JP5317178B2 - 導電性ゴム部材 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリ
ンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール、トナー規制ロール、さらには転写
ロール・中間転写ロール及びベルトなどに好適に用いられる導電性ゴム部材に関する。
近年、装置の小型化、省エネ化に伴って、感光体に使用される導電性ロール等は低硬度化が要求されている。このように低硬度化が要求されるロールでは、柔軟なシロキサン結合を有するシリコーンゴムが使用されている(特許文献1等参照)。しかしながら、シリコーンゴムは低分子成分による汚染や帯電性等が問題となっていた。
そこで、シリコーンゴムを含む弾性層と、表層とを具備する多層構造のゴム部材が提案されている。具体的には、シリコーンゴム等からなる弾性層と、ウレタン樹脂からなるコート層と、イソシアネートからなる薄い硬化層の多層構造からなる現像ロール(特許文献2参照)、シリコーンゴムからなる半導電性弾性層と、ポリウレタン樹脂層を被覆してなることを特徴とする半導電性シリコーンゴムロール(特許文献3参照)、液状のシリコーンゴムを硬化させたベース層、抵抗調整層、及び保護層を被覆してなる帯電ロール(特許文献4参照)などが提案されている。
しかしながら、上述したように多層構造のゴム部材は、ゴム弾性層と、表層との界面強度や耐久強度が十分に得られないことが問題となっていた。界面強度や耐久強度が十分に得られないと、フィルミングが発生して帯電性やトナー搬送性を維持することができなくなってしまう。また、コーティング層の形成は、工程が複雑となり製造コストが増大するという問題があった。また、低硬度化によりロールが変形しやすくなったことで、近接するカーボンブラック等の導電性微粉末同士の接触状態が変形時に変化して、ピンホールリークを発生しやすいという問題もあった。
一方、本出願人は、表層にコート層を形成しなくともピンホールリークを解決し、簡易に表層を調整する方法を先に提案している(特許文献5参照)。なお、導電性弾性体として、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム等を用いており、シリコーンゴムには適用されていなかった。
特許第2646953号公報 特開2005−283913号公報 特開2000−130429号公報 特開2006−267253号公報 特許第3291087号公報
本発明は、このような事情に鑑み、耐汚染性に優れ、フィルミングが発生しない低硬度の導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、シリコーンゴムを含むゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層と、前記導電性弾性層の表層部に、イソシアネート化合物と、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤及びアルミネート系カップリング剤から選択される少なくとも1つである、前記イソシアネート化合物と反応するカップリング剤とを含む表面処理液を含浸することによって形成された表面処理層とを具備することを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記カップリング剤は、アルコキシシリル基を有することを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液は、さらに、シリコーンゴムとの溶解度パラメーター値の差が2.5以下であり、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含み、前記反応性化合物は、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基及びエポキシ基から選択される少なくとも1つの官能基を有することを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記反応性化合物は、有機シラン化合物及びシロキサン結合を有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素含有化合物であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記シロキサン結合を有する化合物は、末端変性ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第6の態様は、第1〜のいずれかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム基材は金属微粉末及び無機酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第7の態様は、第1〜のいずれかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液は、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明の第8の態様は、第1〜のいずれかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理層は、前記導電性弾性層の表面から内部に向かって漸次疎となるように形成されていることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
本発明によると、耐汚染性に優れ、フィルミングが発生しない低硬度の導電性ゴム部材となる。また、この導電性ゴム部材は、ピンホールリークが発生しないものであり、低コストで容易に製造できるものである。
