JP2012157315A - ラクダ科動物抗体の重鎖可変ドメイン(vhh)の生産方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下の(a)〜(d)のいずれかのDNA及びラクダ科動物抗体の重鎖可変ドメイン(VHH)をコードするDNAを融合したDNA:(a)特定の塩基配列からなるDNA(b)特定の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(c)特定の塩基配列からなる別のDNA(d)特定の塩基配列からなる別のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【選択図】なし
Description
(I-1) 以下の(a)〜(d)のいずれかのDNA及びVHHをコードするDNAを融合したDNA:
(a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(I-2) (I-1)に記載のDNAに更に精製用のアミノ酸配列をコードするDNAを融合したDNA。
(I-3) 前記精製用のアミノ酸配列がHisタグである、(I-2)に記載のDNA。
(II-1) 糸状菌体内で機能するプロモーター遺伝子及び(I-1)〜(I-3)のいずれかに記載のDNAを含む遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
(III-1) (II-1)に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなるアスペルギルス・オリゼ。
(IV-1) (III-1)に記載のアスペルギルス・オリゼを培地で培養し、当該培地からVHHを含むタンパク質を回収する工程を含む、VHHを含むタンパク質の生産方法。
(IV-2) 前記アスペルギルス・オリゼを液体培地で培養して、前記VHHを含むタンパク質を菌体外に分泌させることにより生成蓄積させることを特徴とする、(IV-1)に記載の方法。
(IV-3) (IV-1)又は(IV-2)に記載の方法において、更に前記VHHを含むタンパク質からVHHに結合したペプチドを切断する工程を有する、VHHの生産方法。
(V-1) (IV-1)又は(IV-2)に記載の方法により得られたVHHを含むタンパク質。
本発明のDNAは、以下の(a)〜(d)のいずれかのDNA及びVHHをコードするDNAを融合したDNAであることを特徴とする:
(a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
本発明が対象とするVHHと融合させて発現させるためのリーダータンパク質は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を有するグルコアミラーゼ(glaB)若しくはその改変体、又は配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ(CelB)若しくはその改変体である。リーダータンパク質としては、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ(CelB)又はその改変体がより好ましい。なお、配列番号3で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号1に表され、配列番号4で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号2に表される。
本発明で使用するのは、ラクダ科動物由来抗体のフラグメントである重鎖の可変ドメイン(VHH)である。ラクダ科動物としては、特に限定されないが、例えば、フタコブラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーナ、グアナコ等が挙げられる。抗体としては、軽鎖を有さず、CH1ドメインを有さない重鎖のみからなるラクダ科動物由来の抗体であれば特に限定されない。また、VHHの抗原の種類も特に限定されず、どのような抗原を対象とするかはVHHの使用用途に応じて適宜決定される。
本発明のDNAには、リーダータンパク質をコードするDNA及びVHHをコードするDNAに更に精製用のアミノ酸配列をコードするDNAが融合されていても良い。精製用のアミノ酸配列としては、例えばHisタグ、GST、MBP(マルトース結合タンパク質)などが挙げられ、好ましくはHisタグである。このような精製用のアミノ酸配列がVHHと結合していることで、アフィニティークロマトグラフによるVHHの精製が可能になる。
本発明における遺伝子発現カセットは、糸状菌体内で機能するプロモーター遺伝子と上記DNAを含むことを特徴とする。
プロモーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス・オリゼの菌体内でプロモーターとして機能するものであればよい。かかるプロモーターとして具体的には、例えばα−アミラーゼ遺伝子プロモーターamyB(Biosci Biotechnol Biochem, 56, 1849-1853(1992))、グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaA(Gene, 108, 145-150(1992))、α−グルコシダーゼ遺伝子プロモーターagdA(Curr Genet, 30, 432-438(1996))、マンガンSOD遺伝子プロモーターsodM(特開2000-224381号公報)、チロシナーゼ遺伝子プロモーターmelO(特開2001-046078号公報)、グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaB(特開2000-245465号公報、特開平11-243965号公報)、hlyプロモーター(特開2009-296958号公報)等が挙げられる。中でも好ましいのは、hlyプロモーターである。
ターミネーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス・オリゼの菌体内でターミネーターとして機能するものであれば良い。ターミネーターとしては、例えばα−アミラーゼ遺伝子のターミネーター、又はグルコアミラーゼ(glaB)ターミネーター(Gene. 207, 127-134(1998))等を挙げることができる。
本発明の糸状菌用発現ベクターは、上記遺伝子発現カセットを有することを特徴とする。
選択マーカー遺伝子は、糸状菌体内、特にアスペルギルス・オリゼの菌体内で選択マーカーとして機能するもの、すなわち発現できるものであれば良い。かかる選択マーカー遺伝子として、例えば、niaD(Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 1795-1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389(1984))、sC(Gene, 84, 329-334(1989))、ptrA(Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421(2000))、pyrG(Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289(1983))、amdS(Gene, 26, 205-221(1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296(1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873(1986))、及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26(1987))から選ばれるマーカー遺伝子を挙げることができる。
本発明の形質転換体は、上記糸状菌用発現ベクターでアスペルギルス・オリゼを形質転換したものである。
本発明のVHHを含むタンパク質の生産方法は、上記のアスペルギルス・オリゼを培地で培養し、当該培地からVHHを含むタンパク質を回収する工程を含むことを特徴とする。
・選択マーカー
硝酸還元酵素遺伝子niaD<配列番号8>
・プロモーター
hlyプロモーター<配列番号9>
・ターミネーター
glaBターミネーター<配列番号10>
・リーダータンパク質
glaBss-GOD<配列番号11、12>、amyB<配列番号13、14>、glaB<配列番号1、3>、celA<配列番号15、16>、celB<配列番号2、4>(すべてストップコドンなし)
・VHH
試験例1〜10で使用したVHH<配列番号17、5>、試験例11で使用した抗EGFRのVHH<配列番号18、6>、試験例12で使用した抗R66のVHH<配列番号19、7>(すべてストップコドンなし)
<niaD遺伝子の大腸菌ベクターへの組み込み>
麹菌アスペルギルス・オリゼ由来の硝酸還元酵素遺伝子niaDをPstI-HindIII断片となるようにプライマーA(5’-aactgcagaacaggccccaaattcaattaattgca-3’:配列番号20)とプライマーB(5’-cccaagctttggatttcctacgtcttcaatacaaacc-3’:配列番号21)を用いて麹菌ゲノムDNAを鋳型としてLA-Taq(宝ホールディングス)を用いて以下の条件のPCRにより増幅した。
PCR条件
・ 96℃ (5分間)を1サイクル
・ 96℃ (20秒間)、60℃ (30秒間)、72℃ (5分間) を30サイクル
・ 72℃ (7分間)を1サイクル
得られたPCR増幅産物を制限酵素PstI-HindIIIで37℃で処理後、アガロースゲル電気泳動で切り出した。切り出しは、QIAquick Gel Extraction kit (QIAGEN)を用いた。大腸菌プラスミドpUC119(宝ホールディングス)にDNA Ligation kit ver.1(宝ホールディングス)を用いてライゲーションし、大腸菌(E. coli)JM109株に形質転換した。その結果、niaDマーカーがサブクローニングされたプラスミドpNIA2を得た。プラスミドpNIA2は、PstI、SalI部位の両方に遺伝子をunique siteとして導入できる。
麹菌由来His-tag付きglaBターミネーターの遺伝子のpNIA2への挿入を試みた。プライマーC(5'-acgcgtcgacCACCATCACCACCACCACTAAATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCTG-3'配列番号22)とプライマーD(5'-acgcctcgagCTGCAGATCGGCTGAAGTTAGGAGCGGCCATTGTC-3'配列番号23)を用いて麹菌ゲノムDNAを鋳型としてLA-Taq(宝ホールディングス)を用いて以下の条件のPCRにより増幅した。
