JP2012173115A - 磁気特性推定装置、磁気特性推定方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 各結晶粒Aの<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminを導出する。次に、<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminを用いて、計算対象の鋼板に与えられる磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>を導出し、それに対応する「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」を、「計算対象の鋼板の単結晶の<100>方向におけるB−H曲線」から導出する。次に、導出した「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」と、<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminを用いて、磁界Hの方向の磁束密度B<100> Hを、各結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」として導出する。
【選択図】 図9
Description
また、前述したように、非特許文献1に記載の技術では、板厚方向の集合組織が一定であるとして計算を行っている。よって、板厚方向で集合組織が異なる条件では、集合組織を持つ材料の磁気特性を正確に計算することができなかった。そこで、板厚方向における複数の集合組織を得て、それらについて個々に磁気特性を計算し、計算した磁気特性の平均をとることが考えられる。しかしながら、このように磁気特性の平均を単純にとる方法では、磁気特性の平均として正確な値を得るために、板厚方向における集合組織として多数の集合組織を得る必要がある。これにより、集合組織を得るための負荷や、磁気特性を得るための計算負荷が増大してしまう。
また、本発明では、板厚方向で集合組織が異なる場合であっても、軟磁性材料からなる鋼板の集合組織から、当該鋼板の磁気特性を容易に計算できるようにすることを第2の目的とする。
また、本発明の他の特徴によれば、鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける結晶粒情報をそれぞれ1組ずつ取得し、当該結晶粒情報のそれぞれについて、当該鋼板における磁界の方向の磁束密度を、鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、それらの算術平均を導出するようにした。したがって、多くの結晶粒情報を取得する必要がなくなる。よって、板厚方向で集合組織が異なる場合であっても、軟磁性材料からなる鋼板の集合組織から、当該鋼板の磁気特性を容易に計算することができる。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
[磁気特性推定装置100の全体構成]
図1は、磁気特性推定装置100の機能的な構成の一例を示す図である。尚、磁気特性推定装置100のハードウェアは、パーソナルコンピュータ等、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、画像入出力ボード、各種インターフェース、及びインターフェースコントローラ等を備えた情報処理装置を用いて実現することができる。そして、特に断りのない限り、図1に示す磁気特性推定装置100の各ブロックは、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行することにより実現される。
結晶粒情報記憶部101は、磁気特性の計算対象となる「軟磁性材料からなる鋼板」の「多数の結晶粒により構成される集合組織」の情報を外部から入力して記憶するためのものである。以下の説明では、この情報を、必要に応じて、結晶粒情報と称する。また、磁気特性の計算対象となる鋼板を、必要に応じて、計算対象の鋼板と称する。ここで、本実施形態では、計算対象の鋼板の各結晶粒が単結晶の集合体であるとしている。また、本実施形態では、結晶粒情報は、EBSP法による測定で得られた結晶粒情報である。以下に、結晶粒情報記憶部101に記憶される結晶粒情報を得る方法の一例を説明する。
まず、EBSP法により得られる情報である結晶粒画像の一例について説明する。
図3は、材料座標系と結晶座標系の一例を示す図である。
本実施形態では、図3に示すように、材料座標系xyzのx軸を圧延方向(RD)に対応させ、y軸を板幅方向(TD)に対応させ、z軸を板厚方向(ND)に対応させる。また、結晶座標系XYZのX軸を<100>方向に対応させ、Y軸を<010>方向に対応させ、Z軸を<001>方向に対応させる。そして、結晶座標系XYZのオイラー角を(φ1、Φ、φ2)とする。このように本実施形態では、オイラー角を、Bungeによる手法で表記する。
図4は、結晶粒情報記憶部101における結晶粒情報の記憶構造の一例を概念的に示す図である。
図4に示すように、結晶粒情報は、厚み位置番号Mと、結晶粒番号Iと、結晶粒番号Iの結晶粒の3次元方位を示すオイラー角と、結晶粒番号Iの結晶粒上の点の座標(粒界点座標)とが相互に関連付けられたものである。尚、結晶粒番号Iと厚み位置番号Mは、整数であり、1から昇順に付けられるものとする。
ここで、結晶粒Aの粒界点座標は、任意の点から一定の方向(ここでは反時計回りの方向)に順番に結晶粒情報記憶部101に記憶されるようにする。図2に示す例では、結晶粒A1における粒界点座標として、点i1、i2、i3、・・・の位置の座標を、この順番で結晶粒情報記憶部101に記憶されるようにしている。
結晶粒番号Iは、結晶粒を特定する番号である。
結晶粒情報記憶部101は、例えば、RAM又はハードディスクを用いて構成される。
