JP5555602B2 - 太陽電池 - Google Patents
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Description
また、量子カスケードレーザ分野では、電圧が印加された状態でミニバンドが形成される超格子構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
従来のミニバンドを利用した太陽電池のモデルでは、光照射下で形成される内部電場がi型半導体層にかかっている場合における量子ドットの量子準位のずれ(シュタルク効果)を考慮した上でのミニバンド形成に必要な設計を行っていない。詳しくは、超格子構造に内部電場がかかっている、もしくは外部電場が印加されている際、量子ドットの量子準位間の共鳴トンネル効果が破綻し、波動関数が局在化するワニエ・シュタルク局在と呼ばれる現象が起こる可能性がある。量子準位エネルギー面では、量子ドットの量子準位がeFD(D:超格子周期、F:電場強度)のエネルギー間隔に分裂されるシュタルク階段状態となり、ミニバンド形成に影響をもたらす。量子井戸/量子ドット太陽電池においてミニバンドを形成できない場合、各量子井戸/量子ドットで生成されたキャリアは障壁層を越えて隣の量子井戸/量子ドットに移動しなければならないため、キャリア取り出し効率が著しく低下する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、量子井戸/量子ドットで生成したキャリアがミニバンド中を効率よく移動でき、各バンドギャップで十分な光吸収ができるような超格子構造を有する太陽電池を提供する。
本発明によれば、超格子半導体層のp型半導体層側からn型半導体側に近づくに従い量子井戸層または量子ドットのバンドギャップが段階的に広くなるように積層された超格子半導体層を有するため、量子井戸/量子ドット層のバンド構造を複数の積層ごとに適当変調させることができ、光照射時に形成される内部電界下においてシュタルク効果を補償し、量子井戸/量子ドット間の波動関数の電子的結合(波動関数の繋がり)によるミニバンドを形成することができる。このことにより、各量子井戸/量子ドットで生成されたキャリアを、容易にn型半導体領域から取り出し可能となる。また、適当変調を複数の量子井戸/量子ドット層ごとにおこなう、すなわち変調回数をできるだけ減らすことで積層数を増大させることができ、幅広い波長域の太陽光を十分に吸収することができる。
以上により、従来の技術に比べて光吸収量を向上させ、短絡電流および開放電圧を飛躍的に改善することができ、高い変換効率を有する太陽電池を得ることが可能となる。
量子ドットとは、100nm以下の粒子サイズを有する半導体微粒子であり、量子ドットを構成する半導体よりもバンドギャップの大きい半導体で囲まれた微粒子である。
量子ドット層とは、複数の量子ドットで構成される層であり、超格子構造の井戸層となる。
量子井戸層とは、半導体からなる層であり、超格子構造の井戸層となる。
障壁層とは、量子ドットまたは量子井戸層を構成する半導体よりもバンドギャップの大きい半導体からなり、超格子構造を構成する。
ミニバンドとは、超格子構造の井戸層の電子の波動関数が隣接井戸の波動関数と相互作用し、量子井戸の量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ形成される量子井戸/量子ドット間の波動関数の電子的結合(波動関数の繋がり)をいう。
このような構成によれば、各超格子層ごとに超格子構造のバンド構造を変調することができる。このことにより超格子半導体層のp型半導体層側からn型半導体側に近づくに従い前記量子井戸層または前記量子ドットのバンドギャップが段階的に広くなるように超格子半導体層を積層することができる。
本発明の太陽電池において、第1および第2超格子層は、それぞれ交互に繰り返し積層された前記量子ドット層と前記障壁層とを有し、前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの粒子サイズに比べ、第2超格子層に含まれる前記量子ドットの粒子サイズがより小さくなるように積層されたことが好ましい。
このような構成によれば、第1超格子層に含まれる量子ドットのバンドギャップに比べ、第2超格子層に含まれる量子ドットのバンドギャップがより広くなるように超格子半導体層を積層することができる。
このような構成によれば、第1超格子層に含まれる量子井戸層のバンドギャップに比べ、第2超格子層に含まれる量子井戸層のバンドギャップがより広くなるように超格子半導体層を積層することができる。
本発明の太陽電池において、前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの積層方向の粒子サイズと第2超格子層に含まれる前記量子ドットの積層方向の粒子サイズとの差、または、第1超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さと第2超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さとの差が0.5nm以上1nm以下となるように積層されたことが好ましい。0.5nm以上1nm以下であれば制御が可能である。
