JP2012167412A - 揚水性繊維構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】揚水ヘッド差が50cm以上の揚水高さを示す、揚水機能に優れた揚水性繊維構造体を提供する。
【解決手段】厚みが50μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層であって、該繊維構造層の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である繊維構造層を含む揚水性繊維構造体。
【選択図】なし

Description

本発明は、揚水性に優れた構造体に関する。更に詳しくは、優れた揚水機能を有する繊維構造体からなる、毛細管現象により従来にない高ヘッド差まで揚水できる揚水性繊維構造体を提供することにある。
毛細管現象を利用した揚水構造体として、ストーブなどの燃料吸上げ芯材、芳香剤用芯材、水耕栽培用揚水構造体、ドレン揚水材などが知られている。如かして、これらの揚水構造体は揚水できるヘッド差が小さいものしか得られていないのが実情であり、揚水ヘッド差が30cmを越えるものは知られていない。
特許文献1には、燃料用液体をヘッド差が4cm以上で吸上げることが可能なセラミック構造体が提案されているが、開示されている揚水ヘッド差の高さは最大20cmしかないものである。
特許文献2には、ポリエチレン粒子に無機フィラーと界面活性剤や粘結剤などを混合して焼結した多孔体が開示されているが、吸水性は有するものの、揚水性は最大11cmしか開示されていないので、揚水ヘッド差の高さは充分ではない。
特許文献3には、地下から揚水し、地上で蒸発させた水分を凝縮水滴として回収する方法が提案されている。この方法では、吸水材を用いて揚水し、揚水された水を遮水膜で被覆して漏水させない方法が開示されているが、揚水に用いる吸水材としては、極細繊維束や不織布ほかの公知の吸水性が期待できる素材が用いられるとの記載はあるが、具体的な揚水ヘッド差や具体的な構造体が明らかにされてはいない。地下から揚水する場合、土圧または水圧により大気圧と同等になる圧力点までは水面となるので、親水材であれば短いヘッド差でよい場合が多いので、公知の親水材で揚水ヘッド差30cm以上のものは従来から開示されておらず、この提案では、揚水ヘッド差は30cm未満であるものと類推される。
特許文献4および5には、薬剤を吸上げ気化放出するための吸液芯として、繊維を用いたものが提案されている。特許文献4では、単繊維繊度0.5〜50デニールの繊維を空間充填率70〜99%とした丸打組紐の編状物を収縮させて作成され側面はスリーブ状フィルムで被われた構造の芯材であるが、水系薬液の揚水ヘッド差は開示されたキンチョウリキッド(登録商標)では10cm未満であり、揚水ヘッド差が30cm未満である。また、特許文献5では、プラスチック等の芯保持材の周りに複数の吸液層を配してなる吸液芯材であり、開示されたヘッド差は開示されたキンチョウリキッド(登録商標)では10cm未満であり、揚水ヘッド差が30cmを越えてはいない。
特許文献6には、短繊維ウエッブに樹脂含浸したポーラス構造をつくり、揚水する方法が提案されている。この方法では、樹脂含浸によるポーラス構造のため、細孔化すると閉塞して連続細孔化が困難となるため、開孔幅を大きくすることになり毛細管現象による揚水ヘッド差を高くできない問題がある。開示された揚水ヘッド差は15cmである。
特許文献7には、繊維束を用いて垂直に揚水するドレン材が提案されている。この方法では、繊維束内の隙間が大きくなり毛細管現象を利用して揚水ヘッド差を大きくできない。開示されている揚水ヘッド差は7cmである。
特許文献8には、繊維に吸水性樹脂を付着させた吸収材が提案されている。この方法は吸水樹脂の吸水性を利用しているため吸水樹脂が水分を取り込むため吸水樹脂が飽和するまでは止水効果になり、多量の揚水量とするには毛細管は太くならざるを得ないため、実質的に垂直揚水ヘッド差を高くすることが困難となるので、開示例も11cmである。
特許文献9には、揚水材にポリウレタンを用いたものが提案されているが、開示された揚水ヘッド差1〜5cm、比較例のロックウールで7.5cmであり、毛細管現象を利用した揚水ヘッド高さは低い。
特許文献10には、短繊維ウエッブに破材パルプとゼオライト及び結合剤を配合したシートを黄銅板の両面に熱接着フィルムで圧着接合した揚水シートが提案されている。この方法では、木材パルプが親水性のため、比較的揚水機能は発現しやすいが、開示されている最大揚水ヘッド差は18.8cmであり、揚水高さは不充分なものである。
特公昭61−31765号公報 特公昭63−295652号公報 特公平06−34981号公報 特許第3762195号公報 特許第3727830号公報 特開平4−163356号公報 特開平3084114号公報 特表昭58−502005号公報 特開2004−81189号公報 特許第2514145号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、揚水ヘッド差が50cm以上の揚水高さを示す揚水性繊維構造体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である揚水性繊維構造体。
