JP2020164695A - 樹脂組成物、及びそれを用いた配線材 - Google Patents

樹脂組成物、及びそれを用いた配線材 Download PDF

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Abstract

【課題】圧潰強度、降伏強度及び破断伸びに優れた配線材の被覆層を形成できる樹脂組成物、及びこの樹脂組成物からなる層を被覆層として有する配線材を提供する。【解決手段】ベース樹脂100質量部に対して、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2〜15質量部含有する樹脂組成物であって、ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂を10〜30質量%、前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を70〜90質量%含む、樹脂組成物、及び樹脂組成物を被覆層として有する配線材。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、及びそれを用いた配線材に関する。
配線材(絶縁電線若しくはケーブル、(電気)コード、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ケーブル等)は電力の輸送や情報の伝達に必要不可欠な社会インフラの一部である。これらの配線材は、電気的な絶縁、又は内部の導体若しくはファイバ素線の保護を目的に、プラスチック材料で形成された被覆層を有する。
配線材の被覆層を形成する樹脂組成物には、諸々の目的から金属水和物、添加剤等が添加され、その特性の改善が試みられている。
例えば、特許文献1は、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン系エラストマーを特定量含むベース樹脂100質量部に対して、金属水和物80〜120質量部、赤燐5〜9質量部、及びシリコーン化合物0.1〜3質量部を含有させた難燃性樹脂組成物を提案している。また、特許文献2は、特定の密度を有するポリエチレン樹脂及びエチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種と、酸変性ポリオレフィン樹脂を特定量含む樹脂成分100質量部に対して、水酸化マグネシウム95〜220質量部、水酸化アルミニウム15〜100質量部、シリコーン系滑剤を含む難燃性樹脂組成物を提案している。
特開2012−098315号公報 特開2014−189562号公報
スマートフォン、及びクラウドサービスの普及などにより、データ通信量が増大している。大都市などはもちろん、地方都市など人口が非過密である地域においても通信網の整備が広く勧められている。このため、通信網のより安価で効率的な構築が求められている。通信網構築においては、配線材は、通常、地下に埋設され、又は架設される。従来は、通信網の構築には、太径の配線材を使用していたが、コスト低減、軽量化のため、更には人口が非過密な地域では通信量自体が少ないため、細径の配線材を用いることが検討されている。
細径の配線材は、建物又は電柱に取り付けられた部材(支柱等という)等に巻き付けることによっても架設できるため、従来の太径の配線材を使用する場合に必要であった、配線材を把持具により締め付けて支柱等に留める加工を簡略化できる。しかし、近年、支柱間隔が広がっており、特に人口が非過密な地域では配線材を長い間隔(例えば、100m程度)で離れた支柱等に、架設する必要が出てきた。
支柱間の間隔が長くなるにつれて、巻き付け部の被覆層にかかる荷重が大きくなるため、特許文献1及び2に記載の樹脂組成物を被覆層に用いた配線材では、巻き付け部の被覆層が圧潰してしまい、電線であれば導体、光ファイバであれば鋼線、の錆の起因となるという問題があることが分かってきた。このため、圧潰強度に優れた配線材が求められている。
また、架設される配線材には、セミなどが配線材を木の幹と誤認して産卵管を挿入するなどの虫害により、内部の導体又は光ファイバ心線が損傷する、被覆層の圧潰部分若しくは形成されたピンポールから水が浸入して伝達特性を損なうなどの問題がある。このため、降伏強度に優れた配線材が求められている。
さらに、上記のような配線材には、一般的に、300%程度以上の破断伸びを示すことが求められている。
本発明は、圧潰強度、降伏強度及び破断伸びに優れた配線材の被覆層を形成できる樹脂組成物、及びこの樹脂組成物からなる層を被覆層として有する配線材を提供することを課題とする。
発明者らは、鋭意検討を行った結果、酸変性ポリオレフィン樹脂とそれ以外のポリオレフィン樹脂(X)を含有するベース樹脂に対して、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を特定量で配合した樹脂組成物が、優れた圧潰強度、降伏強度、及び破断伸びを有する被覆層を形成できることを見出した。さらに本発明者らは、この樹脂組成物を被覆層として有する配線材もまた、上記被覆層において優れた圧潰強度、降伏強度、及び破断伸びを有することを見出した。本発明者らは、この知見に基づき研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
〔1〕
