JP5899726B2 - 地磁気測定装置、地磁気測定方法、及び地磁気測定プログラム - Google Patents
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Description
一方、地磁気は、磁極北に向かう水平成分と伏角方向の鉛直成分とを有する磁界であり、地面に対して一定の方向と一定の大きさとを有する一様な磁界である。従って、地面に対して機器の姿勢を変化させる場合には、機器から見た地磁気の方向も変化することになる。すなわち、機器に搭載された3次元磁気センサから見た場合、地磁気は、機器の姿勢の変化に伴い向きを変化させる一定の大きさのベクトルとして表される。
3次元磁気センサを上下左右方向に回転させて3次元的に大きく姿勢変化させつつ複数の磁気データを取得した場合、3次元磁気センサが順次出力する複数のベクトルデータの示す複数の座標は、内部磁界を表すベクトルの示す座標を中心点とし、地磁気を表すベクトルの大きさを半径とする球面近傍に分布する。
ソフトアイアン効果が生じている場合、楕円面近傍に存在する座標に基づいて、地磁気の正確な向きを算出することはできない。地磁気の正確な向きを算出するためには、楕円面上の座標を、球面上の座標へと移動させる座標変換、すなわち、楕円面の中心点を起点として楕円面の主軸方向に伸縮するように移動させる座標変換を行う必要がある。このような、楕円面上の座標を球面上の座標へ変換する処理を、楕円補正と呼ぶ。楕円補正を行うことで算出される座標変換後の座標から、球面の中心点の示す座標を減算することにより、地磁気の向きを算出することができる。
しかし、非特許文献1のように、参照磁界を用いて地磁気の向きを算出する方法は、3次元磁気センサの搭載された機器の周囲に参照磁界を発生させる環境を必要とするため、携帯機器や移動体に適用することはできない。
変数行列は、3次元のベクトルを座標変換するために用いられる3行3列の対称行列である。一般的に、3行3列の対称行列は、互いに直交する3つの固有ベクトルと、3つの固有ベクトルに対応する3つの固有値とを有する。そして、3軸のベクトルを対称行列により変換する場合、変換後のベクトルは、変換前のベクトルを対称行列の有する3つの固有ベクトル方向に各固有ベクトルに対応する固有値倍伸縮させたベクトルと等しくなる。
最適楕円面補正行列は、楕円面最適化関数が最小化されたときの変数行列であるため、3行3列の対称行列である。よって、3軸のベクトルを最適楕円面補正行列により変換する場合、変換後のベクトルは、変換前のベクトルを最適楕円面補正行列の有する3つの固有ベクトル方向に固有値倍伸縮させたベクトルと等しくなる。つまり、最適楕円面補正行列は、最適楕円面補正行列の各固有ベクトルと同一の方向の主軸を有する楕円面上の座標を、当該楕円面の3つの主軸方向に各々伸縮させることで、球面上の座標へと変換する座標変換を表す行列である。このような最適楕円面補正行列を用いてベクトルを変換する場合、楕円面の各主軸方向にベクトルを伸縮させる変換のみが行われ、ベクトルを回転させる変換が行われることはない。従って、楕円補正に最適楕円面補正行列を用いることで、正確な地磁気の方向を算出することが可能となる。
楕円面最適化関数を最小化する場合、変数行列により変換された変換後データの示す座標と球面との誤差は最小化される。最適楕円面補正行列は、楕円面最適化関数が最小化されたときの変数行列であるため、最適楕円面補正行列は、複数の磁気データの示す座標を、球面との誤差が最小となる複数の座標へと座標変換する行列を表す。
前述の通り、最適楕円面補正行列は、楕円面上の座標を球面上の座標へと座標変換する行列でもあるため、複数の変換後の座標と球面との誤差が最小となる場合には、複数の変換前の座標と楕円面との誤差も最小となる。つまり、最適楕円面補正行列によって、複数の磁気データの示す座標との誤差が最小となる楕円面(つまり、複数の磁気データの示す座標の分布形状を最も正確に表現する楕円面)を特定することができる。そして、最適楕円面補正行列によって特定される楕円面の中心点(最適中心点)の座標を示すベクトルが、3次元磁気センサのオフセットを正確に表すベクトルとなる。このような、複数の磁気データの示す座標の分布形状を正確に捉えた楕円面を表現する、最適楕円面補正行列及び最適中心点を用いて楕円補正を行うことにより、正確な地磁気の向きを算出することができる。
歪判定部の判定結果が肯定である場合、すなわち、歪評価値が歪許容値以下の値を示す場合、立体の形状と歪判定用球面の形状とは一致すると看做すことができる。この場合、複数の磁気データの示す座標を近傍に有するように、中心点算出用球面を定めることができるため、中心点算出部において算出される中心点算出用球面の中心点の座標を示すベクトルを、オフセットとして採用することができる。また、この場合、複数の磁気データの示す座標の分布形状は楕円面ではないため、ソフトアイアン効果は生じていない。従って、地磁気測定装置は、最適楕円面補正行列、及び最適中心点の座標を用いなくとも、正確な地磁気の向きを算出することができる。
このように、本発明に係る地磁気測定装置は、歪判定部を備えることで、ソフトアイアン効果の有無を判定することができ、ソフトアイアン効果が生じていない場合には、最適楕円面補正行列、及び最適中心点の座標を算出することなく、簡易な計算により地磁気の向きを算出することが可能となり、計算負荷低減という利点を有する。
この場合、複数の磁気データの示す座標は、球面近傍及び楕円面近傍には分布しない。従って、この場合、複数の磁気データの示す座標が球面または楕円面近傍に分布すると仮定して算出される球面または楕円面の中心点の座標を示すベクトルを、オフセットとして採用することはできない。
歪判定部の判定結果が肯定である場合、複数の変換後磁気データの示す座標は球面近傍に分布するため、複数の磁気データの示す座標は楕円面近傍に分布する。つまり、複数の入力座標として複数の変換後磁気データの示す座標を適用したときの歪判定部の判定結果が肯定である場合とは、不均一な外部磁界が存在せず、且つ、ソフトアイアン効果が生じている場合を表す。この場合、地磁気測定装置は、変換後磁気データ及び最適中心点の示す座標に基づいて、正確な地磁気の向きを算出することができる。
一方、歪判定部の判定結果が否定である場合、複数の変換後磁気データの示す座標は球面とは異なる歪んだ形状の立体の表面近傍に分布するため、複数の磁気データの示す座標は球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状の立体の表面近傍に分布する。つまり、複数の入力座標として複数の変換後磁気データの示す座標を適用したときの歪判定部の判定結果が否定である場合とは、不均一な外部磁界が存在し、正確なオフセットを算出することができないことを表す。この場合、地磁気測定装置は、オフセットが算出されることを防止する。
そして、複数の磁気データの示す座標が、球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状の立体近傍に分布すると判定した場合、地磁気測定装置は、オフセットの算出を防止する。すなわち、本発明に係る地磁気測定装置は、不均一な外部磁界の影響を受けた複数の磁気データに基づいて不正確なオフセットが算出されることを、防止することができる。
一方、本発明に係る地磁気測定装置は、複数の磁気データの示す座標の分布形状が楕円面であると判定した場合、すなわち、不均一な外部磁界が存在せず、且つ、ソフトアイアン効果が生じていると判定した場合、楕円面の中心点を示す座標をオフセットとして採用することにより、正確な地磁気の向きを算出することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態では、3次元磁気センサが検出する磁界として、検出対象である地磁気の他に、3次元磁気センサが搭載される機器に備えられる部品が発する磁界である内部磁界、及び部品の備える軟磁性材料が機器外部からの磁界により磁化される結果生じる着磁磁界の存在を想定する。
以下、図1乃至図5を用いて、本実施形態において想定するこれら3種類の磁界の概要、及び、これらの磁界を3次元磁気センサが検出した場合に3次元磁気センサから出力されるベクトルデータについて説明する。
内部磁界Biは、機器1に備えられた部品2の発する磁界であり、機器1から見て一定の向き及び一定の大きさを有する磁界である。すなわち、機器1の姿勢がどのように変化しても、内部磁界Biは、3次元磁気センサ60によって、一定の向き及び大きさを有する磁界として検知される。
着磁磁界Bmは、機器1の外部の物体から発せられる磁界(すなわち、地磁気Bg)の影響により軟磁性材料21が磁化される結果、軟磁性材料21が発する磁界である。従って、着磁磁界Bmは、地磁気Bgの向き及び大きさや、軟磁性材料21の材質、大きさ、形状等に依存して、向き及び大きさを変化させる磁界である。
地上座標系ΣGは、地上に固定された座標系であり、地上の任意の一点を原点とし、互いに直交する3つの方向、例えば、東、北、及び鉛直上向きを、それぞれx軸、y軸、及びz軸とする座標系である。
センサ座標系ΣSは3次元磁気センサ60に固定された座標系であり、3次元磁気センサ60の有する3つの各々のセンサモジュールの出力する値を、それぞれ、x軸(第1軸)、y軸(第2軸)、z軸(第3軸)上にプロットするように設けられた座標系である。すなわち、3次元磁気センサ60が出力する磁気データは、センサ座標系ΣSのベクトルデータとして表現される。なお、図1に示す姿勢μは、地上座標系ΣGにおけるセンサ座標系ΣSの各軸の向き(すなわち、地上座標系ΣGにおける、3次元磁気センサ60の向き)を表す。
以下において、姿勢μを変化させた場合、地上座標系ΣG及びセンサ座標系ΣSの各々において、内部磁界Bi及び着磁磁界Bmの向きがどのように変化するかについて説明する。
図2は、内部磁界Bi及び地磁気Bgの向き及び大きさを、地上座標系ΣGにおいて表した図である。機器1の姿勢μが、姿勢μ1から姿勢μ2に変化した場合、内部磁界GBiは、大きさは一定であるが、向きは姿勢μの変化に伴い変化する。一方、地磁気GBgの向き及び大きさは一定である。
従って、磁気データqiの示す座標から内部磁界SBiを引き算することにより、センサ座標系ΣSにおける地磁気SBgの向き及び大きさを算出することが可能となる。
このように、検出対象である地磁気Bgの正確な向きを得るために、磁気データqiの示す座標から、3次元磁気センサ60の出力する内部磁界Biを表す球面SGの中心点cOGの示す座標を減算する処理を、補正処理と呼ぶ。
また、補正処理において磁気データqiから取り除かれるベクトルをオフセットcOFFと呼ぶ。すなわち、オフセットcOFFは、内部磁界を表すベクトルSBiであり、センサ座標系ΣSにおいて、原点から球面SGの中心点cOGを示すベクトルとして表される。
3次元磁気センサ60が検出する着磁磁界GBm(μ)の向き及び大きさは、姿勢μと、センサ座標系ΣSにおける軟磁性材料21の位置SPmとに依存する。例えば、図4の場合、3次元磁気センサ60は、着磁磁界GBm(μ1)を、地磁気GBg(μ1)と同じ方向を向いた磁界として測定する。また、3次元磁気センサ60は、着磁磁界GBm(μ2)を、地磁気GBg(μ2)とは逆の方向を向いた磁界として測定する。
