JP5762771B2 - 柱脚保護構造 - Google Patents

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Description

本発明は、建物の柱脚を保護する構造に関する。また、本発明は、かかる柱脚保護構造に用いられる保護カバー成型体に関する。
建物の上部構造を支持する柱脚構造として、露出型柱脚が知られている。当該露出型柱脚は、鋼製の支柱部と、該支柱部を支持するコンクリート製の基部とを備え、該支柱部は、柱部と、柱部の下端部に設けられたエンドプレートとを備え、該エンドプレートと基部とをアンカーボルトで連結することで支持される構成となっている。
露出型柱脚の施工方法においては、支柱部がエンドプレートから上部構造に連結される柱部の上端部に亘って露出することとなるが、一般には、当該露出部には外壁取り付け後に湿式モルタルを塗りこむことで当該支柱部を覆う施工がなされている(例えば特許文献1)。
特開平6−58818号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成においては、当該湿式モルタルによる埋め込み作業は作業者の技量に負うところが大きく、現場によって品質を安定させ難いという問題があった。また、化粧モルタルはあくまで支柱部を覆うものであるため、それ自体にはそれほど強度を期待できず、例えば地震や風荷重に伴い上部構造や基礎部から入力される水平荷重や振動によってひび割れや剥離が発生することが考えられる。
そこで、本発明は、外荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる柱脚保護構造及び保護カバー成型体を提供することを目的とする。
(1)本発明にかかる柱脚保護構造は、建物の上部構造を支持する鋼製の支柱部と、該支柱部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の基部とを有する柱脚部と、該基部と上部構造との間に設けられて前記支柱部の一部又は全部を包囲する保護カバー成型体とを備え、少なくとも該保護カバー成型体と前記上部構造との間には隙間が設けられ、該隙間にシール部材が充填されることで、該シール部材を介して前記保護カバー成型体の上端部が前記上部構造と連結されると共に、該保護カバー成型体の下端部が前記柱脚部の基部とシール部材を介して連結され、前記上部構造の外通りに複数の柱脚部が設けられると共に、これら隣合う柱脚部の基部に亘って鉄筋コンクリート製の基礎梁部が架設され、前記上部構造の下方には、これら外通りの柱脚部と基礎梁部とによって外気と分断される下部空間が設けられており、前記保護カバー成型体は、前記外通りの柱脚部の支柱部の外気側に設けられて側方の基礎梁部に連結され、前記支柱部の下部空間側は、断熱性を有する露出遮蔽体により覆われていることを特徴とする。
上記の柱脚保護構造において、保護カバー成型体は柱脚部の基部上に自立するため、保護カバー成型体を被せるだけで支柱部が覆われる。
また、保護カバー成型体は、上部構造からの荷重を負担することなく支柱部に被さるものとなると共に、柱脚部の基部に剛接合されるものでもない。このため、上部構造や基部に地震や風による水平荷重や振動が入力される場合であっても、当該保護カバー成型体へのこれらの伝達は著しく低減され、これによって、当該保護カバー成型体の損傷を防止することができる。
さらに、保護カバー成型体と上部構造及び基部との間が水密に連結されるものとなるので、これらの間から支柱部に向けての雨水等の浸入を抑制することができると共に、当該水密に連結されることで気密性も確保され、支柱部での内部結露の発生も抑制することができるものとなるのである。
さらに、上部構造下方の下部空間と建物外方の外気とは、支柱部の下部空間側に設けられる保護カバー成型体とにより区画されることとなり、露出遮蔽体により、支柱部と下部空間とは区画されることとなる。このように支柱部が外気側から下部空間までの全体に亘ってカバーされることとなるので、支柱部を包囲する空間は、外気よりも上部構造の1階床上部の屋内環境に準じた環境となり、支柱部の防錆上好ましい環境になる。
ここで、シール部材を介して連結されるとは、部材間の隙間にシール部材が充填された状態となり、これにより部材同士が接合されることを意味する。
