JP5568039B2 - 太陽電池 - Google Patents
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Description
また、トンネル障壁を有し無機マトリックス内に埋め込まれた複数の量子ドットを備える中間バンド太陽電池やエネルギー囲み障壁に埋設された量子ドットを有する中間バンド太陽電池が知られている(特許文献1及び2参照)。
また、非特許文献2にはInGaAsで作製された中間バンド太陽電池の現象を説明するために複数の中間バンドを用いた中間バンド太陽電池のモデルが示されている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー変換効率がより高い太陽電池を提供する。
このような中間エネルギー準位を介した光励起により障壁層の伝導帯に電子を、障壁層の価電子帯にホールを発生させ光電変換することができ、光起電力を発生させることができる。この光電変換には、より長波長の入射光を利用することができるため、光電変換効率を高くすることができる。さらに、超格子半導体層は、このような中間エネルギー準位を2つ以上備える。このことにより、中間エネルギー準位を介した光励起に2つ以上の中間エネルギー準位を利用することができるため、より広い波長範囲の入射光を光電変換に利用することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
量子層とは、障壁層を構成する半導体材料よりも狭いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子効果により離散的なエネルギー準位(量子準位)を有する。
障壁層とは、量子層を構成する半導体材料よりも広いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子層の周りのポテンシャル障壁を形成する。
このような構成によれば、電子のエネルギーを量子ドットに閉じ込めることができ、量子ドットが量子準位を有することができる。この量子準位を利用して中間エネルギー準位を形成することができ、この中間エネルギー準位を介して障壁層の価電子帯の電子を障壁層の伝導帯に光励起することが可能となる。
本発明の太陽電池において、前記量子層または前記障壁層は、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体またはカルコパイライト型半導体からなることが好ましい。
このような構成によれば、超格子半導体層にミニバンドが形成されやすくなり、また、光電変換に適したエネルギー準位に中間エネルギー準位を形成しやすくなる。また、実効的禁制帯幅を適した範囲とすることができる。
このような構成によれば、超格子半導体層にミニバンドが形成されやすくなり、また、光電変換に適したエネルギー準位に中間エネルギー準位を形成しやすくなる。また、実効的禁制帯幅を適した範囲としやすくなる。
本発明の太陽電池において、前記量子層は、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなり、前記障壁層は、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなることが好ましい。
このような構成によれば、障壁層の価電子帯の上端と、量子層を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端との差である価電子帯バンドオフセットを小さくすることができ、実効的禁制帯幅を適した範囲としやすくなる。また、価電子帯バンドオフセットを0とすることも可能となる。
このような構成によれば、量子層の価電子帯側の量子準位によりミニバンドが形成されやすくなり、量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔がp型半導体層に移行しやすくなり光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記量子層は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有することが好ましい。
このような構成によれば、光励起により量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔が移動しやすくなり、p型半導体層に流れやすくなる。このため、この正孔を光電変換に利用することができ、光電変換率を高くすることができる。
このような構成によれば、量子層の価電子帯側の量子準位で発生した正孔がp型半導体層に移行しやすくなり光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、前記超格子構造を構成する前記量子層の量子準位の波動関数が電子的に結合した中間バンドからなることが好ましい。
このような構成によれば、障壁層の価電子帯または量子層の価電子帯から中間エネルギー準位に光励起された電子が中間バンドを移動することができ、この電子が障壁層の伝導帯に励起される確率を高くすることができる。このため、光電変換効率を高くすることができる。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記中間エネルギー準位は、3つであり、前記実効的禁制帯幅は、1.1eV以上3.8eV以下であることが好ましい。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
このような構成によれば、中間エネルギー準位が1つの太陽電池に比べ光電変換効率を高くすることができる。
本発明の太陽電池において、前記障壁層は、3nm以下の厚さを有することが好ましい。
このような構成によれば、量子層の伝導帯側の量子準位によりミニバンドが形成されやすくなり、中間エネルギー準位を中間バンドとすることができる。
図1、2はそれぞれ本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す概略断面図である。
本実施形態の太陽電池20は、p型半導体層4と、n型半導体層12と、p型半導体層4とn型半導体層12とに挟まれた超格子半導体層10とを備え、超格子半導体層10は、障壁層8と量子層11とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、障壁層8の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間に、量子層11または障壁層8の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を2つ以上備え、前記中間エネルギー準位は、量子層11の伝導帯側の量子準位から形成され、量子層11の価電子帯側の上端の量子準位と障壁層8の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であることを特徴とする。
