以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明に係る半導体装置用部品の製造方法及び半導体装置の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
まず、図1に示すように、フィルム状感光性接着剤層2を光透過性基板1の表面1a上に形成する(接着剤層形成工程)。具体的には、まず、所定の有機溶媒等を用いて感光性接着剤組成物を含む分散液(溶液、ワニス等)を調製する。次いで、この分散液を、基材3の上に塗布して層状とした後、加熱して乾燥させることにより、分散液中の有機溶媒を除去して、感光性接着剤フィルムを形成する。この加熱・乾燥は、有機溶媒が十分に揮発する条件で行うことが好ましい。例えば、60℃〜200℃の温度で、0.1分〜90分間処理することが好ましい。
この感光性接着剤フィルムをロールラミネータや真空ラミネータを用いて、光透過性基板1の表面1a上に貼り付けることにより、フィルム状感光性接着剤層2が形成される。その後、感光性接着剤層2上に、必要に応じて保護用のカバーフィルムを積層することによって、感光性接着剤層2付き基材3を得ることができる。このような感光性接着剤層2付き基材3は、適宜カバーフィルムを取り除いた後、所定の被着体に貼り付ける際の接着剤として適用することができる。
光透過性基板1は例えばシート状であり、具体的に例えばフロートガラス、ホウケイ酸ガラス、テンパックス(登録商標)などである。
感光性接着剤層2は、組成物として例えば(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含むことが好ましい。感光性接着剤層2の厚さは、例えば5μm〜100μmである。
基材3としては、後述する加熱・乾燥時に耐え得るものが好ましく、例えば、離型処理されたPETフィルムなどである。なお、カバーフィルムとしては、上述した基材3と同様のもののほか、ポリエチレン等が好適である。
次いで、図2〜図4に示すように、感光性接着剤層2を露光及び現像することにより、接着剤パターン2Aを形成する(パターニング工程)。図2に示す例では、紫外線などの光Lを基材3側から入射させて、感光性接着剤層2を露光する。
露光の際には、複数の開口4a及び遮光部4bが形成されているフォトマスク4を介して、感光性接着剤層2を露光する。本実施形態では、フォトマスク4として、遮光部4bが格子状に配置されており、矩形状の開口4aが複数形成されているマスクを用いる。1つの開口4aの大きさは、例えば縦10mm〜横10mmである。複数の開口4aは例えば10行×10列に配置されている。このような矩形状の開口4aの形状に基づくパターンで感光性接着剤層2が露光されることとなる。感光性接着剤層2がネガ型である場合、感光性接着剤層2の露光された部分では感光性接着剤層2の組成物の光硬化が進行し、現像液に対して可溶しにくくなる。
露光後に、基材3を剥離する。その後、感光性接着剤層2を現像することで、露光時の未露光部分を除去する。現像液として、例えばアルカリ性現像液、有機溶剤などが挙げられる。アルカリ性現像液として、例えばテトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38%などの水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が挙げられる。また、有機溶剤として、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、Nメチルピロリドン(NMP)などが挙げられる。
感光性接着剤層2に現像液を接触させる方法としては、現像液に浸漬させる方法や、現像液をスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、現像液をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。現像液を接触させた後、水で洗浄することが好ましい。水洗浄として、水に浸漬する方法やスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、水をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。
以上のような露光及び現像によるパターニング工程により、図3及び図4に示すような中空部Hを複数有する格子状の接着剤パターン2Aが形成される。
続いて、図3及び図4に示すように、光透過性基板1を所定の切断ラインSに沿って切断することにより、中空部Hを有する接着部2Bが形成された光透過性チップ1Bを複数形成する(チップ工程)。図3に示す例では、切断ラインSは格子状に配置されており、図4に示すように光透過性基板1及び感光性接着剤層2の両方を一括切断する。切断の際には、接着剤パターン2Aをダイシングテープなどの粘着テープに貼りつけ、接着剤パターン2A及び光透過性基板1を一括切断することが好ましい。
このチップ工程により、図5(a)及び図5(b)に示すような半導体装置用部品10が製造される。この半導体装置用部品10には、光透過性チップ1B上に中空部Hを有する接着部2Bが形成されている。本実施形態では、中空部Hは断面矩形状をなしている。また、切断する際の加工性に有利な観点から、光透過性チップ1Bは矩形状として切断されることが好適である。さらに、接着部2Bは、矩形状の光透過性チップ1Bの周縁部に沿って形成されることが好適である。この場合、光透過性チップ1Bの領域を有効に使用することができ、光透過性チップ1Bと圧着される半導体チップなどの被着体上に形成された半導体素子領域が、接着部2Bに接触することを極力抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る半導体装置用部品10の製造方法では、接着剤として、ペースト状の接着剤ではなくフィルム状の感光性接着剤層2を用いる。そして、光透過性基板1上に形成したフィルム状感光性接着剤層2をパターニングすることにより、中空部Hを複数有する接着剤パターン2Aを形成できる。この接着剤パターン2Aを切断することにより、中空部Hを有する接着部2Bが形成された光透過性チップ1Bを備えた微小な半導体装置用部品10を複数製造できる。接着部2Bはフィルム状感光性接着剤層2から形成されるので、接着部2Bの表面を容易に均一にすることができ、接着部2B表面の盛り上がりを抑制できる。すなわち、フィルム状感光性接着剤層2を露光現像によりパターニングして接着部2Bを形成するので、接着剤の糸引きやはみ出しのおそれは低い。よって、半導体装置用部品10と、センサ領域などの半導体素子領域Cを含む被着体とを圧着する際に、接着剤に起因する半導体素子領域Cの汚染を抑制できる。