PCR条件
・ 96℃ (5分間)を1サイクル
・ 96℃ (20秒間)、60℃ (30秒間)、72℃ (5分間) を30サイクル
・ 72℃ (7分間)を1サイクル
得られたPCR増幅産物を制限酵素SalI-XhoIで37℃で処理後、アガロースゲル電気泳動で切り出した。切り出しは、QIAquick Gel Extraction kit (QIAGEN)を用いた。大腸菌プラスミドpNIA2のSalI部位にDNA Ligation kit ver.1(宝ホールディングス)を用いてライゲーションし、大腸菌(E. coli)JM109株に形質転換した。その結果、His-tag付きglaBターミネーターがサブクローニングされたプラスミドpNIATを得た。プラスミドpNIATは、PstI、SalI部位の両方に遺伝子をunique siteとして導入できる。
麹菌由来hlyプロモーターの遺伝子のpNIATへの挿入を試みた。プライマーE(5'-aaCTGCAGGCAGATGTAGCCGTGGCACCACAA-3'配列番号24)とプライマーF(5'-acgcgtcgacGGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTGAGACCG-3'配列番号25)を用いて麹菌ゲノムDNAを鋳型としてLA-Taq(宝ホールディングス)を用いて以下の条件のPCRにより増幅した。
PCR条件
・ 96℃ (5分間)を1サイクル
・ 96℃ (20秒間)、60℃ (30秒間)、72℃ (5分間) を30サイクル
・ 72℃ (7分間)を1サイクル
得られたPCR増幅産物を制限酵素SalI-PstIで37℃で処理後、アガロースゲル電気泳動で切り出した。切り出しは、QIAquick Gel Extraction kit (QIAGEN)を用いた。大腸菌プラスミドpNIATのPstI-SalI部位にDNA Ligation kit ver.1(宝ホールディングス)を用いてライゲーションし、大腸菌(E. coli)JM109株に形質転換した。その結果、hlyプロモーターがサブクローニングされたプラスミドpNMBを得た。プラスミドpNMBは、SalI部位に麹菌で発現させたいタンパク質をコードする遺伝子をunique siteとして導入できる。
(1)ベクターの調製
pNMBを制限酵素SalIで37℃処理後、dNTPを最終10 mMとなるように添加してT4 DNAポリメラーゼ(宝ホールディングス)で37℃1時間処理した。さらに、バクテリア由来アルカリホスファターゼ(宝ホールディングス)で50℃、30分反応させた。得られた反応物をPCRクリーンアップカラム(プロメガ社製)で処理溶出させ、ベクターとした。
麹菌で発現させたいタンパク質をコードする遺伝子を目的遺伝子として、上記ベクターにサブクローニングするインサートとした。
PCR条件
・ 96℃ (5分間)を1サイクル
・ 96℃ (20秒間)、60℃ (30秒間)、 72℃ (5分間) を30サイクル
・ 72℃ (7分間)を1サイクル
得られたPCR断片をPCRクリーンアップカラム(プロメガ社製)で処理溶出させ、インサートとした。
モル数で、ベクター:インサート=1:4となるように添加して、DNA Ligation kit ver.1(宝ホールディングス)を用いてライゲーションし、大腸菌(E. coli)JM109株に形質転換した。形質転換体からプラスミドを調製し、目的遺伝子の読み枠がhlyプロモーターに対して正方向にサブクローニングされ、なお且つ翻訳時の読み枠がフレームシフトしておらず、更にHis-tagの読み枠と合致しているプラスミドを目的遺伝子発現プラスミドとして調製した。
定法であるPEG-カルシウム法(Mol Gen Genet, 218, 99-104, (1989))により、上記目的遺伝子発現プラスミドを用いて、アスペルギルス・オリゼのniaD変異株(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-17707として寄託されている)を形質転換した。硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で生育できる株を選択することにより、目的遺伝子発現プラスミドを保持する形質転換体を複数得た。
上記形質転換体をポテトデキストロース培地で胞子形成させ、滅菌水で胞子を回収した。500 ml容三角フラスコに入った100 ml GPY液体培地(2%グルコース、1%ポリペプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)に最終胞子濃度1×106/mlとなるように植菌した。30℃3日間の液体培養で目的遺伝子産物が培地中に分泌発現し、当該培養液をサンプルとした。
目的:モデルとして麹菌には類縁体が存在しないアスペルギルス・ニガー由来グルコースオキシダーゼタンパク質(GOD)をリーダータンパク質としてVHHを融合させて、麹菌でGOD-VHH融合タンパク質を培地中への分泌生産させることを試みる。
1.ベクターの構築方法
