JP2012134386A - 太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の太陽電池は、p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた光吸収半導体層とを備え、前記光吸収半導体層は、少なくとも2つ以上のエネルギー準位を前記光吸収半導体層の禁制帯中に備えていることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
また、トンネル障壁を有し無機マトリックス内に埋め込まれた複数の量子ドットを備える中間バンド太陽電池やエネルギー囲み障壁に埋設された量子ドットを有する中間バンド太陽電池が知られている(特許文献1及び2参照)。
また、非特許文献2にはInGaAsで作製された中間バンド太陽電池の現象を説明するために複数の中間バンドを用いた中間バンド太陽電池のモデルが示されている。
この発明によれば、エネルギー変換効率がより高い太陽電池が提供される。
ここで、前記光吸収半導体層は、光を吸収する半導体で形成された層をいい、例えば、超格子半導体層がこれに該当する。また、前記エネルギー準位は、量子準位や中間バンドであってもよい。
また、この発明の実施形態において、p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、前記超格子半導体層は、障壁層と、量子ドットからなる量子ドット層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、前記量子ドットの量子準位が、前記量子ドットの伝導帯、価電子帯のいずれかと前記障壁層の禁制帯とに少なくとも2つ以上形成されている太陽電池であってもよい。
また、この発明の実施形態において、p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、前記超格子半導体層は、障壁層と、量子ドットからなる量子ドット層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、前記超格子構造により量子ドット間の波動関数が電子的に結合して、少なくとも2つ以上の中間バンドが前記量子ドットの伝導帯、価電子帯のいずれかと前記障壁層の禁制帯とに形成されていることを特徴とする太陽電池であってもよい。
以下、上記中間バンドが形成されている実施形態を例に説明する。
量子ドットとは、100nm以下の粒子サイズを有する半導体微粒子であり、量子ドットを構成する半導体よりもバンドギャップの大きい半導体で囲まれた微粒子である。
量子井戸とは、100nm以下の厚みを有する半導体薄膜であり、量子井戸を構成する半導体よりもバンドギャップの大きい半導体で囲まれた薄膜である。
量子ドット層とは、複数の量子ドットで構成される層であり、超格子構造の井戸層となる。
量子準位とは、障壁層と量子ドットまたは量子井戸から形成される電子の離散的なエネルギー準位をいう。また、量子準位のことを量子エネルギー準位ともいう。
障壁層とは、量子ドットを構成する半導体よりもバンドギャップの大きい半導体からなり、超格子構造を構成する。
中間バンドとは、前記障壁層を構成する半導体において、禁制帯の中間に形成される1つに繋がったバンドをいう。
なお、超格子構造の井戸層の電子の波動関数が隣接井戸層の電子の波動関数と相互作用し、量子井戸の量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ、量子準位が1つに繋がって形成される中間バンドをミニバンドともいう。
ΔEvi2≧(Eg/2)(単位:eV)・・・(1)
また、より好ましくは、下記の式(2)を満たす。
ΔEvi2≧(Eg/2+0.125)(単位:eV)・・・(2)
このような式を満たす形態であれば、前記量子ドット層の伝導帯底と障壁層の伝導帯底の間のポテンシャルを用いて2つの中間バンドを形成する場合、最も低い中間バンドのエネルギー準位が前記障壁層の伝導帯底に近いので、超格子構造の量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。このため、量子準位が1つに繋がった中間バンドを形成しやすくなり、キャリア移動が起こりやすくなる。
例えば、前記中間バンドが3つであってもよい。より詳細には、前記障壁層の伝導帯の底を構成するエネルギー準位と、前記障壁層の価電子帯の頂上を構成するエネルギー準位と、これら準位との間にある3つの量子準位とを前記超格子半導体層が有し、前記量子準位が3つの中間バンドを形成する太陽電池であってもよい(以下、この明細書において、5準位中間バンド太陽電池と呼ぶ)。
ΔEvi13≧(Eg/2)(単位:eV)・・・(3)
また、より好ましくは、下記の式(4)を満たす。
ΔEvi13≧(Eg/2+0.075)(単位:eV)・・・(4)
このような式を満たす形態であれば、前記量子ドット層の伝導帯底と障壁層の伝導帯底の間のポテンシャルを用いて3つの中間バンドを形成する場合、最も低い中間バンドのエネルギー準位が前記障壁層の伝導帯底に近いので、超格子構造の量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。このため、量子準位が1つに繋がった中間バンドを形成しやすくなり、キャリア移動が起こりやすくなる。
例えば、前記中間バンドが4つであってもよい。より詳細には、前記障壁層の伝導帯の底を構成するエネルギー準位と、前記障壁層の価電子帯の頂上を構成するエネルギー準位と、これら準位との間にある4つの量子準位とを前記超格子半導体層が有し、前記量子準位が4つの中間バンドを形成する太陽電池であってもよい(以下、この明細書において、6準位中間バンド太陽電池と呼ぶ)。
ΔEvi24≧(Eg/2)(単位:eV)・・・(5)
また、より好ましくは、下記の式(6)を満たす。
ΔEvi24≧(Eg/2+0.05)(単位:eV)・・・(6)
このような式を満たす形態であれば、前記量子ドット層の伝導帯底と障壁層の伝導帯底の間のポテンシャルを用いて4つの中間バンドを形成する場合、最も低い中間バンドのエネルギー準位が前記障壁層の伝導帯底に近いので、超格子構造の量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。このため、量子準位が1つに繋がった中間バンドを形成しやすくなり、キャリア移動が起こりやすくなる。