B−H曲線記憶部102は、計算対象の鋼板の単結晶の<100>方向におけるB−H曲線を外部から入力して、当該鋼板の種類と、当該B−H曲線とを相互に関連付けて記憶するためのものである。
図5は、B−H曲線記憶部102に記憶されているB−H曲線の一例を概念的に示す図である。本実施形態では、無方向性電磁鋼板を計算対象の鋼板としている。そこで、本実施形態では、<100>方向における鉄の単結晶のB−H曲線をB−H曲線記憶部102に記憶している。B−H曲線記憶部102は、B−H曲線を、式として記憶していてもよいし、テーブルとして記憶していてもよい。
尚、B−H曲線記憶部102は、例えば、RAM又はハードディスクを用いて構成される。
結晶粒情報取得部103は、ユーザの操作装置300の操作に応じて、結晶粒情報記憶部101に記憶されている結晶粒情報(図4を参照)を読み出す。
[B−H曲線取得部104]
B−H曲線取得部104は、ユーザの操作装置300の操作に応じて、B−H曲線記憶部102に記憶されているB−H曲線(<100>方向における鉄の単結晶のB−H曲線)を読み出す。
磁界設定部105は、ユーザが、操作装置300を操作して磁界H(外部磁界)の大きさと方向とを1つずつ入力すると、このユーザの操作に基づいて、「計算対象の鋼板に与える磁界Hの大きさ」と、「当該磁界Hの方向と計算対象の鋼板の圧延方向(RD)とのなす角度θ」とを、RAM又はハードディスクに設定(記憶)する(後述する図8を参照)。尚、以下の説明では、「磁界Hの方向と計算対象の鋼板の圧延方向(RD)となす角度θ」を、必要に応じて、「磁界と圧延方向とのなす角度θ」と称する。尚、磁気特性として、B50を導出する場合には、磁界Hの大きさとして、5000[A/m]が設定される。また、磁界と圧延方向とのなす角度θの範囲は、0°≦θ≦180°である。
結晶粒選択部106は、結晶粒情報取得部103により取得された結晶粒情報に含まれる結晶粒番号Iを昇順に順次選択する。
[磁化容易軸導出部107]
磁化容易軸導出部107は、結晶粒選択部106で選択された結晶粒番号Iの結晶粒Aの結晶座標系において、計算対象の鋼板に与えられた磁界Hの方向に最も近い所定の軸の情報を磁化容易軸の情報として導出する。
具体的に本実施形態では、まず、結晶粒選択部106で選択された結晶粒番号Iの結晶粒Aについて、結晶座標系XYZにおけるX軸方向(<100>方向)と、磁界Hの方向とのなす角度αを導出する。尚、以下の説明では、「結晶座標系XYZにおけるX軸方向(<100>方向)と、磁界Hの方向とのなす角度α」を、必要に応じて、「<100>方向と磁界Hの方向とのなす角度α」と称する。
本実施形態では、計算対象の鋼板を無方向性電磁鋼板としている。無方向性電磁鋼板は、bcc(体心立方格子)を有するので、図6(a)に示す基本単位格子の8つの頂点601〜608に結晶座標系XYZを設けることができる。そして、図6(b)〜図6(d)に示すように、1つの頂点601に対して、結晶座標系XYZとして3通りの座標系を取ることができる。このことは、他の頂点602〜608についても同じである。したがって、無方向性電磁鋼板の結晶粒Aの結晶座標系XYZとして、24(=3×8)通りの座標系で表現することができる。
図7を参照しながら、このようにして、「<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αmin」を求める理由を説明する。図7は、結晶粒Aにおける結晶座標系XYZと、材料座標系xyzと、結晶粒Aに与えられる磁界Hとの関係の一例を示す図である。
図7において、X軸、Y軸、Z軸の何れもが磁化容易軸の候補となり得る。したがって、結晶粒Aにおける結晶座標系XYZと、材料座標系xyzと、結晶粒Aに与えられる磁界Hとの関係が、図7に示す関係である場合、計算対象の鋼板に与えられた磁界Hの方向に最も近い磁化容易軸を導出しようとする場合、磁界Hの方向とのなす角度が最も小さい軸を磁化容易軸として選択することになる。したがって、本実施形態では、磁化容易軸の誤検出を防止するために、結晶粒Aがとり得る全ての結晶座標系XYZにおける「<100>方向と磁界Hの方向とのなす角度α」のうち、最も小さい角度αminを選択するようにしている。
ここで、xH、yH、zHは、材料座標系xyzにおいて磁界Hの方向を示す単位ベクトルで、それぞれ以下の(2)式〜(4)式で表される。
xH=cos(θ) ・・・(2)
yH=sin(θ) ・・・(3)
zH=0 ・・・(4)
また、x100、y100、z100は、材料座標系xyzにおいて結晶座標系XYZの各軸の方向を表す単位ベクトルであり、それぞれ以下の(5)式〜(7)式で表される。
x100=cos(φ1)×cos(φ2)−sin(φ1)×sin(φ2)×cos(Φ) ・・・(5)
y100=sin(φ1)×cos(φ2)+cos(φ1)×sin(φ2)×cos(Φ) ・・・(6)
z100=sin(φ2)×sin(Φ) ・・・(7)
磁界成分導出部108は、磁界設定部105で設定された「磁界Hの大きさ」と、磁化容易軸導出部107で導出された「<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αmin」とを、以下の(8)式に代入して、磁界Hの磁化容易軸方向(<100>方向)の成分H<100>を導出する。
H<100>=Hcos(αmin) ・・・(8)
磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>は、概念的には図8に示すようになる。尚、磁気特性として、B50を導出する場合には、(8)式において、Hは、5000[A/m]となる。
磁化容易軸方向磁束密度導出部109は、B−H曲線取得部104で取得されたB−H曲線(図5を参照)から、磁界成分導出部108で導出された「磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>」に対応する「磁化容易軸方向(<100>方向)の磁束密度B<100>」を導出する。B−H曲線において、あるHにおけるBをB(H)と表記すれば、B<100>は、以下の(9)式により導出される。
