JP5347825B2 - 揚水性繊維構造体 - Google Patents

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本発明は、揚水性に優れた構造体に関する。更に詳しくは、優れた揚水機能を有する繊維構造体からなる、毛細管現象により従来にない高ヘッド差まで揚水できる揚水性繊維構造体を提供することにある。
毛細管現象を利用した揚水構造体として、ストーブなどの燃料吸上げ芯材、芳香剤用芯材、水耕栽培用揚水構造体、ドレン揚水材などが知られている。如かして、これらの揚水構造体は揚水できるヘッド差が小さいものしか得られていないのが実情であり、揚水ヘッド差が30cmを越えるものは知られていない。
特許文献1には、燃料用液体をヘッド差が4cm以上で吸上げることが可能なセラミック構造体が提案されているが、開示されている揚水ヘッド差の高さは最大20cmしかないものである。
特許文献2には、ポリエチレン粒子に無機フィラーと界面活性剤や粘結剤などを混合して焼結した多孔体が開示されているが、吸水性は有するものの、揚水性は最大11cmしか開示されていないので、揚水ヘッド差の高さは充分ではない。
特許文献3には、地下から揚水し、地上で蒸発させた水分を凝縮水滴として回収する方法が提案されている。この方法では、吸水材を用いて揚水し、揚水された水を遮水膜で被覆して漏水させない方法が開示されているが、揚水に用いる吸水材としては、極細繊維束や不織布ほかの公知の吸水性が期待できる素材が用いられるとの記載はあるが、具体的な揚水ヘッド差や具体的な構造体が明らかにされてはいない。地下から揚水する場合、土圧または水圧により大気圧と同等になる圧力点までは水面となるので、親水材であれば短いヘッド差でよい場合が多いので、公知の親水材で揚水ヘッド差30cm以上のものは従来から開示されておらず、この提案では、揚水ヘッド差は30cm未満であるものと類推される。
特許文献4および5には、薬剤を吸上げ気化放出するための吸液芯として、繊維を用いたものが提案されている。特許文献4では、単繊維繊度0.5〜50デニールの繊維を空間充填率70〜99%とした丸打組紐の編状物を収縮させて作成され側面はスリーブ状フィルムで被われた構造の芯材であるが、水系薬液の揚水ヘッド差は開示されたキンチョウリキッド(登録商標)では10cm未満であり、揚水ヘッド差が30cm未満である。また、特許文献5では、プラスチック等の芯保持材の周りに複数の吸液層を配してなる吸液芯材であり、開示されたヘッド差は開示されたキンチョウリキッド(登録商標)では10cm未満であり、揚水ヘッド差が30cmを越えてはいない。
特許文献6には、短繊維ウエッブに樹脂含浸したポーラス構造をつくり、揚水する方法が提案されている。この方法では、樹脂含浸によるポーラス構造のため、細孔化すると閉塞して連続細孔化が困難となるため、開孔幅を大きくすることになり毛細管現象による揚水ヘッド差を高くできない問題がある。開示された揚水ヘッド差は15cmである。
特許文献7には、繊維束を用いて垂直に揚水するドレン材が提案されている。この方法では、繊維束内の隙間が大きくなり毛細管現象を利用して揚水ヘッド差を大きくできない。開示されている揚水ヘッド差は7cmである。
特許文献8には、繊維に吸水性樹脂を付着させた吸収材が提案されている。この方法は吸水樹脂の吸水性を利用しているため吸水樹脂が水分を取り込むため吸水樹脂が飽和するまでは止水効果になり、多量の揚水量とするには毛細管は太くならざるを得ないため、実質的に垂直揚水ヘッド差を高くすることが困難となるので、開示例も11cmである。
特許文献9には、揚水材にポリウレタンを用いたものが提案されているが、開示された揚水ヘッド差1〜5cm、比較例のロックウールで7.5cmであり、毛細管現象を利用した揚水ヘッド高さは低い。
特許文献10には、短繊維ウエッブに破材パルプとゼオライト及び結合剤を配合したシートを黄銅板の両面に熱接着フィルムで圧着接合した揚水シートが提案されている。この方法では、木材パルプが親水性のため、比較的揚水機能は発現しやすいが、開示されている最大揚水ヘッド差は18.8cmであり、揚水高さは不充分なものである。
特公昭61−31765号公報 特公昭63−295652号公報 特公平06−34981号公報 特許第3762195号公報 特許第3727830号公報 特開平4−163356号公報 特開平3084114号公報 特表昭58−502005号公報 特開2004−81189号公報 特許第2514145号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、揚水ヘッド差が50cm以上の揚水高さを示す揚水性繊維構造体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.長繊維からなる不織布が圧着されて連続細孔を形成した繊維構造体であって、大気圧下での揚水ヘッド差が50cm以上である揚水性繊維構造体。
2.大気圧下での揚水ヘッド差が70〜150cmである上記1記載の揚水性繊維構造体。
3.繊維構造体が、JIS L−1907(2004)の滴下法で5秒以下の親水性能を有し、繊維構造体中に繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を有する連続細孔を形成した緻密な連続層を有し、該連続層の有効空隙率が10〜100%である上記1または2記載の揚水性繊維構造体。
