JP2012135917A - プレコートアルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成処理皮膜と;当該化成処理皮膜の表面に形成した下塗り層と;当該下塗り層の表面に形成した上塗り層と;を含み、前記下塗り層が、エポキシ系樹脂からなるベース樹脂を含み3〜8μmの乾燥厚さを有し、前記上塗り層が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15のベース樹脂と絶縁性添加剤とを含み35〜60μmの乾燥厚さを有し、当該上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2以下であることを特徴とするプレコートアルミニウム材ならびに、その製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は請求項1において、アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成処理皮膜と;当該化成処理皮膜の表面に形成した下塗り層と;当該下塗り層の表面に形成した上塗り層と;を含み、前記下塗り層が、エポキシ系樹脂からなるベース樹脂を含み3〜8μmの乾燥厚さを有し、前記上塗り層が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15のベース樹脂と絶縁性添加剤とを含み35〜60μmの乾燥厚さを有し、当該上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2以下であることを特徴とするプレコートアルミニウム材とした。
本発明で用いるアルミニウム基材は特に限定されるものではないが、材質としては1000系、3000系及び5000系のアルミニウム合金が好ましく、形状としては0.1〜2.0mm厚さのものが好適に用いられる。
アルミニウム基材表面には、化成処理皮膜が形成される。化成処理皮膜としては、塗布型及び反応型の皮膜を用いることができる。塗布型及び反応型の皮膜のいずれでもよく、特に制限されるものではないが、アルミニウム基材と下塗り層の両方に対して密着性が良好な反応型の化成処理皮膜を用いるのが好ましい。反応型の化成処理皮膜には、りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の処理液で形成される皮膜が挙げられる。特に、耐食性や密着性に優れるりん酸クロメート皮膜が好ましい。
(3−1)乾燥厚さ
下塗り層の乾燥厚さは3〜8μmである。この厚さが3μm未満であると、厚さが不足して高温水処理後の耐電圧性が劣る。一方、乾燥厚さが8μmを超えると曲げ加工性が劣る。
下塗り層に用いるベース樹脂は、エポキシ系樹脂である。エポキシ系樹脂は耐高温水性に優れる樹脂であり、フッ素系樹脂との間に十分な密着性を確保することができる。このようなエポキシ系樹脂としては、飽和又は不飽和;環状又は非環状;脂肪族、環状脂肪族、芳香族又は複素環族;のものを用いることができる。また、適当な置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基及びエーテル基を有していてもよい。
(4−1)乾燥厚さ
上塗り層の乾燥厚さは、35〜60μmである。35μm未満では高温水処理後の耐電圧性が劣り、60μmを超えると曲げ加工性が劣る。上塗り層は二層構成であることが好ましく、その場合には、下塗り層表面に形成される第1上塗り層の乾燥厚さが5〜10μm、第1上塗り層表面に形成される第2上塗り層の乾燥厚さが30〜50μmであることが好ましい。第1上塗り層の乾燥厚さが5μm未満では高温水処理後の耐電圧性が劣る場合があり、10μmを超えると曲げ加工性が劣る場合がある。また、第2上塗り層の乾燥厚さが30μm未満では高温水処理後の耐電圧性が劣る場合があり、50μmを超えると曲げ加工性が劣る場合がある。
上塗り層に用いられるベース樹脂は、ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル系樹脂の混合物である。ポリフッ化ビニリデン樹脂は耐高温水性に優れ、樹脂皮膜表面の表面エネルギーを小さくすることにも寄与する。アクリル系樹脂は耐高温水性に若干劣るが、下塗り層との密着性を向上させることに寄与する。ポリフッ化ビニリデン樹脂としては、重量平均分子量が300000〜700000、融点が150〜180℃のものが好ましい。
高温水処理後においては、上塗り層に含まれるアクリル系樹脂が劣化する。そのため、上塗り層に絶縁性添加剤が含有されていないと耐電圧性が劣るが、絶縁性添加剤が含有されることにより耐電圧性が良好となる。絶縁性添加剤としては、酸化チタン及びアルミナの少なくとも一方を含有することが好ましい。上塗り層に含有される絶縁性添加剤の配合割合は、ベース樹脂100重量部に対して80〜182重量部であるのが好ましい。また、上塗り層が二層構造の場合には、第2上塗り層における絶縁性添加剤の配合割合はベース樹脂100重量部に対して80〜140重量部であることが好ましく、第1上塗り層における絶縁性添加剤の配合割合は第2上塗り層における配合割合の1.1〜1.3倍であることが好ましい。
上塗り層における表面エネルギーは、50mJ/m2以下である。この表面エネルギーが50mJ/m2を超えると、表面の濡れ性が向上して水分が表面に濡れ広がる。そうすると、アルミニウム材に電流を流した際に発生する熱により、濡れ広がった上塗り層表面の水分が蒸発する。その結果、濡れ広がった部分では、熱によって上塗り層が炭化し易くなり耐トラッキング性に劣ることになる。水分の濡れ性を抑制して濡れ広がらないようにすれば、炭化部分も少なくトラッキング性の低下も抑制できる。なお、表面エネルギーは、好ましくは45mJ/m2以下である。
(7−1)化成処理工程
アルミニウム基材にりん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の処理液をスプレーし、或いは、これら処理液に浸漬することによって化成処理を施し、アルミニウム基材表面に化成処理皮膜が形成される。処理液には、市販のものが用いられる。処理温度及び処理時間は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
