以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の建物を、枠組壁工法により構築された二階建てのスチールハウスとして具体化している。図1は建物10の概略側面図、図2は建物10の概略平面図である。なお、図2においては、(a)に一階部分14を示し、(b)に二階部分15を示す。
図1に示すように、住宅等の建物10は、基礎11の上に設けられた建物本体12と、建物本体12の上に設けられた屋根13とを有している。建物本体12は、下階部としての一階部分14と、上階部としての二階部分15とを有している。屋根13は、陸屋根(フラットルーフ)になっている。なお、屋根13は、切妻屋根等の傾斜屋根とされていてもよい。
建物10は、複数の住戸21を有する集合住宅であり、それぞれの住戸21が一階空間及び二階空間を有するメゾネットタイプになっている。本実施形態では、2つの住戸21が横並びに配置されている。図2(a)に示すように、一階部分14においては、各住戸21がリビング23、キッチン24及び玄関25をそれぞれ有しており、図2(b)に示すように、二階部分15においては、各住戸21が第1洋室27、第2洋室28及び収納室29を有している。第1洋室27及び第2洋室28は、寝室や子供部屋等として使用可能になっており、収納室29はウォークインクローゼット等として使用可能になっている。
図2(a)に示すように、各住戸21の玄関25は、建物10の外壁31に形成された玄関口32をそれぞれ有している。玄関口32には、開き戸等の玄関ドアが設けられている。図1、図2(b)に示すように、建物10は、各住戸21の玄関口32に掛け渡された状態で設けられた庇部33を有している。庇部33は、外壁31から屋外側に向けて延びており、各住戸21の境界部(界壁)を左右に跨いだ状態で設けられている。この場合、玄関口32ごとに個別に庇部33が設けられているのではなく、1つの庇部33が各玄関口32に対して設けられていることになる。なお、外壁31においては、互いに交差する方向に延びる壁部が建物10の外周面に沿って並べられており、これら壁部のうち庇部33(玄関口32)が設けられた壁部が外壁部に相当する。
庇部33の構成について、図3、図4を参照しつつ説明する。図3、図4は庇部33周面の縦断面図である。なお、図3は図2(b)のA−A線断面図であり、図4(a)は図2(b)のB−B線断面図であり、図4(b)は図2(b)のC−C線断面図である。
図3に示すように、建物10は、基礎11の上に立設された一階壁枠35と、この一階壁枠35の上に設けられた二階床部15aと、二階床部15aの上に立設された二階壁枠36とを有している。二階床部15aは、合板等の床下地材やフローリング材等の床仕上材といった床面材38と、床面材38を支持する床下地39とを有しており、床面材38は床下地39の上に横並びに複数設けられている。
一階壁枠35及び二階壁枠36は、上枠部、下枠部及び縦枠部をそれぞれ有しており、これら枠部が連結されることで形成されている。これら壁枠35,36には、合板等の壁構造板43が取り付けられており、この壁構造板43は、上枠部と下枠部とに掛け渡された状態で設けられている。外壁31は、壁枠35,36及び壁構造板43を有していることで耐力壁等の構造壁になっている。なお、間仕切壁についても、壁枠35,36及び壁構造板43を有していれば構造壁になっている。
外壁31は、壁枠35,36の屋外側に設けられた外壁パネル45と、外壁パネル45の屋内側面に沿って延びた外壁断熱層46とを有している。外壁パネル45は、窯業系サイディングボード等の外壁面材48と、この外壁面材48を支持する面材下地49とを有しており、面材下地49が壁枠35,36に取り付けられている。外壁断熱層46は、ウレタンフォーム等の発泡系断熱材や木材等により板状に形成されており、ある程度の形状保持力を有していることで、面材下地49と共に外壁下地部を形成している。外壁断熱層46は、外壁パネル45と壁枠35,36との間に設けられた壁側断熱部46aと、床下地39と庇部33との間に設けられた床側断熱部46bとを有している。床側断熱部46bは、木材により形成されており、床下地39と庇部33との間に挟まった状態になっている。なお、床側断熱部46bを形成する木材が外壁下地材に相当する。