また、本実施形態の太陽電池20は、基板1、バファー層3、窓層14、コンタクト層15、n型電極17またはp型電極18を備えてもよい。
以下、本実施形態の太陽電池について説明する。
p型半導体層4は、p型不純物を含む半導体からなり、超格子半導体層、n型半導体層12とともにpin接合またはpn接合(pn-n接合、pp-n接合、p+pn接合、pnn+接合を含む)を構成することができる。
n型半導体層12は、n型不純物を含む半導体からなり、超格子半導体層10、p型半導体層4とともにpin接合またはpn接合(pn-n接合、pp-n接合、p+pn接合、pnn+接合を含む)を構成することができる。
このpin接合またはpn接合が受光することにより、超格子半導体層において入射光により発生した電子およびホールを光起電力として取り出すことができる。また、このことにより、太陽電池20が電力を出力することができる。
p型半導体層4およびn型半導体層12は、例えばCVD法により形成することができる。
超格子半導体層10は、p型半導体層4とn型半導体層12に挟まれ、障壁層8と量子層11とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有する。量子層11は、障壁層8を構成する半導体材料よりも狭いバンドギャップを有する半導体材料からなり、量子効果により、伝導帯側および価電子帯側にそれぞれ複数の量子準位を有する。量子層11は、図1のように量子ドット層6であってもよく、図2のように量子井戸層9であってもよい。
このような光励起により障壁層8の伝導帯に電子を、障壁層8の価電子帯にホールを発生させることにより光電変換することができ、光起電力を発生させることができる。この光電変換には、より長波長の入射光を利用することができるため、光電変換効率を高くすることができる。
また、例えば、量子層11がInAsxSb1-xからなり、障壁層8がAlSbからなってもよい。この場合、元素割合xを適宜変更することで、格子定数をAlSbに合わせたり、価電子帯バンドエネルギーオフセット(量子ドット層と障壁層の価電子帯エネルギー差)をゼロにしたりすることができる点で好ましい。
また、量子層11がInAsからなり障壁層8がAlSbyAs1-yからなってもよい。
なお、超格子半導体層10に含まれる量子井戸層9の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。また、超格子半導体層10に含まれる障壁層8の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
また、この場合、この実質的に1つとみなすことができる量子井戸層9の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間のエネルギー幅を実効的禁制帯幅という。
また、この価電子帯オフセットは、0、0.04、0.08、0.1、0.12、0.15、0.2、0.24、0.28、0.3eVであってもよく、これらの数値のうち、いずれか2つの間の範囲であってもよい。
量子ドット層6は、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いたStranski―Krastanov(S―K)成長と呼ばれる方法や、電子リソグラフィ技術、液滴エピタキシー法などを用いることで形成することができる。S−K成長法は、薄膜形成の際に発現するS−K成長機構に基づくナノサイズの島状構造を利用する手法であり、薄膜形成の原材料構成比を変えることで量子ドットの混晶比を調整することができ、原材料・成長温度・圧力・堆積時間等を変えることによって量子ドットのサイズを調整することができる。なお、液滴エピタキシー法は、障壁層を構成する材料と量子ドット層を構成する材料の格子定数が近い場合に用いることもできる。
なお、異なる量子ドット層6に含まれる量子ドット7の厚さzは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。また、超格子半導体層10に含まれる障壁層8の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
また、この場合、この実質的に1つとみなすことができる量子ドット層6(量子ドット7)の価電子帯の上端と障壁層8の伝導帯の下端との間のエネルギー幅を実効的禁制帯幅という。
また、この価電子帯オフセットは、0、0.04、0.08、0.1、0.12、0.15、0.2、0.24、0.28、0.3eVであってもよく、これらの数値のうち、いずれか2つの間の範囲であってもよい。
なお、ミニバンドとは、超格子構造に含まれる量子層11の電子の波動関数が隣接する量子層11の電子の波動関数と相互作用し、量子層11の量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ、量子準位が1つに繋がって形成される中間バンドをいう。
また、ミニバンドが形成されると、ミニバンド間を電子が動けるようになるため光励起された電子が存在できる時間はより長くなる。
超格子半導体層10に形成される中間エネルギー準位は、2つ以上形成される。この中間エネルギー準位の数は、上述のPL測定や光吸収スペクトルにより確認することができる。
また、EcとEiとのエネルギー差をΔEciと表すことができ、2つのEi間の差をΔEiiと表すことができ、EvとEiとのエネルギー差をΔEviと表すことができる。また、中間エネルギー準位を特定するために、これらの表示の後に、中間エネルギー準位の番号を記載することができる。
なお、EcとEvとのエネルギー差は、Egで表すことができる。
例えば、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層10のバンド図は、図3のように表すことができる。
Ecの電子とEvのホールとが再結合し発光する発光再結合をRCVで表すことができ、Eiの電子とEvのホールとが再結合し発光する発光再結合をRVIで表すことができ、Ecの電子が発光を伴いEiに移動する発光再結合をRCIで表すことができる。また、Eiを特定するために、これらの表示の後に中間エネルギー準位の番号を下付きで記載することができる。