2.緻密な繊維構造層が、繊度0.5〜6dtexの繊維からなり、厚みが150μm以上である上記1記載の揚水性繊維構造体。
3.緻密な繊維構造層が不織布からなる上記1または2に記載の揚水性繊維構造体。
4.緻密な繊維構造層が親水性基剤を付与されている上記1〜3のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
5.緻密な繊維構造層がポリエステルからなる上記1〜4のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
6.緻密な繊維構造層が長繊維不織布からなる上記1〜5のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
7.上記1〜6のいずれかに記載の緻密な繊維構造層が、他の構造層と積層されている揚水性繊維構造体。
8.上記1〜7のいずれかに記載の揚水性繊維構造体が、水の透湿透水性が低い被覆材で被覆されている揚水性繊維構造体。
本発明の揚水性繊維構造体は、厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である揚水性繊維構造体とすることで、毛細管現象による揚水機能を大幅に向上させ、大気圧下での揚水ヘッド差が50cm以上の格段に優れた揚水性能を発揮できるので、駆動揚水装置を用いなくても50cmのヘッド差の場所への水分供給も可能となる。
したがって、本発明の揚水性繊維構造体の優れた揚水機能を用いた各種用途、たとえば、水耕栽培では栽培培地の高さを高くでき、安価に作業性の向上が期待できる。河川敷のコンクリート用壁への緑化では、水面からの水分供給も可能となり、易メンテナンス性が非常に向上する。壁面緑化でも水分供給がヘッド差を広げられるので、緑化範囲のメンテナンス性が向上する。蒸発気化による冷却作用を利用する場合も、ヘッド差を高くとれるので熱交換面積を広くでき、熱交換効率を向上できる。無動力で揚水できるヘッド差を従来品より大きく取れるので、雨水貯留槽の一時貯留水を災害時有効利用する用途にも展開できる可能性もある。ドレン材用途でも、高い位置まで揚水が可能となるので、排水の容易性も向上するなど、各種用途への利便性向上効果の寄与が期待できる。
以下、本発明を詳述する。
本発明は、厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である揚水性繊維構造体である。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層は、空隙率が0.3〜0.8である。空隙率が0.3未満となる場合は、空隙幅は狭くなり揚水し易くなるが、揚水に必要な毛管有効面積が潰されて少なくなり、毛管面積に依存して充分な水量を揚水できない問題を生じ、
空隙率が0.8を越えると、毛細管現象による揚水機能を示す空隙幅が広くなり、揚水ヘッド差が50cm未満となる場合があり好ましくない。
本発明の好ましい空隙率は0.4〜0.7、より好ましくは0.45〜0.6である。
なお、本発明における空隙率とは、圧着されて緻密化された繊維構造層の占める断面積(Vex)から、断面を構成する繊維が占める断面積(Vf)を除いた面積を緻密化された繊維構造層の占める面積で除した値(Vex−Vf)/Vex=Vgと定義する。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層の厚みは、100μm以上である。
上述の空隙率と吸水速度を満たしても、厚みが100μm未満では、揚水される水量が少なくなり、水の蒸発速度が勝り、揚水ヘッド差が50cm未満となる場合があり好ましくない。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層の好ましい厚みは、150μm以上であり、より好ましくは200μm以上である。厚みの上限は特には限定されないが、繊維構造体単層での緻密層形成は、圧着加工の生産効率から1000〜3000μmが限度になるので、本発明では、上限を3000μmとする。単層での緻密層形成では、表面が緻密化されやすい傾向があり、単層の緻密層の厚みは表裏の緻密層の厚みが合算された厚みとする。緻密な繊維構造層が積層された場合も緻密層の厚みは合算された厚みとする。
本発明の揚水性繊維構造体は、緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である。本発明での切断面表面に滴下した水の吸水速度とは、JIS L−1907(2004)の滴下法に準拠して、一滴の水滴を滴下して、水滴の反射が消失するまでの時間と定義する。本発明では、一体化した後の繊維構造体の切断面に滴下した1滴の水の吸水速度が2秒以下であることを示す。なお、本発明での繊維構造体の切断面とは、一体化された後の繊維構造体を揚水方向に垂直な面で切断した際にできる切断面のことを言う。
水の吸水速度が2秒を越える場合は、水との接触角が大きくなり、毛細管現象による揚水性能が低下するので好ましくない。
本発明での好ましい水の吸水速度は1秒以下、より好ましくは、瞬間に吸水する吸水速度である。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層を構成する繊維の繊度は、特には限定されないが、緻密な繊維構造層を構成する繊維の少なくとも60重量%以上の主たる繊維の繊度が0.5〜6dtexであるのが好ましい。
