以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は敷地を示す平面図である。
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物を採用している。図1は、ユニット式建物の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、建物10は、基礎11上に配設される建物本体12と、この建物本体12の上方に配設される屋根13とにより構成されている。建物本体12は、一階部分14と二階部分15とからなる二階建て建物であり、建物本体12の一階部分14には、居住者が入浴するための浴室16が設けられている。
建物本体12は、複数の建物ユニット20が連結されることにより構成されている。そして、これら各建物ユニット20の中には、浴室16を構成するための浴室用の建物ユニット20aが含まれている。以下、この浴室用の建物ユニット20aについて説明する。
まず、浴室用の建物ユニット20aの骨格について図2に基づいて説明する。なお、図2(a)は浴室用の建物ユニット20aにおける骨格の構成を示す斜視図であり、(b)は同建物ユニット20aの床部分の平面図である。
図2(a)に示すように、浴室用の建物ユニット20aでは、その四隅に柱21が配され、各柱21の上端部及び下端部がそれぞれ4本の天井大梁22、床大梁23により連結されている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、そのコ字状開口部を水平方向の内側に向けて配置されている。
建物ユニット20aの長辺部の相対する天井大梁22の間には、複数の天井小梁24が所定間隔で架け渡されている。建物ユニット20aには、図2(b)に示すように、後述する浴室ユニット30が組み入れられる浴室スペースS1と、それに隣接する脱衣所スペースS2とが設けられるようになっており、その脱衣所スペースS2に相当する部位には長辺部の相対する床大梁23(以下、この長辺部の床大梁23を長辺側床大梁23aという)間に複数の床小梁25が所定の間隔で架け渡されている。床小梁25は、四角筒状の角形鋼よりなる支持部材である。各床小梁25はそれぞれ、その長手方向両端部が各長辺側床大梁23aの上部に連結されている。この場合、床小梁25の下面の高さ位置は床大梁23の下面の高さ位置よりも上方に位置している。
それに対して、浴室スペースS1に相当する部位には、複数の受小梁27が所定の間隔で架け渡されている。受小梁27は、四角筒状の角形鋼よりなる支持部材である。各受小梁27はそれぞれ、その長手方向両端部が各長辺側床大梁23aの下部に連結されている。上記構成によれば、受小梁27の上面の高さ位置が床大梁23及び床小梁25の上面よりも下方に設定されている。また、受小梁27の下面の高さ位置は床大梁23の下面とほぼ同じ高さ位置となっており、例えば受小梁27の下面側に床下断熱材を設置したとすると床下断熱材が建物ユニット20aの下端部(柱21の下端部)よりも下方に突出することとなる。
次に、浴室ユニット30が組み込まれた浴室用の建物ユニット20aの構成を図3に基づいて説明する。図3は浴室用の建物ユニット20aの床部及びその周辺の構成を示す縦断面図である。なお、図3は建物ユニット20aの床部及びその周辺を同ユニット20aの短辺部(妻面)と直交する面で切断した断面図(図2(b)のA−A線断面に相当)である。
図3に示すように、浴室用の建物ユニット20aには、浴室16を形成する浴室ユニット30が組み込まれている。浴室ユニット30は、浴室16を囲んで設けられた壁パネル31と、浴室16の床面を形成する床板32と、床板32よりも下方に突出して設けられた浴槽(図示略)と、床板32及び浴槽の下方に設けられた底枠体34とを備える。また、建物ユニット20aには、浴室ユニット30(浴室16)に隣接して脱衣室26が設けられている。浴室16と脱衣室26とは建物ユニット20aにおいて長手方向に並んでいる。
浴室ユニット30は、建物ユニット20aの受小梁27上に設置されている。浴室ユニット30は、その一部が床大梁23及び床小梁25の上面よりも下方に落とし込まれた状態で設置されており、その設置状態において、L字型の固定金具36により床小梁25に固定されている。この場合、浴室ユニット30は、その下部が3本の床大梁23と床小梁25とにより囲まれた内側空間に配置されている(図7も参照)。なお、この床小梁25は、詳しくは脱衣室26と浴室16との境界部に設けられた床小梁25であり、以下においては便宜上その符号にaを付す。