例えば、6準位中間バンド太陽電池の超格子半導体層10のバンド図は、図4のように表すことができる。
なお、この明細書で用いるバンド図(エネルギーバンドダイヤグラム)は、特に言及しない限り、慣例的に用いられている通りに記載している。すなわち、電子のエネルギーを基準にエネルギー準位を表している。ここで、電子はより低いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。さらに、正孔はより高いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。
このような禁制帯幅を持つ超格子半導体層10は、実験4で述べるように、例えば、InAs0.7Sb0.3を量子ドットとする場合、AlSbを障壁層8とすることにより形成できる。また、InAsを量子ドットとする場合、AlSb0.5As0.5を障壁層8とすることにより形成できる。このように、適切な物性値をもつ半導体材料を選択したり、超格子半導体層10を構成する半導体材料の混晶比を調整したりすることにより、所望の禁制帯幅を持つ超格子半導体層10が形成できる。また、超格子半導体層10を構成する量子ドット層6に含まれる量子ドット7のサイズや障壁層8の厚みを調整することによっても、所望の実効的禁制帯幅を有する超格子半導体層10が形成できる。
本実施形態の太陽電池の製造においては、例えば、膜厚制御に優れた分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属化学気相成長法(MOCVD)等を用い、超格子構造を有する太陽電池を製造することができる。ここでは、図1の超格子構造を有する太陽電池の一形態について、図1を参照して、その製造方法について説明する。
続いて、250nmの厚さでn型AlSbxAs1-x層(n型半導体層)12を結晶成長させてpin構造を形成し、次いで、窓層14としてAlAs層を形成する。
なお、ここで示した例は一例であり、本実施形態の超格子構造を有する太陽電池に用いる基板、バッファー層、量子ドット、ドーパント、電極などの各材料や、各プロセスで使用する洗浄剤、基板処理温度、製造装置等は、ここで示した例に限定されない。
〔実験1〕
詳細平衡モデルを用いてシミュレーション実験を行い、エネルギー変換効率を算出した。この算出方法を説明するため、バンド図を図3、4に示す。なお、このシミュレーション実験において、量子層は、量子ドット層とした。
図4は、本発明の一実施形態の太陽電池(6準位中間バンド太陽電池)に含まれ4つの中間エネルギー準位を有する超格子半導体層のバンド図であって、キャリア生成速度Gと発光再結合Rの関係を説明するための説明図である。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位(以下、これらの組み合わせをバンドラインナップという)を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図7)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図7を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7のとき約56.6%である。
このように、図7の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図7の結果は、表1を参照しても理解できる。)
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも6準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図8)。ここで、障壁層のバンドギャップが1.1≦Eg≦1.4eVであるとき、6準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.5eVであることがより好ましい。
図8を参照すると、6準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.5eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、6準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.4〜2.5eVのとき約67.7%である。
このように、図8の結果から、1000倍集光の場合でも最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を6準位中間バンド太陽電池が達成することがわかった。(なお、上記図8の結果は、表2を参照しても理解できる。)
ここで、MIN(A,B,C)とは、A,B,Cの数値のうち最も小さい数値を意味する。以下、この明細書では、MIN(A,B,・・・)は、括弧内の数値のうち最も小さい数値を意味するものとして使用する。
例えば、1000倍集光下における6準位中間バンド太陽電池においてEg=2.5eVの場合、67.7%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi4の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi4)=(1.325eV、0.575eV)(0.575eV、1.325eV)である。これらは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi4≧(Eg/2+0.05)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi4)=(0.575eV、1.325eV)である。
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の下端(最下部、底)のエネルギー準位と、障壁層の価電子帯の上端(最上部、頂点)と量子ドットの量子準位から形成される3つの中間バンドの準位の合計が5準位を有する太陽電池(5準位中間バンド太陽電池)について、実験1と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記5準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図9、10に示し、実験結果を図11、図12、表3及び表4に示す。
図11は、実験2のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフであり、図12は、実験2のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。
