しかしながら、上記特許文献1に開示の構成においては、湿式モルタルによる露出部分の埋め込み作業は作業者の技量によるところが大きく、建物の建築現場において品質を安定させ難いという問題があった。また、化粧用として用いる湿式モルタルはあくまで柱脚部を覆うものであるため、それ自体にはそれほど強度を期待できない。このため、例えば地震や強風に起因する荷重に伴い建物の上部構造や基礎部から湿式モルタルの施工部分に水平荷重や振動が入力されると、基礎や上部構造に特段損傷が発生していないにも拘らず、当該モルタル部分にひび割れや剥離が発生してしまうことが考えられる。
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる柱脚保護構造及び保護カバーを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明に係る柱脚保護構造は、建物の上部構造と、上部構造の柱の下端から下方に延在する鋼製の柱脚部と、柱脚部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の基礎構造の基礎部と、基礎部と上部構造の外壁の下端部との間に設けられて柱脚部の一部又は全部を包囲する保護カバーと、を備え、保護カバーは、柱脚部の側面に対向するカバー本体部と、カバー本体部から柱脚部に向けて突設されて柱脚部に係合する係合部と、を備え、カバー本体部は、基礎部の上面から外壁の下端部までの長さよりも小さい高さを有して形成され、保護カバーの係合部が柱脚部に係合した状態でカバー本体部の下端部は基礎部の上面から離間してこれらの間に隙間が形成されており、カバー本体部の下端部と基礎部の上面との隙間に第1シール材が充填されていることを特徴とする。
この発明では、保護カバーは、係合部が柱脚部に係合することで支持されると共に、基礎部から離間した状態で設置される。また、カバー本体部と基礎部との間に第1シール材が充填される。これにより、保護カバーは、荷重伝達の観点からは基礎部から縁が切れた状態となる。従って、基礎部に地震等による水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達が第1シール材により著しく低減され、当該保護カバーの損傷を防止することができる。
また、基礎部から伝達される地震力は時には甚大であり、基礎はコンクリート基礎として密実に強度な剛性を有して形成される。一方、従来の化粧モルタル(湿式モルタル)は地震に対する強度はほとんど期待できない。このため、従来のように化粧モルタルを用いた場合には、基礎部や上部構造は地震に対して抵抗力を有している一方、これらの間の化粧モルタルのみが弱く、これによって、当該化粧モルタルのみが破壊してしまう等の問題が発生していた。これに対し、本願の如く保護カバーと基礎部とを完全に構造的に縁を切ることによって、当該保護カバーへの荷重の入力が著しく減少することとなり、保護カバーの破壊を免れることができる。
また、保護カバーと基礎部との間は第1シール材によって水密に連結されるものとなるので、これらの間から柱脚部に向けての雨水等の浸入を抑制することができると共に気密性も確保され、柱脚部での内部結露の発生も抑制することができる。
また、保護カバーを設置するだけで柱脚部を覆うことができるため、モルタル等を用いて柱脚部を覆う場合に比べて品質や施工性が向上する。
このように、本発明に係る柱脚保護構造によれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。
また、上記柱脚保護構造において、柱脚部は、柱の下端部に連結される筒状の立上り部と、立上り部の下端部から当該立上り部の軸に対して離間する方向に延在して基礎部の上面に載置されるプレート状のベース部と、を備え、保護カバーの係合部は、ベース部の縁部に乗り上がった状態で係合する座面を備えていることが好ましい。この場合、係合部の座面を柱脚部のベース部の縁部に載せるだけで保護カバーを設置することができ、保護カバーの設置作業を著しく容易に行うことができる。
また、上記柱脚保護構造において、保護カバーのカバー本体部は、係合部が柱脚部に係合した状態で柱脚部の側面から離間して設けられていることが好ましい。この場合には、上述の如き地震発生時においては、基礎部に合わせて柱脚部も振動することとなるが、カバー本体部と柱脚部とが離間しているので、保護カバーは、柱脚部の振動の影響も受け難く、柱脚部の振動に伴う損傷も抑制される。