ベース樹脂100質量部に対して、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2〜15質量部含有する樹脂組成物であって、
ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂を10〜30質量%、前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を70〜90質量%含む、樹脂組成物。
〔2〕
前記ベース樹脂がスチレン系エラストマーを15質量%以下含有する、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記ポリオレフィン樹脂(X)が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記ポリオレフィン樹脂(X)が、直鎖型低密度ポリエチレン及びエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の少なくとも1種を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸又はアクリル酸によって変性された、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸又はアクリル酸によって変性された、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの少なくとも1種を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物の被覆層を有する配線材。
〔8〕
前記配線材が、電線又は電力ケーブルである〔7〕に記載の配線材。
〔9〕
前記配線材が、光ケーブルである〔8〕に記載の配線材。
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方の意味で用いる。
本発明の樹脂組成物は、配線材の被覆層とした際に、優れた圧潰強度、降伏強度及び破断伸びを付与することができる。本発明の樹脂組成物の被覆層を有する配線材は、被覆層において優れた圧潰強度、降伏強度、及び破断伸びを有するものである。
本発明の光ケーブルの一態様の構造を表す端面図である。 本発明の光ケーブルの別の一態様の構造を示す端面図である。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ベース樹脂と粘土鉱物と4級アンモニウム塩とを、含有する。
ベース樹脂は、ベース樹脂100質量%中に、酸変性ポリオレフィン樹脂を10〜30質量%、酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を70〜90質量%含有する。粘土鉱物及び4級アンモニウム塩は、ベース樹脂100質量部に対して、合計量で2〜15質量部含有されている。
本発明において、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩は成分として樹脂組成物に含有されており、樹脂組成物及び被覆層中において、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩の含有若しくは存在する形態は、特に制限されず、例えば、それぞれ単独で含有若しくは存在する形態、複合体を形成して含有若しくは存在する形態、これらの態様が併存する態様が挙げられる。複合体は、粘土鉱物と4級アンモニウム塩とで形成されたものをいい、粘土鉱物と、4級アンモニウム塩を構成するイオンとで形成されていてもよい。
樹脂組成物は、非架橋物でもよく、架橋物でもよい。非架橋物であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、配線材の被覆層とした際に、優れた圧潰強度、降伏強度及び破断伸びを示す。本発明の樹脂組成物は、非架橋物であるか架橋物であるかにかかわらず、配線材の被覆層として用いた際に、これらの特性を示す。
本発明の樹脂組成物を用いた被覆層の圧潰強度は、用途等に応じて変動するので一義的ではないが、例えば、後述する圧潰強度試験に10分耐えうる圧潰強度を有することが好ましい。このような圧潰強度であると、50〜100m程度の長間隔の支柱間に架設した場合にも、巻き付け部が圧潰しにくい。また、降伏強度は、用途等に応じて変動するので一義的ではないが、例えば、14MPa以上が好ましく、15〜17MPaがより好ましい。14MPa以上の降伏強度とすると、産卵管等によっても損傷されにくく、虫害を防止できる。
また、本発明の樹脂組成物を用いた被覆層の引張強度は、15MPa以上が好ましく、17〜25MPaがより好ましい。さらに、破断伸びは、用途等に応じて変動するので一義的ではないが、300%以上が好ましく、350%以上が好ましく、上限は特に限定されないが、800%程度が実際的である。
粘土鉱物と4級アンモニウム塩の合計含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、2〜15質量部であり、3〜9質量部が好ましい。上記組成において含有量が3〜15質量部の範囲にあることにより、降伏強度と破断伸びとを両立することができる。粘土鉱物と4級アンモニウム塩との含有比(粘土鉱物:4級アンモニウム塩、質量比)は、特に制限されないが、例えば90:10〜60:40が好ましい。
