JP2012166727A - 液圧制御装置、減圧制御弁、増圧制御弁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】増圧リニア制御弁の増圧シーティング弁部140aの弁座156aのシート角φaが、減圧リニア制御弁の減圧シーティング弁部140bの弁座156bのシート角φbより小さくされる(φa<φb)。それにより、弁子158a,bに斜面と平行に作用する重力に起因する力Fa,bが増圧シーティング弁部140aにおける方が大きくなる(Fa>Fb)。その結果、増圧シーティング弁部140aにおいて、開弁時に弁子158aの移動速度が小さくなり、減圧シーティング弁部140bにおいて、閉弁時に弁子158bの移動速度が小さくなるため、増圧開始時、減圧終了時に、ブレーキシリンダに生じる脈動を抑制することができる。
【選択図】図1
Description
特許文献2には、ブレーキシリンダの液圧を制御する液圧制御装置であって、ソレノイドへの供給電流の連続的な制御により、開度を連続的に制御可能な増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁を含むものが記載されている。
減圧制御弁は、制御対象装置と低圧源との間に設けられ、制御対象装置の液圧を減圧する場合に作動させられる。増圧制御弁は、高圧源と制御対象装置との間に設けられ、制御対象装置の液圧を増圧する場合に作動させられる。このように、減圧制御弁と増圧制御弁とでは、配設される位置、作動時期、作動の目的等が異なり、要求される特性も異なる。
一方、従来、減圧制御弁と増圧制御弁とで、シーティング弁部の形状は同じであった。
そこで、本発明に係る液圧制御装置においては、減圧制御弁と増圧制御弁とで、シーティング弁の形状を互いに異ならせた。それにより、減圧制御弁、増圧制御弁の各々において、要求される特性を得ることができる。
(1)低圧源および高圧源と、
前記高圧源と制御対象装置との間に設けられた増圧制御弁と、
前記低圧源と前記制御対象装置と間に設けられた減圧制御弁と
を含み、それら増圧制御弁および減圧制御弁を制御することにより前記制御対象装置の液圧を制御する液圧制御装置であって、
前記増圧制御弁と前記減圧制御弁とが、それぞれ、少なくとも、弁座と、その弁座に対して相対移動可能な弁子とを備えたシーティング弁部を含むとともに、前記増圧制御弁のシーティング弁部である増圧シーティング弁部と前記減圧制御弁のシーティング弁部である減圧シーティング弁部とが、互いに異なる形状を成したものであることを特徴とする液圧制御装置。
「形状が異なる」には、大きさが異なることも含まれる。
増圧シーティング弁部と減圧シーティング弁部とで、弁子と弁座との少なくとも一方の形状が異なるのであり、例えば、弁座の形状が異なる場合、弁子の形状が異なる場合、弁座と弁子との両方の形状が異なる場合等が該当する。
高圧源は、電力の供給により液圧を発生可能な動力液圧源としたり、オペレータの操作により液圧を発生可能なマニュアル液圧源としたりすることができる。
低圧源は、作動液をほぼ大気圧で収容するものであっても、大気圧より高く、制御対象装置の液圧より低い液圧で収容するものであってもよい。
(2)前記増圧シーティング弁と前記減圧シーティング弁とが、それぞれ、前記弁子に付勢力を加えるスプリングを含む。
スプリングは、弁子を弁座から離間させる向きに付勢力を付与するものであっても、弁子を弁座に着座させる向きに付勢力を付与するものであってもよい。換言すれば、増圧制御弁、減圧制御弁は、それぞれ、常閉弁であっても、常開弁であってもよいのである。
(3)前記増圧制御弁と前記減圧制御弁とが、それぞれ、コイルと、そのコイルに電流が供給されることにより生じる電磁駆動力により作動可能であって、その電磁駆動力を前記弁子に付与するプランジャとを備えたソレノイドを含み、当該液圧制御装置が、前記増圧制御弁のコイルと前記減圧制御弁のコイルとへの供給電流を制御する電流制御部を含む。
シーティング弁部において、弁子には、シーティング弁部の前後の差圧(高圧側と低圧側との液圧差)に応じた差圧作用力Fpと、スプリングの付勢力Fsと、電磁駆動力Fdとが作用する。弁子の弁座に対する相対位置は、これら差圧作用力Fp、スプリングの付勢力Fs、電磁駆動力Fdによって決まる。