図3、図4(a)に示すように、庇部33は、外壁31から側方に向けて延びた庇本体51と、庇本体51から上方に向けて延びたパラペット52とを有している。パラペット52は、庇本体51の周縁部に沿って延びており、庇本体51の屋根面(上面)の四方がパラペット52及び外壁31により囲まれた状態になっている。パラペット52は、外壁31から遠ざかる向きに延びた一対の延出部分52aと、これら延出部分52aを連結した連結部分52bとを有しており、平面視略コ字状に形成されている。
庇部33においては、庇本体51がパラペット52に対して下方に凹んだような形状になっており、庇本体51の上面に溜まった雨水等が庇部33の周縁部からまとめて流れ落ちるということを防止できる。このため、住人等が庇部33の下方位置に出入りする際に身体が濡れやすくなることや、庇部33の周縁部から流れ落ちた水の勢いで地面が凹んだり水が上方に跳ね返ったりすることを抑制できる。
パラペット52の上端部には笠木53が取り付けられている。笠木53は、断面略コ字状に形成されており、溝部を下方に向けてパラペット52の上端部に沿って延びている。この場合、パラペット52の上端部が笠木53の溝部内に下方から入り込んだ状態になっており、パラペット52の上端部が雨水等で濡れないようになっている。
庇本体51には、雨水等を排出する排水口55が設けられており、この排水口55には樋56が接続されている。庇本体51には、上下に貫通する排水孔が形成されており、樋56はこの排水孔に挿通されている。この場合、排水孔の上端部が排水口55を形成している。
庇本体51の上面は、排水口55の周囲が最も低い位置になるように水勾配を有しており、庇本体51の上に溜まった水は排水口55に向けて流れ、排水口55から樋56に排出されるようになっている。排水口55は、外壁31寄りの位置に配置されており、樋56は排水口55から下方に向けて外壁31に沿って延びている。この場合、庇部33の下方において樋56を極力目立たないように設置できる。これに対して、例えば、排水口55が庇部33の自由端寄りの位置に配置された構成では、樋56を庇部33の下面に沿って外壁31から遠ざかる方向に延ばす必要があるため、樋56が目立ちやすくなってしまう。
庇部33においては、庇本体51及びパラペット52の下側に天井面材58が設けられている。天井面材58は、防水性を有する板材により形成されており、野縁59を介して庇本体51やパラペット52に取り付けられている。
図4(b)に示すように、床下地39は、外壁31を貫通して庇部33に向けて突出した床梁61を有している。床梁61は、複数の軽量溝形鋼を組み合わせることで、全体として矩形筒状に形成されている。具体的には、互いの溝部が向き合っている一対のリップ付き溝形鋼と、これらリップ付き溝形鋼を挟んで配置された上下一対のリップ無し溝形鋼とを有しており、各リップ付き溝形鋼は、各リップ無し溝形鋼の溝部内に入り込んだ状態でこれらリップ無し溝形鋼に固定されている。床梁61は、外壁31から屋外側に持ち出された持ち出し梁に相当し、床梁61においては、外壁31から庇部33側に突出した屋外部分が庇部33のパラペット52に含まれている。床梁61の高さ寸法は庇本体51の高さ寸法よりも大きくなっており、床梁61が庇本体51よりも上方に延びた状態になっている。
次に、二階床部15a及び庇部33の構成について、図5〜図7を参照しつつ説明する。図5は床パネル62及び庇パネル65の配置を示す概略図、図6は床パネル62及び庇パネル65の構成を示す平面図、図7は庇部33周辺の内部構造を示す斜視図である。なお、図5においては、(a)に二階部分15全体の図を示し、(b)に庇部33周辺の分解図を示す。図6においては、床面材38の図示を省略している。