4.繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を有する連続細孔を形成した緻密な連続層の厚みが40μm以上である上記1〜3のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
5.不織布がポリエステル長繊維からなるスパンボンド不織布であり、繊維表面が親水性ポリエステルで樹脂加工された上記1〜4のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
6.揚水部および放水部以外の外周が、水の蒸発放散を抑制できる被覆材で被覆されている上記1〜5のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
本発明の揚水性繊維構造体は、毛細管現象による揚水機能が、大気圧下での揚水ヘッド差が50cm以上と格段に優れているので、駆動揚水装置を用いなくても50cmのヘッド差の場所への水分供給も可能となる。したがって、本発明の揚水性繊維構造体の優れた揚水機能を用いた各種用途、たとえば、水耕栽培では栽培培地の高さを高くでき、安価に作業性の向上が期待できる。河川敷のコンクリート用壁への緑化では、水面からの水分供給も可能となり、易メンテナンス性が非常に向上する。壁面緑化でも水分供給がヘッド差を広げられるので、緑化範囲のメンテナンス性が向上する。蒸発気化による冷却作用を利用する場合も、ヘッド差を高くとれるので熱交換面積を広くでき、熱交換効率を向上できる。無動力で揚水できるヘッド差を従来品より大きく取れるので、雨水貯留槽の一時貯留水を災害時有効利用する用途にも展開できる可能性もある。ドレン材用途でも、高い位置まで揚水が可能となるので、排水の容易性も向上するなど、各種用途への利便性向上効果の寄与が期待できる。
有効空隙率の計算に使う緻密な連続層の断面SEM写真例である。
以下、本発明を詳述する。
本発明は、長繊維からなる不織布が圧着されて連続細孔を形成した繊維構造体であって、大気圧下での揚水ヘッド差が50cm以上である揚水性繊維構造体である。
本発明の揚水性繊維構造体を構成する不織布は、長繊維不織布である。短繊維不織布では、揚水に必要な微細な連続細孔が途中で途切れて連続性を失うことによる揚水ヘッド差の低下を生じる場合があり好ましくない。本発明では、連続繊維であれば、特には限定されないが、好ましくは、揚水方向に連続した細孔を形成しやすいスパンボンド不織布または、引き揃えトウからなる不織布であり、特に好ましくは、生産性が高く、揚水繊維構造体を安価に提供できるスパンボンド不織布である。
本発明の揚水性繊維構造体は、圧着されて連続細孔を形成した繊維構造体である。圧着により、繊維間にある空隙が圧縮され毛細管現象により、揚水が可能となる。圧着方法は特には限定されないが、カレンダー加工やエンボス加工による、高い圧力で連続して加熱圧縮できる圧着加工が推奨される。なお、不織布の素材としては、圧着による塑性変形が可能な熱可塑性樹脂が推奨されるが、樹脂含浸等により、圧着により所望の連続細孔を形成可能な長繊維構造体を用いることもできる。
本発明における、大気圧下での揚水ヘッド差とは、地面の大気圧即ち、海面〜高度1000mまでの地上での大気圧下(低気圧、高気圧含む920〜1030hPa)で測定された、毛細管現象により水面からの揚水した高さ(以下、揚水ヘッド差という)をいう。但し、繊維構造体の揚水ヘッド差の測定方法は、下記の方法による。繊維構造体を幅4cm、長さ120cmに切断したシートに厚み0.03mmのポリエチレンで被覆(接合点は熱圧着で袋状としたものにシートを挿入して周りを被覆)したものを測定サンプルとし、高さ110cmまで、垂直に測定サンプルを吊り下げられるようにした架台にセットし、上部5cmは開放し、下部5cmも開放して水面下に接しておくようにして、24時間に揚水した水面から揚水した高さ(揚水高さ)までの距離Lcm(少数点2桁まで測定、2桁目を四捨五入)をn=5で測定した値の平均値で示す。
本発明の繊維構造体は、揚水ヘッド差が50cm以上である。揚水ヘッド差が50cm未満では、50cm以上の揚水が必要な場合に使用できないので好ましくない。本発明での好ましい揚水ヘッド差は70cm以上である。なお、揚水ヘッド差の限界は150cmとなる。したがって、本発明では、揚水ヘッド差の上限は特には限定しないが、150cmとなる。
本発明における揚水性繊維構造体は、JIS L−1907(2004)の滴下法に準拠して測定した繊維構造体表面での水の特別な反射がしなくなる時間(水を吸い込んだ時間)が5秒以内である親水性能を有する。5秒を超えると、繊維構造体内への水の浸透性が悪くなり揚水し難いので好ましくない。本発明での好ましい特別な反射がしなくなる時間は2秒以内、より好ましくは1秒以内、最も好ましくは瞬時である。なお、親水性能付与の方法に関しては、特には制限されず、公知の方法、例えば、親水化剤のポリマーブレンド、親水化剤の滴下や噴霧付与、親水性樹脂加工等を用いることができるが、好ましくは耐久親水性を有するポリマーブレンドや樹脂加工が推奨される。