図1は、この発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を示す概略断面図である。図1に示すように、この発明の実施形態に係る太陽電池20は、p型半導体層4と、n型半導体層12と、p型半導体層4とn型半導体層12とに挟まれた超格子半導体層10とを備え、超格子半導体層10は、量子ドット7からなる量子ドット層6と障壁層8とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有している。ここで、これらの構成のうち、p型半導体層4は、ベース層(またはp型ベース)とも言い、n型半導体層12は、エミッタ―層(またはn型エミッタ―)とも言う。このため、以下、p型半導体層4をベース層(p型半導体層)4と記載し、n型半導体層12をエミッタ―層(n型半導体層)12と記載する。
ベース層(p型半導体層)4は、p型不純物を含む半導体からなり、i型半導体層、エミッタ―層(n型半導体層)12とともにpin接合またはpn接合を構成することができる。
エミッタ―層(n型半導体層)12は、n型不純物を含む半導体からなり、i型半導体層、ベース層(p型半導体層)4とともにpin接合またはpn接合を構成することができる。
このpin接合またはpn接合が受光することにより、起電力が生じる。また、このことにより、太陽電池20が電力を出力することができる。
超格子半導体層10は、ベース層(p型半導体層)4とエミッタ―層(n型半導体層)12に挟まれ、pin接合またはpn接合を構成することができる。また、超格子半導体層10は、量子ドット層6と障壁層8とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有する。超格子半導体層10は、i型半導体であってもよく、受光することにより起電力が生じれば、p型不純物またはn型不純物を含む半導体層であってもよい。
ここで、中間バンドを1つ持つ太陽電池のエネルギー変換効率の最大値は、非集光の場合に46.7%(障壁層8の禁制帯幅が2.4eV)、1000倍集光の場合に57.3%(障壁層8の禁制帯幅が2.1eV)である。
量子ドット層または量子井戸層は、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いたStranski―Krastanov(S―K)成長と呼ばれる方法や電子リソグラフィ技術、液滴エピタキシー法などを用いることで量子ドットを作製することができる。S−K成長法は上記手法の材料構成比を変えることで量子ドットまたは量子井戸層の混晶比を調整することができ、原材料・成長温度・圧力・堆積時間等を変えることによって量子ドットのサイズまたは量子井戸層の厚さを調整することができる。
〔実験1〕
詳細平衡モデルを用いてシミュレーション実験を行い、エネルギー変換効率を算出した。この算出方法を説明するため、バンド図を図2に示す。
なお、この明細書で用いるバンド図(エネルギーバンドダイヤグラム)は慣例的に用いられている通りに記載している。すなわち、電子のエネルギーを基準にエネルギー準位を表している。ここで、電子はより低いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。さらに、正孔はより高いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、従来の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位(以下、これらの組み合わせをバンドラインナップという)を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図4)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図4を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7のとき約56.6%である。
このように、図4の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図4の結果は、後述する表1を参照しても理解できる。)
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、従来の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図5)。ここで、障壁層のバンドギャップが1.1≦Eg≦1.4eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.5eVであることがより好ましい。
図5を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.5eVの領域にあるとき、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.4〜2.5eVのとき約67.7%である。
このように、図5の結果から、1000倍集光の場合でも最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかった。(なお、上記図5の結果は、後述する表2を参照しても理解できる。)
ここで、MIN(A,B,C)とは、A,B,Cの数値のうち最も小さい数値を意味する。以下、この明細書では、MIN(A,B,・・・)は、括弧内の数値のうち最も小さい数値を意味するものとして使用する。
例えば、1000倍集光下における6準位中間バンド太陽電池においてEg=2.5eVの場合、67.7%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci21とΔEvi24の組み合わせは、(ΔEci21、ΔEvi24)=(1.325eV、0.575eV)(0.575eV、1.325eV)である。これらは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi24≧(Eg/2+0.05)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci21、ΔEvi24)=(0.575eV、1.325eV)である。
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の最下部(底)と価電子帯の最上部(頂点)と量子ドットから形成される中間バンドの準位の合計が5準位を有する太陽電池について、実験1と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記5準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図6に示し、実験結果を図7及び図8に示す。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、従来の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図7)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、5準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図7を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7のとき約55.4%である。
