JP5568039B2 - 太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、超格子構造を有する太陽電池に関する。
近年、CO2を排出しないクリーンなエネルギー源として光起電力素子が注目され、その普及が進みつつある。この光起電力素子のうち、現在最も普及している光起電力素子は、シリコンを用いた単接合太陽電池である。しかし、エネルギー変換効率がShockley−Quisserの理論限界値(以下、SQ理論限界という)に近づきつつある。このため、SQ理論限界を超える第3世代太陽電池の開発が行われている。
この第3世代太陽電池として、中間バンド又は局在準位(これらを量子構造の観点からミニバンドと呼ぶこともある)が禁制帯中に形成された中間バンド太陽電池(intermediate−band solar cells)が提案されている。中間バンド太陽電池は、母体となる半導体の禁制帯中に中間バンドが形成されることにより、価電子帯から中間バンドへの電子励起と中間バンドから伝導帯へ電子励起とが可能となり、母体の半導体の禁制帯幅よりも小さいエネルギーの光を光電変換することが可能である。このため、中間バンド太陽電池は、高いエネルギー変換効率が得られると期待されている。
例えば、中間バンド太陽電池のモデルにおいて、非集光のエネルギー変換効率が約46%であることが報告されている(非特許文献1参照)。
また、トンネル障壁を有し無機マトリックス内に埋め込まれた複数の量子ドットを備える中間バンド太陽電池やエネルギー囲み障壁に埋設された量子ドットを有する中間バンド太陽電池が知られている(特許文献1及び2参照)。
また、非特許文献2にはInGaAsで作製された中間バンド太陽電池の現象を説明するために複数の中間バンドを用いた中間バンド太陽電池のモデルが示されている。
特表2009−520357号公報 特表2010−509772号公報
APPLIED PHYSICS LETTERS、92巻、066101ページ、2008年 APPLIED PHYSICS LETTERS、96巻、013501、2010年 APPLIED PHYSICS LETTERS 96巻,203507,2010年
しかし、中間バンド太陽電池において、そのエネルギー変換効率は必ずしも十分でない。このため、エネルギー変換効率がより高い太陽電池が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー変換効率がより高い太陽電池を提供する。
本発明は、p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を2つ以上備え、前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であることを特徴とする太陽電池を提供する。
本発明によれば、超格子半導体層は、p型半導体層とn型半導体層に挟まれ、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有する。このことにより、超格子半導体層は、障壁層の価電子帯の上端(最上部、頂点)と障壁層の伝導帯の下端(最下部、底)との間に量子層の伝導帯側の量子準位から形成される中間エネルギー準位を有することができる。また、この中間エネルギー準位は、量子層の価電子帯または障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在しえる。特に、隣り合う量子層の距離が近くなり、波動関数の電子的結合によりミニバンドが形成されると、ミニバンド間を電子が動けるようになるため光励起された電子が中間エネルギー準位に存在できる時間はより長くなる。このことにより、入射光により障壁層の価電子帯の電子がこの中間エネルギー準位に励起され、さらに入射光により中間エネルギー準位の電子が障壁層の伝導帯に励起されることが可能となる。このように電子が励起されることにより、障壁層の価電子帯の電子を障壁層の伝導帯に直接励起できないような長波長の入射光により、障壁層の価電子帯の電子を中間エネルギー準位を介して障壁層の伝導帯に励起することが可能となる。
このような中間エネルギー準位を介した光励起により障壁層の伝導帯に電子を、障壁層の価電子帯にホールを発生させ光電変換することができ、光起電力を発生させることができる。この光電変換には、より長波長の入射光を利用することができるため、光電変換効率を高くすることができる。さらに、超格子半導体層は、このような中間エネルギー準位を2つ以上備える。このことにより、中間エネルギー準位を介した光励起に2つ以上の中間エネルギー準位を利用することができるため、より広い波長範囲の入射光を光電変換に利用することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
本発明によれば、光励起に利用することができる中間エネルギー準位を、実質的に1つとみなすことができる価電子帯を形成する複数の密になった量子準位を除いて、2以上備え、量子層の価電子帯側の上端の量子準位と障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であるため、光励起に利用することができる中間エネルギー準位を1つ備える中間バンド太陽電池よりも光電変換効率を高くすることができる。
本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、4つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、6準位の位置関係を説明するための説明図である。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ4つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。 比較例の太陽電池に含まれ1つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、3準位の位置関係を説明するための説明図である。 比較例の太陽電池に含まれ1つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。 実験1のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 実験1のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、3つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、5準位の位置関係を説明するための説明図である。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、3つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。 実験2のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 実験2のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、2つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、4準位の位置関係を説明するための説明図である。 本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、2つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。 実験3のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 実験3のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。 実験4−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験4−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験4−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験4−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験4−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験4−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験4−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験4−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験4−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験5−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−1のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験5−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−2のシミュレーションにより得られた、5準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験5−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池に非集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験5−3のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池に1000倍集光の光を照射したときの電圧と電流の関係を示すグラフである。 実験6のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験6のシミュレーションにより得られた、4準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。 実験7のシミュレーションにより得られた、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層のバンド構造計算結果を示す図である。
本発明の太陽電池は、p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を2つ以上備え、前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であることを特徴とする。
超格子構造とは、障壁層と量子層とが繰り返し積層された構造であり、障壁層を挟んで隣接する2つの量子層の量子準位が相互作用可能な構造である。
量子層とは、障壁層を構成する半導体材料よりも狭いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子効果により離散的なエネルギー準位(量子準位)を有する。
障壁層とは、量子層を構成する半導体材料よりも広いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子層の周りのポテンシャル障壁を形成する。
本発明の太陽電池において、前記量子層は量子ドットから構成される量子ドット層であることが好ましい。
このような構成によれば、電子のエネルギーを量子ドットに閉じ込めることができ、量子ドットが量子準位を有することができる。この量子準位を利用して中間エネルギー準位を形成することができ、この中間エネルギー準位を介して障壁層の価電子帯の電子を障壁層の伝導帯に光励起することが可能となる。
本発明の太陽電池において、前記量子層または前記障壁層は、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体またはカルコパイライト型半導体からなることが好ましい。
このような構成によれば、超格子半導体層にミニバンドが形成されやすくなり、また、光電変換に適したエネルギー準位に中間エネルギー準位を形成しやすくなる。また、実効的禁制帯幅を適した範囲とすることができる。
本発明の太陽電池において、前記量子層または前記障壁層は、Al、GaおよびInのうち少なくとも1つの元素を含み、かつ、As、SbおよびPのうち少なくとも1つの元素を含むIII−V族化合物半導体からなることが好ましい。
このような構成によれば、超格子半導体層にミニバンドが形成されやすくなり、また、光電変換に適したエネルギー準位に中間エネルギー準位を形成しやすくなる。また、実効的禁制帯幅を適した範囲としやすくなる。
本発明の太陽電池において、前記量子層は、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなり、前記障壁層は、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなることが好ましい。