B<100>=B<100>(H<100>)=B<100>(Hcos(αmin)) ・・・(9)
磁界方向磁束密度導出部110は、磁化容易軸方向磁束密度導出部109で導出された「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」と、磁化容易軸導出部107で導出された「<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αmin」とを、以下の(10)式に代入して、厚み位置番号M、結晶粒番号Iの結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」を導出する。尚、ここでは、磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)としてB50を導出するものとする。そして、磁界方向磁束密度導出部110は、導出した「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」を、RAM又はハードディスクに記憶する。
B<100> H(M,I)=B<100> H=B<100>cos(αmin) ・・・(10)
磁界Hの方向の磁束密度B<100> Hは、概念的には、図9に示すようになる。
磁気特性導出部111は、結晶粒情報取得部103で取得された結晶粒情報に含まれる全ての厚み位置番号M、結晶粒番号Iの結晶粒Aについて、磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)が導出されると、厚み位置番号Mにおける各結晶粒番号Iの結晶粒Aの面積SM,Iを、厚み位置番号Mにおける当該結晶粒番号Iの結晶粒における点iの座標(粒界点座標)に基づいて導出する。
そして、磁気特性導出部111は、以下の(11)式に示すように、厚み位置番号Mにおける各結晶粒番号Iの結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」について、各結晶粒Aの面積SM,Iによる加重平均を行って、計算対象の鋼板の「ある厚み位置における『磁界Hの方向の磁束密度B(M)』」を導出する(ここでは、B50を導出するものとする)。
そして、磁気特性導出部111は、計算対象の鋼板の「(ある厚み位置における)磁界Hの方向の磁束密度B(M)」を、ハードディスクに記憶する。以上のようにして、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M)」が磁気特性として求められる。
そして、磁気特性導出部111は、以下の(12)式に示すように、各厚み位置番号Mの各厚み位置で求めた、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M)」を、当該厚み位置が代表する「計算対象の鋼板の厚み方向の範囲(長さ)LM」で加重平均することにより、計算対象の鋼板全体の「磁界Hの方向の磁束密度B」を導出する。尚、以下の説明では、「計算対象の鋼板の厚み方向の範囲(長さ)」を、必要に応じて「厚み方向長さ」と称する。
図10は、各厚み位置が代表する厚み方向長さLMの一例を概念的に示す図である。図10は、計算対象の鋼板の厚み部分の一部を示す図である。
前述したように、本実施形態では、計算対象の鋼板の一方の表面から当該鋼板の厚みの1/16、1/8、1/4、3/8、1/2、5/8、3/4、7/8、15/16の長さの位置における当該鋼板の面方向の断面の結晶粒情報を記憶している。
したがって、計算対象の鋼板の厚みをtとすると、当該鋼板の一方の表面から、(1/16)t、(1/8)t、(1/4)t、(3/8)t、(1/2)t、(5/8)t、(3/4)t、(7/8)t、(15/16)tの長さだけ、当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側に位置した各厚み位置における「当該鋼板の面方向の断面」の結晶粒情報が得られる。尚、以下の説明では、これらの各厚み位置を必要に応じて、(X/Y)tの厚み位置と称する。
例えば、図10において、(1/8)tの厚み位置と相互に隣り合う厚み位置は、(1/16)tの厚み位置と、(1/4)tの厚み位置である。(1/8)tの厚み位置と、(1/16)tの厚み位置との間の距離の1/2倍の厚み位置は、(3/32)tの厚み位置である。また、(1/8)tの厚み位置と、(1/4)tの厚み位置との間の距離の1/2倍の厚み位置は、(3/16)tの厚み位置である。
よって、(1/8)tの厚み位置が代表する厚み方向長さL2は、(3/32)tの厚み位置から(3/16)tの厚み位置までの厚み方向の長さである。尚、L2の「2」は、厚み位置番号Mが2であることを表す。
尚、本実施形態では、磁気特性導出部111は、磁界Hの方向の磁束密度B(M)として、B50を導出している。しかしながら、磁気特性導出部111は、この他にも、B25、透磁率、及びこれらから得られる物性値を磁気特性として導出することができる。
磁気特性表示部112は、磁気特性導出部111で導出された「計算対象の鋼板全体の『磁界Hの方向の磁束密度B』」の情報を表示装置200に表示させる。このとき、磁気特性表示部112は、計算対象の鋼板に与えた磁界Hの大きさや方向の情報等を、計算対象の鋼板全体の「磁界Hの方向の磁束密度B」の情報と共に表示装置200に表示することができる。
次に、図11のフローチャートを参照しながら、磁気特性推定装置100が行う処理動作の一例を説明する。尚、ここでは、結晶粒情報記憶部101に、全ての厚み位置での(全ての厚み位置番号Mの)結晶粒情報が既に記憶されており、且つ、B−H曲線記憶部102に、B−H曲線が既に記憶されているものとする。また、「磁界Hの大きさ」と「磁界と圧延方向とのなす角度θ」とが既に磁界設定部105で設定されているものとする。
次に、ステップS102において、結晶粒情報取得部103は、結晶粒情報記憶部101から、厚み位置番号Mの結晶粒情報を読み出す。