表3及び表4は、5準位中間バンド太陽電池と比較例の中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率とエネルギー準位を比較したものであり、実験2の結果の一部を示す表である。表3は、集光条件が「非集光」の場合であり、表4は、集光条件が「1000倍集光」の場合である。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図11)。ここで、障壁層のバンドギャップがEg=1.2eVであるとき、5準位の各準位と最近接の準位とのエネルギー準位間隔が室温エネルギー程度に狭くなり得るため、エネルギー準位間隔の制御の容易さを考えるとEg≧1.3eVであることがより好ましい。
図11を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.8eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6〜2.7eVのとき約55.4%である。
このように、図11の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図11の結果は、表3を参照しても理解できる。)
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.1eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも5準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図12)。
図12を参照すると、5準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.5〜3.4eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、5準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3〜2.4eVのとき約66.5%である。
このように、図12の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を5準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図12の結果は、表4を参照しても理解できる。)
例えば、1000倍集光下における5準位中間バンド太陽電池においてEg=2.4eVの場合、63.5%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi3の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi3)=(1.30eV、0.575eV)(0.575eV、1.30eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi3≧(Eg/2+0.075)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi3)=(0.575eV、1.30eV)である。
次に、超格子半導体層を構成する障壁層の伝導帯の下端(最下部、底)と価電子帯の上端(最上部、頂点)と量子ドットから形成される2つの中間バンドの準位の合計が4準位を有する太陽電池(4準位中間バンド太陽電池)について、実験1及び実験2と同様の算出方法でシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験では、上記4準位を有する太陽電池のいくつかの例を挙げて、そのエネルギー変換効率を算出した。この太陽電池の超格子半導体層のバンド図を図13、図14に示し、実験結果を図15、図16、表5及び表6に示す。
図15は、実験3のシミュレーションにより得られた、非集光の場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフであり、図16は、実験3のシミュレーションにより得られた、集光した場合におけるバンドギャップEgと最大エネルギー変換効率との関係を示すグラフである。
なお、表5および表6にはΔEci1(ΔEvi2)の列とΔEvi2(ΔEci1)の列があるが、これらは一方がΔEci1の値であれば他方がΔEvi2の値であることを示し、一方がΔEvi2の値であれば他方がΔEci1の値であることを示している。
一方、障壁層のバンドギャップがEg≧1.2eVであるとき、比較例の中間バンド太陽電池よりも4準位中間バンド太陽電池のほうが、バンドギャップ・中間バンドエネルギー準位を最適化することによって、エネルギー変換効率が高くなる可能性がある(図15)。
図15を参照すると、4準位中間バンド太陽電池は、障壁層のバンドギャップがEg=1.8〜3.5eVの領域にあるとき、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約46.7%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.6eVのとき約53.0%である。
このように、図15の結果から、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図15の結果は、表5を参照しても理解できる。)
図16を参照すると、障壁層のバンドギャップがEg=1.6〜3.2eVの領域にあるとき、4準位中間バンド太陽電池は、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を達成することがわかる。例えば、比較例の中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は約57.3%であったのに対し、4準位中間バンド太陽電池の最大エネルギー変換効率は、障壁層のバンドギャップがEg=2.3eVのとき約63.8%である。
このように、図16の結果から、1000倍集光の場合でも、最適バンドラインナップを選択することにより、比較例の中間バンド太陽電池では得ることができないようなエネルギー変換効率を4準位中間バンド太陽電池が達成することがわかる。(なお、上記図16の結果は、表6を参照しても理解できる。)