このような構成によれば、障壁層の価電子帯の上端と、量子層を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端との差である価電子帯バンドオフセットを小さくすることができ、実効的禁制帯幅を適した範囲としやすくなる。また、価電子帯バンドオフセットを0とすることも可能となる。
本発明の太陽電池において、前記障壁層の価電子帯の上端と前記量子層を形成する材料の価電子帯の上端との差である価電子帯バンドオフセットが、0.0eV以上0.28eV以下であることが好ましい。
このような構成によれば、量子層の価電子帯側の量子準位によりミニバンドが形成されやすくなり、量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔がp型半導体層に移行しやすくなり光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記量子層は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有することが好ましい。
このような構成によれば、光励起により量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔が移動しやすくなり、p型半導体層に流れやすくなる。このため、この正孔を光電変換に利用することができ、光電変換率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記障壁層の価電子帯の上端と前記量子層を形成する材料の価電子帯の上端との差である価電子帯バンドオフセットが、実質的に0eVであることが好ましい。
このような構成によれば、量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔がp型半導体層に移行しやすくなり光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、前記超格子構造を構成する前記量子層の量子準位の波動関数が電子的に結合した中間バンドからなることが好ましい。
このような構成によれば、障壁層の価電子帯または量子層の価電子帯から中間エネルギー準位に光励起された電子が中間バンドを移動することができ、この電子が障壁層の伝導帯に励起される確率を高くすることができる。このため、光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、2つであり、前記実効的禁制帯幅は、1.0eV以上3.5eV以下であることが好ましい。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、3つであり、前記実効的禁制帯幅は、1.1eV以上3.8eV以下であることが好ましい。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、4つであり、前記実効的禁制帯幅は、1.3eV以上3.8eV以下であることが好ましい。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記障壁層は、3nm以下の厚さを有することが好ましい。
このような構成によれば、量子層の伝導帯側の量子準位によりミニバンドが形成されやすくなり、中間エネルギー準位を中間バンドとすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
太陽電池の構成
図1、2はそれぞれ本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す概略断面図である。
本実施形態の太陽電池20は、p型半導体層4と、n型半導体層12と、p型半導体層4とn型半導体層12とに挟まれた超格子半導体層10とを備え、超格子半導体層10は、障壁層8と量子層11とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、障壁層8の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間に、量子層11または障壁層8の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を2つ以上備え、前記中間エネルギー準位は、量子層11の伝導帯側の量子準位から形成され、量子層11の価電子帯側の上端の量子準位と障壁層8の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であることを特徴とする。
また、本実施形態の太陽電池20は、基板1、バファー層3、窓層14、コンタクト層15、n型電極17またはp型電極18を備えてもよい。
以下、本実施形態の太陽電池について説明する。
1.p型半導体層およびn型半導体層
p型半導体層4は、p型不純物を含む半導体からなり、超格子半導体層、n型半導体層12とともにpin接合またはpn接合(pn-n接合、pp-n接合、p+pn接合、pnn+接合を含む)を構成することができる。
n型半導体層12は、n型不純物を含む半導体からなり、超格子半導体層10、p型半導体層4とともにpin接合またはpn接合(pn-n接合、pp-n接合、p+pn接合、pnn+接合を含む)を構成することができる。
このpin接合またはpn接合が受光することにより、超格子半導体層において入射光により発生した電子およびホールを光起電力として取り出すことができる。また、このことにより、太陽電池20が電力を出力することができる。
p型半導体層4およびn型半導体層12はその間に超格子半導体層10を挟む。これらの構造は、例えば、図1、2のように基板1の上にp型半導体層4、超格子半導体層10、n型半導体層12をこの順で形成してもよく、基板1の上にn型半導体層12、超格子半導体層10、p型半導体層4をこの順で形成してもよく、p型半導体基板の上に超格子半導体層10、n型半導体層12をこの順で形成してもよく、n型半導体基板の上に超格子半導体層10、p型半導体層4をこの順で形成してもよい。また、基板1とp型半導体層4またはn型半導体層12との間にバッファ層3を設けてもよい。また、これらの構造の上に窓層14を形成してもよい。
p型半導体層4およびn型半導体層12は、例えばCVD法により形成することができる。
p型半導体層4は、p型電極18と電気的に接続することができ、n型半導体層12は、n型電極17と電気的に接続することができる。このことにより、p型半導体層4とn型半導体層12との間に生じる光起電力をp型電極18およびn型電極17を介して外部回路へ出力することができる。また、p型半導体層4とp型電極18との間またはn型半導体層17とn型電極17との間にコンタクト層15を設けてもよい。
例えば、GaAsからなるp型半導体基板1上に、AlSb0.5As0.5からなるp型半導体層(ベース層)4を形成した場合、図1、2に示すように、超格子半導体層10とp型半導体層(ベース層)4の界面、またはベース層(p型半導体層)4を露出させ(例えば、p型半導体層(ベース層)が露出するまでエッチングする)、この露出面にp型電極18を形成する。これにより、p型半導体基板1にGaAsを用い、かつp型半導体層(ベース層)4にAlSb0.5As0.5を用いて太陽電池20を形成することができる。
2.超格子半導体層
超格子半導体層10は、p型半導体層4とn型半導体層12に挟まれ、障壁層8と量子層11とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有する。量子層11は、障壁層8を構成する半導体材料よりも狭いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子効果により、伝導帯側および価電子帯側にそれぞれ複数の量子準位を有する。量子層11は、図1のように量子ドット層6であってもよく、図2のように量子井戸層9であってもよい。
障壁層8は、量子層11を構成する半導体材料よりも広いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子層11の周りのポテンシャル障壁を形成する。このことにより、超格子半導体層10は、障壁層8の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間に量子層11の量子準位から形成される中間エネルギー準位を有することができる。また、この中間エネルギー準位は、量子層11の価電子帯または障壁層8の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在しえる。このことにより、入射光により障壁層8の価電子帯の電子がこの中間エネルギー準位に励起され、さらに入射光により中間エネルギー準位の電子が障壁層8の伝導帯に励起されることが可能となる。このように電子が励起されることにより、障壁層8の価電子帯の電子を障壁層8の伝導帯に直接励起できないような長波長の入射光により、障壁層8の価電子帯の電子を中間エネルギー準位を介して障壁層8の伝導帯に励起することが可能となる。
このような光励起により障壁層8の伝導帯に電子を、障壁層8の価電子帯にホールを発生させることにより光電変換することができ、光起電力を発生させることができる。この光電変換には、より長波長の入射光を利用することができるため、光電変換効率を高くすることができる。
超格子半導体層10を構成する障壁層8、量子層11を構成する材料は、i型半導体であってもよく、受光することにより起電力が生じれば、p型不純物またはn型不純物を含む半導体層であってもよい。また、超格子半導体層10を構成する障壁層8、量子層11を構成する材料は、例えば、Al、GaおよびInのうち少なくとも1つの元素を含み、かつ、As、SbおよびPのうち少なくとも1つの元素を含むIII−V族化合物半導体である。また、例えば、AlSb、InAsxSb1-x(ここでxは元素割合であり、0≦x≦1である。以下特に言及しない限り同様である)、AlSbxAs1-x、AlAs、GaAs、InxGa1-xAsを用いることができる。さらに、たとえば周期律表の第IV族半導体、第III族と第V族からなる化合物半導体、第II族と第VI族からなる化合物半導体あるいはこれらの混晶材料としてもよい。また、カルコパイライト型半導体を用いてもよく、これら以外の半導体を用いてもよい。例えば、量子層11はInSbxAs1-x(0≦x≦1)であり、障壁層は、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)である。また、例えば、障壁層8の材料にGaNAsで、量子層11の材料にInAsや、障壁層8の材料にGaPで量子層11の材料にInAs、障壁層8の材料にGaNで量子層11の材料にGaxIn1-xN、障壁層8の材料にGaAsで量子層11の材料にGaSb、障壁層8の材料にAlAsで量子層11の材料にInAs、障壁層8の材料にCuGaS2で量子層11の材料にCuInSe2等を用いても差し支えない。
また、障壁層8がAlSb、量子層11がInAs1-xSbx(0≦x≦1)からなってもよい。また、障壁層8がAlSbyAs1-y(0≦y≦1)、量子層8がInAsからなってもよいし、障壁層8がAlAsからなり、量子層11がInAsからなってもよい。また、障壁層8がGaNからなり、量子層11がInzGa1-zN(0<z≦1)からなってもよい。
また、例えば、量子層11がInAsxSb1-xからなり、障壁層8がAlSbからなってもよい。この場合、元素割合xを適宜変更することで、格子定数をAlSbに合わせたり、価電子帯バンドエネルギーオフセット(量子ドット層と障壁層の価電子帯エネルギー差)をゼロにしたりすることができる点で好ましい。
また、量子層11がInAsからなり障壁層8がAlSbyAs1-yからなってもよい。
超格子半導体層10に含まれる量子層11が図2のように量子井戸層9からなる場合、超格子半導体層10は、障壁層8と量子井戸層9とを交互に積層することにより形成することができる。このとき、量子井戸層9の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下とすることができる。このことにより、量子井戸層9は、量子効果により価電子帯側および伝導帯側にそれぞれ複数の量子準位を有することができる。また、障壁層8の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下、さらに好ましくは1nm以上3nm以下とすることができる。このことにより、隣接する2つの量子井戸層9の量子準位の波動関数を電子的に結合することができ、これらの量子準位間の共鳴トンネル効果を生じさせることができる。
なお、超格子半導体層10に含まれる量子井戸層9の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。また、超格子半導体層10に含まれる障壁層8の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
また、量子井戸層9は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有する。ここで「実質的に1つとみなすことができる価電子帯」とは、量子井戸層9の価電子帯側の複数の量子準位が密に形成されるため複数の量子準位が実質的に1つと見なすことができる価電子帯をいう。ここで、隣り合う量子準位のエネルギー差が室温エネルギー(約25meV)以下であれば、室温でキャリアが量子準位間を自由に動けるためより好ましい。なお、「実質的に1つとみなすことができる価電子帯」は、価電子帯バンドオフセットがゼロである場合も、ゼロでない場合でも形成される場合がある。