このような構成によれば、量子井戸/量子ドット層のバンド構造を複数の積層ごとに適当変調させることができ、光照射時に形成される内部電界下においてシュタルク効果を補償し、量子井戸/量子ドット間の波動関数の電子的結合(波動関数の繋がり)によるミニバンドを形成することができる。
このような構成によれば、第1超格子層に含まれる量子ドットのバンドギャップまたは量子井戸層のバンドギャップと、第2超格子層に含まれる量子ドットのバンドギャップまたは量子井戸層のバンドギャップとを変化させることができ、超格子半導体層のp型半導体層側からn型半導体側に近づくに従い前記量子井戸層または前記量子ドットのバンドギャップが段階的に広くなるように超格子半導体層を積層することができる。
本発明の太陽電池において、前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの混晶比と第2超格子層に含まれる前記量子ドットの混晶比との差、または第1超格子層に含まれる前記量子井戸層の混晶比と第2超格子層に含まれる前記量子井戸層の混晶比との差が0.01以上0.1以下となるように積層されたことが好ましい。0.01以上0.1以下であれば制御が可能である。
このような構成によれば、量子井戸/量子ドット層のバンド構造を複数の積層ごとに適当変調させることができ、光照射時に形成される内部電界下においてシュタルク効果を補償し、量子井戸/量子ドット間の波動関数の電子的結合(波動関数の繋がり)によるミニバンドを形成することができる。
このような構成によれば、量子井戸/量子ドット層のバンド構造を複数の積層ごとに適当変調させることができる太陽電池を容易に作製することができる。
本発明の太陽電池において、前記障壁層は、GaAsからなり、前記量子ドットまたは前記量子井戸層は、InxGa1-xAs(0<x≦1)からなることが好ましい。
このような構成によれば、量子井戸/量子ドット層のバンド構造を複数の積層ごとに適当変調させることができる太陽電池を容易に作製することができる。
このような構成によれば、量子ドットまたは量子井戸層で生成されたキャリアがミニバンド中を移動し、p型およびn型の母体半導体領域へと容易に移動することができ、このキャリアを外部に取り出すことができる。
本発明の太陽電池において、前記超格子半導体層は、前記ミニバンドの伝導帯の波動関数が前記超格子構造全体に渡って繋がるように積層されたことが好ましい。
このような構成によれば、量子ドットまたは量子井戸層で生成されたキャリアを容易にn型半導体領域から取り出すことができる。
このような構成によれば、量子ドットまたは量子井戸層で生成されたキャリアを容易にn型半導体領域から取り出すことができる。
本発明の太陽電池において、前記超格子半導体層は、前記ミニバンドが伝導帯において1つのみ形成されるように積層されたことが好ましい。
このような構成によれば、量子ドットまたは量子井戸層で生成されたキャリアを容易にn型半導体領域から取り出すことができる。
本発明の太陽電池において、p型半導体層、n型半導体層および超格子半導体層は、pn接合(pn-n接合、pp-n接合、p+pn接合、pnn+接合を含む)またはpin接合を形成することが好ましい。
このような構成によれば、pin接合またはpn接合が受光することにより、起電力を生じさせることができる。
さらに、本発明の太陽電池において、n型半導体層面が太陽光入射側であって、p型半導体層は下面であることが望ましい。このような構造によれば、太陽光の長波長側の光がより底部にまで侵入するため、効率良く太陽光を吸収することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
図1、2はそれぞれ本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す概略断面図である。
また、本実施形態の太陽電池20は、バファー層3、ベース層4、窓層14、コンタクト層15、p型電極18、n型電極17をさらに有してもよい。
以下、本実施形態の太陽電池について説明する。
p型半導体層1は、p型不純物を含む半導体からなり、i型半導体層、n型半導体層12とともにpin接合またはpn接合を構成することができる。
n型半導体層12は、n型不純物を含む半導体からなり、i型半導体層、p型半導体層1とともにpin接合またはpn接合を構成することができる。
このpin接合またはpn接合が受光することにより、起電力が生じる。また、このことにより、太陽電池20が電力を出力することができ、また、超格子半導体層10に内部電界が形成される。
p型半導体層1およびn型半導体層12は、図1、2のようにどちらか一方が基板であってもよく、両方ともCVD法などにより形成された薄膜であってもよい。