なお、軟磁性材料21は、地磁気Bgの他に、部品2が発するセンサ座標系ΣSから見て一定の向き及び大きさの磁界により磁化される。センサ座標系ΣSから見て一定の向き及び大きさの磁界により磁化される結果として軟磁性材料21が発する磁界は、機器1の姿勢μが変化した場合であっても一定の方向及び大きさを有する。このような、軟磁性材料21が磁化された結果発する磁界のうち、姿勢μが変化しても一定の向き及び大きさを有する磁界は、前述した内部磁界Biに包含されるものとする。
磁気データq1は、中心点cOGの示す座標を起点とし、地磁気SBg(μ1)と同じ向きを有する着磁磁界SBm(μ1)と、地磁気SBg(μ1)とを加算したベクトルSBE(μ1)により示される座標である。よって、磁気データq1は球面SGの外側に存在する。一方、磁気データq2は、中心点cOGの示す座標を起点とし、地磁気SBg(μ2)と逆向きの着磁磁界SBm(μ2)と、地磁気SBg(μ2)とを加算したベクトルSBE(μ2)により示される座標である。よって、磁気データq2は球面SGの内側に存在する。
すなわち、磁気データq1及びq2は、球面SGを、ベクトルSBg(μ1)方向に引き延ばし、且つ、ベクトルSBg(μ2)方向に縮めることで得られる楕円面VE上に分布する。
このように、3次元磁気センサが、軟磁性材料を備える機器に組み込まれている場合、軟磁性材料が地磁気等の機器の外部からの磁界により磁化される結果として生じる着磁磁界の影響により、3次元磁気センサの測定する複数の磁気データの示す座標が球面近傍に分布せず、楕円面近傍に分布する。このような、軟磁性材料が磁化された結果生じる磁界の影響により、複数の磁気データの示す座標が楕円面近傍に分布する現象は、ソフトアイアン効果と呼ばれている。
図6は、3次元磁気センサ60の姿勢μをμ1〜μN(Nは精度よくオフセットを導出するために必要な磁気データの規定測定回数を表す9以上の自然数)と変化させつつ磁界を測定した場合に、3次元磁気センサ60が出力するN個の磁気データq1〜qNの示す座標を、センサ座標系ΣSにおいてプロットした図である。図6は、ソフトアイアン効果により、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、中心点cOGを中心とする楕円面VE上に分布する場合を想定している。なお、図6では、3次元磁気センサ60の測定誤差を考慮していないが、測定誤差を考慮する場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、楕円面VE上には分布せず、楕円面VEの近傍に確率的に分布する。つまり、楕円面VEは、複数の磁気データq1〜qNの示す座標との誤差を最小化するようにして定められる楕円面である。
このとき、中心点cOGから磁気データqiの表す座標を示すベクトルSBE(μi)は、地磁気を表すベクトルSBg(μi)のうち、主軸LE1に平行な成分をrE1/rG倍したベクトル、主軸LE2に平行な成分をrE2/rG倍したベクトル、及び主軸LE3に平行な成分をrE3/rG倍したベクトルの和を表すベクトルとなる。
従って、中心点cOGから磁気データqiの表す座標を示すベクトルSBE(μi)の向きと、地磁気を表すベクトルSBg(μi)の向きとは異なる。また、ベクトルSBE(μi)及びベクトルSBE(μj)とのなす角(つまり、2つの磁気データqi及びqjの示す座標を、中心点cOGから見たときのなす角)と、地磁気を表すベクトルSBg(μi)及びベクトルSBg(μj)のなす角とは、異なる。このように、ソフトアイアン効果が生じている場合、磁気データqiの座標から中心点cOGの座標を減算しても、地磁気SBg(μi)の向きを正確に求めることはできない。
このように、地磁気Bgの向きを算出するために、楕円面近傍に分布する複数の磁気データの示す座標を、当該楕円面と同一の中心点を有する半径1の球面近傍に分布する複数の座標へと変換する処理を、楕円補正と呼ぶ。
ここで、楕円面補正行列TEは、以下の式(2)に示される3行3列の対称行列である。また、式(3)に示される3次元の変数ベクトルqは、磁気データqiの座標を表すための変数ベクトルであり、式(4)に示される3次元の変数ベクトルsは、変換後磁気データsiの座標を表すための変数ベクトルであり、式(5)に示される3次元の変数ベクトルcは、中心点cOGの座標(すなわち、オフセットcOFF)を表すための変数ベクトルである。
なお、式(1)において、ベクトル(q−c)は、楕円面VEの中心点cOGをセンサ座標系ΣSの原点に平行移動させて得られる楕円面上の座標を示し、ベクトル(s−c)は、座標系ΣSの原点を中心とする半径1の球面上の座標を示す。
ここで、楕円面補正行列TEの有する3つの固有ベクトルをuT1、uT2、及びuT3とし、対応する固有値をλT1、λT2、及びλT3(但し、λT1≧λT2≧λT3>0)とする。このとき、固有ベクトルuT1は、主軸LE1と平行となり、固有ベクトルuT2は、主軸LE2と平行となり、固有ベクトルuT3は、主軸LE3と平行となるように定められる。また、固有値λT1は、主軸LE1の長さrE1の逆数に等しくなり、固有値λT2は、主軸LE2の長さrE2の逆数に等しくなり、固有値λT3は、主軸LE3の長さrE3の逆数に等しくなるように定められる。すなわち、楕円面補正行列TEは、任意のベクトルに対して、固有ベクトルuT1方向の成分を固有値λT1倍に伸縮し、固有ベクトルuT2方向の成分を固有値λT2倍に伸縮し、固有ベクトルuT3方向の成分を固有値λT3倍に伸縮する行列である。
なお、楕円面補正行列TEの有する3つの固有値をλT1、λT2、及びλT3は、いずれも正の値であり、楕円面補正行列TEは、正定値行列である。
しかし、ずれ角ψは、軟磁性材料21と3次元磁気センサ60との相互位置関係(すなわち、ベクトルSPmの向き及び大きさ)に依存する値である。従って、ベクトルSPmよりずれ角ψを特定することが可能であり、特定されたずれ角ψと、複数の変換後磁気データsiとから、正確な地磁気Bgの向きを算出することが可能である。また、軟磁性材料21の配置を工夫することにより、ずれ角ψを小さく抑えることも可能である。
図8は、本発明の第1実施形態に係る機器1の構成を示すブロック図である。
機器1は、各種の構成要素とバスを介して接続され装置全体を制御するCPU10、CPU10の作業領域として機能するRAM20、各種プログラムやデータを記憶したROM30、通信を実行する通信部40、画像を表示する表示部50、及び磁気を検出して磁気データを出力する3次元磁気センサ60を備える。
表示部50は、CPU10が磁気データ処理プログラム70を実行することにより算出した地磁気の向きを、方位情報として矢印等により表示する。なお、磁気データ処理プログラム70は、地図アプリケーション等との連携を想定するものであってもよく、表示部50は、地磁気の向きを示す方位情報である矢印等を地図上に表示してもよい。
楕円面初期補正値生成部300は、蓄積部100に蓄積された複数の磁気データq1〜qNに基づいて初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0の座標を算出する。ここで、初期中心点cE0とは、蓄積部100に蓄積された複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する初期楕円面VE0の中心点である。また、初期楕円面補正行列T0とは、初期楕円面VE0上の座標を、初期中心点cE0を中心とする球面SE0上の座標へと変換するための3行3列の対称行列である。
複数の磁気データq1〜qNの示す座標と最適楕円面VEOPとの誤差が最小化され「0」となる場合、楕円面VEと最適楕円面VEOPとは一致し、最適中心点cEOPと中心点cOG(すなわち、内部磁界Biの示す座標)とは一致する。
具体的には、地磁気算出部600は、オフセット採用部610と、地磁気ベクトル計算部620とを備える。オフセット採用部610は、楕円面補正行列TEとして最適楕円面補正行列TOPを採用するとともに、オフセットcOFFとして最適中心点cEOPの座標を示すベクトルを採用する。また、地磁気ベクトル計算部620は、3次元磁気センサ60から出力される磁気データqiに対して、楕円面補正行列TE及びオフセットcOFFを用いた楕円補正を行い、地磁気SBgの向きを算出する。
以下において、楕円面初期補正値生成部300、楕円面最適補正値生成部400、及び、地磁気算出部600の詳細について、述べる。
図10は、楕円面初期補正値生成部300の機能構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態では、複数の磁気データq1〜qNに基づいて初期楕円面VE0を算出する際に、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzを生成し、これら3つの楕円面に基づいて初期楕円面VE0を生成する。
以下、本実施形態における初期楕円面VE0の生成方法について具体的に説明する。
以下において、第1楕円面係数行列Dxx、第2楕円面係数行列Dyy、及び第3楕円面係数行列Dzzと、中心点cxxの座標、中心点cyyの座標、及び中心点czzの座標の算出方法について述べる。
但し、ベクトルθXXは、式(9)に示すように、式(7)の9つの係数を並べた9次元のベクトルである。また、行列Rxxは、式(10)に示すように、式(13)に示す9次元のベクトルQxxに対して、式(11)に示す複数の磁気データq1〜qNの示す座標の各々を代入して得られるN個のベクトルを転置したうえで各行に並べたN行9列の行列である。ベクトルWxxは、式(12)に示すように、複数の磁気データq1〜qNの示す座標のうち、x成分の2乗値にマイナスを掛けた値を各成分に有する、N次元のベクトルである。
しかし、3次元磁気センサ60の測定誤差等を考慮すると、複数の磁気データq1〜qNの示す各々の座標の全てが、式(7)に示す楕円面上に正確に一致する位置に存在することはない。従って、式(8)は解を有さず、式(8)の解としてベクトルθXXを算出することはできない。そこで、本実施形態では、式(8)の解として尤もらしいベクトルθXXを、統計的手法を用いることにより算出する。
例えば、式(7)の右辺に現れる8つの項(xy、xz、y2、yz、z2、x、y、及びz)をそれぞれ独立変数と看做し、式(7)の左辺に現れるx2を従属変数と看做したうえで、最小二乗法を用いて式(14)に示す正規方程式を導出し、その解として、ベクトルθXXを求める。この正規方程式の解として表されるベクトルθXXは、行列(Rxx TRxx)が正則なときに、式(15)で表すことができる。式(15)により算出されたベクトルθXXを係数として式(7)に適用することにより表される楕円面を、第1楕円面Vxxと呼ぶ。
初期楕円面係数行列判定部321は、第1楕円面係数行列Dxx、第2楕円面係数行列Dyy、及び第3楕円面係数行列Dzzの全てが正定値であるという条件(第1の条件)が満たされるか否かを判定する。また、初期楕円面中心点判定部322は、式(39)に示すように中心点cxxと中心点cyyとの距離が第1閾値Δc以下であり、且つ、式(40)に示すように中心点cyyと中心点czzとの距離が第1閾値Δc以下であり、且つ、式(41)に示すように中心点czzと中心点cxxとの距離が第1閾値Δc以下であるという条件(第2の条件)が満たされるか否かを判定する。