本発明の導電性ゴム部材は、シリコーンゴムを含むゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層と、導電性弾性層の表層部に、イソシアネート化合物と、イソシアネート化合物と反応するカップリング剤とを含む表面処理液を含浸することによって形成された表面処理層とを具備するものである。導電性弾性層がシリコーンゴムを含むゴム基材からなることにより低硬度となり、また、導電性弾性層の表層部にイソシアネート化合物と所定のカップリング剤とを有機溶媒で希釈した表面処理液を含浸することによって形成された表面処理層により、汚染物質の内部からのブリードを防止するという機能を果たすものとなる。
図1に本発明の導電性ゴム部材の一例としての導電性ロールの断面図を示す。図1に示すように導電性ロール10は、芯金11上に、ゴム基材に導電性付与材を添加して成形し、加硫した導電性弾性層12を有するものであり、導電性弾性層12の表層部は、イソシアネート化合物と所定のカップリング剤とを含む表面処理液を用いて形成した表面処理層12aとなっている。
上述したように、表面処理層12aは、イソシアネート化合物と、イソシアネート化合物と反応するカップリング剤とを含む表面処理液を導電性弾性層12に含浸させて形成したものである。導電性弾性層12に表面処理液を含浸すると、イソシアネート化合物やカップリング剤の密度が導電性弾性層12の表面から内部に向かって漸次疎となる。そして、表面処理液の溶媒が揮発してイソシアネート化合物が硬化する際に、カップリング剤がイソシアネート化合物等と導電性弾性層12の官能基と反応することにより、導電性弾性層12にイソシアネート化合物等が固定化され、導電性弾性層12の表層部に表面処理層12aが形成される。かかる表面処理層12aは導電性弾性層12の表層部に一体的に設けられている、すなわち、導電性ゴム部材は実質的に一層からなる。本発明の導電性ゴム部材は、イソシアネート化合物が導電性弾性層12に強固に固定化されているため、剥がれや脱落が発生する虞がなく、耐フィルミング性に優れたものである。
なお、図1に示した導電性ロール10は、一層の導電性弾性層12を有するものとしたが、導電性弾性層12と同一構造の弾性層が最外層に存在すれば、その下層に1層以上の下層が存在してよい。すなわち、本発明に包含される導電性ロールは、複数構造の導電性ロールを包含するものであり、下層部としては、発泡層であっても、無発泡層であってもよく、特に限定されるものではない。
導電性ロール10の導電性弾性層12は、シリコーンゴムを含むゴム基材に導電性付与材を添加して成形・加硫したゴム弾性体からなるものである。シリコーンゴムは特に限定されず、メチルビニルシリコーンゴム、フッ素化シリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム等が挙げられる。ここで、ゴム基材としては、シリコーンゴムを主体とするものであればよく、適宜、その他のゴム、例えば、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム等をブレンドしてもよい。
また、シリコーンを含むゴム基材に、金属微粉末や無機酸化物を配合してもよい。金属微粉末や無機酸化物は、水酸基を有するもの又は生成するものであればよく、例えば、湿式シリカ、クレー、重質および軽質炭酸カルシウム、タルク、ゼオライト、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。また、適度に反応基を残した乾式シリカ、シラン改質クレー等が挙げられる。金属微粉末や無機酸化物は、単独で用いても2種以上用いてもよい。これらは、後述する表面処理液のカップリング剤と反応して、弾性層とより強固に一体化した表面処理層を形成することができるため好ましい。シリコーンゴムを含むゴム基材に湿式シリカを配合することにより、導電性弾性層のゴム弾性体中のシラノール基が増加して、カップリング剤とゴム弾性体の反応が促進され、カップリング剤と反応したイソシアネート化合物が弾性層に固定化されることになる。例えば、ゴム基材に湿式シリカを配合して形成した弾性層に、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を含む表面処理液を含浸すると、大気中の水分および湿式シリカの水分子(水和水および結合水)により、シランカップリング剤のアルコキシシリル基が加水分解してシリカと結合するため、弾性層と表面処理層とが強固に結合する。また、表面処理液がシロキサン結合を有する化合物や有機シランを含み、これらに活性水素を持つ官能基(例えば、水酸基)が余剰にある場合には、活性水素と湿式シリカのシラノール基とが水素結合を形成し、弾性層とより強固に一体化した表面処理層を形成することができる。
ゴム基材に配合する導電性付与材は特に限定されないが、各種カーボンブラックが好ましい。また、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して用いることができる。イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたジエチレングリコール−塩化第二鉄錯体などを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載された1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルフォニル)イミドなどを挙げることができる。
また、弾性層は、外表面が研磨されていても研磨されていなくてもよい。
表面処理層12aは、例えば、導電性弾性層12を表面処理液に浸漬する又は表面処理液をスプレー塗布などにより塗布し、乾燥硬化させることにより形成することができる。
表面処理液が導電性弾性層12の表層部に含浸する際には、表面処理液が導電性弾性層12に十分に含浸するように、表面処理液の含浸温度、含浸時間等を調整する。例えば、ゴム基材にポリウレタン等を用いた場合と比べて、表面処理液の含浸温度を若干高く設定したり、表面処理液の含浸時間を長くしたり、加圧環境下で表面処理液を含浸したりすることにより、表面処理液を弾性層に十分に含浸させる。また、導電性弾性層に含浸しやすい有機溶媒を用いて、表面処理液が導電性弾性層12に十分に含浸するようにしてもよい。