上記化成処理皮膜の表面に、ベース樹脂であるエポキシ系樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗料をロールコートによって塗布する。塗料中のエポキシ系樹脂の含有量は、10〜60重量%である。なお、必要に応じて、防錆剤、レベリング剤、充填剤等を添加してもよい。溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の有機溶媒や水等の水性溶媒が用いられる。ロールコートでは、通常、塗料をパンに溜めておき、ピックアップロールでパンから塗料をかきあげ、アプリケーターロールに転移し、次いで、アルミニウム基材表面の化成処理皮膜上に塗料を転移させる。アルミニウム基材の搬送はバックアップロールを用いて行う。なお、焼付乾燥後における下塗り層の乾燥厚さが3〜8μmとなるように、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整する。
上記下塗り層の表面に、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル樹脂の重量割合が50/50〜85/15であるベース樹脂と絶縁性添加剤を溶媒に溶解又は分散させた塗料をロールコートによって塗布する。塗料中のベース樹脂の含有量は、10〜60重量%であり、ベース樹脂に対する絶縁性添加剤の添加量は上述の通りである。なお、必要に応じて、防錆剤、レベリング剤、充填剤等を添加してもよい。溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の有機溶媒や水等の水性溶媒が用いられる。ロールコートでは、通常、塗料をパンに溜めておき、ピックアップロールでパンから塗料をかき上げ、アプリケーターロールに転移し、次いで、下塗り層上に塗料を転移させる。アルミニウム基材の搬送はバックアップロールを用いて行う。なお、焼付乾燥後における上塗り層の乾燥厚さが5〜10μmとなるように、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整する。
一層構造の上塗り層に代えて二層構造の上塗り層は、以下のようにして形成される。
一層構造の上塗り層用の塗料に代えて、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル樹脂の重量割合が50/50〜60/40である第1ベース樹脂と絶縁性添加剤を溶媒に溶解又は分散させた第1塗料を用いて、下塗り層表面に第1上塗り層を形成する。この第1塗料を、一層構造の上塗り層の場合と同様にして、下塗り層上に塗布する。塗布量は、焼付乾燥後における乾燥厚さが5〜10μmとなるように、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整する。なお、第1塗料中のベース樹脂の含有量は、10〜60重量%であり、ベース樹脂に対する絶縁性添加剤の添加量は上述の通りである。また、必要に応じた添加剤の添加、塗料の溶媒、ならびに、ロールコートの方法は、一層構造の上塗り層の形成の場合と同じである。
上記のようにして塗布した第1上塗り層の焼付工程の条件(焼付け温度及び焼付け時間)は、一層構造の上塗り層の形成の場合と同じである。
上記のようにして塗布した第2上塗り層の焼付工程の条件(焼付け温度及び焼付け時間)も、一層構造の上塗り層の形成の場合と同じである。
アルミニウム基材として、アルミニウム合金板(材質:JIS A5052、板厚:0.6mm)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にてアルカリ洗浄処理を行い、水洗後に市販のりん酸クロメート処理液により両面を化成処理した。次いで、表1〜4に示す下塗り層用塗料をロールコートで塗布し熱風炉で焼付けて、下塗り層を形成した。焼付け条件は、本発明例1〜10及び比較例1〜9に関しては、最高到達板温度が200℃、焼付時間が50秒であった。本発明例11〜13及び17〜19に関しては、最高到達板温度が180℃、焼付時間が20秒であった。本発明例14〜16及び20〜22、比較例11、12、13、16、18、19に関しては、最高到達板温度が220℃、焼付時間が80秒であった。比較例10、15に関しては、最高到達板温度が170℃、焼付時間が15秒であった。比較例14、17に関しては、最高到達板温度が230℃、焼付時間が90秒であった。
接触角計を用いて、対水接触角と対ヨウ化メチレン接触角を測定し、下記(1)式により算出した。
γ=6.281cosθw+1.132cosθm−0.1541 (1)
ここで、γ:表面エネルギー(mJ/m2)、θw:対水接触角 (ラジアン)、θm:対ヨウ化メチレン接触角(ラジアン)である。
塩化アンモニウム水溶液(0.1wt%)を用い、CTI値を測定した。評価の基準は、以下の通りである。
○:CTI≧200V
×:CTI<200V
プレッシャークッカー試験を8時間行った試験片について、耐電圧試験(試験電圧:1kV、印加時間:1分間)を行った。評価の基準は、以下の通りである。
○:絶縁破壊なし
×:絶縁破壊あり
○:割れなし
△:小さな割れがあるが使用可能
×:大きな割れあり使用不可
○:剥離なし
×:剥離あり
比較例1では、下塗り層の乾燥厚さが3μm未満の為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例2では、下塗り層の乾燥厚さが8μmを超えた為に、曲げ加工性(耐割れ性及び密着性)が不合格であった。
比較例3では、第1上塗り層の乾燥厚さが5μm未満の為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例4では、第1上塗り層の乾燥厚さが10μmを超えた為に、曲げ加工性(耐割れ性及び密着性)が不合格であった。
比較例5では、第2上塗り層の乾燥厚さが30μm未満の為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例6では、第2上塗り層の乾燥厚さが50μmを超えた為に、曲げ加工性(耐割れ性及び密着性)が不合格であった。