ベクターはhlyプロモーターが組み込まれた発現プラスミドから「ベクターの調製」に従って調製し、インサートはglaBss-GOD遺伝子を合成遺伝子配列(北海道システムサイエンス社製)を鋳型として、「インサートの調製」に従って調製した。「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-glaBss-GOD-his分泌発現ベクターを構築した。融合タンパク質の分泌発現ベクターPhly-glaBss-GOD-VHH-hisは、インサート1:glaBss-GOD遺伝子を鋳型としたものと、インサート2:VHH遺伝子を合成遺伝子配列(北海道システムサイエンス社製)を鋳型としたものを、「インサートの調製」に従ってそれぞれ調製した。ベクターとインサート1及び2を同時に混和して、「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-glaBss-GOD-VHH-hisを構築した。
「目的遺伝子発現株の取得」に従い、麹菌に1で作成した分泌発現ベクターを麹菌に形質転換し、「目的遺伝子産物の取得」によりサンプルを回収した。
2で得られたサンプルをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、5μgタンパク質相当をSDS-PAGEにて解析を行った。EndoH処理は、Endoglycosidase H (Streptomyces griseus由来、生化学バイオビジネス株式会社製)により行った。各サンプルはSDS電気泳動用のサンプルバッファー(0.1 M Tris-HCl (pH 6.8)、2% SDS、20% glycerol、0.2% BPB、0.2M DTT)と1対1で混和し、室温、50℃又は99℃で5分間インキュベートした後にSDS-PAGE解析に供した。結果を図1に示した。
インキュベートの温度は、高温になるほどバンドがシャープになり、99℃が最適であると考えられた。また、EndoH処理を行ったサンプルは全て72kDa近傍にバンドが検出されたことから、おおよそglaBss-GOD-hisをコードする部分は生産できたと考えられる。しかしならが、glaBss-GOD-VHH-hisもほぼ同じ位置にバンドが検出されたことから、VHHの部分だけ取り除かれている可能性がある。glaBss-GOD-VHH-hisを泳動したレーン全てにVHH単独の分子量に近い17kDa近傍にバンドが検出されていることから(矢印)、glaBss-GOD-VHH-hisはglaBss-GODとVHH-hisに分解されて生産されている或いは生産できる可能性が示唆された。
目的:アスペルギルス・オリゼ由来α-アミラーゼ(amyB)をリーダータンパク質としてVHHを融合させて、麹菌でamyB-VHH融合タンパク質を培地中への分泌生産させることを試みる。
1.ベクターの構築方法
ベクターはhlyプロモーターが組み込まれた発現プラスミドから「ベクターの調製」に従って調製し、インサートはamyB遺伝子をアスペルギルス・オリゼ由来amyB(cDNA型)遺伝子を鋳型として、「インサートの調製」に従って調製した。「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-amyB-his分泌発現ベクターを構築した。融合タンパク質の分泌発現ベクターPhly-amyB-VHH-hisは、インサート1:amyB(cDNA型)遺伝子を鋳型としたものと、インサート2:VHH遺伝子を合成遺伝子配列(北海道システムサイエンス社製)を鋳型としたものを、「インサートの調製」に従ってそれぞれ調製した。ベクターとインサート1及び2を同時に混和して、「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-amyB-VHH-hisを構築した。
「目的遺伝子発現株の取得」に従い、麹菌に1で作成した分泌発現ベクターを麹菌に形質転換し、「目的遺伝子産物の取得」によりサンプルを回収した。
2で得られたサンプル100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図2に示した。
amyB-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン1−4)は良好にamyBが生産されていることが観察された。amyB-VHH-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン5−8)にはVHHの分子量増加に相当する72kDaの位置にバンドが観察され(中央の矢印)、融合タンパク質の形でVHHが生産できたことを示唆する結果を得た。しかし、amyB-hisと比較してamyB-VHH-hisのバンドのシグナル強度は弱く、生産性は低かった。
目的:アスペルギルス・オリゼ由来グルコアミラーゼ(glaB)をリーダータンパク質としてVHHを融合させて、麹菌でglaB-VHH融合タンパク質を培地中への分泌生産させることを試みる。
1.ベクターの構築方法
