JP6037399B2 - トナー定着後の紙送りローラおよびその製造方法 - Google Patents

トナー定着後の紙送りローラおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の機器に用いられるトナー定着後の紙送りローラおよびその製造方法に関する。詳細には、オフィス向けMFP(Multifunction Peripheral)またはプロダクションプリンティング(商用印刷や企業内での大量印刷)向け高速機(MFP)等において定着下流の搬送経路に好適に用いられる紙送りローラおよびその製造方法に関する。ここで、MFPとは、多機能周辺装置の略称であり、例えば、1台でプリンター、複写機、スキャナ、ファクシミリ等の複数の機能を搭載する機器をいう。
オフィス向けMFPやプロダクションプリンティング(PP)向けのプリンターの印刷速度が著しく向上し、機器そのものの性能向上に合わせて、紙葉類の搬送性能も向上していかなければならないという要求がある。
これらの機器に用いられる紙送りローラには、用紙トレイから用紙を取り出すピックアップローラ、その用紙を下流に送るためのフィードローラ、用紙の重送を防止するためのリタードローラ、それ以外に用紙を搬送するための搬送ローラ等が挙げられる。上記紙送りローラはいずれも、用紙に一定の圧力を加えながら回転することによって用紙を送るという共通の機能を有するものであるが、紙送りローラに要求される性能は用紙を印刷する前後で大きく異なる。特に、オフィス向けMFPまたはプロダクションプリンティング向け高速機(MFP)等において定着下流の搬送経路に用いられるトナー定着後の紙送りローラは、トナーに対する耐性が要求されるのがポイントである。
すなわち、トナーが定着した用紙に一定の圧力を加えながら用紙を送ると、印刷に用いられるトナー自身が弾性体の表面に固着することがある。トナーが弾性体の表面に固着すると、その紙送りローラの用紙搬送力の低下を招き、よって、不送りを引き起こすがことある。また、PP向けの高速機は、長時間連続して稼動することから、機器内の温度が100℃前後にまで上昇するとともに、最近のトナー低融点化の傾向により、トナーまたはトナーに含まれるワックスが溶けて紙送りローラの弾性体に染み込み、弾性体が膨潤する。この膨潤によって、ローラの外径が変化して紙送り量が変動する。そのため、用紙の搬送精度が悪化する等の不具合が発生している。また、オフィス向けMFPの定着下流の紙送りローラ等においても、トナーの低融点化により、上記PP向け高速機用の紙送りローラと同様の弾性体の膨潤による不具合が発生している。
従来、上記トナー定着後の紙送りローラにおける弾性体層の材料としては、シリコーンゴムやポリウレタンゴムが使用されていた。しかし、用紙を高速で搬送する高速機の領域では、耐摩耗性が要求され、シリコーンゴムでは耐摩耗性に劣る為、ポリウレタンゴムが使用されていた。たとえば特許文献1には、耐加水分解性および耐ワックス膨潤性の両性能に優れるトナー定着後の紙送りローラが提案されている。具体的には、紙送りローラの弾性体層は、ゴム組成物が架橋されてなる。ゴム組成物のポリマー成分はエステル系ポリウレタンおよびエーテル系ポリウレタンを含み、ゴム組成物においてエステル系ポリウレタン/エーテル系ポリウレタンは質量比にして90/10〜50/50である。ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して充填剤を10質量部以上40質量部以下含む。
特開2012−141024号公報
特許文献1に開示されるウレタン組成物は、エステル系ポリウレタンを主成分とするポリウレタンであるため、耐ワックス膨潤性に優れている。しかしながら、トナーが弾性体の表面に固着を抑制する耐トナー固着性を十分に高めることができていない。また、一般にウレタン組成物を用いた場合は、上記した耐ワックス膨潤性と耐トナー固着性とは相反する傾向にあるため、両特性を併せ持つトナー定着後の紙送りローラは得られていない。
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トナー定着後の紙送りにおいて、耐トナー固着性および耐ワックス膨潤性の両性能に優れるバランスの良い紙送りローラを提供することを課題としている。
本発明に係るトナー定着後の紙送りローラは、軸体と、軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたものであって、ゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、ポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンを含み、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜50/50であり、ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、充填剤を50質量部以上100質量部以下含む。
本発明のトナー定着後の紙送りローラによれば、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜50/50であるので、弾性体層を形成したときに、エーテル系ポリウレタンが有する耐トナー固着性と、エステル系ポリウレタンが有する耐ワックス膨潤性とを両立して享受することができる。ただ、耐ワックス膨潤性については改善の余地が残る。そこで、ポリマー成分を上記ブレンド比率で調製し、充填剤の配合量をポリマー成分100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下に設定することで、耐ワックス膨潤性を高めることができる。したがって、本発明のトナー定着後の紙送りローラは、耐トナー固着性および耐ワックス膨潤性の両性能に優れるバランスの良い特性を示す。
