JP2015021058A - 難燃性樹脂組成物、およびそれを成形してなる難燃性樹脂成形体を含む難燃性物品 - Google Patents
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Abstract
Description
このため、有害な重金属やハロゲン系ガスなどの発生がないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術の検討が盛んに行われている。
さらに、特許文献1の架橋型難燃性樹脂組成物は、高密度ポリエチレンをベースとしているため、成形加工時の残留歪による被覆の収縮が起こり、コネクタ接続後に不具合が発生する恐れもあることが分かった。
さらに詳しくは、本発明は、シート、チューブ、配線材、光ファイバコードおよびその他の難燃性物品に要求される高度の耐磨耗性を満足すると同時に、これらに必要とされる耐熱性および柔軟性を併せ持つ難燃性樹脂組成物と、それを成形してなる難燃性樹脂成形体を含む難燃性物品を提供することを課題とする。
また、本発明は、細径であっても耐磨耗性に優れ、しかもコネクタ接続後も接続状態を維持して信頼性の高い車両用配線材と、それを形成可能な難燃性樹脂組成物を提供することを、課題とする。
本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
(1)(a)密度が0.900g/cm3以上0.950g/cm3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体32〜80質量%、(b)曲げ弾性率が100MPa未満のポリオレフィン樹脂10〜50質量%、および、(c)ポリプロピレン樹脂5〜18質量%からなる熱可塑性樹脂(A)100質量部と、金属水和物(B)50〜250質量部とを含有し、
前記(a)エチレン−α−オレフィン共重合体の一部、または、前記(b)ポリオレフィン樹脂の全部もしくは一部が酸変性されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(2)前記(a)エチレン−α−オレフィン共重合体および前記(b)ポリオレフィン樹脂が、いずれも、酸変性されていることを特徴とする(1)に記載の難燃性樹脂組成物。
(3)前記(b)ポリオレフィン樹脂のうち酸変性されているポリオレフィン樹脂が、酸変性スチレン系エラストマーであることを特徴とする(1)または(2)に記載の難燃性樹脂組成物。
(4)成形後に架橋して使用されることを特徴とする(1)〜(3)いずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(5)前記架橋が、電子線の照射による架橋であることを特徴とする(4)に記載の難燃性樹脂組成物。
(6)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形し、架橋してなる難燃性樹脂成形体を含むことを特徴とする難燃性物品。
(7)前記架橋が、電子線の照射による架橋であることを特徴とする(6)に記載の難燃性物品。
(8)前記難燃性樹脂成形体が、電線導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線の外周に被覆層として設けられてなることを特徴とする(6)または(7)に記載の難燃性物品。
加えて、本発明の難燃性樹脂組成物は、成形後も収縮することがないため、コネクタ接続後も接続状態を維持して優れたコネクタ接続性が得られ、本発明の難燃性物品として、細径であっても耐磨耗性に優れ、しかも信頼性の高い車両用配線材を製造できる。
また、本発明によれば、ノンハロゲン系の難燃性樹脂組成物及びノンハロゲン系の難燃性物品を提供できる。
熱可塑性樹脂(A)は、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体と、(b)ポリオレフィン樹脂と、(c)ポリプロピレン樹脂を含有してなり、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体および(b)ポリオレフィン樹脂の少なくともどちらか一方に酸変性されているものが含まれる。
本発明に用いることのできる(a)エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。(a)成分には、エチレンとプロピレンの共重合体は含まれない。
(a)エチレン−α−オレフィン共重合体としては、特に限定されないが、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン・ブタジエンゴム(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、機械的強度や耐磨耗性に優れる点でシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K 7112に基づいて、測定することができる。