床小梁25上には、床根太37が設けられている。床根太37の上面には脱衣室26の床面を形成する床材39が敷設されている。脱衣室26の床面と浴室16の床面(床板32の床面)とはほぼ同じ高さにあり、そのため脱衣室26と浴室16との間で段差を伴わない行き来が可能となっている。
建物ユニット20aにおいて浴室ユニット30の屋外側には外壁パネル41が設けられている。外壁パネル41は、外壁面を形成する外壁材42と、外壁材42の裏面側に設けられた下地フレーム43とを備え、下地フレーム43が天井大梁22(図3では図示を省略している)及び床大梁23に対してボルト等で固定されている。外壁パネル41の屋内側には、内壁パネル45が設けられており、外壁パネル41と内壁パネル45との間にはグラスウールからなる壁内断熱材48が設けられている。これにより、建物ユニット20aの外壁部において断熱性が確保されている。
上述した構成の建物ユニット20aは、基礎11上に設置されている。基礎11は、鉄筋コンクリート造の布基礎よりなり、床下地盤19の内部に埋設されたフーチング部(図示略)と、その上方に延びる立ち上がり部17とからなる。基礎11は、建物10の外周部に沿って連続して設けられており、基礎11により囲まれた内側空間は床下空間18となっている。
床下空間18には、建物ユニット20の柱21の設置位置に対応して柱受け基礎29(図7参照)が設けられている。建物ユニット20aの各柱21はそれぞれ基礎11(立ち上がり部17)上及び柱受け基礎29上に載置されており、これにより同ユニット20aがこれら各基礎11,29上に設置されている。つまり、本建物ユニット20aでは、同ユニット20aの荷重が基本的に各柱21によって支えられる構成となっている。また、床下空間18における床下地盤19上には、防湿コンクリート38が打設されている。
次に、建物ユニット20aの床部(一階床部)の断熱構造について説明する。
基礎11の立ち上がり部17上には、床大梁23が基礎11に沿って設置されており、床大梁23の溝部52(詳しくは床大梁23において上下のフランジ部及びウェブ部により囲まれた内側空間)には、グラスウールからなる梁内断熱材51が当該溝部52を埋めるようにして配設されている。基礎11と床大梁23との間には、同じくグラスウールからなる基礎上断熱材53が基礎11に沿って延びるように設けられている。基礎上断熱材53は、基礎11と床大梁23との間に圧縮状態で挟み込まれており、これにより基礎11と床大梁23との間を通じて床下空間18(特に浴室ユニット30下方の空間)に空気が出入りするのを防止している。
脱衣室26の床材39の下面側には床下断熱材55が設けられており、脱衣室26と浴室16との境界部に設けられた床小梁25aには小梁断熱材56が設けられている。小梁断熱材56は、床小梁25aにおいて浴室ユニット30側とは反対側の側面に設けられ、当該床小梁25aに沿って長尺状に形成されている。また、小梁断熱材56は、その上端部において床下断熱材55と連続しており、小梁断熱材56と床下断熱材55とで連続した断熱ラインを形成している。床下断熱材55と小梁断熱材56とは共にポリエチレンフォームからなり、ユニット工場において予め建物ユニット20aに組み付けられるものとなっている。なおここで、床下断熱材55及び小梁断熱材56により床下断熱部の一部が構成されている。
また、図示は省略するが、本実施形態では、建物ユニット20a以外の一階部分14の建物ユニット20についても床材の下面側に床下断熱材が設置されている。より詳しくは、本建物10では、一階部分14の床部において浴室ユニット30の設置部分を除くほぼ全域に床下断熱材が設置されており、これらの床下断熱材により床下断熱部が構成されている。したがって、本建物10では、一階床部における浴室ユニット30の設置部分を除く全域に床断熱工法が採用されている。
本実施形態では、一階床部における浴室ユニット30の設置部分については床下断熱材が設置されておらず、同設置部分については床断熱工法とは異なる断熱構造を用いて断熱性能の確保を図っている。そこで、以下では、かかる断熱構造について図3に加え図4を用いて説明する。なお、図4は、床下空間18における浴室用の建物ユニット20aの下方の構成を示す斜視図である。なお、図4では、説明の参考として浴室ユニット30を一点鎖線で図示している。
