JP2009086217A - ローラの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば電気抵抗率及び表面形状等の表面特性が均一なローラを製造することのできるローラの製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の固形成分を含有するコート層4を弾性層3の外周面に備えて成るローラ1を製造する方法であって、前記コート層4を形成するコート層形成高分子成分の溶液と、前記コート層4に含有される複数の固形成分それぞれを単独で分散させた複数の分散液とを混合して、コート層形成液を調製し、前記コート層形成液を、軸体の外周面に形成された弾性層3を備えたローラ原体の外周面に、塗布して、硬化することを特徴とするローラ1の製造方法。
【選択図】図1

Description

この発明は、ローラの製造方法に関し、さらに詳しくは、例えば電気抵抗率及び表面形状等の表面特性が均一なローラを製造することのできるローラの製造方法に関する。
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置に装着される各種ローラとしては、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラが挙げられる。
これらの各種ローラは、例えば、現像剤を担持及び/又は搬送する機能、又は、記録体等を担持及び/又は搬送する機能が要求されるから、通常、軸体の外周面に弾性層が形成されるが、例えば、図1に示されるように、現像剤又は記録体等を所望のように担持すると共に所望のように他の部材に供給することを目的として、弾性層3の外周面にコート層4が形成されることがある。
弾性層の外周面にコート層4を形成するには、これまで、コート層4を形成する樹脂又はゴム等と導電性付与剤等の添加剤とを溶媒に分散させた塗布液を調製し、この塗布液を弾性層3の外周面に塗工して硬化させる方法が採用されてきた。このような方法として、例えば、特許文献1には、「軸体を有するロール基体を準備するとともに,NCO/活性水素比が,当量比で,NCO/活性水素=2.5〜35の範囲となるよう下記の(a)および(b)成分とともに導電剤を配合した表面層形成用溶液を準備する工程と、上記ロール基体の外周に上記表面層形成用溶液を塗工する工程と、上記表面層形成用溶液を塗工したロール基体を加熱処理することにより,ロール基体の外周に表面層を形成するとともに,上記(b)成分のブロックを外しそのイソシアネート基と上記(a)成分の水酸基またはアミノ基を反応させて上記(a)成分を(b)成分により架橋する工程とを備えることを特徴とする低硬度導電性ロールの製法
(a)水酸基またはアミノ基を有する溶剤可溶性ポリマー。
(b)ブロックイソシアネート。」が記載されている。
また、特許文献2には、「ポリエチレングリコールとMDIを混合し、混合物に対してケッチェンブラックECを加え、全体としてトルエン5%溶液にした。この溶液をディッピングコートし、乾燥して、表層を形成した」と、記載され(0033欄等参照。)、特許文献3には、最外層は、「直鎖状ポリウレタンポリオールプレポリマーに、第二イソシアネートを添加し、溶媒で適宜希釈し、導電剤を分散させ、表面粗し材を分散させて、塗料を得る。得られた塗料を塗布することにより」、形成されることができると、記載されている(0014欄等参照。)。
これらの方法において、導電性付与剤に加えて、充填材、補強剤等の固形成分を塗布液に配合すると、形成されるコート層に固形成分の凝集物が散在するうえ、コート層の電気抵抗率がばらつき、コート層の表面状態が不均一になることがある。このように、コート層の表面状態が不均一になると、ローラとしての機能を十分に発揮することができなくなる。
特許第3873488号明細書 特開2001−12452号公報(特に、請求項3) 特開2006−133257号公報
この発明の課題は、例えば電気抵抗率及び表面形状等の表面特性が均一なローラを製造することのできるローラの製造方法を提供することに、ある。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、複数の固形成分を含有するコート層を弾性層の外周面に備えて成るローラを製造する方法であって、前記コート層を形成するコート層形成高分子成分の溶液と、前記コート層に含有される複数の固形成分それぞれを単独で分散させた複数の分散液とを混合して、コート層形成液を調製し、前記コート層形成液を、軸体の外周面に形成された弾性層を備えたローラ原体の外周面に、塗布して、硬化することを特徴とするローラの製造方法であり、
請求項2は、前記固形成分それぞれは、30μm以下の一次粒子径を有する粒子であることを特徴とする請求項1に記載のローラの製造方法であり、
請求項3は、前記コート層形成高分子成分は、ポリウレタン又はポリウレアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラの製造方法である。
この発明に係るローラの製造方法によれば、コート層に含有される複数の固形成分それぞれを凝集させることなく、コート層形成液に均一に分散させることができるから、形成されるコート層に均一に複数の固形成分それぞれを分散させることができると共に、コート層における電気抵抗率のばらつきを最小限に抑えることができる。したがって、この発明によれば、電気抵抗率及び表面形状が均一なローラを製造することのできるローラの製造方法を提供することができる。
この発明に係るローラの製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称する。)によって製造されるローラの一実施例としてのローラ1は、例えば、図1に示されるように、軸体2と軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備えている。
まず、ローラ1における軸体2、弾性層3及びコート層4並びにこれらを形成する材料及び組成物等について説明する。
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。
前記弾性層3は、軸体2の外周面に後述するゴム組成物を硬化して、円筒状に、形成されている。この弾性層3は、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3のJIS A硬度が前記範囲にあると、ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。ローラ1と被当接体との接触面積が増大し、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、弾性層3のJIS A硬度は、30〜60であるのがより好ましく、35〜55であるのが特に好ましい。JIS A硬度は、JIS K6301に準拠して測定することができる。
弾性層3は、1×10〜1×10Ω・cmの体積抵抗率(温度20℃、相対湿度50%)を有しているのが好ましい。弾性層3の体積抵抗率が前記範囲にあると、ローラ1の帯電特性が優れ、例えば、ローラ1を帯電ローラとして用いる場合には、像担持体を所望のように一様に帯電させることができ、また、現像ローラとして用いる場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。ローラ1の帯電特性がより一層優れる点で、弾性層3の体積抵抗率は、1×10〜1×10Ω・cmであるのがより好ましく、1×10〜7×10Ω・cmであるのが特に好ましい。弾性層3の体積抵抗率は、弾性層3に含まれる導電性付与剤の含有量等を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。弾性層3の体積抵抗率は、JIS K6911に規定された方法に準じて、印加電圧を100Vに設定して測定することができる。