また、この場合、この実質的に1つとみなすことができる量子井戸層9の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間のエネルギー幅を実効的禁制帯幅という。
また、超格子半導体層10は、障壁層8の価電子帯の上端と量子井戸層9を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端との差である価電子帯オフセットが、0.0eV以上0.28eV以下であってもよい。また、実質的に0eVであるとより好ましい。このことにより、各量子井戸層9の価電子帯側の量子準位の波動関数が結合しやすくなり、ミニバンドを形成させることができる。このことにより、光励起により量子井戸層9の価電子帯側の量子準位に形成されたホールが容易に移動することができ、光電変換に効率よく利用することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、この価電子帯オフセットは、0、0.04、0.08、0.1、0.12、0.15、0.2、0.24、0.28、0.3eVであってもよく、これらの数値のうち、いずれか2つの間の範囲であってもよい。
量子井戸層9を構成する材料、量子井戸層9を構成する材料の混晶比、量子井戸層の厚さ、障壁層8を構成する材料、障壁層8を構成する材料の混晶比、障壁層8の厚さは、障壁層8の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間に、光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位が、実質的に1つとみなすことができる価電子帯を形成する複数の密になった量子準位を除いて、2つ以上形成されるように選択され、量子井戸層9の価電子帯側の上端の量子準位と障壁層8の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下となるように選択される。
超格子半導体層10に含まれる量子層11が図1のように複数の量子ドット7からなる量子ドット層6からなる場合、超格子半導体層10は、障壁層8と量子ドット層6とを交互に積層することにより形成することができる。
量子ドット層6は、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いたStranski―Krastanov(S―K)成長と呼ばれる方法や、電子リソグラフィ技術、液滴エピタキシー法などを用いることで形成することができる。S−K成長法は、薄膜形成の際に発現するS−K成長機構に基づくナノサイズの島状構造を利用する手法であり、薄膜形成の原材料構成比を変えることで量子ドットの混晶比を調整することができ、原材料・成長温度・圧力・堆積時間等を変えることによって量子ドットのサイズを調整することができる。なお、液滴エピタキシー法は、障壁層を構成する材料と量子ドット層を構成する材料の格子定数が近い場合に用いることもできる。
量子ドット層6に含まれる量子ドット7は、図1に示したように積層面と平行なx方向のサイズx、y方向のサイズyと、積層面に垂直なz方向の厚さzとで粒子サイズを表すことができ、粒子サイズは(xnm、ynm、znm)で表すことができる。また、各量子ドット層6に含まれる量子ドット7は、実質的に同じサイズとみなすことができる。このため、各量子ドット層6に含まれる量子ドット7は、実質的に同じ量子準位を有するとみなすことができ、量子ドット7の量子準位は、その量子ドット7を含む量子ドット層6の量子準位とみなすことができる。
各量子ドット層6に含まれる量子ドット7の厚さzは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下とすることができる。このことにより、各量子ドット層6に含まれる量子ドット7は、量子効果により価電子帯側および伝導帯側にそれぞれ複数の量子準位を有することができる。また、障壁層8の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下、さらに好ましくは1nm以上3nm以下とすることができる。このことにより、隣接する2つの量子ドット層6に含まれる量子ドット7の量子準位の波動関数を電子的に結合することができ、これらの量子準位間の共鳴トンネル効果を生じさせることができる。
なお、異なる量子ドット層6に含まれる量子ドット7の厚さzは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。また、超格子半導体層10に含まれる障壁層8の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
また、量子ドット層6(量子ドット7)は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有することができる。ここで「実質的に1つとみなすことができる価電子帯」とは、量子ドット層6(量子ドット7)の価電子帯側の複数の量子準位が密に形成されるため複数の量子準位が実質的に1つと見なすことができる価電子帯をいう。なお、「実質的に1つとみなすことができる価電子帯」は、価電子帯バンドオフセットがゼロである場合も、ゼロでない場合でも形成される場合がある。
また、この場合、この実質的に1つとみなすことができる量子ドット層6(量子ドット7)の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間のエネルギー幅を実効的禁制帯幅という。
また、超格子半導体層10は、障壁層8の価電子帯の上端と量子ドット層6(量子ドット7)を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端との差である価電子帯オフセットが、0.0eV以上0.28eV以下であってもよく、また、実質的に0eVであってもよい。このことにより、各量子ドット層6に含まれる量子ドット7の価電子帯側の量子準位の波動関数が結合しやすくなり、ミニバンドを形成させることができる。このことにより、光励起により量子ドット7の価電子帯側の量子準位に形成されたホールが容易に移動することができ、光電変換に効率よく利用することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、この価電子帯オフセットは、0、0.04、0.08、0.1、0.12、0.15、0.2、0.24、0.28、0.3eVであってもよく、これらの数値のうち、いずれか2つの間の範囲であってもよい。
量子ドット7を構成する材料、量子ドット7を構成する材料の混晶比、量子ドット7の厚さz、障壁層8を構成する材料、障壁層8を構成する材料の混晶比、障壁層8の厚さは、障壁層8の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間に、光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位が、実質的に1つとみなすことができる価電子帯を形成する複数の密になった量子準位を除いて、2つ以上形成されるように選択され、量子ドット層6の価電子帯側の上端の量子準位と障壁層8の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下となるように選択される。
超格子半導体層10に形成される中間エネルギー準位は、量子層11の量子準位から形成される。この中間エネルギー準位は、量子層11の伝導帯側の量子準位からなってもよい。また、中間エネルギー準位は、各量子層11の量子準位により形成されるミニバンドであってもよい。この場合、中間エネルギー準位でのキャリア移動が容易となり、中間エネルギー準位を利用した障壁層8の価電子帯から障壁層8の伝導帯への光励起を効率よく生じさせることができる。このことにより、光電変換効率をより高くすることができる。
なお、ミニバンドとは、超格子構造に含まれる量子層11の電子の波動関数が隣接する量子層11の電子の波動関数と相互作用し、量子層11の量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ、量子準位が1つに繋がって形成される中間バンドをいう。
超格子半導体層10に形成される中間エネルギー準位は、量子層11の価電子帯または障壁層8の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在しえる。このことにより、中間エネルギー準位に光励起した電子を存在させることができ、この中間エネルギー準位に存在する電子をさらに障壁層8の伝導帯に光励起することが可能となる。このことにより、中間エネルギー準位を利用して、障壁層8の価電子帯から障壁層8の伝導帯へ電子を光励起させることができる。
また、ミニバンドが形成されると、ミニバンド間を電子が動けるようになるため光励起された電子が存在できる時間はより長くなる。
なお、量子層11の価電子帯または障壁層8の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在しえる中間エネルギー準位が存在するか否かは、例えば、PL(フォトルミネセンス)測定でその発光スペクトルを測定することにより、確認することができる。例えば、励起光源にArレーザーを、検出器にGeフォトディテクターをそれぞれ用い、超格子半導体層10のフォトルミネセンスを11Kで測定する。測定された発光スペクトルの発光帯に対応するエネルギー(光子エネルギー)を求めることにより、どのような準位に中間エネルギー準位が形成されているかを確認できる。また障壁層8の禁制帯幅も確認できる。また、光吸収スペクトルを測定して、中間エネルギー準位の形成を確認してもよい。
超格子半導体層10に形成される中間エネルギー準位は、2つ以上形成される。この中間エネルギー準位の数は、上述のPL測定や光吸収スペクトルにより確認することができる。
超格子半導体層10は、障壁層8の禁制帯(すなわち、障壁層8の伝導帯と価電子帯との間)に中間エネルギー準位を2つ以上有することができ、中間エネルギー準位が形成される位置(エネルギー準位)は、一意に決められるものではない。すなわち、どのような波長の光を太陽電池に光電変換させるかに応じて、その位置(エネルギー準位)を定めればよく、例えば宇宙用太陽電池と地上用太陽電池において位置(エネルギー準位)は異なってもよい。例えば、超格子半導体層10は、量子層11の伝導帯側に2つの中間エネルギー準位を持ってもよい。また、超格子半導体層10が有する中間エネルギー準位は、3つであってもよいし、4つであってもよい。
中間エネルギー準位が障壁層8の伝導帯と障壁層8の価電子帯との間に形成されている場合、障壁層8の伝導帯の下端、量子層11の実質的に1つとみなすことができる価電子帯の上端および中間エネルギー準位の合計のエネルギー準位の数で太陽電池を分けることができる。例えば、超格子半導体層10が2つの中間エネルギー準位を有する太陽電池を4準位中間バンド太陽電池ということができ、超格子半導体層10が3つの中間エネルギー準位を有する太陽電池を5準位中間バンド太陽電池ということができ、超格子半導体層10が4つの中間エネルギー準位を有する太陽電池を6準位中間バンド太陽電池ということができる。
また、例えば、障壁層8の価電子帯の上端のエネルギー準位、または量子層11の実質的に1つとみなすことができる価電子帯の上端のエネルギー準位をEvで表すことができ、障壁層8の伝導帯の下端のエネルギー準位をEcで表すことができる。また、中間エネルギー準位をEiで表すことができ、例えば、中間エネルギー準位のうち、最もEcに近い中間エネルギー準位をEi1と表すことができ、次にEcに近い中間エネルギー準位をEi2、その次をEi3、その次をEi4と表すことができる。
また、EcとEiとのエネルギー差をΔEciと表すことができ、2つのEi間の差をΔEiiと表すことができ、EvとEiとのエネルギー差をΔEviと表すことができる。また、中間エネルギー準位を特定するために、これらの表示の後に、中間エネルギー準位の番号を記載することができる。
なお、EcとEvとのエネルギー差は、Egで表すことができる。
例えば、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層10のバンド図は、図3のように表すことができる。
フォトンを吸収しEvの電子がEcに光励起され、キャリアを生成するキャリア生成速度をGCVで表すことができ、Evの電子がEiに光励起されるときのキャリア生成速度をGVIで表すことができ、Eiの電子がEcに光励起されるときのキャリア生成速度をGCIで表すことができる。また、Eiを特定するために、これらの表示の後に中間エネルギー準位の番号を下付きで記載することができる。
Ecの電子とEvのホールとが再結合し発光する発光再結合をRCVで表すことができ、Eiの電子とEvのホールとが再結合し発光する発光再結合をRVIで表すことができ、Ecの電子が発光を伴いEiに移動する発光再結合をRCIで表すことができる。また、Eiを特定するために、これらの表示の後に中間エネルギー準位の番号を下付きで記載することができる。
例えば、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層10のバンド図は、図4のように表すことができる。