また、上部構造の下方であって基礎構造に包囲される空間を下部空間と称し、当該基礎構造や建物の外側の開放空間を外気と称する。
(2)本発明の一態様によれば、前記保護カバー成型体は、プレキャストコンクリートからなる。
これによれば、当該保護カバー成型体を部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバー成型体の部材の寸法精度等も向上させることができるものとなる。また、耐衝撃性を向上させることができるので、例えば当該保護カバー成型体に人や物が衝突する場合でも、これら程度の衝突による保護カバー成型体の損傷を防止することができるものとなる。ここで、プレキャストコンクリートとは、工場などで予め製造されたコンクリートを意味する。
本発明によれば、外荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる柱脚保護構造が提供される。
本発明の柱脚保護構造が実施される2階建て住宅の全体断面図である。 本発明の柱脚保護構造が実施される柱脚部の配筋及びベースプレート取り付け状態を示す側面図である。 本発明の保護カバー成型体の斜視図である。 本発明の保護カバー成型体の垂直方向の立面図である。 本発明の受け具の斜視図である。 本発明の柱脚保護構造の施工手順を説明する拡大側面図である。 本発明の柱脚保護構造の施工手順を説明する拡大平面図である。 本発明の柱脚保護構造の第1実施形態を示す拡大側断面図である。 図8の状態の拡大平面図である。 本発明の柱脚保護構造の第2実施形態を示す拡大側断面図である。 図10の状態の拡大平面図である。 本発明の柱脚保護構造の他の実施形態に係る拡大平面図である。
10 上部構造
11 基礎構造
12 構造躯体
13 外壁
14 断熱層
15 内装構造
16 鉄骨柱
17 鉄骨梁
18 床スラブ
19 柱脚部
20 基礎梁部
21 支柱部
21a ベースプレート
21b 立ち上がり部
22 基部
22a モルタル
23 アンカーボルト
23a ナット
24 保護カバー成型体
24a 立壁部
24b 傾斜部
24c シーリングポケット
24d シーリング設置部
24e 保護カバー成型体補助部材
25 受け具
25a 縦壁
25b 台座部
26 支持金物
27 シール部材
28 露出遮蔽体
29 役物部材
A 収容部
以下、図面を参照して、本発明を2階建ての戸建て住宅に実施した形態につき、詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1から図9は、本発明の第1実施形態を示すもので、本発明に係る柱脚保護構造が実施される建物は、上部構造10と、該上部構造10を支持する基礎構造11とを具備する。
図1に示されるように、上部構造10は、基礎構造11上に組み上げられる構造躯体12と、該構造躯体12に支持される外壁13と、該外壁13及び構造躯体12に沿って設けられる断熱層14と、建物の居室の壁面及び天井面を形成する内装構造15とを備えて形成される地上2階の組立住宅である。
なお、本実施形態の建物は、直行する複数の軸線を基準として設計される通り設計によるものであって、以下では、建物の外周を形成する軸線を外通りと称し、建物の内側を通過する軸線を中通りと称する。
また、上部構造10の下方であって基礎構造11に包囲される空間を下部空間と称し、当該基礎構造11や建物の外側の開放空間を外気と称する。
構造躯体12は、基礎構造11上に立設される鉄骨柱16と、該鉄骨柱16間に架け渡される鉄骨梁17と、基礎構造11や鉄骨梁17に支持される床スラブ18とを備えて形成される鉄骨軸組構造として構成されている。
床スラブ18は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の床パネルを敷設することにより形成されている。1階床スラブ18を形成する床パネルは、端部を基礎構造11の上面に載置した状態で当該基礎構造11に支持されている。
外壁13は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁パネルを並べて配備することにより形成されている。また、1階の外壁パネルの下端部は、基礎構造11の上部に設けられる垂直断面が略L字状の支持金物26を介して基礎構造11に支持されている。