次に、ステップS103において、B−H曲線取得部104は、B−H曲線記憶部102から、予測対象の鋼板に対応するB−H曲線を読み出す。
次に、ステップS104において、磁界設定部105は、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて、「磁界Hの大きさ」をRAM又はハードディスクに設定する。
次に、ステップS105において、磁界設定部105は、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて、「磁界と圧延方向とのなす角度θ」をRAM又はハードディスクに設定する。
次に、ステップS107において、磁化容易軸導出部107は、ステップS106で選択された厚み位置番号M、結晶粒番号Iの結晶粒Aについて、<100>方向と磁界Hの方向とのなす角度αを導出する。前述したように、本実施形態では、<100>方向と磁界Hの方向とのなす角度αは、24個導出される。
次に、ステップS108において、磁化容易軸導出部107は、ステップS107で導出された24個の「<100>方向と磁界Hの方向とのなす角度α」のうち、最も小さい角度αminを選択する。本実施形態では、このステップS108により、磁界Hの方向に最も近い所定の軸(ここでは<100>方向の軸)の情報が磁化容易軸の情報として導出される。
次に、ステップS110において、磁化容易軸方向磁束密度導出部109は、ステップS103で読み出されたB−H曲線から、ステップS109で導出された「磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>」に対応する「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」を導出する。
次に、ステップS112において、磁界方向磁束密度導出部110は、ステップS111で導出された「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」を、厚み方向位置M、結晶粒番号Iの結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」としてRAM又はハードディスクに記憶する。
次、ステップS119において、磁気特性表示部112は、ステップS111で導出された「計算対象の鋼板全体の『磁界Hの方向の磁束密度B』」の情報を表示装置200に表示させる。
以上のように本実施形態では、まず、各結晶粒Aの結晶座標系XYZにおける<100>方向の情報として、<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminを導出する。次に、<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminを用いて、計算対象の鋼板に与えられる磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>を導出し、それに対応する「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」を、予め記憶しておいた「計算対象の鋼板を構成する材料の単結晶の<100>方向におけるB−H曲線」から導出する。次に、導出した「磁化容易軸方向の磁束密度B<100>」と、<100>方向と磁界Hの方向とのなす最小角度αminとを用いて、磁界Hの方向の磁束密度B<100> Hを、各結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」として導出する。次に、各結晶粒Aの「磁界Hの方向の磁束密度B<100> H(M,I)」について、結晶粒Aの面積SM,Iによる加重平均を行い、厚み位置番号Mの厚み位置における「計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M)」を導出する。このような計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M)の導出を、全ての厚み位置番号Mの厚み位置について行う。そして、厚み位置番号Mの厚み位置の「計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M)」について、各厚み位置が代表する厚み方向長さLMによる加重平均を行い、計算対象の鋼板全体の「磁界Hの方向の磁束密度B」を導出する。このように、計算対象の鋼板に与えられる磁界Hの磁化容易軸方向の成分H<100>を導出し、計算対象の鋼板を構成する材料の単結晶の<100>方向におけるB−H曲線を用いて、磁化容易軸方向の磁束密度B<100>を導出することにより、結晶粒の構造が多磁区構造であるとして取り扱うことができる。したがって、計算対象の鋼板のそれぞれの結晶粒の構造が単磁区構造ではない場合であっても、当該鋼板の磁束密度を正確に計算することができる。一方、非特許文献1の記載の技術では、計算対象の鋼板のそれぞれの結晶粒の構造が単磁区構造であるとしているので、磁化容易軸方向の磁束密度B<100>は飽和領域の値となる。よって、非特許文献1に記載の技術では、このような飽和領域以外の磁束密度を正確に計算することが困難である。
また、各厚み位置において、計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M)を導出し、各厚み位置が代表する厚み方向長さLMでそれらの加重平均をとるようにしたので、計算対象の鋼板の集合組織が板厚方向で異なる場合であっても、当該鋼板の磁束密度を正確に計算することができる。