図3及び図4に示すように、床下空間18における防湿コンクリート38上には、複数(図4では3つ)の断熱壁ユニット60が設けられている。これらの断熱壁ユニット60は、床下空間18において浴室ユニット30の下方となる浴室下方領域Xを、基礎11の立ち上がり部17とともに四方から囲むようにして設置されている。具体的には、浴室下方領域Xの周囲において一方の隣り合う二面側に基礎11の立ち上がり部17が設置され、他方の隣り合う二面側に断熱壁ユニット60が設置されている。
基礎11の立ち上がり部17において浴室下方領域Xを囲っている部分(以下、囲い部分17aという)には断熱層が形成されている。この場合、浴室下方領域Xの周囲における一方の二面側では、立ち上がり部17の囲い部分17aと断熱層とからなる断熱壁部58a,58bが構築されている。一方、断熱壁ユニット60は、同様の断熱層を有して構成されている。この場合、浴室下方領域Xの周囲における他方の二面側では、断熱壁ユニット60により断熱壁部58c,58dが構築されている。そして、これら各断熱壁部58a〜58dにより囲まれた内側空間は断熱空間部68となっており、本実施形態では、この断熱空間部68により一階床部における浴室ユニット30の設置部分について断熱を図ることとしている。以下、この断熱空間部68を形成する各断熱壁部58a〜58dの構成を説明する。
まず、基礎11の立ち上がり部17を用いて構築される断熱壁部58a,58bの構成を図4に加え図5を用いて説明する。図5は、断熱壁部58a,58bの構成を示す分解斜視図である。
図4及び5に示すように、基礎11の立ち上がり部17の囲い部分17aには、その内側面(断熱空間部68側の面)に基礎断熱材69が設けられている。基礎断熱材69は、ポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材により形成されており、矩形板状をなしている。基礎断熱材69は、囲い部分17aの二面にそれぞれ設けられ、それら各基礎断熱材69は各々囲い部分17aの内側面の大きさ(縦横寸法)に合わせて形成されている。これにより、断熱壁部58a,58bでは、囲い部分17aの内側面全域に基礎断熱材69が配設されており、この基礎断熱材69により断熱層が構成されている。
また、本実施形態では、基礎11の立ち上がり部17には、その内側面に基礎断熱材69を取り付けるための取付凹部57が設けられている。本実施形態では、取付凹部57が基礎断熱材69の厚み分凹ませられて形成されている。基礎断熱材69は、この凹部57に取り付けられた状態で囲い部分17aの内側面に設置されており、その設置状態において、基礎断熱材69の表面(断熱空間部68側の板面)と立ち上がり部17(詳しくは立ち上がり部17における囲い部分17aを除く部位)の内側面とが略面一とされている。
次に、断熱壁ユニット60により構築される断熱壁部58c,58dの構成を図4に加え図6に基づいて説明する。なお、図6は、断熱壁ユニット60からなる断熱壁部58c,58dの構成を示す分解斜視図である。
図4及び図6に示すように、断熱壁ユニット60は、複数の壁パネル60a〜60cが連結金具71,72により連結されることでユニット化されている。断熱壁ユニット60からなる各断熱壁部58c,58dのうち、断熱壁部58cは、横並びに配置された2つの壁パネル60a,60bにより構築され、断熱壁部58dは、1つの壁パネル60cにより構築されている。各壁パネル60a〜60cはそれぞれ、石膏ボードからなる矩形板状の下地面材61と、下地面材61の一方側の板面に設けられたユニット断熱材62とを備える。ユニット断熱材62は、ポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材からなり、下地面材61と同じ大きさ(縦横寸法)を有する矩形板状に形成されている。ユニット断熱材62は、下地面材61に対して重ね合わせられた状態で接着材により固定されており、壁パネル60a〜60c(ひいては断熱壁ユニット60)において断熱層を構成している。
また、各壁パネル60a〜60cのうち、壁パネル60a,60bは壁パネル60cよりも高さ寸法が大きくなっている。具体的には、壁パネル60a,60bの高さ寸法が防湿コンクリート38の上面と床小梁25aの下面との上下間距離よりも若干小さい寸法に設定されているのに対し、壁パネル60cの高さ寸法が防湿コンクリート38の上面と床大梁23の下面との上下間距離よりも若干小さい寸法に設定されている。
