JP5240766B2 - 発泡ゴム部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発泡ゴム部材の製造方法に関する。かかる発泡ゴム部材は、複写機、ファクシミリ、各種プリンター等の各種OA機器等の各種給紙・搬送を行う給紙搬送用ロールや、画像形成装置に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロール、導電性ロール等に用いて特に好適なものである。
各種OA機器の帯電ロール、転写ロール、現像ロール、あるいは給紙・搬送用のロールは、接触する部材、例えば、感光体等を傷つけることがないように、低硬度化が求められている。従来、このようなロールには、EPDMゴムが用いられてきた(特許文献1、2等参照)。しかしながら、これらの文献にあるように、ソリッドゴムで低硬度化を図る場合には、軟化剤を多量に添加する必要があり、ブリードによる汚染や耐久性の面で問題がある。
一方、スポンジ、すなわち、発泡体を用いてロールを低硬度とすることがある。スポンジロールは、低硬度化が比較的容易であり、また、軽量化することができ、耐紙粉性にも優れる。しかしながら、スポンジロールは、長期間使用すると画像不良を起こしたり(帯電・転写ロール)、搬送力が低下したり(給紙・搬送用ロール)という問題が発生することがあった。
また、ウレタンフォーム層表面にイソシアネート化合物を塗布含浸させたトナー供給ローラが提案されている(特許文献3参照)。このローラは、低硬度であり、ローラ表面に未反応ポリオール成分の染み出しがないものであったが、対向部材に圧接して長時間使用される状況においては、耐久性の面で満足が得られるものではなかった。
また、従来よりもさらに耐汚染性に優れるものが求められている。
特開平5−77508号公報 特開平7−242779号公報 特開2008−15008号広報
本発明は、このような事情に鑑み、耐摩耗性・耐汚染性に優れた発泡ゴム部材の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、ゴム基材を発泡して発泡弾性体を成形し、前記発泡弾性体にイソシアネート化合物と有機溶媒とを含有する処理液を当該発泡弾性体の内部全体に浸透させた後、前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御し、少なくとも前記イソシアネート化合物を硬化させて発泡ゴム部材を成形することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を圧縮変形することにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を高速回転させることにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体をエアブローすることにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡ゴム部材は、単位体積当たりの質量増加量が、0.005〜0.05g/cmとなるように成形することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体の肉厚の50%以上まで前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を圧縮変形させながら前記処理液に浸漬させることにより、前記発泡弾性体に前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第8の態様は、第1〜6の何れかの態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を前記処理液に長時間浸漬させることにより、前記発泡弾性体に前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記処理液は、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びポリエーテル系ポリマーから選択される少なくも1種を含有することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法にある。
本発明によると、耐摩耗性・耐汚染性に優れた発泡ゴム部材の製造方法を提供することができる。
本発明では、ゴム基材を発泡して発泡弾性体を成形し、発泡弾性体にイソシアネート化合物と有機溶媒とを含有する処理液を浸透させた後、発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御し、少なくともイソシアネート化合物を硬化させることにより、発泡ゴム部材を得る。この方法によれば、イソシアネート化合物等を発泡弾性体の内部まで浸透させた後に余分な処理液を除去して、硬度を大きく上昇させることなく、耐摩耗性及び耐汚染性に優れた発泡ゴム部材を製造することができる。すなわち、ある程度の低硬度性を維持しつつ、耐摩耗性・耐汚染性に優れた発泡ゴム部材を製造することができる。