第1の条件に係る判定結果が肯定であり、且つ、第2の条件に係る判定結果が肯定である場合、初期楕円面判定部320は、第1楕円面係数行列Dxx、第2楕円面係数行列Dyy、第3楕円面係数行列Dzz、中心点cxxの座標、中心点cyyの座標、及び中心点czzの座標を出力する。
一方、第1の条件または第2の条件の判定結果が否定である場合、地磁気測定装置は、処理を中断する。
例えば、初期楕円面判定部320は、初期楕円面係数行列判定部321を備えずに構成されてもよい。この場合、初期楕円面判定部320は、第1の条件についての判定を行わず、第2の条件についての判定のみを行い、判定結果が肯定である場合に、第1楕円面係数行列Dxx、第2楕円面係数行列Dyy、第3楕円面係数行列Dzz、中心点cxxの座標、中心点cyyの座標、及び中心点czzの座標を出力してもよい。
ここで、初期楕円面補正行列T0とは、図12に示すように、初期中心点cE0を中心点とする初期楕円面VE0上の座標を、初期中心点cE0を中心点とする球面SE0上の座標へと変換する行列である。初期楕円面VE0は、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び、第3楕円面Vzzのうち、少なくとも1つの楕円面に基づいて定められる楕円面であり、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を表面近傍に有する楕円面である。
初期楕円面補正行列T0は、第1楕円面係数行列Dxx、第2楕円面係数行列Dyy、及び第3楕円面係数行列Dzzのうち、少なくとも1つに基づいて算出される。また、初期中心点cE0の座標は、中心点cxx、中心点cyy、及び中心点czzのうち、少なくとも1つに基づいて算出される。
前述した第2の条件を満たす場合、中心点cxx、中心点cyy、及び中心点czzのうち、任意の2点間の距離は、第1閾値Δcよりも近い。従って、第1閾値Δcの値を十分に小さくした場合、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzは、いずれも複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有し、いずれの中心点も同一の座標と看做すことができるため、これら3つの楕円面は(厳密には異なる形状を有するものの)実質的に同一の楕円面と看做すことができる。この場合、初期楕円面VE0として、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのいずれを採用してもよい。
本実施形態では、初期楕円面VE0として、第1楕円面Vxxを採用する。このとき、初期楕円面補正行列T0及び、初期中心点cE0の座標は、以下に示す式(52)及び式(53)により表される。
初期補正値生成部330は、以上のように、初期楕円面補正行列T0と初期中心点cE0の座標とを生成し、これらを出力する。
また、本実施形態では、初期楕円面VE0として、第1楕円面Vxxを採用するが、本発明はこのような形態に限定するものではない。例えば、初期楕円面VE0として、第2楕円面Vyyを採用してもよい。このとき、初期楕円面補正行列T0は式(54)により表され、初期中心点cE0には中心点cyyが採用される。また、初期楕円面VE0として第3楕円面Vzzを採用してもよい。この場合、初期楕円面補正行列T0は式(55)により表され、初期中心点cE0には中心点czzが採用される。
具体的には、まず、式(6)に示す楕円面方程式を、x2の項、y2の項、またはz2の項の何れか1つの項で割り算をすることにより、楕円面方程式と等価な、以下の式(59)に示す連立一次方程式に変形する。次に、最小二乗法を用いて、式(59)から、以下の式(60)に示す正規方程式を算出する。行列(RTR)が正則なときには、楕円面の形状を示すベクトルθは、式(60)に示す正規方程式の解として、以下の式(61)により算出される。式(61)により算出されるベクトルθと、式(43)、式(44)、及び(50)とを用いて、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0を算出する。
なお、例えば、式(6)に示す楕円面方程式を、z2の項により割り算することで、式(59)に示す連立一次方程式を算出する場合、ベクトルθは、以下の式(62)に示す9次元のベクトルであり、行列Rは、以下の式(63)に示す9次元のベクトルQに対して式(11)に示す複数の磁気データq1〜qNの示す座標を代入して得たベクトルを転置して各行に並べて生成される以下の式(64)に示すN行9列の行列であり、ベクトルWは、以下の式(65)に示す9次元のベクトルである。
この場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布形状が同一であっても、選択される評価軸が相違すれば、算出される楕円面の形状は異なる。しかし、対比例は、1つの楕円面のみを算出するため、仮に2つ以上の評価軸を用いて2つ以上の楕円面を算出したならば把握できるはずの複数の楕円面の形状の相違について、把握することができない。例えば、2つ以上の楕円面が算出されることを前提とする、第2の条件を用いた判定を行うことができない。
従って、図13に示す例のように、本実施形態に係る方法により、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち、少なくとも2つの楕円面を算出していたならば、第2の条件についての判定結果が否定となるような場合であっても、対比例によれば初期楕円面補正行列T0が算出されることになる。
このように、対比例は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状から楕円面の形状を特定することが困難な場合であっても、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布形状を正確に表さない不適切な初期楕円面VE0に基づいた初期楕円面補正行列T0を生成する。
さらに、楕円面初期補正値生成部300は、第1の条件及び第2の条件を用いて、算出された3つの異なる楕円面が、互いに近い形状を有することを判定する。つまり、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状が楕円面の形状とは大きく異なる形状であり、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち1つ以上が楕円面とは異なる形状となる場合、第1の条件は満たされない。また、図13に示す例のように、算出された3つの楕円面各々の中心点の相互間距離が離れている場合には、第2の条件は満たされない。
このように、楕円面初期補正値生成部300は、初期楕円面補正行列T0を生成する際に、3つの異なる楕円面を生成したうえで、第1の条件及び第2の条件が満たされているか否かを判定するため、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状から、楕円面の形状を特定することが困難な場合に、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状とは異なる不正確な初期楕円面VE0に基づいた、不適切な初期楕円面補正行列T0が生成されることを防止する。
初期楕円面補正行列T0は、式(66)に示すように、初期中心点cE0を起点として磁気データqiの示す座標を終点とするベクトル(qi−cEO)を、初期楕円面VE0の3つの主軸方向に伸縮させることで、初期中心点cE0を起点として変換後磁気データs0iの示す座標を終点とするベクトル(s0i−cEO)に変換する行列である。磁気データqiの示す座標が、初期楕円面VE0上に存在する場合には、変換後磁気データs0iの示す座標は、初期中心点cE0を中心とする球面SE0上に位置する。
図12に示すように、初期楕円面VE0は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有するように定められる楕円面であるが、複数の磁気データq1〜qNの示す座標との誤差を最小化するように定められた楕円面ではない。従って、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、初期楕円面VE0との間の誤差が大きい場合、初期楕円面VE0の中心点である初期中心点cE0の示す座標と、地磁気Bgを表す球面SGの中心点cOGの示す座標との間の誤差も大きくなる。この場合、磁気データqiの示す座標を初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0により楕円補正した変換後磁気データs0iと、初期中心点cE0とに基づいて、地磁気Bgの正確な向きを算出することはできない。
最適楕円面VEOPは、複数の磁気データq1〜qNの示す座標との誤差を最小化する楕円面であるため、楕円面VEと、最適楕円面VEOPとは、同一の図形と看做すことができる。よって、最適中心点cEOPの示す座標と中心点cOGの示す座標(オフセットcOFF)との誤差は、初期中心点cE0の示す座標と中心点cOGの示す座標との誤差に比べて小さく、最適中心点cEOPと中心点cOGとは、同一の座標を示すと看做すことができる。このような、最適楕円面補正行列TOPと、最適中心点cEOPとに基づいて、磁気データqiの示す座標を楕円補正することにより、正確な地磁気Bgの向きを得ることができる。
ここで、楕円面最適化関数fEL(T,c)は、以下の式(69)に示す3行3列の対称行列である変数行列Tの各成分と、式(5)に示した変数ベクトルcの各要素とを変数とする関数であり、以下の式(70)として表すことができる。変数行列T及び変数ベクトルcの初期値には、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0が適用される。
つまり、楕円面最適化関数fEL(T,c)は、複数の第2変数ベクトルT(qi−c)を、変数ベクトルcの示す座標が起点となるように配置した場合、複数の第2変数ベクトルの各々が示す座標と、変数ベクトルcの示す座標を中心とする半径1の球面との誤差を表す。このとき、複数の第2変数ベクトルT(qi−c)の示す複数の座標を表すデータを、複数の変換後データsX1〜sXNと呼ぶ。楕円面最適化関数fEL(T,c)の値を最小化することにより、複数の変換後データsX1〜sXNの示す座標と、変数ベクトルcの示す座標を中心とする半径1の球面との誤差を最小化することができ、このときの複数の変換後データsX1〜sXNは、複数の変換後磁気データs1〜sNを表す。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、第2変数ベクトルT(qi−c)を、変数ベクトルcの示す座標を起点として配置しているが、第2変数ベクトルT(qi−c)を、センサ座標系ΣSの原点が起点となるように配置しても構わない。すなわち、式(68)は、第2変数ベクトルT(qi−c)をセンサ座標系ΣSの原点が起点となるように配置した場合、第2変数ベクトルT(qi−c)の示す座標と、センサ座標系ΣSの原点を中心とする半径1の球面との誤差を表す。また、この場合、複数の変換後磁気データs1〜sNは、原点を中心とする半径1の球面近傍に分布する。