また、乾燥硬化は、特に限定されず、イソシアネート化合物等を弾性層内部で硬化させることができるものであればよく、イソシアネート化合物等の凝固点以下の温度に冷却した後、雰囲気の水分により硬化させる方法や、減圧下で溶媒を揮発させた後、熱や水分により硬化させる方法があり、一般的には、常温乾燥後、必要に応じて加熱処理する。なお、このときの加熱温度は、例えば、40〜150℃である。
ここで、表面処理液は、有機溶剤に、少なくともイソシアネート化合物と、所定のカップリング剤とを溶解させたものである。
ここでいうイソシアネート化合物とは、例えば、分子量が500以下のものをいう。本発明にかかる表面処理液は、低分子反応性化合物としてイソシアネート化合物を含む。表面処理液に含まれるイソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などのイソシアネート化合物、および前記の多量体および変性体などを挙げることができる。さらに、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマーを挙げることができる。
カップリング剤は、イソシアネート化合物と反応するものである。イソシアネート化合物とカップリング剤とを併用することで、表面処理液の有機溶媒が揮発してイソシアネート化合物が硬化する際に、カップリング剤がイソシアネート化合物及び導電性弾性層の官能基と反応して、イソシアネート化合物を導電性弾性層に固定化することができる。
ここで、カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シラン系カップリング剤としては、アルコキシシリル基を有するもの、クロロシリル基を有するものが挙げられる。アルコキシシリル基を有するものとしては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビスプロピルトリエトキシシランテトラスルフィド、イソシアン酸プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、表面処理液や、導電性弾性層を構成するゴム弾性体の組成に合わせて適宜選択すればよい。シラン系カップリング剤は、低コストで且つシリコーンゴムとの相溶性に優れるため、好適に用いることができる。シリコーンゴムを主体とする弾性層に、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を含む表面処理液を含浸すると、大気中の水分により、シランカップリング剤のアルコキシシリル基が加水分解して、イソシアネート化合物と反応すると共に導電性弾性層の官能基、具体的には、シラノール基と結合するため、導電性弾性層と表面処理層とが強固に結合する。このため、アルコキシシリル基を有するシラン系カップリング剤を含む表面処理液を含浸させて形成した表面処理層12aは、耐フィルミング性に優れたものとなる。なお、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、活性水素を有するとイソシアネート化合物と容易に反応して安定性に乏しくなるため、イソシアネート基を有するものであるのが好ましい。クロロシリル基を有するシランカップリング剤を含む表面処理液を含浸すると、加水分解により、イソシアネート化合物と反応すると共に導電性弾性層のシラノール基と結合するため、導電性弾性層と表面処理層とが強固に結合する。
また、表面処理液は、さらにシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含んでいてもよい。ここでいうシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物とは、シリコーンゴムと相性がよく、カップリング剤、シリコーンゴム、イソシアネート化合物等と反応し得る化合物を指し、これらのうちの2種以上と反応し得る化合物が好ましい。カップリング剤やイソシアネート化合物、シリコーンゴム等と化学的に結合することで、より強固な表面処理層を形成することができるためである。また、かかる反応性化合物を含むことにより、シリコーンゴムとの相溶性が低いイソシアネート化合物のみからなる表面処理液を用いた場合と比べて、このシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含む表面処理液は、弾性層に含浸しやすく、比較的厚い表面処理層を容易に形成することができるためである。
また、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物のSP値(溶解度パラメーター値)は、シリコーンゴムのSP値との差が2.5以下であるのが好ましい。シリコーンゴムとのSP値が近い化合物は、シリコーンゴムを含むゴム基材からなる弾性層に含浸しやすいためである。
シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物は、例えば、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、エポキシ基等を有しているのが好ましい。カップリング剤やイソシアネート化合物と化学的に結合することで、より強固な表面処理層を形成することができるためである。また、ブリードの発生する虞がないものとなるためである。
また、上述したシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物の分子量は、100〜10000であることが好ましく、特に100〜2000であることが好ましい。分子量が100〜10000の化合物は、弾性層の内部に含浸しやすく、より弾性層と表面処理層とが強固に結合したものとなるためである。
シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物としては、ケイ素含有化合物、炭化水素化合物等が挙げられるが、特に、ケイ素含有化合物が好ましい。ケイ素含有化合物としては、有機シラン化合物、シロキサン結合を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ケイ素含有化合物としては、シロキサン結合を有する化合物、有機シランが挙げられる。