本発明における繊維構造体中の連続細孔を形成する繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙とは、揚水性構造体の幅方向の任意の5箇所より断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、撮影視野に繊維構造体断面の全体写真が入るように倍率を調整して撮影する。この全体写真を網羅するように撮影写真視野が幅400μmとなるように拡大したSEM写真を撮影し、拡大した合成全体写真を作成する。その合成写真より幅方向に3点を選択し、緻密連続層、繊維間空隙1〜20μmの有効空隙率および繊維間空隙1〜20μmの連続層の厚みを求める。
厚み方向において1〜20μmの空隙を多数形成した緻密構造部分を目視で判断し、緻密連続層の厚みを判定する。たとえば、図−1の写真では緻密連続層の厚みを217μmと判断した。次いで、緻密連続層の断面写真より繊維間空隙を測定する。空隙が細長い場合は、細い幅が1〜20μmの空隙部分を有効部分とし繊維間空隙幅が1〜20μmの空隙とする。幅長さとも1μm未満および幅長さとも20μmを越える空隙部分は無効部分として、抽出コピー写真から空隙部分を切り抜き、空隙部分の有効部分Waと無効部分Wbの各重量を積算して、全空隙部分のうち有効空隙部分の比率を求めて、その比率が10〜100%である部分が一定厚みで連続している部分を、繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を形成した連続層とする。
エンボス加工機やカレンダー加工機など熱圧着方式にて繊維構造体を形成した場合、通常、連続層は表面となる上層と下層に形成される。このように厚み方向において連続層が複数形成された場合は、個々の層において緻密連続層および繊維間空隙幅1〜20μmの有効空隙率を求め、有効空隙率はそれらの平均値で示し、繊維間空隙幅1〜20μmの連続層の厚みは積算値で示す。
それぞれの測定位置で求められた繊維間空隙幅1〜20μmの有効空隙率、繊維間空隙幅1〜20μmの連続層の厚みを算術平均値(3点×5箇所)で示す。
本発明の揚水性繊維構造体の連続層は、繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙が空隙全体の断面積の10%〜100%であるのが好ましく、10%未満では、揚水ヘッド差が50cmを越えない場合があり、好ましくない。なお、本発明の上限である100%は、すべての空隙が繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙になることを意味する。本発明でのより好ましい連続層は、繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙が空隙全体の断面積の20%〜100%である。
本発明において、繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を有する連続細孔を形成した緻密な連続層の厚みが40μm以上の連続層を有する揚水性繊維構造体が好ましい。
本発明における連続層の厚みは、上述の連続層で抽出したSEM写真から判断した連続層とした緻密層の厚みを言う。連続層の厚みは好ましくは40μm以上、より好ましくは100μm以上であり、最も好ましくは、200μm以上不織布の厚み全体が連続層である。連続層が40μm未満では、親水性であっても、揚水ヘッド差が50cmを越えない場合があり、好ましくない。逆に、本発明で定義する親水性ではない場合は、充分な厚みの連続層が形成されていても、揚水ヘッド差が50cmを越えることがなく、好ましくない。
本発明における繊維構造体を形成する不織布は、ポリエステル長繊維からなるスパンボンド不織布を用い、繊維表面を親水性ポリエステルで樹脂加工された揚水性繊維構造体が推奨される。
本発明での好ましいポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)などが例示できる。本発明でのポリエステル成分は、共重合ポリエステルでは、結晶性の低下や融点低下を生じるものがあり、ホモポリエステルを95モル%以上含有させることで、耐熱性、繊維形態保持性が確保できるので好ましく、最も好ましくは汎用性の高いポリエチレンテレフタレート99モル%以上である。なお、本発明では、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、親水化剤などの改質剤を添加できる。
本発明の揚水性繊維構造体を構成する不織布は、生産性が高く、繊維形態保持性の良好な長繊維不織布であるスパンボンド不織布が特に好ましい。
本発明の揚水性繊維構造体に、親水性能を付与する方法は特には限定されないが、繰返し揚水機能を保持するためには、繊維表面の親水性が耐久性を有することが望ましく、本発明実施形態で最も好ましいポリエステルスパンボンド不織布を用いる場合、ポリエステル系の親水加工剤を用いるのが好ましい。ポリエステルに用いて耐久性が発現できる親水化剤としては、たとえば、高松油脂株式会社製SR加工剤が好ましく、耐久性、耐加水分解性の良好なSR1800が特に好ましい。親水加工は、必要に応じて、圧着成形する前の不織布又は圧着成形後の不織布に付与してもよい。不織布に加工する場合、連続加工が好ましいのでパッド法でデップ−乾燥−熱処理セット工程で親水性を付与するのが好ましい。親水化剤の付与量は0.3〜2.0重量%とし、親水性能をJIS L−1907(2004)滴下法での評価時間1秒以下にするのが好ましい。