本発明のトナー定着後の紙送りローラにおいて好ましくは、ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、架橋剤を0.1質量部以上10質量部以下含む。
本発明のトナー定着後の紙送りローラにおいて好ましくは、充填剤は、カーボンブラックである。これにより、弾性体層の耐ワックス膨潤性を顕著に高めることができる。
また、本発明に係るトナー定着後の紙送りローラの弾性体層は、デュロメータA硬度が60度以上90度以下であることが好ましい。
本発明に係るトナー定着後の紙送りローラの製造方法は、上記したトナー定着後の紙送りローラを製造する方法であって、ゴム組成物を構成する成分であるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを混練することにより、混練物を得る工程と、該混練物をプレスすることにより、弾性体層に相当する円筒状のコットを架橋成型する工程と、円筒状のコットを軸体に嵌め込む工程とを含む。これにより、混練型ウレタンゴムを原料に用いているため、製造コストの上昇を抑制することができる。
本発明のトナー定着後の紙送りローラは、上記の構成を有することにより、トナー定着後の紙送りにおいて、耐トナー固着性および耐ワックス膨潤性の両性能をバランスよく満たすという性質を示す。
本発明のトナー定着後の紙送りローラがトナー定着後の用紙を送るときの状態を示す概略図である。 各実施例および各比較例における耐トナー固着性の試験方法を説明するための説明図である。
<トナー定着後の紙送りローラ>
本発明のトナー定着後の紙送りローラ(以下では単に「紙送りローラ」と記すことがある)は、オフィス向けMFPまたはプロダクションプリンティング向け高速機(MFP)等の定着下流の搬送経路において、トナー定着後の紙を搬送するために好適に用いられるものである。
図1は、本発明のトナー定着後の紙送りローラがトナー定着後の用紙を送るときの状態を示す概略図である。本発明のトナー定着後の紙送りローラ1は、図1に示されるように、軸体2と、該軸体2の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層3とを備えたものである。このトナー定着後の紙送りローラ1は、用紙4に一定の圧力を加えながら回転することによって用紙4を搬送するという機能を持つ。なお、本発明の紙送りローラ1と対向するローラは、駆動側の紙送りローラ1に圧接し従動する従動ローラ5である。以下、本発明のトナー定着後の紙送りローラを構成する各部を説明する。
<軸体>
本発明において、軸体2は、トナー定着後の紙送りローラ1が回転するときの回転軸としての役割を担うものであり、トナー定着後の紙送りローラ1の中心を貫通して設けられる。かかる軸体2を構成する材料としては、金属材料または合成樹脂からなることが好ましい。
ここで、軸体2を構成する金属材料としては、たとえば鉄、ステンレス、アルミニウム等を挙げることができ、合成樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
<弾性体層>
本発明において、ゴム組成物を架橋してなる弾性体層3は、トナー定着後の用紙を送るときに、該用紙に直接接触する部位である。本発明は、弾性体層3がトナーに対して優れた耐トナー固着性を示すとともに、トナーに含まれる耐ワックス膨潤性に優れるという効果を示す。このような優れた効果を発揮させるために、本発明のゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、ポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンを含み、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜50/50であり、ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、充填剤を50質量部以上100質量部以下含む。なお、各成分の詳細については後述する。
上記弾性体層3は、デュロメータA硬度が60度以上90度以下であることが好ましく、より好ましくは、70度以上80度以下である。弾性体層のデュロメータA硬度が60度未満であると、印刷速度が速い高速機ではローラの変形が大きくなり、搬送精度が低下する傾向が見られる。一方、弾性体層のデュロメータA硬度が90度を超えると、ニップ量が小さくなり、摩擦係数が低くなりすぎて、必要な搬送力を確保できなくなるおそれがある。なお、デュロメータA硬度は、JIS K6253の規格に従って、デュロメータにより測定した硬度を意味する。以下においては、ゴム組成物を構成する各成分を説明する。
(ポリマー成分)
本発明において、ゴム組成物に含まれるポリマー成分は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応することによって得られるウレタンゴムからなるものである。かかるウレタンゴムは、加工方法および成形方法の相違から、注型ウレタンゴム、混練型ウレタンゴム、射出成形型ウレタンゴムに分類することができる。本発明においては、混練型ウレタンゴムを用いる。混練型ウレタンゴムは通常のゴム加工設備を使用して製造することができ、製造コストを抑え得るというメリットがある。しかも、充填剤を配合することも容易であり、該充填剤の添加量を調節することによって、弾性体層の物性を所望のものに調整することができる。ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、一般的なものでよく、たとえば、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート5〜20質量部である。