ベクターはhlyプロモーターが組み込まれた発現プラスミドから「ベクターの調製」に従って調製し、インサートはglaB遺伝子をアスペルギルス・オリゼ由来glaB(cDNA型)遺伝子を鋳型として、「インサートの調製」に従って調製した。「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-glaB-his分泌発現ベクターを構築した。融合タンパク質の分泌発現ベクターPhly-glaB-VHH-hisは、インサート1:glaB(cDNA型)遺伝子を鋳型としたものと、インサート2:VHH遺伝子を合成遺伝子配列(北海道システムサイエンス社製)を鋳型としたものを、「インサートの調製」に従ってそれぞれ調製した。ベクターとインサート1及び2を同時に混和して、「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-glaB-VHH-hisを構築した。
「目的遺伝子発現株の取得」に従い、麹菌に1で作成した分泌発現ベクターを麹菌に形質転換し、「目的遺伝子産物の取得」によりサンプルを回収した。
2で得られたサンプル100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図3に示した。
glaB-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン1−4)は良好にglaBが生産されていることが観察された。しかしながら、3と4レーンのバンドはスプリットしており、一部hisタグが切断された可能性が示唆された。glaB-VHH-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン5−8)にはVHHの分子量増加に相当する80kDaの位置にバンドが観察され(中央の矢印)、融合タンパク質の形でVHHが生産できたことを示唆する結果を得た。5−8の全てのレーンもスプリットしており、一部hisタグが切断された可能性が示唆された。しかし、glaB-hisと比較してglaB-VHH-hisのバンドのシグナル強度は弱かったが、全体としての生産量は高かった。
目的:amyB-VHH-his及びglaB-VHH-hisタンパク質がhis-tagまで完全に作られているかをHis-tagカラム精製により検証する。
試験例2と3で用いたamyB-his、amyB-VHH-his、glaB-his及びglaB-VHH-hisサンプルをHis-tagカラムであるHis GraviTrap (GEヘルスケア社製)にて精製を行い、各サンプル100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図4に示した。
amyB-his、amyB-VHH-his、glaB-his及びglaB-VHH-hisサンプルをHis-tagカラムであるHis GraviTrap (GEヘルスケア社製)にて精製を行った。amyB-hisはサンプル(レーン1)と比較して素通り画分(レーン2)のバンドの強度が若干弱くなっていること、及び溶出画分(レーン3)にはっきりとしたバンドが確認できることからamyB-hisの一部はhis-tagまでが分解されずに培地に分泌されていることが確認できた。同様にamyB-VHH-hisのサンプル(レーン4)、素通り画分(レーン5)及び溶出画分(レーン6)のバンドパターンからamyB-VHH-hisの一部はhis-tagまでが分解されずに培地中に生産できることが明らかとなった。また、スプリットしたバンドは溶出画分には見られなかったことから、70kDaのバンドがhis-tagまでの完全長産物であり、50kDaのバンドはVHH及びHis-tag部分分解産物であることが考えられる。glaB-hisについてもamyB-hisと同様に精製ができ、傾向も同じであった(レーン7−9)。glaB-VHH-hisについてはamyB-VHH-hisと同様に60kDaのバンドはカラム生成できなかったことから、70kDaのバンドがhis-tagまでの完全長産物であることが明らかとなった。完全長のバンドのシグナル強度はamyB-VHH-hisよりもglaB-VHH-hisが強く、glaBをリーダータンパク質とすることで分解を受けていない完全長型のVHHをより高生産できることを明らかにした。
目的:amyB-VHH-his及びglaB-VHH-hisタンパク質がフスマ固体培養で液体培養より効率よくhis-tagまで完全に作られているかを検証する。
試験例2及び3で得られたamyB-VHH-his及びglaB-VHH-hisタンパク質生産麹菌を、フスマ固体培養で培養を行った。100 mL容のガラス製三角フラスコ(AGC社製)に乾燥した小麦フスマ5 gを入れ、オートクレーブで滅菌した後、各麹菌の胞子を滅菌水に懸濁した胞子懸濁液(106胞子/mL)を加えて良く混和し、30℃で3日間静置培養を行った。培養物に50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を100 mL加えて、タンパク質の抽出を行い、0.45μmのフィルターでろ過後、His GraviTrap(GEヘルスケア社製)にて精製を行い、各サンプルを100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図5に示した。