また、上記方法により製造された半導体装置用部品10を用いた半導体装置20の製造方法では、チップ工程後に圧着工程を行うことが好ましい。図6に示すように、圧着工程では、光透過性チップ1Bの中空部Hに半導体素子領域Cを収容し、半導体素子領域Cを有する半導体チップ5上に接着部2Bを圧着する。この際、接着部2Bを有する光透過性チップ1Bの表面1bが、半導体チップ5の半導体素子領域C面側を向くように、貼り合わせて接着する。圧着工程では、例えば100℃〜300℃程度の加熱温度で、光透過性チップ1Bと半導体チップ5とを接着部2Bを介して0.1秒〜300秒間程度、圧力0.2MPa〜10.0MPa程度で、圧着する。
ここで、被着体である半導体チップ5は例えば矩形状をなしている。半導体素子領域Cは、半導体チップ5の例えば中央部に配置されている。このように、半導体素子領域Cを中空部Hに収容するとともに、光透過性チップ1Bに設けられた接着部2Bを半導体チップ5に接着するので、半導体チップ5上の半導体素子領域Cに接着部2Bが接触することが抑制される。このようにして半導体素子領域Cの汚染を好適に抑制できる。以上のように、チップ化された光透過性チップ1Bに枠状の接着部2Bが形成された半導体装置用部品10を用いて、保護されるべき領域である半導体素子領域Cを好適に封止できる。しかも、加熱圧着によって光透過性チップ1Bと半導体チップ5とを高い強度で接着することができる。その結果、信頼性や耐久性に優れる半導体装置20を得ることが可能となる。
以上、好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば切断ラインSは、接着部2Bの幅が接着剤パターン2Aにおける隣接する中空部H,H間の距離を二等分する長さとなるように、接着剤パターン2Aを切断することが好ましい。この切断方法により、接着剤の無駄を無くして有効利用できる。
また、パターニング工程において、上述の接着剤パターン2Aとして、図7に示すように、切断ラインSに対応する位置に溝部Mを有するパターンを形成することが好適である。すなわち、パターニング工程において、中空部Hのパターニングと同時に、切断ラインSに対応する位置に溝部Mを一括してパターニングすることが好適である。ここで、溝部Mは格子状に形成され、溝部Mは光透過性基板1まで接着剤パターン2Aを貫通している。よってこの場合、チップ工程では、光透過性基板1のみを切断することとなる。このように、溝部Mを形成する場合、チップ工程における切断の際に、接着剤のバリなどの発生を抑制できる。また、切断に用いられるブレードの破損なども抑制できる。
また、上記実施形態では、半導体装置用部品10の中空部Hが断面矩形状である例を示したが、図5(c)に示すように、半導体装置用部品10aの中空部hは断面円形状でも良い。この場合においても例えばセンサの画素領域などの半導体素子領域を中空部h内に好適に配置できる。
また、基材3上ではなく光透過性基板1上に、感光性接着剤組成物のワニスを塗布した後に、ワニスを乾燥させることによって、感光性接着剤層2を光透過性基板1上に形成しても良い。ワニスを光透過性基板1に塗布する方法としては、スピンコート、印刷法、スプレーコート法などが挙げられる。薄膜化の観点ではスピンコートが好ましく、歩留の観点では印刷法が好ましい。
また、露光の際に、光Lを基材3側からではなく光透過性基板1側から入射させて、感光性接着剤層2を露光してもよい。また、フォトマスク4を用いて感光性接着剤層2を露光する例を示したが、フォトマスク4を用いずに、感光性接着剤層2に直接描画露光してもよい。なお、上記実施形態では感光性接着剤層2がネガ型である例を示したが、ポジ型でも良い。
また、上述の感光性接着剤層2は、IC、LSI、CMOSセンサといった半導体素子と、保護ガラスや有機基板等との接着に好適に用いることができる。上述のように、感光性接着剤層2は、組成物として(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含むことが好ましい。これにより、露光及び現像によるパターニング工程後に形成される接着部に接着性を容易に付与できる。なお、感光性接着剤層2は、上述の組成物を含むほぼ均一な層であり、組成物の製造時に用いる有機溶媒等を一部に含んでいてもよい。
上記(A)アルカリ可溶性ポリマーは、有機溶剤などを使用しない簡便な工程で感光性材料を取り扱う上で汎用性があるので好適である。(A)アルカリ可溶性ポリマーは、環境面を考慮すると、TMAHなどのアルカリ現像液への溶解性の観点から、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有することが好ましい。さらに、光透過性基板1としてガラス基板を用いる場合、アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。これにより、フィルム状の感光性接着剤をガラス基板に比較的低い温度で貼り付けることが可能となる。アルカリ可溶性ポリマーは特には制限されないが、フィルム形成性、パターン形成性、耐熱性及び接着性の観点から、ポリイミドであることが好ましい。このポリイミドとして、例えばテトラカルボン酸二無水物と、下記化学式(1)又は(2)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られるものであることが好ましい。