粘土鉱物の含有量は、上記合計含有量を満たす限り特に制限されない。
4級アンモニウム塩の含有量は、上記合計含有量を満たす限り特に特に限定されないが、例えば、ベース樹脂100質量部に対して、0.4〜6質量部が好ましい。
樹脂組成物は、後述する酸化防止剤、及びカーボンブラックを含有していてもよい。酸化防止剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、1〜5質量部が好ましく、2〜3質量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物について、その成分、製造方法及び用途等を以下に詳細に説明する。
<ベース樹脂>
ベース樹脂は、本発明の樹脂組成物の樹脂成分として含有される。
ベース樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を含有する。ベース樹脂は、後述するスチレン系エラストマーを含有していてもよい。
本発明においては、ポリオレフィン樹脂を、酸変性ポリオレフィン樹脂と、酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)(すなわち、酸変性されていないポリオレフィン樹脂)とに大別する。
酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、10〜30質量%であり、10〜25質量%が好ましく、13〜20質量%がより好ましい。上記組成において含有量を10〜30質量%とすることで、粘土鉱物の分散性を向上させ、圧潰強度及び降伏強度を高めるこができる。
ポリオレフィン樹脂(X)の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、70〜90質量%であり、80〜85質量%が好ましい。上記組成において70〜90質量%とすることで、圧潰強度、降伏強度、及び破断伸びを高めることができる。
ベース樹脂は、後述するスチレン系エラストマーをさらに含んでいることが好ましく、その含有量は、ベース樹脂100質量%中において、15質量%以下が好ましく、5〜10質量%が好ましい。上記組成において含有量を15質量%以下とすることで、圧潰強度をより高めることができる。
以下、ベース樹脂の樹脂成分についてさらに詳細に説明する。
便宜上、ポリオレフィン樹脂(X)について、先に説明する。
− ポリオレフィン樹脂(X) −
ポリオレフィン樹脂(X)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物(通常、アルケン)を単独重合又は共重合して得られる重合体からなるポリオレフィン樹脂であって、酸変性されていないものであれば、特に限定されるものではなく、従来、公知の樹脂を使用することができる。
ポリオレフィン樹脂(X)に包含される樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)を有するポリオレフィン共重合体等の各樹脂が挙げられる。
本発明において、ポリオレフィン樹脂(X)は、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂及びエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の少なくとも1種が好ましい。
ポリオレフィン樹脂(X)に包含される樹脂成分について以下詳述する。
(ポリエチレン樹脂)
ポリエチレン樹脂は、エチレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、エチレンのみからなる単独重合体、エチレンとα−オレフィン(好ましくは5mol%以下)との共重合体(エチレン−α−オレフィン共重合体)(後述のポリプロピレン樹脂に該当するものを除く)、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ非オレフィン(好ましくは1mol%以下)との共重合体からなる各樹脂が包含される。なお、上述のα−オレフィン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(上述の低融点ポリプロピレン樹脂及び高融点ポリプロピレン樹脂に該当するものを除く)の樹脂が挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、1−プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン又は1−ドデセンが挙げられる。
本発明において用い得るポリエチレン樹脂としては、ポリエチレンの単独重合体の樹脂又はエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。中でも、直鎖型低密度ポリエチレンが好ましい。