amyB-hisはGPY液体培養同様に精製できたが、素通り画分のバンドの強度が原液画分とほぼ同じであり、かつ溶出画分の強度が弱かったことから大半がhis-tagを欠損していることが明らかとなった(レーン1−3)。amyB-VHH-hisに関してはVHHに相当するバンドの分子量増加が見られず、また溶出画分に何も存在しなかったことから、his-tagのみならずVHHの部分もプロテアーゼなどにより分解されている可能性が示唆された(レーン4−6)。glaB-hisについてもamyB-his同様に素通り画分のバンドの強度が原液画分とほぼ同じであり、かつ溶出画分の強度が弱かったことから大半がhis-tagを欠損していることが明らかとなった(レーン7−9)。glaB-VHH-hisについてもamyB-VHH-hisと同様にVHHに相当するバンドの分子量増加が見られず、また溶出画分に何も存在しなかったことから、his-tagのみならずVHHの部分もプロテアーゼなどにより分解されている可能性が示唆された(レーン10−12)。フスマ固体培養においてはHis-tagのみならずVHHも分解されることからGPY液体培養と比較してVHH生産には不向きである事が明らかとなった。
目的:amyB-VHH-his及びglaB-VHH-hisタンパク質が目的分子量を保持しているかを確認する。
試験例4で得られたHis-tagカラム精製タンパク質amyB-his、amyB-VHH-his、glaB-his、及びglaB-VHH-hisをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、5μgタンパク質相当をSDS-PAGEにて解析を行った。EndoH処理は、Endoglycosidase H (Streptomyces griseus由来、生化学バイオビジネス株式会社製)により行った。各サンプルはSDS電気泳動用のサンプルバッファー(0.1 M Tris-HCl (pH 6.8)、2% SDS、20%グリセロール、0.2% BPB、0.2M DTT)と1対1で混和し、室温、5分間インキュベートしたのちにSDS-PAGE解析に供した。結果を図6に示した。
各サンプルともに、Endo H処理をすることにより、低分子化し糖鎖が付加していることが明らかとなった。しかしながらバンドの位置及びその大きさから、幾つかのサンプルについては試験例1と同様に高温でインキュベートする必要が考えられた。
目的:amyB-VHH-his及びglaB-VHH-hisタンパク質が目的分子量を保持しているかを確認する。
試験例4で得られたHis-tagカラム精製タンパク質amyB-his、amyB-VHH-his、glaB-his及びglaB-VHH-hisをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、5μgタンパク質相当をSDS-PAGEにて解析を行った。EndoH処理は、Endoglycosidase H (Streptomyces griseus由来、生化学バイオビジネス株式会社製)により行った。各サンプルはSDS電気泳動用のサンプルバッファー(0.1 M Tris-HCl (pH 6.8)、2% SDS、20% グリセロール、0.2% BPB、0.2M DTT)と1対1で混和し、99℃、5分間インキュベートしたのちにSDS-PAGE解析に供した。結果を図7に示した。
各サンプルともに、Endo H処理をすることにより、低分子化し糖鎖が付加している事が明らかとなった。amyBをリーダーとしたときはN型糖鎖の付加か少なく、glaBをリーダーとしたときは糖鎖付加により10kDa近い分子量の増加がみられた。またそれぞれの分子量の位置が理論値と一致しており、99℃でインキュベートすることによりVHHの付加による分子量増大が明らかとなった(amyB-VHH-hisはレーン1と3の比較、glaB-VHH-hisはレーン5と7の比較)。
目的:glaBを超えるVHH生産に最適なリーダータンパク質を見出す。
1.ベクターの構築方法
ベクターはhlyプロモーターが組み込まれた発現プラスミドから「ベクターの調製」に従って調製し、インサートはcelA遺伝子をアスペルギルス・オリゼ由来celA(cDNA型)及びcelB(cDNA型)遺伝子を鋳型として、「インサートの調製」に従ってそれぞれ調製した。「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-celA-his及びPhly-celA-his分泌発現ベクターをそれぞれ構築した。融合タンパク質の分泌発現ベクターPhly-celA-VHH-hisは、インサート1:celA(cDNA型)、インサート2:celB(cDNA型)遺伝子、インサート3:VHH遺伝子(合成遺伝子配列、北海道システムサイエンス社製)を鋳型としたものを、「インサートの調製」に従ってそれぞれ調製した。ベクターとインサート1及び3及びベクターとインサート2及び3同時に混和して、「ベクターとインサートのライゲーション」に従い、Phly-celA-VHH-his及びPhly-celB-VHH-hisを構築した。
「目的遺伝子発現株の取得」に従い、麹菌に1で作成した分泌発現ベクターを麹菌に形質転換し、「目的遺伝子産物の取得」によりサンプルを回収した。
2で得られたサンプル100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図8に示した。
celB-VHH-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン6−9)は目的産物が良好に生産されている事が観察された。celA-VHH-his遺伝子導入した独立の4株のサンプル(レーン2−5)には目的産物がほとんど生産されていなかった。celBはリーダータンパク質として有望な可能性がある。
