JP5238373B2 - 腸間膜脂肪低減剤 - Google Patents
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Description
また、内臓脂肪組織の量が多くなると、血中のアディポネクチン量が減少する。アディポネクチンは、インスリン感受性増強作用、抗動脈硬化作用などを有する脂肪組織特異的ホルモン因子であり、「低アディポネクチン血症」は、糖尿病や動脈硬化症などの発症において、それらの上流に位置する根幹病態であることが明らかとなっている(非特許文献2)。
また、過栄養や運動不足によって肥大化した脂肪組織から多く分泌されるMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)は、マクロファージの脂肪組織への浸潤を促し、この浸潤したマクロファージと脂肪組織が相互作用することによって炎症が引き起こされ、インスリン抵抗性の発症へと繋がると考えられている。近年の研究では、脂肪組織によってMCP-1の発現が異なることが明らかとなっており、副睾丸脂肪、腎臓脂肪、皮下脂肪に比べ、腸間膜脂肪からのMCP-1の分泌量が顕著に高いことが示されている(非特許文献3)。このように、同じ内臓脂肪組織であっても、腸間膜脂肪が肥満に起因する炎症反応に重要な働きを示す可能性が示唆されている。
そこで、日常の食生活で摂取することにより、手軽に腸間膜脂肪を低減し、生活習慣病の予防に役立つ食品素材及びそれを含む飲食品の開発が望まれている。
そのような腸間膜脂肪低減効果を有する食品素材は、既にいくつか報告されており、その代表的なものとして、カテキン(特許文献1)を挙げることができるが、カテキンは強い苦味を有するため、飲食品として日常的に摂取するには、風味上の問題がある。その他の腸間膜脂肪低減効果を有する食品素材としては、コージオリゴ糖(特許文献2)などを例示することができる。
また、ガラクトオリゴ糖には、経口摂取することにより奏される様々な生理活性があることが知られている。例えば、炎症性腸疾患予防・治療効果(特許文献3)、二次胆汁酸低下効果(特許文献4)、血中脂質代謝改善効果(特許文献5)が報告されているが、腸間膜脂肪低減効果については報告されていない。
ここでいう腸間膜とは、小腸(空腸と回腸)の大部分を支持する、腹壁に付着した二重の腹膜をいい、腸間膜脂肪(組織)とはその周囲に存在する脂肪(組織)をいう。
本発明で用いるガラクトオリゴ糖は、分子内にガラクトースを一分子以上含む2〜8糖のオリゴ糖であれば特に限定されるものではなく、例えば、一般式:Gal−(Gal)n−Glc(但し、式中Galはガラクトース残基、Glcはグルコース残基、nは1〜6の整数を表す)で表される3糖以上のオリゴ糖;Gal−Galや乳糖の異性体などのガラクトシル2糖などが挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、上記オリゴ糖の結合様式についても特に限定されるものではなく、例えばβ1−6、β1−3、β1−4、β1−2、α1−3、α1−6結合などが挙げられる。
3糖のガラクトオリゴ糖としては、Galβ1−4Galβ1−4Glc、Galβ1−4Galβ1−3Glc、Galβ1−6Galβ1−4Glcなどが挙げられる。
また、4糖のガラクトオリゴ糖としては、Galβ1−6Galβ1−4Galβ1−4Glcなどが挙げられる。
乳糖を含む原料としては、例えば、市販の乳糖、乳汁、粉乳、チーズホエーなどが挙げられる。当該乳汁は、そもそもガラクトオリゴ糖を含むものであるが、乳糖も含むため、酵素を作用させる方法でガラクトオリゴ糖を製造する際の原料として使用してもよい。
これらの微生物から酵素を製造するには、用いる微生物に適した条件で培養を行い、目的に応じて、得られる菌体またはその培養上清から常法に従って、酵素を単離・生成すればよい。例えば、培養により得た菌体を超音波または界面活性剤により破砕し、不溶物を除去する方法、若しくは、クロマトグラフィーを用いて精製する方法を挙げることができる。
また、培養方法についても、特に限定されるものではなく、例えば、液体培地に微生物を添加し、培養する方法や微生物を担体に固定し、固定化増殖菌体として培養する方法を挙げることができる。
また、上記一般式:Gal−(Gal)n−Glc(但し、式中Galはガラクトース残基、Glcはグルコース残基、nは1〜6の整数を表す)においてnが1〜2であるオリゴ糖の含有率は特に制限されるものではないが、糖組成中、85質量%以上、より90質量%以上、特に95質量%以上含有していることが好ましい。