本発明の発泡ゴム部材の製造方法は、発泡弾性体を成形した後、所定の含浸処理を行うというものである。ここでいう含浸処理とは、発泡弾性体に処理液を浸透させた後、有機溶剤を除去し、イソシアネート化合物等の含有成分を硬化させる処理のことであり、具体的な方法は後述する。発泡弾性体に含浸したイソシアネート化合物が、他のイソシアネート化合物、他の含有成分(フッ素系ポリマー等)、発泡弾性体を構成するゴム基材などと反応し、これらの架橋構造が発泡弾性体の内部に形成される。これにより、処理液を含浸させる前の発泡弾性体に比べて、耐摩耗性が向上したゴム部材が形成される。かかるゴム部材は、処理液が弾性体の内部まで含浸していることにより、所定の押圧加重において変形した場合に、弾性体内部の未反応成分や導電性付与材などが表面まで溶出する虞がなく、耐汚染性に優れたものとなる。
以下、本発明の発泡ゴム部材の製造方法について説明する。
まず、ゴム基材を発泡して発泡弾性体を形成する。ゴム基材は、特に限定されず、例えば、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。これらのゴム基材は併用してもよく、用途・目的に応じて、種類、組み合わせを適宜選択する。上述したようにゴム基材は特に限定されないが、処理液に用いる有機溶剤の浸透性が高いゴム基材から成形されたものを用いることで、発泡弾性体の内部まで処理液が浸透しやすくなる。
また、発泡弾性体は、導電性付与剤により導電性が付与されていてもよい。導電性付与剤としては、カーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して用いることができる。カーボンブラックは種々の性質を持ったものがあるが、カーボン微粉末を用いるのが好ましい。なお、カーボンブラックを添加して発泡弾性体を成形する場合は、カーボンブラックを十分に分散させることが好ましい。カーボンブラックの分散性が不良であると、成形される発泡弾性体の圧縮永久歪みが大きくなりやすいためである。また、カーボンブラックを多量に添加する場合には、圧縮永久歪みに影響を与え難い、例えば、吸油量が小さいもの、粒径が大きいもの、ストラクチャーを形成し難いものなどを用いるのが好ましい。イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたものを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載されたものを挙げることができる。
ゴム基材にカーボンブラックを添加して成形する場合は、カーボンブラックの分散状態を保持したまま加熱硬化させて成形する。これにより、固有抵抗として0.1〜10Ωcm程度を示すカーボンブラックをゴム基材に分散させて104〜108Ωcmの中抵抗領域を安定になるように形成することができる。
また、上述したゴム基材には、必要に応じて添加される導電性付与剤の他に、発泡剤、発泡助剤、加硫剤、加硫促進剤、充填剤等を混合して、発泡弾性体を成形してもよい。
発泡弾性体は、連続気泡でも独立気泡でもよいが、連続気泡が好ましい。発泡弾性体が連続気泡であることで、処理液が発泡弾性体に浸透しやすく、より耐摩耗性・耐汚染性に優れた発泡ゴム部材を成形することができる。
次に、成形した発泡弾性体にイソシアネート化合物と有機溶媒とを含有する処理液を浸透させる。
このとき、処理液は、少なくとも発泡弾性体の表層部に浸透させればよいが、発泡弾性体の内部まで浸透させるのが好ましい。処理液を発泡弾性体の径方向の内部まで含浸させることにより、所定の押圧加重で変形した際に発泡弾性体内部の未反応成分や導電性付与材などが表面まで溶出する虞がないものとなる。また、処理液を含浸させる前の発泡弾性体に比べて、耐久性に優れたものとなる。また、発泡弾性体の内部まで処理液を浸透させることにより、従来の発泡ゴム部材のように(特許文献3)、発泡弾性体の表面近傍のみに表面処理層が設けられて、所定の押圧加重において表面と内部との変形量に大きな差がでてしまうことがない。
処理液は、具体的には、発泡ゴム部材を使用する際に変形してニップを形成する領域以上まで浸透させるのが好ましい。例えば、発泡弾性体の肉厚の50%以上まで処理液を浸透させるのが好ましく、発泡弾性体の肉厚の80%以上まで処理液を浸透させるのがさらに好ましい。処理液を浸透させる方法は特に限定されないが、処理液に長時間浸漬させたり、処理液に発泡弾性体を圧縮変形しながら浸漬させたりする方法が挙げられる。
ここで、処理液は、イソシアネート化合物及び有機溶媒を少なくとも含有するもの、言い換えれば、有機溶剤に少なくともイソシアネート化合物を溶解させたものである。
処理液に含まれるイソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)等のイソシアネート化合物、および前記の多量体および変性体などを挙げることができる。さらに、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマーを挙げることができる。
また、処理液には、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーから選択される少なくも1種を含有させてもよい。これらのポリマーを処理液に配合することで、例えば、発泡ゴム部材を給紙ロール等に適用した場合に、トナー・紙粉等の付着を抑えることができる。これにより、発泡ゴム部材の表面のセルの目詰まりが抑えられ、発泡ゴム部材の特性を長期間に亘って維持することができる。
フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーは、所定の有機溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものであるのが好ましい。フッ素系ポリマーとしてはアクリルフッ素系ポリマーが挙げられ、シリコーン系ポリマーとしてはアクリルシリコーン系ポリマーが挙げられる。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