例えば、1000倍集光下における4準位中間バンド太陽電池においてEg=2.3eVの場合、63.8%のエネルギー変換効率となるバンドラインナップ、すなわちΔEci1とΔEvi2の組み合わせは、(ΔEci1、ΔEvi2)=(1.30eV、0.65eV)(0.65eV、1.30eV)、(1.00eV、0.65eV)、(0.65ev、1.00eV)である。これは上記バンドラインナップを満たし、上記の条件ΔEvi2≧(Eg/2+0.125)eVより好ましい組み合わせは(ΔEci1、ΔEvi2)=(0.65eV、1.30eV)である。
次に、実験1〜3で明らかとなったエネルギー準位(4〜6準位中間バンド太陽電池。多準位中間バンド太陽電池ともいう)を有する太陽電池の超格子半導体層について、特定の構造に着目してさらにシミュレーション実験を行った。
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
AlSbからなる障壁層と、InAs1-xSbxからなる量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造を有する超格子半導体層では、障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位と、量子ドットを構成する材料(バルク)の価電子帯の上端のエネルギー準位との差がゼロとすることが可能であり、価電子帯オフセットをゼロにすることが可能である(ここでいう価電子帯バンドオフセットとは、InAsxSb1-xとAlSbの価電子帯の上端のエネルギー準位の差がゼロである関係をいう)。InAs1-xSbxはΓ点の伝導体の下端とΓ点の価電子帯の上端とのエネルギー差が最も小さく(直接バンドギャップ)、AlSbはX点の伝導帯の下端とΓ点の価電子帯の上端のエネルギー差が最も小さい(間接バンドギャップ)。しかし、太陽電池においてはΓ点における吸収が最も重要かつ支配的であり、以下ではInAs1-xSbx、AlSb共にΓ点でのバンド構造を考える。ここでは、Vegard則からx=0.3として以下の計算を行った。AlSbのΓ点でのバンドギャップは2.3eVであり、InAs0.7Sb0.3のΓ点でのバンドギャップは0.3eVである。また、伝導帯バンドオフセットは2.0eVであり、価電子帯バンドオフセットは0.0eVとなる。
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり、厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、9nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を示す図である図17は、横軸が超格子半導体層の厚さ方向(図1のz方向)の距離であり、縦軸がエネルギー準位である。また、図17に示した点線は、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の伝導帯の下端Ecのエネルギー準位を示している。また、この実験では、バンドオフセットがゼロであるため、障壁層と量子ドット層の価電子帯の上端のエネルギー準位Evは、同じである。また、量子ドット層の量子準位から形成され、シミュレーションにより計算される中間バンドのエネルギー準位Ei1、Ei2を示している。
図20、23も同様の方法により記載した図である。
図18、図19は、これらのエネルギー準位を用いて、この4準位中間バンド太陽電池に非集光(図18)または1000倍集光(図19)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.9%、1000倍集光で63.4%となった。
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の5準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、13nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図20に示している。図20に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.25、1.44、1.80、2.3)eVとなった。
図21、図22は、これらのエネルギー準位を用いて、この5準位中間バンド太陽電池に非集光(図18)または1000倍集光(図19)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、5準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.1%、1000倍集光で63.6%となった。
価電子帯バンドオフセットがゼロである構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSbからなり厚さが2nmの障壁層と、InAs0.7Sb0.3からなり(2.7nm、2.7nm、17nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図23に示している。図23に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は価電子帯上端を0として、(Ev、Ei4、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.23、1.35、1.57、1.90、2.3)eVとなった。
図24、図25は、これらのエネルギー準位を用いて、この6準位中間バンド太陽電池に非集光(図24)または1000倍集光(図25)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、6準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合53.2%、1000倍集光で65.0%となった。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
