JP5142816B2 - 気化フィルター用繊維構造体 - Google Patents
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Description
従来、気化フィルターには、水の吸い上げ性、保水性、湿潤時の保形性が要求される。そのため従来は、保水の観点からセルロース繊維を混用した基材を用いるのが一般的であった。しかしながら、セルロース繊維は吸水するとヤング率が下がり、形状が維持できないことや湿潤強度が低いため、例えば耐水性のアクリル系樹脂などを用いて硬仕上げを行い形状維持する必要がある。しかし、このような樹脂の使用により、樹脂が繊維間に浸透するため、水吸い上げ力の低下や、保水性能の低下が見られるという欠点があるほか、親水性が高く、水膨潤度が高いために単位風量あたりの水分蒸発量が制限されるという問題があった。
近年、電器メーカーによる加湿方式の改良により加湿器の能力アップ化がおこなわれているが、気化フィルターは従来のままであり、単位風量あたりの水分蒸発量が大きく、加湿能力が高くて、加湿能力が低下しにくい気化フィルターが求められていた。
特許文献1には、このようなセルロース繊維の欠点を改良するため、ポリオレフィンやポリエステルなどの成形性の良い樹脂製の網状構造物にセルロース繊維を30重量%含む繊維ウェブを一体化させ、樹脂によるセルロース繊維の保水能力の低下を防ぐ方法が開示されている。しかしながら、この方法では、セルロース繊維に保水した水分を蒸散させる必要があるため、単位風量あたりの水分蒸散量は改善できない。
特許文献2には、親水性繊維と熱融着性繊維を混繊し、熱圧着によりコルゲート構造またはプリーツ構造とし、空気の流入方向と線圧着角度を特定の範囲に制御することにより、有効通気量を多くする方法が開示されている。しかしながら、親水性繊維はレーヨンを代表とするセルロース繊維であり、水分蒸散量の改善には限界があり、長期使用による蒸散量の低下は回避できない。
(1)ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑性吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維から成る不織布層を積層した繊維構造体であって、該繊維構造体の吸水性繊維の含有率が5〜50wt%、目付けが20〜150g/m 2 、保水量が3.1〜4.7g/g、水膨潤度が10〜30%であることを特徴とする気化フィルター用繊維構造体。
(2)上記(1)に記載の繊維構造体が、平面状の基材と波状の基材が組み合わされてなるコルゲート状構造、またはプリーツ状構造の一部または全部を構成していることを特徴とする気化フィルター。
(3)上記(2)に記載の気化フィルターが搭載された加湿器。
本発明に用いる吸水性繊維は、熱可塑性吸水性樹脂を用いて得られるものであり、熱可塑性吸水性樹脂は、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる樹脂であり、ポリエチレングリコールの共重合量としては、好ましくは5〜90wt%であり、より好ましくは10〜80wt%、さらに好ましくは30〜60wt%の範囲である。
共重合量がこの範囲であると、繊維構造体として、適正な吸水性、保水性を得ることができる。
吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と熱可塑性繊維から成る不織布層から形成される積層体を含む繊維構造体において、吸水性繊維の含有率は、5〜50wt%が好ましく、より好ましくは10〜50wt%、さらに好ましくは15〜50wt%の範囲である。
ポリエステル系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はポリ乳酸などの生分解性ポリエステル等を挙げることができる。さらにはこれらのポリエステルを主体とする共重合あるいはこれらの混合物でも良い。
本発明の熱可塑性吸水性樹脂1〜20wt%を、これらのポリエステル系ポリマーに混合した樹脂を用いると親水性がより向上し、より好ましく用いることができる。
さらに、ポリエステル系樹脂を芯部成分とし、Co−PET、低融点PET、又はポリオレフィン等の成分を鞘部にした、鞘芯型複合繊維からなる熱可塑性不織布層を配置すると、熱融着によるコルゲート構造体やプリーツ構造体への加工が容易になり、吸水性能や乾燥速度の低下をおこすこと無くより好ましく用いることができる。
ポリオレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
気化フィルター用繊維構造体は、必要に応じて、染色や防黴加工を行うので、加工の容易さからポリエステル系ポリマーまたはポリアミド系ポリマーが好ましい。また、水中での保型性、コルゲート構造体またはプリーツ構造体への付型性の観点から、ポリエステル系ポリマーがより好ましく用いられる。
本発明のポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑性吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維から成る不織布層から形成される積層体は、公知の方法を用いて得られるものであり、製造方法及び積層方法としては従来公知の方法が任意に採用でき、特に制限はない。
吸水性不織布層と熱可塑性不織布層の接着あるいは絡み合わせる方法としては、カレンダー法、スルーエアーヒーティング法などの熱接着法、接着剤を用いる化学的接着法、ニードルパンチ法、水流交絡法、ステッチボンド法などの機械的接着法などのいずれを用いてもよい。