なお、本実施形態においては、外壁13として軽量気泡コンクリートからなる外壁パネルを採用しているが、PCコンクリート製のパネル、木製パネルやサイディング、及びこれらのパネルに外装部材等を取り付けたもの等であってもよい。
基礎構造11は、外壁13や間仕切り壁の長さ方向に連続する鉄筋コンクリート製の布基礎として形成されており、構造躯体12の鉄骨柱16の基端部を支持する柱脚部19と、隣接する柱脚部19間に連続して形成されている基礎梁部20とを備えている。
なお、以下では外通りの基礎構造について説明することとし、中通りの基礎構造については下記と同様の構成又は公知の構成を採用することができるものとする。
基礎梁部20は、鉄筋コンクリート製で、梁幅より梁せいを大とする長方形断面を有しており、同一断面で一方の柱脚部19から他方の柱脚部19まで延設されている。
柱脚部19は、鉄骨柱16に連結される鋼製の支柱部21と、該支柱部21を支持する鉄筋コンクリート製の基部22と、該基部22に支柱部21を締結するアンカーボルト23とを備えた、所謂露出型柱脚とを備えて形成されている。
基部22は、基礎梁部20よりも厚さ方向の幅を大きくして設けられると共に、当該幅に直行する高さ方向の長さを基礎梁部20の梁せいよりも低くして形成された平面視正方形の柱状に形成されている。また、上面は平坦に形成されており、当該上面に支柱部21が載置されている。
このように、基部22の上端面は、基礎梁部20の上端面よりも低位として形成されている(なお、基礎梁部20の上端面は建物のZ0レベル(1階床スラブ18の下面の高さ位置であり且つ外壁13の下端位置)に等しい)。これによって、柱脚部19の上部には、支柱部21を収容するための収容部Aが設けられている。
支柱部21は、ベースプレート21aと、該ベースプレート21aから立ち上がって鉄骨柱16の基端部に連結される筒状の立上り部21bとを備えている。ベースプレート21aは平面視正方形状のプレート状に形成されており、4頂部にボルト孔を備えている。
アンカーボルト23は、基部22に定着させると共に上端部を当該基部22の上面から突出させて設けられている。当該アンカーボルト23をベースプレート21aのボルト孔に挿通した状態でナット23aを螺合させることにより、ベースプレート21aが基部22の上面に載置された状態で当該基部22に締結されることとなっている。また、これら基部22上面とベースプレート21a下面との間にはモルタル22aが注入されており、基部22のわずかな不陸等が解消され、これによってベースプレート21aの設置性の向上が図られている。
また、図示しないが、基礎梁部20の上端面には、外通りの基礎梁部や建物の外壁よりも外方の外気と建物の下部空間との間での通気を可能とする通気スリット部材が設けられている。該通気スリット部材は、基礎梁部20の厚さと同程度の幅を有する扁平な長尺状に形成され、外気側側面と下部空間側側面とを連通する複数の通気孔が形成されている。
外通りに位置する柱脚部の収容部Aには、当該収容部Aに設けられる支柱部21の外気側側面を覆う保護カバー成型体24が設けられる。
保護カバー成型体24は、図3の斜視図に示すように、立壁部24a、立壁部24aの上端部の傾斜部24b、立壁部24aの下端部のシーリングポケット24c、傾斜部24bの上端部のシーリング設置部24dを有する。
保護カバー成型体24は、支柱部21のベースプレート21aやアンカーボルト23に接触することなく、柱脚部19の基部22の上端面上に自立する。また、当該柱脚部19の基部22の上端面上に保護カバー成型体24を自立させると、当該保護カバー成型体24と上部構造10の支持金物26との間に隙間Sが形成される。
また、立壁部24aは、保護カバー成型体24を柱脚部19に載置したとき、柱脚部19の側面と水平方向において一致するため、建物の外観を損なうことがない。傾斜部24bは外壁13などから流下する雨水等をそのまま流下させるための傾斜を有する。
また、シーリングポケット24c及びシーリング設置部24dには、弾性樹脂からなるシール部材27が充填され、それぞれ柱脚部19及び上部構造10(外壁13又は支持金物26)に水密に連結される。