また、カルボキシル基を含むジアミンとしては、特に制限されないが、例えば、上記式(1)又は(2)で表される化合物が好適である。
また、カルボキシル基を含まないジアミンとしては、例えば、下記式(3)で表される化合物が好適である。
上記式(3)中、Q1、Q2及びQ3は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキレン基を示し、nは2〜30の整数である。上記式(3)で表されるジアミンの好適な重量平均分子量(Mw)は、400〜4000である。ただし、全ジアミン中の式(3)のジアミンの含有量は、分子量が大きい場合は少なく、分子量が小さい場合は多くなるように調整することがより好ましい。
すなわち、上記式(3)で表されるジアミンのMwが400〜4000である場合、上述したカルボキシル基を有するジアミンも含めた全ジアミン中、式(3)で表されるジアミンの含有量(モル%)Xは、10000/Mw〜100000/Mwとすると好ましく、15000/Mw〜90000/Mwとするとより好ましく、20000/Mw〜80000/Mwとすると更に好ましい。ただし、Xは100を超えない範囲とする。
上記式(3)で表されるジアミンの具体例としては、下記式(4a)〜(4f)で表される化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
また、ジアミンとしては、上記式(3)で表されるジアミンに加えて、その他のジアミンを更に用いることもできる。併用可能なジアミンとしては、下記式(5)で表されるジアミノシロキサン、上記式(3)とは異なる脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
式(5)中、Q4及びQ5は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又はフェニレン基を示し、Q6、Q7、Q8及びQ9は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜50の整数である。
上記式(5)で表されるジアミノシロキサンとしては次のものが例示できる。例えば、pが1のジアミノシロキサンとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられる。
また、pが2のジアミノシロキサンとしては、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
さらに、pが3〜50であるジアミノシロキサンとしては、下記式(6)、(7)又は(8)で表されるものが挙げられる。
また、上記式(3)で表されるジアミンと併用できる脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、ダイマージアミン等が挙げられる。
さらに芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、3,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、3,4´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフイド、3,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルケトン、3,4´−ジアミノジフェニルケトン、4,4´−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4´−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4´−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフエノキシ)フエニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によるポリイミド樹脂の製造においては、テトラカルボン酸二無水物100重量部に対し、ジアミンを1重量部〜100重量部用いることが好ましく、1重量部〜50重量部用いることがより好ましい。ジアミンとして上述したものを複数種類組み合わせる場合は、ジアミンの合計がこのような量を満たすようにすればよい。また、上記式(1)や(2)で表されるようなカルボキシル基を含むジアミンと、カルボキシル基を有しないジアミンとを併用する場合は、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基の量が上述した好適範囲となるように両ジアミンの割合を設定することが好ましい。
ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合反応によって得ることができる。この縮合反応は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル用いて行うことが好ましいが、等モルから10モル%以内の範囲であればこれらの量論比がずれていてもよい。なお、縮合を行う際の両成分の添加順序は任意である。
縮合反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール等が挙げられる。
また、縮合反応を行う際の反応温度は、150℃以下とすることが好ましく、0〜120℃とすることがより好ましい。なお、反応時のジアミンの溶解性が不十分である場合は、50℃以上に加温することで反応液を均一にできるという効果が得られる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合反応においては、まず、酸無水物基とアミノ基とが反応してアミド基及びカルボキシル基が生じ、その結果、ポリイミドの前駆体である反応物(ポリアミド酸)が生じる。ポリイミド樹脂は、このようにして生じたポリアミド酸におけるアミド基とカルボキシル基との脱水閉環反応を生じさせることが得ることができる。
