JP2012141024A - トナー定着後の紙送りローラおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のトナー定着後の紙送りローラは、軸体と、該軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたものであって、ゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、ポリマー成分は、エステル系ポリウレタンおよびエーテル系ポリウレタンを含み、エステル系ポリウレタン/エーテル系ポリウレタンは、質量比にして、90/10〜50/50であり、ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、充填剤を10質量部以上40質量部以下含むことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明のトナー定着後の紙送りローラは、複写機、業務用の複合機において、トナー定着後の紙を搬送するために好適に用いられるものである。
本発明において、軸体2は、トナー定着後の紙送りローラ1が回転するときの回転軸の中心としての役割を担うものであり、トナー定着後の紙送りローラ1の中心を貫通して設けられる。かかる軸体2を構成する材料としては、金属材料または合成樹脂からなることが好ましい。
本発明において、ゴム組成物を架橋してなる弾性体層3は、トナー定着後の用紙を送るときに、該用紙に直接接触する部位である。本発明は、弾性体層3が高温多湿環境に対して優れた耐加水分解性を示すとともに、トナーに含まれるワックス膨潤性に優れるという効果を示すことを特徴とする。このような優れた効果を発揮させるために、本発明のゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含むことを特徴とする。なお、各成分の質量比は後述する。
本発明において、ゴム組成物に含まれるポリマー成分は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応することによって得られるウレタンゴムからなるものである。かかるウレタンゴムは、加工方法および成形方法の相違から、注型ウレタンゴム、混練型ウレタンゴム、射出成形型ウレタンゴムに分類することができるが、混練型ウレタンゴムを用いることが好ましい。なぜなら、混練型ウレタンゴムは、通常のゴム加工設備を使用して製造することができるため、製造コストを抑え得るというメリットがあり、しかも、充填剤を配合することも容易であり、該充填剤の添加量を調節することによって、弾性体層の物性を所望のものに調整することができるからである。ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、一般的なものでよく、たとえば、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート5〜20質量部である。
本発明において、ゴム組成物は、上記のポリマー成分100質量部に対し、充填剤を10質量部以上40質量部以下含むことを特徴とする。ポリマー成分100質量部に対し、上記の質量比で充填剤を含むことにより、弾性体層に必要な硬度を確保することができる。上記のポリマー成分100質量部に対し、充填剤を10質量部以上40質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは、25質量部以上35質量部以下である。充填剤が10質量部未満であると、弾性体層の硬度が十分ではないことに起因して、ローラの変形が大きくなり、搬送精度が低下する傾向が見られる。一方、40質量部を超えると、弾性体層の硬度が高くなりすぎて、ニップ量が小さくなり、必要な搬送力を確保できなくなるおそれがあるため好ましくない。
本発明において、ゴム組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤を含むことにより、混練したときに熱硬化させることができる。このような架橋剤としては、一般の合成ゴム用の有機過酸化物、硫黄、有機硫黄化合物、イソシアネートなどを用いることができる。中でも、有機過酸化物からなる過酸化物架橋剤を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、たとえば、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチル−ペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
本発明において、ゴム組成物は、加工助剤を含むことが好ましい。かかる加工助剤としては、ステアリン酸、アミン類、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化マグネシウムなどを用いることができる。かかる加工助剤の配合量は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。
本発明において、ゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。かかるシランカップリング剤は、充填剤としてシリカを用いる場合に、シリカの表面を修飾するためのものである。シランカップリング剤がシリカの表面を修飾することにより、補強効果が期待される。
本発明において、一般的に用いられるブリードを生じない相溶性の高い可塑剤を含むことができる。たとえば可塑剤としては、混練型ウレタンゴム中のイソシアネート成分に不活性であり、かつ、得られた混練型ウレタンゴムにおいてブリードを生じない相溶性の高いエステル系可塑剤であればいずれも使用できる。具体的には、ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルフタレート(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジブチルグリコールアジペート(BXA)、ジオクチルセバケート(DOS)、フタル酸ジヘプチル(DHP)などを用いることができる。
本発明において、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどの老化防止剤を用いることができる。
本発明において、一般的に用いられる添加剤、すなわちワックスなどの粘着防止剤、ポリカルボジイミドなどの加水分解防止剤を含むことができる。
本発明のトナー定着後の紙送りローラは、エステル系ポリウレタンとエーテル系ポリウレタンからなるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを混練することにより、混練物を得る工程と、該混練物をプレスすることにより、円筒状のコットを架橋成型する工程と、円筒状のコットを軸体に嵌め込む工程とによって製造されるものである。以下においては、本発明のトナー定着後の紙送りローラを製造する各工程を説明する。
まず、ゴム組成物を構成する成分をニーダー機や、オープンロールやバンバリーミキサー等で混練する。ゴム組成物を構成する成分としては、エステル系ポリウレタンとエーテル系ポリウレタンからなるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを少なくとも含むものであり、さらに加工助剤およびシランカップリング剤を含んでいてもよい。
上記で得られた混練物を円筒形状の金型に入れて、150〜180℃で3〜60分間プレス成型する。これにより円筒状のコットを架橋成型することができる。かかる円筒状のコットが、後述する各工程を経て、紙送りローラの弾性体層に相当するものとなる。