本実施形態において、保護カバー成型体24は、図4(a)に示すように、支柱部21の外気側の側面から当該側面に直行して基礎梁部20の小口部に対向する側面までを覆うべく、水平断面がこれらの側面に沿う「L」字状であるか、または、支柱部21の外気側の側面とそれに直行する一対の側面に沿う「コ」の字状を呈している(図4(b)参照)。これにより、2つの部材を1にでき、施工の手間を省くことができる。
また、例えば、柱脚部19の面積が大きい場合には、図4(c)のような水平断面が「I」字状の保護カバー成型体補助部材24eをL字状の保護カバー成型体24間に設けることにより対応することができるものとなっている。
また、保護カバー成型体24は、プレキャストコンクリートにより形成されている。これにより、当該保護カバー成型体24を部材化して工場等で容易に大量生産でき、保護カバー成型体24の部材の寸法精度等も向上させることができる。
また、柱脚部19の支柱部21を保護する構成を保護カバー成型体24として部材化することにより、モルタルを塗り込む従来の構成よりも耐衝撃性を大幅に向上させることができる。このため、例えば当該保護カバー成型体24に人や物が直接衝突する場合でも、これら程度の衝突による保護カバー成型体24の損傷を防止することができる。
さらに、本実施形態の構成によれば、保護カバー成型体24を柱脚部19の基部22に設置した後に、上部構造10(外壁13あるいは支持金物26)と保護カバー成型体24の上端部24bの間の隙間S、ならびに保護カバー成型体24の下端部のシーリングポケット24cと柱脚部19との隙間にシール部材が充填されている。
シール部材27は公知の材料により形成される弾性を有するものであり、これによって、保護カバー成型体24と柱脚部19、又は保護カバー成型体24と上部構造10とはシール部材27によって連結されることとなり、これによって、保護カバー成型体24と上部構造10及び柱脚部19との間には弾性部材が介在することとなる。この結果、上部構造10や基礎構造11に地震等による振動が入力されても、当該弾性部材たるシール部材27により当該振動のほとんど或いはすべて吸収されることとなり、保護カバー成型体24には、僅かな振動が入力されるのみとなる。この結果、当該振動による保護カバー成型体24のひび割れ等の損傷が抑制されるものとなる。
更にその上から保護カバー成型体24とその下に位置する基部22を覆うように金属製カバーが取り付けられるか、又は耐候性塗料が塗布される。
また、柱脚部の収容部Aには、保護カバー成型体24の内側に、外壁13や該外壁13間に並んで設けられて柱脚部19の支柱部21の上部から柱部材を覆う役物部材29の下部を受ける受け具25が設けられる。受け具25は、図5に示すような、縦壁25aと、縦壁25aの上端部に取り付けられる平板状の台座部25bとからなるT字状の部材である。
立壁部24aの外側部は、保護カバー成型体24又は保護カバー成型体24のシーリング設置部(シール部材27)の内面に当接する。これにより、保護カバー成型体と支柱部21との間に隙間が生じ、この隙間が空気層となって断熱効果が得られる。かかる点に鑑みれば、受け具25は樹脂製であることが好ましい。
あるいは、保護カバー成型体24と支柱部21とが離間しているので、保護カバー成型体24に含水される水分の支柱部21への付着が抑制され、支柱部21に錆が生じるのを防止することができる。また、受け具25が保護カバー成型体24に当接することにより、保護カバー成型体24の間隔が適正に保持されると共に、基部22上での位置が特定されるので、保護カバー成型体24の施工性が著しく向上する。
[施工方法]
次に、第1実施形態に係る柱脚保護構造の施工方法を説明する。この説明においては、建物の出隅部に位置する柱脚部19について、3つのL字状の保護カバー成型体24を用いて施工を行う場合を想定する。
基部22の施工において、基礎伏図に従って所定の配筋を行った後に型枠を配設すると共に、柱脚部19の形成位置にアンカーボルト23を取り付ける。ついで、基礎梁部20に対応する型枠の上方からコンクリートを打設する。これにより、基礎梁部20と柱脚部19の基部22にコンクリートが充填されるが、その際、基礎梁部20と基部の上端面のレベル差は、これらの間に下縁を基部22のレベル位置に位置付けた仕切り板(図示省略)によって形成される。これにより、基部22上に当該基部22の両側に設けられる基礎梁部20の小口面が対向しあう収容部Aが形成されることとなる。
