JP2012140557A - 難燃性樹脂組成物およびそれを用いた光ファイバコード - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれを用いた光ファイバコード Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、難燃性に優れた難燃性樹脂組成物と、それを用いた難燃性および曲げ剛性に優れた光ファイバコードを提供することを課題とする。
【解決手段】 (a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂70〜95質量%、(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)30〜150質量部と結晶化核剤(C)1〜30質量部とを含有する難燃性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、難燃性に優れた難燃性樹脂組成物と、それを用いた難燃性および曲げ剛性に優れた光ファイバコードに関する。
光ファイバコードには、機械特性や難燃性などの種々の特性が要求されている。このため、このため、従来の光ファイバコードに使用される被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)が使用されている。しかし、こうした材料を適切な処理をせずに廃棄し、埋立てた場合には、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出する可能性がある。また、燃焼した場合には、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から有害ガスが発生することがある。
そこで、このような環境への影響を考慮して、ポリオレフィン系樹脂成分に金属水和物を高濃度に充填したノンハロゲン難燃被覆材料を用いた光ファイバコードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の光ファイバコードを使用すると、長期間にわたり使用した場合に、被覆材料が収縮し光ファイバや光ファイバ心線が突き出て、ファイバ同士の接続に支障を生じる場合がある。また、金属水和物を高濃度に充填する場合、樹脂成分として弾性率の低いものを用いることが多いことから、光ファイバコードに必要な所定の曲げ剛性を得ることが困難である。
特開平9−33770号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、難燃性と曲げ剛性に優れた難燃性樹脂組成物と、それを用いた難燃性、曲げ剛性及び光ファイバの突き出しが低減された光ファイバコードを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、ポリプロピレンを含む特定のポリオレフィン樹脂、金属水和物及び結晶化核剤を使用した難燃性樹脂組成物が難燃性および曲げ剛性に優れ、熱収縮率が少ないことを見出した。さらに本発明者らは、この難燃性樹脂組成物を被覆層として有する光ファイバコードが、長期間にわたり使用しても被覆層の熱収縮率が少なく、ファイバの突き出しを低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
すなわち本発明は、
<1>(a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂70〜95質量%、(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)30〜150質量部と結晶化核剤(C)1〜30質量部とを含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物、
<2>前記ポリプロピレンが前記熱可塑性樹脂成分(A)中10〜70質量%含有することを特徴とする<1>に記載の難燃性樹脂組成物、
<3>前記酸変性されたポリオレフィン樹脂が酸変性されたポリエチレンであることを特徴とする<1>または<2>に記載の難燃性樹脂組成物、及び
<4><1>〜<3>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いて光ファイバ心線の外周に被覆層を形成させたことを特徴とする光ファイバコード、
を提供するものである。
本発明は、難燃性と曲げ剛性に優れた難燃性樹脂組成物と、それを用いた難燃性と曲げ剛性に優れ、ファイバの突き出しが低減された光ファイバコードを提供することができる。
本発明の光ファイバコードの一実施形態を示す概略断面図である。 光ファイバコードの曲げ剛性の評価方法を示す説明図である。
本発明に係る光ファイバコードの好ましい実施態様について、図面を参照して説明する。図1は本発明の光ファイバコードの断面図である。図中1は光ファイバコードを示し、2は光ファイバ心線、3は必要に応じて設けられる抗張力繊維層、4は外被としての被覆層である。
本発明において、光ファイバコードの被覆層として用いられる難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂成分(A)と水酸化マグネシウム(B)と結晶化核剤(C)とを含有する。まず、本発明の難燃性樹脂組成物のうち、その熱可塑性樹脂成分(A)を構成する各成分について説明する。
(A)熱可塑性樹脂成分
本発明における熱可塑性樹脂成分(A)は、(a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂70〜95質量%、(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂5〜30質量%を含有する。
(a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂
本発明における(a)成分としては、構成成分の少なくとも1つがオレフィンの単独重合体又は共重合体のうち、酸変性されていないものを挙げることができる。酸変性されていないものとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸により変性されていないポリオレフィン樹脂である。本発明における(a)成分としては、ポリプロピレン樹脂及びエチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
(a)成分の、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、アタクチックPPを有するポリプロピレン、ポリプロピレンとエチレン系共重合体ゴムのブロック共重合体等が挙げられる。本明細書においては、構成成分として、プロピレン成分とエチレン成分を有する共重合体は、ポリプロピレン樹脂とする。
ポリプロピレン樹脂としては、エチレン−プロピレンブロック共重合体が好ましい。エチレン−プロピレンブロック共重合体は、プロピレンの単独重合体中に、エチレン−プロピレンゴム相を介してポリエチレン相が分散した構造となっている。このため、後述の水酸化マグネシウムを高充填しても、本発明の難燃性樹脂組成物の剛性を高くしすぎるのを防ぐことができる。(a)成分として、エチレン−α−オレフィン共重合体を併用することにより、上記のポリエチレン相近傍にエチレン−α−オレフィン共重合体が分散され、適度な剛性を有する難燃性樹脂組成物を得ることができる。
(a)成分の、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPR)、エチレン−ブチレン共重合ゴム(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等がある。
本発明において、上記のポリオレフィン樹脂を1種もしくは2種以上用いてもよく、結晶性向上の点から、ポリプロピレン樹脂を含む。(a)成分中のポリプロピレン樹脂の配合量は熱可塑性樹脂成分(A)中10〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。ポリプロピレン樹脂の配合量が少なすぎると剛性が低下し、多すぎると難燃剤を保持できず低温特性が低下する。
(a)成分の含有量は熱可塑性樹脂成分(A)中70〜95質量%であり、好ましくは75〜85質量%である。この含有量が少なすぎると、必要な剛性を満たさない。この含有量が多すぎると、難燃剤を保持できず機械特性が低下する。
(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂
本発明における(b)成分は酸変性されたポリオレフィン樹脂である。ここで、ポリオレフィン樹脂としては、上記(a)成分のポリオレフィン樹脂と同様のものを挙げることができる。(b)成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸を有機パーオキサイド存在下で反応させることにより、ポリオレフィン樹脂を酸変性したものを挙げることができる。
上記不飽和カルボン酸としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などが挙げられる。
酸変性したポリオレフィン樹脂は、酸変性部分が後述の水酸化マグネシウムと反応するなどして、水酸化マグネシウムを樹脂成分中に十分分散させるものと思われる。
本発明において、(a)成分との親和性の点から、(b)成分としては、酸変性されたポリエチレンであることが好ましく、特にマレイン酸及び/又はアクリル酸で変性されたポリエチレンが好ましい。
(b)成分の含有量は熱可塑性樹脂成分(A)中5〜30質量%であり、好ましくは15〜25質量%である。(b)成分の含有量をこの範囲とすることにより、後述のように水酸化マグネシウムを高充填しても、樹脂成分などと適度な粘度で溶融混練でき、本発明の難燃性樹脂組成物を得ることができる。この原因は定かではないが、酸変性されたポリオレフィン樹脂が、水酸化マグネシウム又は好ましくは水酸化マグネシウムに表面処理されたシランカップリング剤と反応しつつ、他の樹脂成分との溶融混練を円滑に行うためと思われる。
(b)成分の含有量が少なすぎると曲げぐせがつきやすく、本発明の難燃性樹脂組成物を用いて光ファイバ心線の外周に被覆層を形成して光ファイバコードとした場合に、光ファイバ心線に応力が印加された状態のままとなることがあり、好ましくない。(b)成分の含有量が多すぎると、押出加工時の負荷が増大し、製造に支障を生じる。
(C)結晶化核剤
本発明の難燃性樹脂組成物は、結晶化核剤を含有する。加熱して樹脂成分を溶融混練後、冷却して成形する際に、結晶化核剤は、樹脂成分中、特にポリプロピレン樹脂の結晶化を促進する。このため、結晶化核剤としては、ポリプロピレン樹脂に添加することでポリプロピレン樹脂の結晶化速度を向上させるものを好ましく使用することができる。
本発明において用いることのできる結晶化核剤としては、無機核剤や有機核剤が挙げられる。また、無機核剤と有機核剤とを併用してもよい。本発明において、(a)成分中のポリプロピレン樹脂の結晶性向上の点から結晶化核剤として無機核剤を用いることが好ましい。
本発明における無機核剤しては、例えば、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛ナノ微粒子、層状珪酸塩、金属微粒子などが挙げられる。この中でもシリカが好ましく、無処理のものか、シランカップリング剤を用いたものを使用することができる。
本発明において、無機核剤としてシリカを用いる場合、シリカのBET比表面積は175〜225m/gのものが好ましい。なお、本発明におけるシリカのBET比表面積は、JIS Z 8830により、シリカの乾燥粉末試料を液体窒素吸着法で測定された値をいうものとする。