また、上記柱脚保護構造において、外壁の下端部には、外壁の外面を流下する流体の下方への流下を促す水切り部材が設けられており、保護カバーと水切り部材との間には隙間が設けられ、カバー本体部の上端部には、水切り部材の最外縁よりも外側から当該水切り部材の下方に回り込みつつ立ち上がって水切り部材との間に第2シール材を充填する充填スペースを形成するベッド部が設けられており、充填スペースに第2シール材が充填されることで、第2シール材を介して保護カバーの上端部と水切り部材の下端部とが連結されていることが好ましい。この場合には、カバー本体部の上端部と水切り部材との隙間に第2シール材が充填される。これによって、保護カバーは、荷重伝達の観点からは、基礎部に加えて更に上部構造とも縁が切れた状態となる。従って、風荷重や地震等に起因して上部構造に水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達は第2シール材により著しく低減され、これによって、保護カバーの損傷を更に確実に防止することができる。
また、水切り部材の下方に回りこんで立ち上がるようしてベッド部を設けているので、水切り部材とカバー本体部との間のスペースに第2シール材を充填する際に当該ベッドを背部からのシール押さえ(支持部)として用いることができる。これにより、第2シール材の充填作業の容易化、且つ、第2シール材を水切り部材の下方に確実に充填することができ、第2シール材が充填スペースから脱落等して雨水の流下の妨げとなることを防止できる。
また、上記柱脚保護構造において、保護カバーは、プレキャストコンクリートからなることが好ましい。この場合には、保護カバーを部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバーの寸法精度等も向上させることができる。また、保護カバーをプレキャストコンクリートによって形成することで、耐衝撃性を向上させることができる。これにより、例えば保護カバーに人や物が衝突する場合でも、保護カバーの損傷を防止することができる。ここで、プレキャストコンクリートとは、工場などで予め製造されたコンクリートを意味する。
また、上記課題を解決すべく、本発明に係る保護カバーは、上部構造と、上部構造の柱の下端から下方に延在する鋼製の柱脚部と、柱脚部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の基礎構造の基礎部とを有する建物において、基礎部と上部構造の外壁の下端部との間に設けられて柱脚部の一部又は全部を包囲する保護カバーであって、柱脚部の側面に対向するカバー本体部と、カバー本体部から柱脚部に向けて突設されて柱脚部に係合する係合部と、を備え、カバー本体部は、基礎部の上面から外壁の下端部までの長さよりも小さい高さを有して形成され、係合部が柱脚部に係合することでカバー本体部の下端部は基礎部の上面から離間してこれらの間に隙間が形成されることを特徴とする。
この発明では、保護カバーを、係合部を柱脚部に係合させることで基礎部から離間した状態で設置することができる。これにより、保護カバーは、柱脚部と基礎部との間に設置したときに、荷重伝達の観点からは基礎部から縁が切れた状態となる。従って、基礎部に地震等による水平荷重や振動が入力される場合であっても、当該保護カバーの損傷を防止することができる。
また、基礎部から伝達される地震力は時には甚大であり、基礎はコンクリート基礎として密実に強度な剛性を有して形成される。一方、従来の化粧モルタルは地震に対する強度はほとんど期待できない。このため、従来のように化粧モルタルを用いた場合には、基礎部や上部構造は地震に対して抵抗力を有している一方、これらの間の化粧モルタルのみが弱く、これによって、当該化粧モルタルのみが破壊してしまう等の問題が発生していた。これに対し、本願の保護カバーを用いることで、保護カバーと基礎部とを完全に構造的に縁を切ることができる。これにより、当該保護カバーへの荷重の入力を著しく減少させることができ、柱脚部と基礎部との間に保護カバーを設置した場合であっても、保護カバーの破壊を免れることができる。