半導体の価電子帯にはヘビーホールとライトホールが存在する。このヘビーホールは有効質量が比較的大きいため、価電子帯バンドオフセットが比較的小さければ、量子ドット(量子ドット層)の価電子帯には多数の量子エネルギー準位が形成され、これらの複数の準位をまとめて1つの価電子帯とみなすことが可能である。量子ドットの1つにみなされた価電子帯の上端から障壁層の伝導帯の下端までを実効的なバンドギャップと考えることが可能となり、多準位中間バンド太陽電池を実現することができる。このような組み合わせとして、AlSb1-xAsxからなる障壁層とInAsからなる量子ドット層との組み合わせがある。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(2.5nm、2.5nm、8.5nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を示す図である図26は、横軸が超格子半導体層の厚さ方向(図1のz方向)の距離であり、縦軸がエネルギー準位である。また、図26に示した2つの点線のうち1つは、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の伝導帯の下端Ecのエネルギー準位を示しており、もう1つは、障壁層と量子ドット層(バルク状態)の価電子帯の上端のエネルギー準位を示している。また、量子ドット層の量子準位から形成され、シミュレーションにより計算される中間バンドのエネルギー準位Ei1、Ei2と、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成されるミニバンドを示している。後述の実験6より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していることが示されている。
図29、32も同様の方法により記載した図である。
また、図26に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.54、1.90、2.52)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図27、図28は、これらのエネルギー準位を用いて、この4準位中間バンド太陽電池に非集光(図27)または1000倍集光(図28)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、4準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合47.7%、1000倍集光で56.8%となった。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の5準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(2.7nm、2.7nm、12nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図29に示している。図29に示すように、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成される複数のミニバンドは、狭いエネルギー範囲に形成される。このため、これらの複数のミニバンドは、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。後述の実験6、7より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していると考えらえる。
また、図29に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.41、1.61、1.98、2.50)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図30、図31は、これらのエネルギー準位を用いて、この5準位中間バンド太陽電池に非集光(図30)または1000倍集光(図31)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、5準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合51.3%、1000倍集光で61.4%となった。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなり厚さが2nmの障壁層と、InAsからなり(3.0nm、3.0nm、15nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。
この計算結果を図32に示している。図32に示すように、量子ドット層の価電子帯側の量子準位から形成される複数のミニバンドは、狭いエネルギー範囲に形成される。このため、これらの複数のミニバンドは、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。後述の実験7より、価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成していることが示されている。
また、図32に示すように、このような量子ドットサイズである場合、3方向からの閉じ込めにより各エネルギー準位は実質的に1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位Evを0として、(Ev、Ei4、Ei3、Ei2、Ei1、Ec)=(0、1.28、1.42、1.67、2.03、2.49)eVとなった。ここで、Evは1つとみなされた価電子帯の上端のエネルギー準位のことであり、Ecは障壁層の伝導体の下端のエネルギー準位である。従って(Ec−Ev)は障壁層のバンドギャップではなく、実効的禁制帯幅である。
図33、図34は、これらのエネルギー準位を用いて、この6準位中間バンド太陽電池に非集光(図33)または1000倍集光(図34)の光が照射されたときの電圧と電流の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
また、これらのエネルギー準位を用いて計算した、6準位中間バンド太陽電池のエネルギー変換効率は、非集光の場合52.8%、1000倍集光で63.4%となった。
実験4、5においては、AlSbからなる障壁層とInAs0.7Sb0.3からなる量子ドット層とが積層された超格子構造、AlSb0.5As0.5からなる障壁層とInAsからなる量子ドット層とが積層された超格子構造を例示したが、本願の太陽電池に含まれる障壁層および量子層は、これらに限定されない。例えば、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなる障壁層と、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなる量子層とを積層し混晶比x、yを任意の割合とした超格子構造であってもよい。
障壁層の材料とp型・n型半導体層は作製の観点から同じ材料であることが好ましいが、異なる材料であっても構わない。