本発明の揚水性繊維構造体は、揚水部及び放水部以外の外周が揚水された水の蒸発放散を抑制できる被覆材で被覆された状態で使用すると、揚水ヘッド差を大きくできるので、揚水ヘッド差を大きくしたい場合は好ましい実施形態である。水の蒸発放散を抑制できる被覆材で被覆されていない場合は、繊維構造体表面から、揚水した水が蒸発気化していくので揚水ヘッド差が少なくなる場合があり用途により使い分けるのが好ましい。被覆材は水の蒸発放散を抑制する被覆材であれば、特には限定されないがたとえば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、シリコン、テフロン(登録商標)などの透湿性の少ない合成樹脂フィルムやチューブ、金属パイプ、ガラス管などが使用できる。
本発明では、揚水性繊維構造体を構成する不織布の繊維繊度は、特には限定されないが、単繊維の繊度は、0.5〜5dtexが好ましい。単繊維繊度が0.5dtex未満では、磨耗等での切断損傷が大きくなる場合があり、更には、圧着処理で最密充填されて微細空隙が少なくなりやすくなり、微細な連続細孔による揚水ヘッド差が低くなる場合がある。単繊維繊度が5dtexを越えると1μm〜20μmの繊維間幅からなる微細な連続細孔を空隙面積あたり10%以上形成することが難しくなり、揚水ヘッド差が低くなる場合がある。本発明でのより好ましい単繊維繊度は1〜4dtex、さらに好ましくは1.5〜3dtexである。
本発明の揚水性繊維構造体の見掛密度は特には限定されないが、0.15〜0.90g/cmが好ましい。0.15g/cm未満では、圧着により形成される連続層の厚みが薄くなり毛細管現象で揚水できる高さが低くなる場合がある。圧着により全体が0.90g/cmを越えると最密充填によるフィルム化を生じて、1μm〜20μmの繊維間幅からなる微細な連続細孔が減少したり、連続細孔が閉塞されていたりして揚水ヘッド差が低くなる場合がある。本発明の好ましい見掛密度は、0.20〜0.80g/cmであり、より好ましい見掛密度は、0.25〜0.70g/cmである。なお、連続層の見掛密度は、0.60〜1.10g/mが好ましい。
本発明の揚水性繊維構造体の目付は、特には限定されないが、好ましくは、50〜2000g/mである。目付が50g/m未満では、圧着加工での毛細管現象による揚水に必要な連続細孔をもつ連続層の厚みが薄くなり、揚水ヘッド差が50cmを越えることが困難となる場合がある。2000g/mを越えると、圧着加工工程での圧着圧力が広幅で処理する場合、非常に高い圧力が必要になり、連続生産化が困難になるので望ましくない。なお、本発明の揚水性繊維体の圧着加工は、特には限定されず、公知の圧着処理方法が使えるが、本発明では、連続圧着処理が望ましく、たとえば、カレンダー加工やエンボス加工が推奨される。これらの圧着加工での加工性を加味した好ましい本発明揚水性繊維構造体の目付は100〜1500g/mであり、より好ましくは100〜1000g/mである。通常のスパンボンド不織布は、目付が300g/m以上のものは、積層してニードルパンチなどで絡合したものが供給されており、更に、目付増が必要であれば、積層して目付増加を行うことができる。本発明では、必要に応じて、低目付圧着不織布を積層一体化した目付が2000g/mを超えるものも包含するものである。
本発明の揚水性繊維構造体に用いる不織布の180℃の乾熱収縮率は、特には限定されないが、圧着熱処理での熱収縮などによる変形が生じにくい5%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
本発明の揚水性繊維構造体に用いる不織布の力学特性は特には制限されないが、繊維構造体の形態保持に必要な引張強度は、少なくとも100N/5cm以上、好ましくは200N/5cm以上である。
以下に本発明の製法についての一例を開示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明での最も好ましい、ポリエチレンテレフタレートを用いる製造法について以下に述べる。
主成分として固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを乾燥し、次いで、通常の溶融紡糸機にて、紡糸温度285℃にて紡糸する。吐出量は所望の繊度を得るために、設定牽引速度に応じて設定する。例えば、2dtexの繊維を得たい場合、牽引による紡糸速度を4500m/分に設定する時は、単孔吐出量を0.9g/分にて吐出する。
紡糸された吐出糸条はノズル直下〜10cm下で冷却風により冷却されつつ、下方に設置された牽引ジェットにて牽引細化されて固化する。
牽引紡糸された長繊維は、下方に設置された吸引ネットコンベア上に振落されて所望の目付で積層ウエッブ化される。本発明での好ましい繊維配列は、特には限定されないが、縦方向に繊維を多く配列させると、連続細孔を得やすいので推奨される方法である。連続して、ウエッブはバラケないように200〜220℃にて予備圧着されてハンドリング性を確保される。次いで、巻き取られ、積層して、又は、連続して、エンボス加工される。