図5(a),(b)に示すように、二階床部15aは、横並びに配置された複数の床パネル62を有している。床パネル62は、床面材38(図3参照)と、床下地39を構成する床枠63(図6参照)とを有している。床面材38は矩形状に形成され、床枠63は矩形枠状に形成されており、床面材38が床枠63の上に重ねられることで床パネル62は全体として矩形状に形成されている。複数の床パネル62には、床枠63が床梁61を有する第1床パネル62Aと、床枠63が床梁61を有していない第2床パネル62Bとが含まれている。この場合、第1床パネル62Aが梁有り床パネルに相当し、第2床パネル62Bが梁無し床パネルに相当する。
第2床パネル62Bは、庇部33の幅方向において外壁31に沿って複数並べられており、これら第2床パネル62Bは、いずれも外壁31を挟んで庇部33に隣り合う位置に配置されている。第1床パネル62Aは、庇部33の幅方向において、各第2床パネル62Bが設置された領域の両側方のそれぞれに配置されている。この場合、一対の第1床パネル62Aの間に複数の第2床パネル62Bが配置されていることになる。
一対の第1床パネル62Aにおいては、第2床パネル62B側の端部から床梁61が屋外側に向けてそれぞれ突出しており、この突出部分に対しては床面材38が取り付けられていない。
一対の第1床パネル62Aの各床梁61を一対の床梁61と称すれば、庇部33は、一対の床梁61の間に配置された庇パネル65と、外壁31よりも屋外側において一対の床梁61の各自由端を連結した屋外梁66とを有しており、庇パネル65は、一対の床梁61に掛け渡された状態になっている。庇パネル65は、庇部33の延出方向において、第2床パネル62Bと屋外梁66との間に配置されており、床梁61、屋外梁66(第1床パネル62A)及び第2床パネル62Bのそれぞれに対してビス等により固定されている。ここで、庇パネル65及び各第2床パネル62Bが一対の床梁61の間に配置されていることに起因して、庇パネル65の幅寸法は、各第2床パネル62Bが設置された領域の幅寸法に同じになっている。このため、建物10を構築する前の設計段階において、庇パネル65の幅寸法を容易に設定することができる。
図6に示すように、第1床パネル62A及び第2床パネル62Bの各床枠63は、外壁31の壁幅方向(庇部33の幅方向)に延びた一対の端根太63aと、一対の端根太63aを連結した連結根太63bとを有している。連結根太63bは、端根太63aの長手方向に所定間隔で複数並べられており、床枠63は、全体として矩形枠状に形成されている。端根太63aはリップ無し溝形鋼により形成され、連結根太63bはリップ付き溝形鋼により形成されている。床枠63においては、一対の端根太63aが互いの溝部を向い合せて配置されており、連結根太63bの端部が各端根太63aの溝部内に入り込んだ状態になっている。連結根太63bの並び方向において隣り合う床パネル62においては、これら床パネル62の境界部を跨いで隣接する連結根太63bがビス等により互いに固定されている。
なお、第1床パネル62A及び第2床パネル62Bの各端根太63a及び各連結根太63bが根太部材に相当し、特に、第2床パネル62Bの端根太63a及び連結根太63bは床根太に相当する。
第1床パネル62Aの床枠63においては、複数の連結根太63bのうち、第2床パネル62B側の端部に配置されたものが床梁61になっており、この床梁61については、端根太63aの溝部内に入り込んでいるのではなく、端根太63aの側方に配置されている。この場合、端根太63aの端部が床梁61の側面部に対して固定されている。床梁61は、一対の端根太63aのうち外壁31側に配置された端根太63aよりも側方に突出している一方で、屋内側に配置された端根太63aよりも側方に突出していない。また、床梁61は、隣接する第2床パネル62Bの連結根太63bにビス等により固定されている。この場合、第1床パネル62A及び第2床パネル62Bにおいては、床梁61が外壁31と貫通して屋外側に突出している一方で、他の連結根太63b,71bは外壁31を貫通せずに屋内側に配置されている。