本実施形態では、計算対象の鋼板の集合組織が板厚方向で異なるものとして、各厚み位置において、計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M,I)を導出し、各厚み位置が代表する厚み方向長さLMでそれらの加重平均をとるようにした。しかしながら、計算対象の鋼板の集合組織が板厚方向で同じであると見なせる場合(当該鋼板の結晶粒の板厚方向の大きさが当該鋼板の板厚方向の長さよりも大きいと見なせる場合)には、計算対象の鋼板の磁界Hの方向における磁束密度B(M,I)を、1つの厚み位置で計算することにより得ることができる。すなわち、厚み位置番号Mの最大値を「1」とし、(12)式の計算を行わずに、(11)式により「計算対象の鋼板の『磁界Hの方向の磁束密度B』」を導出するようにしてもよい。
また、(1/16)t、(1/8)t、(1/4)t、(3/8)t、(1/2)t、(5/8)t、(3/4)t、(7/8)t、(15/16)tの厚み位置について、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M)」を導出しているが、(1/2)tの厚み位置で、集合組織が対称となることが多いので、(15/16)tを(1/16)tで、(7/8)tを(1/8)tで、(3/4)tを(1/4)tで、(5/8)tを(3/8)tで代替してもよい。
u=cosφ1×cosφ2−sinφ1×sinφ2×cosΦ ・・・(13)
v=cosφ1×sinφ2−sinφ1×cosφ2×cosΦ ・・・(14)
w=sinφ1×sinΦ ・・・(15)
p=sinφ1×cosφ2+cosφ1×sinφ2×cosΦ ・・・(16)
q=sinφ1×sinφ2+cosφ1×cosφ2×cosΦ ・・・(17)
r=cosφ1×sinΦ ・・・(18)
h=sinφ2×sinΦ ・・・(19)
k=cosφ2×sinΦ ・・・(20)
l=cosΦ ・・・(21)
尚、(13)式〜(21)式は、Bungeの式であり、(u p h)、(v q k)、(w r l)は、それぞれ、結晶座標系XYZのX軸、Y軸、Z軸を材料座標系xyzで方向余弦として表現したものである。
更にまた、点iは、電子プローブを材料上に走査したときにできる格子状又は蜂の巣状の交差点の内の粒界上のすべての点であってもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、計算対象の鋼板に与える磁界Hの大きさと、磁界と圧延方向とのなす角度θとが一定である場合について説明した。これに対し、本実施形態では、これらを変えて、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B」を演算する。このように本実施形態は、前述した第1の実施形態に対し、計算対象の鋼板に与える磁界Hの大きさと、磁界と圧延方向とのなす角度θとを、変更する構成が追加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図11に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図12のステップS115において、計算対象の鋼板の「磁束密度B(M,H,θ)が記憶されると、ステップS201に進む。ステップS201に進むと、磁界設定部105は、磁界と圧延方向とのなす角度θを変えて、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M,H,θ)」を導出するか否かを判定する。すなわち、ユーザによって指定された「磁界と圧延方向とのなす角度θ」のうち、ステップS105で設定していない「磁界と圧延方向とのなす角度θ」があるか否かを判定する。この判定の結果、磁界と圧延方向とのなす角度θを変える場合には、ステップS105に戻り、磁界設定部105は、未設定の「磁界と圧延方向とのなす角度θ」を設定する。そして、磁界と圧延方向とのなす角度θの全てについて、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M,H,θ)」が導出されるまで、ステップS105〜S115、S201の処理を繰り返し行う。
以上のようにすることによって、鋼板の磁束密度についてのより詳細な情報を、自動的に、且つ、正確に計算することができる。
尚、本実施形態でも、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
図13は、磁界と圧延方向とのなす角度θと、B50との関係の一例を示す図である。ここでは、JIS C 2552で規定される50A1300材について調査した。
図13において、平均(BH未考慮)は、非特許文献1に記載の技術で計算された結果を示す。平均(BH考慮)は、第2の実施形態で説明したようにして計算された結果を示す。また、測定結果は、計算結果で示すものと同種の無方向性電磁鋼板に対して測定された結果を示す。ここで、平均とは、図10に示した「(1/16)tの厚み位置、(1/8)tの厚み位置、(1/4)tの厚み位置、(3/8)tの厚み位置、(1/2)tの厚み位置」の各厚み位置において「50A1300材のB50」を計算すると共に、図10に示すようにして各厚み位置が代表する厚み方向長さLMを設定し、これらを(12)式に代入して、50A1300材全体のB50(磁界Hの方向の磁束密度B(H,θ))を導出したことを表す。また、(1/16)tの厚み位置、(1/8)tの厚み位置、(1/4)tの厚み位置、(3/8)tの厚み位置、(1/2)tの厚み位置の「(12)式における重み」は、それぞれ、3/16、3/16、4/16、4/16、2/16である。
尚、ここでは、B50について示したが、予測する磁束密度はB50に限定するものではなく、例えば、B25についても、B50と同様に正確に予測できるものである。
次に、第1、第2の実施形態の変形例について説明する。
図14は、磁界と圧延方向とのなす角度と、各厚み位置におけるB50の加重平均値及び算術平均値との関係の一例を示す図である。
図14において、厚さ考慮は、図13に示した平均(BH考慮)と同じものを示す。単純平均とは、図10に示した「(1/16)tの厚み位置、(1/8)tの厚み位置、(1/4)tの厚み位置、(3/8)tの厚み位置、(1/2)tの厚み位置」の各厚み位置において「50A1300材のB50」を計算し、計算したB50を算術平均して、50A1300材全体のB50(磁界Hの方向の磁束密度B(H,θ))を導出したことを表す。すなわち、厚さ考慮と単純平均は、各厚み位置におけるB50の平均の取り方だけを異ならせたものである。
