JP6385720B2 - 高変換効率太陽電池およびその調製方法 - Google Patents
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Description
中間バンド型太陽電池は、図5のように、太陽電池のVBとCBの間に中間バンド(Intermediate Band:IB)と呼ばれる電子の許容帯を挿入した構造をもつ。中間バンドの形成には、半導体のホスト半導体に対して遷移金属を高濃度ドーピングする方法や、量子ナノ構造(量子井戸,量子ドットなど)を形成する方法が研究されている。中間バンドを挿入することで、従来の太陽電池の価電子帯から伝導帯への電子励起に加えて、価電子帯から中間バンド、そして中間バンドから伝導帯への新たな電子励起が可能となる。新たな電子励起が可能となることで、価電子帯−伝導帯間のエネルギーEVCよりも小さなエネルギーの光を吸収し光電変換することが可能になる。このため、中間バンド型太陽電池は、従来の太陽電池と比べて透過損失を抑制して、SQ限界を超える高いエネルギー変換効率が得られると期待されている。
かかる状況に鑑みて、本発明は、中間バンド内の高い温度をもつ電子、すなわちホットキャリアを利用した新しい中間バンド型太陽電池を提供することを目的とする。
中間準位に存在するキャリアが高いキャリア温度をもつホットキャリアになることによって、キャリアの高エネルギーでの占有確率が上昇する。すなわち、中間準位内の電子が高い電子温度をもつホットキャリアとなることにより、中間準位内の電子は、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーに確率的に存在できるため、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーで確率的に存在する電子を電流として取り出すことができる。
中間バンド型太陽電池の場合、中間バンド(IB)内の電子がホットキャリアとなることで、電子の分布関数が高エネルギー側に広がり、中間バンド(IB)内の電子は、伝導帯(CB)下端のエネルギーよりも高いエネルギーで確率的に存在できるようになる。価電子帯(VB)−中間バンド(IB)間で励起された電子のうち、伝導帯(CB)下端のエネルギーよりも高いエネルギーに確率的に存在している電子は、電流として取り出せるのである。
ホスト半導体に対して、量子井戸(2次元構造),量子細線(1次元構造),量子ドット超格子といった微細な量子ナノ構造を形成することで、中間準位を形成できる。特に、量子ドット超格子によれば、多数の中間準位(ミニバンド)を形成できる。
不純物ドープにより形成される中間準位とは、不純物によるバンドギャップ内準位や、不純物の3次元的な配置に由来するバンドギャップ内準位をいう。
この中間準位のキャリアの温度の上昇は、集光によるものであることがさらに好ましい。集光されればされるほど、すなわち、集光倍率が高いほど、ホットキャリアになりやすいと考えられるからである。
本発明の太陽電池の調製方法は、価電子帯上端のエネルギー準位と伝導帯下端のエネルギー準位との間の中間準位を備え、中間準位のキャリアの内、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーを有するホットキャリアを電流として取り出す太陽電池の調製方法であり、下記のステップを備える。
1)太陽電池のホスト半導体の組成を調製してバンドギャップを制御するバンドギャップ制御ステップ
2)光吸収層となる半導体の組成、量子効果が現れるサイズ、量子次元、ドープする不純物、不純物ドープ量、或は、不純物のドープ位置の少なくとも1つを調製して中間準位を形成し、該中間準位と伝導帯のエネルギー準位の差を所定値に制御する中間準位制御ステップ
また、中間準位と伝導帯のエネルギー準位の差を所定値に制御するとは、太陽電池の変換効率が極大値をとるように、中間準位と伝導帯のエネルギー準位の差を制御するのが好ましい。
ここで、電子はフェルミ粒子であり、フェルミ粒子である電子の占有確率はフェルミ分布関数に従うことになる。フェルミ分布関数は、下記式(1)で与えられる。式中においてTeは電子の温度を表す。図8に電子のフェルミ分布関数と電子温度の関係を示す。
HCIBSCでは、あるエネルギーEでホットキャリアを利用して取り出せる電子数nTe(E)は、電子の分布関数と、VI間で生成された電子数の積で表せる。HCIBSCにおける上記式(1)のEfeとTeの設定方法について後述する。その後、ホットキャリアを利用して取り出せる電流をどのように求められるかを述べる。