本発明においては、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体の一部が酸変性されていることが好ましく、全部が変性されていてはならない。すなわち、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体は、酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と、酸変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体とを、それぞれ、少なくとも1種ずつ、含有する。
エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性は、例えば、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体における酸変性量は、酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体1分子中、通常0.1〜7質量%程度である。例えばマレイン酸または無水マレイン酸で酸変性された場合の変性量は通常0.1〜7質量%程度である。
酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と酸変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体の割合(質量比)は、1:9〜1:1が好ましく、さらに1:7〜2:3が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、曲げ弾性率が100MPa未満のポリオレフィン樹脂を含有している。
本発明で用いることのできる(b)ポリオレフィン樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体ゴム(アクリルゴム)、密度が0.900g/cm3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。
(b)ポリオレフィン樹脂の変性は、例えば、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。酸変性されたポリオレフィン樹脂における酸変性量は、酸変性されたポリオレフィン樹脂1分子中、通常0.1〜7質量%程度である。例えばマレイン酸または無水マレイン酸で酸変性された場合の変性量は通常0.1〜7質量%程度である。
酸変性されたポリオレフィン樹脂は一部が変性されていても全部が変性されていてもよいが、一部が変性されていることが好ましい。すなわち、(b)ポリオレフィン樹脂は、酸変性されたポリオレフィン樹脂と、酸変性されていないポリオレフィン樹脂とを、それぞれ、少なくとも1種ずつ、含有する。
酸変性されたポリオレフィン樹脂と酸変性されていないポリオレフィン樹脂の割合(質量比)は1:2〜4:1が好ましく、さらに2:3〜3:1が好ましい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)は、(c)ポリプロピレン樹脂を含有している。本発明に用いることのできる(c)ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンや、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体が挙げられる。
ここで、ランダムポリプロピレンはエチレン成分含量が1〜4重量%程度のエチレン・プロピレンランダム共重合体をいい、ブロックポリプロピレンはエチレン成分含量が5〜20重量%程度のエチレン・プロピレンブロック共重合体をいう。
(c)ポリプロピレン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体により、酸変性されていてもよい。
本発明において、金属水和物は、水酸基または結晶水を有する金属化合物や金属水酸化物をいう。
本発明において用いることのできる金属水和物(B)は、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基または結晶水を有する金属化合物や金属水酸化物が挙げられ、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化マグネシウムがさらに好ましい。
金属水和物は、その表面が表面処理剤で処理されていない未処理のものであっても、表面処理されたものであってもよい。
また、本発明で用いることができる水酸化マグネシウムとしては、特に限定されないが、例えば、表面無処理のものとして、「キスマ5」(商品名、協和化学社製)などが挙げられる。ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸で表面処理されたものとして、例えば、「キスマ5A」(商品名、協和化学社製)などが挙げられ、リン酸エステル処理されたものとして、例えば、「キスマ5J」(商品名、協和化学社製)などが挙げられ、ビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により表面処理されたものとして、例えば、「キスマ5L」(商品名、協和化学社製)などが挙げられる。本発明においては、シランカップリング剤により表面処理されたものが好ましい。