なお、この明細書で用いるバンド図(エネルギーバンドダイヤグラム)は、特に言及しない限り、慣例的に用いられている通りに記載している。すなわち、電子のエネルギーを基準にエネルギー準位を表している。ここで、電子はより低いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。さらに、正孔はより高いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。
このような中間エネルギー準位を2つ以上持つ超格子半導体層10は、例えば、量子ドット層6に含まれる量子ドット7のサイズや量子井戸層9の厚さを調整することにより形成できる。後述する実験4で述べるように、例えば、層厚が2.0nmであるAlSbで形成された障壁層8に、(2.7nm,2.7nm,9.0nm)の量子ドット7をInAs0.7Sb0.3で形成することにより、超格子半導体層10に中間エネルギー準位を2つ形成できる。また、層厚が2.0nmであるAlSb0.5As0.5で形成された障壁層8に、(2.5nm,2.5nm,8.5nm)の量子ドットをInAsで形成することにより、超格子半導体層10に中間エネルギー準位を2つ形成できる。
超格子半導体層10が中間エネルギー準位を2つ有する場合、実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.5eV以下であるとよい。このような禁制帯幅であれば、中間エネルギー準位を1つ有する太陽電池よりも、エネルギー変換効率を高くできる。
このような禁制帯幅を持つ超格子半導体層10は、実験4で述べるように、例えば、InAs0.7Sb0.3を量子ドットとする場合、AlSbを障壁層8とすることにより形成できる。また、InAsを量子ドットとする場合、AlSb0.5As0.5を障壁層8とすることにより形成できる。このように、適切な物性値をもつ半導体材料を選択したり、超格子半導体層10を構成する半導体材料の混晶比を調整したりすることにより、所望の禁制帯幅を持つ超格子半導体層10が形成できる。また、超格子半導体層10を構成する量子ドット層6に含まれる量子ドット7のサイズや障壁層8の厚みを調整することによっても、所望の実効的禁制帯幅を有する超格子半導体層10が形成できる。
3.太陽電池の製造方法
本実施形態の太陽電池の製造においては、例えば、膜厚制御に優れた分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長法(MOCVD)等を用い、超格子構造を有する太陽電池を製造することができる。ここでは、図1の超格子構造を有する太陽電池の一形態について、図1を参照して、その製造方法について説明する。
例えばp−GaAs基板1を有機系洗浄液で洗浄した後、硫酸系エッチング液によってエッチングし、さらに流水洗浄を施した後、MOCVD装置内に設置する。この基板の上にバッファー層3を形成する。バッファー層3は、その上に形成すべき光吸収層の結晶性を向上させるための層である。続いてバッファー層3上に300nmの厚さでp型AlSbxAs1-xベース層(p型半導体層)4および障壁層8となるAlSbxAs1-x層を結晶成長させた後、自己組織化機構を用いてInAsからなる量子ドット層6を形成する。
この障壁層8と量子ドット層6との結晶成長の繰り返しを、p型半導体層最近接の量子ドット層6からn型半導体層最近接の量子ドット層6まで行う。
続いて、250nmの厚さでn型AlSbxAs1-x層(n型半導体層)12を結晶成長させてpin構造を形成し、次いで、窓層14としてAlAs層を形成する。
続いて、コンタクト層15上にフォトリソグラフィーとリフトオフ技術により櫛型電極を形成し、この櫛型電極をマスクとしてコンタクト層15を選択エッチングしてn型電極17を形成することで、超格子構造を有する太陽電池を形成することができる。p型電極18は、例えばベース層4に到達するまで一部エッチングし、ベース層4上に形成することができる。
n型ドーパントとしてはSiを、p型ドーパントとしてはBeを用いることができる。電極材料としては例えば、Auを用い、抵抗加熱蒸着法により真空蒸着で形成することができる。
なお、ここで示した例は一例であり、本実施形態の超格子構造を有する太陽電池に用いる基板、バッファー層、量子ドット、ドーパント、電極などの各材料や、各プロセスで使用する洗浄剤、基板処理温度、製造装置等は、ここで示した例に限定されない。
シミュレーション実験1
〔実験1〕
詳細平衡モデルを用いてシミュレーション実験を行い、エネルギー変換効率を算出した。この算出方法を説明するため、バンド図を図3、4に示す。なお、このシミュレーション実験において、量子層は、量子ドット層とした。
図3は、本発明の一実施形態の太陽電池(6準位中間バンド太陽電池)に含まれ、4つの中間エネルギー準位(中間バンド)を有する超格子半導体層のバンド図であって、6準位の位置関係を説明するための説明図である。
図4は、本発明の一実施形態の太陽電池(6準位中間バンド太陽電池)に含まれ4つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。
まず、EiniからEfinのエネルギー範囲(Eini<Efin)に含まれるフォトンフラックスは、以下の式(1)で表すことができる。また、EiniおよびEfinはEini<Efinを満たす任意のエネルギーを表している。
ここで、Nはプランクの放射則から得られるフォトンフラックスを表す。また、hはプランク定数、cは真空中の光速、μは電子‐正孔対の化学ポテンシャル、kはボルツマン定数、Tは物質の温度をそれぞれ表す。
次に、このフォトンフラックスを用いると、6準位(Ec、Ev、Ei1,Ei2,Ei3,Ei4の各準位)の内、ある2準位間におけるキャリア生成速度G及び発光再結合Rは、以下の式(2)、式(3)で表すことができる。
ここで、C0は集光倍率、Hは太陽と地球との距離から決まる幾何学的に決まる定数、Tsは太陽の表面温度、T0は太陽電池の温度をそれぞれ表している。
これらの式を用いて6準位中間バンド太陽電池に接続された外部電極から外部に取り出される電流密度Jは以下の式(4)のように表すことができる。ただし、中間バンド幅は非常に狭く、中間バンド間の電子遷移可能なエネルギー範囲が狭いため(EiniおよびEfinの差が小さい)、中間バンド間(Ei1,Ei2,Ei3,Ei4のうち、任意の2つの準位間のキャリア生成および発光再結合)の電子遷移は無視する。
ここで、qは電荷素量を表す。また、キャリア生成速度G及び発光再結合Rの下付き文字は、図4に示すように、遷移が生じるバンド(電子の遷移が生じる2つのエネルギー準位)を表しているので、例えば、下付き文字のCVはエネルギー準位Ecとエネルギー準位Ev間の電子の遷移、下付き文字のCI1はエネルギー準位Ecとエネルギー準位Ei1間の電子の遷移を表し、下付き文字のVI2はエネルギー準位Evとエネルギー準位Ei2間の電子の遷移を表している。他の下付き文字も、同様のルールで、電子の遷移が生じる2つのエネルギー準位を示している。
中間バンド(上記中間エネルギー準位)と外部電極の間では電流が流れないので、中間バンド電流が0となり、以下の式(5)〜式(8)のように表すことができる。
ここで、キャリア生成速度G及び発光再結合Rの下付き文字は、式4と同様のルールで、電子の遷移が生じる2つのエネルギー準位を示している。
一方、太陽光エネルギーPinは、以下の式(9)のように表すことができる。
このとき、出力電圧をV、出力電流をJとすると、エネルギー変換効率ηは、以下の(10)式となる。
以上の式から、6準位中間バンド太陽電池について、その最大エネルギー変換効率を算出できる。6準位中間バンド太陽電池について説明したが、他の準位中間バンド太陽電池についても同様の式で最大エネルギー変換効率を算出できる。
実験1では、6準位中間バンド太陽電池と比較例に係る太陽電池について、障壁層のバンドギャップEgと中間バンドのエネルギー準位Eiを変化させて、最大エネルギー変換効率を算出した。比較例である1つの中間エネルギー準位を有する3準位中間バンド太陽電池のバンド図を図5、6に示し、実験1の結果を図7、図8、表1および表2に示す。
図5は、比較例に係る超格子半導体層のバンド図である。すなわち、この図は、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位と、量子層の実質的に1つとみなすことができる価電子帯の上端のエネルギー準位と、量子ドットの量子準位から形成される1つの中間バンドの準位の合計が3準位である場合のバンド図を示している(ここで、障壁層と量子ドットが3準位である超格子半導体層により構成された太陽電池を以下、比較例の中間バンド太陽電池という)。また、図7は、実験1のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。さらに、図8は、実験1のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。表1及び表2は、6準位中間バンド太陽電池と比較例の中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率とエネルギー準位を比較したものであり、実験1の結果の一部を示す表である。表1は、集光条件が「非集光」の場合であり、表2は、集光条件が「1000倍集光」の場合である。
ここで、実験1のシミュレーションでは、Ts=6000K、T0=300Kで計算し、集光倍率は、式(2)と(9)におけるC0について、C0=1の場合とC0=1000の場合の2パターンとした。これらは、C0=1の場合を「非集光」と表示し(図7)、C0=1000の場合を「1000倍集光」と表示した(図8)。
図7を参照すると、非集光の場合、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層(母体半導体ともいう)のバンドギャップがEg<1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池と比較して、そのエネルギー変換効率にほとんど差異がないことがわかる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位(以下、これらの組み合わせをバンドラインナップという)を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図7)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図7を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7のとき約56.6%である。
このように、図7の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図7の結果は、表1を参照しても理解できる。)
図8を参照すると、1000倍集光の場合、非集光の場合と同様に、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層(母体半導体ともいう)のバンドギャップがEg<1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池と比較してそのエネルギー変換効率にほとんど差異がないことがわかる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図8)。ここで、障壁層のバンドギャップが1.1≦Eg≦1.4eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.5eVであることがより好ましい。
図8を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.5eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.4〜2.5eVのとき約67.7%である。
このように、図8の結果から、1000倍集光の場合でも最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかった。(なお、上記図8の結果は、表2を参照しても理解できる。)
ここで、表1及び表2において、ΔEは、2つのエネルギー準位(バンド)の間のエネルギー差を表しており、例えば、ΔEci1は、Ecのエネルギー準位とEi1のエネルギー準位とのエネルギー差を表している(図3参照)。このように、ΔEに続いて記載されている英数字は、2つのエネルギー準位を示している。ΔEii12等の他の記載及び表3〜表6も同様のルールで記載している。
表1及び表2を参照し、同じ大きさのEgで比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の変換効率を越える6準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.05eV、またはΔEvi4≧0.05eVであることがわかる、また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi4)|≧0.65eVとなることもわかる。さらに、MIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)≧0.10eVとなることもわかる。