庇パネル65は、床梁61に対して固定された庇枠71と、この庇枠71の上面に対して取り付けられた合板等の庇面材72とを有している。庇枠71は、床パネル62の端根太63a及び連結根太63bと同様に、端根太71a及び連結根太71bを有しており、全体として矩形枠状に形成されている。庇枠71においては、床梁61に隣接する連結根太71bがその床梁61にビス等により固定され、自由端側の端根太71aが屋外梁66にビス等により固定されている。また、庇枠71の端根太71aは、一対の床梁61に掛け渡された状態になっており、連結根太71bは庇横材に相当する。
庇パネル65は、床側断熱部46bを介して第2床パネル62Bに対して固定されている。具体的には、庇枠71と第2床パネル62Bの床枠63との間には外壁31の床側断熱部46bが配置されており、庇枠71においては、基端側の端根太71aが床側断熱部46bを介して第2床パネル62Bの端根太63aにビス等により固定されている。この場合、床側断熱部46bは、第2床パネル62Bと庇パネル65との間に挟み込まれた状態になっている。
図7に示すように、第1床パネル62A及び第2床パネル62Bの各床枠63においては、端根太63a及び連結根太63bの各上面がほぼ同じ高さ位置に配置されている。また、これら床パネル62A,62Bの各床枠63及び屋外梁66については、それぞれの上面がほぼ同じ高さ位置に配置されている一方で、庇パネル65の庇枠71の上面は、床パネル62A,62b及び屋外梁66の各上面よりも所定寸法(150mm程度)だけ低い位置に配置されている。この場合、床梁61、第2床パネル62Bの端根太63a及び屋外梁66が庇パネル65の庇枠71よりも上方に延びており、それによって、これら床梁61、端根太63a及び屋外梁66と庇枠71との間に段差が形成されている。
第1床パネル62A及び第2床パネル62Bにおいて、各端根太63aの高さ寸法を床枠63の高さ寸法H1,H2とした場合、屋外梁66の高さ寸法H3は、これら高さ寸法H1,H2と同じ値(例えば238mm)に設定されている。ここで、第1床パネル62Aにおいては、複数の連結根太63bのうち床梁61だけが、端根太63aと同じ高さ寸法H1を有している。
庇パネル65において、端根太71aの高さ寸法を庇枠71の高さ寸法H4とした場合、この高さ寸法H4は、床パネル62A,62B及び屋外梁66の高さ寸法H1〜H3よりも小さい値(例えば92mm)に設定されている。この場合、庇パネル65の端根太71aの下面が、床パネル62A,62Bの各端根太63a及び屋外梁66の各下面と同じ高さ位置に配置されている。
なお、端根太63a,71aや連結根太63b,71bが軽量溝形鋼により形成されていることにより、床パネル62A,62Bの各床枠63及び庇パネル65の庇枠71の上面や下面はほぼ平坦面になっている。
床パネル62A,62B及び庇パネル65は、端根太63a,71aが上下方向に潰れることを防止する潰れ防止部材75を有している。潰れ防止部材75は、リップ付きの軽量溝形鋼であり、端根太63a,71aの溝部内に上下方向に延びた状態で設置されている。潰れ防止部材75は、端根太63a,71aの上側フランジと下側フランジとの間に嵌め込まれた状態で、連結根太63b,71bにビス等により固定されている。潰れ防止部材75は、そのウェブやリップが連結根太63b,71bのウェブやリップに重なった状態になっている。
図3、図4(a),(b)の説明に戻り、庇部33は、庇パネル65、床梁61及び屋外梁66を覆う庇断熱層81を有している。庇パネル65、床梁61及び屋外梁66を庇部33の骨格と称すれば、この骨格の周囲が庇断熱層81により覆われていることになる。庇断熱層81は、庇パネル65を上下に挟んで対向する一対のパネル断熱部82a,82bと、床梁61及び屋外梁66を左右に挟んで対向する一対の梁断熱部83a,83bと、床梁61及び屋外梁66の上端に対して設けられた上端断熱部84とを有している。これら断熱部82a,82b,83a,83b,84は、いずれもウレタンフォーム等の発泡系断熱材により板状に形成されており、庇部33の骨格に対して固定されている。
一対のパネル断熱部82a,82bは、庇パネル65の上面及び下面に沿ってそれぞれ延びている。上側のパネル断熱部82aは、庇面材72の上面に重ねられており、下側のパネル断熱部82bは、庇枠71の下面と床梁61及び屋外梁66の各下面とに掛け渡された状態になっている。