また、保護カバーを設置するだけで柱脚部を覆うことができるため、モルタル等を用いて柱脚部を覆う場合に比べて品質や施工性が向上する。
このように、本発明に係る保護カバーによれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。
また、上記保護カバーにおいて、柱脚部には、柱の下端部に連結される筒状の立上り部と、立上り部の下端部から当該立上り部の軸に対して離間する方向に延在して基礎部の上面に載置されるプレート状のベース部と、が設けられており、係合部は、ベース部の縁部に乗り上がった状態で係合する座面を備えていることが好ましい。この場合、係合部の座面を柱脚部のベース部の縁部に載せるだけで保護カバーを設置することができ、保護カバーの設置作業を著しく容易に行うことができる。
また、上記保護カバーにおいて、カバー本体部は、係合部が柱脚部に係合した状態で柱脚部の側面から離間して設けられることが好ましい。この場合には、上述の如き地震発生時においては、基礎部に合わせて柱脚部も振動することとなるが、カバー本体部と柱脚部とが離間しているので、保護カバーは、柱脚部の振動の影響も受け難く、柱脚部の振動に伴う損傷も抑制される。
また、上記保護カバーにおいて、外壁の下端部には、外壁の外面を流下する流体の下方への流下を促す水切り部材が設けられており、カバー本体部の上端部には、水切り部材の最外縁よりも外側から当該水切り部材の下方に回り込みつつ立ち上がって水切り部材との間に第2シール材を充填する充填スペースを形成するベッド部が設けられていることが好ましい。この場合には、カバー本体部の上端部と水切り部材との隙間に第2シール材を充填することができる。これによって、柱脚部と基礎部との間に保護カバーを設置した場合、保護カバーは、荷重伝達の観点からは、基礎部に加えて更に上部構造とも縁が切れた状態となる。従って、風荷重や地震等に起因して上部構造に水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達は第2シール材により著しく低減され、これによって、保護カバーの損傷を更に確実に防止することができる。
また、水切り部材の下方に回りこんで立ち上がるようしてベッド部を設けているので、水切り部材とカバー本体部との間の充填スペースに第2シール材を充填する際に当該ベッドを背部からのシール押さえ(支持部)として用いることができる。これにより、第2シール材の充填作業の容易化、且つ、第2シール材を水切り部材の下方に確実に充填することができ、第2シール材が充填スペースから脱落等して雨水の流下の妨げとなることを防止できる。
また、上記保護カバーは、プレキャストコンクリートからなることが好ましい。この場合には、保護カバーを部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバーの寸法精度等も向上させることができる。また、保護カバーをプレキャストコンクリートによって形成することで、耐衝撃性を向上させることができる。これにより、例えば保護カバーに人や物が衝突する場合でも、保護カバーの損傷を防止することができる。
また、上記保護カバーは、カバー本体部と係合部とを有する複数の保護カバー形成体を連結して形成されることが好ましい。このように、複数の保護カバー形成体によって保護カバーを形成することで、保護カバー形成体の組み合わせによって様々な大きさの保護カバーを得ることができ、様々な大きさの柱脚部に対応ことができる。
本発明によれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る柱脚保護構造及び保護カバーを2階建ての建物に適用した一実施形態について詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、建物Xは、上部構造10と、柱脚部21と、柱脚部21を支持する基礎構造11と、を含んで構成される。上部構造10は、柱脚部21上に組み上げられる構造躯体12と、該構造躯体12に支持される外壁13と、該外壁13及び構造躯体12に沿って設けられる断熱層14と、建物Xの居室の壁面及び天井面を形成する内装構造15と、を備えて形成される地上2階の組立住宅である。なお、本実施形態の建物Xは、直交する複数の軸線を基準として設計される通り設計によるものである。以下では、建物Xの外周を形成する軸線を外通りと称し、建物の内側を通過する軸線を中通りと称する。また、上部構造10の下方であって基礎構造11に包囲される空間を下部空間Zと称し、当該基礎構造11や建物Xの外側の開放空間を外気Yと称する。