緻密な繊維構造層を構成する繊維の主たる繊維の繊度が0.5dtex未満では、空隙率を0.3〜0.8とする圧着加工において、圧着され易くて均一な緻密層が形成し難い加工上の課題として、細い繊度の部分が潰されてしまい繊維間空隙が無くなってしまう問題がある。主たる繊維の繊度が6dtexを超える場合は、空隙率を0.3〜0.8とする圧着加工において、細密充填されても繊維間間隙が狭くなり難く、揚水性能が不足して揚水ヘッド差が50cmを超えない場合も発生する問題がある。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層を構成する主たる繊維の繊度は、より好ましくは1〜5dtexである。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層の組織は特には限定されないが、緻密な繊維構造層を形成しやすく、安価な不織布で構成されるのが好ましい。
繊維構造体としては、編織物も適用は可能であるが、空隙率0.3〜0.8の緻密な繊維構造層に加工するにはコスト的な問題がある。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層に用いる不織布としては、価格的な観点からは、安価な汎用素材であり、親水加工も容易で安価にできるポリエステル不織布が好ましい。本発明では、繊維形態保持性の良好で、生産性が高く価格的に安価なポリエステル長繊維不織布がより好ましい。最も好ましいポリエステル長繊維不織布としては、スパンボンド不織布が例示できる。
ポリエステル不織布における好ましいポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)などが例示できる。ポリエステル成分は、共重合ポリエステルでは、結晶性の低下や融点低下を生じるものがあり、ホモポリエステルを95モル%以上含有させることで、耐熱性、繊維形態保持性が確保できるので好ましく、より好ましくは汎用性の高いポリエチレンテレフタレート99モル%以上である。なお、本発明では、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、親水化剤などの改質剤を添加できる。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層は、水との接触角を下げて毛細管現象による揚水機能を高めておく必要から親水性を保持している必要がある。親水性ではない素材を用いる場合は、親水加工により親水性を付与する必要があるが、その方法に関しては、特には制限されず、公知の方法、例えば、親水基剤のポリマーブレンド、親水基剤の滴下や噴霧付与、親水性樹脂加工等の親水性基剤を付与する方法が採用できるが、好ましくは耐久親水性を有するポリマーブレンドや樹脂加工が推奨される。高い親水性を有する繊維素材を用いる場合は親水加工の必要はない。
本発明の揚水性繊維構造体として最も好ましい実施形態であるポリエステル長繊維からなるスパンボンド不織布を用いる場合には、親水加工により親水性基剤を付与する必要がある。本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層に、親水性基剤を付与する方法は特には限定されないが、繰返し揚水機能を保持するためには、繊維表面の親水性が耐久性を有することが望ましく、本発明実施形態で最も好ましいポリエステルスパンボンド不織布を用いる場合、親水性基剤としてポリエステル系の親水加工剤を用いるのが好ましい。
ポリエステルに用いて耐久性が発現できる親水加工剤としては、親水性ポリエステル樹脂系の親水性基剤を付与するのが好ましい。
最も好ましい親水性基剤としては、たとえば、高松油脂株式会社製SR加工剤が例示できる。特には、耐久性、耐加水分解性の良好なSR1800が例示できる。
親水性基剤は、必要に応じて、圧着成形する前の不織布又は圧着成形後の不織布に付与してもよい。不織布に親水加工する場合、連続加工が好ましいのでパッド法でディップ−乾燥−熱処理セット工程で親水性を付与するのが好ましい。親水加工剤の付与量は固形分で0.3〜2.0重量%とし、親水性能をJIS L−1907(2004)滴下法での評価時間1秒以下にするのが好ましい。
本発明の揚水性繊維構造体は、緻密な繊維構造層のみで構成されていてもよく、他の構造層と積層されていてもよい。
しかし、緻密な繊維構造層のみを単層で形成するのは、通常の製法では困難な場合が多く、一体化した繊維構造体中に緻密な繊維構造層が含まれて形成されている場合が多い。このような一体化した繊維構造体を単層で用いてもよく、他の構造層と積層されていてもよい。
他の構造層との積層は、緻密な繊維構造層または緻密な繊維構造層を含む繊維構造体の片面に積層されてもよく、両面に積層されてもよい。また、多層積層やサンドイッチ構造などに積層されていてもよい。
積層される他の構造層は特には限定されないが、吸水樹脂層を積層した場合、緻密な繊維構造層が、吸水樹脂層が吸水保持できる保水量を超える揚水性能を持てない場合は、揚水ヘッド差が吸水樹脂層が吸水する保水量と揚水される水量がバランスした高さまでしか揚水できなくなり、さらに高い揚水性能を要求する場合は問題を生じることがある。