目的:
celA-VHH-his及びcelB-VHH-hisタンパク質がhis-tagまで完全に作られているかをHis-tagカラム精製により検証する。
GPY液体培養(試験例8)及びフスマ固体培養(試験例5に従って実施)から得られたcelA-VHH-his及びcelB-VHH-hisサンプルをHis-tagカラムであるHis GraviTrap (GEヘルスケア社製)にて精製を行った。得られたサンプル100μLをVIVA SPIN 500 (Sartorius社製)により濃縮し、SDS-PAGEにて解析を行った。結果を図9に示した。
フスマ固体培養では目的物タンパク質自体を検出することができなかった。他方GPY液体培養では、溶出画分にのみcelA-VHH-his産物を検出することができた。また、celB-VHH-hisサンプルからはglaB-VHH-hisと同程度の溶出画分サンプル量を得ることができ、glaBと並んでcelBは有望なリーダータンパク質であることが明らかとなった。
目的:glaB-VHH-hisの抗原結合能を検証する。
glaB-his、glaB-VHH-hisを臭化シアン活性化セファロース(アマシャムバイオサイエンス社)に付属のプロトコールにより固相化した。glaB-his、glaB-VHH-hisを結合した20μLのセファロース樹脂(10μgのVHHを結合)と10μgのhCG (Human Chorionic Gonadotropin(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、シグマアルドリッチ社)をバッファー(20 mM Tris-HCl 、0.15 M NaCl、pH 8)中、室温で90分間インキュベートした後、3回同じバッファーで樹脂を洗浄した。洗浄した樹脂に10μLのSDS電気泳動用のサンプルバッファー(78 mM Tris-HCl、pH6.8、2.5% SDS、2%グリセロール、1.25 mg/mLブロモフェノールブルー、120 mM β-メルカプトエタノール)を加えて、95℃で15分間インキュベートし、VHHに結合したhCGを溶出した。樹脂を遠心で沈澱させ、上清をSDS電気泳動にかけ、クーマジーブリリアントブルーで染色を行なった。結果を図10に示した。
素通り画分(レーン1−3)では、活性化セファロースのみ、glaB-hisを結合させたもの、glaB-VHH-hisを結合させたものに大きな差異はなく、hCGは大過剰量添加されていると言える。溶出画分ではglaB-VHH-hisのみに明瞭なバンド(レーン4−6、矢印)が検出されたことから、glaB-VHH-hisはhCGに対して強い結合能をもつことが明らかとなった。
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)は、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子(EGF)を認識し、シグナル伝達を行う受容体である。このEGFRに遺伝子増幅や遺伝子変異、構造変化が起きると、発癌、および癌の増殖、浸潤、転移などに関与するようになる。
RR6は、Reactive Red 6という色素である。Lama glama由来の抗EGFRのVHH抗体に代えてLama glama由来の抗RR6のVHH抗体(GenBank Accession Number: AJ236100.1)を使用した以外は試験例11と同様の実験を行った。
Claims (8)
- 以下の(a)〜(d)のいずれかのDNA及びラクダ科動物抗体の重鎖可変ドメイン(VHH)をコードするDNAを融合したDNA:
(a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルコアミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。 - 請求項1に記載のDNAに更に精製用のアミノ酸配列をコードするDNAを融合したDNA。
- 糸状菌体内で機能するプロモーター遺伝子及び請求項1又は2に記載のDNAを含む遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
- 請求項3に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなるアスペルギルス・オリゼ。
- 請求項4に記載のアスペルギルス・オリゼを培地で培養し、当該培地からVHHを含むタンパク質を回収する工程を含む、VHHを含むタンパク質の生産方法。
- 前記アスペルギルス・オリゼを液体培地で培養して、前記VHHを含むタンパク質を菌体外に分泌させることにより生成蓄積させることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 請求項5又は6に記載の方法において、更に前記VHHを含むタンパク質からVHHに結合したペプチドを切断する工程を有する、VHHの生産方法。
- 請求項5又は6に記載の方法により得られたVHHを含むタンパク質。
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