また、処理液には、ポリエーテル系ポリマーを含有させてもよい。ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶剤に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有して、イソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。
活性水素を有する好適なポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。ここでいうエピクロルヒドリンゴムは未加硫状態のものを指す。エピクロルヒドリンゴムは、発泡弾性体に導電性と共に弾性を付与することができるため好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムは、末端に活性水素(水酸基)を有しているが、ユニットに水酸基、アリル基などの活性水素を有しているものも好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
活性水素を有する他の好適なポリエーテル系ポリマーとしては、水酸基又はアリル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリオール、グリコール等が挙げられる。このようなポリエーテル系ポリマーは活性水素を有する基を両末端に備えたものよりも片末端にのみ備えたものが好ましい。また、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。発泡弾性体に弾性を付与することができるためである。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、発泡ゴム部材の柔軟性や強度が向上し、その結果、発泡ゴム部材の表面が摩耗したり、当接する部材を傷つけたりする虞がなくなる。
処理液には、さらに、導電性付与材として、上述したカーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して添加してもよい。
また、処理液中のフッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーは、イソシアネート化合物100質量部に対し、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーの総量を2〜30質量部配合するのが好ましい。2質量部より少ないとカーボンブラック等を発泡ゴム部材に保持する効果が小さくなる。一方、ポリマー量が30質量部より多いと、発泡ゴム部材の電気抵抗値が上昇し放電特性が低下するという問題や、相対的にイソシアネート化合物が少なくなって有効な含浸処理ができないという問題がある。
ゴム基材としてシリコーンゴムを用いる場合は、処理液がシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含んでいるのが好ましい。シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物とは、シリコーンゴムと相性がよく、シリコーンゴムや、イソシアネート化合物と反応し得る化合物をいう。シリコーンゴムとの相溶性が低いイソシアネート化合物のみ含有する処理液を用いた場合と比べて、このシリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物を含む処理液は、弾性層に浸透しやすい。反応性化合物としては、ケイ素含有化合物、炭化水素化合物等が挙げられるが、特に、ケイ素含有化合物が好ましい。ケイ素含有化合物としては、シロキサン結合を有する化合物、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、クロロシリル基あるいはシラザンを有する機能性シラン、シリル化剤等が挙げられ、シロキサン結合を有する化合物、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。シロキサン結合を有する化合物としては、末端変性ジメチルシロキサン、縮合型および付加型の液状シリコーン、ケイ酸塩、上述したアクリルシリコーン系ポリマー等が挙げられる。なお、勿論、シロキサン結合を有する化合物が、末端にアルコキシシリル基を有していてもよい。また、シリコーンゴムと相溶性のある反応性化合物は、イソシアネート化合物と反応するものであることが好ましく、例えば、水酸基、アミノ基、イソシアネート基等を有しているのが好ましい。イソシアネート化合物と化学的に結合することで、より機械的特性に優れたゴム部材を形成することができるためである。また、ブリードの発生する虞がないものとなるためである。ただし、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤の場合は、活性水素を有するとイソシアネート化合物と容易に反応して安定性に乏しくなるため、イソシアネート基を有するのが好ましい。