本発明の揚水性繊維構造体における緻密な繊維構造層に積層できるものとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、セルロース系、天然素材、ポリフロン系、シリコン系、ガラス、金属など、およびそれらの混合物の繊維層、フィルム層などが例示できる。本発明では、汎用素材であるポリエステルやポリオレフィンが好ましい素材として例示できる。
積層方法は特には限定されない。積層された素材は一体化することで、取扱性を向上させることができるので好ましい。
一体化方法としては、ニードルパンチやウォーターパンチなどの交絡接合、エンボス加工などの圧着接合、積層接着など接着剤接合、ラミネート加工など、公知の方法が採用できる。
本発明での一体化処理は、親水性付与処理の前に積層一体化してもよく、親水性付与後に積層一体化してもよい。
本発明の揚水性繊維構造体は、空気中または親水性壁面と接触させた状態で設置する場合には、揚水部及び放水部以外の外周が揚水された水の蒸発放散、または親水性壁面への揚水された水の透水を抑制できる透湿透水性の低い被覆材で被覆された状態で使用することで、揚水ヘッド差を大きくできるので、揚水ヘッド差を大きくしたい場合は好ましい実施形態である。
水の蒸発放散または、水の透水を抑制できる被覆材で被覆されていない場合は、繊維構造体表面から、揚水した水が蒸発気化して、または、壁面の水の透水により、揚水ヘッド差が少なくなる場合があり用途により使い分けるのが好ましい。
被覆材は水の蒸発放散、透水を抑制する被覆材であれば、特には限定されないが、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、シリコン、テフロン(登録商標)などの透湿透水性の少ない合成樹脂フィルムやチューブ、金属パイプ、ガラス管などが使用できる。
本発明の揚水性繊維構造体の見掛密度は特には限定されないが、揚水性繊維構造体が緻密な繊維構造層を含んだ単層で構成されている場合の揚水性繊維構造体の好ましい見掛密度は0.15〜0.70g/cmである。
揚水性繊維構造体が緻密な繊維構造層を含んだ単層で構成されている場合の揚水性繊維構造体の見掛密度が0.15g/cm未満の場合には、均一な緻密層が形成し難い加工上の課題として、高揚水性能に必要な多数の狭い繊維間間隙を形成し難いため毛管有効面積が少なくなり、揚水ヘッド差が低くなる問題がある。揚水性繊維構造体が緻密な繊維構造層を含んだ単層で構成されている場合の揚水性繊維構造体の見掛密度が0.70g/cmを超える場合は、圧着され易い表裏付近は高度に圧密化が進み高揚水性能に必要な多数の狭い繊維間間隙を形成し難く、中間層はクッション層の働きをして高揚水性能に必要な多数の狭い繊維間間隙を形成し難くなり、結局、高揚水性能に必要な狭い繊維間間隙の数が減少して高揚水性能に必要な毛管有効面積が少なくなり揚水ヘッド差が高くならない問題を生じる場合がある。
本発明の揚水性繊維構造体が緻密な繊維構造層を含む単層で構成されている場合の揚水性繊維構造体のより好ましい見掛け密度は0.20〜0.60g/cmである。
本発明における緻密な繊維構造層を形成するための圧着方法は特には限定されないが、カレンダー加工やエンボス加工による、高い圧力で連続して加熱圧縮できる圧着加工が推奨される。なお、不織布の素材としては、圧着による塑性変形が可能な熱可塑性樹脂が推奨されるが、樹脂バインダー付与等により、圧着により所望の揚水性能が得られる緻密な繊維構造層とできれば、素材や組織なども特には制限されるものではない。
本発明の揚水性繊維構造体および緻密な繊維構造層の目付は、特には限定されない。必要に応じて積層または積層一体化して所望の目付とすることができる。
本発明の揚水性繊維構造体の揚水性能は、少なくとも50cm以上の揚水ヘッド差を有し、場合によっては揚水性能として70cm以上の揚水ヘッド差を有するものになる。
なお、本発明における、大気圧下での揚水ヘッド差とは、地面の大気圧すなわち、海面〜高度300mまでの地上での大気圧下(1000〜1030hPa)で測定された、毛細管現象により水面からの揚水した高さ(以下、揚水ヘッド差という)をいう。ただし、繊維構造体の揚水ヘッド差の測定方法は、下記の方法による。繊維構造体を幅4cm、長さ120cmに切断したシートに厚み0.03mmのポリエチレンで被覆(接合点は熱圧着で袋状としたものにシートを挿入して周りを被覆)したものを測定サンプルとし、高さ110cmまで、垂直に測定サンプルを吊り下げられるようにした架台にセットし、上部5cmは開放し、下部5cmも開放して水面下に接しておくようにして、24時間に水面から揚水した高さ(揚水高さ)までの距離Lcm(少数点2桁まで測定、2桁目を四捨五入)をn=5で測定した値の平均値で示す。
本発明の揚水性繊維構造体の力学特性は特には制限されないが、繊維構造体の形態保持に必要な引張強度は、少なくとも100N/5cm以上が好ましく、200N/5cm以上がより好ましい。
本発明では、揚水性繊維構造体の力学特性に問題がある場合、補強材を積層一体化して用いることができる。
以下に本発明の製法についての一例を開示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明での最も好ましい、ポリエチレンテレフタレートを用いる製造法について以下に述べる。