本発明において、ゴム組成物を構成するポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとの質量比が80/20〜50/50となるように、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンの両者を含む。このような質量比でエーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとを含むことにより、エーテル系ポリウレタンが有する耐トナー固着性と、エステル系ポリウレタンが有する耐ワックス膨潤性とを高度に両立して享受することができる。
上記のエーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとの質量比が80/20を超えてエーテル系ポリウレタンを含む場合は、耐ワックス膨潤性が悪くなり、ワックスによって弾性体層が膨潤し、長時間安定して印刷できなくなるおそれがある。一方、エーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとの質量比が50/50を超えてエステル系ポリウレタンを含む場合は、耐トナー固着性が悪くなり、トナーが弾性体層の表面に付着することによって、紙送りローラの用紙搬送力を維持することができなくなるおそれがある。
ここで、エーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを重合することによって得られるものである。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール系ポリオール、または、これらの変成物、さらに、ポリオキシテトラメチレングリコールなどを用いることができる。
エステル系ポリウレタンは、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを重合することによって得られるものである。ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸などのジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどのポリオールとの縮合反応生成物や、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを用いることができる。
一方、ポリイソシアネートとしては、2官能以上のポリイソシアネートであれば特に限定はなく、例えば2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などを用いることができる。
上記のエーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンは、たとえば、エーテルポリオールおよびエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを70℃〜150℃で、10〜120分間で反応させる。その後、60℃〜120℃で、6〜48時間程度熟成させて得ることができる。
(充填剤)
本発明において、ゴム組成物は、上記のポリマー成分100質量部に対し、充填剤を50質量部以上100質量部以下である。ポリマー成分としてエーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとを上記ブレンド比率(80/20〜50/50)で調製し、両者の合計量ポリマー成分100質量部に対し、上記の質量比で充填剤を含むことが肝要である。このことにより、弾性体の耐ワックス膨潤性を高めることができるとともに、弾性体層に必要な硬度も確保することができる。上記のポリマー成分100質量部に対し、好ましくは、75質量部以上100質量部以下である。ポリマー成分がエーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとのブレンド比率を満たしていても、充填剤が50質量部未満である場合は、耐ワックス膨潤性が悪くなる。一方、100質量部を超える場合は、弾性体層の硬度が高くなりすぎて、ニップ量が小さくなり、必要な搬送力を確保できなくなるおそれがあるため好ましくない。
上記のような充填剤としては、従来公知のカーボンブラック、またはシリカを用いることができる他、無機充填剤を用いてもよい。かかる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、およびチタンホワイトよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。上記の中でも、充填剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックは、弾性体の耐ワックス膨潤性を顕著に高めることができるからである。
充填剤としてカーボンブラックを用いる場合、その平均粒子径(一次粒子径)は特に限定されるものではないが、所望の硬度と耐ワックス膨潤性を考慮し、好ましくは60nm以上である。平均粒子径が60nm未満のカーボンブラックを多量に配合した場合は、弾性体層の硬度が過大となってしまい、所望の硬度(デュロメータA硬度60〜90の範囲)に設定することが難しい為である。なお、上記平均粒子径は、電子顕微鏡により、カーボンブラック粒子の粒子径を計測し、算術平均を求めたものである。
また、カーボンブラックのDBP吸油量についても特に限定されるものではないが、所望の硬度と耐ワックス膨潤性を考慮し、好ましくは80cm/100g未満である。DBP吸油量が80cm/100g以上のカーボンブラックを多量に配合した場合は、弾性体層の硬度が過大となってしまい、所望の硬度(デュロメータA硬度60〜90の範囲)に設定することが難しい為である。なお、カーボンブラックのDBP吸油量とは、JIS K6217−4に準拠した方法で測定した値である。
(架橋剤)
