JP7028821B2 - 難燃性樹脂組成物、及びそれを用いた配線材 - Google Patents
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Description
配線材には、火災時の延焼を防ぐ目的で高い難燃性を要求する場合も多い。特に近年では火災時の延焼を防ぐだけでなく、火災時に発生する煙による災害を防ぐ目的で、有害なガスを発生しない金属水和物を難燃剤として用いた配線材(例えば、ノンハロゲンケーブル)が用いられている。
この配線材において、従来は、上記プラスチック材料として、ポリオレフィン樹脂と金属水和物難燃剤とを配合した難燃性樹脂組成物を用いて被覆層を形成している。このような難燃性樹脂組成物には、難燃材を配合することで低下する機械的特性を高めるために強度の高い樹脂を配合する、といった技術が適用される。
特許文献1は、不飽和カルボン酸で変性されたプロピレン-エチレン・プロピレン共重合体5~30質量%を含む酸変性ポリプロピレン樹脂を合計で22~90質量%と、無変性プロピレン-エチレン・プロピレン共重合体10~78質量%とを含む樹脂成分100質量部に対し、水酸化マグネシウムを50~300質量部含有する難燃性樹脂組成物を導体又は、光ファイバ素線若しくは光ファイバ心線の被覆層の最外層として有する成形物品を提案している。
本発明は、配線材に求められる機械的特性を維持しつつ、優れた端末加工性を示す被覆層を形成できる難燃性樹脂組成物、及びこの難燃性樹脂組成物からなる層を被覆層として有する配線材を提供することを課題とする。
〔1〕
ベース樹脂100質量部に対して、金属水和物80~150質量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂5~20質量%と前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)70~95質量%とスチレン系エラストマー0を超えて10質量%以下とを含み、かつ前記ポリオレフィン樹脂(X)の一部として融点100℃以下のポリプロピレン樹脂を前記ベース樹脂100質量%中3~20質量%含む、難燃性樹脂組成物。
〔2〕
前記ポリオレフィン樹脂(X)が、融点が100℃を超えるポリプロピレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂を含む〔1〕に記載の難燃性樹脂組成物。
〔3〕
前記金属水和物が、水酸化マグネシウムを60~120質量部含む〔1〕又は〔2〕に記載の難燃性樹脂組成物。
〔4〕
前記金属水和物が、水酸化アルミニウムを50質量部以下含む〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
〔5〕
前記ベース樹脂100質量部に対して、赤リンを10質量部以下含む〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の難燃樹脂組成物。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の被覆層を有する配線材。
〔7〕
前記配線材が、電線又は電力ケーブルである〔6〕に記載の配線材。
〔8〕
前記配線材が、光ケーブルである〔6〕に記載の配線材。
また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方の意味で用いる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂と金属水和物とを含有する。
ベース樹脂は、ベース樹脂100質量%中に、酸変性ポリオレフィン樹脂5~20質量%、及び酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)(以下、ポリオレフィン樹脂(X)という)70~95質量%を含有する。また、ポリオレフィン樹脂(X)は、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂を含み、このポリプロピレン樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量%中、3~20質量%である。すなわち、ポリオレフィン樹脂(X)が、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の2成分のみを含む場合、これら樹脂成分の合計含有量がベース樹脂100質量%中の70~95質量%である。
金属水和物は、ベース樹脂100質量部に対して、80~150質量部含有されている。
難燃性樹脂組成物は、非架橋物でもよく、架橋物でもよい。非架橋物であることが好ましい。
配線材に要求される機械特性としては、用途等に応じて一義的ではないが、以下が挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物の引張強さは、用途等に応じて一義的ではないが、例えば、後述する引張試験において、10.0~20.0MPaが好ましく、15.0~20.0MPaがより好ましい。また、破断伸びは、用途等に応じて一義的ではないが、例えば、300%以上が好ましく、350%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、
600%以下が実際的である。
本発明の難燃性樹脂組成物は、後述する60度傾斜難燃試験において、30秒以内に自然消火する難燃性を有する。
本発明の難燃性樹脂組成物の、後述する引き裂き試験における引き裂き力は、3.0~14.0N/mmであることが好ましい。
上記特性を有する本発明の難燃性樹脂組成物は、例えば、光ケーブルの被覆層とした場合に、通常の使用においては簡単には引き裂かれないが、加工の際には、端末部分において被覆層を引き裂いて、光ファイバに過大な力をかけずに光ファイバを露出させる(皮むき)ことが可能な引き裂き性を有し、端末加工性に優れる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、5~20質量%であり、5~15質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。上記組成において含有量を5~20質量%とすることで、金属水和物の分散性が向上し、破断伸びと引き裂き性を両立させることができる。