本発明において、樹脂成分として特定の成分を含む熱可塑性樹脂(A)に水酸化マグネシウムなどの金属水和物(B)を加えても、耐磨耗性が低下せず、むしろ向上するメカニズムについては、定かではないが、以下のように考えられる。
水酸化マグネシウムなどの金属水和物(B)と酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体あるいは酸変性されたポリオレフィン樹脂が強いイオン性結合を有し、そのため、水酸化マグネシウムなどの金属水和物(B)とポリマー全体がナノ−ミクロ状態で微細に、しかも強固に結合する。水酸化マグネシウムなどの金属水和物(B)と樹脂成分とが一体化することで、水酸化マグネシウムなどの金属水和物(B)が本来有している硬質性、強度、補強性が発揮され、難燃性樹脂組成物の耐磨耗性が格段に向上するものと思われる。この作用により、本発明の難燃性樹脂組成物の成形体表面をこすっても白化現象は生じず、非常に高強度の成形体を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で添加物や他の樹脂を含有することができる。このような添加物としては、特に限定されないが、例えば、各種成形物品(例えば、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等)において一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを挙げることができる。
このように本発明の難燃性樹脂組成物および難燃性樹脂成形体は、硫化亜鉛を配合しなくても、高いポリ塩化ビニルに対する耐劣化性能を発揮するが、ポリ塩化ビニルに対する耐劣化性能をさらに高めることを目的とする場合には、硫化亜鉛を用いることもできる。
このようなシリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、「SFR−100」(商品名、GE社製)、「CF−9150」(商品名、東レ・ダウシリコーン社製)などの市販品が挙げられる。添加する場合、シリコーン化合物は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部配合される。シリコーン化合物の配合量が少なすぎると難燃性や滑性に対して実質的に効果が奏されないことがある。一方、シリコーン化合物の配合量が多すぎると電線、コード、ケーブルなどの難燃性物品の外観が低下し、押出成形速度が低下して量産性が悪くなることがある。
上述の成分(a)〜(c)を含有する熱可塑性樹脂(A)に、金属水和物(B)、さらに必要に応じて他の樹脂や添加物を加え、加熱混練する。混練温度は、難燃性樹脂組成物が溶融する温度であればよく、例えば熱可塑性樹脂(A)が溶融する温度で適宜設定できる。好ましくは160〜240℃である。混練時間等の混練条件も適宜に設定できる。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、装置としては例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された難燃性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の難燃性物品としては、本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成形体(本発明の難燃性樹脂成形体ということがある)を有する、例えば、シート、チューブ、配線材、光ファイバコード等が挙げられる。本発明の難燃性樹脂成形体は架橋成形体であっても非架橋成形体であってもよい。
例えば、導体の外周に本発明の難燃性樹脂組成物を用いた難燃性樹脂成形体を被覆層として形成することにより、絶縁電線やケーブルなどの本発明の難燃性物品を製造することができる。
被覆層は多層構造であってもよい。例えば、導体に絶縁層を形成した後に、本発明の難燃性樹脂組成物を用いた被覆層(本発明の難燃性樹脂成形体)を形成して、配線材とすることができる。本発明の難燃性物品の1つである配線材、例えば絶縁電線においては、導体の外周に形成される絶縁層(本発明の難燃性樹脂成形体)の肉厚は特に限定しないが0.15〜5mmが好ましい。
このような本発明の配線材等の難燃性物品は、例えば、本発明の難燃性樹脂組成物を、押出成形機を用いて、光ファイバ素線や光ファイバ心線の外周に押出被覆して製造することができる。このときの押出成形機の温度は、樹脂の種類、光ファイバ素線や光ファイバ心線等の引取り速度の諸条件にもよるが、例えば、シリンダー部で約180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。
本発明の光ファイバコードに用いられる光ファイバ心線は、用途によってはさらに周囲に被覆層を設けないものがそのまま使用される。被覆層の厚さ、光ファイバ心線に縦添えまたは撚り合わせる抗張力繊維の種類、量などは、光ファイバコードの種類、用途などによって異なり、適宜に設定することができる。