構造躯体12は、柱脚部21を介して基礎構造11上に立設される鉄骨柱(柱)16(図3参照)と、該鉄骨柱16間に架け渡される鉄骨梁17と、基礎構造11や鉄骨梁17に支持される床スラブ18(図1参照)と、を備えて形成される鉄骨軸組構造として構成されている。
床スラブ18は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の床パネルを敷設することにより形成されている。1階の床スラブ18を形成する床パネルは、端部を基礎構造11の上面に載置された状態で当該基礎構造11に支持されている。
外壁13は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁パネルを並べて配置することにより形成されている。また、1階の外壁パネルの下端部は、基礎構造11の上部に設けられる鉛直方向の断面が略L字状の支持金物26を介して基礎構造11に支持されている。なお、本実施形態においては、外壁13として軽量気泡コンクリートからなる外壁パネルを採用しているが、PCコンクリート製のパネル、木製パネルやサイディング、及びこれらのパネルに外装部材等を取り付けたもの等であってもよい。
基礎構造11は、外壁13や間仕切り壁の長さ方向に連続する鉄筋コンクリート製の布基礎として形成されており、柱脚部21の下端側を支持する基部(基礎部)22と、隣接する基部22間に連続して形成されている基礎梁部20と、を備えている。なお、以下では外通りの基礎構造について説明することとし、中通りの基礎構造については下記と同様の構成又は公知の構成を採用することができるものとする。基礎梁部20は、鉄筋コンクリート製で、梁幅より梁せいを大とする略長方形断面を有しており、同一断面で一方の基部22から他方の基部22まで延設されている。
鉄骨柱16の下端には、鋼製の柱脚部21が連結される。基部22は、柱脚部21を介して鉄骨柱16を下方側から支持する。基部22は、基礎梁部20よりも厚さ方向の幅を大きくして設けられると共に、当該幅方向に直交する高さ方向の長さを基礎梁部20の梁せいよりも小さくして形成された平面視略正方形の柱状に形成されている。また、基部22の上面は平坦に形成されており、当該上面に柱脚部21が載置される。
このように、基部22の上面は、基礎梁部20の上面よりも低位として形成されている。これによって、基部22の上部には、柱脚部21の下端部分を収容するための収容部A(図3参照)が形成される。
柱脚部21は、鉄骨柱16の基端部に連結される筒状の立上り部21bと、立上り部21bの下端部から当該立上り部21bの軸に対して離間する方向に延在するベースプレート(ベース部)21aと、を備えている。ベースプレート21aは平面視略正方形のプレート状に形成されており、4頂部にボルト孔を備えている。
基部22には、アンカーボルト23が設けられている。アンカーボルト23は、基部22に定着させられると共に上端部を当該基部22の上面から突出させて設けられている。アンカーボルト23をベースプレート21aのボルト孔に挿通した状態でアンカーボルト23にナット23aを螺合させることにより、ベースプレート21aが基部22の上面に載置された状態で当該基部22に締結される。また、ベースプレートは、図示しない中間部材を介して基部22の上面との間隔や水平度を入念に調整された後に当該基部22の上面との間に僅かな間隔を有して対向しており、当該基部22の上面とベースプレート21aの下面との間の隙間にはモルタル22aが注入される。かかる作業により、ベースプレート21aの水平方向及び鉛直方向の設置位置の正確性が確保されている。
また、図示しないが、基礎梁部20の上面には、建物Xの外壁13よりも外方の外気Yと建物Xの下部空間Zとの間での通気を可能とする通気スリット部材が設けられている。この通気スリット部材は、基礎梁部20の厚さと同程度の幅を有する扁平な長尺状に形成され、外気Y側の側面と下部空間Z側の側面とを連通する複数の通気孔を有している。
