸化)
後述するカルシウムスイッチによる腸管透過性亢進モデルを用いて、1−ケストースの存在下及び非存在下でCaco−2細胞を培養し、ウェスタンブロットによりMLCの脱リン酸化を検討した。
(カルシウムスイッチによる腸管透過性亢進モデル)
上記の腸上皮細胞層モデルにおいて、トランスウェルの培地を除いて上層下層共にCa2+を含まない培地(以下「Ca2+(−)」と表記する。)に交換し、細胞及びトランスウェルを1度洗浄した。続いて、培地を再びCa2+(−)に交換し2時間インキュベートし、腸上皮細胞層モデルの透過性を亢進させた。次に、Ca2+を含む培地(以下「Ca2+(+)」と表記する。)に上層下層共に培地を交換して培養を行い(透過性回復過程)、透過性を回復させた。透過性回復過程において、ケストースを1(w/v)%の濃度で培地に添加した。
上記の腸上皮細胞層モデルにおいて、トランスウェルの培地を除いて上層下層共にCa2+を含まない培地(以下「Ca2+(−)」と表記する。)に交換し、細胞及びトランスウェルを1度洗浄した。続いて、培地を再びCa2+(−)に交換し2時間インキュベートし、腸上皮細胞層モデルの透過性を亢進させた。次に、Ca2+を含む培地(以下「Ca2+(+)」と表記する。)に上層下層共に培地を交換して培養を行い(透過性回復過程)、透過性を回復させた。透過性回復過程において、ケストースを1(w/v)%の濃度で培地に添加した。
(ウェスタンブロット)
上記の透過性回復過程を開始してから1、3、5、10及び30分後に、ケストースの存在下及び非存在下のCaco−2細胞にRIPAバッファー(25mM Tris−HCl pH7.6、150mM NaCl、1% NP−40、0.1% SDS、1% Sodiumdeoxycholate)を加え、30分間氷上でタンパクを抽出した。続いて、RIPAバッファーを回収し、12,000rpmで15分間遠心して沈殿物を除き、上清を回収してサンプルとした。サンプル中のタンパク濃度をDCプロテインアッセイキット(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を用いて定量した。サンプルのタンパク濃度を5μg/μlに調製し、5×サンプルバッファー及び5%メルカプトエタノールを加え120℃で5分間ボイルした。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った後、電気泳動したタンパクをPVDF膜にブロッティングした。次に、ウサギ抗pMLC抗体(Cell signaling technology)を一晩反応させた。続いて、ヤギ抗ウサギIgG抗体−HRPを反応させた。続いて、イモビロン ウエスタン HRP基質(ミリポア)を5分以上室温で反応させ、デンシトメーターによってシグナルを検出した。
上記の透過性回復過程を開始してから1、3、5、10及び30分後に、ケストースの存在下及び非存在下のCaco−2細胞にRIPAバッファー(25mM Tris−HCl pH7.6、150mM NaCl、1% NP−40、0.1% SDS、1% Sodiumdeoxycholate)を加え、30分間氷上でタンパクを抽出した。続いて、RIPAバッファーを回収し、12,000rpmで15分間遠心して沈殿物を除き、上清を回収してサンプルとした。サンプル中のタンパク濃度をDCプロテインアッセイキット(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を用いて定量した。サンプルのタンパク濃度を5μg/μlに調製し、5×サンプルバッファー及び5%メルカプトエタノールを加え120℃で5分間ボイルした。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った後、電気泳動したタンパクをPVDF膜にブロッティングした。次に、ウサギ抗pMLC抗体(Cell signaling technology)を一晩反応させた。続いて、ヤギ抗ウサギIgG抗体−HRPを反応させた。続いて、イモビロン ウエスタン HRP基質(ミリポア)を5分以上室温で反応させ、デンシトメーターによってシグナルを検出した。
図2は、ケストース添加によるMLCの脱リン酸化を検討した結果を示す写真である。ケストース非存在下では、透過性回復過程を開始してから30分後の時点までpMLCのシグナルがほぼ一定であったが、ケストース存在下では、透過性回復過程を開始してから10分後及び30分後の時点においてpMLCのシグナルが弱くなった。すなわち、ケストースを添加したことにより、pMLCの脱リン酸化が促進され、腸管透過性の回復が促進された。
実施例1及び2の結果から、ケストースの添加による腸管透過性の回復促進効果はタイトジャンクションを介した反応であり、MLCの脱リン酸化の促進を行うことによる反応であることが明らかとなった。すなわち、ケストースはROCK依存的なMLCのリン酸化経路に作用し、MLCの脱リン酸化を促進することにより腸管バリア機能を高めていることが明らかとなった。
本発明により、新規のMLC脱リン酸化促進剤、MLCのリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤、及び上記の促進剤を含有する飲食品を提供することができる。
Claims (7)
- フラクトオリゴ糖を有効成分とする、ミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤。
- ケストースを有効成分とする、ミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤。
- ROCK依存的である、請求項1又は2に記載のミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤。
- フラクトオリゴ糖を有効成分とする、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤。
- ケストースを有効成分とする、ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患の予防又は治療剤。
- 前記ミオシン軽鎖のリン酸化を原因とする疾患が、アレルギー疾患、循環器系疾患、炎症性腸疾患、癌、腎機能障害、喘息、緑内障、勃起障害及びインスリン耐性からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の予防又は治療剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のミオシン軽鎖脱リン酸化促進剤を含有する飲食品。
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