ニュートン法、最急降下法等の、非線形最適化演算は、非線形関数の示す値を最適化(最小化または最大化)するように、非線形関数の変数の値を逐次更新する。そして、非線形最適化演算は、非線形関数の値及び変数の値が予め規定された停止規準を満たしたときに、変数の値の更新を停止し、このときの変数の値を最適解として採用する。
なお、非線形最適化演算の停止規準としては、公知の基準を適宜適用すればよい。例えば、アルミホの規準(Armijo’s rule)を適用してもよい。
本実施形態は、初期楕円面VE0に基づいて、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0を算出し、これらの値を非線形最適化演算の初期値として適用する。複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有するように定められた初期楕円面VE0は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標との誤差を最小化する楕円面VEと近い形状を有する。従って、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0の示す座標は、大局的最適解として算出されるべき値である楕円面補正行列TE及び中心点cOGの示す座標に近い値である(図7及び図12参照)。このような初期値を用いた非線形最適化演算を行うことにより算出される最適楕円面補正行列TOP及び最適中心点cEOPの示す座標は、局所的最適解ではなく、大局的最適解(厳密には、大局的最適解の近似値)となる。このように、本実施形態の非線形最適化演算は、大局的最適解に近い値の適切な初期値が設定されるため、局所的最適解に陥ることなく、大局的最適解を最適解として算出することができる。
しかし、対称行列に限定されない変数行列TRは、任意のベクトルを変数行列TRの3つの固有ベクトル方向に各々伸縮させる座標変換に加え、任意のベクトルの向きを回転させる座標変換を表す場合がある。そのため、第1変数ベクトル(qi−c)を変数行列TRにより変換することで得られるベクトルTR(qi−c)は、第2磁気ベクトルT(qi−c)を任意角度回転させたベクトルとして算出される場合がある。すなわち、図14に示すように、変数行列TRを用いて算出される変換後磁気データROsiの示す座標は、変数行列Tを用いて算出される変換後磁気データsiの示す座標を、球面SEOP上で任意角度回転させた座標として算出される。
この場合、変数行列TRを用いて算出される変換後磁気データROsiの示す座標に基づいて、地磁気Bgの向きを算出することは困難である。
従って、実対称行列である変数行列Tを用いる非線形最適化演算は、最適楕円面補正行列TOPを、任意のベクトルを最適楕円面補正行列TOPの各固有ベクトル方向に各々伸縮させる座標変換を表す行列として算出するため、最適楕円面補正行列TOPは、回転を伴う座標変換は行わない。このような最適楕円面補正行列TOPにより、磁気データqiの示す座標を、変換後磁気データsiの示す座標へと変換することにより、地磁気Bgの正確な向きを得ることができる。
また、変数行列TRは3行3列の行列で9個の独立した成分を有し、楕円面最適化関数fEL(TR,c)の変数は12個となるのに対して、本実施形態に係る変数行列Tは対称行列であるため6個の独立した成分を有し、楕円面最適化関数fEL(T,c)の変数は9個である。従って、本実施形態に係る非線形最適化演算は、変数行列TRを用いる非線形最適化演算に比べて変数の数が少なく、計算負荷が低減される。
楕円面最適補正値生成部400が出力した最適楕円面補正行列TOP及び最適中心点cEOPは、蓄積部100に格納される。
前述の通り、地磁気算出部600は、オフセット採用部610と、地磁気ベクトル計算部620とを備え、3次元磁気センサ60から出力される磁気データqiの示す座標に対して、楕円補正を施すことにより、地磁気SBgの向きを算出する(図9参照)。以下において、地磁気算出部600の動作を説明する。
まず、オフセット採用部610は、楕円面補正行列TEとして最適楕円面補正行列TOPを採用するとともに、オフセットcOFFとして最適中心点cEOPの座標を示すベクトルを採用する。これにより、本実施形態に係る地磁気測定装置は、楕円補正を表す式(1)を式(67)に変形し、式(67)に基づいた楕円補正を行うことが可能となる。
次に、地磁気ベクトル計算部620は、式(67)に基づいて楕円補正を行い、地磁気Bgの向きを算出する。具体的には、地磁気ベクトル計算部620は、オフセットcOFFである最適中心点cEOPの座標を起点とし、磁気データqiの示す座標を終点とする第1磁気ベクトル(qi−cEOP)を、楕円面補正行列TEである最適楕円面補正行列TOPにより変換し、第2磁気ベクトル(si−cEOP)を算出する。このとき、第2磁気ベクトル(si−cEOP)は、ずれ角ψを考慮しなければ、地磁気Bgと同じ向きを向く。地磁気ベクトル計算部620は、必要な場合にはずれ角ψを考慮して(図7、及び段落0050参照)、第2磁気ベクトル(si−cEOP)から、地磁気Bgの向きを算出する。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、第2磁気ベクトル(si−cEOP)を、最適中心点cEOPの示す座標を起点として配置しているが(図7参照)、第2磁気ベクトル(si−cEOP)を、センサ座標系ΣSの原点を起点として配置しても構わない。この場合、球面SEOPは、センサ座標系ΣSの原点を中心とする半径1の球面を表し、変換後磁気データsiは原点を中心とする半径1の球面近傍に分布する。
以上に説明した第1実施形態では、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、楕円面近傍に分布すると仮定して、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する楕円面を特定し、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を、当該楕円面と同一の中心点を有する球面近傍に座標変換する楕円補正を行った。
これにより、3次元磁気センサ60を搭載する機器が軟磁性材料を備え、ソフトアイアン効果が生じている場合に、複数の磁気データq1〜qNに基づいて、地磁気Bgの正確な方向を算出することができる。
第1実施形態では、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が楕円面近傍に分布しているものと看做して楕円補正を行う。この楕円補正に用いる楕円面の3つの主軸は、直交関係を保ちつつ任意の方向を向くことができるため、第1実施形態に係る楕円補正は、楕円面の主軸とセンサ座標系ΣSの3軸の方向が一致する場合についても、適用することが可能である。
従って、第1実施形態の楕円補正は、センサ感度のバラつきが原因で複数の磁気データq1〜qNの示す座標が楕円面近傍に分布する場合、つまり、楕円面の主軸とセンサ座標系ΣSの3軸の方向が一致する場合であっても、地磁気Bgの正確な向きを算出することができる。
これにより、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状から、楕円面の形状を特定することが困難な場合に、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状とは異なる不正確な初期楕円面VE0に基づいた、不適切な初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0の座標が生成されることを防止することが可能となり、不正確な値がオフセットとして採用されることを防止することが可能となった。
非線形最適化は、初期値に、大局的最適解に近い値を採用することで、局所的最適解が最適解として算出される可能性を低減させ、大局的最適解が最適解として算出される可能性を高める。従って、本実施形態に係る非線形最適化演算は、局所的最適解が最適解として算出される可能性を低減し、不適切な最適楕円面補正行列TOPを用いた楕円補正による不正確な地磁気Bgの向きが算出される可能性を低減した。
すなわち、最適楕円面VEOP近傍に位置する磁気データqiの示す座標を楕円補正することで算出される変換後磁気データsiの示す座標は、最適中心点cEOPから見て、地磁気Bgと同じ方向を向く座標として求められるため、変換後磁気データsiに基づいて、正確な地磁気Bgの向きを算出することができる。
以下、第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、3次元磁気センサ60が測定する対象の磁界を、地磁気Bg、内部磁界Bi、及び着磁磁界Bmに限定し、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が楕円面近傍に分布する場合を想定した。
しかし、機器1の外部に磁界を生じる物体が存在する場合、物体の発する外部磁界Bxの影響により、複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、楕円面とは異なる形状に分布することがある。この場合には、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が楕円面近傍に分布すると仮定して算出された楕円面の中心点の示す座標は、3次元磁気センサ60のオフセットを示す座標とは一致しない可能性が高く、楕円面の中心点の示す座標をオフセットとして補正を行っても正確な地磁気Bgの向きを求めることはできない。
また、機器1が軟磁性材料21を備えない場合、ソフトアイアン効果は生じないため、複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、図3に示したように球面近傍に分布し、楕円面近傍には分布しない。この場合、楕円補正を行わなくても、正確な地磁気Bgの向きを求めることができる。
第2実施形態は、機器1の外部の物体の発する外部磁界Bxが存在する場合、及び、機器1が軟磁性材料21を備えず着磁磁界Bmが存在しない場合に対応した地磁気測定装置を実現することを目的とする。
分布判定部700は、センサ座標系ΣSにおいて、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布が、3次元的な広がりを有しているか否かを判定し、判定結果を出力する。
中心点算出部800は、センサ座標系ΣSにおいて、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する球面Sの中心点cSの示す座標を算出する。図3において説明したように、3次元磁気センサ60が測定する磁界が、地磁気Bg及び内部磁界Biである場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、球面SGの近傍に分布するため、球面Sと球面SGとは一致すると看做すことができ、球面Sの中心点cSの示す座標が、オフセットcOFFを表す。
第2実施形態に係る地磁気測定装置は、中心点算出部800を備えることで、着磁磁界Bmが存在せず、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が球面近傍に分布する場合に、簡易な方法により、3次元磁気センサ60のオフセットcOFFを算出することが可能となる。