超格子半導体層10は、p型半導体層1とn型半導体層12に挟まれ、pin接合またはpn接合を構成することができる。また、超格子半導体層10は、量子井戸層9または量子ドット層6と障壁層8とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有する。超格子半導体層10は、i型半導体であってもよく、受光することにより起電力が生じれば、p型不純物またはn型不純物を含む半導体層であってもよい。
また、この超格子構造は、複数の超格子層を有することができ、各超格子層は、量子井戸層9または量子ドット層6と障壁層8とが交互に繰り返し積層された構造を有する。なお、超格子層は、量子井戸層9または量子ドット層6と障壁層8とが交互に2回以上繰り返し積層された構造でもよい。また、この繰り返し積層回数は、例えば、2、3、4、5、7、10、13、15、17、20、30回であってもよく、これらの数値のうちいずれか2つの数値の間の範囲であってもよい。
また、複数の超格子層に含まれる1つの超格子層(第1超格子層)に含まれる量子井戸層9のバンドギャップまたは量子ドット7のバンドギャップは、その(第1)超格子層のn型半導体側に隣接して積層された超格子層(第2超格子層)に含まれる量子井戸層9のバンドギャップまたは量子ドット7のバンドギャップよりも狭くなるように、超格子半導体層10を積層してもよい。このことにより、超格子半導体層10のp型半導体層側からn型半導体側に近づくに従い量子井戸層9のバンドギャップまたは量子ドット7のバンドギャップが段階的に広くなるように超格子半導体層10を積層することができ、太陽電池20に光が照射された場合に超格子半導体層10に形成される内部電界下において超格子構造にミニバンドが形成されるように変調することができる。
また、超格子半導体層10を構成する障壁層8、量子ドット層6、量子井戸層9を構成する材料は、GaAs、InAs、InxGa1-xAsを用いることができ、さらに、たとえば周期律表の第IV族半導体、第III族と第V族からなる化合物半導体、第II族と第VII族からなる化合物半導体あるいはこれらの混晶材料としてもよい。例えば、障壁層8の材料にGaNAsで、量子井戸層9又は量子ドット層6の材料にInAsや、障壁層8の材料にGaPで量子井戸層9又は量子ドット層6の材料にInAs、障壁層8の材料にGaAsで量子井戸層9又は量子ドット層6の材料にGaSb等を用いても差し支えない。
以上の超格子構造は、ミニバンド形成可能な量子井戸/量子ドット太陽電池で適応可能であるが、3次元方向に閉じ込めである量子ドットは、一次元方向のみの閉じ込めである量子井戸と比べて量子準位が高くなりやすく、太陽電池に応用する際キャリアが取り出されやすくなる為より好ましい。
量子ドット層または量子井戸層は、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長(MOCVD)法等の手法により形成することができる。量子ドット層は、一般的には、Stranski―Krastanov(S―K)成長と呼ばれる方法で量子ドットを成長させることができる。上記手法の材料構成比を変えることで量子ドットまたは量子井戸層の混晶比を調整することができ、原材料・成長温度・圧力・堆積時間等を変えることによって量子ドットのサイズまたは量子井戸層の厚さを調整することができる。
以下では、本実施形態の太陽電池の製造方法について、具体的に例を用いて述べる。
また、n型ドーパントとしてはSiを、p型ドーパントとしてはBeを用いることができる。電極材料としては例えば、Auを用い、抵抗加熱蒸着法により真空蒸着で形成することができる。
尚、ここで示した例は一例であり、本実施形態の超格子構造を有する太陽電池に用いる基板、バッファー層、量子ドット、ドーパント、電極などの各材料や、各プロセスで使用する洗浄剤、基板処理温度、製造装置等は、ここで示した例に限定されない。
本発明によると、光照射時に形成される内部電界下においてシュタルク効果を補償し、量子井戸層間または量子ドット間の波動関数の電子的な結合によるミニバンドが形成されることを調べるため、MATLABソフトを用いシュレディンガー方程式を解くシミュレーション実験を行った。
〔実験1〕
実験1は、図2のような量子井戸層と障壁層との繰り返しにより形成された超格子構造を有する太陽電池において、超格子構造内の量子井戸層を、複数の量子井戸層(超格子層)毎にInの混晶比を0.06のGaに変更することで量子準位を変調させた超格子構造を用いた太陽電池の例である。以下、図3〜5を参照してより具体的に説明する。
図3(b)に示すバンド図は、母体半導体材料にガリウムヒ素(GaAs)、量子井戸材料にインジウムガリウム砒素(InxGa1-xAs)を用いた、量子井戸層15層(超格子層)ごとに混晶比を変えることによって量子井戸層の量子準位を変調させた超格子構造のバンド図を示しており、図3(a)に超格子半導体層10の一部の概略断面図を示す。なお、図3(a)は、図2の点線で囲んだ範囲Bに対応している。また、図3(b)の横軸は、超格子半導体層のp型半導体層側の界面を0としたときの積層方向(図2のz方向)の距離を示し図3(a)の横方向と位置関係を一致させている。また、図3(b)の縦軸は、エネルギーを示している。