主成分として固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを乾燥し、次いで、通常の溶融紡糸機にて、紡糸温度285℃にて紡糸する。吐出量は所望の繊度を得るために、設定牽引速度に応じて設定する。例えば、1.5dtexの繊維を得たい場合、牽引による紡糸速度を4500m/分に設定する時は、単孔吐出量を0.7g/分にて吐出する。
紡糸された吐出糸条はノズル直下〜10cm下で冷却風により冷却されつつ、下方に設置された牽引ジェットにて牽引細化されて固化する。
牽引紡糸された長繊維は、下方に設置された吸引ネットコンベア上に振落されて所望の目付で積層ウエッブ化される。本発明での好ましい繊維配列は、特には限定されないが、縦方向に繊維を配列させると、縦方向に連続した毛細管現象に必要な繊維間間隙を形成しやすいので推奨される方法である。連続して、ウエッブはバラケないように200〜220℃にて予備圧着されてハンドリング性を確保される。次いで、巻き取られ、積層して、または、連続して、熱圧着加工される。
本発明では、不織布の目付は、50〜2000g/mが推奨されるが、実用生産機での連続生産が可能なスパンボンド不織布の目付は300g/m未満であるから、さらに高い目付が必要な場合、仮圧着不織布を積層してニードルパンチ等による一体化処理をして圧着可能な目付にするのが好ましい。本発明では、例えば、生産性から目付280g/mの仮圧着不織布3層を積層して、ハンドリング性をよくするため、仮ニードルパンチして目付840g/mにした不織ウエッブを次いで圧着加工した。
本発明での圧着加工は、エンボス加工やカレンダー加工を用いることができる。
本発明では、条件的に優位な全面圧着されるカレンダー加工が推奨される。カレンダー加工では、圧着温度を高くしすぎるとフィルム化して連続した毛細管現象に必要な繊維間間隙を形成できなくなる場合があるので、好ましくは温度は融点より20〜40℃低い温度で、線圧を100〜200KN/cmにて熱圧着するのが望ましい。たとえば、目付が840g/mの不織布を得るには、温度240℃にて、線圧200KN/cmにて圧着すると、厚みが150〜200μm、空隙率が0.5〜0.6の緻密な繊維構造層が得られ、本発明の構成要件の緻密な繊維構造層の厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8は満足することができる。
エンボス加工では、ドット圧着のため、ドット部以外の部分でも不織布表面に厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を形成する必要から、不織布の目付は250g/m以上とするのが好ましく、圧着上限も踏まえると、加工不織布の目付は250〜1000g/mとするのが望ましい。加熱温度は融点より15〜35℃低い温度で、線圧を150〜300KN/cmにて、圧着面積が8〜30%のドットエンボスであるのが好ましい。圧着部分が連続して形成された格子柄やダイヤ柄では、高圧で圧着した場合、連続した毛細管現象に必要な繊維間間隙がドット部で潰されてなくなり揚水ヘッド差が低くなる場合があるので、本発明では、エンボス加工の圧着文様は、ドット形状が推奨される。好ましいエンボス文様としては、横楕円柄、ダイヤ凸柄や織目凸柄などが例示できる。圧着面積は、8%未満では、圧着構造の形態保持性が劣り好ましくない。30%を越えると連続細孔の総数が減少して揚水ヘッド差が高くできない場合がある。本発明では、圧着面積は8〜30%が好ましく、より好ましくは10〜20%である。
得られたエンボス加工した不織布は、次いで、親水性基剤を付与するために親水加工される。親水加工は、エンボス加工前の仮圧着不織布を親水加工して、必要に応じて積層圧着加工してもよく、圧着加工後、親水加工してもよい。処理の利便性からは、圧着加工後に親水加工するのがよい。
親水性基剤はポリエステルスパンボンド不織布を用いる場合、ポリエステル系親水性基剤が好ましい。たとえば、好ましい親水性基剤として高松油脂株式会社製のSR1800を用いる。処方としては、パッド法での推奨処方がよい。たとえば、SR1800:6部/SRCA−1:2部/水:92部である。処理液に浸漬した不織布は、マングルで搾られ連続してテンターにて乾燥−熱処理する。マングルの搾り圧は好ましくは40〜80N/mが好ましい。搾り圧50N/mでは約2重量%の付着量になる。乾燥は100℃、2分〜5分、熱処理は乾燥後、連続してまたは、オフラインで、180℃、2〜3分処理する。親水処理後、不織布は巻き取られ、本発明要件の厚みが100μm以上で、空隙率が0.8〜0.3の緻密な繊維構造層を含み、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下を満たす揚水性繊維構造体となる。
かくして得られた揚水性繊維構造体は、揚水ヘッド差が70cm以上に達する。得られた揚水性繊維構造体は、必要に応じて、裁断、積層、透水性のない被覆材で被覆されて種々の用途に適用される。湿潤雰囲気からの水分吸収などに用いる場合には、透水性のない被覆材での被覆は、必要がないので省略してもよい。本発明の揚水性繊維構造体は、必要に応じて、着色処理もできる。また、カビや藻類の増殖を防止する安全な薬物なども付着させて使用できる。