なお、基礎梁部20の上部に設けられる支持金物26と、外壁13の下端との間には、位置調節部材30(図3参照)が配置される。支持金物26の下方側の端部は、建物Xの外側に向けて下り方向に傾斜する傾斜面26aとなっている。位置調節部材30には、位置調節部材30及び傾斜面26aの外側面を覆うカバー部材31が取り付けられている。カバー部材31の下端部は、上方に向けて折り返されて、支持金物26の傾斜面26aの下端部を挟み込んでいる。支持金物26及びカバー部材31は、外壁13の外面を流下する雨水等の流体を、建物Xの室内側に回り込むことが無いように、下方への流下を促す水切り部材として機能するものである。
外通りの出隅部に位置する柱脚部21の周りの収容部Aには、柱脚部21のベースプレート21aの外気Y側の側面を覆う保護カバー24が設けられる。本実施形態では、ベースプレート21aの4箇所の角部のうち、外気Y側に位置する3箇所の角部に、それぞれ保護カバー24が一つずつ設けられる。保護カバー24は、収容部Aにおいて建物Xの下部空間Z側と外気Y側とを区画する。保護カバー24は、ベースプレート21aの角部の側面に沿うように、水平方向断面が略L字状に形成される。保護カバー24は、図4に示すように、カバー本体部24a、係合部24b、及び、立上部24eを備えている。
カバー本体部24aは、柱脚部21のベースプレート21aの角部の側面に対向するものであり、水平方向断面が略L字状を成している。カバー本体部24aは、基部22の上面からカバー部材31の下端までの長さよりも小さい高さを有して形成されている。カバー本体部24aの上面である傾斜面24dは、柱脚部21の立上り部21b側から建物Xの外側に向けて下り方向に傾斜している。
係合部24bは、カバー本体部24aからベースプレート21a側に向けて突設されている。また、係合部24bには、ベースプレート21aの角部における縁部上面に乗り上がった状態で係合するための座面24cが設けられている。即ち、座面24cは、ベースプレート21aの角部の縁部の形状に整合するように、平面視で略L字状に形成されている。
座面24cは、当該座面24cをベースプレート21aの縁部の上面に係合させたときに、カバー本体部24aの下端部が基部22の上面から離間し、且つ、カバー本体部24aの傾斜面24dがカバー部材31の下端部から離間する位置に設けられている。また、カバー本体部24aは、柱脚部21との間に空隙を有する厚さを呈している。従って、座面24cをベースプレート21aの縁部の上面に係合させたときに、保護カバー24は、座面24cを除いては柱脚部21とも離間して設けられることとなる。また、カバー本体部24aは、座面24cをベースプレート21aの縁部の上面に係合させたときに、当該カバー本体部24aの外側の側面が基部22の側面と水平方向において一致する厚さに形成されている(図3参照)。これにより、基部22の側面から保護カバー24が突出することがなく、建物Xの外観を損なうことがない。
立上部24eは、カバー本体部24aの上端部から立上り部21b側に向かって斜め上方に延びる形状に形成されている。これにより、保護カバー24を収容部Aに設置したときに、立上部24eは、カバー部材31の最外縁よりも外側から当該カバー部材31の下方に回り込みつつ立ち上がることとなる。また、保護カバー24の傾斜面24dと立上部24eとによって、カバー部材31との間にシール材(第2シール材)35を充填するためのベッド部24fが形成される。
また、保護カバー24は、プレキャストコンクリートにより形成されている。これにより、保護カバー24を部材化して工場等で容易に大量生産でき、保護カバー24の部材の寸法精度等も向上させることができる。また、柱脚部21を保護する構成を保護カバー24として部材化することにより、モルタルを塗り込む従来の構成よりも耐衝撃性を大幅に向上させることができる。このため、例えば当該保護カバー24に人や物が直接衝突する場合でも、保護カバー24の損傷を防止することができる。