図3(b)は、量子井戸層9の合計積層数は30層(超格子層:2層)で内部電界5kV/cmが印加されたときのバンド図を示している。なお、実験1および実験3、実験4の内部電界5kV/cmとは、1200nmのi型半導体層に内部電界0.6Vがかかっ
ていることに等しい。また、1000nmのi型半導体層に内部電界0.5Vや、800
nmのi型半導体層に内部電界0.4V等も同様の印加電界5 kV/cmとなる。
図5からわかるように、各バンドギャップで十分な光吸収を得るため量子井戸層15層ごとに適当変調させた超格子構造において、最小エネルギーの波動関数が超格子構造間全体に渡って完全に繋がっており、キャリア移動度の高いミニバンドが形成されていることがわかる。なお、超格子構造全体に渡って繋がったミニバンドは、積層方向に積層した各量子井戸層のそれぞれの波動関数が局在せずに波動関数が各量子井戸層上に延びることにより形成される。つまり、各量子井戸層がそれぞれ隣接する量子井戸層と強く相互作用し合い波動関数が局在しないときに形成される。また、図3(b)において、量子井戸の最低量子準位と隣接するn型半導体側の障壁層とのエネルギー差は、p型半導体最近接の量子井戸の600meV(図3(b)に示した差a)からn型半導体最近接の量子井戸の527meV(図3(b)に示した差b)と小さくなっている。つまり、ミニバンドを形成した状態でエネルギー障壁の大きさがn型半導体に近づくに従い小さくなっており、生成キャリアをn型半導体領域から容易に取り出すことができることを示している。つまり、複数の量子井戸層(超格子層)ごとに1度材料変調させることで、内部電界下でミニバンドを形成しつつ積層数を増大でき、幅広い波長域の光を十分に吸収することができる超格子構造であることを示す。
実験2は、図2のような量子井戸層と障壁層が繰り返し積層された超格子構造を有する太陽電池において、超格子構造内の量子井戸層を、複数の量子井戸層(超格子層)毎にInの混晶比を0.05のGaに変更することで、量子井戸層の量子準位を変調させた超格子構造を用いた太陽電池の別の例である。本実施例では、複数の量子井戸層毎に混晶比を変化させている。以下、図6〜8を参照してより具体的に説明する。
図8からわかるように、量子井戸層5層ごとに適当変調させた超格子構造において、最小エネルギーの波動関数が量子井戸層間全体に渡って完全に繋がっており、キャリア移動度の高いミニバンドが形成されていることがわかる。また、複数の量子井戸層毎に混晶比を変えたことにより、量子井戸層の各バンドギャップで十分な光吸収が可能となる。また、図6(b)において、量子井戸層の最低量子準位と隣接するn型半導体側の障壁層とのエネルギー差は、p型半導体最近接の量子井戸の595meV(図6(b)に示した差c)からn型半導体最近接の量子井戸の490meV(図6(b)に示した差d)と小さくなっている。つまり、ミニバンドを形成した状態でエネルギー障壁の大きさがn型半導体に近づくに従い小さくなっており、生成キャリアをn型半導体領域から容易に取り出すことができることを示している。
実験3は、図2のような量子井戸層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造を有する太陽電池において、超格子構造内の量子井戸層を、複数の量子井戸層毎に量子井戸層の厚さをかえることで、量子井戸層の量子準位を変調させた超格子構造を用いた太陽電池の例である。以下、図9〜11を参照してより具体的に説明する。
図9(b)に示すバンド図は、母体半導体(障壁層)の材料にガリウムヒ素(GaAs)、量子井戸層の材料にインジウムヒ素(InAs)を用いて、量子井戸層10層(超格子層)ごとに量子井戸層の厚さを1nm減少させることによって量子井戸層の量子準位を変調させた超格子構造のバンド図を示しており、量子井戸層の合計積層数は20層(超格子層2層)で内部電界5kV/cmが印加されたときのバンド図を示している。図9(a)には、超格子半導体層10の一部の概略断面図を示す。障壁層8bの厚みは1nm、p型半導体側の量子井戸層9の厚さを4nmとし、超格子構造両端の障壁層8a、8cは十分な厚みとして20nmとした。ガリウムヒ素とインジウムヒ素との間の障壁高さは0.697eVとした。図10は、各エネルギー値の波動関数を並べたものであり、図11は、最小エネルギーの波動関数の拡大図を示している。
実験4では、図1のような量子ドット層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造の超格子半導体層として用いた太陽電池の例について示す。