得られた本発明の揚水性繊維構造体は、揚水ヘッド差を50cm以上高くできるので、優れた揚水機能を生かし易メンテナンス性も向上させた水耕栽培の揚水材、河川敷緑化や壁面緑化の揚水材、ドレン材、水分蒸発冷却システムの揚水放水材、各種揚水芯材など、多岐にわたる用途に適用できる揚水機能材として安価に提供することを可能にすることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における実施例で記載する評価は以下の方法による。
1.単繊維繊度
不織布の任意の場所10点から1cmを取り、各n=20を測定して求めて得た繊維径の総平均値φaより、繊維の比重各n=3を測定して得た平均値ρaより下記式にて繊度(dtex)を求める。
繊度(dtex)=π×φa×ρa/400
2.目付
JIS L−1096(2000)に準じて測定した単位面積あたりの質量:g/m
3.見掛密度
JIS L−1096(2000)に準じ、荷重0.196Nにて測定した厚み(ti):mmを求め、下記式にて見掛密度を求めた。
見掛密度(g/cm)=Ms/(1000×1000×0.1ti)
4.吸水速度
一体化された後の繊維構造体を揚水方向に垂直な面で切断し、JIS L−1907(2004)の滴下法に準拠して、一体化した後の繊維構造体の上記切断面に一滴の水滴を滴下して、水滴の特別な反射が消失するまでの時間(秒)と定義する。
5.繊維構造体の親水性繊維構造層の判別
JIS L−1907(2004)の滴下法に準拠し、繊維構造体表裏面での水の反射がしなくなる時間(水を吸い込んだ時間)を測定し、5秒未満の場合を親水性繊維層と判断する。
6.緻密な繊維構造層の厚みおよび空隙率
(1)緻密な繊維構造層の厚み
揚水性繊維構造体の揚水方向と直交する任意の場所5箇所の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で20〜30倍にて、厚み方向に断面がすべて視野に入るように、必要に応じて複数枚を撮影して繊維構造体断面部の写真を作成する。次いで、その断面の中で幅方向に幅400μmで、断面の厚み方向がすべて網羅できるように、個々に400倍に拡大した部分断面写真を撮影して拡大した繊維構造体断面部の合成写真を作成する。得られた合成写真から、幅400μmで、厚み方向に20μm毎に、残余の20μm未満の層も1層として区分して、各区分した部分を拡大コピーして、圧着された繊維構造層の占める断面積(Vex)から、断面を構成する繊維が占める断面積(Vf)を除いた面積を、圧着された繊維構造層の占める面積で除した値が80%未満の層を緻密な繊維構造部として、断面方向の緻密な繊維構造部の厚みを20μm毎と残余の層の合算値とする。各箇所での合算した厚みを緻密な繊維構造層の厚み(Lexi)μmとし、5箇所の平均値を緻密な繊維構造層の厚み(Lex)μmとする。
(2)緻密な繊維構造層の空隙率
各箇所の20μm毎及び残余に区分した層の拡大写真をコピーして、繊維構造層の断面積(Vexi)および繊維構造層の断面に占める繊維断面の面積(Vfi)を求め、各区分した層毎に空隙率(Vgi=(Vexi−Vfi)/Vexi)を求め、各区分層の空隙率が80%未満の層の空隙率を平均した値(Vgn)を各箇所(5箇所)で求め5箇所の平均値を緻密な繊維構造層の空隙率(Vg=1/5Σ(Vgn))として求める。
7.圧着面積率
エンボス加工した場合のみに適用する。エンボス加工不織布1mの表面を20箇所サンプリングし、SEMにて500倍の写真をとり、1000倍に拡大した写真を印刷して、圧着部を切り抜き、切り抜いた圧着部の面積(Sp)を求め、単位面積あたりの圧着部数から、全体の面積(S0)に対してのSpの比率を求める。(n=20の平均値)但し、カレンダー加工不織布は100%とする。
P=100×1/n(Σ(Sp/S0))
8.揚水ヘッド差
繊維構造体を幅4cm、長さ120cmに切断したシートに厚み0.03mmのポリエチレンで被覆(接合点は熱圧着で袋状としたものにシートを挿入して周りを被覆)したものを測定サンプルとし、高さ110cmまで、垂直に測定サンプルを吊り下げられるようにした架台にセットし、上部5cmは開放し、下部5cmも開放して水面下に接しておくようにして、24時間に揚水した水面から揚水した高さ(揚水高さ)までの距離Lcm(少数点2桁まで測定、2桁目を四捨五入)をn=5で測定した値の平均値で示す。
9.栽培評価
水源からのヘッド差を60cmとして、60cm上に幅20cm、長さ20cm、深さ10cmの栽培ポットを設置し、栽培ポット底面内に東洋紡績株式会社製コスモA−1を敷き詰めて、幅4cmの評価用揚水サンプル4本を水源からポットまでをポリエチレンで被覆し、ポット底辺に孔を空けて、底面でコスモA−1に4箇所で接合させて設置、設置したポット内に、腐葉土10部と鹿沼土90部を混ぜた土を10cmまで敷き詰め、その土の表面に、直前まで地面に生えていた高麗芝を刈り取ってポット全面に貼り付けた。次いで、最初だけ、散水したが、以降は、水を与えないように屋根を架けて、7月初旬〜10月初旬の3ヶ月間放置して芝の生育状態を観察し、以下の評価を行った。
3ヶ月間枯れなし:◎、部分枯れ少し:○、半分以上枯れた:△、すべて枯れた:×