不織布構造体をコルゲート形状にする場合は、スパンボンド法やメルトブロー法により不織布を作成し、接着剤による吸水面積の現象を避けるためにも熱接着法で積層するほうが好ましい。プリーツ形状にする場合はこの限りではない。
本発明の気化フィルター用繊維構造体は、上記ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑性吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維から成る不織布層から形成される積層体が、気化フィルターの一部またはすべてを構成し、気化フィルターの水膨潤度が3〜35%の範囲を逸脱しない範囲で、他の材料を組み合わせることができる。
気化フィルターの水膨潤度は3〜35%が必要であり、35%を超えるとフィルターに保持された水分とフィルター基材の繊維との親和力が高すぎ、乾燥速度の低下をきたすため好ましくない。また、水膨潤度が3%未満であるとフィルターの水親和性が低すぎ、蒸散に必要な水分を十分保持することができない。気化フィルターの水膨潤度は蒸散性の観点から保水量と乾燥速度のバランスを取ることが重要であり、より好ましい水膨潤度は10〜30%の範囲である。
また、繊維構造体に占める吸水繊維層の割合は5〜50重量%であり、5重量%未満は加湿器の機種にもよるが気化フィルターとしての保水量と水拡散性が不足し、また、50重量%を超えると湿潤時の保型性が不足する。積層体に占める吸水繊維層の割合は、好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは15〜50重量%の範囲である。最近の加湿器の一部の機種に採用されている回転式加湿器フィルターは、常時気化フィルターに水が供給されるので吸水繊維層の割合が5重量%以上で問題なく使用できるが、気化フィルターの下層部が水に浸り、吸い上げる方式の加湿器に搭載される設置式気化フィルターでは、水の吸い上げ量を多くする必要であるため、吸水繊維層の割合が10重量%以上必要である。また、15重量%以上あれば、加湿器の型式や規模に左右されず、十分な加湿量が達成できる。
本発明の気化フィルターには、必要に応じて、抗菌剤、防黴剤、顔料、染料、その他の機能性薬剤を使用してもよく、これらの薬剤を固定させるため、バインダー樹脂を使用しても良い。気化式加湿器の気化フィルターは常時湿潤状態にあるため、抗菌剤や防黴剤を付与することは有効である。尚、本発明の気化フィルターはこれらの加工後の諸性能が本発明の範囲内にあればよい。
なお、各特性の評価方法は下記のとおりである。
1.目付(g/m2)
JIS−L−1096に規定の方法に従い、経20cm×緯20cmの試験片を5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの重量に換算して求めた。
2.保水性
20℃×65%RHの環境下でサンプルを24時間以上調湿した後、吸水性繊維積層不織布のサンプル重量を測定する(cg)。イオン交換水に30分浸漬した後、サンプルの端をピンセット等でつまみあげ、1分間余分な水を落としたのち、サンプル重量を測定し(dg)、サンプル1gあたりの保水量を下記の式により求める。
保水量(g/g)=(d−c)/c
JIS−L−1096に準拠し、10分後の吸い上げ高さを測定する。
4.乾燥速度
吸水性繊維積層不織布を15cm×15cmにサンプリングし、20℃×65%RHの環境下でサンプルを24時間以上調湿する。同環境下、サンプル重量を測定した後、イオン交換水を0.2ml滴下し、その直後の重量を測る。その後、5分おきにサンプルの重量を測定し、残存水分率が50%を切るまで重量測定を継続する。グラフに残存水分率をプロットし、残存水分率が50%に到達した時間をグラフより読み取る。
5.水膨潤度
20℃×65%RHの環境下で20℃±2℃の蒸留水に30分間浸漬し、3500rpmで5分間遠心脱水機にかけた後のサンプルを赤外線水分計FD−230((株)ケット科学研究所社製)にて水分率を求め、この値を水膨潤度とした。n=5の平均値を求めた。
放湿量:JEM1426
東芝ホームテクノ社製、加湿器;KA−G60DXに搭載されている気化フィルター(KAF−7)と同様の形のコルゲートタイプ気化フィルターを試作し、加湿性能を評価した。 20℃×30%RHにコントロールされた人工気候室内で、加湿モードを「連続」とし、積算運転時間8時間運転後と100時間運転後に、単位時間当たりのタンク内の水道水消費量を測定した。なお、200時間運転は、10時間運転後24時間以上自然乾燥を繰り返し、200時間経過後に測定を開始した。
7.カルキ成分の付着量
100時間運転後の気化フィルターのカルキ成分付着量を目視にて、以下の基準で判定した。
○:フィルター全体に薄く付着して結晶粒化している量が少ない。
△:フィルター全体に薄く付着して平面状基材の中心部にやや結晶粒化している。
×:フィルターの中心部に結晶粒化している量が多い。
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し、290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸口を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が20g/m2のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸口を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付15g/m2のウェブを得た。得られた吸水性ウェブを上記の目付20g/m2のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃で加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分圧着して55g/m2の繊維構造体を作成した。得られた繊維構造体の保水量、水膨潤度、吸い上げ高さ、乾燥速度を表1に示した。