また、コイルへの供給電流の大きさが連続的に制御されれば、電磁駆動力Fdの大きさを連続的に制御することができ、制御対象装置の液圧を連続的に制御することができる。
以上のことから、増圧制御弁、減圧制御弁は、それぞれ、電磁弁と称したり、リニア制御弁と称したり、電磁リニア制御弁と称したりすること等ができる。
(4)前記増圧制御弁および減圧制御弁が、それぞれ、高圧側と低圧側との液圧差に応じた差圧作用力が前記シーティング弁部に作用する姿勢で配設され、前記増圧制御弁の前記低圧側に前記制御対象装置が接続され、前記減圧制御弁の前記高圧側に前記制御対象装置が接続された。
増圧制御弁において、低圧側に制御対象装置が接続される。増圧シーティング弁部が閉状態から開状態に切り換えられると、制御対象装置への液圧の供給が開始され、増圧が開始される。増圧開始時には、低圧側に接続された制御対象装置に油撃が伝達され易く、制御対象装置において大きな脈動が生じ易い。また、高圧側と低圧側との液圧差が大きいことによっても、制御対象装置に大きな脈動が生じ易くなる。それに対して、増圧シーティング弁部が開状態から閉状態に切り換えられると、制御対象装置への液圧の供給が阻止され、増圧が終了させられる。制御対象装置は低圧側に接続されているため、油撃が伝達され難く、大きな脈動は生じ難い。以上の事情から、増圧制御弁において、増圧シーティング弁部が閉状態から開状態に切り換えられる際の弁子の移動速度(弁子の着座位置から離間位置への移動速度であり、離間速度と称することもできる)が小さい特性が要求される。
減圧制御弁において、高圧側に制御対象装置が接続される。減圧シーティング弁部が閉状態から開状態に切り換えられると、制御対象装置からの液圧の流出が開始され、減圧が開始される。減圧開始時には、高圧側に接続された制御対象装置に油撃は伝達され難く、大きな脈動は生じ難い。また、減圧開始時には、高圧側と低圧側との差圧が小さいことが多く、それによっても脈動が生じ難くなる。それに対して、減圧シーティング弁部が開状態から閉状態に切り換えられると、制御対象装置からの液圧の流出が阻止され、減圧が終了される。高圧側に接続された制御対象装置には油撃が伝達され易くなるため、大きな脈動が生じ易い。以上の事情から、減圧制御弁においては、減圧シーティング弁部が開状態から閉状態に切り換えられる際の弁子の移動速度(弁子の離間位置から着座位置への移動速度であり、接近速度と称することができる)を小さい特性が要求される。
なお、着座位置とは、シーティング弁部の閉状態における弁子の弁座に対する相対位置であり、弁子のシーティング弁部の開口部を閉塞する相対位置である。離間位置とは、シーティング弁部の開状態における弁子の弁座に対する相対位置であり、開口部の少なくとも一部が開放される相対位置である。
さらに、シーティング弁部が開状態と閉状態との間で切り換えられる場合には電磁駆動力Fdが漸変させられるのでが普通であり、弁子は弁座に沿って、すなわち、弁座に一部が接した状態で移動させられるのが普通である。
(5)前記増圧シーティング弁部の弁座のシート角が、前記減圧シーティング弁部の弁座のシート角より小さくされた。
図1に示すように、シート角φ(φa、φb)が小さい場合は大きい場合より、弁子に作用するシート面S(Sa,Sb)と平行な力F(着座させる向きの力であり、重力と傾斜面の傾きとで決まる力:Fa,Fb)が大きくなる。
シート角φ(φa、φb)が小さい場合は大きい場合より、弁座の傾斜角度θ(θa=90°−φa/2、θb=90°−φb/2)は大きくなる。そのため、弁子が弁座に沿って移動させられる場合に、弁子に重力に起因して作用する斜面と平行な力(Fa,Fb)が大きくなるのであり、条件が同じである(例えば、差圧作用力Fp、スプリングの付勢力Fs、電磁駆動力Fdが同じである)場合に、弁子は斜面に沿って昇り難くなる。それに対して、シート角φ(φa、φb)が大きい場合は小さい場合より、傾斜角度θ(θa、θb)が小さくなるため、弁子に重力に起因して作用する斜面と平行な力が小さくなる。それにより、条件が同じである場合に、弁子は斜面に沿ってゆっくり下降する。
以上の事情から、増圧シーティング弁部のシート角φaを減圧シーティング弁部のシート角φbより小さくすれば、増圧制御弁においても、減圧制御弁においても、所望の特性を得ることができる。