ここで、MIN(A,B,C)とは、A,B,Cの数値のうち最も小さい数値を意味する。以下、この明細書では、MIN(A,B,・・・)は、括弧内の数値のうち最も小さい数値を意味するものとして使用する。
また、表1及び表2を参照し、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率と比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率を超える6準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.05eV、またはΔEvi4≧0.05eVであることがわかる。また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi4)|≧0.65eVとなることもわかる。さらに、MIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)≧0.125eVとなることもわかる。
例えば、量子ドットにより6準位中間バンド太陽電池が構成され、価電子帯における、量子ドットと障壁層のバンドオフセットが0の場合、または価電子帯に形成される量子準位が1つのバンドとみなすことができる場合(すなわち4つの中間バンド準位を伝導帯バンドオフセットによるポテンシャルを用いて作製する場合)、ΔEvi4が大きいほど(ΔEci1+ΔEii12+ΔEii23+ΔEii34が小さいほど)最も低い中間バンドのエネルギー準位Ei4が前記障壁層の伝導帯の下端に近く、量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。従って、Ei1、Ei2,Ei3,Ei4の中間バンドが形成されやすくなり、キャリア移動がより起こりやすくなる。このような観点からΔEvi4≧(Eg/2)eVが好ましく、表1及び表2を検討すると、6準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEvi4≧(Eg/2+0.05)eVとなっている。このような式を満たす形態であれば、前記量子ドット層の伝導帯底と障壁層の伝導帯底の間のポテンシャルを用いて4つの中間バンドを形成する場合、最も低い中間バンドのエネルギー準位が前記障壁層の伝導帯底に近いので、超格子構造の量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。このため、量子準位が1つに繋がった中間バンドを形成しやすくなり、キャリア移動が起こりやすくなる。
例えば、1000倍集光下における6準位中間バンド太陽電池においてEg=2.5eVの場合、67.7%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi4の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi4)=(1.325eV、0.575eV)(0.575eV、1.325eV)である。これらは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi4≧(Eg/2+0.05)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi4)=(0.575eV、1.325eV)である。
〔実験2〕
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の下端(最下部、底)のエネルギー準位と、障壁層の価電子帯の上端(最上部、頂点)と量子ドットの量子準位から形成される3つの中間バンドの準位の合計が5準位を有する太陽電池(5準位中間バンド太陽電池)について、実験1と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記5準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図9、10に示し、実験結果を図11、図12、表3及び表4に示す。
図9は、本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、3つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、5準位の位置関係を説明するための説明図である。図10は、本発明の一実施形態の太陽電池に含まれ、3つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。
図11は、実験2のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフであり、図12は、実験2のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。
表3及び表4は、5準位中間バンド太陽電池と比較例の中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率とエネルギー準位を比較したものであり、実験2の結果の一部を示す表である。表3は、集光条件が「非集光」の場合であり、表4は、集光条件が「1000倍集光」の場合である。
実験2のシミュレーションでも、実験1のシミュレーションと同様に、Ts=6000K、T0=300Kで計算し、集光倍率は、式(2)と(9)におけるC0について、C0=1の場合とC0=1000の場合の2パターンとした。これらは、C0=1の場合を「非集光」と表示し(図11)、C0=1000の場合を「1000倍集光」と表示している(図12)。
図11を参照すると、非集光の場合、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層(母体半導体ともいう)のバンドギャップがEg<1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池と比較して、そのエネルギー変換効率にほとんど差異がないことがわかる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図11)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、5準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図11を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7eVのとき約55.4%である。
このように、図11の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図11の結果は、表3を参照しても理解できる。)
図12を参照すると、1000倍集光の場合、非集光の場合と同様に、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層(母体半導体ともいう)のバンドギャップがEg<1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池と比較してそのエネルギー変換効率にほとんど差異がないことがわかる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図12)。
図12を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.4eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3〜2.4eVのとき約66.5%である。
このように、図12の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図12の結果は、表4を参照しても理解できる。)
表3及び表4を参照し、同じ大きさのEgで比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の変換効率を越える5準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.05eV、またはΔEvi3≧0.05eVであることがわかる。また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi3)|≧0.625eVとなることもわかる。さらに、MIN(ΔEii12、ΔEii23)≧0.15eVとなることもわかる。
また、表3及び表4を参照し、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率で比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率を超える5準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.175eV、またはΔEvi3≧0.175eVであることがわかる。また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi3)|≧0.625eVとなることもわかる。さらに、MIN(ΔEii12、ΔEii23)≧0.175eVとなることもわかる。
例えば、量子ドットにより5準位中間バンド太陽電池が構成され、価電子帯における、量子ドットと障壁層のバンドオフセットが0の場合、または価電子帯に形成される量子準位が1つのバンドとみなすことができる場合(すなわち3つの中間バンド準位を伝導帯バンドオフセットによるポテンシャルを用いて作製する場合)、ΔEvi3が大きいほど(ΔEci1+ΔEii12+ΔEii23が小さいほど)最も低い中間バンドのエネルギー準位Ei3が前記障壁層の伝導帯の下端に近く、量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。従って、Ei1、Ei2,Ei3の中間バンドが形成されやすくなり、キャリア移動がより起こりやすくなる。このような観点から表3及び表4を検討すると、5準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、好ましくはΔEvi3≧(Eg/2+0.075)eVである。
例えば、1000倍集光下における5準位中間バンド太陽電池においてEg=2.4eVの場合、63.5%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi3の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi3)=(1.30eV、0.575eV)(0.575eV、1.30eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi3≧(Eg/2+0.075)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi3)=(0.575eV、1.30eV)である。
〔実験3〕
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の下端(最下部、底)と価電子帯の上端(最上部、頂点)と量子ドットから形成される2つの中間バンドの準位の合計が4準位を有する太陽電池(4準位中間バンド太陽電池)について、実験1及び実験2と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記4準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図13、図14に示し、実験結果を図15、図16、表5及び表6に示す。
図13は、本発明の一実施形態の太陽電池(4準位中間バンド太陽電池)に含まれ、2つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、4準位の位置関係を説明するための説明図であり、図14は、本発明の一実施形態の太陽電池(4準位中間バンド太陽電池)に含まれ、2つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。
図15は、実験3のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフであり、図16は、実験3のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。
表5及び表6は、4準位中間バンド太陽電池と比較例の中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率とエネルギー準位を比較したものであり、実験3の結果の一部を示す表である。表5は、集光条件が「非集光」の場合であり、表6は、集光条件が「1000倍集光」の場合である。
なお、表5および表6にはΔEci1(ΔEvi2)の列とΔEvi2(ΔEci1)の列があるが、これらは一方がΔEci1の値であれば他方がΔEvi2の値であることを示し、一方がΔEvi2の値であれば他方がΔEci1の値であることを示している。