各壁パネル60a〜60cの上下の各端面にはそれぞれ気密材64,65が設けられている。気密材64,65は、断熱性を有するシリコンゴム等により形成されたパッキン材よりなる。気密材64,65は、壁パネル60a〜60cの厚みとほぼ同じ幅を有する長尺シート状をなし、壁パネル60a〜60cの横幅方向全域に亘り設けられている。
壁パネル60a〜60cの左右の各端面のうちいずれか一方の端面、詳しくは壁パネル60a〜60cの下地面材61を正面に見て左側の端面には気密材66が設けられている。気密材66は、断熱性を有するシリコンゴム等により形成された線状のパッキン材からなる。気密材66は、下地面材61における上記左側の端面において上下方向全域に亘り設けられており、詳しくは壁パネル60a〜60cの厚み方向に複数(図6では2つ)設けられている。
図4に示すように、各壁パネル60a〜60cは、床下空間18において各々のユニット断熱材62を断熱空間部68側に向けた状態で設置されている。各壁パネル60a〜60cは、かかる設置状態において互いに連結金具71,72を介して連結されている。
連結金具71は、断熱壁部58cを構成する各壁パネル60a,60bを連結するものであり、平板状の板金部材よりなる。連結金具71は、各壁パネル60a,60bの下地面材61の板面に跨って設けられており、各下地面材61に対しそれぞれボルト等で固定されている。これにより、各壁パネル60a,60bは連結金具71を介して連結されている。かかる連結状態では、各壁パネル60a,60bにおいて対向する端面同士の間に気密材66(詳しくは壁パネル60aの気密材66)が圧縮状態で挟み込まれている。これにより、各壁パネル60a,60b間の気密性が確保されている。
連結金具72は、断熱壁部58cを構成する壁パネル60bと断熱壁部58dを構成する壁パネル60cとを連結するものであり、断面L字状の板金部材よりなる。連結金具72においてL字状をなす2つの板部のうち一方が壁パネル60bの下地面材61の板面に当接され、他方が壁パネル60cの下地面材61の板面に当接されており、その当接状態で各板部が各々下地面材61に対してボルト等で固定されている。これにより、各壁パネル60b,60cは連結金具72を介して連結されている。また、かかる連結状態では、各壁パネル60b,60cの対向する端面同士の間に気密材66(詳しくは壁パネル60bの気密材66)が圧縮状態で挟み込まれており、これにより各壁パネル60b,60c間の気密性が確保されている。
なお、連結金具71,72をヒンジ金具として構成し、各壁パネル60a〜60cを一体に連結した状態で所定角度(直角)に折り曲げ配置できるようにしてもよい。
また、断熱壁部58cを構成する壁パネル60aは、連結金具73を介して基礎11の立ち上がり部17に連結されている。連結金具73は、断面L字状の板金部材よりなる。連結金具73は、L字状をなす2つの板部のうち一方が壁パネル60aの下地面材61の板面に当接され、他方が立ち上がり部17の内側面(床下空間18側の面)に当接されており、その当接状態で各板部が各々下地面材61、立ち上がり部17に対してボルト等で固定されている。これにより、断熱壁部58cが基礎11に対して連結されている。かかる連結状態では、壁パネル60aの端面と立ち上がり部17の内側面との間に図示しない気密材が圧縮状態で挟み込まれており、これにより壁パネル60aと立ち上がり部17との間の気密性が確保されている。
断熱壁部58dを構成する壁パネル60cは、連結金具74を介して基礎11の立ち上がり部17に連結されている。連結金具74は、上述の連結金具73と同様の構成を有しており、連結金具73と同様の連結構造で、立ち上がり部17と壁パネル60cとを連結している。また、壁パネル60cの端面と立ち上がり部17の内側面との間には気密材66(詳しくは壁パネル60cの気密材66)が圧縮状態で挟み込まれている。
図7は、基礎11,28上に浴室用の建物ユニット20aが設置された状態を示す平面図である。なお、図7では、建物ユニット20aについて床部の平面構成を示している。また、図7では、便宜上、浴室ユニット30を一点鎖線で図示している。