(6)前記弁座が、開口部に設けられた円錐面の一部を含む形状を成し、前記弁子が、その円錐面に接する球の一部を有する形状を成し、前記円錐面によって想定される円錐の底面に対する垂線と母線との成す角度の2倍が前記シート角とされた。
(7)前記減圧制御弁、増圧制御弁の軸線を含む断面において、前記弁座を規定する一対の線の間の角度が前記シート角とされた。
図1に示すように、減圧制御弁、増圧制御弁の軸線(La,Lb)とは、減圧制御弁、増圧制御弁の長手方向と平行な線であり、差圧作用力Fp、スプリングの付勢力Fs、電磁駆動力Fdが作用する向きと平行な線である。
弁座は、概してすり鉢状を成し、底部に開口部Ha,Hbが形成されるのであり、すり鉢の内周面が円錐面の一部に対応する。そのため、円錐面Sa,Sbの一部に基づいて円錐を想定した場合に、頂点Oa,Obは仮想上の点(仮想頂点)となり、母線Ca,Cbは仮想頂点Oa,Obと円錐面の周縁とを結ぶ直線となる。
そして、軸線を含む断面において、断面と弁座との交線(母線に対応する)同士は、交差しないが、交線の延長線同士が交差する(仮想頂点Oa,Obにおいて交差する)。
以上のことから、位相が180°(π)隔たった一対の母線の成す角度がシート角φa,bであり、軸線La,Lbと母線Ca,Cbとの成す角度の2倍が、それぞれ、シート角φa,bである。
(8)前記減圧シーティング弁部における前記弁子の半径が、前記増圧シーティング弁部の弁子の半径より大きくされた。
図1において、弁子の半径をRa,Rb、シート角φa,φbとした場合に、シール径Rsa,Rsbは、式
Rsa=Ra・cos(φa/2)
Rsb=Rb・cos(φb/2)
で表される長さとなる。角度φa/2,φb/2は0〜90°の間の大きさとなるため、cos(φa/2)>cos(φb/2)となる。それに対して、弁子の半径Rを、シート角φが小さい場合に大きい場合より小さくすれば、シート角φが小さい場合と大きい場合とで、シール径の差を小さくすることができる。換言すれば、シート角φが大きい場合と小さい場合とでシール径Rsをほぼ同じにすることができるのである。
弁子のシール径で決まる面は差圧作用力を受ける受圧面となる。そのため、シール径が大きく、受圧面の面積が大きくなると、高圧側と低圧側との液圧差(前後の差圧)が同じであっても、差圧作用力が大きくなる。一方、スプリングは、差圧作用力の最大値に基づいて設計されるのであり、差圧作用力の最大値が大きい場合は付勢力が大きいものとされるのが普通である。また、スプリングの付勢力を大きくすると、スプリング自体が大きくなり、制御弁全体が大形になる。
それに対して、シート角が小さい場合に大きい場合より弁子の球の半径を小さくすれば、シート角が小さくてもシート角が大きい場合と、シール径をほぼ同じとすることが可能となり、シート角が小さい場合に、スプリングを大形にする必要性を低くすることができる。また、増圧制御弁と減圧制御弁とで、スプリングの設計を別個に行う必要性を低くすることができる。
なお、弁子の半径とは、弁子の形状(球の一部を有する)に基づいて球全体を想定した場合の、その球の半径である。図1においては、弁子を、その球の一部に基づいて決まる球体として表した。
(9)前記制御対象装置が、車両の車輪の回転を抑制する液圧ブレーキのブレーキシリンダとされた液圧制御装置。
液圧制御装置は、ブレーキシリンダ液圧制御装置とすることができ、ブレーキ装置に搭載することができる。
ブレーキシリンダに液圧の脈動が生じると、制動力が変化し、車輪が振動する。それにより、車輪が振動したり、騒音が生じたりする。それに対して、液圧の脈動を抑制すれば、車体の振動を抑制したり、騒音を低減したりすることができる。
例えば、電磁弁の低圧側に制御対象装置が接続された場合には、シーティング弁部の開閉により制御対象装置の流体圧を増圧制御することが可能となり、その意味において電磁弁を増圧制御弁と称することができる。なお、電磁弁の高圧側に制御対象装置を接続して用いることも可能である。シート角を110°(0.61π)より小さくすれば、制御開始時の弁子の移動速度を小さくすることができる。
(11)前記シート角は、望ましくは、105°(0.58π)以下75°(0.41π)以上の間の角度とすることができる。