弾性層3は、被当接体と均一な当接状態を確保することができ、又は、被当接体と弾性層3との均一な当接幅(ニップ幅とも称する。)を確保することができる点で、その厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は、弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、弾性層3の厚さを厚くしすぎると、弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮して、弾性層3の厚さは、30mm以下に調整するのが好ましく、20mm以下に調整するのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望の当接状態又は所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと各種添加剤を有していればよく、ゴムとして、例えば、シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。ゴム組成物に含有されるゴムは、これらの中でも、温度依存性及び圧縮永久歪が良好である点で、シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴムが特に好ましい。
シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴムは、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、この発明に好適に用いられる。シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴムは、液状タイプであっても、ミラブルタイプであってもよく、弾性層3の成形方法、弾性層3に要求される特性等に応じて、適宜選択することができる。
ゴム組成物に含有される各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、硬化剤、触媒、導電性付与剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、潤滑剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
前記導電性付与剤としては、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、所望により、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、弾性層3としたときに所望の電気抵抗率を示すように、適宜の含有量で添加される。例えば、ゴム組成物における導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して2〜80質量部とすることができる。
ゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、前記ゴム、所望により添加される導電性付与剤及び各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
ゴム組成物は、成形金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。ゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴムを含有するシリコーンゴム組成物については、後述する。
ローラ1を構成する前記コート層4は、後述する組成物を用いて弾性層3の外周面、又は、所望により、弾性層3の外周面に形成されるプライマー層の外周面に、薄肉円筒状に、形成される。コート層4は、後述する組成物で形成される場合には、通常、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜20μmの層厚を有しているのがより好ましい。
コート層4は、高分子化合物及び固形成分を含有する。コート層4に含有される高分子は、例えば、ポリウレタン及びポリウレア等が、極性を有する材料(例えば、カーボンブラックのカルボニル基、水酸基等)との親和性が高く、コート層4に含まれる固形成分例えば導電性付与剤等と強固に結びつき、適度な硬さと強度とを有するコート層4を形成することができる点で、好適に挙げられる。すなわち、コート層4を形成する組成物は、コート層4を形成する主成分であるコート層形成高分子成分として、ポリウレタン又はポリウレアを含有する。
コート層形成高分子成分としてのポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるポリウレタンであってもよく、ポリウレタンを形成することができるポリウレタン調製成分であってもよい。ポリウレタン調製成分は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物、及び、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよいが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが、コート層4の耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点で、好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添MDI、等が挙げられる。
ポリイソシアネートとして、これらのポリイソシアネートの他に、ブロック剤でイソシアネート基がブロックされたブロックポリイソシアネートが好適に使用される。ブロックポリイソシアネートは、常温での安定性が高く、加熱によってブロック剤が遊離してイソシアネート基が再生するため、取り扱いが容易である等の利点を有する。特に、湿度の高い夏場でも安定して反応し、さらには、アミノ基等の反応性の高い活性基を有する試薬とも併用することができるという利点を有する。前記ブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム類、メチルエチルケトオキシム類、3,5−ジメチルピラゾール類、アルコール類及びフェノール類等が挙げられる。また、ブロック剤として、イソシアネート類も挙げられ、この場合には、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートダイマー(ポリウレトジオン)となる。ブロック剤は、前記のいずれをも用いることができるが、溶剤との相溶性に優れる点で、ε−カプロラクタム類及びメチルエチルケトオキシム類が好適である。
ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブッロクポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.55であるのが、得られるポリウレタンにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、1.1〜1.4であるのがより好ましい。