外部磁界Bxが存在し、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が球面または楕円面とは異なる歪んだ形状の立体近傍に分布する場合、3次元磁気センサ60のオフセットcOFFの正確な値を算出することは、困難である。
第2実施形態に係る地磁気測定装置は、歪判定部900を備えることで、外部磁界Bxの影響が大きく、オフセットcOFFの算出が困難な場合に、不正確なオフセットcOFFが算出されることを防止し、不正確なオフセットを用いた補正処理により不正確な地磁気Bgが算出されることを防止する。
そして、オフセット採用部610aは、オフセットcOFFとして中心点cSの座標を示すベクトルを採用する場合、楕円面補正行列TEとして3行3列の単位行列Iを採用する。このとき、地磁気ベクトル計算部620は、オフセットcOFFである中心点cSの示す座標と、楕円面補正行列TEである単位行列Iとを用いて、式(1)に基づいた楕円補正を行い、地磁気Bgの向きを算出する。具体的には、楕円面補正行列TEは単位行列Iであるため、地磁気ベクトル計算部620は、ベクトル(qi−cS)を、地磁気SBgの向きを表すベクトルとして算出する。なお、単位行列Iを用いる楕円補正とは、式(1)からも明らかなとおり、単に、磁気データqiの示す座標からオフセットcOFFを減算する演算に過ぎず、実質的には楕円補正を行わないことを意味する。従って、楕円面補正行列TEとして単位行列Iが採用された場合、地磁気ベクトル計算部620は、式(1)に基づいた演算を行わず、単純に、磁気データqiの示す座標からオフセットcOFFとして採用された中心点cSの座標を減算する処理を行ってもよい。
一方、オフセット採用部610aは、オフセットcOFFとして最適中心点cEOPの座標を示すベクトルを採用する場合、楕円面補正行列TEとして最適楕円面補正行列TOPを採用する。このとき、地磁気ベクトル計算部620は、オフセットcOFFである最適中心点cEOPの示す座標と、楕円面補正行列TEである最適楕円面補正行列TOPとを用いて、式(1)に基づいた楕円補正を行い、地磁気Bgの向きを算出する。具体的には、地磁気ベクトル計算部620は、式(1)を変形した式(67)により、第2磁気ベクトル(si−cEOP)を、地磁気SBgの向きを表すベクトルとして算出する。
第2実施形態に係る地磁気測定装置は、機器1の他に、図16に示す機器1aに適用することができる。ここで、機器1aは、部品2の代わりに、軟磁性材料21を含まない部品2aを備える点を除き、機器1と同様の構成である。すなわち、機器1aは、機器1と異なり、着磁磁界Bmを発しない。
なお、図17では、簡単のために、着磁磁界Bmは存在せず、内部磁界Bi、地磁気Bg、及び外部磁界Bxのみが存在する場合を想定する。
3次元磁気センサ60が、内部磁界Bi、地磁気Bg、及び外部磁界Bxを測定する場合、複数の磁気データq1〜qNの各々の表す座標は、内部磁界を表すベクトルSBi、地磁気を表すベクトルSBg(μ)、及び外部磁界を表すベクトルSBx(μ、Ps)の和を表すベクトルにより示される。従って、複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、中心点cOGを起点とする地磁気を表すベクトルSBg(μ)の終点を表す球面SGと、中心点cOGを起点とする外部磁界を表すベクトルSBx(μ、Ps)の終点を表す曲面SXとを、中心点cOGを起点として重ね合わせた立体SDの表面近傍に分布する。
また、図18(B)に示すように、不均一な外部磁界Bxが大きい場合であっても、立体SDの形状がほぼ球面と看做せる場合がある。例えば、不均一な外部磁界Bxが存在する場合であっても、N個の磁気データq1〜qNを取得する際に、機器1または機器1aの利用者が機器1または機器1aを手で握って3次元磁気センサ60の位置PSが変化するように振るのではなく、3次元磁気センサ60の位置PSを固定して姿勢μのみを変化させる場合には、外部磁界Bxは、センサ座標系ΣSにおいて、姿勢μに基づいてその方向のみを変化させる一定の大きさのベクトルSBx(μ)として表現される。この場合、外部磁界Bxを表す曲面SXの形状は、中心点cOGを中心とする球面となるため、中心点cOGを中心とする球面SGと、中心点cOGを中心とする球面の形状の曲面SXとを、中心点cOGを中心に重ね合わせた立体SDの形状は、中心点cOGを中心とする球面となる。従って、複数の磁気データq1〜qNの示す座標に基づいて、立体SDの表す球面の中心点の座標を算出することにより、球面SGの中心点cOGの示す座標を算出することができる。
すなわち、図15に示すように、楕円面補正部200、楕円面球面変換部500、及び歪判定部900は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状が、球面と看做すことのできる形状、楕円面と看做すことのできる形状、または、球面と看做すことも楕円面と看做すこともできない歪んだ形状、のいずれに該当するかを判断する、歪形状判断部4として機能する。
そして、歪形状判断部4が、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状を、球面と看做すことのできる形状、または、楕円面と看做すことのできる形状であると判断した場合、地磁気測定装置は、オフセットcOFFを算出するが、球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状であると判断した場合、オフセットcOFFを算出しない。
このように、本実施形態に係る地磁気測定装置は、歪形状判断部4を備えることにより、外部磁界Bxの影響による不正確なオフセットが算出されることを防止することが可能になるとともに、外部磁界Bxの影響が無視できる程度に小さい場合には、ソフトアイアン効果が生じている場合及び生じていない場合の双方において正確なオフセットcOFFの算出が可能になる。
図19は、第2実施形態に係る地磁気測定装置が、オフセットを導出する動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、CPU10が、本実施形態に係る磁気データ処理プログラムを実行することにより実施される。
判定結果が肯定である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS4に進める。一方、判定結果が否定である場合、すなわち、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布が2次元的または1次元的である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS1に戻す。
判定結果が肯定である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS10に進める。一方、判定結果が否定である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS6に進める。
なお、前述のとおり、楕円面初期補正値生成部300は、第1の条件についての判定を行わず、第2の条件についてのみ判定を行うものであってもよい。
判定結果が肯定である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS10に進める。一方、判定結果が否定である場合、地磁気測定装置は、処理をステップS1に戻す。
なお、以下では、ステップS5において行われる歪判定処理と、ステップS9において行われる歪判定処理とを区別する場合、前者を第1の歪判定処理と称し、後者を第2の歪判定処理と称する。また、第1の歪判定処理において形状が評価される立体SDと区別するため、第2の歪判定処理において形状が評価される立体を立体SDEと称する。第1の歪判定処理と第2の歪判定処理とは、複数の入力座標の値が異なる以外は、同一の処理である。
オフセット採用処理は、オフセット採用部610aが行う処理である。オフセット採用処理において、オフセット採用部610aは、中心点cSまたは中心点cEOPの示す座標をオフセットcOFFとして採用するとともに、単位行列Iまたは最適楕円面補正行列TOPを楕円面補正行列TEとして採用する。
具体的には、ステップS5における判定結果が肯定である場合、オフセット採用部610aは、ステップS4において中心点算出部800が算出した球面Sの中心点cSの座標を表すベクトルをオフセットcOFFとして採用するとともに、単位行列Iを楕円面補正行列TEとして採用する。一方、ステップS5における判定結果が否定であり、且つ、ステップS9における判定結果が肯定である場合、オフセット採用部610aは、ステップS7で楕円面最適補正値生成部400が算出した最適中心点cEOPの座標を表すベクトルをオフセットcOFFとして採用するとともに、楕円面最適補正値生成部400が算出した最適楕円面補正行列TOPを楕円面補正行列TEとして採用する。そして、オフセット採用部610aは、オフセットcOFFと楕円面補正行列TEとを出力する。
また、ステップS9における判定結果が否定である場合、オフセット採用部610aは、オフセットcOFF及び楕円面補正行列TEを採用しない。
なお、5節において説明したとおり、地磁気ベクトル計算部620は、オフセットcOFFと楕円面補正行列TEとを用いて、3次元磁気センサ60から出力される磁気データqiの示す座標に対して楕円補正を施すことで、地磁気Bgの向きを算出する。地磁気ベクトル計算部620が楕円補正に用いるオフセットcOFF及び楕円面補正行列TEは、オフセット採用部610aから出力されるオフセットcOFF及び楕円面補正行列TEにより更新される。
N個の磁気データq1〜qNを取得する際に、利用者が機器1を手で握って回転させるのではなく、機器1の位置を固定したままその姿勢のみを変化させるようにすると、外部磁界Bxの影響を低く抑えることができる(図18(B)参照)。そのため、ステップS9における判定結果が否定である場合には、機器1の位置を固定したまま回転させることを、利用者に対して指示してもよい。利用者に対する指示は、機器1の表示部50に画像や動画等を表示したり、音声等を用いたりすることで、行ってもよい。
また、本実施形態では、ステップS6またはS9において、判定結果が否定である場合に、処理をステップS1に戻さずに、フローチャートに示された処理を終了してもよい。
すなわち、本実施形態の地磁気測定装置は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布形状が、球面、楕円面、及び球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状の立体のうち、いずれの形状と看做すことが適当であるかについて、判別することが可能となる。
これにより、本実施形態に係る地磁気測定装置は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、球面または楕円面の近傍に分布する場合には、これらの中心点をオフセットとして採用することにより、正確な地磁気の向きを算出することができる。一方、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状の立体の近傍に分布する場合、本実施形態に係る地磁気測定装置は、オフセットの算出を防止するため、不正確な地磁気の向きの算出を防止することができる。