シロキサン結合を有する化合物としては、末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、ジメチルシロキサンプレポリマー、縮合型および付加型の液状シリコーン、アクリルシリコーン系ポリマー等が挙げられる。
末端変性ポリジメチルシロキサンや側鎖変性ポリジメチルシロキサンは、シリコーンゴムとの相溶性に優れており、弾性層の内部まで含浸して、柔軟性に富み、耐フィルミング性に優れた表面処理層を形成することができる。末端変性ポリジメチルシロキサンや側鎖変性ポリジメチルシロキサンは、末端や側鎖に、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基等を有しているのが好ましく、これらの官能基がゴム弾性体、イソシアネート化合物、カップリング剤等と反応して導電性弾性層に固定化されることにより、より耐フィルミング性に優れた表面処理層を形成することができる。このとき、イソシアネート化合物と、上述した官能基の活性水素のモル比は、1以上となるように配合するのが好ましい。
ジメチルシロキサンプレポリマーは、ポリジメチルシロキサンとウレタンとを予め反応させることにより得られるものである。かかるジメチルシロキサンプレポリマーは、表面処理層内で表面側に多く存在(偏在)し、表面側が弾性に富んだものとなることにより耐久性が向上し、耐フィルミング性により優れた表面処理層とすることができる。
アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。アクリルシリコーン系ポリマーを配合することにより、耐フィルミング性を向上することができる。
また、有機シランとしては、イソシアネートシラン、ケイ酸塩、アルコキシシラン、クロロシラン等が挙げられ、特にイソシアネートシランが好ましい。イソシアネートシランは、シリコーンゴムとの相溶性が高いだけではなく、有機溶剤中では非常に安定であるが、酸やアルカリ触媒を用いなくとも大気中の水分や溶剤中の水分により加水分解してシラノール基を生成しやすく、これがカップリング剤との反応点となる。このため、イソシアネートシランとカップリング剤を併用することにより、イソシアネート化合物を弾性層のより内部に固定化することができる。イソシアネートシランは、弾性層に含浸すると、大気中の水分により加水分解してシラノール基となる一方、イソシアネートシラン同士がゾル−ゲル反応により粒子化又は網目化して弾性層に固定化される。そして、未反応のシラノール基が、カップリング剤と反応して結合する。これにより、弾性層と表面処理層とをより強固に結合することができる。カップリング剤とイソシアネートシランとを含む表面処理液を用いた場合、硬度を上昇させることなく、より耐フィルミング性に優れた導電性ゴム部材とすることができる。
表面処理液は、勿論、上述したシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を複数種含むものであってもよい。
また、表面処理液には、ポリエーテル系ポリマーを含有させてもよい。ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶剤に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有して、イソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。
活性水素を有する好適なポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。ここでいうエピクロルヒドリンゴムは未加硫状態のものを指す。エピクロルヒドリンゴムは、表面処理層に導電性と共に弾性を付与することができるため好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムは、末端に活性水素(水酸基)を有しているが、ユニットに水酸基、アリル基などの活性水素を有しているものも好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
活性水素を有する他の好適なポリエーテル系ポリマーとしては、水酸基又はアリル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリオール、グリコール等が挙げられる。このようなポリエーテル系ポリマーは、活性水素を有する基を両末端に備えたものよりも片末端にのみ備えたものが好ましい。また、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。表面処理層に弾性を付与することができるためである。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。
このように表面処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、表面処理層の柔軟性や強度が向上し、その結果、所望の導電性ゴム部材の表面が摩耗したり、当接する感光体表面を傷つけたりする虞がなくなる。
また、表面処理液には、アクリルフッ素系ポリマーを含有させてもよい。
本発明の表面処理液に用いられるアクリルフッ素系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
また、表面処理液には、導電性付与材としてさらにアセチレンブラック、ケッチェンブラック、トーカブラック等のカーボンブラックを添加してもよい。表面処理液に用いられるカーボンブラックは、イソシアネート化合物に対して0〜40重量%であるのが好ましい。多すぎると脱落、物性低下等の問題が生じ好ましくないからである。
表面処理液に用いる有機溶剤は、イソシアネート化合物、カップリング剤、及び必要に応じて含有されるシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物等を溶解するものであれば、特に限定されないが、導電性弾性層に比較的含浸されやすく且つ導電性弾性層を膨潤させるものを用いるのが好ましく、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルエチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。