図7に示すように、基礎11,29上に建物ユニット20aが設置された状態において、断熱壁部58cは床小梁25aの下方において当該床小梁25aに沿って配置されている。この場合、断熱壁部58cを構成する各壁パネル60a,60bにおいて、上側の気密材64が、壁パネル60a,60bの上端部と床小梁25aの下面との間に圧縮状態で挟み込まれ、下側の気密材65が、壁パネル60a,60bの下端部と防湿コンクリート38の上面との間に圧縮状態で挟み込まれている。そのため、断熱壁部58cの上端部と床小梁25aとの間及び断熱壁部58cの下端部と防湿コンクリート38との間を通じて断熱空間部68へ空気が出入りするのが抑制されている。
また、断熱壁部58dは床大梁23の下方において当該床大梁23に沿って配置されている。この場合、断熱壁部58dを構成する壁パネル60cにおいて、上側の気密材64が、壁パネル60cの上端部と床大梁23の下面との間に圧縮状態で挟み込まれており、下側の気密材65が、壁パネル60cの下端部と防湿コンクリート38の上面との間に圧縮状態で挟み込まれている。そのため、断熱壁部58dの上端部と床大梁23との間及び断熱壁部58dの下端部と防湿コンクリート38との間を通じて断熱空間部68へ空気が出入りするのが抑制されている。
また、上述したように、基礎11側の断熱壁部58a,58bは、床大梁23の下方において当該床大梁23に沿って配置され、基礎11の立ち上がり部17上に設けられた基礎上断熱材53が立ち上がり部17の上端部(天端)と床大梁23との間で圧縮状態で挟み込まれている。そのため、断熱壁部58a,58bの上端部と床大梁23との間を通じて断熱空間部68へ空気が出入りするのが抑制されている。よって、以上より、断熱空間部68では気密性が確保されており、これにより断熱空間部68の断熱性能が高められている。
図1の説明に戻り、断熱壁部58a,58bの基礎断熱材69は、その上端部において基礎上断熱材53と連続している。また、断熱壁部58cのユニット断熱材62は、その上端部において気密材64と接触しており、気密材64は小梁断熱材56と接触している。この場合、ユニット断熱材62と、気密材64と、小梁断熱材56とにより連続した断熱ラインが形成されており、ひいては断熱壁部58a〜58dの断熱層と一階部分14の床下断熱材(小梁断熱材56や床下断熱材55の他、建物ユニット20a以外の建物ユニット20に設けられた床下断熱材も含む)とにより連続した断熱ラインが形成されている。
また、断熱空間部68における防湿コンクリート38上には地盤上断熱材77が敷設されている。地盤上断熱材77は、ポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材からなり、矩形板状に形成されている。地盤上断熱材77は、断熱空間部68における防湿コンクリート38の上面全域に亘って敷設されており、その周縁部において基礎断熱材69及び壁パネル60a〜60dのユニット断熱材62と接触している。これにより、断熱空間部68の周囲では、地盤上断熱材77と、基礎断熱材69及びユニット断熱材62とで連続した断熱ラインが形成されている。
ところで、断熱壁ユニット60は上述した断熱機能の他にも各種機能を有している。そこで、以下では、かかる機能について図4に加え図8を用いて説明する。なお、図8は、壁パネル60aに設けられた水抜き孔の構成を示す断面図である。
図8に示すように、各壁パネル60a〜60cのうち、壁パネル60aには、その下部に厚み方向に貫通する水抜き孔82が形成されている。水抜き孔82は、その底面が地盤上断熱材77の上面と略同じ高さに設定されており、断熱空間部68において地盤上断熱材77上に溜まった水をこの水抜き孔82を通じて断熱空間部68の外部に排出できるようになっている。したがって、浴室ユニット30において水漏れ等が発生して断熱空間部68内に水が溜まったとしても、その水を外部に排出できるため、溜まった水から異臭が発生する等の不都合を未然に回避できる。また、地盤上断熱材77の上面には、水抜き孔82側に向かって若干(例えば1/100の勾配)下方傾斜された水勾配が形成されており、地盤上断熱材77上に溜まった水が水抜き孔82の方に流れ易くなっている。
また、水抜き孔82には、断熱空間部68の外側からキャップ84がはめ込まれている。地盤上断熱材77上に水が溜まった場合には、このキャップ84を外して断熱空間部68に溜まった水を排出する。キャップ84の裏側(断熱空間部68側)には、水検知センサ85が設けられている。また、建物10(例えば建物ユニット20a)には、スピーカ等の報知装置が設けられ、水検知センサ85により水が検知された場合には、報知装置による報知処理を行う。この場合、床下空間18に潜り込まなくても断熱空間部68に水が溜まったことを確認できる。