特に、100°(0.55π)以下、95°(0.53π)以下、90°(0.5π)以下、85°(0.47π)以下とすることが望ましく、80°(0.44π)以上、85°以上、90°以上、95°以上とすることができる。シート角は、90°以下(鋭角)としたり、90°近傍としたりすることが望ましい。
(12)弁座と、その弁座に対して相対移動可能に設けられた弁子と、弁子と弁座との間に付勢力を付与するスプリングとを備えたシーティング弁部を含み、前記弁座のシート角が110°より大きくされたことを特徴とする電磁弁。
例えば、電磁弁の高圧側に制御対象装置が接続された場合には、シーティング弁部の開閉により、制御対象装置の流体圧を減圧制御することが可能となり、その意味において電磁弁を減圧制御弁と称することができる。なお、電磁弁の低圧側に制御対象装置を接続して用いることもできる。シート角を110°より大きくすれば、制御終了時の弁子の移動速度を小さくすることができる。また、(10)項の電磁弁と、(12)項の電磁弁とのいずれか一方のシート角は110°とすることもできる。
(13)前記シート角は、115°(0.64π)以上140°(0.78π)以下の間の角度とすることが望ましい。
特に、120°(0.67π)以上、125°(0.69π)以上、130°(0.72π)以上とすることが望ましく、135°(0.75π)以下、130°以下、125°以下とすることが望ましい。特に、120°から125°の間の角度とすることが望ましい。
本液圧ブレーキシステムにおいては、実際のブレーキシリンダ液圧が、要求制動トルクに基づいて決定される目標液圧に近づくように増圧制御弁、減圧制御弁の制御が行われる。要求制動トルクは、運転者のブレーキ操作部材の操作量等に基づいて決定される場合、車両の走行状態(例えば、スリップ状態)に基づいて決定される場合、先行車両、周辺物体との相対位置関係に基づいて決定される場合等がある。本液圧ブレーキシステムは、ハイブリッド車両に搭載したり、プラグインハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両、内燃駆動車両に搭載したりすることができる。ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両に搭載された場合において、回生協調制御が行われる場合には、回生制動トルクと液圧制動トルクとの和が要求制動トルクとなるように、液圧制動トルクの目標値が決定され、ブレーキシリンダの目標液圧が決定される。内燃駆動車両に搭載された場合には、回生協調制御が行われることはないため、回生制動トルクが考慮されることなく、要求制動トルクに応じたブレーキシリンダの目標液圧が決定される。
以下、液圧ブレーキシステムについて説明するが、ブレーキシリンダ、液圧ブレーキ、後述する種々の電磁弁等を、前後左右の車輪の位置に対応して区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号(FL,FR,RL,RR)を付して記載し、代表して、あるいは、区別する必要がない場合には、符号を付さないで記載する。
液圧ブレーキ12FL,FR,16RL,RRは、それぞれ、ブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRを備え、ブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRの液圧により摩擦部材を車輪10FL,FR,14RL,RRとともに回転するブレーキ回転体に押し付けることにより、車輪10FL,FR,14RL,RRの回転を抑制するものである。
動力液圧源30は、ポンプ46およびポンプモータ48を含むポンプ装置50、アキュムレータ52等を含む。ポンプ46は、リザーバ(マスタリザーバ)54の作動液を汲み上げて加圧するものであり、高圧側の液圧が設定圧以上になるとリリーフ弁56を経て低圧側に戻される。ポンプ46から吐出された作動液はアキュムレータ52に加圧された状態で蓄えられるが、ポンプモータ48は、アキュムレータ圧が設定範囲内にあるように制御される。リザーバ54には、作動液が大気圧で蓄えられる。