本発明において、ゴム組成物は、架橋剤(加硫剤と同意義)を必須成分として含む。このような架橋剤としては、一般の合成ゴム用の有機過酸化物、硫黄、有機硫黄化合物、イソシアネートなどを用いることができる。このような架橋剤のなかでも、有機過酸化物からなる過酸化物架橋剤を用いることが好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール類(1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、n−ブチル,4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなど)、ジアルキルパーオキサイド類(ジクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなど)、ジアシルパーオキサイド類(ジ(3−t−ブチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ(4−t−ブチルベンゾイル)パーオキサイドなど)、パーオキシエステル類(2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなど)などが挙げられる。
上記のゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対し、架橋剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは1質量部以上6質量部以下である。また、架橋剤として有機過酸化物を用いる場合は、有機過酸化物の分解特性により異なるが、たとえば150〜180℃で3〜60分間加熱することによって架橋を進行させることができる。
本発明において、ゴム組成物には、上記のポリマー成分、充填剤および架橋剤に加えて、架橋助剤(共架橋剤と同意義)、加工助剤、可塑剤、老化防止剤、その他配合剤などを任意成分として添加することもできる。
(架橋助剤)
架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、トリメチル−プロパン・トリメタクリレート(TPTA)、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリメリテート(TAM)、テトラアリルテレフタルアミド、若しくは、これらの混合物を用いることができる。
(加工助剤)
加工助剤としては、ステアリン酸、アミン類などを用いることができる。かかる加工助剤の配合割合は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。
(可塑剤)
本発明において、一般的に用いられるブリードを生じない相溶性の高い可塑剤を含むことができる。例えば可塑剤としては、混練型ウレタンゴム中のイソシアネート成分に不活性であり、かつ、得られた混練型ウレタンゴムにおいてブリードを生じない相溶性の高いエステル系可塑剤であればいずれも使用できる。具体的には、ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルフタレート(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジブチルグリコールアジペート(BXA)、ジオクチルセバケート(DOS)、フタル酸ジヘプチル(DHP)などを用いることができる。
(老化防止剤)
本発明において、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどの老化防止剤を用いることができる。
(その他配合剤)
本発明において、一般的に用いられる添加剤、すなわちワックスなどの粘着防止剤、ポリカルボジイミドなどの加水分解防止剤を含むことができる。
<トナー定着後の紙送りローラの製造方法>
本発明のトナー定着後の紙送りローラは、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンからなるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを混練することにより、混練物を得る工程と、該混練物をプレスすることにより、弾性体層に相当する円筒状のコットを架橋成型する工程と、円筒状のコットを軸体に嵌め込む工程とによって製造されるものである。以下においては、本発明のトナー定着後の紙送りローラを製造する各工程を説明する。
(混練物を得る工程)
まず、ゴム組成物を構成する成分をニーダー機や、オープンロールやバンバリーミキサー等で混練することで混練物を得ることができる。ゴム組成物を構成する成分としては、エーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンからなるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを少なくとも含むものであり、さらに加工助剤、その他配合剤などを含んでいてもよい。
上記の混練物は、先に、エーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとを含むポリマー成分を質量比にして、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタン=80/20〜50/50に調製し素練りする。次いで、ポリマー成分100質量部に対して、充填剤を50質量部以上100質量部以下添加する。そして、架橋剤、その他配合剤を順次添加する。このように先にポリマー成分を混練することにより、エーテル系ポリウレタンとエステル系ポリウレタンとが均一に分散したポリマー成分となり、後に添加する充填剤および架橋剤をポリマー成分中に均一に分散しやすくすることができる。
(架橋成型する工程)
上記で得られた混練物を円筒形状の金型に入れて、150〜180℃で3〜60分間プレス成型する。これにより円筒状のコットを架橋成型することができる。かかる円筒状のコットが、後述する各工程を経て、紙送りローラの弾性体層に相当するものとなる。
(軸体に嵌め込む工程)