本発明の導電性ゴム部材は、イソシアネート化合物、カップリング剤、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物等が硬化することにより表面処理層が形成されたものであり、イソシアネート化合物、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物等の密度は、導電性弾性層の表面から内部に向かって漸小する(漸次疎になる)ようになっている。従って、表面への可塑剤等汚染物質のブリードを防ぐことができ、感光体への耐汚染性に優れた導電性ゴム部材となる。
また、導電性弾性層の表層部は、表面処理液の有機溶媒により膨潤されて導電性付与剤の連鎖が分断され、イソシアネート化合物、カップリング剤、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物等が硬化することにより、導電性付与剤の連鎖が分断されたまま固定化される。したがって、ピンホールリークが発生しない導電性ゴム部材となる。
本発明にかかる導電性ゴム部材は、例えば、ロールやブレード等に用いて好適なものである。
以下本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<ロールの製造>
電子伝導性シリコーンゴム(KE922E−U;信越化学工業社製)100質量部に、ケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル社製)10質量部を混練りし、有機過酸化物架橋剤(C−8A;信越化学工業社製)0.5質量部添加した。これを押出成形してシャフトを挿入し、シャフトと共に160℃で10分間プレス加硫した後、二次加硫を200℃×4時間行い、研磨することによりロール(処理前)を得た。
<ロールの表面処理>
このロールを、酢酸エチル100質量部にヘキサメチレンジイソシアネートA(デュラネート21S−75E;旭化成ケミカルズ社製)を18.2質量部溶解し、次いで、シランカップリング剤A(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE9007,信越化学工業社製)を1質量部溶解して表面処理液とした。25℃に保持した上記表面処理液に10分間浸漬した後、150℃で2時間加熱することにより、導電性ロールを得た。
(実施例2)
表面処理液の温度を35℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の導電性ロールを得た。
(実施例3)
酢酸エチルの代わりにトルエンを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の導電性ロールを得た。
(実施例4)
変性ポリジメチルシロキサンA(FM4411;チッソ社製)を20質量部添加し、イソシアネートAを16.9質量部とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の導電性ロールを得た。
(実施例5)
変性ポリジメチルシロキサンB(FMDA11;チッソ社製)を20質量部添加した以外は実施例1と同様にして実施例5の導電性ロールを得た。
(実施例6)
シランカップリング剤を0.5質量部とし、変性ポリジメチルシロキサンAの代わりに変性ポリジメチルシロキサンC(FM3311;チッソ社製)2質量部を用い、イソシアネートAを23.6質量部とした以外は実施例4と同様にして実施例6の導電性ロールを得た。
(実施例7)
メチルトリイソシアネートシランを1質量部添加した以外は、実施例4と同様にして実施例7の導電性ロールを得た。
(実施例8)
実施例1のシランカップリング剤Aの代わりにシランカップリング剤B(3−アミノプロピルトリエトキシシラン;KBE903,信越化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例8の導電性ロールを得た。
(実施例9)
ヘキサメチレンジイソシアネートB(GC;東京化成製)のイソシアネート基と、変性ポリジメチルシロキサンAの水酸基との活性水素比が2:1となるようにプレポリマーを調整した。実施例1の表面処理液に、上記プレポリマー20質量部を加えて表面処理液とした以外は、実施例1と同様にして実施例9の導電性ロールを得た。
(実施例10)
シリコーンゴムに湿式シリカを5質量部添加した以外は、実施例4と同様にして実施例10の導電性ロールを得た。
(比較例1)
実施例1のロール(処理前)を、100%応力が30kgf/cmであるポリウレタン樹脂100質量部を、テトラヒドロフラン900質量部に溶解したコーティング溶液によりコーティング処理を行い(特許第3814361号公報参照)、比較例1の導電性ロールを得た。
(比較例2)
シランカップリング剤Aを使用せず、イソシアネート化合物を16.9質量部とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の導電性ロールを得た。
(試験例1)電気抵抗測定
各実施例および各比較例の導電性ロールについて、電気抵抗値を測定した。図2に示すように、導電性ロール10をSUS304板からなる電極部材40の上に載置し、芯金11の両端に500g荷重をかけた状態で、芯金11と電極部材40との間の電気抵抗値を、常温常湿環境(N/N:25℃×55%RH)にて、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、このときの印加電圧はDC−10Vであった。結果を表1に示す。
(試験例2)耐フィルミング試験
感光体に各実施例および各比較例の導電性ロールを圧接させ、トナーを供給しながら50000回転させた後、クリーニングロールにて付着トナーを取り除き、フィルミングの有無を確認した。クリーニングが容易なものを○、クリーニングに時間を要したものを△、クリーニングしても付着したままのものを×とした。スチレン系レジン(6μm)、シリコーン系外部添加剤、0.6μm酸化チタンから構成されるデジタルトナー(コニカミノルタ社製)を使用した。