コート層形成高分子成分としてポリオールとポリイソシアネートとの混合物を選択する場合には、前記組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
ポリウレタン調整成分としての前記プレポリマー及びコート層形成高分子成分としての前記ポリウレタンは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー及びポリウレタンであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマー及びポリウレタンは、所望により前記助剤等の存在下、ワンショット法又はプレポリマー法等によって、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して、得られる。
前記ポリウレタン調製成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。すなわち、前記組成物は、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールと、ポリイソシアネートとの混合物を含有するのが特に好ましい。
一方、コート層形成高分子成分としてのポリウレアは、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応して得られるポリウレアであってもよく、ポリウレアを形成することができるポリウレア調製成分であってもよい。ポリウレア調製成分は、例えば、ポリアミンとポリイソシアネートとの混合物、及び、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。
ポリアミンとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリアミンは、ポリウレアの調製に通常使用される、分子内に少なくとも2つのアミン基を有する各種のポリアミンであればよく、例えば、ジアミン、3価以上の多価アミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、及び、これらのアミノ基をブロック剤でブロックされたアミノ化合物(ブロックポリアミンと称することがある。)等が挙げられる。前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、トリエチレンジアミン(1、4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンとも称する。)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等)、脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等)、又は、これらの混合物等が挙げられる。前記3価以上の多価アミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又は、これらの混合物等が挙げられる。前記アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアミン、又は、これらの混合物等が挙げられる。前記アミノメルカプタンとしては、例えば、トリエタンチオールアミン、トリメタンチオールアミン、又は、これらの混合物等が挙げられる。前記アミノ酸としては、例えば、リジン、オルニチン、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、又は、これらの混合物等が挙げられる。前記ブロックポリアミンのアミノ基をブロックするブロック剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。また、ポリアミンがポリマーである場合は、ポリアミンは、多価炭化水素基、ポリエーテル類等から構成される主鎖にアミノ基が結合したポリマー等が挙げられる。
前記ポリアミンは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記ポリアミンは、高度に架橋され耐久性が優れる点で、ジアミン及び3価以上の多価アミンが好ましい。前記ポリアミンは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れ揮発性の点で、前記ポリアミンがポリマーである場合には、300〜7000の数平均分子量を有するのが好ましく、500〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
ポリアミンとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリイソシアネートは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの前記混合物における前記ポリイソシアネートと基本的に同様である。ポリイソシアネートは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリアミンとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリアミンに含まれるアミノ基の水素原子数(NH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブッロクポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/NH)が0.80〜1.55であるのが、得られるポリウレアにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/NH)は、適度な柔軟性と耐久性が得られる点で、1.10〜1.40であるのがより好ましい。
コート層形成高分子成分としてポリアミンとポリイソシアネートとの混合物を選択する場合には、前記組成物は、ポリアミン及びポリイソシアネートに加えて、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、反応停止剤等を含有してもよい。反応停止剤としては、例えば、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、及び、これらのアミノ基をブロック剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)でブロックしたモノアミン(例えば、ケチミン化合物、オキサゾリン化合物)等が挙げられる。
ポリウレア調整成分としての前記プレポリマー及びコート層形成高分子成分としての前記ポリウレアは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー及びポリウレアであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマー及びポリウレアは、所望により前記助剤等の存在下、ワンショット法、プレポリマー法等によって、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応して、得られる。
前記ポリウレア調製成分は、ポリアミンとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、3価以上の多価アミンとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。