本発明における有機核剤としてはリン酸エステル金属塩化合物が好ましい。具体的には、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス−(2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−m−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェル)フォスフェート]およびアルミニウム−トリス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、が挙げられる。これらの中ではナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
本発明における結晶化核剤は、樹脂成分に混合し、その後、溶融温度以上で樹脂成分を溶融混練し、その後冷却して成形する。
本発明において、ポリプロピレンの結晶化核剤の配合量は熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがより好ましい。この量が多すぎると、剛性が高すぎるため好ましくない。結晶化核剤の量が少なすぎると、結晶化が不十分となり熱収縮しやすくなる。
(B)水酸化マグネシウム
本発明で用いることができる水酸化マグネシウムとしては、表面無処理のもの(「キスマ5」(商品名、協和化学社製)など)、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸で表面処理されたもの(「キスマ5A」(商品名、協和化学社製)など)、リン酸エステル処理されたもの(「キスマ5J」(商品名、協和化学社製)など)、ビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により表面処理されたもの(「キスマ5L」(商品名、協和化学社製)など)がある。本発明においては、シランカップリング剤による表面処理がさらに好ましい。
難燃性を維持させる場合、水酸化マグネシウムの配合量は熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し、30〜150質量部、好ましくは80〜120質量部である。水酸化マグネシウムの配合量が多すぎると力学的強度、電気的特性、耐熱性が著しく低下したり、外観が悪くなる。水酸化マグネシウムの配合量が少なすぎると、所望の難燃性を維持させることができない。
また、水酸化マグネシウムのBET比表面積は2〜18m/gのものが好ましく、特に4〜10m/gのものが押出成形性と分散性のバランスがよく好ましい。
なお、本発明における水酸化マグネシウムのBET比表面積は、JIS Z 8830により、水酸化マグネシウムの乾燥粉末試料を液体窒素吸着法で測定された値をいうものとする。
本発明の難燃性樹脂組成物には、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
さらに難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。
以下、本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法を説明する。
成分(a)及び(b)からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、金属水和物(B)、結晶化核剤(C)、さらに必要に応じて他の樹脂や添加物を加え、加熱混練する。熱可塑性樹脂成分(A)が溶融・混練時に、結晶化核剤(C)は熱可塑性樹脂成分(A)中に分散する。この分散体は、その後の冷却固化工程で、結晶化核剤(B)の存在する場所を起点として、熱可塑性樹脂成分(A)中の結晶性部分、例えば、ポリプロピレン樹脂やその他の樹脂が冷却結晶化する。このとき熱可塑性樹脂成分(A)中のポリプロピレン樹脂は結晶化核剤(C)を起点として極めて微細な微結晶を形成する。混練温度は、好ましくは160〜240℃であり、混練温度や混練時間等の混練条件は、樹脂成分(a)及び(b)が溶融する温度で適宜設定できる。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。各成分はどのような順序で混練してもよく、室温にてドライブレンドした後に溶融混練してもよい。この工程により、各成分が均一に分散された難燃性樹脂組成物を得ることができる。冷却固化工程の条件に特に制限はないが、所望により、適宜条件の選択をすることができる。
本発明の光ファイバコードとしては、光ファイバ素線の周囲に、又は抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた光ファイバ心線の周囲に押出被覆することにより製造される。このときの押出成形機の温度は、樹脂の種類、光ファイバ等の引取り速度の諸条件にもよるがシリンダー部で180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。本発明の光ファイバコードは、上述の組成物を被覆層として、光ファイバ素線又は心線の外周に被覆されたもの全てを包含し、特にその構造を制限するものではない。被覆層の厚さ、光ファイバ心線に縦添え又は撚り合わせる抗張力繊維の種類、量などは、光ファイバコードの種類、用途などによって異なり、適宜に設定することができる。
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜14および比較例1〜8]
表1、2に実施例1〜14、表3に比較例1〜8の樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数字は、断りのない限り質量部である)を示す。表に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各樹脂組成物を製造した。
表中に示す各成分材料は以下の通りである。