マスタシリンダ62は、ハウジングと、そのハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合された加圧ピストン64とを含むものであり、加圧ピストン64の前進に伴って前方の加圧室66の液圧が増圧される。
液圧ブースタ60は、ブレーキ操作力を倍力し、その倍力した大きさに応じた液圧を発生させる液圧調節部68と、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル70に連携させられたパワーピストン72を含む入力部74とを含む。パワーピストン72の後方がブースタ室76とされる。液圧調節部68は、図示しないスプールバルブ、調圧室等を含み、動力液圧源30,リザーバ54が接続される。加圧ピストン64の移動に伴うスプール(可動部)の移動により、調圧室にこれらが選択的に連通させられ、それにより、調圧室の液圧がブレーキ操作力に応じた大きさに調整される。この調圧室の作動液(液圧調節部68によって調節された作動液)がブースタ室76に供給され、それによって、パワーピストン72に前進方向の力が加えられ、ブレーキ操作力が助勢される。
ブレーキペダル70が踏み込まれると、パワーピストン72,加圧ピストン64が前進させられる。ブースタ室76には、ブレーキ操作力に応じた大きさに調節された液圧が供給される。加圧ピストン64は、ブレーキ操作力と助勢力(ブースタ室76の液圧に応じた力)とによって前進させられ、加圧室66に液圧が発生させられる。
また、ブースタ通路92,マスタ通路94には、それぞれ、レギュレータ遮断弁120,マニュアル遮断弁122が設けられる。レギュレータ遮断弁120,マニュアル遮断弁122は、それぞれ、ソレノイドに電流が供給されない間開状態にある常開の電磁開閉弁である。
さらに、個別通路102FL,FR,RL,RRには、それぞれ、保持弁124FL,FR,RL,RRが設けられ、ブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRとリザーバ54との間には、それぞれ、減圧弁126FL,FR,RL,RRが設けられる。保持弁124FL,FR,RL,RRは、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁であり、減圧弁126FL,FR,RL,RRは、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁である。
増圧リニア制御弁130、減圧リニア制御弁132は、いずれも常閉の電磁開閉弁であり、増圧リニア制御弁130と減圧リニア制御弁132とで、おおよその構造は同じであるが、シーティング弁部の形状等が異なる。
先に、図3に基づいて、増圧リニア制御弁130,減圧リニア制御弁132の全体の概要を説明し、次に、図1(a),(b)に基づいてシーティング弁部の形状について説明する。
増圧リニア制御弁130において、ハウジング138は軸線Laに沿って延びたものであり、ハウジング138の軸線La方向に離間した部分に高圧側通路152aと低圧側通路154aとが形成されるとともに、これら高圧側通路152aおよび低圧側通路154aに対向する弁室155aが形成される。
増圧シーティング弁部140aは、(i)高圧側通路152aの弁室155側の開口部に設けられた弁座156aと、(ii)弁室155に配設され、弁座156aに対して相対移動可能な弁子158aと、(iii)弁子158aを弁座156aに着座させる向きに付勢力を加えるスプリング160とを含む。
また、増圧リニア制御弁130において、高圧側通路152aに動力液圧源30が接続され、低圧側通路156aに共通通路100、すなわち、ブレーキシリンダ40(キャリパ)が接続される。そのため、増圧シーティング弁部140aの前後の差圧に応じた差圧作用力Fpが、弁子158aを弁座156aから離間させる向きに作用する。増圧シーティング弁部140aの前後の差圧は、高圧側の液圧(高圧側通路152aに接続された動力液圧源30の液圧に対応するのが普通である)から低圧側の液圧(低圧側通路154aに接続されたブレーキシリンダ40の液圧に対応するのが普通である)を引いた大きさである。