有機溶剤は、イソシアネート化合物、および必要に応じて含有されるこれらフッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマーを溶解するものであり、且つイソシアネート化合物と反応しないものであればよく、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルエチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等が挙げられる。有機溶媒は、発泡弾性体に浸透しやすいものが好ましく、発泡弾性体のゴム基材の種類にあわせて適宜選択するのが好ましい。
処理液の濃度は、発泡弾性体の機械的特性をある程度維持しつつ、耐摩耗性を向上させるように調整することが好ましい。処理液のイソシアネート化合物の濃度は、ゴム基材と有機溶媒の組み合わせ等によって多少異なるが、処理液のイソシアネート化合物の濃度が0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがさらに好ましい。浸透するイソシアネート化合物が多すぎると、発泡弾性体の内部に、後述する架橋構造が形成されすぎてしまい、処理液を含浸処理する前の発泡弾性体に比べて、硬度が大きく上昇したり、応力が上昇しゴム弾性が低下したりする虞がある。
次に、発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御する。ここでいう制御とは、発泡弾性体に浸透させた処理液のうち、余分な処理液を除去する処理のことであり、具体的には、発泡弾性体のセルの内部に留まっていた処理液、発泡弾性体の隔壁に過剰に含まれていた処理液、浸透しないで発泡弾性体表面に付着していた処理液等を除去する処理のことである。発泡弾性体に浸透させた処理液の量の制御は、発泡弾性体を圧縮変形したり、発泡弾性体を高速回転させたり、発泡弾性体をエアブローしたりすることにより行う。このように、余分な処理液を発泡弾性体から除去することにより、発泡弾性体の隔壁に所定量の処理液が浸透した状態となる。発泡弾性体の隔壁とは、いわゆるセルの壁面のことであり、発泡弾性体を構成するものである。この処理により、硬度を大きく上昇させることなく、耐摩耗性及び耐汚染性に優れた発泡ゴム部材を成形することができる。言い換えれば、従来の方法にように、発泡弾性体の内部に、後述する架橋構造が形成されすぎてしまい、処理液を含浸処理する前の発泡弾性体に比べて硬度が大きく上昇したり、応力が上昇してゴム弾性が低下するという虞がない。
最後に、発泡弾性体のイソシアネート化合物等の処理液の含有成分を硬化させる。硬化は、特に限定されず、イソシアネート化合物等を弾性層内部で硬化させることができるものであればよく、イソシアネート化合物等の凝固点以下の温度に冷却した後、雰囲気の水分により硬化させる方法や、減圧下で溶媒を揮発させた後、熱や水分により硬化させる方法があり、一般的には、常温乾燥後、必要に応じて加熱処理する。なお、このときの加熱温度は、例えば、40〜150℃である。この硬化において、処理液の有機溶媒が除去されると共に、発泡弾性体に浸透したイソシアネート化合物が、他のイソシアネート化合物、他の含有成分(フッ素系ポリマー等)、発泡弾性体を構成するゴム基材などと反応し、これらの架橋構造が発泡弾性体の内部に形成される。架橋構造が発泡弾性体の内部に形成されることにより、耐摩耗性が向上したものとなる。本発明では、硬化させる前に発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することにより、架橋構造が発泡弾性体の内部に過剰に形成されることがない。このため、発泡弾性体の低硬度性をある程度維持しつつ、耐摩耗性を向上させたものとすることができる。
上述した方法により、発泡ゴム部材は、単位体積当たりの質量増加量が、0.005〜0.05g/cmとなるように成形するのが好ましい。ここでいう単位体積当たりの質量増加量とは、発泡弾性体に所定の含浸処理をして発泡ゴム部材とした際の質量増加量を発泡弾性体の見かけの体積で割ることにより求められるものであり、以下の式より求められる。
Figure 0005240766
上述した方法により得られる発泡ゴム部材は、発泡体の機械的特性(例えば、低硬度で低比重、ゴム弾性)を維持しつつ、耐摩耗性・耐汚染性に優れたものとなる。
得られた発泡ゴム部材は、複写機、ファクシミリ、各種プリンター等の各種OA機器等の各種給紙・搬送を行う給紙搬送用ロールや、画像形成装置に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロール、導電性ロール、クリーニングブレード、弾性ベルト等に用いて特に好適なものである。
以下、実施例に基づいて本発明について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(発泡弾性体1)
3官能ポリエーテル系ポリオールであるMN−3050(三井化学ポリウレタン製)100質量部に水、整泡剤を添加・混合したものに、イソシアネート化合物であるコスモネートT−80(三井化学ポリウレタン社製)50質量部を添加・混合し、60℃に予熱した金型に注型して60分加熱することによりロールを得た。得られたロールを研磨、突っ切りし、内径φ6mm×外径φ18mm×幅320mmで発泡倍率20.0倍(密度:0.05g/cm)の発泡弾性体1を得た。
(発泡弾性体2)
エピクロルヒドリンゴム(ECO)を100質量部に、加硫剤として硫黄1.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)6.8質量部、発泡助剤として尿素化合物5.4質量部を添加してロールミキサーで混練りし、これを押出し成型してφ6mmのシャフトに装着し、160℃×1時間で加硫・発泡を行うことでロールを得た。得られたロールを研磨、突っ切りし、内径φ6mm×外径φ18mm×幅320mmで発泡倍率3.0倍(密度:0.33g/cm)の発泡弾性体2を得た。