<実施例1>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を紡糸温度285℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度4500m/分にて引取り、ネットコンベア上に振落して目付280g/mのウエッブを得た。連続して、ネット上で230℃の予備圧着ローラーにて押さえ処理を行い単糸繊度1.5dtexの長繊維からなるウエッブを得た。次いで、得られたウエッブを3層積層して、ペネ40でニードルパンチ加工して積層一体化して、次いで、カレンダー加工機にて、最適加熱温度として240℃にて、線圧200kN/mで圧着加工して、目付840g/mの不織布を得た。得られた不織布は、次いで、高松油脂株式会社製のポリエステル系親水化剤SR1800推奨処方にて、パッド・キヤー処方にて浸漬−搾り−乾燥−熱処理して、付着量2.0重量%の繊維構造体を得た。
得られた繊維ウエッブ及び繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例1の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な揚水効果を示した。
<実施例2>
カレンダー加工での線圧を100kN/cmとした以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例2の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例3>
実施例1で得た目付280g/mのウエッブを2枚積層してニードルパンチで一体化した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例3の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例4>
実施例1で得た目付280g/mのウエッブを1枚のみ用いた以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例4の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は70cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例5>
ネットコンベア上に積層するウエッブの目付を60g/mとし、積層一体化しないで230℃にてカレンダー加工した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例5の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は70cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例6>
実施例1で得た目付280g/mの仮圧着したウエッブを実施例1と同様の方法にて高松油脂株式会社製のポリエステル系親水化剤SR1800推奨処方にて、パッド・キヤー処方にて浸漬−搾り−乾燥−熱処理して得たウエッブを、実施例1で得た親水基材を付与していない280g/mのウエッブと積層して、ペネ40でニードルパンチ加工して積層一体化して、次いで、カレンダー加工機にて、加熱温度230℃、線圧200kN/mにて圧着加工して、目付560g/mの不織布を得た。得られた繊維構造体の両面の親水性を確認するため吸水速度を測定すると、親水性基材を付与していない面は吸水速度が3分を超えるので、緻密な繊維構造層は親水性を示す層側のみとして計測した。得られた繊維創造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例6の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は60cm以上となる揚水性繊維構造体であった。 栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例7>
カレンダー加工の代わりに、圧着面積率18%の横楕円ドット状のエンボスローラーにて、最適加熱温度240℃、線圧250kN/mにてエンボス加工した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。なお、ドット圧着部の圧着面積率は16%で、大部分がほぼ潰されたフィルム状に近い(空隙率≦0.2)緻密な繊維構造層となっていた。評価では、ドット圧着部も含めた平均値で緻密な繊維構造層の厚みと空隙率を求めた。
本発明の要件を満たす実施例7の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例8>
ネットコンベア上に積層するウエッブの目付を80g/mとした以外、実施例5と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例5の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は70cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<比較例1>
親水加工処理しなかった以外は、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。なお、比較例1は親水性を示す緻密な繊維構造層は形成していないので、測定していない。