太陽電池の模式的断面図において図1のようにxyz方向を規定する。作製された量子ドット太陽電池は、xy方向の量子ドット間で電子的結合が起きる密度になっておらず、z方向(積層方向)では量子ドット間の電子的結合が生じる。そのため、量子ドットを用いた超格子構造を考えた場合、超格子構造の波動関数はz方向にのみ閉じ込めをおこなった量子井戸の波動関数と同じであることを意味する。一方、超格子構造のエネルギー値は、z方向のエネルギー値Ezに、x方向およびy方向のエネルギー値(Ex、Ey)を足し合わせた値と考えて差し支えない。ExおよびEyは、電界がかかっていない状態での単一量子井戸で得られるエネルギー値より求まる。
以下、量子ドット層を超格子構造の超格子半導体層とした場合の太陽電池を図12〜14を参照して具体的に説明する。
実験5では、図1のような量子ドット層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造の超格子半導体層として用いた太陽電池の例について示す。
太陽電池の模式的断面図において図1のようにxyz方向を規定する。作製された量子ドット太陽電池は、xy方向の量子ドット間で電子的結合が起きる密度になっておらず、z方向では量子ドット間の電子的結合が生じる。そのため、量子ドットを用いた超格子構造を考えた場合、超格子構造の波動関数はz方向にのみ閉じ込めをおこなった量子井戸の波動関数と同じであることを意味する。一方、超格子構造のエネルギー値は、z方向のエネルギー値Ezに、x方向およびy方向のエネルギー値(Ex、Ey)を足し合わせた値と考えて差し支えない。ExおよびEyは、電界がかかっていない状態での単一量子井戸で得られるエネルギー値より求まる。
以下、量子ドット層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造の超格子半導体層とした場合の太陽電池を図15〜17を参照して具体的に説明する。
また、図15(b)において、量子ドットの最低量子準位と隣接するn型半導体側の障壁層とのエネルギー差は、p型半導体最近接の量子ドットの682.5meV(図15(b)に示した差i)からn型半導体最近接の量子ドットの604.5meV(図15(b)に示した差j)と小さくなっている。つまり、ミニバンドを形成した状態でエネルギー障壁の大きさがn型半導体に近づくに従い小さくなっており、生成キャリアをn型半導体領域から容易に取り出すことができることを示している。さらには複数の量子ドット層ごとに1度材料変調させることで、内部電界下でミニバンドを形成しつつ積層数を増大でき、幅広い波長域の光を十分に吸収することができる超格子構造であることを示す。
比較実験1では、図2のような量子井戸層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造を有する太陽電池において、量子井戸層の材料の混晶比、量子井戸層の厚さのいずれも変えない超格子構造を有する太陽電池の例を示す。以下、図18〜20を参照してより具体的に説明する。
図18(b)には、材料変調や量子井戸幅を変えず、量子準位の補正を行わない場合で、量子井戸層の積層数30層の超格子構造に内部電界を5 kV/cm印加したバンド図を示している。図18(a)には、超格子半導体層10の一部の概略断面図を示す。これまでと同様、母体半導体(障壁層)の材料にガリウムヒ素(GaAs)、量子井戸層の材料にインジウムヒ素(InAs)を用い、障壁層8bの厚みは1nm、量子井戸層9の厚さは4nmとし、超格子構造の両端の障壁層8a、8cは十分な厚みとして20 nmとした。ガリウムヒ素とインジウムヒ素との間の障壁高さは0.697eVとした。
比較実験2では、図1のような量子ドット層と障壁層とを繰り返し積層した超格子構造を有する太陽電池において、材料の混晶比、量子ドットの粒子サイズのいずれも変えない超格子構造を有する太陽電池の例を示す。以下、図21〜23を参照してより具体的に説明する。
図21(b)には、材料変調や量子ドット高さを変えず、量子準位の補正を行わない場合で、量子ドット層の積層数20層の超格子構造に内部電界を5kV/cm印加したバンド図を示している。図21(a)には、超格子半導体層10の一部の概略断面図を示す。これまでと同様、母体半導体(障壁層)の材料にガリウムヒ素(GaAs)、量子ドット層の材料にインジウムヒ素(InAs)を用い、障壁層8bの厚みは1nm、量子ドット7のサイズは縦横(xy方向)20nm、高さ(z方向)4nmで、超格子構造の両端の障壁層8a、8cは十分な厚みとして20 nmとした。ガリウムヒ素とインジウムヒ素との間の障壁高さは0.697eVとした。
以上、本発明が各実験に基づいて具体的に説明されたが、本発明は上述の実験に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
Claims (14)
- p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、
前記超格子半導体層は、量子井戸層または量子ドットからなる量子ドット層と障壁層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、
前記超格子半導体層は、前記超格子半導体層のp型半導体層側からn型半導体側に近づくに従い前記量子井戸層または前記量子ドットのバンドギャップが段階的に広くなるように積層され、