ソレノイド142は、コイル164と、コイル164に電流が供給されることにより生じる電磁駆動力により作動可能なプランジャ166とを含む。コイル164に電流が供給されると、プランジャ166に電磁駆動力Fdが作用し、弁子158aに弁座156aから離間させる向きの力が加えられる。
増圧リニア制御弁130において、増圧要求に応じて(増圧モードが設定されると)、コイル164への供給電流の制御により、増圧シーティング弁140aが閉状態から開状態に切り換えられ、ブレーキシリンダ40への液圧の供給が開始される。増圧開始時には、増圧シーティング弁140aの前後の液圧差、換言すれば、動力式液圧源30の液圧とブレーキシリンダ40液圧との差が比較的大きい。また、油撃がブレーキシリンダ40に伝達され易い。そのため、図5(a)の一点鎖線が示すように、ブレーキシリンダ40に大きな脈動が生じることがある。
それに対して、増圧要求がなくなると(例えば、増圧モードから保持モードに切り換えられると)、コイル164への供給電流の制御により、増圧シーティング弁部140aが開状態から閉状態に切り換えられ、ブレーキシリンダ40への液圧の供給が停止させられる。ブレーキシリンダ40は増圧シーティング弁140aの低圧側に接続されているため、ブレーキシリンダ40に油撃が伝達され難く、図5(a)の破線が示すように、ブレーキシリンダ40において大きな脈動は生じ難い。
以上の事情から、増圧リニア制御弁130においては、増圧シーティング弁部140aが閉状態から開状態に切り換えられる場合に、弁子158aがゆっくり移動する(弁子158aと弁座156aとの間の隙間である開口面積の増加速度が小さい)特性が要求される。
それに対して、減圧要求がなくなり(例えば、減圧モードから保持モードに切り換えられ)、減圧シーティング弁部140bが開状態から閉状態に切り換えられると、ブレーキシリンダ40の液圧の流出が終了させられる。ブレーキシリンダ40が高圧側に接続されているため、油撃がブレーキシリンダ40に伝達され易い。そのため、図5(b)の一点鎖線が示すように、ブレーキシリンダ40の液圧が増加した後に減少するのであり、大きな脈動が生じ易い。
以上の事情から、減圧リニア制御弁132においては、減圧シーティング弁部140bが開状態から閉状態に切り換わる場合に、弁子158bがゆっくり移動する(開口面積の減少速度が小さい)特性が要求される。
そして、増圧シーティング弁部140aの弁座156aのシート角φaが、減圧シーティング弁部140bの弁座156bのシート角φbより小さくされる(φa<φb)。
シート角φとは、増圧リニア制御弁130,減圧リニア制御弁132の軸線La,Lbを含む断面において、弁座156a,bを表す一対の線(シート面Sa,Sbを表す線)の成す角度である。換言すれば、弁座156a,bは、頂部に開口部Ha,bが形成された円錐面によって構成されるが、位相が180°(π)隔たった一対の母線Ca,Cbの成す角度がシート角φa,φbである。母線Ca,Cbは円錐の頂点(開口部Ha,bが形成されるため、実際には存在しないため、仮想頂点Oa,Obと称する)と弁座156a,bの周縁とを結ぶ直線である。
一方、シーティング弁部140a,bが開状態と閉状態との間で切り換えられる時には、弁子158a,bは弁座156a,bに沿って移動させられる。そして、シート角φが小さい場合は大きい場合より、傾斜角度θ(π/2−φ/2)が大きくなる。そして、傾斜角度θが大きい場合は小さい場合より、シート面Sと平行な、重力に起因して弁子158に作用する力Fが大きくなる。
上述の、重力に起因して、弁子158a,bに作用するシート面Sa,bと平行な下向きの力Fa,bは、それぞれ、式
Fa=ma・g・sin θa=ma・g・cos(φa/2)
Fb=mb・g・sin θb=mb・g・cos(φb/2)
で表される大きさとなる。ma,mbは、それぞれ、弁子158a,bの質量である。上式において、sinθa>sinθbとなるため、弁子150a,bの質量ma,mbがほぼ同じである場合に、増圧シーティング弁部140aにおける方が、下向きの力が大きくなる(Fa>Fb)。