コート層4を形成する組成物におけるコート層形成高分子成分の含有量は、1〜40質量%であるのが好ましく、4〜30質量%であるのが特に好ましい。前記組成物におけるコート層形成高分子成分の含有量が前記範囲内にあると、形成されるコート層4の厚さを前記範囲内に調整することができ、コート層4の強度が高くなるうえ、後述するコート層形成液の塗布性に優れ、さらには平滑なコート層4を形成することができる。
コート層4を形成する組成物は、前記コート層形成高分子成分に加えて、複数の固形成分を含有している。固形成分としては、例えば、弾性層3を形成するゴム組成物に含有される各種添加剤のうち固形状の添加剤が特に制限されることなく、挙げることができる。
これらの固形成分それぞれは、その一次粒子径が30μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが特に好ましい。固形成分の一次粒子径が前記範囲内にあると、ローラ1を現像ローラとして用いる場合には、必要量以上の現像剤を感光体等の像担持体に供給することがなく、また、コート層4の表面粗さを適切な範囲に調整することができ、4〜9μm程度の粒径を有する現像剤を適度に帯電させることができる。固形成分における一次粒子径の下限は特に限定されず、通常、30nm程度であればよい。固形成分の一次粒子径は、凝集していない単粒子の粒子径を意味し、一次粒子が複数個凝集して二次粒子を形成する。固形成分の一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡写真にて、任意の一次粒子50個の最大粒子径を測定し、それらの測定値を算術平均して、求めることができる。
これらの固形成分それぞれの組成物における含有量は、コート層4(ローラ1)に要求される特性、固形成分等の種類に応じて、適宜決定されるが、通常、1〜65質量%である。前記範囲であれば、固形成分を組成物中に均一に分散又は溶解させることができ、コート層4の表面特性が均一になるうえ、後述するコート層形成液の粘度が上昇しすぎることがなく、コート層形成液の塗布性に優れる。
この発明において、コート層4に含有される複数の固形成分の一例として、例えば、導電性付与剤及びシリカ系充填材が挙げられる。固形成分の1つとしてシリカ系充填材が前記組成物に含有されている場合には、シリカ系充填材としては、例えば、疎水性シリカ及び親水性シリカが挙げられ、コート層4の環境変動に優れる点で、疎水性シリカが好適に挙げられる。固形成分の1つとして導電性付与剤が前記組成物に含有されている場合には、導電性付与剤としては、前記弾性層3を形成するゴム組成物に含有される導電性付与剤を特に制限されることなく、挙げることができる。
前記組成物におけるシリカ系充填材の含有量は、コート層形成高分子成分100質量部に対して、1〜60質量部であり、5〜50質量部であるのが好ましく、6〜30質量部であるのが特に好ましい。シリカ系充填材の含有量が前記範囲にあると、コート層形成液の粘度が高くなりすぎず充填材を高度に分散させることができ、かつ、レベリング等の塗布不良が発生しないため、長期使用しても表面にひび割れ等が発生しない高強度のコート層4を形成することができる。前記組成物における導電性付与剤の含有量は、コート層形成高分子成分100質量部に対して、1〜50質量部であり、3〜40質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのが特に好ましい。導電性付与剤の含有量が前記範囲にあると、コート層形成液の粘度を適度な範囲に調整することができるうえ、コート層4の電気抵抗率を所望のように調整することができる。
この発明において、固形成分として、シリカ系充填材及び導電性付与剤に加えて、例えば、導電性付与剤及びシリカ系充填材以外の充填材が用いられてもよい。このような導電性付与剤にもシリカ系充填材にも相当しない充填材として、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、珪藻土等が挙げられる。前記組成物における導電性付与剤及びシリカ系充填材以外の充填材の含有量は、コート層形成高分子成分100質量部に対して、0.1〜60質量部であるのが好ましく、1〜50質量部であるのが特に好ましい。導電性付与剤及びシリカ系充填材以外の充填材の含有量が前記範囲にあると、コート層形成液の粘度が高くなりすぎず充填材を高度に分散することができ、かつ、レベリング等の塗布不良が発生しない、長期使用しても分散剤の分散不良部分から発生するコート層4表面にひび割れ等が発生しないうえ、コート層4の電気抵抗率を所望のように調整することができる。
次いで、この発明に係る製造方法について、説明する。
この発明に係る製造方法において、ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にコート層4を形成して、製造される。この発明に係る製造方法の特徴の1つは、コート層4を形成するコート層形成液の調製方法にある。すなわち、コート層形成液は、コート層4を形成する高分子の溶液と、コート層4に含有される複数の固形成分それぞれを単独で分散させた複数の分散液とを混合して、調製されることを特徴とする。
この発明に係る製造方法については、まず、軸体2が準備される。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により、例えば、図1に示される形状等の所望の形状に形成される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
次いで、この発明に係る製造方法においては、このようにして作製された軸体2の外周面に、前記ゴム組成物を硬化して、弾性層3を形成する。
弾性層3は、例えば、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、
ゴム組成物が後述する付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、ゴム組成物が後述する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。ゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は30分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で30〜70時間程度の硬化条件で、二次架橋してもよい。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。特に、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物によって弾性層3を形成した場合には、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を加熱硬化した後に、その表面が研磨、研削されるのがよい。
このようにして形成された弾性層3は、コート層4が形成される前に、前記プライマー層が形成されてもよい。プライマー層は、必要により前記材料を溶剤等に溶解し、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、弾性層3の外周面に前記材料を塗布し、前記材料に応じた加熱条件によって、前記材料を加熱硬化させる。
このようにして、軸体の外周面に形成された弾性層を備えたローラ原体が作製される。