図1〜図3に戻り、カバー部材31の下端部と保護カバー24のベッド部24fとの隙間には、弾性樹脂からなるシール材35が充填される。同様に、保護カバー24のカバー本体部24aの下端部と基部22の上面との隙間には、弾性樹脂からなるシール材(第1シール材)36が充填される。これにより、カバー部材31と保護カバー24、及び、保護カバー24と基部22は、それぞれ水密に連結される。また、図2に示すように、隣り合う保護カバー24同士の隙間にも、弾性樹脂からなるシール材37が充填される。
これによって、カバー部材31と保護カバー24との間、及び、保護カバー24と基部22との間には、それぞれ弾性部材(シール材35,36)が介在することとなる。この結果、上部構造10や基礎構造11に地震等による振動が入力されても、当該弾性部材たるシール材35,36により当該振動の多くは吸収されることとなり、保護カバー24には、僅かな振動が入力されるのみとなる。この結果、当該振動による保護カバー24のひび割れ等の損傷が抑制される。
即ち、本実施形態においては、保護カバー24がプレキャストコンクリートにより形成されてカバー自体の強度の向上が図られると共に、基礎や上部構造と保護カバー24との間のシール材35,36の介在により地震等に起因する振動の入力も抑制され、これら両側面から保護カバー24の損傷が抑制されている。
図2に示すように、ベースプレート21aの4箇所の角部のうち、保護カバー24が設けられた3つの角部には、立上り部21bの周りにおいてベースプレート21aの角部の上面を覆う受け具40がそれぞれ一つずつ載置されている。なお、図2では、受け具40等を図示するために、外壁13は仮想線で示し、支持金物26等は省略する等、簡略化してある。受け具40は、その上面において、外壁13の下端部を支持金物26を介して受ける。一方、保護カバー24が配置されていないベースプレート21aの角部には、立上り部21bの周りにおいてベースプレート21aの角部の上面を覆う受け具50が載置されている。受け具50は、その上面において、床スラブ18の下面を受ける。
図5(a)及び図5(b)に示すように、受け具40は、平面視で略L字状の本体プレート40aと、本体プレート40aから下方に延びる2つの脚部40bと、本体プレート40aから下方に延びるリブ40cと、を備えている。本体プレート40aは、図2に示すように、立上り部21bを囲むように配置されて、ベースプレート21aの角部の上面を覆うものである。なお、本体プレート40aには、受け具40をベースプレート21a上に載置したときにアンカーボルト23との干渉を避けるための逃げ部40dが設けられている。リブ40cは、本体プレート40aの略L字状の一方の端部から他方の端部間に亘る帯状を成し、受け具40をベースプレート21a上に載置したときに本体プレート40aにおける外気Y側の縁部近傍の位置に設けられている。
2つの脚部40bは、本体プレート40aの略L字状の両端部から、それぞれ下方に向けて延びている。脚部40bの下端は、受け具40をベースプレート21a上に載置したときに、ベースプレート21aの上面に当接する。脚部40bにおける本体プレート40aからの延び長さは、図3に示すように、受け具40をベースプレート21a上に載置したときに本体プレート40aの上面と基礎梁部20の上面とが略同一高さとなる長さに設定されている。
図6に示すように、受け具50は、平面視で略L字状の本体プレート50aと、本体プレート50aから下方に延びる2つの脚部50bと、本体プレート50aの下面から下方に延びる水平断面十字状のリブ50cと、を備えている。本体プレート50aは、図2に示すように、立上り部21bを囲むように配置されて、ベースプレート21aの角部の上面を覆うものである。なお、本体プレート50aには、受け具50をベースプレート21a上に載置したときにアンカーボルト23との干渉を避ける孔状の逃げ部50dが設けられている。リブ50cは、本体プレート50aの略L字状の一方の端部から他方の端部間に亘って設けられ、受け具50をベースプレート21a上に載置したときに本体プレート50aにおける下部空間Z側の縁部近傍の位置に設けられている。リブ50cには、本体プレート50aにおける略L字形状角部近傍の位置において下方側に突出する脚部50eが設けられている。2つの脚部50bは、本体プレート50aの略L字状の両端部から、それぞれ下方に向けて延びている。