(発泡弾性体3)
エピクロルヒドリンゴムの代わりにEPDMを用いた以外は、発泡弾性体2と同様に作製して、発泡倍率3.0倍(密度:0.33g/cm)の発泡弾性体3を得た。
(実施例1)
酢酸エチルにイソシアネート化合物(MDI)を添加混合し、1質量%濃度の処理液を作製した。次に、発泡弾性体1を径方向に回転させながら、25℃に保った処理液をスプレーで5回吹き付けて全体に浸透させた後、さらに圧縮しながら平板を転がすことで余分な処理液を除去した。その後、発泡弾性体1を1時間自然乾燥させ、120℃に保持されたオーブンでさらに1時間加熱させて、実施例1の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.007g/cmである。
(実施例2)
処理液の濃度を5質量%とした以外は、実施例1と同様に作製して、実施例2の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.032g/cmである。
(実施例3)
処理液の濃度を10質量%とした以外は、実施例1と同様に作製して、実施例3の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.047g/cmである。
(実施例4)
トルエンにイソシアネートプレポリマー(VIBRATHANE8585:ユニロイヤルケミカル社製)を添加混合し、5質量%濃度の処理液を作製した。次に、発泡弾性体1を径方向に回転させながら、25℃に保った処理液をスプレーで5回吹き付けて全体に浸透させた後、さらに回転させながらエアブローすることで余分な処理液を除去した。その後、発泡弾性体1を1時間自然乾燥させ、120℃に保持されたオーブンでさらに1時間加熱させて、実施例4の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.038g/cmである。
(実施例5)
トルエンにイソシアネート化合物(MDI)を添加混合し、1質量%濃度の処理液を作製した。次に、発泡弾性体2を25℃に保った処理液に30秒間浸漬させた後、発泡弾性体2を液面から引き上げ、さらに高速で回転させることで、余分な処理液を除去した。その後、発泡弾性体2を1時間自然乾燥させ、120℃に保持されたオーブンでさらに1時間加熱して、実施例5の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.009g/cmである。
(実施例6)
処理液の濃度を2質量%とした以外は、実施例5と同様に作製して、実施例6の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.021g/cmである。
(実施例7)
イソシアネートをイソシアネートプレポリマーとした以外は、実施例6と同様に作製して、実施例7の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.023g/cmである。
(実施例8)
発泡弾性体3を用いた以外は、実施例5と同様に作製して、実施例8の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.008g/cmである。
(実施例9)
処理液の濃度を2質量%とした以外は、実施例8と同様に作製して、実施例9の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.019g/cmである。
(実施例10)
イソシアネート化合物(MDI)の代わりにイソシアネートプレポリマーを用いた以外は、実施例9と同様に作製して、実施例10の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.021g/cmである。
(比較例1)
処理液の濃度を10%とし、圧縮しながら平板を転がす操作を行わない以外は、実施例1と同様に作製して、比較例1の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.079g/cmである。
(比較例2)
処理液の濃度を5%とし、高速で回転を行わない以外は、実施例5と同様に作製して、比較例2の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.106g/cmである。
(比較例3)
処理液の濃度を5%とし、高速で回転を行わない以外は、実施例8と同様に作製して、比較例3の発泡ゴムロールを得た。この発泡ゴムロールの単位体積当たりの質量増加量は0.081g/cmである。
(比較例4)
ウレタン塗料(ネオレッツR−940;楠本化成社製)を、スプレーで2回吹きつけてコーティング層を形成し、比較例4の発泡ゴムロールを得た。
(試験例1)機械的特性の評価
発泡弾性体1〜3、並びに各実施例及び各比較例の発泡ゴムロールを、肉厚方向に25%圧縮した時のゴム層にかかる応力を測定した。結果を表1〜3に示す。
(試験例2)耐久試験
各実施例及び各比較例の発泡ゴムロールを、NN環境(23%、55%RH)下、感光体に食込み量3mmで当接させて100000回転させた後、各発泡ゴムロールの外径変化量を測定し、発泡ゴムロール及び感光体の状態の観察を行った。結果を表1〜3に示す。
(試験例3)汚染試験