融点100℃以下のポリプロピレン樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、3~20質量%であり、5~20質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましい。上記組成において含有量を3~20質量%とすることで、破断伸びと引き裂き性を両立させることができる。
ベース樹脂は、後述するスチレン系エラストマーをさらに含んでいることが好ましく、その含有量は、ベース樹脂100質量%中において、10質量%以下が好ましく、1~10質量%がより好ましく、3~7質量%がさらに好ましい。上記組成において含有量を10質量%以下とすることで、破断伸びの低下を抑制することができる。
金属水和物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、その合計量が上記含有量を満たす。
金属水和物は、優れた難燃性向上効果を示すこと及び分解温度が高いことから、水酸化マグネシウムを含有していることが好ましく、その含有量はベース樹脂100質量部に対して、60~120質量部が好ましく、80~100質量部がより好ましい。
金属水和物は、優れた難燃性向上効果を示すことから、水酸化アルミニウムを含有していることが好ましく、その含有量はベース樹脂100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、10~50質量部がさらに好ましく、10~30質量部が特に好ましい。
金属水和物として、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムとを併用することが好ましい。分解温度の異なる2種の金属水和物を併用することで、広い温度域における難燃性を付与することができる。このときの各含有量は、上記した通りであり、水酸化マグネシウムの含有量(Cm)と水酸化アルミニウム(Ca)の含有量の比(Cm/Ca、質量比)は、1~10が好ましく、3~5がより好ましい。
ベース樹脂は、本発明の難燃性樹脂組成物の樹脂成分として含有される。
ベース樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を含有し、酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)の一部として、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂を含有する。
ポリオレフィン樹脂(X)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物(通常、アルケン)を単独重合又は共重合して得られる重合体からなる樹脂であって、酸変性されていないものであれば、特に限定されるものではなく、従来、公知の樹脂を使用することができる。
ポリオレフィン樹脂(X)に包含される樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)を有するポリオレフィン共重合体等の各樹脂が挙げられる。
本発明において、ポリオレフィン樹脂(X)は、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(Y)とを含有する。ポリオレフィン樹脂(Y)としては、上述のポリオレフィン樹脂(X)の内、100℃以下のポリプロピレン樹脂以外のものであればよく、例えば、後述する、融点が100℃を超えるポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂等を用いることができる。ポリオレフィン樹脂(Y)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂(X)は、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂に加えて、融点100℃を超えるポリプロピレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂を含むことが好ましく、融点100℃以下のポリプロピレン樹脂に加えて、融点100℃を超えるポリプロピレン樹脂及び直鎖型低密度ポリエチレン樹脂を含むことがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂(X)に包含される樹脂成分について以下詳述する。
融点100℃以下のポリプロピレン樹脂(以下、低融点ポリプロピレン樹脂という)は、プロピレンの単独重合体の樹脂であり、かつ融点が100℃以下のものであれば特に限定されない。
上記組成において、低融点ポリプロピレン樹脂を特定量用いることにより、引張強さと引き裂き性を両立することができる。
低融点ポリプロピレン樹脂のポリプロピレンは、従来のポリプロピレンに比較して、立体規則性が低くなるように制御したポリプロピレンであることが好ましい。さらに、立体規則性分布が狭くなるように制御されていることが好ましい。従来のポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンを主成分とするが、低融点ポリプロピレンは低立体規則性領域(ステレオランダム構造)を一部に含有していると考えられる。このため結晶性を有するが、結晶性が低く、融点が低い。
低融点ポリプロピレン樹脂の融点は、60~100℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。融点は、示差走査熱量測定(DSC)等により測定することができる。