一対の梁断熱部83a,83bは、パラペット52の外周側及び内周側のそれぞれにおいて、床梁61及び屋外梁66の側面に沿って延びている。外周側の梁断熱部83aは、断熱構造において下側のパネル断熱部82bに連続しており、このパネル断熱部82bから上方に向けて延びている。内周側の梁断熱部83bは、断熱構造において上側のパネル断熱部82aに連続しており、このパネル断熱部82aから上方に向けて延びている。内周側の梁断熱部83bについては、庇パネル65の庇枠71の高さ寸法H4が床梁61の高さ寸法H1及び屋外梁66の高さ寸法H3より小さいことに起因して、庇パネル65の上方位置に配置することが可能になっている。また、内周側の梁断熱部83bは、庇面材72の上方位置において、パネル断熱部82aに横並びに配置されている。
上端断熱部84は、床梁61及び屋外梁66の各上面に重ねられており、外周側の梁断熱部83aと内周側の梁断熱部83bとに掛け渡された状態になっている。この場合、上端断熱部84は、断熱構造において梁断熱部83a,83bのそれぞれと連続している。上端断熱部84は、パラペット52の上端部に含まれており、笠木53により上方から覆われている。
また、庇部33は、庇断熱層81の上側に設けられた防水下地板87と、防水下地板87に重ねられた防水シート88とを有している。防水下地板87は、所定の耐火性能を有する不燃材により形成されており、庇部33の凹み部分の内側面に沿って延びるように設けられている。庇部33の凹み部分において、防水下地板87は、上側のパネル断熱部82aの上面と、内周側の梁断熱部83bの内周面と、床側断熱部46bの内周面に重ねられている。なお、防水下地板87は、上側のパネル断熱部82aと内周側の梁断熱部83b及び床側断熱部46bとの間に入り込んだ状態になっている。ここで、防水下地板87が防水性も有していることで、上側のパネル断熱部82aと内周側の梁断熱部83b及び床側断熱部46bとが、断熱構造において連続した状態が実現されている。
防水シート88は、防水性及び柔軟性を有しており、防水下地板87と同様に、庇部33の凹み部分の内側面に沿って延びるように設けられている。この場合、防水シート88は、上側のパネル断熱部82aと内周側の梁断熱部83bと床側断熱部46bとに掛け渡された状態になっている。また、防水シート88は、内周側の梁断熱部83bの内周面から上端断熱部84の上面(パラペット52の上端面)に回り込むように延びている。このため、防水シート88の端部が笠木53の溝部内に入り込んだ状態になっている。
なお、庇部33は小型の屋根であり、庇部33の上面は屋根面に相当する。この場合、防水下地板87及び防水シート88は屋根面材に相当する。また、防水シート88は、庇パネル65の上側において防水層を形成している。
次に、建物10の構築手順について簡単に説明する。まず、基礎11の上に一階壁枠35を立設し、一階壁枠35の上に第1床パネル62Aや第2床パネル62B等の床パネル62を設置する。そして、第1床パネル62Aの床梁61に対して庇パネル65及び屋外梁66を取り付け、庇部33の骨格を形成する。また、床パネル62の上に二階壁枠36を立設し、一階壁枠35及び二階壁枠36に対して外壁パネル45及び外壁断熱層46を取り付けることで外壁31を形成する。庇部33の骨格に対しては、外壁断熱層46に連続するように庇断熱層81を取り付ける。このため、庇部33が外壁31から屋外側に突出した状態になっていても、建物10の外周面において断熱層が連続した状態になっている。
庇部33については、その骨格に庇断熱層81を取り付けた後、庇パネル65の上面と床梁61及び屋外梁66の各側面とに重ねるように防水下地板87及び防水シート88を取り付けることで、庇本体51及びパラペット52を形成する。そして、パラペット52の上端部に対して笠木53を取り付け、庇本体51及びパラペット52の下側に対して天井面材58を取り付ける。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