図20を参照しつつ、ステップS4において、中心点算出部800が行う中心点算出処理について説明する。中心点算出処理は、3次元磁気センサ60が出力するN個の磁気データq1〜qNの示す座標が、半径rSの球面Sの近傍に分布すると仮定して、球面Sの中心点cSの座標を算出する処理である。球面Sは、センサ座標系ΣS上で、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有するように定められる球面の中心点の座標を求めるために、計算の便宜上導入される球面であり、地磁気Bgを表す球面SGとは異なる球面である。なお、以下において記載されるベクトル及び座標は、特に断りがない場合には、センサ座標系ΣSにおいて表現されたものであるとする。
以下では、ステップS3において、分布判定部700が行う磁気データ分布判定処理について説明する。
例えば、図21に示すように、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、センサ座標系ΣSの平面π上の円πC近傍に2次元的に分布する場合、球面Sは、円πCを切断面に有するような球面であるということしか特定できない。円πCを切断面に有するような球面は、円πCの中心点πCOを通り平面πに直交する直線πL上の中心点cπ1を中心とする球面Sπ1であるかもしれないし、直線πL上の中心点cπ2を中心とする球面Sπ2であるかもしれない。つまり、球面Sの中心点cSは、直線πL上に位置することまでは特定可能であるが、具体的に直線πL上のどの位置に存在するかについては特定不可能である。このように、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が2次元的に分布する場合、複数の磁気データq1〜qNに基づいて、正確な中心点cSを算出することはできない。
図22に示すように、各固有ベクトルu1〜u3を重心座標系ΣCの原点qCを起点となるように配置する。このとき、例えばj=1の場合について検討する。固有値λ1は、ベクトルCqiを、固有ベクトルu1へ射影した長さLi1の二乗(Li1)2を、N個の磁気データCqi(i=1、2、…N)について平均した値に等しい。すなわち、固有値λjは、N個の磁気データCqiが、重心qCから固有ベクトルuj方向にどの程度離れているか、つまり、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布が固有ベクトルujの方向にどの程度の広がり有するかを表す。
歪判定部900は、ステップS5において第1の歪判定処理を行うとともに、ステップS9において第2の歪判定処理を行う。第2の歪判定処理は、複数の入力座標として、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の代わりに、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を用いて歪判定処理を行う点を除いて、第1の歪判定処理と同様の処理である。
以下11.1節において、第1の歪判定処理について述べた上で、11.2節において、第2の歪判定処理について述べる。
歪判定処理は、複数の入力座標、すなわち、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が、球面とは異なる歪んだ形状の立体SDの表面近傍に分布すると仮定する。立体SDは、図23に示すように、球面(第2球面)S2と、歪誤差ベクトルk(E)とを、足し合わせることで得られる図形であり、以下の式(83)により表される。以下では、式(83)に示す方程式を、立体方程式と呼ぶ。
ここで、球面S2は、中心点(第2球面の中心点)cS2を中心とする球面であり、立体方程式のうち、歪誤差ベクトルk(E)以外の成分「X(c−qC)−j」として表される。
歪誤差ベクトルk(E)は、以下の式(84)により表されるN次元ベクトルである。但し、歪評価行列Eは、以下の式(85)に表される3行3列の対称行列であり、基準点wKEは、以下の式(86)により表される3次元ベクトルである。また、式(83)の右辺に現れる0NはN次元の零ベクトルである。式(83)の左辺に現れる変数ベクトルcは、式(5)で示された3次元のベクトルであるが、本節では、球面S2の中心点cS2を表すための変数として用いる。
歪判定処理は、立体方程式のうち、歪を表す成分k(E)の大きさを評価することにより、立体SDの形状と、球面S2の形状とが、どの程度相違しているかについて評価する。具体的には、立体方程式における歪誤差ベクトルk(E)の影響の大きさを、後述する式(93)及び式(94)で示される歪評価値gD(E)に基づいて評価する。
なお、第1の歪判定処理では、基準点wKEとして、以下の式(89)に示すように、球面Sの中心点cSを採用する。
立体誤差ベクトルδSDは、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、立体SDの表面との誤差を表す、N次元のベクトルである。立体誤差ベクトルδSDのノルムを最小にする変数ベクトルc及び歪評価行列E、換言すれば、以下の式(92)で示す歪評価関数fSD(E、c)を最小化する変数ベクトルc及び歪評価行列Eによって、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を表面近傍に有する立体SDが表現される。
まず、第1球面誤差ベクトルδSは、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、球面Sとの誤差を吸収するためのベクトルである。第1球面誤差ベクトルδSを構成する1行目〜N行目の各要素は、それぞれ独立した変数である。従って、第1球面誤差ベクトルδSによって、複数の磁気データq1〜qNが示す座標と球面Sとの誤差を吸収する場合には、複数の磁気データq1〜qNが示す座標と球面SとのN個の誤差の各々は、互いに制約の無い、N個が互いに独立して定められる値となる。つまり、第1球面誤差ベクトルδSによって表されるN個の誤差は、それぞれが独立に確率的に定められるものであり、N個の誤差は全体として、対称性を有し、かつ方向依存性のないホワイトノイズである。
すなわち、中心点算出処理は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、球面Sとの誤差をホワイトノイズである第1球面誤差ベクトルδSにより表現し、第1球面誤差ベクトルδSを最小化する球面Sの中心点cSを求める処理である。
第2球面誤差ベクトルδS2は、第1球面誤差ベクトルδSと同様に、磁気データq1〜qNの示す座標と、球面S2との誤差を、ホワイトノイズとして表現するベクトルである。
一方、歪誤差ベクトルk(E)は、式(87)で示した3変数二次形式の関数ke(v)を各要素とするベクトルである。3変数の二次形式は、変数が2次の項から構成される関数であり、3次元空間上の様々な曲面、例えば、直線、平面、柱面、球面、楕円面、錐面、1葉双曲面、2葉双曲面、及び各種放物面等を描くことができる。従って、歪誤差ベクトルk(E)は、各磁気データq1〜qNが示す座標と球面S2とのN個の誤差の各々を、互いに独立したものではなく、N個の誤差の全てが同一の関数ke(v)により表される3次元空間上の曲面上に存在するという制約を持った値として表現する。
このように、立体誤差ベクトルδSDは、各磁気データq1〜qNが示す座標と球面S2とのN個の誤差を、ホワイトノイズである第2球面誤差ベクトルδS2と、球面S2からの歪を表す曲面を表す歪誤差ベクトルk(E)とに分離して表現する。
このように、立体方程式における歪誤差ベクトルk(E)の影響が小さい場合、中心点算出手段において算出した球面Sの中心点cSの示す座標は、球面SGの中心点cOGの示す座標と等しいと看做されるため、中心点cSの示す座標をオフセットcOFFとして採用することができる。
また、立体方程式における歪誤差ベクトルk(E)の影響が大きい場合、歪評価関数fSD(E、c)と、中心点算出関数fS(c)とは、異なる関数となる。この場合、図24に示すように、歪評価関数fSD(E、c)を最小化して求められる立体SDと、中心点算出関数fS(c)を最小化して求められる球面Sとは、異なる図形となり、立体SDの表面近傍に分布する複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、球面Sの近傍に分布すると看做すことはできない。
中心点算出処理は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が球面Sの近傍に存在していることを前提として、球面SGの中心点cOGと等しいと看做すことのできる中心点cSの示す座標を算出する処理である。従って、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が球面Sの近傍に存在しない場合、中心点cSと、中心点cOGとは、一致しない。この場合、中心点cSの座標を示すベクトルを、オフセットcOFFとして採用することはできない。
歪評価値gD(E)が、歪許容値δ0以下の小さな値であれば、立体SDと球面S2とは等しい図形であると看做すことができ、立体SDの表面近傍に分布する複数の磁気データq1〜qNの示す座標は、球面Sの近傍に分布すると看做すこともできる。この場合、中心点算出処理により求められた球面Sの中心点cSの座標を表すベクトルを磁気センサのオフセットcOFFとして採用することができる。
つまり、歪誤差ベクトルk(E)を構成する複数の要素の絶対値は、当該要素に対応する磁気データqiの示す座標を基準点wKEの示す座標から表したベクトル(qi−wKE)と、歪評価行列Eが有する3つの固有値のうち絶対値の大きさが最大となる最大固有値λE1に対応する固有ベクトルuE1とが平行となる場合には、大きな値となる。
従って、球面S2との誤差が大きな座標を示す磁気データqiが多く存在する領域を、基準点wKEの示す座標から表した方向と、歪評価行列Eの最大固有値λE1に対応する固有ベクトルuE1の方向とが等しくなるように歪評価行列Eの各成分を定める場合、歪誤差ベクトルk(E)は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、球面S2との誤差の大きさを正確に表現する。
歪評価関数fSD(E、c)を最小化する歪評価行列Eは、複数の磁気データq1〜qNの示す座標と、球面S2との誤差を正確に表現するように定められる。従って、歪評価行列Eの各成分は、最大固有値λE1に対応する固有ベクトルuE1の向きと、球面S2からの誤差が大きな磁気データが多く存在する領域を基準点wKEの示す座標から表したベクトルの方向とが、近づくように定められる。そして、歪評価行列Eの最大固有値λE1は、球面S2からの誤差が大きな磁気データqiについての、その誤差の大きさを表現する値となる。