次いで、この発明に係る製造方法においては、このようにして形成されたローラ原体の外周面、すなわち、ローラ原体における弾性層3又は所望により形成されたプライマー層(以下、弾性層3等と称する。)の外周面に、コート層形成液を塗工し、次いで、塗工されたコート層形成液を加熱硬化させて、コート層4を形成する。
コート層形成液の塗工は、例えば、コート層形成液を弾性層3等の外周面に塗工する塗布法、コート層形成液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、コート層形成液を弾性層3の外周面に等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。このようにして塗工されたコート層形成液を加熱硬化する方法は、コート層形成液の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、コート層形成液が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法等が挙げられる。コート層形成液を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に130〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、コート層形成液を弾性層3等の外周面に塗工することに代えて、コート層形成液を弾性層3等の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層されたコート層形成液を加熱する方法等が採用されることができる。
この発明に係る製造方法においては、コート層形成液は、コート層4を形成するコート層形成高分子成分の溶液と、コート層4に含有される複数の固形成分それぞれを単独で分散させた分散液とが混合されて、調製される。すなわち、コート層形成液は、複数の固形成分の種類ごとに複数の分散液が調製され、これら複数の分散液と、コート層形成高分子成分の溶液とが混合されて、調製される。このようにして、コート層形成液を調製すると、固形成分の一次粒子径にかかわらず、固形成分を凝集させることなく、複数の固形成分それぞれをコート層形成液中に均一に分散させることができる。例えば、ポリウレタン又はポリウレアを溶解したコート層形成高分子成分の溶液と、充填材を分散させた第1の分散液と、導電性付与剤を分散させた第2の分散液とがそれぞれ調製され、次いで、これらが、ボールミル、タンブラーミキサー等によって、混合されて、コート層形成液が調製される。
この発明に係る製造方法においては、固形成分は少なくとも2種類が用いられ、固形成分の分散液は少なくとも2種がそれぞれ調製される。したがって、前記した、複数の固形成分の一例においては、充填材を分散させた第1の分散液と、導電性付与剤を分散させた第2の分散液とを調製することになるが、この発明においては、3種以上の分散液がそれぞれ独立に調製され、これらがコート層形成高分子成分の溶液と混合されて、コート層形成液が調製されてもよい。
コート層形成高分子成分の溶液及び固形成分の分散液は、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒等に、コート層形成高分子成分及び複数の固形成分それぞれが溶解又は分散されて、調製される。
コート層形成高分子成分の溶液におけるコート層形成高分子成分の含有量は、1〜50質量%であるのが好ましく、5〜40質量%であるのが特に好ましい。コート層形成高分子成分の含有量が前記範囲内にあると、形成されるコート層4の厚さを前記範囲内に調整することができ、コート層4の強度が高くなるうえ、コート層形成液の塗布性に優れ、さらには平滑なコート層4を形成することができる。
分散液における固形成分の含有量は、コート層4(ローラ1)に要求される特性、固形成分の種類等に応じて、適宜決定されるが、通常、1〜60質量%である。前記範囲であれば、固形成分の種類によらずに、固形成分を凝集させることなく、コート層形成液に分散させることができる。
固形成分がシリカ系充填材である場合には、分散液におけるシリカ系充填材の含有量は、2〜40質量%であるのが好ましく、3〜30質量%であるのが特に好ましい。前記範囲であれば、シリカ系充填材を凝集させることなく、コート層形成液に分散させることができる。また、固形成分が導電性付与剤である場合には、分散液における導電性付与剤の含有量は、1〜30質量%であるのが好ましく、2〜25質量%であるのが特に好ましい。前記範囲であれば、導電性付与剤を凝集させることなく、コート層形成液に分散させることができる。
この発明においては、固形成分の分散液それぞれには、前記コート層形成高分子成分が分散又は溶解していてもよい。コート層形成高分子成分が分散又は溶解している、固形成分の分散液におけるコート層形成高分子成分の含有量は、比較的少ない方が好ましく、固形成分の含有量を100質量部としたときに、例えば、1〜130質量部であるのがよく、1〜25質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。このような分散液において、前記範囲でコート層形成高分子成分が分散又は溶解していると、コート層形成高分子が前記固形成分の表面に付着して、固形成分同士の凝集を防止することができる。
この発明に係る製造方法においては、コート層形成高分子成分の溶液は、コート層形成高分子成分のすべてが溶解する溶液としてもよいが、コート層形成高分子成分の硬化反応が進行せず、取扱性に優れる点で、コート層形成高分子成分の一部(例えば、ポリイソシアネート等の架橋剤又は硬化剤等)が溶解する溶液と、コート層形成高分子成分の残りの成分(例えば、ポリオール又はポリアミン等のモノマー又はオリゴマー等)が溶解する溶液とを、それぞれ、準備するのが好ましい。
コート層形成高分子成分の溶液と複数の分散液とが混合されるときの条件は特に限定されず、例えば、大気中室温で行うことができる。また、コート層形成高分子成分の溶液と複数の分散液との混合順は特に限定されないが、コート層形成高分子成分の溶液として、コート層形成高分子成分のうち例えば架橋剤又は硬化剤等が溶解する溶液を調製した場合には、この溶液を最後に混合するのが、コート層形成高分子成分の硬化を防止することができる点で、好ましい。
このようにコート層形成高分子成分の溶液と複数の分散液とが混合されてコート層4を形成する前記組成物が調整され、この組成物におけるコート層形成高分子成分及び固体成分の含有量は前記した範囲内にある。このようにして調製されたコート層形成液(すなわち、コート層4を形成する組成物)は、複数の固形成分が凝集することなく均一に分散しているから、弾性層3等の外周面に塗工する際の作業性(塗工性)に優れ、コート層形成液を容易に均一に塗工することができる。
このようにして、コート層形成液を硬化して製造されるローラ1は、電気抵抗率及び表面形状等の表面特性が均一なコート層4を備えている。
例えば、ローラ1は、均一な電気抵抗率を有している。より具体的には、ローラ1は、その最外層であるコート層4における外周面の周方向に等間隔に4等分した4つの測定点において、測定された最大の電気抵抗率と最小の電気抵抗率との比(電気抵抗率の比とも称する。)が1.30以下である。ローラ1(コート層4)における電気抵抗率のばらつきをより一層抑えることができる点で、前記電気抵抗率の比は、1.25以下であるのが好ましく、1.20以下であるのが特に好ましい。なお、前記電気抵抗率の比の下限は、理想的には、1.0である。