価電子帯には有効質量の大きいヘビーホールが存在するため、量子層の価電子帯側の多数の量子エネルギー準位は、より密(量子エネルギー準位間隔が小さい)に形成されやすく、実質的に1つの価電子帯とみなすことができる。このことにより、この実質的に1つとみなされた価電子帯は、ホールが容易に移動しやすくなり、p型半導体層へのホール取り出しが容易に起こりやすくなる。例えば、図26、29、32の価電子帯領域には一部のエネルギー準位を示しているが、十分に密になっていることがわかる。従って、価電子帯バンドオフセットがゼロでない場合であっても、密になった量子エネルギー準位を、実質的に1つの価電子帯としてみなすことができる。
さらに価電子帯バンドオフセットが比較的小さい場合、隣接する量子ドット間の波動関数が電子的に結合しやすくなり、ミニバンドが形成され、ホール移動が起こりやすくなるため、より好ましい。
次に、クローニッヒペニーモデルを用いて、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の中間バンド太陽電池の超格子構造についてバンド構造計算をおこなうシミュレーション実験を行った。この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、この障壁層と量子ドット層の組み合わせでは、実験5に記載したように、価電子帯バンドオフセットは0.28eVとなり、伝導帯バンドオフセットは2.02eVとなる。
この量子ドット層の伝導帯側の量子準位についての計算結果を図35に示し、価電子帯側の量子準位についての計算結果を図36、37に示す。図35〜37の横軸は、量子ドット層に挟まれた障壁層の厚さであり、縦軸はエネルギー準位である。
また、図36、37において、縦軸は、0eVが量子ドット層を形成する材料(バルク)の価電子帯の上端のエネルギー準位であり、0.28eVが障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位である(つまり、図36、37に示したグラフの下辺と上辺との差が価電子帯バンドオフセットとなる)。また、図35には、量子ドット層の伝導帯側の量子準位を示しており、図36、37には、量子ドット層の価電子帯側の量子準位を示している。また、図35〜37の斜線で示した領域は、それぞれの障壁層厚みにおけるミニバンドが形成されている領域を示している。
なお、図36、37は、正孔のエネルギーを基準にエネルギー準位を表している。ここで、正孔はより低いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。さらに、電子はより高いエネルギーへ移動することが安定であり、そのような状態のエネルギー準位をとる。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の4準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。量子ドット層の伝導帯側の量子準位の計算結果を図35に示し、価電子帯側の量子準位の計算結果を図36に示している。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなり(2.5nm、2.5nm、8.5nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、z方向以外の2方向からのエネルギー準位の寄与が障壁層に大きく依存しないと考え、図35、36の量子エネルギー準位は、z方向以外の2方向からのエネルギー準位が近似的に加算されている。図36の量子エネルギー準位は、ライトホールの一部のエネルギー準位を示しているに過ぎない。
量子ドット層の伝導帯側の量子準位の計算結果である図35をみると、障壁層厚みは2nmである場合、斜線で示した領域が有限の幅を有しており、ミニバンドが形成できていることがわかる。また、障壁層が3nm程度までミニバンドが形成できていることがわかる。
この結果から、伝導帯バンドオフセットが2.02eVと大きくても障壁層厚みは3nm程度までであればミニバンドが形成される。従って、障壁層厚みが3nm以下であることがより好ましい。
実験5−1および6では、一例としてz方向の量子ドットサイズを8.5nmとしたが、2.5nmとしても良く、その場合でもミニバンドは形成される。
また、量子ドットサイズを2.5nmとした方が、量子ドットの価電子帯側の量子準位が障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位に近づき、また、量子ドットの伝導帯側の量子準位が障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位に近づき、量子閉じ込めが弱くなる。このため、同じ障壁層の厚みで比較した場合、ミニバンド幅はより大きくなる。また、ミニバンドが形成可能な障壁層の厚みは大きくなる。
価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造の6準位中間バンド太陽電池についてバンド構造計算を行った。量子ドット層の価電子帯側の量子準位の計算結果を図37に示している。
この実験では、AlSb0.5As0.5からなる障壁層と、InAsからなり(3.0nm、3.0nm、15nm)のサイズの量子ドットからなる量子ドット層とが繰り返し積層された超格子構造について計算した。なお、z方向以外の2方向からのエネルギー準位の寄与が障壁層に大きく依存しないと考え、図37の量子エネルギー準位は、z方向以外の2方向からのエネルギー準位が近似的に加算されている。図37の量子エネルギー準位は、ライトホールの一部のエネルギー準位を示しているに過ぎない。
この実験の結果である図37をみると、障壁層厚みは2nmである場合、斜線で示した領域が有限の幅を有しており、ミニバンドが形成できていることがわかる。また、障壁層が6〜7nm程度までミニバンドが形成できていることがわかる。
また、実験5−3および7では一例としてz方向の量子ドットサイズを15nmとしたが、3nmとしても良く、その場合でもミニバンドは形成される。また、3nmとした方が、量子ドットの価電子帯側の量子準位が障壁層の価電子帯の上端のエネルギー準位に近づき、また、量子ドットの伝導帯側の量子準位が障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位に近づき、量子閉じ込めが弱くなる。このため、同じ障壁層の厚みで比較した場合、ミニバンド幅はより大きくなる。また、ミニバンドが形成可能な障壁層の厚みは大きくなる。
また、実験5では、量子ドット層の価電子帯の上端が障壁層の価電子帯の上端よりも高いtypeI型の材料系を用いたが、障壁層および量子層に、障壁層の価電子帯の上端が量子ドット層の価電子帯の上端よりも高いtypeII型の材料系を用いてもよい。