図14に示すように、各厚み位置におけるB50を、厚み方向の範囲(長さ)LMで加重平均した値と、各厚み位置におけるB50を算術平均した値とは、殆ど差がない。したがって、各厚み位置における「計算対象の鋼板全体の『磁界Hの方向の磁束密度B(H,θ)』」を、厚み方向の範囲(長さ)LMで加重平均する代わりに、算術平均するようにすれば、計算対象の鋼板全体の「磁界Hの方向の磁束密度B(H,θ)」を、計算精度を大きく落とすことなく高速に求めることができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。前述した第1、第2の実施形態では、(12)式に従って加重平均をとるので、多数の(具体的には5個又は9個)の厚み位置における結晶粒情報を得る必要があった。これに対し、本実施形態では、鋼板の集合組織の状態が、表層と中心層とで大別されることに着目し、鋼板の表層を代表する1か所の厚み位置の結晶粒情報から、磁界Hの方向の磁束密度B(M)(又はB(M,H,θ))を導出すると共に、鋼板の中心層を代表する1か所の厚み位置の結晶粒情報から、磁界Hの方向の磁束密度B(M)(又はB(M,H,θ))を導出し、これらの算術平均をとって、鋼板の磁界Hの方向の磁束密度B(又はB(H,θ))を導出する。このように本実施形態と、前述した第1及び第2の実施形態とは、磁界Hの方向の磁束密度B(M)(又はB(M,H,θ))の導出対象となる厚み位置が異なることによる処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1及び第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。尚、本実施形態でも、計算対象の鋼板が無方向性電磁鋼板であるとする。
図15において、例えば、1/16tは、(1/16)tの厚み位置の結晶粒画像を用いて第2の実施形態で説明したようにして、計算対象の鋼板の「磁界Hの方向の磁束密度B(M,H,θ)」を計算した結果を示す。また、測定結果と平均は、前述した実施例と同じものである。
これらのことから、表層を代表する厚み位置と、中心層を代表する厚み位置として、それぞれ前述した範囲を採用することが好ましいことが分かる。これらのうち、(1/8)tの厚み位置(若しくは(7/8)tの厚み位置)を、表層を代表する厚み位置とし、(3/8)tの厚み位置(若しくは(5/8)tの厚み位置)又は(1/2)tの厚み位置を、中心層を代表する厚み位置とすることがより好ましい。一般に、鋼板の表層は、鋼板の表面から(1/4)tの厚み位置(若しくは3/4tの厚み位置)までの領域とされ、鋼板の中心層は、(1/4)tの厚み位置(若しくは3/4tの厚み位置)から(1/2)tの厚み位置とされている。よって、これらの中心の位置である(1/8)tの厚み位置(若しくは(7/8)tの厚み位置)を、表層を代表する厚み位置とし、(3/8)tの厚み位置(若しくは(5/8)tの厚み位置)を、中心層を代表する厚み位置とすることが好ましい。ただし、鋼板の中心層の集合組織を採取する場合には、(1/2)tの厚み位置の集合組織を採取することが多いので、中心層を代表する厚み位置として、(1/2)tの厚み位置を採用することも好ましい。
B=(B(2)+B(4))/2 ・・・(22)
尚、本実施形態でも、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
前述した本発明の各実施形態では、例えば、結晶粒情報記憶部101を用いるにより結晶粒情報取得手段の一例が実現され、B−H曲線記憶部102を用いることにより、B−H曲線取得手段の一例が実現され、磁界設定部105を用いることにより磁界設定手段の一例が実現され、磁化容易軸導出部107を用いることにより磁化容易軸導出手段の一例が実現される。また、例えば、磁界成分導出部108、磁化容易軸方向磁束密度導出部109、磁界方向磁束密度導出部110、及び磁気特性導出部111を用いることにより磁束密度計算手段の一例が実現される。磁束密度計算手段について、例えば、磁界成分導出部108を用いることにより磁界成分導出手段の一例が実現され、磁化容易軸方向磁束密度導出部109を用いることにより磁化容易軸方向磁束密度導出手段の一例が実現され、磁界方向磁束密度導出部110を用いることにより磁界方向磁束密度導出手段の一例が実現される。また、磁気特性導出部111を用いることにより磁気特性導出手段の一例が実現される。
200 表示装置
300 操作装置
101 結晶粒情報記憶部
102 B−H曲線記憶部
103 結晶粒情報取得部
104 B−H曲線取得部
105 磁界設定部
106 結晶粒選択部
107 磁化容易軸導出部
108 磁界成分導出部
109 磁化容易軸方向磁束密度導出部
110 磁界方向磁束密度導出部
111 磁気特性導出部
112 磁気特性表示部
Claims (9)
- 軟磁性材料からなる鋼板の磁気特性を推定する磁気特性推定装置であって、
前記鋼板における集合組織を構成する結晶粒の粒界の位置の情報と、前記結晶粒のそれぞれの方位の情報とを含む結晶粒情報を取得する結晶粒情報取得手段と、
前記鋼板を構成する材料の単結晶の、結晶座標系における磁化容易軸方向の、磁束密度と磁界との関係を示すB−H曲線を取得するB−H曲線取得手段と、
前記鋼板に外部から与える磁界の大きさと方向とを設定する磁界設定手段と、
前記鋼板の結晶粒に対して設定される結晶座標系において、複数の磁化容易軸のうち前記磁界設定手段により設定された磁界の方向に最も近い軸として当該磁界の方向の方向余弦が最も大きい軸を磁化容易軸として導出することを、前記結晶粒情報取得手段により取得された結晶粒情報に基づいて、当該鋼板の結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸導出手段と、