脚部50eの下端、及び、脚部50bの下端は、受け具50をベースプレート21a上に載置したときに、ベースプレート21aの上面に当接する。脚部50e及び脚部50bにおける本体プレート50aからの延び長さは、図3に示すように、受け具50をベースプレート21a上に載置したときに本体プレート50aの上面と基礎梁部20の上面とが略同一高さとなる長さに設定されている。
また、隣接する受け具40同士は、図示しないボルトによって受け具40の脚部40b同士が連結される。同様に、隣接する受け具40及び受け具50は、図示しないボルトによって受け具40の脚部40bと受け具50の脚部50bとが連結される。
収容部Aに保護カバー24を設置し、シール材35,36,37等の施工を行った後、保護カバー24とその下部の基部22を覆うように保護カバーを取り付けたり、保護カバー24と基部22に耐候性塗料等を塗布したりしてもよい。この場合には、基部22と保護カバー24との継ぎ目が保護カバーによって覆われる又は他の部分と同一色となり、基部22と保護カバー24とが一体に見えて見栄えが向上すると共に、耐候性も向上する。
以上のように、本実施形態によれば、保護カバー24は、座面24cが柱脚部21のベースプレート21aの上面に係合することで支持されると共に、基礎構造11の基部22から離間した状態で設置される。また、保護カバー24のカバー本体部24aと基部22との間にはシール材36が充填される。これにより、保護カバー24は、荷重伝達の観点からは基礎構造11の基部22から縁が切れた状態となる。従って、基礎構造11に地震等による水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバー24へのこれらの伝達がシール材36により著しく低減され、当該保護カバー24の損傷を防止することができる。
また、基部22から伝達される地震力は時には甚大であり、基部22はコンクリート基礎として密実に強度な剛性を有して形成される。一方、従来の化粧モルタルは地震に対する強度はほとんど期待できない。このため、従来のように化粧モルタルを用いた場合には、基部22や上部構造10は地震に対して抵抗力を有している一方、これらの間の化粧モルタルのみが弱く、これによって、当該化粧モルタルのみが破壊してしまう等の問題が発生していた。これに対し、本実施形態の如く保護カバー24と基部22とを完全に構造的に縁を切ることによって、当該保護カバー24への荷重の入力が著しく減少することとなり、保護カバー24の破壊を免れることができる。
また、保護カバー24と基部22との間はシール材36によって水密に連結されるものとなるので、これらの間から柱脚部21に向けての雨水等の浸入を抑制することができると共に気密性も確保され、柱脚部21での内部結露の発生も抑制することができる。
また、保護カバー24を設置するだけで柱脚部21を覆うことができるため、モルタル等を用いて柱脚部21を覆う場合に比べて品質や施工性が向上する。
このように、本実施形態によれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる柱脚保護構造及び保護カバー24を得ることができる。
また、保護カバー24における係合部24bの座面24cを柱脚部21のベースプレート21aの角部の縁部に載せるだけで保護カバー24を設置することができ、保護カバー24の設置作業を著しく容易に行うことができる。また、ベースプレート21aの縁部と座面24cとの接触面が略L字状となるので、保護カバー24を安定した状態でベースプレート21aの縁部に設置することができる。
また、柱脚部21は、アンカーボルト23等により機械的にきわめて正確に位置が設定される一方、コンクリート基礎である基部22は、現場にてコンクリートを打設して形成されるので、基部22の上面は施工誤差が生じる虜がある。本実施形態において、保護カバー24は柱脚部21のベースプレート21a上に設置されるので、保護カバー24をきわめて正確に設置することができる。また、基部22の上面と保護カバー24との間にはシール材36が充填されるので、基部22の上面の不陸等の施工誤差が、保護カバー24の設置等に影響することがない。
また、保護カバー24のカバー本体部24aは、柱脚部21の側面と離間している。従って、地震発生時においては、基礎構造11に合わせて柱脚部21も振動することとなるが、カバー本体部24aと柱脚部21とが離間しているので、保護カバー24は、柱脚部21の振動の影響も受け難く、柱脚部21の振動に伴う損傷も抑制される。