本発明では、不織布の目付は、50〜2000g/mが推奨されるが、実用生産機での連続生産が可能なスパンボンド不織布の目付は300g/m未満であるから、さらに高い目付が必要な場合、仮圧着不織布を積層してニードルパンチ等による一体化処理をして圧着可能な目付にするのが好ましい。本発明では、例えば、生産性から目付280g/mの仮圧着不織布3層を積層して、ハンドリング性をよくするため、仮ニードルパンチして目付840g/mにした不織ウエッブを次いで圧着加工した。
本発明での圧着加工は、エンボス加工やカレンダー加工を用いることができる。
エンボス加工では、ドット圧着が推奨されるため、不織布の目付は250g/m以上でないと圧着状態が不良になり、連続層を形成できない。より好ましい目付は250〜1000g/mである。加熱温度は融点より15〜35℃低い温度で、線圧を150〜300KN/cmにて、圧着面積が8〜30%のドットエンボスであるのが好ましい。圧着部分が連続して形成された格子柄やダイヤ柄では、高圧で圧着した場合、連続細孔が切断されて揚水ヘッド差が低くなる場合があるので、本発明で推奨される圧着文様は、ドット形状の圧着部を形成して、圧着により形成された微細な連続細孔が切断されないエンボス文様である、横楕円柄、ダイヤ凸柄や織目凸柄などが例示できる。圧着面積は、8%未満では、圧着構造の形態保持性が劣り好ましくない。30%を越えると連続細孔の総数が減少して揚水ヘッド差が高くできない場合がある。本発明では、圧着面積は8〜30%が好ましく、より好ましくは10〜20%である。
圧着された不織布構造体の見掛密度は、0.15〜0.90g/cmになるよう温度と線圧を調整するのが好ましい。たとえば、目付が840g/m、見掛密度0.64g/cmの不織布を得るには、横楕円凸型エンボスを線圧250kN/mで行う場合、230〜250℃が好ましく、より好ましくは240℃である。このような条件では、横楕円ドットで圧着面積16%の最も好ましい本発明の揚水性繊維構造物用不織布とすることができる。
カレンダー加工では、全面圧着されるので、不織布の好ましい目付は100〜1500g/mである。カレンダー加工では、圧着温度を高くしすぎるとフィルム化して微細孔を有する連続層が形成できなくなるので、好ましくは温度は融点より20〜40℃低い温度で、線圧を100〜200KN/cmにて熱圧着するのが望ましい。たとえば、目付が840g/mの不織布を得るには、温度240℃にて、線圧200KN/cmにて圧着すると、見掛密度0.35g/cmの好ましい本発明の揚水性繊維構造物用不織布とすることができる。
得られたエンボス加工した不織布は、次いで、親水加工される。親水加工は、エンボス加工前の仮圧着不織布を親水化処理し、積層エンボス加工してもよく、エンボス加工後、親水加工してもよい。処理の利便性からは、エンボス加工後に親水加工するのがよい。親水加工剤はポリエステルスパンボンド不織布を用いる場合、ポリエステル系親水剤が好ましい。たとえば、好ましい処理剤として高松油脂株式会社製のSR1800を用いる。処方としては、パッド法での推奨処方がよい。たとえば、SR1800:6部/SRCA−1:2部/水:92部である。処理液に浸漬した不織布は、マングルで搾られ連続してテンターにて乾燥−熱処理する。マングルの搾り圧は好ましくは40〜80N/mが好ましい。搾り圧50N/mでは約2重量%の付着量になる。乾燥は100℃、2分〜5分、熱処理は乾燥後、連続して又は、オフラインで、180℃、2〜3分処理する。親水処理後、不織布は巻き取られ揚水性繊維構造体となる。
かくして得られた揚水性繊維構造物は、必要に応じて、裁断、積層、透水性のない被覆材で被覆されて種々の用途に適用される。湿潤雰囲気からの水分吸収などに用いる場合には、透水性のない被覆材での被覆は、必要がないので省略してもよい。本発明の揚水性繊維構造体は、必要に応じて、着色処理もできる。又、カビや藻類の増殖を防止する安全な薬物なども付着させて使用できる。
得られた本発明の揚水性繊維構造体は、揚水ヘッド差を50cm以上高くできるので、優れた揚水機能を生かし易メンテナンス性も向上させた水耕栽培の揚水材、河川敷緑化や壁面緑化の揚水材、ドレン材、水分蒸発冷却システムの揚水放水材、各種揚水芯材など、多岐にわたる用途に適用できる揚水機能材として安価に提供することを可能にすることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における実施例で記載する評価は以下の方法による。
1.単繊維繊度
不織布表面の任意の場所10点から1cmを取り、各n=20を測定して求めて得た繊維径の総平均値φaより、繊維の比重各n=3を測定して得た平均値ρaより下記式にて繊度(dtex)を求める。
繊度(dtex)=π×φa2×ρa/400
2.目付:Ms
JIS L−1096(2000)に準じて測定した単位面積あたりの質量(Ms):g/m
3.見掛密度
JIS L−1096(2000)に準じ、荷重0.196Nにて測定した厚み(ti):mmを求め、下記式にて見掛密度を求めた。
見掛密度(g/cm)=Ms/(1000×1000×0.1ti)
4.圧着面積率
エンボス加工した場合のみに適用する。エンボス加工不織布1mの表面を20箇所サンプリングし、SEMにて500倍の写真をとり、1000倍に拡大した写真を印刷して、圧着部を切り抜き、切り抜いた圧着部の面積(Sp)を求め、単位面積あたりの圧着部数から、全体の面積(S0)に対してのSpの比率を求める。(n=20の平均値)但し、カレンダー加工不織布は100%とする。