磁束密度計算手段と、を有し、
前記磁束密度計算手段は、
前記磁界設定手段により設定された磁界の、前記磁化容易軸方向の成分を導出することを、前記結晶粒情報取得手段により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁界成分導出手段と、
前記磁界成分導出手段により導出された、磁界の前記磁化容易軸方向の成分に対応する、前記磁化容易軸方向における磁束密度を、前記B−H曲線から導出することを、前記結晶粒情報取得手段により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸方向磁束密度導出手段と、
前記磁化容易軸方向磁束密度導出手段により導出された、前記結晶粒のそれぞれにおける、前記磁化容易軸方向における磁束密度に基づいて、前記鋼板における、前記磁界設定手段により設定された磁界の方向の磁束密度を導出する磁界方向磁束密度導出手段と、を有することを特徴とする磁気特性推定装置。 - 前記結晶粒情報取得手段は、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける結晶粒情報をそれぞれ1組ずつ取得し、
前記磁化容易軸導出手段は、前記磁化容易軸を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁界成分導出手段は、前記磁界設定手段により設定された磁界の、前記磁化容易軸方向の成分を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁化容易軸方向磁束密度導出手段は、前記磁界成分導出手段により導出された、磁界の前記磁化容易軸方向の成分に対応する、前記磁化容易軸方向における磁束密度を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁界方向磁束密度導出手段は、前記磁化容易軸方向磁束密度導出手段により導出された、前記結晶粒のそれぞれにおける、前記磁化容易軸方向における磁束密度のそれぞれに基づいて、前記鋼板における、前記磁界設定手段により設定された磁界の方向の磁束密度を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁束密度計算手段は、前記磁界方向磁束密度導出手段により導出された、前記鋼板における、前記磁界設定手段により設定された磁界の方向の磁束密度の、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについての算術平均を導出する磁気特性導出手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の磁気特性推定装置。 - 前記鋼板の表層の位置は、前記鋼板の表面の位置と、当該鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、を上下限値とする当該鋼板の厚み方向の長さ範囲内の位置であり、
前記鋼板の中心層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの3/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、当該鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/2倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、を上下限値とする当該鋼板の厚み方向の長さ範囲内の位置であることを特徴とする請求項2に記載の磁気特性推定装置。 - 前記鋼板の表層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置であり、
前記鋼板の中心層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの3/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置、又は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/2倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置であることを特徴とする請求項3に記載の磁気特性推定装置。 - 軟磁性材料からなる鋼板の磁気特性を推定する磁気特性推定方法であって、
前記鋼板における集合組織を構成する結晶粒の粒界の位置の情報と、前記結晶粒のそれぞれの方位の情報とを含む結晶粒情報を取得する結晶粒情報取得工程と、
前記鋼板を構成する材料の単結晶の、結晶座標系における磁化容易軸方向の、磁束密度と磁界との関係を示すB−H曲線を取得するB−H曲線取得工程と、
前記鋼板に外部から与える磁界の大きさと方向とを設定する磁界設定工程と、
前記鋼板の結晶粒に対して設定される結晶座標系において、複数の磁化容易軸のうち前記磁界設定工程により設定された磁界の方向に最も近い軸として当該磁界の方向の方向余弦が最も大きい軸を磁化容易軸として導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、当該鋼板の結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸導出工程と、
磁束密度計算工程と、を有し、
前記磁束密度計算工程は、
前記磁界設定工程により設定された磁界の、前記磁化容易軸方向の成分を導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁界成分導出工程と、
前記磁界成分導出工程により導出された、磁界の前記磁化容易軸方向の成分に対応する、前記磁化容易軸方向における磁束密度を、前記B−H曲線から導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸方向磁束密度導出工程と、