また、3糖のガラクトオリゴ糖の含有率も特に制限されるものではないが、糖組成中、60質量%以上、より70質量%以上、特に75質量%以上含有することが好ましい。このときの4糖のガラクトオリゴ糖の含有率も特に制限されるものではないが、糖組成中、40質量%未満、より30質量%未満、特に20質量%未満含有することが好ましい。
また、Galβ1−4Galβ1−4Glcは、糖組成中、15質量%以上、より25質量%以上、特に35質量%以上含有することが好ましい。これらの含有率は、すべて固形分あたりの含有率である。
また、前記背景技術に示すとおり、近年の研究では、脂肪組織によってMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)の発現が異なることが明らかとなっており、副睾丸脂肪、腎臓脂肪、皮下脂肪に比べ、腸間膜脂肪からのMCP-1の分泌量が顕著に高いことが示されている(非特許文献3)。このMCP-1は、組織内で炎症を引き起こしたり、インスリン抵抗性の発症に関与していると考えられている。このように、同じ内臓脂肪組織であっても、腸間膜脂肪が肥満に起因する炎症反応及び当該炎症によって引き起こされるインスリン抵抗性の発症に重要な働きを示す可能性が示唆されている。このような背景から、内臓脂肪のなかでも特に腸間膜脂肪の蓄積抑制がインスリン抵抗性の抑制に繋がるのではないかと期待されているのである。
さらに、本発明のガラクトオリゴ糖を既存の飲食品、例えば、パン、チューインガム、クッキー、チョコレート、菓子、シリアル、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー、ジュース、コーヒー、ココア、乳酸菌飲料などに添加することも可能であり、通常の固形食品の摂取が困難な人のための流動食にも添加することが可能である。
乳糖を含む培地中で、スポロボロマイセス・シンギュラリスを培養し、スポロボロマイセス・シンギュラリス由来のβ―ガラクトシダーゼと乳糖とを反応させた。その後、クリベロマイセス・ラクチス由来のβ-ガラクトシダーゼを添加し、酵素反応を行った。酵素反応が十分行われた後、加温により酵素を失活させ、ガラクトオリゴ糖を含有する糖液を得た。その糖液をイオン交換樹脂が充填されたクロマト分離装置に供し、3糖以上画分を分画し(含有率97.8%)、これを凍結乾燥したものを以下の実施例に供した。
この画分の主要な糖組成は、3糖77.6%、4糖19.2%、5糖以上1%であった。
3糖の主成分は、Galβ1−4Galβ1−4Glc(41.7%)であり、他にGalβ1−4Galβ1−3Glc(10.2%)やGalβ1−6Galβ1−4Glc(11.3%)を含んでいた。
4糖の主成分は、Galβ1−6Galβ1−4Galβ1−4Glc(10.9%)であった。これらの含有率は、すべて固形分あたりの含有率である。
ICRマウス(JC1:ICR、メス、3週齢、日本クレア株式会社)をMF食(オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間予備飼育した後、平均体重がほぼ同一になるように3群に分け、表1に示す実験飼料を自由摂取で12週間投与した。
マウスの飼育は床敷きを入れたプラスチックケージで個別飼いとし、明暗サイクル12時間、室温23±3℃、湿度50±10%の環境下で行った。ガラクトオリゴ糖は、製造例1で製造したものを用いた。
投与期間中は、体重を1週間おきに、摂餌量を2、3日おきに測定した。摂取熱量を正確に測定するため、9週目に3日間、金網を敷いたプラスチックケージにマウスを移し、摂餌量を測定した。
投与期間終了後、マウスを解剖し、内臓脂肪の一種である腸間膜脂肪重量を測定した。
結果を図1〜4に示す。また、体重に占める腸間膜脂肪重量の割合を図5に示した。
一方、実験終了時の腸間膜脂肪重量は、対照群0.94±0.3g、ガラクトオリゴ糖1%群0.62±0.1g、ガラクトオリゴ糖2%群0.43±0.2gであり、体重に占める腸間膜脂肪重量は、対照群は2.1±0.6%、ガラクトオリゴ糖1%群1.61±0.5%、ガラクトオリゴ糖2%群0.91±0.3%であり、ガラクトオリゴ糖投与で有意に低下した。
Claims (2)
- Galβ1−4Galβ1−4Glc、Galβ1−4Galβ1−3Glc、Galβ1−6Galβ1−4Glc及びGalβ1−6Galβ1−4Galβ1−4Glcを含むガラクトオリゴ糖組成物(但し、式中Galはガラクトース残基、Glcはグルコース残基を表す)を有効成分とする腸間膜脂肪低減剤。
- ガラクトオリゴ糖組成物が、乳糖を含む原料に酵素又は酵素を産生する微生物を作用させて得られるものである、請求項1に記載の腸間膜脂肪低減剤。
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