最大の電気抵抗率と最小の電気抵抗率との比は、図2に示されるように、電気抵抗計100(例えば、デジタル超高抵抗/微少電流計(商品名「R8340A」)、株式会社アドバンテスト製)を用いて測定することができる。具体的には、ローラ1を、軸体2の軸線方向からローラ固定治具103で挟持して固定し、4mmの軸線長さを有する円柱形状を成した第1の電極104(金属製)における側面を、ローラ1のコート層4に対して10g/cmの加重で押圧すると共に、第2の電極105(金属製)を軸体2の外周面に接続して、第1の電極104と第2の電極105とに500Vの電圧を1秒印加して、電気抵抗計100の値を読みとり、この値を前記測定点における電気抵抗率とする。この電気抵抗率の測定において、第1の電極104は、前記コート層4の軸線方向における任意の位置の周方向に等間隔に4等分した4つの測定点に順次押圧され、各測定点の電気抵抗率をそれぞれ測定する。このようにして測定された各測定点における電気抵抗率のうち最大値を最小値で除して、最大の電気抵抗率と最小の電気抵抗率との比を算出する。
ローラ1は、前記範囲の最大の電気抵抗率と最小の電気抵抗率との比を有していればよいが、ローラ1の電気抵抗率は、1.0×10〜1.0×10Ωであるのが好ましい。ローラ1が前記範囲の電気抵抗率を有していると、ローラ1の帯電特性に優れ、例えば、画像形成装置における現像剤担持体の一例である現像ローラとしてローラ1が使用される場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を確実に担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように確実に供給することができる。より一層帯電特性が優れる点で、電気抵抗率は、1.0×10〜5.0×10Ωであるのがより好ましく、1.0×10〜1.0×10Ωであるのが特に好ましい。
ローラ1の電気抵抗率は、弾性層3及び/又はコート層4に含まれる導電性付与剤の含有量を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。ローラ1の電気抵抗率は、図3に示されるように、電気抵抗計100(例えば、デジタル超高抵抗/微少電流計(商品名「R8340A」)、株式会社アドバンテスト製)を用いて測定することができる。具体的には、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、ローラ1のコート層4全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製の電極板101上に、電極板101表面にコート層4が接触するように、ローラ1を水平に置いて、ローラ1における軸体2の両端部近傍(各端部からの距離が等しくなる位置)それぞれに、500gの分銅102を垂下状態に固定し、電極板101を電気抵抗計100に接続すると共に電気抵抗計100の電極106(金属製)を軸体2の外周面に接続して、電極板101と電極106とにDC100Vの電圧を1秒印加して、電気抵抗計100の値を読みとり、この値をローラ1の電気抵抗率とする。
また、ローラ1は、均一な表面形状を有している。より具体的には、例えば、ローラ1のコート層4は、光学顕微鏡(倍率30倍程度)を用いて、コート層4の表面を複数箇所観察したときに、そのほとんどの観察視野内に、長軸の長さが0.8mmを超える固形成分の凝集物がほぼ存在することがない。
また、ローラ1は、コート層4の端部から2cm内側及び中央の外周面における十点平均粗さ(Rz)をそれぞれ3回ずつ測定し、測定された十点平均粗さ(Rz)の最大値と最小値との比が1.5以下である。ローラ1(コート層4)における表面形状のばらつきをより一層抑えることができる点で、前記十点平均粗さ(Rz)の比は、1.4以下であるのが好ましく、1.3以下であるのが特に好ましい。なお、前記十点平均粗さ(Rz)比の下限は、理想的には、1.0である。
ローラ1の十点平均粗さ(Rz)は、25℃、湿度50±5%の環境下において、JIS B 0601―1982に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、十点平均粗さ(Rz)を測定する。
前記弾性層3を形成する前記ゴム組成物のうち好ましいシリコーンゴム組成物として、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。
SiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
前記(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
また、このオルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。このオルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。このオルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。また、このオルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は、好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
前記(B)充填材は、特に限定されないが、シリカ系充填材を用いることができる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。シリカ系充填材の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、11〜39質量部であるのが好ましく、15〜35質量部であるのが特に好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径としては、1〜80μmであるのが好ましく、2〜40μmであるのが特に好ましい。シリカ系充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
前記(C)導電性材料は、前記充填材(B)に属さない導電性材料であり、物理的化学的に同一材料からなるものであっても、充填材(B)として規定されシリカ系充填材と形態及び状態等が異なる導電性材料は、(C)導電性材料に属する。このような導電性材料は、導電性付与成分であり、例えば、前記導電性付与剤が挙げられ、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電性材料は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、また、必要に応じて種々の化合物を含有させることができる。例えば、種々の化合物又は添加剤として、硬化剤及びシリカ微粉末等が挙げられる。