実験3のシミュレーションでも、実験1及び実験2のシミュレーションと同様に、Ts=6000K、T0=300Kで計算し、集光倍率は、式(7)におけるC0について、C0=1の場合とC0=1000の場合の2パターンとした。これらは、C0=1の場合を「非集光」と表示し(図15)、C0=1000の場合を「1000倍集光」と表示した(図16)。
図15を参照すると、非集光の場合、4準位中間バンド太陽電池は、障壁層(母体半導体ともいう)のバンドギャップがEg<1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池と比較して、そのエネルギー変換効率にほとんど差異がないことがわかる。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも4準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図15)。
図15を参照すると、4準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.5eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6eVのとき約53.0%である。
このように、図15の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図15の結果は、表5を参照しても理解できる。)
図16を参照すると、1000倍集光の場合、障壁層のバンドギャップがEg≧1.0eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも4準位中間バンド太陽電池のほうが、中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図16)。
図16を参照すると、障壁層のバンドギャップがEg=1.6〜3.2eVの領域にあるとき、4準位中間バンド太陽電池は、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3eVのとき約63.8%である。
このように、図16の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図16の結果は、表6を参照しても理解できる。)
表5及び表6を参照し、同じ大きさのEgで比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の変換効率を超える4準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.1eV、またはΔEvi2≧0.1eVであることがわかる。また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi2)|≧0.25eVとなることもわかる。さらに、ΔEii12≧0.25eVとなることもわかる。
また、表5及び表6を参照し、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率と比較した場合に、比較例の中間バンド太陽電池の最大変換効率を超える4準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、ΔEci1≧0.325eV、またはΔEvi2≧0.325eVであることがわかる。また、この最適バンドラインナップは、|(ΔEci1−ΔEvi2)|≧0.325eVとなることもわかる。さらに、ΔEii12≧0.325eVとなることがわかる。
例えば、量子ドットにより4準位中間バンド太陽電池が構成され、価電子帯における、量子ドットと障壁層との間のバンドオフセットが0の場合、または価電子帯に形成される量子準位が1つのバンドとみなすことができる場合(すなわち2つの中間バンド準位を伝導帯バンドオフセットによるポテンシャルを用いて作製する場合)、ΔEvi2が大きいほど(ΔEci1+ΔEii12が小さいほど)最も低い中間バンドのエネルギー準位Ei2が前記障壁層の伝導帯の下端に近く、量子ドット層の電子の波動関数が隣接量子ドット層の波動関数と大きく相互作用しやすくなる。従って、Ei1、Ei2の中間バンドが形成されやすくなり、キャリア移動がより起こりやすくなる。このような観点から表5及び表6を検討すると、4準位中間バンド太陽電池の最適バンドラインナップは、好ましくはΔEvi2≧(Eg/2+0.125)eVである。
例えば、1000倍集光下における4準位中間バンド太陽電池においてEg=2.3eVの場合、63.8%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi2の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi2)=(1.30eV、0.65eV)(0.65eV、1.30eV)、(1.00eV、0.65eV)、(0.65ev、1.00eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi2≧(Eg/2+0.125)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi2)=(0.65eV、1.30eV)である。
以上の実験から、6準位中間バンド太陽電池、5準位中間バンド太陽電池、及び4準位中間バンド太陽電池は、エネルギー変換効率が高いことがわかる。
なお、表1〜表6のEg以外のエネルギー準位は、あるEgに対するいくつかの例を示したに過ぎない。すなわち、あるEgに対して同じ効率を満たすEg以外のエネルギー準位はエネルギー間隔の対称性から他にも組み合わせが考えられる。また、表1〜6はあるEgに対して最大エネルギー変換効率を与える最適なエネルギー準位の組み合わせを示したに過ぎず、これら以外の組み合わせであっても比較例の中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率を越えうる。従って、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されない。
シミュレーション実験2
次に、実験1〜3で明らかとなったエネルギー準位(4〜6準位中間バンド太陽電池。多準位中間バンド太陽電池ともいう)を有する太陽電池の超格子半導体層について、特定の構造に着目してさらにシミュレーション実験を行った。
MATLABソフトを用いシュレディンガー方程式を解き、バンド構造計算を行った。このシミュレーション実験では、多準位中間バンド太陽電池を実現できる構造として、「価電子帯バンドオフセットがゼロである構造」と「価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造」に着目した。また、量子ドットの形状は立方体であると考え、3辺の大きさを(xnm,ynm,znm)とした。
〔実験4〕
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
AlSbからなる障壁層と、InAs1-xSbxからなる量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造を有する超格子半導体層では、障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位と、量子ドットを構成する材料(バルク)の価電子帯の上端のエネルギー準位との差がゼロとすることが可能であり、価電子帯オフセットをゼロにすることが可能である(ここでいう価電子帯バンドオフセットとは、InAsxSb1-xとAlSbの価電子帯の上端のエネルギー準位の差がゼロである関係をいう)。InAs1-xSbxはΓ点の伝導体の下端とΓ点の価電子帯の上端とのエネルギー差が最も小さく(直接バンドギャップ)、AlSbはX点の伝導帯の下端とΓ点の価電子帯の上端のエネルギー差が最も小さい(間接バンドギャップ)。しかし、太陽電池においてはΓ点における吸収が最も重要かつ支配的であり、以下ではInAs1-xSbx、AlSb共にΓ点でのバンド構造を考える。ここでは、Vegard則からx=0.3として以下の計算を行った。AlSbのΓ点でのバンドギャップは2.3eVであり、InAs0.7Sb0.3のΓ点でのバンドギャップは0.3eVである。また、伝導帯バンドオフセットは2.0eVであり、価電子帯バンドオフセットは0.0eVとなる。
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造に関するバンド構造計算の結果を図17〜図25に示す。図17、図20及び図23は、中間バンド太陽電池のバンド構造計算結果を示す図である。これらの図の多準位中間バンド太陽電池は、図17、図20、図23の順で、4準位中間バンド太陽電池、5準位中間バンド太陽電池、6準位中間バンド電池である。また、これらの図の太陽電池は、量子ドット層と障壁層の価電子帯バンドオフセットがゼロであり、量子ドット層と障壁層がそれぞれInAs0.7Sb0.3とAlSbで構成されている。また、図18及び図19、図21及び図22、並びに図24及び図25は、それぞれ図17、図20及び図23における太陽電池に光を照射したときの、電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
〔実験4−1〕
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり、厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、9nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を示す図である図17は、横軸が超格子半導体層の厚さ方向(図1のz方向)の距離であり、縦軸がエネルギー準位である。また、図17に示した点線は、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の伝導帯の下端Ecのエネルギー準位を示している。また、この実験では、バンドオフセットがゼロであるため、障壁層と量子ドット層の価電子帯の上端のエネルギー準位Evは、同じである。また、量子ドット層の量子準位から形成され、シミュレーションにより計算される中間バンドのエネルギー準位Ei1、Ei2を示している。
図20、23も同様の方法により記載した図である。
シミュレーションの結果、図17に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯の上端のエネルギー準位を0として、(Ev、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.29、1.64、2.32)eVとなった。
図18、図19は、これらのエネルギー準位を用いて、この4準位中間バンド太陽電池に非集光(図18)または1000倍集光(図19)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.9%、1000倍集光で63.4%となった。
〔実験4−2〕
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の5準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、13nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図20に示している。図20に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.25、1.44、1.80、2.3)eVとなった。
図21、図22は、これらのエネルギー準位を用いて、この5準位中間バンド太陽電池に非集光(図18)または1000倍集光(図19)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、5準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.1%、1000倍集光で63.6%となった。
〔実験4−3〕
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、17nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図23に示している。図23に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei4、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.23、1.35、1.57、1.90、2.3)eVとなった。
図24、図25は、これらのエネルギー準位を用いて、この6準位中間バンド太陽電池に非集光(図24)または1000倍集光(図25)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、6準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合53.2%、1000倍集光で65.0%となった。
〔実験5〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