このように、図7の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図7の結果は、後述する表3を参照しても理解できる。)
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、従来の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図8)。
図8を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.4eVの領域にあるとき、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3〜2.4eVのとき約66.5%である。
このように、図8の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図8の結果は、後述する表4を参照しても理解できる。)
例えば、1000倍集光下における5準位中間バンド太陽電池においてEg=2.4eVの場合、63.5%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci11とΔEvi13の組み合わせは、(ΔEci11、ΔEvi13)=(1.30eV、0.575eV)(0.575eV、1.30eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi13≧(Eg/2+0.075)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci11、ΔEvi13)=(0.575eV、1.30eV)である。
〔実験3〕
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の最下部(底)と価電子帯の最上部(頂点)と量子ドットから形成される中間バンドの準位の合計が4準位を有する太陽電池について、実験1及び実験2と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記5準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図9に示し、実験結果を図10及び図11に示す。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、従来の中間バンド太陽電池よりも4準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図10)。
図10を参照すると、4準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.5eVの領域にあるとき、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6eVのとき約53.0%である。
このように、図10の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図10の結果は、後述する表1を参照しても理解できる。)
図11を参照すると、障壁層のバンドギャップがEg=1.6〜3.2eVの領域にあるとき、4準位中間バンド太陽電池は、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、従来の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3eVのとき約63.8%である。
このように、図11の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、従来の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図11の結果は、後述する表2を参照しても理解できる。)
なお、表5および表6にはΔEci1(ΔEvi2)の列とΔEvi2(ΔEci1)の列があるが、これらは一方がΔEci1の値であれば他方がΔEvi2の値であることを示し、一方がΔEvi2の値であれば他方がΔEci1の値であることを示している。
例えば、1000倍集光下における4準位中間バンド太陽電池においてEg=2.3eVの場合、63.8%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、ずなわちΔEci1とΔEvi2の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi2)=(1.30eV、0.65eV)(0.65eV、1.30eV)、(1.00eV、0.65eV)、(0.65ev、1.00eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi2≧(Eg/2+0.125)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi2)=(0.65eV、1.30eV)である。
〔実験4〕
次に、実験1〜3で明らかとなったエネルギー準位(4〜6準位中間バンド太陽電池。多準位中間バンド太陽電池ともいう)を有する太陽電池について、特定の構造に着目してさらにシミュレーション実験を行った。
InAs1-xSbx/AlSbの組み合わせを用いれば価電子帯バンドオフセットをゼロにすることが可能である(ここでいう価電子帯バンドオフセットとは、InAsxSb1-xとAlSbの価電子帯頂点のエネルギー準位の差がゼロである関係をいう)。InAs1-xSbxはΓ点の伝導体下端とΓ点の価電子帯の上端とのエネルギー差が最も小さく(直接バンドギャップ)、AlSbはX点の伝導帯下端とΓ点の価電子帯上端のエネルギー差が最も小さい(間接バンドギャップ)。しかし、太陽電池においてはΓ点における吸収が最も重要かつ支配的であり、以下ではInAs1-xSbx、AlSb共にΓ点でのバンド構造を考える。ここでは、Vegard則からx=0.3として以下の計算を行った。AlSbのΓ点でのバンドギャップは2.3eVである。
InAs0.7Sb0.3/AlSb=(2.7、2.7、9)/3nm
図12に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.29、1.64、2.32)eVとなった。これらのエネルギー準位を用いて、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.9%、1000倍集光で63.4%となった(図13参照)。
InAs0.7Sb0.3/AlSb=(2.7、2.7、13)/3nm