また、シート角φが大きく、傾斜角度θが小さい場合は、シート角φが小さく、傾斜角度θが大きい場合に比較して、同じ条件である場合において、弁子158は弁座156に沿って下降し難くなるため(斜面に沿って重力に起因して作用する力である助勢力が小さくなるため)、シーティング弁部140において開状態から閉状態に切り換えられる場合の、弁子158の移動速度が小さくなり、開口面積の減少速度が小さくなる。すなわち、減圧シーティング弁部140bが開状態から閉状態に切り換えられる際に、ゆっくり閉じるようにすることができるため、減圧終了時の脈動を抑制することができる。
なお、本実施例においては、増圧シーティング弁140aの弁座156aのシート角φaは、75°から110°までの間の任意の角度とすることができ、減圧シーティング弁140bの弁座156bのシート角φbは、110°から140°までの間の任意の角度とすることができる。
シール径Rsa,Rsbは、それぞれ、弁子158a,bの半径Ra,Rbとした場合に、式
Rsa=Ra・cos(φa/2)
Rsb=Rb・cos(φb/2)
で表される。
上式において、cos(φa/2)>cos(φb/2)となるため、Ra<Rbとすれば、増圧シーティング弁部140aと減圧シーティング弁部140bとで、シール径Rsa,Rsbの差を小さくすることができる。
増圧リニア制御弁130,減圧リニア制御弁132において、差圧作用力Fpは、前後の差圧ΔPと、シール面(すなわち、シーティング弁部140の閉状態における弁子158の受圧面である)の面積Aとを掛けた大きさ(Fp=ΔP・A)となる。また、シール径Rsが小さい場合は大きい場合より、シール面の面積Aが小さくなる。
そして、スプリング160の付勢力は、差圧作用力Fpの最大値に基づいて設計されるのであり、差圧作用力Fpの最大値が大きい場合は付勢力が大きいものとされる。この場合において、増圧シーティング弁部140aと減圧シーティング弁部140bとで、シール面の面積Aが異なり、差圧作用力Fpの最大値が異なると、スプリング160について別個に設計する必要が生じる。また、付勢力を大きなものとすると、スプリング160を大きくする必要が生じる。
それに対して、弁座156のシート角φが小さい場合に大きい場合より弁子158の半径Rを小さいものとすれば、シート角φが小さい場合と大きい場合とで、シール径をほぼ同じとすることができる。その結果、増圧シーティング弁部140aと減圧シーティング弁部140bとの各々において、スプリング160を別個に設計する必要性を低くすることができる。また、シール径が大きくなり、受圧面の面積が大きくなることに起因してスプリング160を大形にする必要性を低くすることができる。
ブレーキスイッチ218は、ブレーキペダル70が操作されるとOFFからONになるスイッチである。ストロークセンサ220は、ブレーキペダル70の操作ストローク(STK)を検出するものであり、レギュレータ圧センサ222は、ブースタ室76の液圧を検出するものであり、アキュムレータ圧センサ224は、アキュムレータ52に蓄えられている作動液の圧力(PACC)を検出するものである。
ブレーキシリンダ圧センサ226は、ブレーキシリンダ40の液圧(PWC)を検出するものであり、共通通路100に設けられる。保持弁124の開状態において、ブレーキシリンダ40と共通通路100とは連通させられるため、共通通路100の液圧をブレーキシリンダ40の液圧とすることができる。なお、ブレーキシリンダ圧センサ226は、増圧リニア制御弁130の低圧側、減圧リニア制御弁132の高圧側に設けられることになる。
車輪速度センサ230は、左右前輪10FL,FR、左右後輪14RL,RRに対応してそれぞれ設けられ、それぞれ、車輪の回転速度を検出する。また、4輪の回転速度に基づいて車両の走行速度が取得される。
また、レギュレータ遮断弁120,マスタ遮断弁122,増圧リニア制御弁130,減圧リニア制御弁132、ポンプモータ48等は、ブレーキECU200の指令に基づいて制御される。
当該液圧ブレーキシステムが正常な場合には、レギュレータ遮断弁120,マスタ遮断弁122が閉状態とされ、保持弁124が開状態とされ、減圧弁126が閉状態とされた状態で、前後左右の4輪10FL,FR,14RL,RRのブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRに、動力液圧源30の液圧が出力液圧制御装置134によって制御されて供給される。ブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRは共通通路100に連通した状態にあるため、共通通路100の液圧の制御により、ブレーキシリンダ40FL,FR,RL,RRの液圧が共通に制御される。