表1および表2に示す含有量(表中の数字は、特に断りのない限り質量部を表す。)で各成分を室温にてドライブレンドし、次いで、バンバリーミキサーを用いて、180〜230℃で溶融混練して、各難燃性樹脂組成物を調製した。
(a)エチレン−α−オレフィン共重合体
商品名:エボリュー SP0540(密度0.903g/cm3)、プライムポリマー社製
商品名:エボリュー SP2520(密度0.925g/cm3)、プライムポリマー社製
商品名:エボリュー SP4030(密度0.938g/cm3)、プライムポリマー社製
(a’)酸変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体
商品名:Fusabond E226(密度0.930g/cm3、無水マレイン酸変性)、Dupont社製
商品名:エバフレックス V5274(曲げ弾性率50MPa)、三井デュポンポリケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体
商品名:NUC6510(曲げ弾性率25MPa)、日本ユニカー社製、エチレン−アクリル酸エチル共重合体
商品名:ENGAGE7256(曲げ弾性率25MPa、密度0.885g/cm3)、Dow社製、エチレン−α−オレフィン共重合体
(b’)曲げ弾性率が100MPa未満の酸変性されたポリオレフィン樹脂
商品名:Kraton FG1901X(曲げ弾性率30MPa、無水マレイン酸変性、無水マレイン酸変性量1.5質量%)、Kratonpolymer社製、スチレン系エラストマー
商品名:アドマー XE070(曲げ弾性率35MPa、密度0.893g/cm3、無水マレイン酸変性)、三井化学社製、エチレン−α−オレフィン共重合体
商品名:HPR VR101(曲げ弾性率40MPa、無水マレイン酸変性)、三井デュポンポリケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体
商品名:PB222A、サンアロマー社製、ランダムポリプロピレン
商品名:BC8A、日本ポリプロ社製、ブロックポリプロピレン
商品名:ハイゼックス HZ5305E(密度0.951g/cm3)、プライムポリマー社製、高密度ポリエチレン(HDPE)
商品名:ノバテック LV244(曲げ弾性率140Pa)、日本ポリエチレン社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体
商品名:キスマ5L(シランカップリング剤処理)、協和化学工業社製、水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5(無処理)、協和化学工業社製、水酸化マグネシウム
(その他の成分)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
商品名:Irganox1010、BASF社製
金属不活性剤
商品名:IrganoxMD1024、BASF社製
ベンゾイミダゾール系酸化防止剤
商品名:ノクラックMBZ、大内新興化学社製
滑剤
商品名:AC−6、Honeywell社製、ポリエチレンワックス
架橋助剤
商品名:TMPT、新中村化学工業社製、トリメチロールプロパントリメタクリレート
日本自動車技術会規格(JASO) D611に準拠し、製造した各絶縁電線より導体を抜き取って管状片を作成し、引張試験を行った。標線間距離50mm、引張速度200mm/分で試験を行った。伸び(EL)150%以上、抗張力(TS)10.3MPa以上を合格とし、その値未満のものを不合格とした。
製造した各絶縁電線について、JASO D611に準拠し、ブレード往復試験を行った。50mmごとに円周方向に90度回転させて4回測定を行った。最小回数が100回以上を合格としたが、300回以上がより好ましい。
製造した各絶縁電線について、JASO D611に準拠し、水平燃焼試験を行った。各実施例及び比較例について同様にして製造した5個のサンプルを用いて評価を行った。残炎時間が30秒以下であれば合格である。全数合格した場合を「○(合格)」とし、それ以外を「×(不合格)」とした。
製造した各絶縁電線について、180度折り曲げた際に絶縁電線の表面が白化するかどうか目視にて確認した。表面が白化しなかった場合を「○(合格)」とし、表面が白化した場合を「×(不合格)」とした。
各絶縁電線を3mに切り出し、図1に示すヒートサイクル(24時間)を1サイクルとして30サイクル繰り返した後に、絶縁電線の端面から突き出た導体の突き出し量を測定した。図1(A)は実施例の耐収縮性におけるヒートサイクルにおける所要時間(図1(A)において単に時間と標記する)、積算時間および温度を示す表であり、図1(B)は実施例の耐収縮性におけるヒートサイクルにおける積算時間と温度との関係を示すグラフである。
耐収縮性は、導体の突き出し量が0.5mm以内のものを合格とし、0.5mmを超えるものを不合格とした。