なお、保護カバー24は、ベースプレート21aの角部の上面に座面24cを介して係合しているだけである。このため、座面24cを介して保護カバー24と柱脚部21とはつながっているものの、保護カバー24への荷重の入力方向は一方向(ベースプレート21aの上面から保護カバー24の座面24cへの方向)のみとなる。また、保護カバー24へ入力された荷重によって保護カバー24が変位しても、保護カバー24の上下に位置するシール材35,36によって荷重が吸収される。このように、保護カバー24と柱脚部21とがつながっているといえども、このつながりによって保護カバー24が受ける影響は非常に小さいものとなる。
また、保護カバー24のカバー本体部24aの上部に、建物Xの外気Y側からカバー部材31の下方に回りこみつつ立ち上がるベッド部24fを設けるものとした。この場合には、カバー本体部24aの上部と、カバー部材31との隙間にシール材35が充填される。これによって、保護カバー24は、荷重伝達の観点からは、基礎構造11に加えて更に建物Xの上部構造10とも縁が切れた状態となる。従って、風荷重や地震等に起因して建物Xの上部構造10に水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバー24へのこれらの伝達はシール材35により著しく低減され、これによって、保護カバー24の損傷を更に確実に防止することができる。
また、建物Xの外気Y側からカバー部材31の下方に回りこんで立ち上がるようしてベッド部24fを設けているので、カバー部材31とカバー本体部24aとの間のスペースにシール材35を充填する際に当該ベッド部24fを背部からのシール押さえ(支持部)として用いることができる。これにより、シール材35の充填作業の容易化、且つ、シール材35をカバー部材31及び支持金物26の傾斜面26aの下方に確実に充填することができ、シール材35が充填スペースから脱落等して雨水の流下の妨げとなることを防止できる。また、支持金物26の傾斜面26aが建物Xの外側に向けて下り方向に傾斜しているので、外壁13の外面を流下する雨水等を、より効率よく下方への流下させることができる。
また、保護カバー24をプレキャストコンクリートによって形成することで、保護カバー24を部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバー24の寸法精度等も向上させることができる。また、保護カバー24をプレキャストコンクリートによって形成することで、耐衝撃性を向上させることができる。これにより、例えば保護カバー24に人や物が衝突する場合でも、保護カバー24の損傷を防止することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば本実施形態において、保護カバー24は、図7(a)に示すように、水平断面がL字状を呈しているものとしたが、これ以外にも、図7(b)に示すように、ベースプレート21aの隣接する角部間の側面を覆おうU字状を呈していてもよい。これにより、2つの部材を1つにでき、保護カバーの施工の手間を省くことができる。
また、例えば、柱脚部21のベースプレート21aの面積が大きい場合には、複数の保護カバー形成体を組み合わせて保護カバーを形成してもよい。具体的には、図7(c)のような水平断面が「I」字状の保護カバー形成体補助部材(保護カバー形成体)24Bを、L字状の保護カバー形成体24A間に設けて保護カバー24を形成してもよい。これにより、保護カバー24を、様々な大きさの柱脚部21に対応させることができる。
また、上記の実施形態では、保護カバー24を建物Xの出隅部への施工について説明したが、直線状に連続する外壁13の中間部分の下方に位置する柱脚部21についても、上記実施形態に係る保護カバー24を適用することができる。また、建物Xの入隅部に位置する柱脚部21についても上記実施形態に係る保護カバー24を適用することができる。
また、例えば、カバー部材31が設けられていない場合には、保護カバー24の直上に位置する上部構造10の下端部(例えば、外壁13の下端部、支持金物26の下端部等)と保護カバー24との間にシール材35を充填すればよい。