前記硬化剤としては、公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び、有機過酸化物が挙げられる。前記白金系触媒としては、公知の触媒を使用することができ、具体的には、白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックス等が挙げられる。白金系触媒の含有量は、有効量、いわゆる触媒量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサンに対して、白金族金属換算で1〜2,000ppmとするのが好ましい。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、その重合度は300以下が好ましく、ジメチルハイドロジエンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、末端がトリメチルシロキシ基でジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジエンシロキサン単位からなる共重合体、ジメチルハイドロジエンシロキサン単位(H(CHSiO1/2とSiO単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジエン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。オルガノハイドロジエンポリシロキサンの含有量は、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられるのが好ましい。
前記有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物の含有量は有効量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましい。
前記シリカ微粉末は、機械的強度の優れた弾性層3を得るために好適であり、この目的のためにはBET比表面積が10m/g以上、好ましくは50〜400m/gのシリカ微粉末を用いるのが好ましい。このようなシリカ微粉末としては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降性シリカ(湿式シリカ)等が挙げられ、煙霧質シリカが好ましい。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物にシリカ微粉末を添加する場合には、シリカ微粉末の含有量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、5〜100質量部であるのが好ましく、5〜90質量部であるのがより好ましく、10〜50質量部であるのが特に好ましい。含有量が5質量部未満では所望の補強効果が得られないことがあり、100質量部を超えると加工性が悪くなることがある。また、シリカ微粉末の平均粒子径としては、1〜80nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのが特に好ましい。シリカ微粉末の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、また、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤として、例えば、着色剤、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度がオルガノポリシロキサン(A)よりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール、α,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋反応等を阻害しない硬化又は未硬化の各種オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
前記(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
SiO(4−a)/2 (2)
ここで、前記平均組成式(2)におけるRは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
前記Rは、前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)のRで例示した、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した炭化水素基等が挙げられる。Rの少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。
オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。
前記(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
SiO(4−b−c)/2 (3)
ここで、前記平均組成式(3)におけるRは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
前記(F)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm、好ましくは0.15〜0.45g/cmである。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cmより小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
このような無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
無機質充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。
前記(G)導電性付与剤は、前記導電性付与剤と同様であり、その配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
前記(H)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。
この発明に係るローラの製造方法は、前記内容に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る製造方法において、固形成分の一例として、具体的には、シリカ系充填材及び導電性付与剤を用いて説明したが、この発明において、固形成分は、これらに限定されることなく、種々の固形成分を用いることができる。
また、この発明に係る製造方法の前記例において形成されるコート層4は1層構造であるが、この発明に係るローラの製造方法において形成されるコート層は、1層構造である必要はなく、2層以上の積層構造であってもよい。この場合には、最外層のみをこの発明に係る製造方法に従って形成してもよく、コート層を構成する各層をこの発明に係る製造方法に従って形成してもよい。
このように、この発明によれば、表面状態の均一性に優れたローラのコート層を形成することができる。したがって、この発明に係る製造方法によって製造されるローラは、画像形成装置に装着される各種ローラ、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、二次転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等として好適に用いられ、特に、現像ローラとして好適に用いられる。
(実施例1〜7並びに比較例1及び2)
まず、分散液(S1〜S5、C1及びC2並びにR1及びR2)、コート層形成高分子成分の溶液(P1〜P3)をそれぞれ調製した。