前記磁化容易軸方向磁束密度導出工程により導出された、前記結晶粒のそれぞれにおける、前記磁化容易軸方向における磁束密度に基づいて、前記鋼板における、前記磁界設定工程により設定された磁界の方向の磁束密度を導出する磁界方向磁束密度導出工程と、を有することを特徴とする磁気特性推定方法。 - 前記結晶粒情報取得工程は、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける結晶粒情報をそれぞれ1組ずつ取得し、
前記磁化容易軸導出工程は、前記磁化容易軸を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁界成分導出工程は、前記磁界設定工程により設定された磁界の、前記磁化容易軸方向の成分を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁化容易軸方向磁束密度導出工程は、前記磁界成分導出工程により導出された、磁界の前記磁化容易軸方向の成分に対応する、前記磁化容易軸方向における磁束密度を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とにおける前記結晶粒情報のそれぞれに基づいて、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁界方向磁束密度導出工程は、前記磁化容易軸方向磁束密度導出工程により導出された、前記結晶粒のそれぞれにおける、前記磁化容易軸方向における磁束密度のそれぞれに基づいて、前記鋼板における、前記磁界設定工程により設定された磁界の方向の磁束密度を、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについてそれぞれ導出し、
前記磁束密度計算工程は、前記磁界方向磁束密度導出工程により導出された、前記鋼板における、前記磁界設定工程により設定された磁界の方向の磁束密度の、前記鋼板の表層の位置と中心層の位置とについての算術平均を導出する磁気特性導出工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の磁気特性推定方法。 - 前記鋼板の表層の位置は、前記鋼板の表面の位置と、当該鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、を上下限値とする当該鋼板の厚み方向の長さ範囲内の位置であり、
前記鋼板の中心層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの3/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、当該鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/2倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置と、を上下限値とする当該鋼板の厚み方向の長さ範囲内の位置であることを特徴とする請求項6に記載の磁気特性推定方法。 - 前記鋼板の表層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置であり、
前記鋼板の中心層の位置は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの3/8倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置、又は、前記鋼板の表面から当該鋼板の厚みの1/2倍の長さだけ当該鋼板の厚み方向に沿って当該鋼板の内側にある位置であることを特徴とする請求項7に記載の磁気特性推定方法。 - 軟磁性材料からなる鋼板の磁気特性を推定することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記鋼板における集合組織を構成する結晶粒の粒界の位置の情報と、前記結晶粒のそれぞれの方位の情報とを含む結晶粒情報を取得する結晶粒情報取得工程と、
前記鋼板を構成する材料の単結晶の、結晶座標系における磁化容易軸方向の、磁束密度と磁界との関係を示すB−H曲線を取得するB−H曲線取得工程と、
前記鋼板に外部から与える磁界の大きさと方向とを設定する磁界設定工程と、
前記鋼板の結晶粒に対して設定される結晶座標系において、複数の磁化容易軸のうち前記磁界設定工程により設定された磁界の方向に最も近い軸として当該磁界の方向の方向余弦が最も大きい軸を磁化容易軸として導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、当該鋼板の結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸導出工程と、
磁束密度計算工程と、をコンピュータに実行させ、
前記磁束密度計算工程は、
前記磁界設定工程により設定された磁界の、前記磁化容易軸方向の成分を導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁界成分導出工程と、
前記磁界成分導出工程により導出された、磁界の前記磁化容易軸方向の成分に対応する、前記磁化容易軸方向における磁束密度を、前記B−H曲線から導出することを、前記結晶粒情報取得工程により取得された結晶粒情報に基づいて、前記鋼板における結晶粒のそれぞれについて行う磁化容易軸方向磁束密度導出工程と、
前記磁化容易軸方向磁束密度導出工程により導出された、前記結晶粒のそれぞれにおける、前記磁化容易軸方向における磁束密度に基づいて、前記鋼板における、前記磁界設定工程により設定された磁界の方向の磁束密度を導出する磁界方向磁束密度導出工程と、を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
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