図12に、InGaAs/GaAsPの量子井戸型太陽電池の集光倍率と、キャリア温度(Teh)の関係を示す。ここで、図12の横軸は集光倍率(Suns equivalent)、縦軸はキャリア温度Tehを表す。“deep well”はIn0.2Ga0.8Asの試料、“shallow well”はIn0.11Ga0.89Asの試料をそれぞれ測定して見積られた値である。“deep well”のTehは、1.30eVの発光を観測することにより実験的に見積られている。
1.30eVの発光を観測しているので、非集光でのキャリア数は1.30eVから1.42eVのエネルギーに含まれるフォトンの数をFrefとすると、集光倍率300のときは300Frefとなる。ここからHCIBSCでは、XFsVIが300Fref増加すると、電子温度Teが1℃上昇すると仮定した。下記式(2)にHCIBSCでのTeとXFsVIの関係を示す。式(2)において、T0は非集光時において、Frefの電子がVI間で励起されたときの電子の温度である。
変換効率ηの計算は、IC間のエネルギーEICと集光倍率Xを変数として行った。入射光はAM1.5スペクトルを用いた。図13に示すように、EICを次の異なる2種類の方法で変化させて数値シミュレーションを行った。以下では、EVCを固定したうえでEICを変化させるモデルと、EVIを固定したうえでEICを変化させるモデルを、それぞれEVCモデル,EVIモデルと呼ぶことにする。
図14に、EVCモデルにおける変換効率ηのXとEIC依存性を示す。図の縦軸はEIC、横軸はXを表す。変換効率ηは、等高線およびプロットで表す。EIC=0eVのときは、Egが1.42eVの単接合型太陽電池の場合と等しい。
図14よりXの増加に伴って、変換効率ηが単調に上昇することがわかる。上述の式(7)を、VVCについて解いたものを下記式(12)で表す。
以上から、HCIBSCは、ホスト半導体にGaAsを利用する場合、EIC=0.03eVとなるように中間バンド(IB)を形成することにより、高効率化を図れることがわかる。
図16に、EVIモデルにおける変換効率ηのXとEVC依存性を示す。図の縦軸はEVC、横軸はXを表す。変換効率ηは、等高線およびプロットで表す。
EVCモデルと同様にXの増加に伴って、変換効率ηが単調に上昇することがわかる。また、Xを固定し、EVCを変化させると、EVCがおおよそ1.05eV、1.16eV、1.34eVのときに、変換効率ηが極大値をもつことがわかる。EVCが約1.05eVのときはEICが約0.05eVとなり、EVCモデルで見積られたITeが最も大きくなる条件におおよそ一致する。よってEVCが約1.05eVのときはホットキャリアを利用した電流が増加することから、変換効率ηは極大値をとることが期待できる。
また、実施例1で説明したEVCモデルから、ホスト半導体にGaAsを利用する場合、高効率化のためには、EIC=0.03eVとなるように、中間バンド(IB)を形成すべきであることがわかっている。InAs/GaAsの量子ドットを用いた中間バンド型太陽電池の典型的なEVC,EICは、それぞれEVC=1.42eV,EIC=0.40eVとなっていることから、EIC=0.03eVとは、従来の中間バンド型太陽電池よりも遥かに低いエネルギーであることがわかる。
EVCモデルとEVIモデルの2種類の数値シミュレーション結果から、ホットキャリアを利用した高効率の中間バンド型太陽電池を実現するためには、ホスト半導体となる材料は、Egが1.05eV、1.13eV、1.34eVの条件に凡そ該当するものを使用し、中間バンド(IB)はEIC=0.03eVとなるように形成する必要がある。
図18は、InGaAs量子井戸及びInAs/GaAs量子ドットのフォトルミネッセンス特性図を示している。InGaAs量子井戸の場合、1.35evに中間準位が形成される。また、InAs/GaAs量子ドットの場合、1.05evに中間準位が形成される。
GaAsのEgは1.42eV程度であることから、InGaAs量子井戸により形成された中間準位との差、すなわち、EICは0.07eV程度となる(図19(1)を参照)。一方、InAs/GaAs量子ドットにより形成された中間準位との差であるEICは0.37eV程度となる(図19(2)を参照)。
すなわち、InAs/GaAs量子ドットの方が、InGaAs量子井戸よりも、キャリア温度がより高くなることから、キャリアがホットキャリアになりやすく、キャリアの高エネルギーでの占有確率が上昇することになる。