P=100×1/n(Σ(Sp/S0))
5.乾熱収縮率
JIS L−1906(2000) 5.9に準拠して求めた熱収縮率を乾熱収縮率(%)とする。
6.親水性能
JIS L−1907(2004)の滴下法に準拠し、繊維構造体表面での水の特別な反射がしなくなる時間(水を吸い込んだ時間)を測定する。
7.繊維間空隙幅1μm〜20μmの有効空隙率と連続層の厚み
揚水性構造体の幅方向の任意の5箇所より断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、撮影視野に繊維構造体断面の全体写真が入るように倍率を調整して撮影する。この全体写真を網羅するように撮影写真視野が幅400μmとなるように拡大したSEM写真を撮影し、拡大した合成全体写真を作成する。その合成写真より幅方向に3点を選択し、緻密連続層、繊維間空隙1〜20μmの有効空隙率および繊維間空隙1〜20μmの連続層の厚みを求める。
厚み方向において1〜20μmの空隙を多数形成した緻密構造部分を目視で判断し、緻密連続層の厚みを判定する。たとえば、図−1の写真では緻密連続層の厚みを217μmと判断した。次いで、緻密連続層の断面写真より繊維間空隙を測定する。空隙が細長い場合は、細い幅が1〜20μmの空隙部分を有効部分とし繊維間空隙幅が1〜20μmの空隙とする。幅長さとも1μm未満および幅長さとも20μmを越える空隙部分は無効部分として、抽出コピー写真から空隙部分を切り抜き、空隙部分の有効部分Waと無効部分Wbの各重量を積算して、全空隙部分のうち有効空隙部分の比率を求めて、その比率が10〜100%である部分が一定厚みで連続している部分を、繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を形成した連続層とする。
エンボス加工機やカレンダー加工機など熱圧着方式にて繊維構造体を形成した場合、通常、連続層は表面となる上層と下層に形成される。このように厚み方向において連続層が複数形成された場合は、個々の層において緻密連続層および繊維間空隙幅1〜20μmの有効空隙率を求め、有効空隙率はそれらの平均値で示し、繊維間空隙幅1〜20μmの連続層の厚みは積算値で示す。
それぞれの測定位置で求められた繊維間空隙幅1〜20μmの有効空隙率、繊維間空隙幅1〜20μmの連続層の厚みを算術平均値(3点×5箇所)で示す。
8.揚水ヘッド差
繊維構造体を幅4cm、長さ120cmに切断したシートに厚み0.03mmのポリエチレンで被覆(接合点は熱圧着で袋状としたものにシートを挿入して周りを被覆)したものを測定サンプルとし、高さ110cmまで、垂直に測定サンプルを吊り下げられるようにした架台にセットし、上部5cmは開放し、下部5cmも開放して水面下に接しておくようにして、24時間に揚水した水面から揚水した高さ(揚水高さ)までの距離Lcm(少数点2桁まで測定、2桁目を四捨五入)をn=5で測定した値の平均値で示す。
9.栽培評価
水源からのヘッド差を60cmとして、60cm上に幅20cm、長さ20cm、深さ10cmの栽培ポットを設置し、栽培ポット底面内に東洋紡績株式会社製コスモA−1を敷き詰めて、幅4cmの評価用揚水サンプル4本を水源からポットまでをポリエチレンで被覆し、ポット底辺に孔を空けて、底面でコスモA−1に4箇所で接合させて設置、設置したポット内に、腐葉土10部と鹿沼土90部を混ぜた土を10cmまで敷き詰め、その土の表面に、直前まで地面に生えていた高麗芝を刈り取ってポット全面に貼り付けた。次いで、最初だけ、散水したが、以降は、水を与えないように屋根を架けて、7月初旬〜10月初旬の3ヶ月間放置して芝の生育状態を観察し、以下の評価を行った。
3ヶ月間枯れなし:◎、部分枯れ少し:○、半分以上枯れた:△、すべて枯れた:×
<実施例1>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を紡糸温度285℃、単孔吐出量1.12g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度4500m/分にて引取り、ネットコンベア上に振落して目付280g/mのウエッブを得た。連続して、ネット上で230℃の予備圧着ローラーにて押さえ処理を行い単糸繊度2.5dtexの長繊維からなるウエッブを得た。次いで、得られたウエッブを3層積層して、ペネ40でニードルパンチ加工して積層一体化して、次いで、カレンダー加工機にて、最適加熱温度として240℃にて、線圧200kN/mにて圧着加工して、目付840g/mの不織布を得た。得られた不織布は、次いで、高松油脂株式会社製のポリエステル系親水化剤SR1800推奨処方にて、パッド・キヤー処方にて浸漬−搾り−乾燥−熱処理して、付着量1.8重量%の繊維構造体を得た。
得られた繊維ウエッブ及び繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例1の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な揚水効果を示した。
<実施例2>