要求制動トルク(要求液圧制動トルクと称することもできる)が、ストロークセンサ220,レギュレータ圧センサ222の検出値等に基づいて取得されたり(運転者が要求する制動トルク)、車両の走行状態に基づいて取得されたりする(トラクション制御、ビークルスタビリティ制御において必要な制動トルク)。そして、要求制動トルクが得られるようにブレーキシリンダ40の目標液圧Prefが決定される。また、目標液圧Prefに基づいて、増圧しきい値Path、減圧しきい値Pbthが設定される。
減圧モードが設定されると、減圧リニア制御弁132が作動させられるが、その後、実際のブレーキシリンダ液圧が減圧しきい値Pbthより小さくなると、減圧制御が終了して、保持モードに切り換えられる。コイル164への供給電流の制御により、減圧シーティング弁部140bが開状態から閉状態に切り換えられ、ブレーキシリンダ40からの液圧の流出が阻止される。この場合には、弁子158bがゆっくり移動するため、開口面積の減少速度が小さくなり、従来の減圧リニア制御弁を用いる場合より、減圧終了時の脈動を小さくすることができる。
以上のように、ブレーキシリンダ液圧の脈動が抑制されるため、車体の振動を小さくしたり、騒音を軽減したりすることができる。また、ブレーキシリンダ液圧センサ226の検出値の変化が抑制されるため、制御ハンチングを抑制することもできる。
また、液圧ブレーキ回路については上記実施例に限定されない。
さらに、車両のブレーキ装置に限らず、他の車載装置(例えば、車高調整装置、パワーステアリング装置)に適用することができる。また、車両に限らず、広く、工作機械、家庭用品等に適用することが可能となる。
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
Claims (8)
- 低圧源および高圧源と、
前記高圧源と制御対象装置との間に設けられた増圧制御弁と、
前記低圧源と前記制御対象装置と間に設けられた減圧制御弁と
を含み、それら増圧制御弁および減圧制御弁を制御することにより前記制御対象装置の液圧を制御する液圧制御装置であって、
前記増圧制御弁と前記減圧制御弁とが、それぞれ、少なくとも、弁座と、その弁座に対して相対移動可能な弁子とを備えたシーティング弁部を含み、前記増圧制御弁のシーティング弁部である増圧シーティング弁部と前記減圧制御弁のシーティング弁部である減圧シーティング弁部とが、互いに異なる形状を成したものであることを特徴とする液圧制御装置。 - 前記増圧シーティング弁部の弁座のシート角が、前記減圧シーティング弁部の弁座のシート角より小さくされた請求項1に記載の液圧制御装置。
- 前記増圧制御弁および減圧制御弁が、それぞれ、高圧側と低圧側との差圧に応じた差圧作用力が前記シーティング弁部に作用する姿勢で配設され、前記減圧制御弁の前記高圧側に前記制御対象装置が接続され、前記増圧制御弁の前記低圧側に前記制御対象装置が接続された請求項1または2に記載の液圧制御装置。
- 前記制御対象装置が、車両の車輪の回転を抑制する液圧ブレーキのブレーキシリンダとされた請求項1ないし3のいずれか1つに記載の液圧制御装置。
- 弁座と、その弁座に対して相対移動可能に設けられた弁子と、弁子と弁座との間に付勢力を付与するスプリングとを備えたシーティング弁部を含み、前記弁座のシート角が110°より小さくされたことを特徴とする増圧制御弁。
- 前記シート角が、100°以下80°以上の間の角度とされた請求項5に記載の増圧制御弁。
- 弁座と、その弁座に対して相対移動可能に設けられた弁子と、弁子と弁座との間に付勢力を付与するスプリングとを備えたシーティング弁部を含み、前記弁座のシート角が110°より大きくされたことを特徴とする減圧制御弁。
- 前記シート角が、115°以上135°以下の間の角度とされた請求項7に記載の減圧制御弁。
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