上記のようにして作製した円筒状のコットを軸体に嵌め込むことにより、円筒状のコットを固定する。
(ローラの表面加工する工程)
ローラの表面においては、必要に応じて、円筒状のコットの外周を所定の寸法に研磨加工してもよいし、シボ表面としてもよい。シボ表面は、架橋成型時の成型金型の内面に予め設けられたシボ面により、架橋時に弾性体層表面に転写されたものであり、公知の手段により形成することができる。以上のように各工程を踏むことで、本発明のトナー定着後の紙送りローラを作製できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、以下の各工程の順に行なうことによって、トナー定着後の紙送りローラを作製した。
(混練物を得る工程)
先ず、エーテル系ポリウレタン80質量部と、エステル系ポリウレタン20質量部とからなるポリマー成分をニーダー機で素練りした。そして、該ポリマー成分に対し、充填剤50質量部と、架橋剤2質量部と、加工助剤1.5質量部と、加水分解防止剤3質量部とをニーダー機に加えてさらに混練することにより、混練物を得た。なお、上記混練物を構成する各成分としては、以下のものを用いた。
エーテル系ポリウレタン:ウレパン50EL06G(ラインケミー社製)。
エステル系ポリウレタン:ウレパン640(ラインケミー社製)。
充填剤:カーボンブラック(MTカーボン(キャンカーブ社製))。
架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B(日油株式会社製))。
加工助剤:ステアリン酸(花王株式会社製)。
加水分解防止剤:スタバクゾール(バイエル社製)。
(架橋成型する工程)
上記で得られた混練物を円筒形状の金型に入れて160℃で20分間プレス成型することにより、円筒状のコットを架橋成型した。かかる円筒状のコットが、後の工程を経て、紙送りローラの弾性体層に相当するものとなる。
(軸体に嵌め込む工程)
次に、上記で作製した円筒状のコットを金属シャフトに嵌め込んだ。
(研磨加工する工程)
そして、上記の円筒状のコットの外周を円筒研磨盤で所定の寸法まで研磨加工することによって、本実施例のトナー定着後の紙送りローラを作製した。
<実施例2〜6、参考例1〜3および比較例1〜6>
上記の実施例1に対し、混練物の組成が以下の表1に示すように異なる。その他は同一の方法によって、実施例2〜6、参考例1〜3および比較例1〜6のトナー定着後の紙送りローラを作製した。なお、比較例1においては、ポリマー成分としてエーテル系ポリウレタンのみを用いてエステル系ポリウレタンを含まないものとし、比較例2においては、ポリマー成分としてエステル系ポリウレタンのみを用いてエーテル系ポリウレタンを含まないものとした。
Figure 0006037399
<性能評価>
上記のようにして作製した各実施例、各参考例および各比較例のトナー定着後の紙送りローラに対し、以下のようにして、デュロメータA硬度、耐トナー固着性および耐ワックス膨潤性を評価した。
(デュロメータA硬度)
JIS K6253(スプリング式測定法 デュロメータ硬さ)に従って、各実施例、各参考例および各比較例の弾性体層のテストピース(直径Φ29.0mm、厚み12.5mm)の表面の硬度を測定した。その結果を表1の「デュロメータA硬度」の欄に示す。
(耐トナー固着性)
先ず、耐トナー固着性の試験方法について図2に示し説明する。初めに、各実施例、各参考例および各比較例の弾性体層のテストピース11(10mm×10mm、厚み2mm)を作製し、テストピース11にトナー12を塗布する。次に、ホットプレート13を準備し、その上に紙14を置き、さらにその上に、トナーを塗布した面と紙14の上面とが接触するようにテストピースを設置する。そして、テストピース11(トナーが塗布されていない面)の上に同様の用紙15を置き、その上に2kgの重り16を乗せテストピースを圧接させる。そして、ホットプレート13で180℃での加熱を1時間行い、テストピースを取り出す。その後、室温で30分放置・冷却し、テストピースを3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス社製 OLS−4000)で観察する。そして、テストピースのトナー塗布面を紙製清掃具(商品名キムワイプ)にIPA(イソプロピルアルコール)を染み込ませたもので1回拭取りを行い、テストピースを3D測定レーザー顕微鏡で再度観察する。
トナー定着後の紙送りローラとしての各実施例、各参考例および各比較例の耐トナー固着性を、次のようにして評価した。すなわち、上記試験によって得られたIPA拭取り前後の各テストピースのトナーの固着具合を3D測定レーザー顕微鏡で観察した。IPA拭取り前からトナーの固着がないものを表1に「A」と記載した。IPA拭取り前はトナーの固着箇所が数箇所確認できるが、IPA拭取り後はトナー12の固着がなく、表面状態が良好なものを表1に「B」と記載した。IPA拭取り前からトナーの固着箇所が数箇所確認できるが、IPA拭取り後はトナー12の固着が軽微なものを表1に「C」と記載した。IPA拭取り前からトナーの固着箇所が数多く確認でき、拭取り後も依然としてトナーの固着箇所が数多く確認できるものを表1に「D」と記載した。表1おいて「A」、「B」及び「C」であれば、トナーが弾性体の表面に固着しにくく、耐トナー固着性に優れるとして評価した。一方、「D」であれば、実用に供し難いレベルのトナーが残存するので耐トナー固着性に劣るとして評価した。
(耐ワックス膨潤性)
各実施例、各参考例および各比較例の円筒状のコット(外径20mm、内径10mm、長さ10mm)を、85℃で溶融させたワックス中に浸漬させて45時間放置した。その後、円筒状のコットを取り出して、その表面に付着したワックスを紙製清掃具(商品名キムワイプ)で拭き取った。そして、23℃±2℃に設定した室温で1時間放置して馴染ませた後に、その外径をレーザーマイクロによって測定した。