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂は、主成分としてプロピレン構成成分を含む重合体を含むものであればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等の樹脂を使用することができる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分の含有量が1〜10質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。また、エチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレンやエチレン―プロピレンゴム(EPR)成分の含有量が5〜20質量%程度のものをいい、プロピレン成分の中にエチレンやEPR成分が独立して存在する海島構造であるものをいう。ポリプロピレン樹脂として特に好ましいものは特に低温での耐衝撃性の点で、エチレン―プロピレンブロック共重合体の樹脂である。エチレン成分含有量は、ASTM D3900に記載の方法に準拠して、測定される値である。
(酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂)
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂における酸共重合成分は、主鎖に組み込まれており、この点で、後述する酸変性ポリオレフィンとは異なる。酸共重合成分としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、並びに、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキル等の酸エステル化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数1〜12のものが好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
− 酸変性ポリオレフィン樹脂 −
酸変性ポリオレフィン樹脂は、上述のポリオレフィン樹脂(X)を、不飽和カルボン酸化合物(単に不飽和カルボン酸ともいう。)又はその無水物により変性した樹脂である。上記組成において、酸変性ポリオレフィン樹脂を特定量用いることにより、粘土鉱物の分散性を高めることができると考えられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を形成するポリオレフィン樹脂としては、上述のポリオレフィン樹脂(X)が挙げられ、上述の、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を形成する不飽和カルボン酸(無水物を含む)としては、上記ポリオレフィン樹脂と反応(例えばラジカル付加反応)しうる不飽和結合を有するカルボン酸が挙げられる。この不飽和カルボン酸は、カルボキシ基を1つ有するものでも、2つ以上有するものでもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸、並びにこれらの金属塩又は有機塩、さらには無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等の無水物を使用することができる。これらの不飽和カルボン酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、上記ポリオレフィンに対して不飽和基が反応して、不飽和カルボン酸由来の基を、通常は側鎖(ペンダント鎖、グラフト鎖等)として有するものが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、粘土鉱物との親和性の観点から、無水マレイン酸又はアクリル酸によって変性された、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はポリプロピレン樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸による変性量は、特に限定しないが、(変性前の)ポリオレフィン樹脂に対し、0.1〜2.0質量%が好ましく、さらには0.2〜1.0質量%が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、適宜に合成してもよく、市販品を用いてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂を合成する場合、通常、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下で、有機パーオキサイドの分解温度以上の温度で加熱・混練することにより、ポリオレフィン樹脂を変性(不飽和カルボン酸と反応)させて得ることができる。
− スチレン系エラストマー −
スチレン系エラストマーとしては、分子内に芳香族ビニル化合物に由来する構成成分を含むものをいう。このようなスチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体若しくはランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンーエチレンーブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水素化SBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水素化SIS、水素化スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等を挙げることができる。