低融点ポリプロピレン樹脂の密度は、引き裂き性の観点から、0.86~0.89g/cm3が好ましく、0.865~0.875g/cm3がより好ましい。密度は、水中置換法により測定することができる。
低融点ポリプロピレン樹脂は、適宜に合成してもよく、市販品を用いてもよい。低融点ポリプロピレン樹脂を合成する場合、シングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒(好ましくは、二架橋ビスインデニル型メタロセン触媒)、を用いて合成することができる。
融点が100℃を超えるポリプロピレン樹脂(以下、高融点ポリプロピレン樹脂という)は、主成分としてプロピレン構成成分を含む重合体を含み、かつ融点が100℃を超えるものであればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等の樹脂を使用することができる。
エチレン-プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分の含有量が1~10質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。また、エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレンやエチレン―プロピレンゴム(EPR)成分の含有量が5~20質量%程度のものをいい、プロピレン成分の中にエチレンやEPR成分が独立して存在する海島構造であるものをいう。ポリプロピレン樹脂として特に好ましいものは特に低温での耐衝撃性の点で、エチレン―プロピレンブロック共重合体の樹脂である。エチレン成分含有量は、ASTM D3900に記載の方法に準拠して、測定される値である。
高融点ポリプロピレン樹脂の融点は、押出し加工性の観点から、160~170℃が好ましい。
高融点ポリプロピレン樹脂の密度は、強度(結晶化度)の観点から、0.89~0.91g/cm3が好ましい。
ポリエチレン樹脂は、エチレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、エチレンのみからなる単独重合体、エチレンとα-オレフィン(好ましくは5mol%以下)との共重合体(エチレン-α-オレフィン共重合体)(上述の低融点ポリプロピレン樹脂及び高融点ポリプロピレン樹脂に該当するものを除く)、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ非オレフィン(好ましくは1mol%以下)との共重合体からなる各樹脂が包含される。なお、上述のα-オレフィン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂における酸共重合成分は、主鎖に組み込まれており、この点で、後述する酸変性ポリオレフィンとは異なる。酸共重合成分としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、並びに、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキル等の酸エステル化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数1~12のものが好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、上述のポリオレフィン樹脂(X)を、不飽和カルボン酸又はその無水物により変性した樹脂である。上記組成において、酸変性ポリオレフィン樹脂を特定量用いることにより、難燃性樹脂組成物中の金属水和物の受容性が高まり、破断伸びを維持しつつ、引き裂き強度を低下させることができると考えられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を形成するポリオレフィン樹脂としては、上述のポリオレフィン樹脂(X)が挙げられ、上述の、ポリエチレン樹脂及び高融点ポリプロピレン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を形成する不飽和カルボン酸(無水物を含む)としては、上記ポリオレフィン樹脂と反応(例えばラジカル付加反応)しうる不飽和結合を有するカルボン酸が挙げられる。この不飽和カルボン酸は、カルボキシ基を1つ有するものでも、2つ以上有するものでもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸、並びにこれらの金属塩又は有機塩、さらには無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等の無水物を使用することができる。これらの不飽和カルボン酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、金属水和物の受容性の観点から、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、分子内に芳香族ビニル化合物に由来する構成成分を含むエラストマーをいう。このようなスチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体若しくはランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンーエチレンーブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(水素化SBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水素化SIS、水素化スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)等を挙げることができる。
スチレン系エラストマーは、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
難燃性樹脂組成物は、金属水和物を含有する。本発明において、金属水和物は、フィラー又は難燃剤として作用する。