カレンダー加工での線圧を100kN/cmとした以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例2の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例3>
実施例1で得た目付280g/mのウエッブを2枚積層してニードルパンチで一体化した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例3の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は60cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例4>
積層枚数を2枚積層したウエッブを用いた以外、実施例2と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例4の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は60cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例5>
ネットコンベア上に積層するウエッブの目付を50g/mとし、積層一体化しないで230℃にてカレンダー加工した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例5の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は60cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例6>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)99重量%とRohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS hw55(hw55)を0.4重量%を混合乾燥した樹脂を用いて、単孔吐出量0.87g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度3500m/分にて引取り、カレンダー加工温度を220℃とした以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を満たす実施例6の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は60cm以上となる揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<比較例1>
親水加工処理しなかった以外は、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例1の繊維構造体は、親水性ではないため、揚水機能が著しく劣る繊維構造体であり、栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<比較例2>
ニードルパンチをペネ100にて行い、カレンダー加工しない以外は、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例2の繊維構造体は、親水性は優れているが、微細な連続細孔がない構造のため、揚水機能が著しく劣る繊維構造体であり、栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<比較例3>
3dtexのポリエチレンテレフタレート短繊維70重量%と1.5dtexのポリエチレンをシース、ポリエチレンテレフタレートをコアにした芯鞘型短繊維30重量%を混綿開繊したウエッブを積層して240g/mとし、ペネ40にてニードルパンチ加工で一体化した不織布を、カレンダー加工温度100℃とし、線圧200kN/cmにてカレンダー加工し、次いで、実施例1と同様にして親水化処理して得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例3の繊維構造体は、微細な連続細孔を有する連続層は存在し、親水加工されているにもかかわらず、揚水機能が劣る繊維構造体であり、栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<比較例4>
カレンダー加工温度を250℃とした以外、実施例5と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表1に示す。
本発明の要件を外れる比較例4の繊維構造体は、カレンダー加工での圧着が進みすぎてフィルム化しており、微細な連続細孔をもつ連続層が少ない構造のため、揚水機能が非常に劣る繊維構造体であった。栽培評価は行わなかった。
<実施例7>
ニードルパンチした不織布を、親水化処理して後に、カレンダー加工した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を満たす実施例7の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であり、栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例8>