実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付40g/m2のウェブと目付15g/m2吸水性ウェブを得た。得られた吸水性ウェブを目付40g/m2のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃で加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分圧着して95g/m2の積層不織布を作成した。得られた繊維構造体の保水量、水膨潤度、吸い上げ高さ、乾燥速度を表1に示した。
積層不織布の(c)層として、スパンボンド用の2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が高密度ポリエチレン(HDPE:融点130℃)、芯成分がポリエチレンテレフタレート(PET:融点263℃)からなり、平均繊維径16μmの目付15g/m2の鞘芯型複合繊維不織布を作製した。
(b)層は、固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸口を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付10g/m2のウェブを得た。
得られた繊維構造体の保水量、水膨潤度、吸い上げ高さ、乾燥速度を表1に示した。
繊度3.0dtexで繊維長51mmのレーヨン繊維50重量%と繊度5.8dtexで繊維長51mmのポリエステルを均一混合し、次いでカーディング加工を施し、目付80g/m2の短繊維繊維層を得た。得られた短繊維繊維層をウォーターパンチ処理で繊維間を交絡し、均一な不織布を得た。得られた不織布をアクリル樹脂で樹脂加工した後、保水量、水膨潤度、吸い上げ高さ、乾燥速度を表1に示した。
実施例1で得られた繊維構造体を用い、平面状基材/波状基材の長さ比が1/1.4、波状基材の一山が6mmになるように、平版基材に波状基材の山部を接着した。このコルゲート構造体をロール状に巻き、直径19.5cm、厚さ2.2cmのコルゲート構造体の気化フィルターを得た。得られた気化フィルターの断面図を図1に示す。
得られた気化フィルターを東芝ホームテクノ社製、加湿器:KA−G60DXに付属の気化フィルターKAF−7のホルダーにセットし、放湿量とカルキ成分の付着量を観察した。気化フィルターの蒸散布量、カルキ成分付着量を表2に示す。
蒸散性に優れ加湿量が多いにも関わらずカルキ成分はフィルター全体に薄く付着して結晶粒化している量が少なく、加湿性、保水性、蒸散性、保型性に優れた、気化フィルター用繊維構造体であった。
実施例2で得られた繊維構造体を平面状基材に、実施例3で得られた繊維構造体を波状基材に配置し、実施例4と同様の方法で気化フィルターを得た。
得られた気化フィルターを東芝ホームテクノ社製、加湿器:KA−G60DXに付属の気化フィルターKAF−7のホルダーにセットし、放湿量とカルキ成分の付着量を観察した。気化フィルターの蒸散布量、カルキ成分付着量を表2に示す。
蒸散性に優れ加湿量が多いにも関わらずカルキ成分はフィルター全体に薄く付着して結晶粒化している量が少なく、加湿性、保水性、蒸散性、保型性に優れた、気化フィルター用繊維構造体であった。
比較例1で得られた不織布を平面状基材に、実施例1で得られた繊維構造体を波状基材に配置し、実施例4と同様の方法で気化フィルターを得た。得られた気化フィルターを東芝ホームテクノ社製、加湿器:KA−G60DXに付属の気化フィルターKAF−7のホルダーにセットし、放湿量とカルキ成分の付着量を観察した。気化フィルターの蒸散布量、カルキ成分付着量を表2に示す。
蒸散性に優れ加湿量が多いにも関わらずカルキ成分は波状繊維構造体部全体に薄く付着し、平面状基材の中心部にやや結晶粒化しているのみであり、加湿性、保水性、蒸散性、保型性に優れた、気化フィルター用繊維構造体であった。
比較例1で得られた不織布を平面状基材と波状基材に配置し、実施例4と同様の方法で気化フィルターを得た。得られた気化フィルターを東芝ホームテクノ社製、加湿器:KA−G60DXに付属の気化フィルターKAF−7のホルダーにセットし、放湿量とカルキ成分の付着量を観察した。気化フィルターの蒸散布量、カルキ成分付着量を表2に示す。
該気化フィルターは加湿量が200時間運転で加湿量が減少し、フィルターの中心部に、カルキ成分が結晶粒化している量が多かった。
Claims (3)
- ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑性吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維から成る不織布層を積層した繊維構造体であって、該繊維構造体の吸水性繊維の含有率が5〜50wt%、目付けが20〜150g/m 2 、保水量が3.1〜4.7g/g、水膨潤度が10〜30%であることを特徴とする気化フィルター用繊維構造体。
- 請求項1に記載の繊維構造体が、平面状の基材と波状の基材が組み合わされてなるコルゲート状構造、またはプリーツ状構造の一部または全部を構成していることを特徴とする気化フィルター。
- 請求項2に記載の気化フィルターが搭載された加湿器。
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