脱水閉環反応は、例えば、120℃〜250℃で熱処理する方法や、化学的な方法によって行うことができる。熱処理の場合、脱水閉環反応によって生じる水を系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。その場合、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
また、化学的な方法による脱水閉環反応は、例えば、閉環剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物や、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物を用いて生じさせることができる。この際、必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の閉環触媒を併用してもよい。これらの閉環剤又は閉環触媒は、原料として用いたテトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1モル〜8モルの範囲となる量を用いることが好ましい。
なお、上述した縮合反応と脱水閉環反応とは、必ずしも別々に生じるものではなく、縮合とともに脱水閉環が生じて、ポリアミド酸に部分的にイミド化が生じたものが生成する場合もある。そのため、本発明においては、ポリイミド樹脂とは、必ずしも酸無水物基に由来するアミド基及びカルボキシル基が全てイミド基に変換されたものに限られず、その前駆体であるポリアミド酸やその一部がイミド化したものも含むこととする。したがって、縮合反応と脱水閉環反応とは、必ずしも別々の工程において行う必要はなく、同じ工程で行ってもよい。
次に、(B)成分である放射線重合性化合物について説明する。放射線重合性化合物としては、所定の活性光線の照射によって硬化することができ、硬化後、所定の溶媒によって除去できる(現像できる)特性を有するものであれば特に制限無く適用することができる。光硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート材が好適である。ここで、(メタ)アクリレート材とは、アクリレート材とメタクリレート材とを総称したものであり、これらの一方又は両方を含むことを意味する。
(メタ)アクリレート材としては、例えば、フェノキシグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイキシプロピルメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記のモノマー以外にも、これらのモノマーが複数重合した(メタ)アクリレートオリゴマーを適用することもできる。
次に、(C)成分である光重合開始剤について説明する。光重合開始剤は、上記の光硬化性樹脂の硬化を生じさせることができる成分であり、用いる光硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、感光性接着剤層2の組成物には、その他、このほか公知の光重合促進剤や増感剤等を組み合わせてもよい。光重合開始剤の配合比は、光硬化性樹脂の重量に対して、0.1重量%〜5.0重量%であることが好ましい。
また、感光性接着剤層2は、熱時接着強度の観点から、(D)多官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。
感光性接着剤層2の組成物に含有させる多官能エポキシ化合物としては、(D1)室温で液状の多官能エポキシ化合物と、(D2)室温で固体状であって、単量体又は二量体構造を有する多官能エポキシ化合物との組み合わせか、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
まず、前者の組み合わせを有する多官能エポキシ化合物の場合、(D1)室温で液状の多官能エポキシ化合物とは、分子内に2つ以上のエポキシ基を有しており、室温(0〜35℃)において液状の状態であるエポキシ化合物である。このような多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、YDF−8170C(東都化成製)等が挙げられる。
また、(D2)室温で固体状であって、単量体又は二量体構造を有する多官能エポキシ化合物とは、一定の構造を有する構造単位を分子内に一つ又は二つ有するとともに、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物である。なお、この「一定の構造単位」を2つ有する場合、それらは、骨格部において同一の構造を有していればよく、この骨格部に結合している官能基等は異なっていてもよい。
かかる(D2)多官能エポキシ化合物において、エポキシ基は、上記の一定の構造単位のそれぞれが一つ又は二つ以上有していることが好ましい。このような多官能エポキシ化合物としては、トリスフェノール型エポキシ化合物が好ましく、上記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。上記一般式(1)で表される化合物としては、VG3101L((株)プリンテック製商品名)等が挙げられる。
一方、多官能エポキシ化合物として、上記一般式(1)で表される化合物を含む場合は、(D)多官能エポキシ化合物としては、上記のような(D1)成分との組み合わせではなく、この一般式(1)で表される化合物だけを含む場合であっても、高い接着強度及び優れたアルカリ現像性といった効果が十分に得られる。すなわち、(D)多官能エポキシ化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物のみを含んでいてもよい。