上記のようにして作製した円筒状のコットを軸体に嵌めこむことにより、円筒状のコットを固定する。
ローラの表面においては、必要に応じて、円筒状のコットの外周を所定の寸法に研磨加工してもよいし、シボ表面としてもよい。シボ表面は、架橋成型時の成型金型の内面に予め設けられたシボ面により、架橋時に弾性体層表面に転写されたものであり、公知の手段により形成することができる。以上のように各工程を踏むことで、本発明のトナー定着後の紙送りローラを作製できる。
本実施例では、以下の各工程の順に行なうことによって、トナー定着後の紙送りローラを作製した。
まず、エステル系ポリウレタン90質量部と、エーテル系ポリウレタン10質量部とからなるポリマー成分をニーダー機で素練りした。そして、該ポリマー成分に対し、充填剤10質量部と、架橋剤5質量部と、加工助剤1質量部と、シランカップリング剤0.5質量部と、老化防止剤2質量部とをニーダー機に加えてさらに混練することにより、混練物を得た。なお、上記混練物を構成する各成分としては、以下のものを用いた。
エステル系ポリウレタン:ウレパン640(バイエル社製)。
エーテル系ポリウレタン:ウレパン50EL06G(バイエル社製)。
充填剤:シリカ(トクシールU(株式会社トクヤマ製))。
架橋剤:ジクミルパーオキサイド(パークミルD(日油株式会社製))。
加工助剤:ステアリン酸(花王株式会社製)。
シランカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503(信越化学工業株式会社))。
老化防止剤:スタバクゾール(バイエル社製)。
上記で得られた混練物を円筒形状の金型で160℃で20分間プレス成型することにより、円筒状のコットを架橋成型した。かかる円筒状のコットが、後の工程を経て、紙送りローラの弾性体層に相当するものとなる。
次に、上記で作製した円筒状のコットを金属シャフトに嵌め込んだ。
そして、上記の円筒状のコットの外周を円筒研磨盤で所定の寸法まで研磨加工することによって、本実施例のトナー定着後の紙送りローラを作製した。
上記の実施例1に対し、混練物の組成が以下の表1に示すように異なる。その他は同一の方法によって、実施例2〜9および比較例1〜6のトナー定着後の紙送りローラを作製した。なお、比較例1においては、ポリマー成分としてエステル系ポリウレタンのみを用いてエーテル系ポリウレタンを含まないものとし、比較例2においては、ポリマー成分としてエーテル系ポリウレタンのみを用いてエステル系ポリウレタンを含まないものとした。
上記のようにして作製した各実施例および各比較例のトナー定着後の紙送りローラに対し、以下のようにして、デュロメータA硬度、耐ワックス膨潤性および耐加水分解性を評価した。
JIS K6253(スプリング式測定法 デュロメータ硬さ)に従って、各実施例および各比較例の弾性体層のテストピースの表面の硬度を測定した。その結果を表1の「デュロメータA硬度」の欄に示す。
各実施例および各比較例の円筒状のコットを、100℃で溶融させたワックス中に浸漬させて20日間放置した。その後、円筒状のコットを取り出して、その表面に付着したワックスをウエスで拭き取った。そして、23℃±2℃に設定した室温で十分に放置して馴染ませた後に、その外径をレーザーマイクロによって測定した。
円筒状のコットの外径の増加率(%)=(ワックスに浸漬させた後の円筒状のコットの外径)/(ワックスに浸漬させる前の円筒状のコットの外径)×100−100。
各実施例および各比較例の弾性体層のテストピースを、80℃・85%環境下に放置した上で、各実施例および各比較例のテストピースのデュロメータA硬度を経時で測定し、デュロメータA硬度が初期値から4%減少するまでの日数を調べ、その日数を耐久日数とした。またここでは、比較例1の従来処方による耐久日数を100として、指数表示した値を表1の「耐久日数」の欄に示した。耐久日数が長いほど、加水分解しにくいことから、耐加水分解性に優れることを示す。
実施例1〜9のトナー定着後の紙送りローラは、軸体と、軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたものであって、弾性体層は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、ポリマー成分は、エステル系ポリウレタンおよびエーテル系ポリウレタンからなり、エステル系ポリウレタン/エーテル系ポリウレタンは、質量比にして、90/10〜50/50であり、弾性体層はポリマー成分100質量部に対して、充填剤を10質量部以上40質量部以下含むものである。このような構成からなるトナー定着後の紙送りローラは、耐ワックス膨潤性および耐加水分解性のいずれもが優れた性質を示すものであった。
Claims (8)
- 軸体と、前記軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたトナー定着後の紙送りローラであって、
前記ゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、
前記ポリマー成分は、エステル系ポリウレタンおよびエーテル系ポリウレタンを含み、
前記エステル系ポリウレタン/前記エーテル系ポリウレタンは、質量比にして、90/10〜50/50であり、
前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100質量部に対して、前記充填剤を10質量部以上40質量部以下含むことを特徴とする、トナー定着後の紙送りローラ。 - 前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100質量部に対して、前記架橋剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことを特徴とする、請求項1に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
- 前記ゴム組成物は、さらに、加工助剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
- 前記充填剤は、シリカであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のトナー定着後の紙送りローラ。
- 前記ゴム組成物は、さらに、シランカップリング剤を含むことを特徴とする、請求項4に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
- 前記弾性体層は、デュロメータA硬度が60〜90°であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のトナー定着後の紙送りローラ。
- エステル系ポリウレタンおよびエーテル系ポリウレタンからなるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを混練することにより、混練物を得る工程と、
前記混練物をプレスすることにより、円筒状のコットを架橋成型する工程と、
前記円筒状のコットを軸体に嵌め込む工程とを含む、トナー定着後の紙送りローラの製造方法。 - 前記混練物を得る工程は、前記エステル系ポリウレタンと、前記エーテル系ポリウレタンとを先に混練する、請求項7に記載のトナー定着後の紙送りローラの製造方法。
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