例えば、超格子構造中における量子ドット間の波動関数の電子的結合により量子準位間の共鳴トンネル効果が生じ、量子準位が1つに繋がった中間バンドが形成されることはキャリア移動の観点からより好ましいが、必ずしも中間バンドが形成される必要があるわけではない。また、非特許文献3に示されるように、各々の量子ドットから形成される量子エネルギー準位が共鳴せずに各々独立に存在していても良く、そのような構成であっても中間バンド太陽電池として機能する。このため、上記の実施形態(及び実験1〜7)の中間バンドは、量子層に各々独立に存在したエネルギー準位であってもよい。
Claims (11)
- p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、
前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を3つ備え、
前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、
前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であり、
前記量子層は量子ドットから構成される量子ドット層であり、
前記超格子半導体層は、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造を有し、
前記価電子帯バンドオフセットが、0.1eV以上0.28eV以下であり、
前記量子層の価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成し、
前記障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位Ecと最もEcに近い中間エネルギー準位Ei1とのエネルギー差をΔEci1とし、価電子帯の上端のエネルギー準位Evと3番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei3とのエネルギー差をΔEvi3とし、Ei1と2番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei2とのエネルギー差をΔEii12とし、Ei2とEi3とのエネルギー差をΔEii23とし、ΔEii12、ΔEii23のうち最も小さい数値をMIN(ΔEii12、ΔEii23)としたとき、
ΔEci1≧0.05eV、またはΔEvi3≧0.05eVであり、
|(ΔEci1−ΔEvi3)|≧0.625eVであり、
MIN(ΔEii12、ΔEii23)≧0.15eVである太陽電池。 - 前記実効的禁制帯幅は、1.1eV以上3.8eV以下である請求項1に記載の太陽電池。
- p型半導体層と、n型半導体層と、前記p型半導体層と前記n型半導体層とに挟まれた超格子半導体層とを備え、
前記超格子半導体層は、障壁層と量子層とが交互に繰り返し積層された超格子構造を有し、かつ、前記障壁層の価電子帯の上端と前記障壁層の伝導帯の下端との間に、前記量子層または前記障壁層の価電子帯から光励起された電子が一定時間存在し得る中間エネルギー準位を4つ備え、
前記中間エネルギー準位は、前記量子層の伝導帯側の量子準位から形成され、
前記量子層の価電子帯側の上端の量子準位と前記障壁層の伝導帯の下端との間の実効的禁制帯幅が1.0eV以上3.8eV以下であり、
前記量子層は量子ドットから構成される量子ドット層であり、
前記超格子半導体層は、価電子帯バンドオフセットがゼロでない構造を有し、
前記価電子帯バンドオフセットが、0.1eV以上0.28eV以下であり、
前記量子層の価電子帯側の量子準位がミニバンドを形成し、
前記障壁層の伝導帯の下端のエネルギー準位Ecと最もEcに近い中間エネルギー準位Ei1とのエネルギー差をΔEci1とし、価電子帯の上端のエネルギー準位Evと4番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei4とのエネルギー差をΔEvi4とし、Ei1と2番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei2とのエネルギー差をΔEii12とし、Ei2と3番目にEcに近い中間エネルギー準位Ei3とのエネルギー差をΔEii23とし、Ei3とEi4とのエネルギー差をΔEii34とし、ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34のうち最も小さい数値をMIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)としたとき、
ΔEci1≧0.05eVまたはΔEvi4≧0.05eVであり、
|(ΔEci1−ΔEvi4)|≧0.65eVであり、
MIN(ΔEii12、ΔEii23、ΔEii34)≧0.10eVである太陽電池。 - 前記実効的禁制帯幅は、1.3eV以上3.8eV以下である請求項3に記載の太陽電池。
- 前記量子ドット層または前記障壁層は、Cu、Seを含み、かつ、In、Ga、Alのうち、少なくとも1つの元素を含むカルコパイライト型半導体からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記量子層または前記障壁層は、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体またはカルコパイライト型半導体からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記量子層または前記障壁層は、Al、GaおよびInのうち少なくとも1つの元素を含み、かつ、As、SbおよびPのうち少なくとも1つの元素を含むIII−V族化合物半導体からなる請求項6に記載の太陽電池。
- 前記量子層は、InSbxAs1-x(0≦x≦1)からなり、
前記障壁層は、AlSbyAs1-y(0≦y≦1)からなる請求項6または7に記載の太陽電池。 - 前記量子層は、価電子帯側の複数の量子準位からなり実質的に1つとみなすことができる価電子帯を有する請求項1〜8のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記中間エネルギー準位は、前記超格子構造を構成する前記量子層の量子準位の波動関数が電子的に結合した中間バンドからなる請求項1〜9のいずれか1つに記載の太陽電池。
- 前記障壁層は、3nm以下の厚さを有する請求項1〜10のいずれか1つに記載の太陽電池。
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