前記超格子構造は、複数の超格子層を有し、
各超格子層は、それぞれ交互に繰り返し積層された前記量子井戸層または前記量子ドット層と前記障壁層とを有し、
前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子井戸層のバンドギャップまたは前記量子ドットのバンドギャップに比べ、第1超格子層のn型半導体層側に隣接して積層された第2超格子層に含まれる前記量子井戸層のバンドギャップまたは前記量子ドットのバンドギャップがより広くなるように積層されたことを特徴とする太陽電池。 - 第1および第2超格子層は、それぞれ交互に繰り返し積層された前記量子ドット層と前記障壁層とを有し、
第1超格子層に含まれる前記量子ドットおよび第2超格子層に含まれる前記量子ドットは、それぞれ実質的に同じ粒子サイズを有し、
前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの粒子サイズに比べ、第2超格子層に含まれる前記量子ドットの粒子サイズがより小さくなるように積層された請求項1に記載の太陽電池。 - 第1および第2超格子層は、それぞれ交互に繰り返し積層された前記量子井戸層と前記障壁層とを有し、
第1超格子層に含まれる前記量子井戸層および第2超格子層に含まれる前記量子井戸層は、それぞれ実質的に同じ厚さを有し、
前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さに比べ、第2超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さがより薄くなるように積層された請求項1に記載の太陽電池。 - 前記量子井戸層または前記量子ドットは、半導体混晶からなり、
前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットまたは前記量子井戸層の混晶比と、第2超格子層に含まれる前記量子ドットまたは前記量子井戸層の混晶比とが異なるように積層された請求項1〜3のいずれか1つに記載の太陽電池。 - 前記超格子半導体層は、前記超格子半導体層に光が照射された場合に形成される内部電界下において前記超格子構造にミニバンドが形成されるように積層された請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記超格子半導体層は、前記ミニバンドの伝導帯の波動関数が前記超格子構造全体に渡って繋がるように積層された請求項5に記載の太陽電池。
- 前記超格子半導体層は、前記ミニバンドの伝導帯において最もエネルギーの低い波動関数が前記超格子構造全体に渡って繋がるように積層された請求項5または6に記載の太陽電池。
- 前記超格子半導体層は、前記ミニバンドが伝導帯において1つのみ形成されるように積層された請求項5〜7のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記p型半導体層、前記n型半導体層および前記超格子半導体層は、pn接合またはpin接合を形成する請求項1〜8のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記n型半導体層、前記超格子半導体層および前記p型半導体層は、前記n型半導体層側から光が入射するように配置される請求項1〜9のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記障壁層、前記量子ドットまたは前記量子井戸層は、III−V族化合物半導体からなる請求項1〜10のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記障壁層は、GaAsからなり、
前記量子ドットまたは前記量子井戸層は、InxGa1-xAs(0<x≦1)からなる請求項1〜11のいずれか1つに記載の太陽電池。 - 前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの積層方向の粒子サイズと第2超格子層に含まれる前記量子ドットの積層方向の粒子サイズとの差、または、第1超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さと第2超格子層に含まれる前記量子井戸層の厚さとの差が1nm以下となるように積層された請求項1〜12のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記超格子半導体層は、第1超格子層に含まれる前記量子ドットの混晶比と第2超格子層に含まれる前記量子ドットの混晶比との差、または第1超格子層に含まれる前記量子井戸層の混晶比と第2超格子層に含まれる前記量子井戸層の混晶比との差が0.1以下となるように積層された請求項1〜13のいずれか1つに記載の太陽電池。
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