スチレン系エラストマーは、不飽和カルボン酸又はその酸無水物により酸変性されていることが好ましい。酸変性スチレン系エラストマーを形成する不飽和カルボン酸(酸無水物を含む)としては、上述の酸変性ポリオレフィン樹脂において説明した不飽和カルボン酸を用いることができる。酸変性スチレン系エラストマーは、無水マレイン酸で変性されたスチレン系エラストマーが好ましい。
スチレン系エラストマーは、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<粘土鉱物>
粘土鉱物は、ベース樹脂中に分散し、樹脂組成物の降伏強度及び圧潰強度を高める。
粘土鉱物は、樹脂組成物に通常使用されているものを特に制限なく使用することができる。主成分としてケイ酸塩鉱物を含む粘土鉱物が好ましく、層状の結晶構造を有するケイ酸塩鉱物を含む粘土鉱物がより好ましい。粘土鉱物として、具体的には、カオリン鉱物(カオリナイト、ナクライト、デイッカイト、ハロイサイト)、雲母粘土鉱物、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなど)及び混合層鉱物等が挙げられる。
ケイ酸塩鉱物は、陽イオンを含んでいることが好ましく、層間に陽イオンを有していることが好ましい。陽イオンは通常Ca、Na、Kなどの金属カチオンである。
粘土鉱物は天然物であっても、水熱合成、溶融法、固相法などによる合成物であってもよい。粘土鉱物は、含まれるケイ酸塩が有する陽イオンの一部が、後述する4級アンモニウム塩に由来する4級アンモニウムカチオンにより置換された物質(例えば、複合体)の、市販品を用いてもよい。
粘土鉱物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
粘土鉱物は、粘土中に含まれた形態でもよい。粘土としては、モンモリロナイトを多く含む酸性白土及びベントナイト、カオリン鉱物を多く含むカオリンなどが挙げられ、ベントナイトが好ましい。
<4級アンモニウム塩>
本発明において、4級アンモニウム塩は、ベース樹脂への粘土鉱物の分散性を高める働きをする。粘土鉱物の分散性をより高める観点からは、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩は、予め、混合した混合物又は複合体として、用いることが好ましい。例えば、BYK社製のRXG7581(商品名)が挙げられる。
4級アンモニウム塩は、特に限定されず、例えば、NR で表されるものが挙げられる。式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基(−ROH、Rはアルキレン基を表す)、−(RO)H(Rはアルキレン基を表す、nは1〜20の整数を示す)、又はアリール基を表し、Xはカウンターイオンを表す。
複数のRは同一でもよく、異なっていてもよい。
Rが採りうるアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
又はRが採りうるアルキレン基としては、エチレン基が好ましい。
nは、1〜20の整数が好ましく、1〜10の整数がより好ましく、1〜5の整数がさらに好ましく、1が特に好ましい。
また、Xとしてはハロゲンイオンが好ましく、例えばCl、Brなどが挙げられる。
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、樹脂組成物において、一般的に使用されている各種の添加剤等を含有することができる。例えば、酸化防止剤、及びカーボンブラック等を挙げることができる。
− 酸化防止剤 −
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又は硫黄酸化防止剤等が挙げられ、フェノール酸化防止剤が好ましい。
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、後述する配線材に用いることができる。また、他の用途(ポリオレフィン容器、各種シール材等)に用いることができ、特に上記のような、降伏強度、圧潰強度、及び破断伸び等を要求される用途(例えば、シール用パッキン)に好ましく用いることもできる。)
本発明の樹脂組成物は、配線材に用いることが好ましい。
[配線材]
本発明の配線材は、本発明の樹脂組成物の被覆層を有する。よって、本発明の配線材は、本発明の樹脂組成物と同様に、圧潰強度、降伏強度及び破断伸びに優れる。
本発明の配線材は、留め具に巻き付けて留めることができ、留め具の間隔が長間隔(例えば、100m)となっても、巻き付け部が容易に圧潰せず、巻き付け部での支持線等の断線を防ぐことができる。
本発明の配線材は、降伏強度が高いため、セミなどの産卵管等が挿入されにくく、被覆層が破壊されにくい。
本発明の配線材は、破断伸びに優れる。
配線材としては、例えば、絶縁電線若しくはケーブル、(電気)コード、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ケーブル等が挙げられる。これらは、屋内に配設される電線又はケーブル、屋外に配設される電線又はケーブルを含み、屋外用が好ましい。これらは、車両(自動車若しくは鉄道車両等)用電線若しくはケーブル、通信用電線若しくはケーブル、通信用光ファイバ若しくは光ケーブル、又は、電力用電線若しくはケーブルとして用いることができる。
配線材としては、特に、光ケーブルが好ましい。
配線材が、光ケーブルである場合の一実施形態について図1を参照しながら説明する。
図1は、光ケーブルの長尺方向に垂直な端面を示す。