本実施形態は、立体SDと球面との形状の相違の程度を示す歪評価値gD(E)を、歪評価行列Eの最大固有値λE1の値に基づいて定める。従って、歪評価値gD(E)によって、球面S2からの距離が大きな座標を示す磁気データqiと、球面S2との誤差の大きさ、すなわち、立体SDと球面との形状の相違の程度を評価することが可能となる。
まず、式(87)に示した関数ke(v)は、以下の式(95)に変形できる。また、歪誤差ベクトルk(E)の第i行目の要素ke(qi−wKE)は、式(97)によって示される6次元のベクトルke2(i)、及び、式(98)によって表される歪評価行列Eの各成分を並べた6次元のベクトルeEを用いて、以下の式(96)に変形できる。
一方、歪評価値gD(E)が歪許容値δ0よりも大きな値である場合には、球面Sの中心点cSの座標を表すベクトルを、オフセットcOFFとして採用することはできない。この場合、地磁気測定装置は、処理をステップS6の初期楕円面生成処理に進める。
すなわち、本実施形態に係る地磁気測定装置は、第1の歪判定処理を行うことにより、ソフトアイアン効果の有無を判断し、ソフトアイアン効果が生じていないと判断される場合には、楕円補正を行うことなく地磁気Bgの向きを算出する。これにより、本実施形態に係る地磁気測定装置は、地磁気Bgの向きの算出に係る計算負荷を大幅に低減することが可能となる。
なお、球面S2の中心点cS2の座標は、関数gSD(e)を最小化する解e0のうち式(101)のeXに相当する3次元のベクトルを、式(102)に代入した場合の、変数ベクトルcとして算出される。
図25を参照しつつ、ステップS9において、歪判定部900が行う第2の歪判定処理について説明する。
第2の歪判定処理は、ステップS5における第1の歪判定処理における判定結果が否定である場合、すなわち、図25(A)に示すように、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDの形状が球面とは異なる歪んだ形状であると判定された場合に、図25(B)に示すように、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標の分布形状を評価するための処理である。すなわち、第2の歪判定処理において、歪判定部900は、複数の入力座標として、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を用いる。
逆に、不均一な外部磁界Bxが存在する場合、図25(A)に示すように、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDは、球面とは異なる歪んだ形状を有し、且つ、楕円面とも異なる形状を有する。この場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を、最適楕円面補正行列TOPにより変換して得られる複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標は、図25(B)に示すように球面SEOPとは異なる歪んだ形状の立体SDEの近傍に分布する。
一方、図25(B)に示すように、第2の歪判定処理において、立体SDEの形状が、球面の形状とは異なる歪を持った形状であると評価される場合、複数の磁気データq1〜qNは不均一な外部磁界Bxの影響を受けたものであるため、複数の磁気データq1〜qNに基づいてオフセットcOFFの算出をすることはできない。
前述の通り、第2の歪判定処理は、歪判定処理に用いる複数の入力座標として、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を用いる代わりに、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を用いる点を除いて、第1の歪判定処理と同様の処理である。つまり、第2の歪判定処理は、第1の歪判定処理で用いた複数の磁気データq1〜qNの示す座標に対して、以下の式(104)、式(105)に示す複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標の値を代入した後に、11.1節で述べた第1の歪判定処理を実行する処理である。
なお、歪判定処理で用いる値のうち、9節で述べた中心点算出処理において算出される値、例えば、式(83)に示す立体方程式に現れる行列X等も、複数の磁気データq1〜qNの示す座標代わりに、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を用いて算出される。例えば、式(74)に示す重心qCには、以下の式(106)に示す、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標の重心sCが代入されたうえで、第2の歪判定処理が行われる。これらの値の算出は中心点算出部800において行われるが、歪判定部900が行ってもよい。
また、基準点wKEには、中心点cSの示す座標の代わりに、以下の式(107)に示す最適中心点cEOPの示す座標を代入して、第2の歪判定処理が行われる。
第2の歪判定処理は、このようにして複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標に基づいて定められる歪評価関数fSD(E、c)の値を最小化して求められる歪評価行列Eから歪評価値gD(E)を算出することにより、立体SDEと球面との形状の相違の程度を評価する。
一方、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標に基づき算出された歪評価値gD(E)が歪許容値δ0よりも大きな値である場合、不均一な外部磁界Bxの影響が存在するため、地磁気測定装置は、処理をステップS1の初期化処理に戻し、球面SEOPの最適中心点cEOPの座標を表すベクトルが、オフセットcOFFとして採用されることを防止する。
なお、本実施形態において、第1の歪判定処理における歪許容値δ0と、第2の歪判定処理における歪許容値δ0とは等しい値に設定されるが、異なる値に設定してもよい。
以上に示したように、第2実施形態に係る地磁気測定装置は、歪判定部900を備えることにより、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDと球面との形状の相違の程度を評価する。
そして、立体SDの形状が球面と看做すことができる場合、簡易な計算により地磁気Bgの向きを算出することができる。具体的には、第2実施形態に係る地磁気測定装置は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が球面近傍に分布すると歪判定部900が判定した場合、中心点算出部800が算出する中心点cSの座標を表すベクトルを、オフセットcOFFとして採用する。そして、地磁気測定装置は、中心点cSの示す座標と、磁気データqiの示す座標とに基づいて、地磁気Bgの向きを算出する。
このように、第2実施形態に係る地磁気測定装置は、3次元磁気センサ60が軟磁性材料を備えない機器1aに搭載され、ソフトアイアン効果が生じていない場合には、楕円補正を行うこと無く地磁気Bgの向きを算出するため、計算負荷を軽減することができる。
そして、立体SDEの形状が球面とは異なる歪んだ形状である場合、つまり、立体SDの歪の原因が不均一な外部磁界Bxである場合には、地磁気測定装置は、不均一な外部磁界Bxの影響下で測定された複数の磁気データq1〜qNの示す座標に基づいてオフセットcOFFが算出されることを防止する。
一方、立体SDEの形状が球面であると看做せる場合、つまり、ソフトアイアン効果が生じており、且つ、不均一な外部磁界Bxの影響がない場合、地磁気測定装置は、最適中心点cEOPの示す座標、最適楕円面補正行列TOP、及び、3次元磁気センサ60の出力する磁気データqiの示す座標に基づいて、地磁気Bgの向きを算出する。
このように、楕円面補正部200、楕円面球面変換部500、及び歪判定部900は、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDが、球面、楕円面、及び、球面とも楕円面とも異なる歪んだ形状の立体のいずれであるかを判別する、歪形状判断部4として機能し、不正確なオフセットcOFFによる不正確な地磁気Bgの算出を防止することができる。
また、複数の磁気データq1〜qNの示す座標が2次元的または1次元的に分布している場合に、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状から、楕円面の形状を特定することが困難であることが多い。従って、このような場合に、楕円面補正部200が、楕円補正を行うことを防止する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を、矛盾しない範囲で適宜組み合わせることもできる。
上述した実施形態において、歪誤差ベクトルk(E)に用いられる基準点wKEには、式(89)に示した中心点cS、または式(107)に示した最適中心点cEOPが採用されるが、本発明はこのような形態に限定されるものでは無く、基準点wKEとして、式(74)に示した重心qC、または式(106)に示した重心sCを採用してもよい。
歪評価行列Eの各成分は、基準点wKEの示す座標から見て、歪評価行列Eの最大固有値λE1に対応する固有ベクトルuE1の方向と、球面S2からの誤差が大きな磁気データqi(または、変換後磁気データsi)が多く存在する領域を示す方向とが、近づくように定められる。また、歪評価行列Eの最大固有値λE1は、基準点wKEから見て、固有ベクトルuE1の方向に存在する磁気データqi(または、変換後磁気データsi)の示す座標と球面S2との誤差の大きさを表す値となる。
従って、基準点wKEをどのような値に設定しても、複数の磁気データq1〜qN(または複数の変換後磁気データs1〜sN)の示す座標が、基準点wKEから見て広く分布している場合には、歪評価行列Eによって、立体SD(または立体SDE)と球面S2との形状の相違の程度を評価することが可能となる。
上述した実施形態及び変形例において、第1の歪判定処理及び第2の歪判定処理は、いずれも、1つの基準点wKEを用いた歪誤差ベクトルk(E)に基づいて算出される歪評価値gD(E)により、立体SD(または立体SDE)と球面との形状の相違の程度を評価するが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、2つの基準点wKEを用いて算出される異なる2つの歪誤差ベクトルk(E)により、2つの歪評価値gD(E)を算出して、立体SD(または立体SDE)と球面との形状の相違の程度を評価してもよい。
例えば、第2の歪判定処理において、まず、最適中心点cEOPを基準点wKEに採用して算出された歪評価値gD(E)に基づいて立体SDEと球面との形状の相違の程度を評価し、その後、重心sCを基準点wKEに採用して算出された歪評価値gD(E)に基づいて立体SDEと球面との形状の相違の程度を評価してもよい。この場合、2度の評価の両方において、立体SDEの形状が球面の形状と看做すことができる場合に、歪判定処理の結果を肯定としてもよい。
このように、2つの基準点wKEを用いて、複数の磁気データq1〜qN(または、複数の変換後磁気データs1〜sN)の示す座標と球面S2との誤差の大きさを評価することにより、1つの基準点wKEのみを用いる場合に比べて、立体SD(または、立体SDE)と球面との形状の相違の程度を正確に評価することができる。