図14に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei13、Ei12、Ei11、Ec)=(0、1.25、1.44、1.80、2.3)eVとなった。これらのエネルギー準位を用いて、5準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.1%、1000倍集光で63.6%となった(図15参照)。
InAs0.7Sb0.3/AlSb=(2.7、2.7、17)/3nm
図16に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei24、Ei23、Ei22、Ei21、Ec)=(0、1.23、1.35、1.57、1.90、2.3)eVとなった。これらのエネルギー準位を用いて、6準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合53.2%、1000倍集光で65.0%となった(図17参照)。
InAs/AlSb1-xAsxの組み合わせは、価電子帯バンドオフセットをゼロにすることができない。しかし、価電子帯バンドオフセットが比較的小さいことと、価電子帯にはヘビーホールとライトホールが存在し、ヘビーホールの有効質量が比較的大きいため価電子帯には多数の量子エネルギー準位が形成され、これらの複数の準位をまとめて1つの価電子帯とみなすことが可能である。1つにみなされた価電子帯の上端から伝導帯下端までを実効的なバンドギャップと考えることが可能となり、多準位中間バンド太陽電池を実現することができる。
InAs/AlSb0.5As0.5=(2.5、2.5、8.5)/3nm
図18に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.54、1.90、2.52)eVとなった。ここで、Evは1つにみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端であり、従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではない。これらのエネルギー準位を用いて、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合47.7%、1000倍集光で56.8%となった(図19参照)。
InAs/AlSb0.5As0.5=(2.7、2.7、12)/3nm
図20に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei13、Ei12、Ei11、Ec)=(0、1.41、1.61、1.98、2.50)eVとなった。これらのエネルギー準位を用いて、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.3%、1000倍集光で61.4%となった(図21参照)。
InAs/AlSb0.5As0.5=(3.0、3.0、15)/3nm
図22に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei24、Ei23、Ei22、Ei21、Ec)=(0、1.28、1.42、1.67、2.03、2.49)eVとなった。これらのエネルギー準位を用いて、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.8%、1000倍集光で63.4%となった(図23参照)。
4:ベース層(p型半導体層) 6:量子ドット層 7:量子ドット
8:障壁層 10:超格子半導体層 12:エミッタ−層(n型半導体層)
14:窓層 15:コンタクト層 17:n型電極 18:p型電極
20:太陽電池
50:価電子帯の頂上のエネルギー準位(Ev)
60,61,62,63,64:中間バンド(Ei21,Ei22,Ei23,Ei24,Ei11,Ei12,Ei13,Ei1,Ei2,Ei3)
70:伝導帯の底のエネルギー準位(Ec)
Claims (12)
- p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた光吸収半導体層とを備え、
前記光吸収半導体層は、少なくとも2つ以上のエネルギー準位を前記光吸収半導体層の禁制帯中に備えていることを特徴とする太陽電池。 - 前記光吸収半導体層は、障壁層と量子層が交互に繰り返し積層された超格子構造を有する超格子半導体層である請求項1に記載の太陽電池。
- 前記エネルギー準位は、前記量子層の量子準位であり、
前記量子準位が前記量子層の伝導帯、価電子帯のいずれかと前記障壁層の禁制帯とに形成されている請求項2に記載の太陽電池。 - 前記エネルギー準位は、前記超格子構造により量子層間の波動関数が電子的に結合して中間バンドを形成し、
前記中間バンドが前記量子層の伝導帯、価電子帯のいずれかと前記障壁層の禁制帯とに形成されている請求項3に記載の太陽電池。 - 前記中間バンドは、前記量子層の伝導帯底と前記障壁層の伝導帯底の間に形成されている請求項4に記載の太陽電池。
- 前記量子層は量子ドットからなる量子ドット層である請求項2〜5のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記エネルギー準位が少なくとも3つ以上である請求項1〜6のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記エネルギー準位が少なくとも4つ以上である請求項1〜7のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記エネルギー準位が2つであり、
前記光吸収半導体層又は前記障壁層の禁制帯は、幅が1.0eV以上3.5eV以下である請求項1〜6に記載の太陽電池。 - 前記エネルギー準位が3つであり、
前記光吸収半導体層又は前記障壁層の禁制帯は、幅が1.1eV以上3.8eV以下である請求項7に記載の太陽電池。 - 前記エネルギー準位が4つであり、
前記光吸収半導体層または前記障壁層の禁制帯は、幅が1.3eV以上3.8eV以下である請求項8に記載の太陽電池。 - 前記障壁層の禁制帯の幅をEg、障壁層における価電子帯の頂上のエネルギー準位と、前記量子準位及び前記中間バンドのうち最もエネルギー準位が低い準位との準位の差をΔEviとしたときに下記の式(1)を満たす請求項5又は6に記載の太陽電池。
ΔEvi≧(Eg/2)(単位:eV)・・・(1)
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010286397A JP5509059B2 (ja) | 2010-12-22 | 2010-12-22 | 太陽電池 |
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