比較例7では、上塗り層に絶縁性添加剤を含有しない為、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例8では、下塗り層のベース樹脂にエポキシ系樹脂を用いずポリステル系樹脂を用いた為、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例9では、第2上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が65/35〜85/15の範囲内になく、かつ、上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2を超えていたため、耐トラッキング性が不合格であった。
比較例10では、下塗り層の乾燥厚さが3μm未満の為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例11では、下塗り層の乾燥厚さが8μmを超えた為に、曲げ加工性(耐割れ性)が不合格であった。
比較例12では、第1上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15の範囲内になく、かつ、上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2を超えていたため、耐トラッキング性が不合格であった。
比較例13では、第1上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15の範囲内になく、ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量割合が多過ぎたため、塗装外観が劣り評価できなかった。
比較例14では、下塗り層の乾燥厚さが3μm未満であり、かつ、第1上塗り層の厚さが35μm未満の為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例15では、第1上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15の範囲内にない為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例16では、第1上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15の範囲内にない為に、曲げ加工性(耐割れ性)が不合格であった。
比較例17では、第1ベース樹脂のポリフッ化ビニリデン樹脂に代えてポリエステル系樹脂を用いた為に、高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
比較例18では、第2上塗り層におけるポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15の範囲内になく、ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量割合が多過ぎたため、塗装外観が劣り評価できなかった。
比較例19では、第2ベース樹脂のポリフッ化ビニリデン樹脂に代えてポリエステル系樹脂を用いた為に、耐トラッキング性及び高温水処理後の耐電圧性が不合格であった。
Claims (6)
- アルミニウム基材と;当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した化成処理皮膜と;当該化成処理皮膜の表面に形成した下塗り層と;当該下塗り層の表面に形成した上塗り層と;を含み、前記下塗り層が、エポキシ系樹脂からなるベース樹脂を含み3〜8μmの乾燥厚さを有し、前記上塗り層が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15のベース樹脂と絶縁性添加剤とを含み35〜60μmの乾燥厚さを有し、当該上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2以下であることを特徴とするプレコートアルミニウム材。
- 前記上塗り層が、前記下塗り層の表面に形成した第1上塗り層と;当該第1上塗り層の表面に形成した第2上塗り層と;からなり、前記第1上塗り層が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜60/40の第1ベース樹脂と絶縁性添加剤とを含み5〜10μmの乾燥厚さを有し、前記第2上塗り層が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が65/35〜85/15の第2ベース樹脂と絶縁性添加剤とを含み30〜50μmの乾燥厚さを有し、当該第2上塗り層の表面エネルギーが50mJ/m2以下である、請求項1に記載のプレコートアルミニウム材。
- 前記絶縁性添加剤が酸化チタン及びアルミナの少なくとも一方を含有する、請求項1又は2に記載のプレコートアルミニウム材。
- アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に化成処理皮膜を形成する工程と;当該化成処理皮膜の表面にエポキシ系樹脂からなるベース樹脂を含む塗料を塗布し、最高到達板温度180〜220℃で20〜80秒間焼付けて、乾燥厚さ3〜8μmを有する下塗り層を形成する工程と;ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜85/15のベース樹脂と絶縁性添加剤とを含む塗料を前記下塗り層の表面に塗布し、最高到達板温度230〜280℃で20〜80秒間焼付けて、乾燥厚さ35〜60μmを有する上塗り層を形成する工程と;を含むことを特徴とするプレコートアルミニウム材の製造方法。
- 前記上塗り層の形成工程が、ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が50/50〜60/40の第1ベース樹脂と絶縁性添加剤とを含む第1塗料を前記下塗り層の表面に塗布し、最高到達板温度230〜280℃で20〜80秒間焼付けて、乾燥厚さ5〜10μmを有する第1上塗り層を形成する工程と;ポリフッ化ビニリデン樹脂/アクリル系樹脂の重量割合が65/35〜85/15の第2ベース樹脂と絶縁性添加剤とを含む第2塗料を前記第1上塗り層の表面に塗布し、最高到達板温度230〜280℃で20〜80秒間焼付けて、乾燥厚さ30〜50μmを有する第2上塗り層を形成する工程と;からなる、請求項4に記載のプレコートアルミニウム材の製造方法。
- 前記絶縁性添加剤が酸化チタン及びアルミナの少なくとも一方を含有する、請求項4又は5に記載のプレコートアルミニウム材の製造方法。
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