床梁61が建物本体12から持ち出された状態で設けられているため、建物本体12による床梁61の支持強度を高めることができる。この場合、庇部33の下方に支柱を設置する必要がないため、庇部33周辺の意匠性が支柱の存在によって低下するということを回避できる。
床梁61を有する第1床パネル62Aが、庇部33の延出方向において庇パネル65に隣り合わない位置に配置されているため、庇パネル65に隣り合う第2床パネル62Bの数を極力多く確保することができる。この場合、庇パネル65が極力多くの床パネル62に対して固定されているため、二階床部15aに対する庇部33の固定強度を高めることができる。
床梁61及び屋外梁66が複数の軽量溝形鋼を組み合わせて形成されているため、これら床梁61及び屋外梁66に対して潰れ防止部材75を取り付ける必要がない。また、床梁61及び屋外梁66が全体として矩形筒状に形成されているため、端根太63a,71aや連結根太63b,71bを、それぞれの外周面を床梁61や屋外梁66の外周面に重ねた状態で固定することができる。これにより、床梁61や屋外梁66に対する端根太63a,71aや連結根太63b,71bの固定強度を高めることができる。
パラペット52付きの庇部33が玄関口32の上方に配置されているため、玄関口32から玄関25に出入りする住人等が庇部33の周縁部から流れ落ちが雨水等により濡れるということを抑制できる。また、庇部33は、隣り合う住戸21の各玄関口32に掛け渡されていることで大型化しているため、庇本体51の上面に溜まる雨水等の水量が多くなりやすいと考えられる。このため、庇部33にパラペット52が設けられていることは、多量の雨水等が庇部33の周縁部から流れ落ちることを抑制する上で好ましい。
庇部33においては、床梁61や屋外梁66が庇パネル65の庇枠71から上方に向けて突出しているため、この突出部分を利用してパラペット52を形成することができる。この場合、パラペット52の骨格を構成するための専用部材を床梁61や屋外梁66の上に設置する必要がないため、パラペット52の高さ寸法を極力小さくすることができる。このため、パラペット52付きの庇部33を構築しても、パラペット52の分だけ庇部33の周縁部が分厚くなったように見えるということを抑制できる。つまり、庇部33を全体として極力薄い形状にすることで、庇部33の意匠性を高めることができる。
庇部33においては、単に床梁61や屋外梁66の側面に沿って防水下地板87や防水シート88を立ち上げることで、パラペット52を形成することが可能になる。このため、庇本体51及びパラペット52に対して防水処理を容易化できる。
庇パネル65に床梁61や屋外梁66が含まれていないため、庇枠71のほぼ全体が高さ寸法H4を有している。例えば、庇パネル65に床梁61や屋外梁66が含まれた構成では、庇枠71の一部分だけが大きな高さ寸法H1,H3を有している(庇パネル65の一部分だけが分厚い)ことになり、庇パネル65を工場から建築現場に運搬する際などの作業負担が大きくなることが懸念される。これに対して、本実施形態では、庇パネル65の一部分だけが分厚くなるということがないため、庇パネル65を運搬する際の作業負担を低減できる。
床梁61が第1床パネル62Aに含まれているため、第1床パネル62Aを設置することが床梁61を設置することになる。このため、例えば床梁61が床パネル62から独立した状態で製造された場合に比べて、床梁61及び床パネル62を設置する際の作業負担を低減できる。しかも、第1床パネル62Aは、床梁61を有していることに起因して、第2床パネル62Bとは形状が明らかに異なっているため、作業者が第1床パネル62Aの設置位置を間違えるということを抑制できる。
第2床パネル62Bの床枠63の高さ寸法H2が床梁61の高さ寸法H1と同じであるため、庇本体51からのパラペット52の立ち上がり寸法を、庇本体51からの二階床部15aの立ち上がり寸法に合わせることができる。このため、庇本体51の上に溜まった水が庇部33の周縁部から流れ落ちること及び庇部33の意匠性が低下することの両方を抑制する上で、パラペット52の立ち上がり寸法を適正に設定することができる。