本発明の要件を外れる比較例1の繊維構造体は、親水性ではないため、揚水機能が著しく劣る繊維構造体であり、栽培評価では、揚水機能が無く、植物への給水ができないため非常に悪い結果を示した。
<比較例2>
ニードルパンチをペネ100にて行い、カレンダー加工しない以外は、実施例3と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例2の繊維構造体は、親水性は優れているが、緻密な繊維構造層を形成していないため、揚水機能が著しく劣る繊維構造体であり、栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<比較例3>
カレンダー加工での加熱温度220℃、線圧を50kN/cmとした以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
比較例3は圧着が不十分なため、緻密な繊維構造の厚みが薄くなり揚水機能がやや劣る繊維構造体になり、栽培評価でも悪い結果を示した。
<比較例4>
1.5dtexのポリエチレンテレフタレート短繊維50重量%と2.0dtexのポリエチレンをシース、ポリエチレンテレフタレートをコアにした芯鞘型短繊維50重量%を混綿開繊したウエッブを積層して240g/mとし、ペネ100にてニードルパンチ加工で一体化した不織布を、カレンダー加工温度100℃とし、線圧200kN/cmにてカレンダー加工し、次いで、実施例1と同様にして親水化処理して得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
比較例4の繊維構造体は、表面近傍は完全に潰れた緻密層を形成しているが、中間層は空隙が多く残り、親水性基材が付与されているにもかかわらず、ポリエチレン成分が揚水機能を阻害しているためか、揚水機能が劣る繊維構造体であり、栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<比較例5>
カレンダー加工温度を250℃とした以外、実施例5と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
比較例5の繊維構造体は、カレンダー加工での圧着が進みすぎてフィルム化しており、緻密な繊維構造層は揚水機能に必要な繊維間間隙が潰れてなくなっているため、揚水機能が非常に劣る繊維構造体であった。栽培評価は行わなかった。
<比較例6>
単繊維繊度を10.5dtexとした以外、実施例8と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例6は、繊度が太いため、緻密な繊維構造層の空隙率が0.8未満となり、揚水機能が劣る繊維構造体であった。栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<参考例1>
市販の吸揚水シートである、東洋紡績株式会社製コスモA−1(吸水繊維を混繊した不織布)の揚水ヘッド差を評価した結果、揚水ヘッド差は30cmであった。
吸水繊維は吸水した水分が飽和するまで吸収するので、揚水水量が少ないと毛細管現象で揚水できる揚水ヘッド差までも揚水できない(止水効果を発揮)場合があり、揚水ヘッド差は低くなる例である。
Figure 2012167412
本発明の揚水性繊維構造体は、高い揚水ヘッド差を付与するのに必要な、厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である揚水性繊維構造体であるので、無動力での揚水ヘッド差を50cm以上高くでき、優れた揚水機能を生かし易メンテナンス性も向上させた水耕栽培の揚水材、河川敷緑化や壁面緑化の揚水材、ドレン材、水分蒸発冷却システムの揚水放水材、各種揚水芯材、雨水貯留槽の一時貯留水を災害時有効利用する用途など、多岐にわたる用途に適用できる揚水機能材として安価に提供することを可能にすることができる。

Claims (8)

  1. 厚みが100μm以上で、空隙率が0.3〜0.8の緻密な繊維構造層を含む繊維構造体であって、一体化した後の繊維構造体の切断面表面に滴下した水の吸水速度が2秒以下である揚水性繊維構造体。
  2. 緻密な繊維構造層が、繊度0.5〜6dtexの繊維からなり、厚みが150μm以上である請求項1記載の揚水性繊維構造体。
  3. 緻密な繊維構造層が不織布からなる請求項1または2に記載の揚水性繊維構造体。
  4. 緻密な繊維構造層が親水性基剤を付与されている請求項1〜3のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
  5. 緻密な繊維構造層がポリエステルからなる請求項1〜4のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
  6. 緻密な繊維構造層が長繊維不織布からなる請求項1〜5のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の緻密な繊維構造層が、他の構造層と積層されている揚水性繊維構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の揚水性繊維構造体が、水の透湿透水性が低い被覆材で被覆されている揚水性繊維構造体。
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