(試験例3)耐久強度確認試験
感光体に各実施例および各比較例の導電性ロールを圧接させ、トナーを供給しながら50000回転させた後、クリーニングロールにて付着トナーを取り除いた。導電性ロールの表層部が良好なものを○、傷が発生したものを△、剥がれたものを×として評価した。
Figure 0005317178
(結果のまとめ)
実施例1〜10及び比較例1〜2の導電性ロールは、電気抵抗値が3.0×10〜1.0×10Ωであった。
実施例1〜10の導電性ロール及び比較例2の導電性ロールは、いずれも耐フィルミング性に優れたものであったのに対し、比較例1の導電性ロールは、クリーニングに時間を要した。なお、試験例2において導電性ロールをさらに回転させたところ、シロキサン結合を有する化合物を用いた実施例4〜7の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに耐フィルミング性に優れるものであることがわかった。
また、HDIのみを含む表面処理液を用いた比較例1の導電性ロールは、耐久強度が不十分であったのに対し、HDI及びシランカップリング剤を含む表面処理液を用いた実施例1〜10の導電性ロールは、耐久強度が高かった。シランカップリング剤を用いることにより、弾性層と表面処理層とがより強固に結合したためであると考えられる。これに対し、コーティング層を形成した比較例1の導電性ロールは、耐久強度が不十分であった。
さらに、試験例3において導電性ロールをさらに回転させたところ、溶媒としてトルエンを用いた実施例3の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりも耐久性に優れるものであった。トルエンは、弾性層をより膨潤させることができ且つ溶媒揮発速度が遅いため、表面処理液成分は弾性層に深く含浸し、弾性層への含浸量も多くなるためであると考えられる。
実施例5の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに耐久性に優れるものであった。実施例5では、側鎖に水酸基を有するポリシロキサンはシリコーン基材から染み出しにくく、弾性層のより内部まで表面処理液が含浸して表面処理層を形成しているためであると考えられる。
実施例6の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに耐久性に優れるものであった。末端にアミノ基を有するポリシロキサンを用いることで、室温での反応性が高くなり、カップリング剤とイソシアネード化合物との反応性が高くなったためであると考えられる。
実施例7の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに耐久性に優れるものであった。イソシアネートシランを用いることで、カップリング剤と弾性層のシラノール基の結合量が増加し、弾性層と表面処理層がより強固に結合したためであると考えられる。
実施例8の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに耐久性に優れるものであった。イソシアネート化合物との反応性が高く、イソシアネート化合物と弾性層とが強固に結合したためであると考えられる。
本発明の導電性ゴム部材の一例としての導電性ロールの断面図である。 試験例1の測定方法を説明する図である。
符号の説明
10 導電性ロール
11 芯金
12 導電性弾性層
12a 表面処理層

Claims (8)

  1. シリコーンゴムを含むゴム基材に導電性を付与した導電性弾性層と、前記導電性弾性層の表層部に、イソシアネート化合物と、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤及びアルミネート系カップリング剤から選択される少なくとも1つである、前記イソシアネート化合物と反応するカップリング剤とを含む表面処理液を含浸することによって形成された表面処理層とを具備することを特徴とする導電性ゴム部材。
  2. 請求項1に記載の導電性ゴム部材において、前記カップリング剤は、アルコキシシリル基を有することを特徴とする導電性ゴム部材。
  3. 請求項1又は2に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液は、さらに、シリコーンゴムとの溶解度パラメーター値の差が2.5以下であり、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含み、
    前記反応性化合物は、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基及びエポキシ基から選択される少なくとも1つの官能基を有することを特徴とする導電性ゴム部材。
  4. 請求項3に記載の導電性ゴム部材において、前記反応性化合物は、有機シラン化合物及びシロキサン結合を有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素含有化合物であることを特徴とする導電性ゴム部材。
  5. 請求項4に記載の導電性ゴム部材において、前記シロキサン結合を有する化合物は、末端変性ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする導電性ゴム部材。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム基材は金属微粉末及び無機酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする導電性ゴム部材。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液は、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理層は、前記導電性弾性層の表面から内部に向かって漸次疎となるように形成されていることを特徴とする導電性ゴム部材。
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