図1に示す光ケーブル1は、光ファイバ心線10と、光ファイバ心線10の周囲(外周面)に本発明の樹脂組成物の被覆層(シース)20とを有する。
光ケーブルは、上記構成を有していれば、その他の形態は特に限定されず、被覆層の数、光ファイバ心線の数、光ファイバ心線の配置等は用途に応じて適宜設定することができる。被覆層が複層構造を有する場合、最外層に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、光ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
光ファイバ心線は、光ファイバ素線そのものでもよく、光ファイバ素線の外周面に被覆層を有するものでもよい。光ファイバ素線上に被覆層を有する場合は、上記図1の構成において、被覆層が複層構造である場合に相当する。光ファイバ心線としては、通常のものを用いることができる。
光ファイバ素線としては、通常のものを用いることができる。石英ファイバが好ましい。
光ファイバ及び光ファイバ素線の外径は、用途などに応じて、適宜に設定される。被覆層、特に本発明の樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に設定されるが、本発明の樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2〜3mmが好ましい。
光ケーブルは、テンションメンバを有していてもよい。テンションメンバは、光ファイバ心線の外周を覆うように配置されていてもよく、光ファイバ心線から離間して配置されていてもよい。
図2は、配線材が、光ケーブルである場合の別の一実施形態を示す。
図2は、光ケーブルの長手方向に垂直な端面を示す。
図2に示す光ケーブル2は、光ファイバ心線11と、光ファイバ心線11の両側に配置された2つのテンションメンバ31と、これらの周囲に本発明の樹脂組成物の被覆層(シース)21とを有する光ファイバ部と、鋼線41とこの周囲に本発明の樹脂組成物の被覆層21を有する支持線部とを有する。
光ファイバ部において、被覆層21は、光ケーブル2の長手方向に垂直な断面形状が略長方形であり、断面形状の2つの長辺の中央付近にそれぞれノッチ51を有する。
テンションメンバとしては、通常、光ケーブルに使用されるものを適宜使用することができる。好ましくは、ケブラーのような芳香族ポリアミド繊維、ナイロンのようなポリアミド繊維、PBO繊維、鋼線等である。
ノッチは形成してもしなくてもよい。ノッチを形成する場合には、ノッチの形状、数、配置は特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。
支持線部は、1か所でもよく、複数形成してもよい。また、支持線部の配置は図示したものに限られない。支持線部と光ファイバ部とは、長尺方向に連続的に結合していてもよく、間欠的に切り離されていてもよい。
鋼線としては、通常、光ケーブルに使用されるものを適宜使用することができる。鋼線の数、配置は特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。鋼線は、接着剤層(例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂層)を有していてもよい。
配線材が、絶縁電線である場合、絶縁電線は、導体と、導体の周囲に本発明の樹脂組成物の被覆層とを有する。例えば、図1において、光ファイバ心線10を導体に変更した構成とすることができる。
導体としては、絶縁電線に通常用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、軟銅若しくは銅合金、又は、アルミニウム等の単線若しくは撚線等の金属導体が挙げられる。また、導体としては、裸線の他に、錫メッキしたもの、エナメル被覆層を有するもの等を用いることもできる。被覆層が複層構造を有する場合、最外部に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、絶縁電線に通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
絶縁電線及び導体の外径は、用途などに応じて、適宜に設定される。被覆層、特に本発明の樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に設定されるが、本発明の樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2〜3mmが好ましい。
配線材が、ケーブルである場合、ケーブルは、導体と、この導体の周囲に被覆層を有する絶縁電線を複数束ね又は拠り合わせ、これらを一括して被覆する被覆層(シース)を有する。例えば、図1において、光ファイバ心線10を絶縁電線を複数撚り合わせたものに変更した構成とすることができる。このケーブルにおいて、導体の周囲の被覆層及びシースのいずれか、又は、両方を本発明の樹脂組成物で形成する。
ケーブルの上記以外の構成は、特に限定されず、通常のケーブルと同様の構成を採用することができる。
絶縁電線としては、ケーブルに通常用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、上記絶縁電線を用いることができる。