半導体の価電子帯にはヘビーホールとライトホールが存在する。このヘビーホールは有効質量が比較的大きいため、価電子帯バンドオフセットが比較的小さければ、量子ドット(量子ドット層)の価電子帯には多数の量子エネルギー準位が形成され、これらの複数の準位をまとめて1つの価電子帯とみなすことが可能である。量子ドットの1つにみなされた価電子帯の上端から障壁層の伝導帯の下端までを実効的なバンドギャップと考えることが可能となり、多準位中間バンド太陽電池を実現することができる。このような組み合わせとして、AlSb1-xAsxからなる障壁層とInAsからなる量子ドット層との組み合わせがある。
一方で、この組み合わせにおいても、先ほどと同様にInAsはΓ点の伝導体の下端とΓ点の価電子帯の上端とのエネルギー差が最も小さく(直接バンドギャップ)、AlSb1-xAsxはX点の伝導帯の下端とΓ点の価電子帯の上端のエネルギー差が最も小さい(間接バンドギャップ)。しかし、太陽電池においてはΓ点における吸収が最も重要かつ支配的であり、以下ではInAs、AlSb1-xAsx共にΓ点でのバンド構造を考える。ここでは、Vegard則からx=0.5として以下の計算を行った。InAsのΓ点でのバンドギャップは0.35eVであり、AlSb0.5As0.5のΓ点でのバンドギャップは2.65eVである。また、伝導帯バンドオフセットは2.02eVであり、価電子帯バンドオフセットは0.28eVとなる。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造に関するバンド構造計算の結果を図26〜図34に示す。図26、図29及び図32は、中間バンド太陽電池のバンド構造計算結果を示す図である。これらの図における中間バンド太陽電池は、図26、図29、図32の順で、4準位中間バンド太陽電池、5準位中間バンド太陽電池、6準位中間バンド太陽電池である。また、これらの図における太陽電池は、量子ドット層と障壁層との価電子帯バンドオフセットがゼロでなく、量子ドット層と障壁層がそれぞれInAsとAlSb0.5As0.5で構成されている。また、図27及び図28、図30及び図31、並びに図33及び図34は、それぞれ図26、図29及び図32における太陽電池に光を照射したときの、電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
〔実験5−1〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(2.5nm、2.5nm、8.5nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を示す図である図26は、横軸が超格子半導体層の厚さ方向(図1のz方向)の距離であり、縦軸がエネルギー準位である。また、図26に示した2つの点線のうち1つは、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の伝導帯の下端Ecのエネルギー準位を示しており、もう1つは、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の価電子帯の上端のエネルギー準位を示している。また、量子ドット層の量子準位から形成され、シミュレーションにより計算される中間バンドのエネルギー準位Ei1、Ei2と、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成されるミニバンドを示している。後述の実験6より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していることが示されている。
図29、32も同様の方法により記載した図である。
図26に示すように、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成される複数のミニバンドは、狭いエネルギー範囲に形成される。このため、これらの複数のミニバンドは、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。
また、図26に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.54、1.90、2.52)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図27、図28は、これらのエネルギー準位を用いて、この4準位中間バンド太陽電池に非集光(図27)または1000倍集光(図28)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合47.7%、1000倍集光で56.8%となった。
〔実験5−2〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の5準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(2.7nm、2.7nm、12nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図29に示している。図29に示すように、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成される複数のミニバンドは、狭いエネルギー範囲に形成される。このため、これらの複数のミニバンドは、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。後述の実験6、7より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していると考えらえる。
また、図29に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.41、1.61、1.98、2.50)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図30、図31は、これらのエネルギー準位を用いて、この5準位中間バンド太陽電池に非集光(図30)または1000倍集光(図31)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、5準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.3%、1000倍集光で61.4%となった。
〔実験5−3〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(3.0nm、3.0nm、15nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図32に示している。図32に示すように、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成される複数のミニバンドは、狭いエネルギー範囲に形成される。このため、これらの複数のミニバンドは、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。後述の実験7より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していることが示されている。
また、図32に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei4、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.28、1.42、1.67、2.03、2.49)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図33、図34は、これらのエネルギー準位を用いて、この6準位中間バンド太陽電池に非集光(図33)または1000倍集光(図34)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、6準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.8%、1000倍集光で63.4%となった。
以上のように、実験4、5の結果からも、価電子帯バンドオフセットがゼロである場合であっても、ゼロでない場合であっても、4〜6準位中間バンド太陽電池が高いエネルギー効率を示すことが理解できる。
障壁層および量子層について
実験4、5においては、AlSbからなる障壁層とInAs0.7Sb0.3からなる量子ドット層とが積層された超格子構造、AlSb0.5As0.5からなる障壁層とInAsからなる量子ドット層とが積層された超格子構造を例示したが、本願の太陽電池に含まれる障壁層および量子層は、これらに限定されない。例えば、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなる障壁層と、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなる量子層とを積層し混晶比x、yを任意の割合とした超格子構造であってもよい。
また、本願の太陽電池に含まれる障壁層および量子層は、例えば格子定数が近く、同様の結晶構造を持つ材料として、表7に挙げたInAs,GaAs,AlAs,InSb,GaSb,AlSb,InP,GaP,AlPの材料を用いてもよい(表7の伝導帯、価電子帯のエネルギー値はInSbの価電子帯を基準としている)。すなわち、実験4、5と同様に高効率エネルギー変換効率が得られるように、障壁層または量子層として(Al,Ga,In)から少なくとも1つの元素、(As,Sb,P)から少なくとも1つの元素を有するIII―V族化合物半導体を用いることができる。
また、材料、混晶比、量子ドットサイズ、障壁層の層厚を変えることで量子準位を変えることができるが、量子ドット層のバンドギャップが小さいほど所望の位置に中間バンドを形成しやすくなり、エネルギー準位の自由度が向上する。従って、量子ドット層としてInAs,InSbもしくはこれらの混晶材料を用い、障壁層としてAlSb,GaSb,InP,AlAs,GaAs,AlP,GaPもしくはこれらの混晶材料を用いることがより好ましい。
また他にも、障壁層または量子層としてカルコパイライト系材料やII−VI化合物半導体を用いることもできる。例えば、CuInSe2はバンドギャップが1.04eV、CuAlSe2は2.67eVであり、これらの価電子帯バンドオフセットは0.26eVと小さい。また、CuGaSe2はバンドギャップが1.68eVであり、CuInSe2との価電子帯バンドオフセットは0.04eVと非常に小さく、価電子帯バンドオフセットがゼロに近い。
障壁層の材料とp型・n型半導体層は作製の観点から同じ材料であることが好ましいが、異なる材料であっても構わない。
量子層の価電子帯側の量子準位について
価電子帯には有効質量の大きいヘビーホールが存在するため、量子層の価電子帯側の多数の量子エネルギー準位は、より密(量子エネルギー準位間隔が小さい)に形成されやすく、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。このことにより、この実質的に1つとみなされた価電子帯は、ホールが容易に移動しやすくなり、p型半導体層へのホール取り出しが容易に起こりやすくなる。例えば、図26、29、32の価電子帯領域には一部のエネルギー準位を示しているが、十分に密になっていることがわかる。従って、価電子帯バンドオフセットがゼロでない場合であっても、密になった量子エネルギー準位を、実質的に1つの価電子帯としてみなすことができる。
さらに価電子帯バンドオフセットが比較的小さい場合、隣接する量子ドット間の波動関数が電子的に結合しやすくなり、ミニバンドが形成され、ホール移動が起こりやすくなるため、より好ましい。
シミュレーション実験3
次に、クローニッヒペニーモデルを用いて、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の中間バンド太陽電池の超格子構造についてバンド構造計算をおこなうシミュレーション実験を行った。この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、この障壁層と量子ドット層の組み合わせでは、実験5に記載したように、価電子帯バンドオフセットは0.28eVとなり、伝導帯バンドオフセットは2.02eVとなる。
この量子ドット層の伝導帯側の量子準位についての計算結果を図35に示し、価電子帯側の量子準位についての計算結果を図36、37に示す。図35〜37の横軸は、量子ドット層に挟まれた障壁層の厚さであり、縦軸はエネルギー準位である。
また、図36、37において、縦軸は、0eVが量子ドット層を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端のエネルギー準位であり、0.28eVが障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位である(つまり、図36、37に示したグラフの下辺と上辺との差が価電子帯バンドオフセットとなる)。また、図35には、量子ドット層の伝導帯側の量子準位を示しており、図36、37には、量子ドット層の価電子帯側の量子準位を示している。また、図35〜37の斜線で示した領域は、それぞれの障壁層厚みにおけるミニバンドが形成されている領域を示している。