また、図4に示すように、壁パネル60bには、厚み方向に貫通する配管挿通孔88が形成されている。この場合、浴室ユニット30から下方に延びる排水配管等をこの配管挿通孔88を通じて断熱空間部68の外部に引き出すことができる。
さらに、壁パネル60cには、厚み方向に貫通する点検口89が設けられている。浴室ユニット30の下方に設けられる排水配管等を点検する際には、この点検口89を通じて点検できる。また、点検口89には、当該点検口89を開閉するための蓋部91が設けられている。なお、蓋部91の裏面(断熱空間部68側の面)には、図示しない断熱材が蓋部91と一体に設けられている。
次に、上述した構成の断熱壁部58を施工する際の作業内容を説明する。ここでは、基礎11及び防湿コンクリート38の打設作業が既に完了していることを前提として説明する。
施工作業の際には、まず基礎11の立ち上がり部17の囲い部分17aに基礎断熱材69を設置する。これにより、断熱壁部58a,58bが構築される。
続いて、断熱壁ユニット60の各壁パネル60a〜60cをそれぞれ防湿コンクリート38上における所定の設置位置に設置する。そして、各壁パネル60a〜60cを連結金具71,72により連結するとともに、壁パネル60aを連結金具73により基礎11に連結し、壁パネル60cを連結金具74により基礎11に連結する。これにより、断熱壁部58c,58dが構築される。そして、各断熱壁部58a〜58dにより囲まれた断熱空間部68が形成される。なお、各壁パネル60a〜60cは、予め製造工場で組み立てられるものとなっている。
続いて、断熱空間部68における防湿コンクリート38上に地盤上断熱材77を敷設する。これをもって、床下空間18における浴室ユニット30下の断熱施工作業が終了する。
次に、浴室ユニット30が組み込まれた建物ユニット20aを基礎11,29上に設置する。これにより、浴室ユニット30が断熱空間部68上に設置される。その後、その他の各建物ユニット20を所定の位置に設置し、施工作業が完了する。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
建物10の一階部分14の床部において浴室ユニット30の設置部分を除く部分に、床下断熱部を設けた。また、一階部分14の床下における床下地盤19上に、床下空間18における浴室ユニット30の下方領域を囲むようにして断熱壁部58を立設することにより、浴室ユニット30の下方に、当該断熱壁部58により周囲が囲まれてなる断熱空間部68を形成した。この場合、断熱空間部68によって、浴室ユニット30の床下部分の断熱を図ることができる。そのため、浴室ユニット30の床下部分の断熱を図るにあたり、同ユニット30の床下側に床下断熱材を設置する必要がなくなり、その結果施工作業を容易とすることができる。
また、上述した構成では、一階部分14の床部において浴室ユニット30の設置部分を除く部分については床下断熱部により断熱を図り、浴室ユニット30の設置部分については断熱空間部68により断熱を図ることとしている。そして、断熱空間部68を形成する断熱壁部58a〜58dの断熱層と一階部分14の床部の床下断熱部とを連続させて設けることで、一階部分14の床下側において、浴室ユニット30の設置部分とそれ以外の部分とで連続した断熱ラインを形成している。この場合、浴室ユニット30の床下部分の断熱を図るのに際し、建物10の外周に設けられた基礎11全域に断熱材を設置する基礎断熱工法を採用する場合よりも、コストの増大を抑制できる。よって、上記の構成によれば、浴室ユニット30の床下部分の断熱を図るにあたり、コストの増大を抑制しつつ、施工時における作業負荷の軽減を図ることができる。
また、浴室ユニット30の下方に床下断熱材が設置される構成では、浴室ユニット30の下方に配設された配管等の点検作業を行うに際し床下断熱材が邪魔となるため、点検作業者が床下空間18に潜り込み床下断熱材を取り外す等の面倒な作業が発生することが考えられる。その点、上記構成によれば、かかる面倒な作業を行わなくても浴室ユニット30の配管類を点検でき、点検作業を容易とすることができる。