そして、所定の養生期間をあけて型枠を撤去し、コンクリート基礎を露出させると、柱脚部19の基部22にアンカーボルト23が定着させられている状態となる。
その後、基部22の上端面にモルタル22a等をのせて当該上端面のレベルを調整し、その上に支柱部21のベースプレート21aを設置する。ついで、ベースプレート21aをアンカーボルト23に固定して支柱部21を基部上に立設し、当該支柱部21の上端部に鉄骨柱16を連結する。
次に、図6又は図7に示すように、受け具25を支柱部21の周囲に配置する。この受け具25は、外壁13の下端部を保持する。
なお、後にアンカーボルト23にナット23aを締め込むことを考慮して、受け具25の台座部25bにはアンカーボルト23の直上の位置に孔が設けられていてもよい。
受け具25の設置後、図8又は図9のように、保護カバー成型体24を基礎構造の収容部Aに嵌め込む。このとき、保護カバー成型体24の上端部を受け具25の縦壁25aに当接させた状態で保護カバー成型体24を基部22の上端面状に起立させることにより、保護カバー成型体24と支柱部21との間に所定間隔で空隙が形成されることとなる。
このようにして、3個の保護カバー成型体24をそれぞれ支柱部21の隅部に対向させた状態で設けることで、図9のように保護カバー成型体24によって支柱部21が覆われると共に、収容部Aにおいても外気側と床下空間側とが区画される。
次いで、図8に示す如く、受け具25上に支持金物26を設置してもよい。支持金物26は図8のような断面形状の長尺状の部材で、金具を介して基礎梁部20に固定され、基礎梁部20ないし保護カバー成型体24にわたり設けられる。支持金物26は、外壁の下端部を支持すると共に、下端の先端部が下方に傾斜して外壁13から流下してくる雨水等を速やかに柱脚部19の外側面に排出するものである。
次いで、外壁13及び床スラブ18の設置が順次行われ、これによって、保護カバー成型体24と上部構造の外壁13や床スラブ18との間には、隙間が設けられることとなる。
また、このように本実施形態に係る保護カバー成型体24の高さは、柱脚部19と外壁13(又は支持金物26)との間隔よりも小さいため、外壁13や床スラブ18の設置後に保護カバー成型体24の設置を行うこともできる。
なお、保護カバー成型体24の設置以前に、上部構造のうち、床や外壁など以外の梁などの構造躯体を施工してもよい。
その後、図8又は図9に示すように、保護カバー成型体24と上部構造10(外壁13又は支持金物26)との隙間(シーリング設置部24d)、保護カバー成型体24と柱脚部19との隙間(シーリングポケット24c)、隣接する保護カバー成型体24の隙間、並びに保護カバー成型体24と基礎梁部20との隙間にシール部材27を充填する。
また、併せて外壁13と支持金物26との間にシール部材27を充填してもよい。
その後、保護カバー成型体24とその下部の基部22を覆うように金属製カバーを取り付けるか、又は耐候性塗料を保護カバー成型体24と基部22に同時に塗布する。これにより、基部22との継ぎ目が他の部分と共に覆われる又は他の部分と同一色となり、基礎と保護カバー成型体が一体に見えて見栄えが向上すると共に、耐候性も向上する。
本実施形態に係る保護カバー成型体24は、柱脚部の基部上に自立するため、保護カバー成型体を置くだけで支柱部が覆われる。
そして、上部構造10からの荷重を負担することなく支柱部21に被さると共に、部材同士はシール部材27を介して連結され、柱脚部19に剛接合されるものでもない。
このため、上部構造10や基礎構造11に地震や風による水平荷重や振動が入力される場合であっても、当該保護カバー成型体24へのこれらの伝達は著しく低減される。これにより、ひび割れや剥離などといった当該保護カバー成型体24の損傷を防止することができる。
また、保護カバー成型体24と上部構造10及び基礎構造11との間がシール部材27により水密に連結されるものとなるので、これらの間から支柱部21に向けての雨水等の浸入を抑制することができると共に、当該水密に連結されることで気密性も確保され、支柱部21での内部結露の発生も抑制することができるものとなるのである。
また、シール部材27の充填作業を、外壁等の主要なシーリング作業時に行うことができる。このため、シール部材の打ち忘れを防止することができる。
<実施形態2>