二階床部15aにおいては、一対の床梁61の間が複数の第2床パネル62Bの設置領域にされ、庇部33においては、一対の床梁61の間が庇パネル65の設置領域にされているため、建物10を構築する際の設計段階において、各第2床パネル62Bの幅寸法と庇パネル65の幅寸法とを容易に設定することができる。これに対して、例えば、第1床パネル62Aが庇部33の延出方向において庇パネル65に隣り合う位置に配置された構成では、二階床部15aにおいて一対の第1床パネル62Aの間の離間距離が、庇部33において一対の床梁61の間の離間距離よりも小さくなる。この場合、第2床パネル62Bの幅寸法と庇パネル65の幅寸法とを個別に設定する必要が生じるため、設計負担が大きくなることが懸念される。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、庇パネル65の庇枠71の高さ寸法H4が第1床パネル62A(床梁61)や第2床パネル62B、屋外梁66の高さ寸法H1〜H3よりも小さくされていたが、庇枠71の高さ寸法H4は高さ寸法H1〜H3と同じ又はそれよりも大きくされていてもよい。この場合でも、庇枠71の上面が床パネル62A,62Bの各床枠63の上面や屋外梁66の上面よりも低い位置に配置されていれば、床パネル62A,62Bの各床枠63や屋外梁66が庇枠71よりも上方に突出した構成を実現できる。つまり、床梁61が庇枠71よりも上方に突出した構成を実現できる。
(2)上記実施形態では、庇部33の骨格が庇断熱層81により屋外側から覆われていたが、庇断熱層81は、庇部33の骨格のうち少なくとも床梁61を屋外側から覆っていればよい。例えば、庇断熱層81が梁断熱部83a,83b及び上端断熱部84を有している一方で、パネル断熱部82a,82bを有していない構成とする。この構成でも、庇パネル65と第2床パネル62Bとの間に床側断熱部46bが設けられていることに起因して、庇パネル65の骨格を通じて屋外側と屋内側とで熱の伝達が行われることが抑制される。
(3)上記実施形態では、庇パネル65の庇枠71と第2床パネル62Bの床枠63との間に外壁断熱層46が設けられていたが、これら庇枠71と床枠63との間には、外壁断熱層46が設けられていなくてもよい。例えば、庇枠71と床枠63との間に、断熱性能の低い外壁下地材や防水シートが設けられた構成とする。この構成でも、庇部33の骨格が庇断熱層81により屋外側から覆われていることにより、建物本体12の断熱性が低下することを抑制できる。
(4)上記実施形態では、庇部33の防水層が防水シート88により形成されていたが、防水層は、鋼材に防水皮膜が付与された防水板により形成されていてもよい。例えば、防水下地板87及び防水シート88に代えて防水板が設けられた構成とする。この構成では、防水下地板87を設けなくても防水板により庇部33の屋根面の強度を適正に確保することができる。このため、庇部33のメンテナンス等が行われる際に作業者が庇部33の屋根面に荷重を加えたとしても、防水層が破れたり切れたりすることや、庇断熱層81が局所的に変形することを抑制できる。
(5)上記実施形態では、庇部33において、端根太71aと連結根太71bとが床パネル62として床梁61や屋外梁66に対してまとめて固定されていたが、端根太71aや連結根太71bは、床梁61や屋外梁66に対して個別に固定されていてもよい。例えば、複数の連結根太71bが屋外梁66に対して直接的に固定され、これら連結根太71bに掛け渡すように端根太71aが設けられ、この端根太71aが第2床パネル62Bの床枠63に対して固定された構成とする。この構成でも、端根太71a及び連結根太71bの上面を床梁61や屋外梁66の上面よりも低い位置に配置することができる。
(6)庇部33においては、庇パネル65が床梁61や屋外梁66に沿って横並びに複数設けられていてもよい。特に、屋外梁66に沿って複数の庇パネル65が並べられた構成では、1つの庇パネル65が一対の床梁61に掛け渡された状態にならない。この場合、各庇パネル65は、屋外梁66に対して固定されていることで庇部33の骨格により適正に支持されている。