カレンダー加工の代わりに、圧着面積率18%の横楕円ドット状のエンボスローラーにて、最適加熱温度として240℃にて、線圧250kN/mにてエンボス加工した以外、実施例1と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を満たす実施例8の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例9>
親水化加工を行った後で、エンボス加工した以外、実施例8と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を満たす実施例9の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<実施例10>
実施例8で得たウエッブを、単層のままニードルパンチで一体化せずにエンボス加工した以外、実施例8と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を満たす実施例10の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも問題のない結果を示した。
<実施例11>
単孔吐出量を0.36g/分とし、引取り積層ウエッブの目付を150g/mとした以外、実施例2と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を満たす実施例11の繊維構造体は、優れた揚水機能を示し、揚水ヘッド差は100cm以上となる(計測は100cmまでなので、それを超えていた)揚水性繊維構造体であった。栽培評価でも良好な結果を示した。
<比較例5>
ウエッブ目付を30g/mとし、エンボス加工温度を230℃とした以外、実施例5と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を外れる比較例5の繊維構造体は、揚水に必要な微細な連続細孔からなる連続層の形成が不充分なため揚水機能がやや劣る繊維構造体であり、栽培評価でもやや悪い結果を示した。
<比較例6>
カレンダー加工温度を230℃とした以外、実施例10と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を外れる比較例6の繊維構造体は、揚水に必要な微細な連続細孔からなる連続層となる部分がドット部にしか形成されず、連続層が遮断されているため揚水機能がやや劣る繊維構造体であり、栽培評価でも悪い結果を示した。
<比較例7>
カレンダー加工温度を210℃とした以外、実施例1と同様にして得た得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を外れる比較例7の繊維構造体は、カレンダー温度が低いため、揚水に必要な微細な連続細孔からなる連続層が形成されず、揚水機能がやや劣る繊維構造体であり、栽培評価でも悪い結果を示した。
<比較例8>
単繊維繊度を10.5dtexとした以外、実施例8と同様にして得た繊維構造体の評価結果を表2に示す。
本発明の要件を外れる比較例8は、繊度が太いため、微細な連続細孔の形成が少ないため揚水機能がやや劣る繊維構造体であった。栽培評価では非常に悪い結果を示した。
<参考例1>
市販の吸揚水シートである、東洋紡績株式会社製コスモA−1(吸水繊維を混繊した不織布)を用いた評価結果を表2に示す。
吸水繊維は吸水した水分が飽和するまで吸収するので、揚水水量が少ないと毛細管現象で揚水できる揚水ヘッド差までも揚水できない(止水効果を発揮)場合があり、微細な連続細孔を有しないため、揚水ヘッド差は低くなる例である。
本発明の揚水性繊維構造体は、高い揚水ヘッド差を付与するのに必要な、1〜20μmの連続微細孔が開孔断面積当り10%以上の連続層を有するので、無動力での揚水ヘッド差を50cm以上高くでき、優れた揚水機能を生かし易メンテナンス性も向上させた水耕栽培の揚水材、河川敷緑化や壁面緑化の揚水材、ドレン材、水分蒸発冷却システムの揚水放水材、各種揚水芯材、雨水貯留槽の一時貯留水を災害時有効利用する用途など、多岐にわたる用途に適用できる揚水機能材として安価に提供することを可能にすることができる。

Claims (5)

  1. 単繊維の繊度が0.5〜5dtexのポリエステル長繊維からなるスパンボンド不織布がカレンダー加工またはエンボス加工で圧着されることにより連続細孔を形成した繊維構造体であって、繊維構造体が、JIS L−1907(2004)の滴下法で5秒以下の親水性能を有し、繊維構造体中に繊維間空隙幅が1μm〜20μmの空隙を有する連続細孔を形成した緻密な連続層を有し、該緻密な連続層の厚みが40μm以上であり、見掛密度が0.15〜0.90g/cm 、明細書に記載の方法で測定される揚水ヘッド差が50cm以上である揚水性繊維構造体。
  2. 大気圧下での揚水ヘッド差が70〜150cmである請求項1記載の揚水性繊維構造体。
  3. 密な連続層の有効空隙率が10〜100%である請求項1または2記載の揚水性繊維構造体。
  4. リエステル長繊維からなるスパンボンド不織布の繊維表面が親水性ポリエステルで樹脂加工された請求項1に記載の揚水性繊維構造体。
  5. 揚水部および放水部以外の外周が、水の蒸発放散を抑制できる被覆材で被覆されている
    請求項1〜のいずれかに記載の揚水性繊維構造体。
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