また、浴室ユニット30を、製造工場において建物ユニット20aに組み付ける構成とした。具体的には、浴室ユニット30を載置支持する受小梁27を、脱衣室26の床材39を支持する床小梁25に対して下方に設置することで、受小梁27の下面の高さ位置を、床小梁25の下面の高さ位置よりも低い位置に、より詳細には床大梁23の下面の高さ位置と略同じ高さ位置にした。かかる構成では、受小梁27の下面側に床下断熱材を設置すると、床下断熱材が建物ユニット20aの下端部よりも下方に突出することが考えられ、床下断熱材を建物ユニット20aに組み付けた状態で同ユニット20aの輸送を行うことが困難となるおそれがある。そのため、かかる場合には、施工現場で建物ユニット20aを設置した後、床下断熱材を建物ユニット20aの床下に潜り込んで設置することとなり、作業負荷の著しい増大が懸念される。この点、上記構成によれば、施工作業に際し、建物ユニット20aを設置する前に、予め断熱壁部58a〜58dを施工しておくことができるため、床下に潜り込んでの作業を行わなくても済むため、施工作業時における作業負荷を大いに軽減できる。
各断熱壁部58a〜58dのうち断熱壁部58a,58bを、基礎11の立ち上がり部17と、立ち上がり部17の側面に設けられた基礎断熱材69とを備えて構成した。この場合、断熱壁部58a〜58dの一部が基礎11を用いて構成されるため、既存の構成を生かしながら容易に断熱壁部58a,58bを構築できる。
各断熱壁部58a〜58dのうち断熱壁部58c,58dを、下地面材61と、該下地面材61に重ね合わせられた板状のユニット断熱材62とを有する壁パネル60a〜60cにより構成した。この場合、床下空間18における浴室ユニット30の下方領域を囲むようにして壁パネル60a〜60cを設置する等の簡易な作業を行うことで断熱空間部68を形成できる。
また、各断熱壁部58a〜58dのうち、一部の断熱壁部58a,58bを基礎11の立ち上がり部17を用いて構成し、残りの断熱壁部58c,58dを壁パネル60a〜60cにより構成した。この場合、建物10の施工に際し、先に設けられる基礎11の立ち上がり部17に対し壁パネル60a〜60cを組み付けることで、それら両者17,60a〜60により断熱空間部68が形成される。そのため、所望の大きさの断熱空間部68を容易に形成できる。また、基礎11を支えにして壁パネル60a〜60cを設置できるため、断熱壁部58a〜58dを強固なものとすることができる。
断熱空間部68の床下地盤19上に地盤上断熱材77を敷設したため、地盤上断熱材77により断熱空間部68の熱が地盤面を介して外部に漏れ出るのを抑制できる。これにより、断熱空間部68の断熱性能を高めることができるため、一階部分14の床部における浴室ユニット30の設置部分について断熱効果を高めることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、断熱空間部68を4方において囲む各断熱壁部58a〜58dのうち、2方の断熱壁部58a,58bを基礎11の立ち上がり部17を用いて構成し、残りの2方の断熱壁部58c,58dを壁パネル60a〜60cにより構成したが、これを変更し、3方の断熱壁部58を基礎11の立ち上がり部17を用いて構成し、1方の断熱壁部58を壁パネル60a〜60cにより構成してもよい。逆に、1方の断熱壁部58を基礎11の立ち上がり部17を用いて構成し、3方の断熱壁部58を壁パネル60a〜60cにより構成してもよい。
また、断熱空間部68を囲む各断熱壁部58a〜58dすべてを、基礎11の立ち上がり部17を用いて構成してもよい。
さらには、断熱空間部68を囲む各断熱壁部58a〜58dすべてを、壁パネル60a〜60cにより構成してもよい。例えば、浴室ユニット30が建物10の一階床部において中間部分に設置される場合、つまり浴室ユニット30が平面視において基礎11から離間された位置に設置される場合には、基礎11を用いて断熱壁部58を構築するのが困難になるため、かかる構成とすることが望ましい。
(2)上記実施形態では、壁パネル60a〜60cにおいて、下地面材61における断熱空間部68側の面にユニット断熱材62を設置したが、これに代えて又は加えて、下地面材61における断熱空間部68側とは反対側の面にユニット断熱材62を設置してもよい。
また、上記実施形態では、基礎11の立ち上がり部17の囲い部分17aにおいて断熱空間部68側の面に基礎断熱材69を設置したが、これに代えて又は加えて、囲い部分17aにおける屋外側の側面に基礎断熱材69を設置してもよい。