上述した実施形態及び変形例において、地磁気測定装置は、第1の歪判定処理(ステップS5)及び第2の歪判定処理(ステップS9)の双方を行うが、本発明はこのような形態に限定されるものでは無く、第1の歪判定処理または第2の歪判定処理のうち、一方のみを実施してもよい。
例えば、地磁気測定装置が、第1の歪判定処理のみを行う場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDの形状が、球面と看做すことができるか否かを判定することができるため、ソフトアイアン効果が生じているか否かを判定することができる。そして、ソフトアイアン効果が生じていない場合には、楕円面補正部200による楕円補正を行うこと無く、3次元磁気センサ60が出力する磁気データqiの示す座標と、中心点算出部800の算出する球面Sの中心点cSの示す座標とにより地磁気Bgの向きを算出することができるため、計算負荷の低減が可能となる。
そして、第2の歪判定処理における判定結果が肯定である場合、複数の磁気データq1〜qNの示す座標を近傍に有する立体SDの形状は、楕円面と看做すことができるため、3次元磁気センサ60が出力する磁気データqiの示す座標、最適楕円面補正行列TOP、及び、最適中心点cEOPに基づいて、地磁気Bgの向きを算出することができる。なお、楕円面には球面が含まれるため(例えば、楕円面補正行列TEの有する3つの固有値が全て1の場合、等)、ソフトアイアン効果の発生の有無にかかわらず、地磁気Bgの向きを算出することができる。
一方、第2の歪判定処理における判定結果が否定である場合、複数の磁気データq1〜qNは不均一な外部磁界Bxの影響を受けているため、地磁気測定装置は、オフセットcOFF及び地磁気Bgの向きの算出を防止する。
上述した実施形態及び変形例において、地磁気測定装置は、楕円面初期補正値生成部300において、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び、第3楕円面Vzzを生成し、これら3つの楕円面に基づいて、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0を算出するが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、公知の方法を適宜適用して初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0を算出してもよい。
例えば、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0を、非特許文献2に開示された方法(つまり、3節に示した対比例)に基づいて算出してもよい。また、初期楕円面補正行列T0として3行3列の単位行列を採用し、初期中心点cE0としてセンサ座標系ΣSの原点SO=(0,0,0)Tを採用してもよい。この場合、初期楕円面補正行列T0及び初期中心点cE0の算出に係る計算負荷を低減することが可能となる。
上述した実施形態及び変形例において、地磁気測定装置は、第2の歪判定処理に用いられる複数の入力座標として、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を適用したが、本発明はこのような形態に限定されるものでは無く、複数の変換後磁気データs1〜sNの示す座標を最適中心点cEOPを起点として表した複数のベクトル、すなわち、ベクトル(s1−cEOP)〜ベクトル(sN−cEOP)を複数の入力座標に適用してもよい。この場合、歪判定処理に用いられるデータのサイズを小さくすることができ、処理に必要なメモリのサイズの節約をすると共に、処理速度を向上させるという利点を有する。
上述した実施形態及び変形例において、初期楕円面生成部310は、3つの楕円面(第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzz)の各々の係数行列及び中心点の座標を算出するものであったが、本発明はこのような形態に限定されるものでは無く、初期楕円面生成部310は、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち、2つの楕円面の各々の係数行列及び中心点の座標を算出するものであってもよい。この場合、初期楕円面生成部310は、第1楕円面生成部311、第2楕円面生成部312、及び第3楕円面生成部313のうち、少なくとも2つを備えればよい。
図13において説明したように、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち2つの楕円面の形状の相違の程度(具体的には、2つの楕円面の2つの中心点間の距離)を評価することにより、複数の磁気データq1〜qNの示す座標から楕円面の形状を特定することが困難な場合であるか否かを把握することが可能である。従って、初期楕円面生成部310が、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち、少なくとも2つの楕円面各々の係数行列及び中心点の座標を算出すれば、不適切な初期楕円面補正行列T0が生成されることを防止することができる。また、初期楕円面生成部310が2つの楕円面各々の係数行列及び中心点の座標を算出する場合、3つの楕円面各々の係数行列及び中心点の座標を算出する場合に比べて、計算負荷の軽減が可能となる。
なお、初期楕円面生成部310が2つの楕円面の各々の係数行列及び中心点の座標を算出する場合、初期補正値生成部330は、当該2つの楕円面のうち、少なくとも1つの楕円面の係数行列に基づいて初期楕円面補正行列T0を算出すればよい。同様に、初期補正値生成部330は、当該2つの楕円面のうち、少なくとも1つの楕円面の中心点に基づいて、初期中心点cE0の座標を算出すればよい。
上述した実施形態及び変形例において、初期楕円面中心点判定部322は、中心点cxx、中心点cyy、及び中心点czzの3つの中心点の相互間の距離の全てが、第1閾値Δc以下であるか否か(第2の条件を充足するか否か)を判定するものであるが、本発明はこのような判定の方法に限定されるものでは無く、初期楕円面中心点判定部322は、中心点cxx、中心点cyy、及び中心点czzのうち2つの中心点間の距離が、第1閾値Δc以下であるか否かを判定するものであってもよい。
例えば、変形例6のように、初期楕円面生成部310が、第1楕円面Vxx、第2楕円面Vyy、及び第3楕円面Vzzのうち、2つの楕円面(例えは、第1楕円面Vxx及び第2楕円面Vyy)の各々の中心点(例えば、中心点cxx及び中心点cyy)の座標を算出する場合、初期楕円面中心点判定部322は、当該2つの中心点cxx及びcyyの間の距離が、第1閾値Δc以下であるか否かを判定するものであってもよい。
このような判定によっても、複数の磁気データq1〜qNの示す座標の分布の形状から楕円面の形状を特定することが困難な場合であるか否かを把握することが可能であり、不適切な初期楕円面補正行列T0が生成されることを防止することができる。
Claims (4)
- 軟磁性材料を有する部品を備えた機器に組み込まれ、互いに直交する3方向の磁気成分であって前記軟磁性材料が生じる磁界に影響された磁気成分をそれぞれ検出し、検出結果を3軸の座標系におけるベクトルデータである磁気データとして順次出力する3次元磁気センサと、
前記3軸の座標系において、
変数ベクトルの示す座標を起点とし前記磁気データの示す座標を終点とするベクトルを、第1ベクトルとし、
前記第1ベクトルを変数行列により変換したベクトルを、第2ベクトルとし、
前記第2ベクトルの示す座標を表すデータを、変換後データとし、
前記3次元磁気センサが出力する複数の磁気データに対応する複数の前記変換後データの各々が示す座標と、前記変数ベクトルの示す座標を中心とする球面との誤差を表し、前記変数行列の各成分と、前記変数ベクトルの各要素とを変数とする関数を、楕円面最適化関数とし、
前記楕円面最適化関数を最小化する解として、最適楕円面補正行列と、最適中心点の座標とを算出する、楕円面最適補正値生成部と、
を備え、
前記変数行列は対称行列である、
ことを特徴とする地磁気測定装置。 - 前記楕円面最適補正値生成部が、前記最適楕円面補正行列と、前記最適中心点の座標とを算出したときに、
前記最適中心点の座標を、前記部品が発する磁界であるオフセットとして採用するとともに、
前記最適楕円面補正行列を、楕円面補正行列として採用し、
前記オフセットと、前記楕円面補正行列とを出力するオフセット採用部と、
前記オフセットの座標を起点とし、前記3次元磁気センサから出力される磁気データの示す座標を終点とするベクトルを、前記楕円面補正行列により変換することにより、地磁気の向きを算出する地磁気ベクトル計算部と、
を更に備えることを特徴とする、
請求項1に記載の地磁気測定装置。 - 軟磁性材料を有する部品を備えた機器に組み込まれ、互いに直交する3方向の磁気成分であって前記軟磁性材料が生じる磁界に影響された磁気成分をそれぞれ検出し、検出結果を3軸の座標系におけるベクトルデータである磁気データとして順次出力する3次元磁気センサ、
を備える地磁気測定装置に用いられる地磁気測定方法であって、
前記3軸の座標系において、
変数ベクトルの示す座標を起点とし前記磁気データの示す座標を終点とするベクトルを、第1ベクトルとし、
前記第1ベクトルを変数行列により変換したベクトルを、第2ベクトルとし、
前記第2ベクトルの示す座標を表すデータを、変換後データとし、
前記3次元磁気センサが出力する複数の磁気データに対応する複数の前記変換後データの各々が示す座標と、前記変数ベクトルの示す座標を中心とする球面との誤差を表し、前記変数行列の各成分と、前記変数ベクトルの各要素とを変数とする関数を、楕円面最適化関数とし、
前記楕円面最適化関数を最小化する解として、最適楕円面補正行列と、最適中心点の座標とを算出し、
前記変数行列は対称行列である、
ことを特徴とする地磁気測定方法。 - 軟磁性材料を有する部品を備えた機器に組み込まれ、互いに直交する3方向の磁気成分であって前記軟磁性材料が生じる磁界に影響された磁気成分をそれぞれ検出し、検出結果を3軸の座標系におけるベクトルデータである磁気データとして順次出力する3次元磁気センサ、
を備える地磁気測定装置に用いられる地磁気測定プログラムであって、
前記3軸の座標系において、
変数ベクトルの示す座標を起点とし前記磁気データの示す座標を終点とするベクトルを、第1ベクトルとし、
前記第1ベクトルを変数行列により変換したベクトルを、第2ベクトルとし、
前記第2ベクトルの示す座標を表すデータを、変換後データとし、
前記3次元磁気センサが出力する複数の磁気データに対応する複数の前記変換後データの各々が示す座標と、前記変数ベクトルの示す座標を中心とする球面との誤差を表し、前記変数行列の各成分と、前記変数ベクトルの各要素とを変数とする関数を、楕円面最適化関数とし、
前記楕円面最適化関数を最小化する解として、最適楕円面補正行列と、最適中心点の座標とを算出する処理をコンピュータに実行させ、
前記変数行列は対称行列である、
ことを特徴とする地磁気測定プログラム。
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