各実施例及び各比較例の発泡ロールを、HH環境(50℃、90%RH)下、感光体に食込み量3mmで当接させて14日間保持した後、感光体表面の汚染の有無を確認した。感光体表面が汚染されていなかった場合を○、汚染されていた場合を×とした。結果を表1〜3に示す。
Figure 0005240766
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(試験結果のまとめ)
実施例1〜4の発泡ゴムロールは、単位体積当たりの質量増加量が0.007、0.032、0.047、0.038g/cmであり、且つ発泡ゴムロールの応力は、未処理である発泡弾性体1のそれぞれ1.5倍、3.6倍、4.7倍、3.2倍程度であり、発泡弾性体の特性を維持したものであった。また、発泡ゴムロール1〜4で耐久試験を行ったところ、外径変化量は発泡弾性体1と比較して大幅に減少しており、汚染防止効果も確認された。
これに対し、比較例1の発泡ゴムロールは、発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御しなかったため、単位体積当たりの質量増加量が大きく、応力は13.3倍程度と大幅に上昇している。このため、外径変化量の減少、汚染防止効果は確認されたが、感光体にキズを発生させる結果となった。
ECOからなる発泡弾性体を用いて成形した実施例5〜7の発泡ゴムロール及びEPDMからなる発泡弾性体を用いて成形した実施例8〜10の発泡ゴムロールも同様に、単位体積当たりの質量増加量が小さく、且つ応力が大幅に上昇していなかった。また、これらの発泡ゴムロールは、外径変化量が小さく耐久性に優れ、耐汚染性にも優れるものであった。
これに対し、比較例2及び比較例3の発泡ゴムロールは、発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御しなかったため、単位体積当たりの質量増加量が大きく、応力の上昇も大きかった。このため、外径変化量の減少、汚染防止効果は確認されたが、感光体にキズを発生させる結果となった。
また、実施例1〜4、実施例5〜7、実施例8〜9をそれぞれ比較することより、応力の上昇の幅は、処理液の濃度だけではなく、使用する溶媒と発泡弾性体の親和性、発泡弾性体の発泡倍率、イソシアネートの種類、処理方法、処理条件等で大きく異なることがわかった。
また、コート層を作製した比較例4では、実施例10と同様、ゴムロール全体としてはソフトであるため、応力も低く、耐久試験においては、外径変化量も少なく、汚染防止効果も確認された。しかしながら、コート層とゴム層の硬度が大きく異なることから、変位(回転)に対して、互いが充分追随することが出来ず、結果として、発泡弾性体とコート層の界面付近に亀裂が見られた。
以上より、実施例1〜10は、耐久性及び耐汚染性に優れた発泡ゴム部材となることがわかった。

Claims (9)

  1. ゴム基材を発泡して発泡弾性体を成形し、前記発泡弾性体にイソシアネート化合物と有機溶媒とを含有する処理液を当該発泡弾性体の内部全体に浸透させた後、前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御し、少なくとも前記イソシアネート化合物を硬化させて発泡ゴム部材を成形することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を圧縮変形することにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  3. 請求項1に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を高速回転させることにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  4. 請求項1に記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体をエアブローすることにより前記発泡弾性体に浸透させた処理液の量を制御することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡ゴム部材は、単位体積当たりの質量増加量が、0.005〜0.05g/cmとなるように成形することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体の肉厚の50%以上まで前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を圧縮変形させながら前記処理液に浸漬させることにより、前記発泡弾性体に前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  8. 請求項1〜6の何れかに記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記発泡弾性体を前記処理液に長時間浸漬させることにより、前記発泡弾性体に前記処理液を浸透させることを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の発泡ゴム部材の製造方法において、前記処理液は、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びポリエーテル系ポリマーから選択される少なくも1種を含有することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
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