(3)上記実施形態では、壁パネル60a(60c)の端面を立ち上がり部17の側面に対向させた状態で、壁パネル60a(60c)と立ち上がり部17とを連結金具73,(74)により連結したが、それら両者17,60a(60c)を連結する連結部材の構成は必ずしもこれに限らない。例えば、連結部材を、立ち上がり部17の上方において当該立ち上がり部17をその厚み方向に跨ぐようにして延び、一端側が壁パネル60a(60c)の上端部に取り付けられる跨ぎ部と、跨ぎ部の他端側から下方に延びて、立ち上がり部17における壁パネル60a(60c)側とは反対側の側面に引っ掛けられる引っ掛け部とを有して構成してもよい。この場合、壁パネル60a(60c)に取り付けられた連結部材の引っ掛け部を立ち上がり部17に引っ掛けることにより、同パネル60a(60c)を連結部材を介して立ち上がり部17に連結できる。そのため、壁パネル60a(60c)の立ち上がり部17に対する連結作業を容易なものとすることができる。
以下、その具体例を図9を用いて説明する。なお、図9は、立ち上がり部17と壁パネル60cとの連結部の構成を示す断面図である。図9では、基礎11の立ち上がり部17と壁パネル60cとが連結部材97により連結されている。連結部材97は、ステンレス等の鋼板からなる連結板98を備える。連結板98は、立ち上がり部17の上面に載置されて、当該立ち上がり部17をその厚み方向に跨ぐように延びる跨ぎ部としての跨ぎ板部99を有する。跨ぎ板部99の一端側(壁パネル60c側)は、壁パネル60c上に載置されており、同パネル60c(詳細にはその下地面材61)に対してボルト103により固定されている。また、連結板98は、跨ぎ板部99の他端部から下方に垂下された垂下板部100を有する。垂下板部100は、立ち上がり部17における壁パネル60cとは反対側の側面に対向して設けられ、その対向面にはナット105が溶接固定されている。このナット105には、ボルト106が垂下板部100の挿通孔部(図示略)に挿通された状態で螺合されており、その先端部が立ち上がり部17における壁パネル60cとは反対側の側面に当接されている。この場合、ボルト106が立ち上がり部17の上記側面に引っ掛けられた状態となっており、この引っ掛けにより壁パネル60cが連結部材97を介して立ち上がり部17に連結されている。なおここでは、連結部材97の垂下板部100やボルト106等により引っ掛け部が構成されている。
また、連結部材97は、壁パネル60cの端面を立ち上がり部17の側面に向けて押し付ける押し付け手段を有している。図9の構成では、押し付け手段がボルト106及びナット105により構成されている。具体的には、ボルト106の先端部が立ち上がり部17の側面に当接された状態で、ボルト106を締め付け方向に回転させ、ボルト106をナット105に対して立ち上がり部17側に移動させると、ナット105にはボルト106を通じて立ち上がり部17から離間する側(以下、離間側という)への外力が作用する。この場合、連結部材97ひいては連結部材97に固定された壁パネル60cに対しても上記離間側への外力が作用するため、結果として壁パネル60cの端面が立ち上がり部17の側面に押し付けられる構成となっている。かかる構成によれば、壁パネル60cの端面を立ち上がり部17の側面に向けて押し付けることで、壁パネル60cの端面と立ち上がり部17の側面との間に介在されている気密材66をそれら各面の間で挟み込むことができるため、立ち上がり部17の内側面と壁パネル60cの端面との間を通じて断熱空間部68に空気が出入りするのを抑制できる。
さらに、連結部材97において、跨ぎ板部99は、壁パネル60cの上端部に固定された固定部としての固定板部108と、固定板部108に対しヒンジ等を介して回動可能に取り付けられた回動部としての回動板部109とを有している。そして、回動板部109の回動により、立ち上がり部17に対する引っ掛け部の引っ掛け及びその解除が切替可能とされている。この場合、回動板部109を固定板部108に対し上方に回動させて引っ掛け部の引っ掛けを解除した状態(図9の一点鎖線参照)で、壁パネル60cの設置作業を実施できるため、同パネル60cの設置作業に際し、引っ掛け部が立ち上がり部17に干渉するのを回避でき、その結果設置作業を容易なものとすることができる。また、壁パネル60cを所定位置に設置した後は、回動板部109を下方に回動させることにより引っ掛け部を立ち上がり部17に引っ掛けることができるため、壁パネル60cの立ち上がり部17に対する連結作業についても容易に行うことができる。
(4)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。