そして、以下の式に基づいて、ワックスに浸漬させる前の円筒状のコットの外径に対する、ワックスに浸漬させた後の円筒状のコットの外径の変化率(%)を算出し、それを表1の「外径変化率」の欄に示した。耐ワックス膨潤の変化率の値が小さいほどワックスに対して膨潤しにくく、耐ワックス膨潤性に優れることを示す。
外径変化率(%)=(ワックスに浸漬させた後の円筒状のコットの外径)/(ワックスに浸漬させる前の円筒状のコットの外径)×100−100。
そして、次の基準により、耐ワックス膨潤性を評価した。実用性を考慮して、耐ワックス膨潤の変化率が1%未満であるものを合格とし、耐ワックス膨潤の変化率が1%以上であるものを不合格とした。
<評価結果>
表1に示すように、実施例1〜のトナー定着後の紙送りローラは、軸体と、軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたものであって、弾性体層は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、ポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンからなり、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜65/35であり、弾性体層はポリマー成分100質量部に対して、充填剤を50質量部以上100質量部以下含むものである。このような構成からなるトナー定着後の紙送りローラは、耐トナー固着性および耐ワックス膨潤性のいずれもが優れた性質を示すものであった。
一方、比較例1および3は、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタンが、質量比にして、80/20を超えてエーテル系ポリウレタンを含むものであるため、エステル系ポリウレタンに由来する耐ワックス膨潤性の向上効果を得ることができなかった。
また、比較例2および4は、エーテル系ポリウレタン/エステル系ポリウレタンが、質量比にして、50/50を超えてエステル系ポリウレタンを含むものであるため、エーテル系ポリウレタンに由来する耐トナー固着性の向上効果を得ることができなかった。
比較例5は、ポリマー成分100質量部に対し、充填剤を30質量部しか含まないため、外径変化率が大きく、耐ワックス膨潤性が劣っていた。
比較例6は、ポリマー成分100質量部に対し、充填剤を150質量部を含むため、弾性体層の硬度が高くなりすぎて、ニップ量が小さくなり、必要な搬送力を確保できなくなった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 紙送りローラ、2 軸体、3 弾性体層、4 用紙、5 従動ローラ、11 テストピース、12 トナー、13 ホットプレート、14,15 紙、16 重り。

Claims (5)

  1. 軸体と、前記軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備えたトナー定着後の紙送りローラであって、
    前記ゴム組成物は、ポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを含み、
    前記ポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンを含み、
    前記エーテル系ポリウレタン/前記エステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜65/35であり、
    前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100質量部に対して、前記充填剤を50質量部以上100質量部以下含むことを特徴とする、トナー定着後の紙送りローラ。
  2. 前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100質量部に対して、前記架橋剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことを特徴とする、請求項1に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
  3. 前記充填剤は、カーボンブラックであることを特徴とする、請求項1または2に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
  4. 前記弾性体層は、デュロメータA硬度が60度以上90度以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー定着後の紙送りローラ。
  5. 軸体と、前記軸体の外周面に形成されたゴム組成物を架橋してなる弾性体層とを備え、
    前記ゴム組成物を構成する成分であるポリマー成分と、充填剤と、架橋剤とを混練することにより、混練物を得る工程と、
    前記混練物をプレスすることにより、前記弾性体層に相当する円筒状のコットを架橋成型する工程と、
    前記円筒状のコットを軸体に嵌め込む工程とを含むトナー定着後の紙送りローラの製造方法であって、
    前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分と、前記充填剤と、前記架橋剤とを含み、
    前記ポリマー成分は、エーテル系ポリウレタンおよびエステル系ポリウレタンを含み、
    前記エーテル系ポリウレタン/前記エステル系ポリウレタンは、質量比にして、80/20〜65/35であり、
    前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100質量部に対して、前記充填剤を50質量部以上100質量部以下含むことを特徴とする、トナー定着後の紙送りローラの製造方法。
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