本発明に用いる金属水和物としては、水酸基又は結晶水を有する化合物が挙げられる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト又はタルクなどが挙げられる。
金属水和物は、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が好ましい。
金属水和物は、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としては、例えば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などが挙げられる。
金属水和物の平均粒子径は、0.5~2μmが好ましく、0.8~1.5μmがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内にあると、金属水和物の分散性に有利となり混合プロセスが効率化できる。平均粒子径は、金属水和物をアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、難燃性樹脂組成物において、一般的に使用されている各種の添加剤等を含有することができる。例えば、シリコーン化合物、カーボンブラック等を挙げることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、後述する配線材に用いることができる。(また、他の用途(保護チューブ・絶縁シート等)に用いることができ、特に上記のような機械的特性及び/又は引き裂き強度(力)が要求される用途(例えば、保護チューブ)に好ましく用いることもできる。)
本発明の難燃性樹脂組成物は、配線材に用いることが好ましい。高い難燃性を示し、火災の延焼を防ぐことができ、また、難燃剤が配合されているにもかかわらず機械的特性が維持できる。
本発明の配線材は、本発明の難燃性樹脂組成物の被覆層を有する。よって、本発明の配線材は、本発明の難燃性樹脂組成物と同様の、配線材に要求される機械的特性を示す被覆層を有し、端末加工性に優れる。
本発明の配線材は、例えば、通常の使用においては簡単には引き裂かれないが、加工の際には、端末部分において被覆層を引き裂いて、導体や光ファイバを露出させることが可能な引き裂き性を有し、端末加工性に優れる。
本発明の配線材は、後述する60度傾斜難燃試験に合格するような高い難燃性を示し、火災の延焼を防ぐことができ、また、機械的特性を維持できる。
被覆層を形成する難燃性樹脂組成物は、非架橋物でも、架橋物でもよい。いずれの場合も、上記の諸特性を示す。
配線材としては、例えば、絶縁電線若しくはケーブル、(電気)コード、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ケーブル等が挙げられる。これらは、屋内に配設される電線又はケーブル、屋外に配設される電線又はケーブルを含む。これらは、車両(自動車若しくは鉄道車両等)用電線若しくはケーブル、通信用電線若しくはケーブル、通信用光ファイバ若しくは光ケーブル、又は、電力用電線若しくはケーブルとして用いることができる。
絶縁電線又は光ケーブルが好ましく、特に、光ケーブルが好ましい。
光ケーブルは、上記構成を有していれば、その他の形態は特に限定されず、被覆層の数、光ファイバ心線の数、光ファイバ心線の配置、テンションメンバの有無及び配置等は用途に応じて適宜設定することができる。被覆層が複層構造を有する場合、最外層に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の難燃性樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、光ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
光ファイバ心線は、光ファイバ素線そのものでもよく、光ファイバ素線の外周面に被覆層を有するものでもよい。光ファイバ素線上に被覆層を有する場合は、上記図1の構成において、被覆層が複層構造である場合に相当する。光ファイバ心線としては、通常のものを用いることができる。
光ファイバ素線としては、通常のものを用いることができる。石英ファイバが好ましい。
光ファイバ及び光ファイバ素線の外径は、用途などに応じて、適宜に決定される。被覆層、特に本発明の難燃性樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に決定されるが、本発明の難燃性樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2~3mmが好ましい。
光ケーブルは、テンションメンバを有していてもよい。テンションメンバは、光ファイバ心線の外周を覆うように配置されていてもよく、光ファイバ心線から離間して配置されていてもよい。
図2に示す光ケーブル2は、光ファイバ心線11と、光ファイバ心線11の両側に配置された2つのテンションメンバ31と、これらの周囲に本発明の難燃性樹脂組成物の被覆層(シース)21とを有する。被覆層21は、光ケーブル2の長手方向に垂直な断面形状が略長方形であり、断面形状の2つの長辺の中央付近にそれぞれノッチ41を有する。図2に示す光ケーブル2は、いわゆるインドアケーブルの一態様に相当する。
テンションメンバとしては、通常、光ファイバケーブルに使用されるものを適宜使用することができる。
ノッチは形成してもしなくてもよい。ノッチを形成する場合には、ノッチの形状、数、配置は特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。
図3に示す光ファイバコード3は、光ファイバ心線12と、光ファイバ心線12の周囲に配置されたテンションメンバ32と、テンションメンバ32の周囲に配置された被覆層(シース)22とを有する。
光ファイバコードは、上記構成を有していれば、その他の形態は特に限定されず、被覆層の数、光ファイバ心線の数、光ファイバ心線の配置、テンションメンバの有無及び配置等は用途に応じて適宜設定することができる。