実施形態2では、外通りに設置される柱脚部19の支柱にあって、下部空間側が露出遮蔽体28によって保護される。露出遮蔽体28以外の構成は実施形態1と同様であり、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態においては、保護カバー成型体に保護されない下部空間側は、気密性を有する露出遮蔽体28が設けられる。露出遮蔽体28は、柱脚部19と床スラブ18との間隔、又は柱脚部19と床スラブ18を保持する受け具25との間隔と同一又は僅かに大きく形成され、収容部Aに下部空間側から嵌め込まれる。露出遮蔽体28は、下部空間と支柱部21とを区画し、収容部Aと基礎梁部20及び外壁13との間の隙間を埋める。
本実施形態は、露出遮蔽体28として発泡プラスチックをブロック状に形成したものを採用している。これにより、気密性はもちろん、断熱性も確保されることとなる。また、当該露出遮蔽体28として用いられるものとしては、所定の気密断熱性及び弾力性を有し、建築用断熱材として使用できるものであれば特に限定されることはない。例えば、成型性に優れたビーズ法ポリスチレンフォーム保温板、ポリエチレンフォーム(例えばサニーライト(登録商標)等の高発泡ポリエチレン)などが挙げられる。
また、露出遮蔽体28は、予め「L」字状などに成型されたものであってもよいし、板状のポリスチレンフォームの中央部にV字状の切欠きを設け、当該切欠きの底部に沿って折り曲げることで全体をL字状に成型することも可能である。
露出遮蔽体28は、床スラブ18を保持する受け具25を設置した後に、図10又は図11のように所定の位置に挿入してもよい。あるいは、露出遮蔽体28を所定の位置に設置した後に受け具25を設置してもよい。また、露出遮蔽体28と受け具25、又は柱脚部19、基礎梁部20との間にシール部材を充填してもよい。
従来、建物の下部空間は概して湿度が高く、地表面上に防湿シートなどが設けられていたが、本発明に係る露出遮蔽体28を採用することにより、下部構造内部からの支柱部21への湿気の流入を防ぐことができ、防湿シートの施工を省略することができる。
また、露出遮蔽体28は断熱性を有するため、下部空間と支柱部21との熱の交換を抑制することができ、建物の断熱性能の低下を防ぐことができる。
なお、上記の実施形態では、出隅部への施工について説明したが、図12に示すような連続する外壁13の下方に位置する柱脚部19についても、本発明に係る保護カバー成型体24を適用することができる。また、建物の入隅部に位置する柱脚部についても適用できることは自明である。
以上説明したように、本発明によれば、外荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。

Claims (2)

  1. 建物の上部構造を支持する鋼製の支柱部と、該支柱部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の基部とを有する柱脚部と、
    該基部と上部構造との間に設けられて前記支柱部の一部又は全部を包囲する保護カバー成型体とを備え、
    少なくとも該保護カバー成型体と前記上部構造との間には隙間が設けられ、
    該隙間にシール部材が充填されることで、該シール部材を介して前記保護カバー成型体の上端部が前記上部構造と連結されると共に、該保護カバー成型体の下端部が前記柱脚部の基部とシール部材を介して連結されることを特徴とする柱脚保護構造であって、
    前記上部構造の外通りに複数の柱脚部が設けられると共に、これら隣合う柱脚部の基部に亘って鉄筋コンクリート製の基礎梁部が架設され、
    前記上部構造の下方には、これら外通りの柱脚部と基礎梁部とによって外気と分断される下部空間が設けられており、
    前記保護カバー成型体は、前記外通りの柱脚部の支柱部の外気側に設けられて側方の基礎梁部に連結され、
    前記支柱部の下部空間側は、断熱性を有する露出遮蔽体により覆われていることを特徴とする、柱脚保護構造
  2. 前記保護カバー成型体は、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする請求項1に記載の柱脚保護構造。
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