JASO D609に準拠し、各絶縁電線の10000h寿命推定温度の評価を行った。製造した各絶縁電線より導体を抜き取って管状片を作成し、試験片とした。試験片を200℃、180℃、158℃で加熱後に引張試験を行い、各温度において伸び(EL)が100%まで低下した時間をそれぞれ算出した。得られた3点をもとにアレニウスプロットを作成し、10000h後に100%まで低下する温度を算出した。120℃以上のものを合格とし、120℃未満のものを不合格とした。
なお、比較例6、7、10および11は、いずれも、伸び(EL)が100%を下回っているため耐熱性の評価をしていないので、表2中、「−」で表記した。
実施例16で製造した絶縁電線について、特許文献1に準拠し、条件Aおよび条件Bにおけるポリ塩化ビニルに対する耐劣化性能試験を行った。
・条件A
絶縁被覆材としてポリ塩化ビニル(PVC)を導体の外周に押出被覆してなるPVC電線10本と、実施例16で製造した絶縁電線3本とをランダムに束ねて混在電線束とした。次いで、この混在電線束の外周に、ワイヤハーネス保護材としてのPVCシートを被覆した後、さらにこのPVCシートの端部に、ワイヤハーネス保護材としてのPVCテープを5回巻き付け、ワイヤハーネスを作製した。次いで、このワイヤハーネスを130℃、480時間の条件下で老化させた後、混在電線束中より実施例16で製造した絶縁電線を取り出し、自己径巻き付けにより3本とも絶縁被覆材に亀裂が生じないものを合格とし、3本のうち1本でも亀裂が生じたものを不合格とした。
・条件B
PVC電線3本と、実施例16で製造した絶縁電線3本とをランダムに束ねて混在電線束とした。次いで、この混在電線束の外周に、ワイヤハーネス保護材としてのPVCシートを被覆した後、さらにこのPVCシートの端部に、ワイヤハーネス保護材としてのPVCテープを5回巻き付け、ワイヤハーネスを作製した。次いで、このワイヤハーネスを130℃、480時間の条件下で老化させた後、混在電線束中より実施例16で製造した絶縁電線を取り出し、自己径巻き付けにより10本とも絶縁被覆材に亀裂が生じないものを合格とし、10本のうち1本でも亀裂が生じたものを不合格とした。
また、(a)エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が少なく、(b)ポリオレフィン樹脂の含有量が多い比較例2は耐磨耗性に劣っていた。
(a)エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が多く、(b)ポリオレフィン樹脂の含有量が少ない比較例3は柔軟性に劣っていた。また、(b)ポリオレフィン樹脂の含有量が少ない比較例4は柔軟性に劣っていた。
酸変性されている樹脂を全く含まない比較例8は伸び、耐磨耗性および耐熱性に劣っており、エチレン−α−オレフィン共重合体の全部が変性されている比較例11は伸びと柔軟性とが劣っていた。
さらに、(B)金属水和物の含有量が少ない比較例9は耐磨耗性と難燃性に劣り、(B)金属水和物の含有量が多い比較例10は伸びと柔軟性が劣っていた。
(b)ポリオレフィン樹脂を含有せず、曲げ弾性率を満たさないポリオレフィン樹脂を含有する比較例12は柔軟性に劣っていた。
Claims (8)
- (a)密度が0.900g/cm3以上0.950g/cm3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体32〜80質量%、(b)曲げ弾性率が100MPa未満のポリオレフィン樹脂10〜50質量%、および、(c)ポリプロピレン樹脂5〜18質量%からなる熱可塑性樹脂(A)100質量部と、金属水和物(B)50〜250質量部とを含有し、
前記(a)エチレン−α−オレフィン共重合体の一部、または、前記(b)ポリオレフィン樹脂の全部もしくは一部が酸変性されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - 前記(a)エチレン−α−オレフィン共重合体および前記(b)ポリオレフィン樹脂が、いずれも、酸変性されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(b)ポリオレフィン樹脂のうち酸変性されているポリオレフィン樹脂が、酸変性スチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 成形後に架橋して使用されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記架橋が、電子線の照射による架橋であることを特徴とする請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形し、架橋してなる難燃性樹脂成形体を含むことを特徴とする難燃性物品。
- 前記架橋が、電子線の照射による架橋であることを特徴とする請求項6に記載の難燃性物品。
- 前記難燃性樹脂成形体が、電線導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線の外周に被覆層として設けられてなることを特徴とする請求項6または7に記載の難燃性物品。
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