被覆層が複層構造を有する場合、最外部に配置される被覆層を含む少なくとも1層が本発明の樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
ケーブル及び絶縁電線の外径は、用途などに応じて、適宜に設定される。被覆層、特に本発明の樹脂組成物により形成された被覆層の厚さは、用途などに応じて、適宜に設定されるが、本発明の樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点において、0.2〜3mmが好ましい。
[樹脂組成物の調製及び配線材の製造]
樹脂組成物は、ベース樹脂、粘土鉱物、4級アンモニウム塩、必要に応じて、他の添加物(例えば、酸化防止剤、カーボンブラック)を溶融混練して、調製される。
混練温度や混練時間などの混練条件は、特に限定されず、ベース樹脂の溶融温度以上の温度範囲内で適宜に設定できる。混練温度は、例えば、120〜220℃とすることが好ましい。
混練方法としては、ゴム又はプラスチックの溶融混練などで通常用いられる方法であれば、特に限定されない。用いる装置としても、特に限定されず、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダーなどが挙げられる。
この溶融混練により、各成分が均一に分散(混合)された、未架橋又は非架橋の樹脂組成物を得ることができる。
粘土鉱物と4級アンモニウム塩とは、予めこれらを混合して複合体(混合物)としてから、他の成分と混練することが好ましい。4級アンモニウム塩と粘土鉱物との複合体の市販品を使用してもよい。このような複合体を、ベース樹脂と混練すると、混練時のせん断力により粘土鉱物の凝集が解かれ、粘土鉱物がより高度に分散した樹脂組成物を得ることができると考えられる。
混練の際には、各成分を一度に溶融混練することもできるし、酸変性ポリオレフィン樹脂の全部又は一部と粘土鉱物と4級アンモニウム塩とを、又は、酸変性ポリオレフィン樹脂の全部又は一部と上述の4級アンモニウム塩と粘土鉱物との複合体とを、溶融混練したマスターバッチを予め作成し、このマスターバッチと残りの成分とを溶融混練することもできる。
本発明の樹脂組成物が架橋物である場合、上記の未架橋の樹脂組成物ないしは後述する成形体を、架橋する。本発明においては、成形容易性の点において、上記の未架橋の樹脂組成物を成形した後に架橋することが好ましい。架橋方法としては、特に限定されず、電子線架橋法又は化学架橋が挙げられる。化学架橋法としては、例えば、フェノール架橋、アミン架橋、シラン架橋又はパーオキサイド架橋等が挙げられる。架橋方法については後述する。
本発明の配線材は、上述のようにして調製した樹脂組成物を用いて、製造する。製造方法は、配線材等の構造、形状又は寸法等に応じて、適宜の成形方法、加工方法が採用される。
本発明の配線材は、光ケーブル、又は電線等の製造に通常採用される方法により樹脂組成物を用いて製造することができる。例えば、光ケーブルの場合、樹脂組成物を光ファイバ心線の外周面に押出成形して、被覆層を形成することにより、製造することが好ましい。この工程により、光ファイバ心線の外周面に、非架橋物である樹脂組成物からなる被覆層を形成することができる。
樹脂組成物等の押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、押出成形することにより行うことができる。押出成形機の温度は、樹脂の種類、導体などの引取り速度の諸条件により、一義的には特定できない。例えば、シリンダー部で120〜220℃程度、クロスヘッド部で160〜220℃程度にすることが好ましい。
樹脂組成物が架橋物である場合、好ましくは、上記のようにして押出被覆した、未架橋状態の樹脂組成物を架橋する。被覆層を架橋物により形成すると、耐熱性及び難燃性のさらなる向上が可能となる。
架橋は、上述の架橋方法に応じて、適宜の方法ないし条件を採用することができる。
電子線架橋法により架橋する場合、未架橋状態の樹脂組成物に電子線を1〜30Mradの線量で照射して架橋することが好ましい。化学架橋法により架橋する場合、未架橋状態の樹脂組成物を加熱して、架橋剤と反応させることにより架橋することが好ましい。
上述のようにして、本発明の樹脂組成物が調製され、またこれを用いた本発明の配線材が製造される。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1において、各実施例及び比較例における配合組成の数値は、特に断らない限り質量部を表し、空白は該当する成分が無含有であることを表す。
表1中に示す各成分は以下の通りである。
LLDPE:FB2230(商品名)、Borealis社製
マレイン酸変性PP1:TPPP2112(商品名)、BYK社製、マレイン酸変性ポリプロピレン
マレイン酸変性PE:L6100M(商品名)、日本ポリエチレン社製、マレイン酸変性ポリエチレン
マレイン酸変性PP2:QE800(商品名)、三井化学社製、マレイン酸変性ポリプロピレン
マレイン酸変性SEBS:クレイトンFG1901G(商品名)、クレイトンポリマー社製、マレイン酸変性スチレン系エラストマー
4級アンモニウム処理粘土:RXG7581(商品名)、BYK社製、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(CAS.61789−80−8)で処理されたベントナイト(上述の、粘土鉱物と4級アンモニウム塩との混合物又は複合体として用いた。)