(a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂
・LLDPE
商品名:ユメリット2525F、宇部丸善ポリエチレン社製
・ランダムポリプロピレン
商品名:PB222A、サンアロマー社製
・ブロックポリプロピレン
商品名:PB270A、サンアロマー社製
・ホモポリプロピレン
商品名:PL400A、サンアロマー社製
(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂
・酸変性ポリエチレン
商品名:アドマーDU8300、日本ポリエチレン社製
(B)水酸化マグネシウム
下記の水酸化マグネシウムを入手し、JIS Z 8830により、これらの水酸化マグネシウムの乾燥粉末試料について、液体窒素吸着法でBET比表面積を測定した。この値は、以下に示すとおり、6.0m/gであった。
・シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L、協和化学社製、BET比表面積:6.0m/g
(C)結晶化核剤
・シリカ
商品名:アエロジルV200、日本アエロジル社製、BET比表面積:200m/g、
・リン酸塩
商品名:NA−902、ADEKA社製
(その他添加剤)
・酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010、BASF社製
・滑剤
ステアリン酸カルシウム、品川化工社製
次に、汎用の押出被覆装置を用いて、得られた組成物を抗張力繊維(アラミド繊維)を添えた外径0.90mmの光ファイバナイロン心線の外周に厚み0.35mmで押出被覆した図1の構造の光ファイバコードを製造した。
製造した光ファイバコードに対して、下記の評価を行った。得られた実施例1〜14の評価結果を表1、2に、比較例1〜8の評価結果を表3に示す。
(1)引張特性
難燃性樹脂組成物を加熱加圧成形し、厚さ1.0mm±0.15mmのシートを作製した。このシートからJIS K 7113に基づくダンベル2号形試験片を作製して引張試験を行った。標線間25mm、引張速度200mm/分で試験を行った。引張強さ(TS)10MPa以上で、かつ引張伸び(EL)200%以上のものを合格とした。
(2)曲げぐせ性
外径14mmのマンドレルに光ファイバコードを巻きつけ、5分間放置した。マンドレルから光ファイバコードを解放し、120分後の曲率半径Rを比較した。その曲率半径が83mm以上のものを、曲げぐせ性合格とした。曲率半径が85mm以上のものが、好ましい。
(3)熱収縮率
上記のコードから250mm切り出したサンプルを60℃の恒温層にて18時間保持した後の収縮率を測定した。1%以下を合格とした。
(4)曲げ剛性
図2に示す曲げ剛性試験装置10を用いて、図2の上板11とロードセル式天秤13の上面との間隔を30mmになるように、光ファイバコードを曲げ径D=30mmまで曲げたときの反発力Wをロードセルにより測定し、下記(式1)に基づいて曲げ剛性EIを算出した。曲げ剛性EIが15〜30N・mmを合格とした。
EI=0.3483WD(式1)
(5)難燃性
JIS C 3005に基づき、水平燃焼試験を行った。延焼が60秒未満のものを合格、60秒以上延焼したものを不合格とし、表2に合格は○、不合格は×と表示した。
Figure 2012140557
Figure 2012140557
Figure 2012140557
表1〜3からわかるように、(C)成分を配合していない組成物を用いた比較例1の光ファイバコードは、熱収縮率が大きく不合格であった。また、(C)成分の配合量の少ない組成物を用いた比較例2の光ファイバコードも、熱収縮率が大きく不合格であった。(C)成分の配合量の多い比較例3の光ファイバコードは、曲げぐせが大きく、不合格であった。(b)成分を含有しない比較例4の光ファイバコードは、曲げぐせが大きすぎて不合格であった。(b)成分の配合量の多い比較例5の光ファイバコードは、熱収縮率が大きく不合格であった(b)成分を配合しない比較例8の組成物は、溶融混練することができず、製造することができなかった。(B)成分の配合量の少ない組成物を用いた比較例9の光ファイバコードは、難燃性が不合格であった。(B)成分の配合量が多すぎる組成物を用いた比較例10の光ファイバコードは、機械特性と曲げぐせが不合格であった。
これに対して、実施例1〜14の光ファイバコードは、引張特性、曲げぐせ、熱収縮率、曲げ剛性および難燃性の全てについて合格であり、優れた特性を示した。実施例13は(a)成分中のポリプロピレン樹脂が少なく、実施例14は(a)成分中のポリプロピレン樹脂の配合量が多いため、曲げぐせが小さいが、83mmであり、十分使用可能なレベルであった。
1 光ファイバコード
2 光ファイバ心線
3 抗張力繊維層
4 被覆層
10 曲げ剛性試験装置
11 上板
12 スライダ
13 ロードセル式天秤
14 土台

Claims (4)

  1. (a)ポリプロピレンを含む酸変性されていないポリオレフィン樹脂70〜95質量%、(b)酸変性されたポリオレフィン樹脂5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)30〜150質量部と結晶化核剤(C)1〜30質量部とを含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. 前記ポリプロピレンが前記熱可塑性樹脂成分(A)中10〜70質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 前記酸変性されたポリオレフィン樹脂が酸変性されたポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いて光ファイバ心線の外周に被覆層を形成させたことを特徴とする光ファイバコード。
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