なお、図36、37は、正孔のエネルギーを基準にエネルギー準位を表している。ここで、正孔はより低いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。さらに、電子はより高いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。
〔実験6〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。量子ドット層の伝導帯側の量子準位の計算結果を図35に示し、価電子帯側の量子準位の計算結果を図36に示している。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなり(2.5nm、2.5nm、8.5nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、z方向以外の2方向からのエネルギー準位の寄与が障壁層に大きく依存しないと考え、図35、36の量子エネルギー準位は、z方向以外の2方向からのエネルギー準位が近似的に加算されている。図36の量子エネルギー準位は、ライトホールの一部のエネルギー準位を示しているに過ぎない。
量子ドット層の伝導帯側の量子準位の計算結果である図35をみると、障壁層厚みは2nmである場合、斜線で示した領域が有限の幅を有しており、ミニバンドが形成できていることがわかる。また、障壁層が3nm程度までミニバンドが形成できていることがわかる。
この結果から、伝導帯バンドオフセットが2.02eVと大きくても障壁層厚みは3nm程度までであればミニバンドが形成される。従って、障壁層厚みが3nm以下であることがより好ましい。
また、量子ドット層の価電子帯側の量子準位の計算結果である計算結果である図36を見ると、障壁層厚みは2nmである場合、斜線で示した領域が有限の幅を有しており、ミニバンドが形成できていることがわかる。また、障壁層が6〜7nm程度までミニバンドが形成できていることがわかる。
実験5−1および6では、一例としてz方向の量子ドットサイズを8.5nmとしたが、2.5nmとしても良く、その場合でもミニバンドは形成される。
また、量子ドットサイズを2.5nmとした方が、量子ドットの価電子帯側の量子準位が障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位に近づき、また、量子ドットの伝導帯側の量子準位が障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位に近づき、量子閉じ込めが弱くなる。このため、同じ障壁層の厚みで比較した場合、ミニバンド幅はより大きくなる。また、ミニバンドが形成可能な障壁層の厚みは大きくなる。
〔実験7〕
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。量子ドット層の価電子帯側の量子準位の計算結果を図37に示している。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなり(3.0nm、3.0nm、15nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、z方向以外の2方向からのエネルギー準位の寄与が障壁層に大きく依存しないと考え、図37の量子エネルギー準位は、z方向以外の2方向からのエネルギー準位が近似的に加算されている。図37の量子エネルギー準位は、ライトホールの一部のエネルギー準位を示しているに過ぎない。
この実験の結果である図37をみると、障壁層厚みは2nmである場合、斜線で示した領域が有限の幅を有しており、ミニバンドが形成できていることがわかる。また、障壁層が6〜7nm程度までミニバンドが形成できていることがわかる。
また、実験5−3および7では一例としてz方向の量子ドットサイズを15nmとしたが、3nmとしても良く、その場合でもミニバンドは形成される。また、3nmとした方が、量子ドットの価電子帯側の量子準位が障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位に近づき、また、量子ドットの伝導帯側の量子準位が障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位に近づき、量子閉じ込めが弱くなる。このため、同じ障壁層の厚みで比較した場合、ミニバンド幅はより大きくなる。また、ミニバンドが形成可能な障壁層の厚みは大きくなる。
以上の結果から、価電子帯バンドオフセットが0.28eVであればミニバンドが十分形成されうることがわかり、ミニバンドの形成の観点から価電子帯バンドオフセットは小さければ小さい程より好ましい。さらに好ましくは実験4のように価電子帯バンドオフセットがゼロの場合であり、その場合にはホールの移動が非常にスムーズに起こりうる。
また、実験5では、量子ドット層の価電子帯の上端が障壁層の価電子帯の上端よりも高いtypeI型の材料系を用いたが、障壁層および量子層に、障壁層の価電子帯の上端が量子ドット層の価電子帯の上端よりも高いtypeII型の材料系を用いてもよい。
以上、実施形態を挙げて、この発明を説明したが、この発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
例えば、超格子構造中における量子ドット間の波動関数の電子的結合により量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ、量子準位が1つに繋がった中間バンドが形成されることはキャリア移動の観点からより好ましいが、必ずしも中間バンドが形成される必要があるわけではない。また、非特許文献3に示されるように、各々の量子ドットから形成される量子エネルギー準位が共鳴せずに各々独立に存在していても良く、そのような構成であっても中間バンド太陽電池として機能する。このため、上記の実施形態(及び実験1〜7)の中間バンドは、量子層に各々独立に存在したエネルギー準位であってもよい。
また、上記の実施形態(及び実験1〜7)では、主に量子ドット層で形成される超格子構造を説明したが、例えば、量子井戸層で形成される超格子構造に形成される中間バンドなどに適用してもよく、この発明は、量子ドットを用いた中間バンド太陽電池に限定されない。
このように、この発明は請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についてもこの発明の技術的範囲に含まれる。
1:基板 3:バッファー層 4:p型半導体層 6:量子ドット層(量子層) 7:量子ドット 8:障壁層 9:量子井戸層(量子層) 10:超格子半導体層 11:量子層 12:n型半導体層 14:窓層 15:コンタクト層 17:n型電極 18:p型電極 20:太陽電池

Claims (11)

  1. p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、
    前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を3つ備え、
    前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、
    前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であり、
    前記量子層は量子ドットから構成される量子ドット層であり、
    前記超格子半導体層は、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造を有し、
    前記価電子帯バンドオフセットが、0.1eV以上0.28eV以下であり、
    前記量子層の価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成し、
    前記障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位Ecと最もEcに近い中間エネルギー準位Ei1とのエネルギー差をΔEci1とし、価電子帯の上端のエネルギー準位Evと3番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei3とのエネルギー差をΔEvi3とし、Ei1と2番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei2とのエネルギー差をΔEii12とし、Ei2とEi3とのエネルギー差をΔEii23とし、ΔEii12、ΔEii23のうち最も小さい数値をMIN(ΔEii12、ΔEii23)としたとき、
    ΔEci1≧0.05eV、またはΔEvi3≧0.05eVであり、
    |(ΔEci1−ΔEvi3)|≧0.625eVであり、
    MIN(ΔEii12、ΔEii23)≧0.15eVである太陽電池。
  2. 記実効的禁制帯幅は、1.1eV以上3.8eV以下である請求項に記載の太陽電池。
  3. p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、
    前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を4つ備え、
    前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、
    前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であり、
    前記量子層は量子ドットから構成される量子ドット層であり、
    前記超格子半導体層は、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造を有し、
    前記価電子帯バンドオフセットが、0.1eV以上0.28eV以下であり、
    前記量子層の価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成し、
    記障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位Ecと最もEcに近い中間エネルギー準位Ei1とのエネルギー差をΔEci1とし、価電子帯の上端のエネルギー準位Evと4番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei4とのエネルギー差をΔEvi4とし、Ei1と2番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei2とのエネルギー差をΔEii12とし、Ei2と3番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei3とのエネルギー差をΔEii23とし、Ei3とEi4とのエネルギー差をΔEii34とし、ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34のうち最も小さい数値をMIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)としたとき、
    ΔEci1≧0.05eVまたはΔEvi4≧0.05eVであり、
    |(ΔEci1−ΔEvi4)|≧0.65eVであり、
    MIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)≧0.10eVである太陽電池。
  4. 記実効的禁制帯幅は、1.3eV以上3.8eV以下である請求項に記載の太陽電池。
  5. 前記量子ドット層または前記障壁層は、Cu、Seを含み、かつ、In、Ga、Alのうち、少なくとも1つの元素を含むカルコパイライト型半導体からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。
  6. 前記量子層または前記障壁層は、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体またはカルコパイライト型半導体からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。
  7. 前記量子層または前記障壁層は、Al、GaおよびInのうち少なくとも1つの元素を含み、かつ、As、SbおよびPのうち少なくとも1つの元素を含むIII−V族化合物半導体からなる請求項に記載の太陽電池。
  8. 前記量子層は、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなり、
    前記障壁層は、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなる請求項またはに記載の太陽電池。
  9. 前記量子層は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有する請求項1〜のいずれか1つに記載の太陽電池。
  10. 前記中間エネルギー準位は、前記超格子構造を構成する前記量子層の量子準位の波動関数が電子的に結合した中間バンドからなる請求項1〜のいずれか1つに記載の太陽電池。
  11. 前記障壁層は、3nm以下の厚さを有する請求項1〜10のいずれか1つに記載の太陽電池。
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