焼成粘土:SATINTON SP33(商品名)、カオリン(4級アンモニウム未処理品)、BASF社製
酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名)、BASFジャパン社製
カーボンブラック:旭#70(商品名)、旭カーボン社製
(実施例1〜9、比較例1〜9)
表1に示す配合量の各成分を2Lインテンシブミキサーで、130℃で混練開始し、ゲル化後3分混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、ロール加工機を用いてシート成形してペレット化した。
得られた樹脂組成物について、以下の試験を行った。
<引張試験方法>
上記ペレットを、スクリュー径25mm、L/D24の押出機を用いて、押出樹脂温度210℃で、厚さ1mm、幅10〜22mmに押し出した。得られたシートを打ち抜いて、JIS K 7127で規定される、タイプ5号ダンベル試験片を作成した。この試験片を用いて、JIS K 7161に準拠して、標線間25mm、引張速度200mm/分の条件により、引張試験を行った。
本試験において、降伏強度(引張降伏応力)は14MPa以上が配線材の被覆材として合格レベルである。また、破断伸びは300%以上が、配線材の被覆材として合格レベルである。
また、好ましい特性として引張強度を測定した。引張強度としては15MPa以上を合格とした。
<圧壊強度試験方法>
直径1.2mmの鋼線に0.1mmの厚さでマレイン酸変性ポリエチレン(L6100M)を被覆し直径1.4mmとした。上記ペレットをシリンダー径30mmの押出機に導入し、得られた被覆導体の外側に、0.4mmの厚さで押出被覆し、外径2.2mmの被覆体を得た。
得られた被覆体を500〜700mmに切取り、直径20mmのマンドレルに1周巻き付け、被覆体の一方の端部を固定し、固定端の反対側の端部に102kgf(1000N)の荷重をかけた。102kgfは、50〜100m程度の長間隔の支柱間に上記被覆体を架設した場合に想定される最大荷重である。
10分荷重後に、マンドレルに巻き付けた部分の被覆体表面を観察し被覆層(マレイン酸変性ポリエチレン層と樹脂組成物層)の状態を確認した。
評価を◎○×の3段階で行った。

×:10分経過前に被覆層が破断し鋼線が露出したもの
○:10分後に被覆層が破断せず鋼線が露出しなかったもの
◎:10分後に被覆層が破断せず鋼線が露出せず、かつ被覆層の変形が小さかったもの(被覆層の変形が小さいとは、被覆体の表面と鋼線の表面との間に厚さ方向に0.1mm以上の樹脂(被覆層)が存在している状態であることをいう)
得られた結果を表1に示す。
Figure 2020164695
ベース樹脂中の酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量が少なすぎる比較例1〜5は、いずれも圧潰強度に劣っていた。また、比較例1、3〜5は、降伏強度にも劣っていた。粘土鉱物と4級アンモニウム塩とを含まない比較例6は、降伏強度及び圧潰強度に劣っていた。粘土鉱物と4級アンモニウム塩の合計含有量が多すぎる比較例7は、破断伸びに劣っていた。酸変性ポリオレフィン樹脂の多すぎる比較例8は、破断伸び及び圧潰強度に劣っていた。4級アンモニウム塩を含まない比較例9は、降伏強度及び圧潰強度に劣っていた。
これに対し、粘土鉱物と4級アンモニウム塩とを特定量含有し、ベース樹脂に酸変性ポリオレフィン樹脂を特定量含有する実施例1〜9は、いずれも降伏強度、破断伸び及び圧潰強度に優れていた。
1、2 光ケーブル
10、11 光ファイバ心線
20、21 被覆層
31 テンションメンバ
41 鋼線
51 ノッチ

Claims (9)

  1. ベース樹脂100質量部に対して、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2〜15質量部含有する樹脂組成物であって、
    ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂を10〜30質量%、前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を70〜90質量%含む、樹脂組成物。
  2. 前記ベース樹脂がスチレン系エラストマーを15質量%以下含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィン樹脂(X)が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリオレフィン樹脂(X)が、直鎖型低密度ポリエチレン及びエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸又はアクリル酸によって変性された、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸又はアクリル酸によって変性された、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の被覆層を有する配線材。
  8. 前記配線材が、電線又は電力ケーブルである請求項7に記載の配線材。
  9. 前記配線材が、光ケーブルである請求項8に記載の配線材。
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