導体としては、絶縁電線に通常用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、軟銅若しくは銅合金、又は、アルミニウム等の単線若しくは撚線等の金属導体が挙げられる。また、導体としては、裸線の他に、錫メッキしたもの、エナメル被覆層を有するもの等を用いることもできる。被覆層が複層構造を有する場合、最外部に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の難燃性樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、絶縁電線に通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
絶縁電線及び導体の外径は、用途などに応じて、適宜に決定される。被覆層、特に本発明の難燃性樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に決定されるが、本発明の難燃性樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2~3mmが好ましい。
ケーブルの上記以外の構成は、特に限定されず、通常のケーブルと同様の構成を採用することができる。
絶縁電線としては、ケーブルに通常用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、上記絶縁電線を用いることができる。
被覆層が複層構造を有する場合、最外部に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の難燃性樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
ケーブル及び絶縁電線の外径は、用途などに応じて、適宜に決定される。被覆層、特に本発明の難燃性樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に決定されるが、本発明の難燃性樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2~3mmが好ましい。
難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂及び金属水和物、必要に応じて、赤リン、及び他の添加物(例えば、シリコーン化合物、カーボンブラック)を加熱混練して、調製される。
混練温度や混練時間などの混練条件は、特に限定されず、ベース樹脂の溶融温度以上の温度範囲内で適宜に設定できる。混練温度は、例えば、120~220℃とすることが好ましい。
混練方法としては、ゴム又はプラスチックの加熱混練などで通常用いられる方法であれば、特に限定されない。用いる装置としても、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダーなどが挙げられる。
この加熱混練により、各成分が均一に分散(混合)された、未架橋又は非架橋の難燃性架橋樹脂組成物を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物が架橋物である場合、上記の未架橋の難燃性樹脂組成物ないしは後述する成形体を、架橋する。本発明においては、成形容易性の点において、上記の未架橋の難燃性樹脂組成物を成形した後に架橋することが好ましい。架橋方法としては、特に限定されず、電子線架橋法又は化学架橋が挙げられる。化学架橋法としては、例えば、フェノール架橋、アミン架橋、シラン架橋又はパーオキサイド架橋等が挙げられる。架橋方法については後述する。
本発明の配線材は、光ケーブル、又は電線等の製造に通常採用される方法により難燃性樹脂組成物を用いて製造することができる。例えば、光ケーブルの場合、難燃性樹脂組成物を光ファイバ心線の外周面に押出成形して、被覆層を形成することにより、製造することが好ましい。この工程により、光ファイバ心線の外周面に、非架橋物である難燃性樹脂組成物からなる被覆層を形成することができる。
難燃性樹脂組成物等の押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、押出成形することにより行うことができる。押出成形機の温度は、樹脂の種類、導体などの引取り速度の諸条件により、一義的には決定できない。例えば、シリンダー部で120~220℃程度、クロスヘッド部で160~220℃程度にすることが好ましい。
架橋は、上述の架橋方法に応じて、適宜の方法ないし条件を採用することができる。
電子線架橋法により架橋する場合、未架橋状態の難燃性樹脂組成物に電子線を1~30Mradの線量で照射して架橋することが好ましい。化学架橋法により架橋する場合、未架橋状態の難燃性樹脂組成物を加熱して、架橋剤と反応させることにより架橋することが好ましい。
表1において、各実施例及び比較例における配合組成の数値は、特に断らない限り質量部を表し、空白は該当する成分が無含有であることを表す。
表1に示す配合量の各成分を、バンバリーミキサーにて混練した。混練時間は、十分に溶融した状態から3分とし、混練終了時の樹脂温度は210℃とした。このように加熱混練して、難燃性樹脂組成物を得た。
LLDPE:密度0.922g/cm3、NUCG7641(商品名)、NUC社製
ブロックPP:融点168℃、密度0.9g/cm3、EC9(商品名)、日本ポリプロ社製
低融点PP1:融点80℃、密度0.87g/cm3、エルモーデュ S901(商品名)、出光興産社製
低融点PP2:融点80℃、密度0.87g/cm3、エルモーデュ S600(商品名)、出光興産社製
マレイン酸変性PP:アドマーQE800(商品名)、三井化学社製
SEEPS:セプトン4077(商品名)、クラレ社製
水酸化マグネシウム:平均粒子径0.8μm、キスマ5L(商品名)、協和化学工業社製
水酸化アルミニウム:平均粒子径1.2μm、BF013(商品名)、日本軽金属社製
酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名)、BASFジャパン社製
赤リン:ヒシガードLP-F(商品名)、日本化学社製
シリコーン:X21-3043(商品名)、信越化学工業社製
カーボンブラック:旭#70(商品名)、旭カーボン社製
引張強さ及び破断伸びを以下の方法で測定した。
- 引張試験 -
上記で得られた難燃性樹脂組成物を、直径25mm、L/D24の押出機を用いて、押出樹脂温度210℃で、厚さ1mm、幅10~50mmに押し出した。得られたテープ状サンプルから、JIS K 6251で規定される5号ダンベルを打ち抜き、試験片を得た。JIS C 3005に準拠して、標線間25mm、引張速度200mm/分の条件により、上記試験片の引張試験を行った。
本試験において、引張強さは10.0~20.0MPaが、配線材の被覆材として合格レベルである。また、破断伸びは300%以上が、配線材の被覆材として合格レベルであり、350%以上が好ましい。
上記で得られた難燃性樹脂組成物を、電線押出装置を用いて、図4に示す断面形状となるよう、押し出した。図4に示す断面形状において、矢印X及びYをそれぞれ横方向、縦方向とした場合に、横方向の長さは2.0mm、縦方向の長さは1.6mm、及びノッチ5部分の深さ(n)は0.35mmである。得られた線状体から、長さ30cmを切り取って、試験片4とした。この試験片4を用いて、JIS C 3005に準拠して、60度傾斜難燃試験を行った。
各試験片から炎を取り去った後、30秒以内に自然消火したものを、合格「○」とし、30秒以内に自然消火しなかったものを不合格「×」とした。
60度傾斜難燃試験と同様の、図4に示す断面形状を有する試験片4を用いて行った。
試験片4の一方の端部において、断面形状において両側のノッチ5を繋ぐ線を挟んで左右の端を掴んで引き、端部から3cmの切れ目を入れた。切断されたノッチの両側を、引張試験機(オートグラフAGS-1knx、島津製作所社製)でそれぞれ掴み、引張速度500mm/分で引き裂いた。計測された最大応力を、引き裂き力とした。
引き裂き力が3.0~14.0N/mmのものを合格とした。
本試験は、配線材の端末加工を想定した試験であり、難燃性樹脂組成物の被覆層を有する配線材について、被覆層を引き裂く際に必要な力を評価する試験である。本発明の難燃性樹脂組成物を用いる場合、被被覆物(導体又は光ファイバ心線)と被覆層との密着力はそれほど大きくならないため、被被覆物を用いずに形成した上記試験片の引き裂き力を、配線材とした際の引き裂き力とみなすことができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂が少なすぎる比較例2は、引張強さ、破断伸び、及び引き裂き性のいずれにも劣っていた。
酸変性ポリオレフィン樹脂が多すぎる比較例3及び9は、いずれも引張強さ、破断伸び、及び引き裂き性のいずれにも劣っていた。
金属水和物が少なすぎる比較例4は、引張強さ及び難燃性に劣っていた。
金属水和物が多すぎる比較例5は、破断伸びに劣っていた。
ポリオレフィン樹脂(X)が少なすぎ、かつ酸変性ポリオレフィン樹脂が多すぎる比較例6は、引張強さ、破断伸び、及び引き裂き性のいずれにも劣っていた。
低融点ポリプロピレン樹脂が多すぎる比較例7は、引張強さ、破断伸び、及び引き裂き性のいずれにも劣っていた。
低融点ポリプロピレン樹脂が少なすぎる比較例8は、引張強さ及び引き裂き性に劣っていた。
これに対し、ポリオレフィン樹脂(X)、酸変性ポリオレフィン樹脂、低融点ポリプロピレン樹脂及び金属水和物を特定量組み合わせて含有する実施例1~8、10、11及び参考例9、12の難燃性組成物は、いずれも、配線材に要求される機械的特性(引張強さ、破断伸び)、難燃性、及び引き裂き性に優れていた。上記60度傾斜難燃試験及び引き裂き試験においては、光ファイバ心線等を用いずに、試験片を調製しているが、光ファイバ心線等を用いた場合であっても、同様の結果が得られる。
3 光ファイバコード
10、11、12 光ファイバ心線
20、21、22 被覆層
31、32 テンションメンバ
41 ノッチ
4 試験片
5 ノッチ
Claims (8)
- ベース樹脂100質量部に対して、金属水和物80~150質量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂5~20質量%と前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)70~95質量%とスチレン系エラストマー0を超えて10質量%以下とを含み、かつ前記ポリオレフィン樹脂(X)の一部として融点100℃以下のポリプロピレン樹脂を前記ベース樹脂100質量%中3~20質量%含む、難燃性樹脂組成物。 - 前記ポリオレフィン樹脂(X)が、融点が100℃を超えるポリプロピレン樹脂及びエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂を含む請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記金属水和物が、水酸化マグネシウムを60~120質量部含む請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記金属水和物が、水酸化アルミニウムを50質量部以下含む請求項1~3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記ベース樹脂100質量部に対して、赤リンを10質量部以下含む請求項1~4のいずれか1項に記載の難燃樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の被覆層を有する配線材。
- 前記配線材が、電線又は電力ケーブルである請求項6に記載の配線材。
- 前記配線材が、光ケーブルである請求項6に記載の配線材。
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