図21に示すように、量子ドットによって中間準位が形成された単接合型太陽電池のエネルギー変換効率は、集光倍率10倍以上で、EIC=0.3eV付近で極大値になる。また、集光倍率10000倍以上で、EIC=0.5eV付近で極大値になる。InAs/GaAs量子ドットの場合(EIC=0.37eV)、集光倍率10倍以上で、ほぼ極大値に近いエネルギー変換効率となることがわかる。特に、InAs/GaAs量子ドットの場合、AM1.5における最大集光時(45900)の変換効率は50%に達することがわかる。
また、図22に示すように、量子井戸によって中間準位が形成された単接合型太陽電池のエネルギー変換効率は、集光倍率によって極大値となるEICは変動するが、概ねEIC=0.04〜0.08eVで極大値になる。InGaAs量子井戸の場合(EIC=0.07eV)、集光倍率が増えるほど極大値に近いエネルギー変換効率となることがわかる。
(1)上記実施例では、太陽電池の光吸収層のホスト半導体にGaAsを用いたが、Cu(銅),In(インジウム),Al(アルミニウム)を含む、化合物半導体、金属窒化物、硫黄化合物、セレン化物、金属砒素化合物もしくは金属リン化合物、あるいはこれらの組み合わせによる合金半導体でもよい。例えば、AlGaAs、InGaAs,InGaN,InAlGaN,GaInPなどを用いても良い。
(2)上記実施例では、中間バンドを形成するのに、量子井戸、量子ドット超格子を用いたが、量子細線、ホスト半導体に遷移金属のドーピングにより形成しても構わない。
(3)上記実施例では、InGaAsの量子井戸を用いているが、多重量子井戸を用いても構わない。
Claims (7)
- 価電子帯上端のエネルギー準位と伝導帯下端のエネルギー準位との間の中間準位を備え、中間準位のキャリアの内、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーを有するホットキャリアを電流として取り出すことを特徴とする太陽電池。
- 中間準位が、量子井戸,量子細線,量子ドット超格子あるいは不純物ドープにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
- 基板、p型半導体層、光吸収層、n型半導体層及び電極を有する太陽電池において、
前記光吸収層が、量子井戸,量子細線あるいは量子ドット超格子を含有し、Cu(銅),In(インジウム),Ga(ガリウム),Al(アルミニウム)から選択される少なくとも1つの元素を含む、化合物半導体、金属窒化物、硫黄化合物、セレン化物、金属砒素化合物もしくは金属リン化合物、あるいはこれらの組み合わせによる合金半導体から構成され、
前記量子井戸,量子細線,量子ドット超格子あるいはドープされた不純物が、価電子帯上端のエネルギー準位と伝導帯下端のエネルギー準位との間の中間準位を形成し、
中間準位のキャリアの内、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーを有するホットキャリアを前記電極から電流として取り出すことを特徴とする太陽電池。 - 前記ホットキャリアは、バンドギャップよりエネルギーの小さい波長の光が吸収され、中間準位のキャリアの温度が上昇したものであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の太陽電池。
- 中間準位のキャリアの温度の上昇は、集光によるものであることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
- 価電子帯上端のエネルギー準位と伝導帯下端のエネルギー準位との間の中間準位を備え、中間準位のキャリアの内、伝導帯下端のエネルギー準位より高いエネルギーを有するホットキャリアを電流として取り出す太陽電池の調製方法であって、
太陽電池のホスト半導体の組成を調製してバンドギャップを制御するバンドギャップ制御ステップと、
光吸収層となる半導体の組成、量子効果が現れるサイズ、量子次元、ドープする不純物、不純物ドープ量、或は、不純物のドープ位置の少なくとも1つを調製して中間準位を形成し、該中間準位と伝導帯のエネルギー準位の差を所定値に制御する中間準位制御ステップと、
を備えることを特徴とする太陽電池の調製方法。 - 前記所定値は、太陽電池の変換効率が極大値となる値であることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の調製方法。
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