シリカ系充填材(商品名「SP−30B」、一次粒子径0.3μm、扶桑化学工業株式会社製)10質量部と酢酸エチル90質量部とを混合して、シリカ系充填材の濃度が10質量%の分散液(S1)を調製した。同様にして、シリカ系充填材(商品名「SP−1B」、一次粒子径5μm、扶桑化学工業株式会社製)の濃度が10質量%の分散液(S2)、及び、シリカ系充填材(商品名「SP−4B」、一次粒子径25μm、扶桑化学工業株式会社製)の濃度が10質量%の分散液(S3)を、それぞれ調製した。さらに、シリカ系充填材(商品名「SP−1B」)15質量部と、ポリオール(商品名「タケラックU27」)15質量部と、酢酸エチル70質量部とを混合して、シリカ系充填材の濃度が15質量%及びポリオールの濃度が15質量%の分散液(S4)を調製した。さらに、シリカ系充填材(商品名「NA−R」、一次粒子径85μm、日本シリカ株式会社製)10質量部と、酢酸エチル90質量部とを混合して、シリカ系充填材の濃度が10質量%の分散液(S5)を調製した。
また、導電性付与剤(商品名「トーカブラック#5500」、一次粒子径25nm、東海カーボン株式会社製)15質量部と酢酸エチル85質量部とを混合して、導電性付与剤の濃度が15質量%の分散液(C1)を調製した。同様にして、導電性付与剤(商品名「トーカブラック#4300」、一次粒子径55nm、東海カーボン株式会社製)の濃度が15質量%の分散液(C2)を調製した。
シリカ系充填材(商品名「SP−1B」)10質量部と、導電性付与剤(商品名「トーカブラック#5500」)15質量部と、酢酸エチル75質量部と混合して、シリカ系充填材の濃度が10質量%及び導電性付与剤の濃度が15質量%の分散液(R1)を調製した。同様にして、シリカ系充填材(商品名「SP−4B」)10質量部と、導電性付与剤(商品名「トーカブラック#4300」)15質量部と、酢酸エチル75質量部と混合して、シリカ系充填材の濃度が10質量%及び導電性付与剤の濃度が15質量%の分散液(R2)を調製した。
ポリオール(商品名「タケラックU27」、水酸基価140、三井武田ケミカル株式会社製)10質量部と酢酸エチル90質量部と混合して、ポリオールの濃度が10質量%の溶液(P1)を調製した。また、ポリアミン(商品名「ジェファーミンD2000」、アミン価56.1、サンテクノケミカル株式会社製)40質量部と酢酸エチル60質量部と混合して、ポリアミンの濃度が40質量%の溶液(P2)を調製した。さらに、イソシアネート(商品名「タケネートD170N」、NCO価20.7、三井武田ケミカル株式会社製)30質量部と酢酸エチル70質量部と混合して、イソシアネートの濃度が30質量%の溶液(P3)を調製した。
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
一方、メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名「KE−76VBS」、信越化学工業株式会社製)20質量部と、カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部と、煙霧質シリカ系充填材(商品名「AEROSIL OX−50」、平均一次粒径40nm、嵩密度1.3g/cm、日本アエロジル株式会社製)15質量部と、白金系触媒(商品名「C−19A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−19B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とを混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
次いで、プライマー層を形成した軸体2と前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物とを、クロスヘッド型押出成形機にて一体分出し、ギヤオーブンを用いて、250℃、30分間加熱した。その後、さらに、ギヤオーブンを用いて、200℃で4時間にわたって、二次加熱し、常温にて24時間放置した。次いで、円筒研削盤にて、形成した弾性層3の直径が18mmとなるように、弾性層3の表面を研磨した。
次いで、弾性層3の表面に、シリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.19」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。
次いで、前記コート層調製成分の溶液及び前記各種分散液を、表1に記載の組合せ及び混合割合(質量部)に従って、室温で、混合して、コート層形成液を調製した。実施例1〜5及び比較例1、2におけるNCO/OHは1.7であり、実施例6におけるNCO/NHは1.7であり、実施例7におけるNCO/OHは1.7であった。調整したコート層形成液の塗布液をプライマーが塗布された弾性層3の表面にスプレーコーティング法によって、一回塗布し、150℃で30分間加熱し、層厚10μmのコート層4を形成した。このようにして、ローラ1を製造した。
このようにして製造した各ローラの電気抵抗率、及び、最大の電気抵抗率と最小の電気抵抗率との比(表1において、「電気抵抗率の比」と標記する。)を、前記方法に従って測定し、算出した。また、製造した各ローラの十点平均粗さ(Rz)を前記方法に従って測定し、最大値と最小値との比(表1において、「十点平均粗さの比」と標記する。)を算出した。さらに、形成されたコート層4におけるシリカ系充填材及び/又は導電性付与剤の凝集物の有無を光学顕微鏡(倍率30倍)又は目視にて、確認した。凝集物の有無の評価は、複数箇所の観察視野のすべてにおいて、凝集物が確認できなかった場合を「◎」、複数箇所の観察視野のうち一部に0.1mm未満の凝集物が数個確認できた場合を「○」、複数箇所の観察視野のうち一部に0.1〜0.2mmの凝集物が数個確認できた場合を「□」、複数箇所の観察視野のうち一部に0.2mmを超える凝集物が多数確認できた場合を「△」、複数箇所の観察視野のほとんどに目視で確認できるほどの凝集物が存在していた場合を「×」とした。凝集物の有無の評価が「△」以上であれば、画像形成装置用のローラとして許容される。その結果を表1に示す。なお、各ローラの弾性層3におけるJIS A硬度、体積抵抗率(温度20℃、相対湿度50%)を前記方法に従って測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2009086217
図1は、この発明に係るローラの製造方法によって製造されるローラの一例を示す斜視図である。 図2は、ローラの電気抵抗率の比を算出する方法を説明する説明図である。 図3は、ローラの電気抵抗率を測定する方法を説明する説明図である。
符号の説明
1 ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 コート層
100 電気抵抗計
101 電極板
102 分銅
103 ローラ固定治具
104 第1の電極
105 第2の電極
106 電極

Claims (3)

  1. 複数の固形成分を含有するコート層を弾性層の外周面に備えて成るローラを製造する方法であって、
    前記コート層を形成するコート層形成高分子成分の溶液と、前記コート層に含有される複数の固形成分それぞれを単独で分散させた複数の分散液とを混合して、コート層形成液を調製し、
    前記コート層形成液を、軸体の外周面に形成された弾性層を備えたローラ原体の外周面に、塗布して、硬化することを特徴とするローラの製造方法。
  2. 前記固形成分それぞれは、30μm以下の一次粒子径を有する粒子であることを特徴とする請求項1に記載のローラの製造方法。
  3. 前記コート層形成高分子成分は、ポリウレタン又はポリウレアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラの製造方法。
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