(7)上記実施形態では、床梁61を有する第1床パネル62Aが、庇部33に対してその庇部33の幅方向にずれた位置に配置されていたが、第1床パネル62Aは、庇部33の延出方向においてその庇部33に隣り合う位置に配置されていてもよい。この構成では、庇パネル65の端根太71aが外壁断熱層46を介して第1床パネル62Aの端根太63aに対して固定されている。この場合、第1床パネル62Aにおいては、床梁61に加えて端根太63aに対して庇パネル65が固定されているため、第1床パネル62Aに対する庇パネル65の固定強度を高めることができる。
また、1つの第1床パネル62Aが複数の床梁61を有していてもよい。例えば、1つの第1床パネル62Aが一対の床梁61を有しており、庇パネル65が、これら床梁61の間に配置されることで第1床パネル62Aに横並びに配置された構成とする。
(8)上記実施形態では、二階床部15aには、床梁61を有する第1床パネル62Aが設けられていたが、床梁61を有する第1床パネル62Aは設けられていなくてもよい。例えば、床パネル62とは独立して製造された床梁61が外壁31を屋内外に貫通した状態で設けられた構成とする。この構成の床梁61は、二階床部15aにおいて隣り合う床パネル62の間に配置されおり、これら床パネル62のそれぞれに対して固定されている。この構成でも、建物本体12から持ち出された状態で床梁61を設置することができる。
(9)上記実施形態では、床パネル62及び庇パネル65が、それぞれの端根太63a,71aが庇部33の幅方向に延びる向きで配置されていたが、これらパネル62,65は、連結根太63b,71bが庇部33の幅方向に延びる向きで配置されていてもよい。例えば、庇パネル65の連結根太71bが庇部33の幅方向に沿って延び、この連結根太71bが第2床パネル62Bの端根太63aに対して固定された構成とする。
(10)上記実施形態では、庇パネル65が床梁61及び屋外梁66に対して固定されていたが、庇パネル65が床梁61や屋外梁66を有していてもよい。例えば、庇パネル65において、複数の連結根太71bのいずれかが床梁61とされた構成では、床梁61が床パネル62に固定されることで庇パネル65が床パネル62に対して固定されることになる。また、庇パネル65において、端根太71aが屋外梁66とされた構成では、屋外梁66が床梁61に固定されることで庇パネル65が床梁61に対して固定されることになる。
(11)上記実施形態では、庇部33が玄関口32の上方に設けられていたが、庇部33は、勝手口や窓部などの上方に設けられていてもよい。つまり、庇部33は、外壁31に形成された開口部の上方に設けられていればよい。また、3つ以上の住戸21を有する集合住宅においては、庇部33が3つ以上の住戸21に掛け渡された状態で設けられていてもよい。
(12)上記実施形態では、集合住宅において、庇部33が隣り合う住戸21の各玄関口32に掛け渡された状態で設けられていたが、庇部33は、集合住宅の共用部分に対して設けられていてもよい。例えば、集合住宅の一階部分14が、各住戸21に通じる共用通路と、この共用通路に通じる共用出入口とを有しており、庇部33が共用出入口の上方位置に配置された構成とする。
(13)上記実施形態では、集合住宅である建物10に庇部33が設けられていたが、庇部33は、一戸建ての住宅に設けられていてもよい。
(14)上記実施形態では、庇部33が二階建て建物の二階部分15に設けられていたが、この庇部33は、複数階建て建物の上階部に設けられていればよい。例えば、二階部分に玄関口32が設けられた二世帯住宅において、庇部33が三階部分の床部の側方に設けられた構成とする。
また、庇部33は、枠組壁工法により構築された建物10ではなく、鉄骨軸組工法により構築された建物やユニット式建物に設けられていてもよい。いずれの場合でも、建物本体12から持ち出された状態で床梁61が設けられていれば、この床梁61により庇部33を好適に支持できる。