本実施形態の感光性接着剤層2の組成物は、上述した(A)〜(D)成分に加えて、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。感光性接着剤層2は熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。上述のように、感光性接着剤層2は、露光及び現像によってパターンニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤から形成することができる。より詳細にはフィルム状の感光性接着剤層2を露光及び現像によってパターンニングし、切断後に形成される接着部2Bが、ガラス基板などの光透過性基板1や半導体チップ5等の被着体に接着性を有している。例えば、接着部2Bに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、接着部2Bと被着体を接着することが可能である。
なお、感光性接着剤層2の組成物には、上述した多官能エポキシ化合物に加えて、これらの化合物を硬化させるエポキシ硬化剤を更に含んでいてもよい。このようなエポキシ硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂の硬化剤を適用することができる。例えば、分子内に少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物が好適である。
エポキシ硬化剤としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂、フェノール・キシリレン樹脂、フェノール・ビフェニレン樹脂、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール・ナフトール・ホルムアルデヒド樹脂、トリスフェノール類等が挙げられる。これらの含有量は、多官能エポキシ化合物100重量部に対して、1重量部〜600重量部であると好ましく、1重量部〜500重量部であるとより好ましく、1重量部〜400重量部であるとさらに好ましい。その含有量が600重量部を超えると、硬化性が不十分となってしまう傾向にある。また、エポキシ硬化剤としては、そのOH当量が50〜600であるものが好ましい。
また、感光性接着剤層2は、フィラーを更に含むことが好ましく、感光性接着剤層2の組成物の硬化物の耐熱性や強度を更に高めることができ、結果としてより強い接着強度を実現することができる。フィラーとしては無機フィラーが特に好ましい。無機フィラーを添加することで、感光性接着剤層2の組成物の材料強度を向上させ、また、低熱膨張性や低吸湿性といった特性を付与することが可能となる。
フィラーしては、その1次粒子の平均粒径が、100nm以下であるものが好ましく、入手簡便性の点からは、0.1nm〜100nmであるものがより好ましい。このようなフィラーによれば、高温接着力を更に向上させることができる。
フィラーとしては、具体的には、(株)トクヤマ製シリカ(製品名:REOLOSILQS−09、10、102、QP−102、QS−20、20L、30、30C、40、MT−10、10C、DM−10、10C、30、30S、KS−20SC、HM−20L、30S、PM−20、20L、1次粒子の平均粒径:約5nm〜50nm)、日本アエロジル(株)製シリカ(製品名:AEROSIL50、90G、130、200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380、R972、R972V、R972CF、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812、R812、SOX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、1次粒子の平均粒径:約7nm〜40nm、形状:球形)、日本アエロジル(株)製酸化アルミニウム(製品名:AEROXIDE Alu C、1次粒子の平均粒径:約13nm)、日本アエロジル(株)製酸化チタン(製品名:AEROXIDE TiO2 T805、P25、1次粒子の平均粒径:約21nm)等を挙げることができる。
フィラーの添加量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0〜100重量部であることが好ましく、0〜50重量部であるとより好ましい。フィラーの添加量が多過ぎると、感光性接着剤組成物を硬化する際の露光時に、光透過性が十分に得られなくなり、硬化が不十分となってしまうおそれがある。
本実施形態の感光性接着剤層2の組成物は、上述した各成分を混合することにより行うことができる。混合方法は、特に制限されず、適宜の攪拌手段等を用いて行うことができる。特に、上記のようにフィラーを更に含有させる場合は、各成分の混合・混錬は、公知の攪拌機、らいかい機、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、高圧ホモジナイザー等の分散機等を適宜組み合わせて行うことが好ましい。
より好ましくは、フィラーを含む感光性接着剤層2の組成物は、まず、(A)ポリイミド樹脂、(B)光硬化性樹脂、(C)光重合開始剤及び(D)多官能エポキシ化合物を、有機溶媒に溶解又は分散させて混合した後、これにフィラーを加え、更に必要に応じてその他の成分を加えた後、上記のような方法で混合・混練することによって得ることができる。このようにして得られた有機溶媒を含む感光性接着剤層2の組成物は、すぐに加熱等によって有機溶媒を除去するようにしてもよく、後述するような接着剤層等の形成にそのまま用いるようにしてもよい。
感光性接着剤層2の組成物の製造に用いる有機溶媒としては、(A)〜(D)の各成分の溶解・分散に加え、フィラーの混合・混錬を均一に行うことができ、また、混合後、加熱によって容易に除去できるものが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロルブ、エチルセロルブアセテート、ブチルセロルブ、ジオキサン等が挙げられる。
以上のような各成分を含み、上記方法によって得ることができる本実施形態の感光性接着剤層2の組成物は、半導体装置等の製造における接着剤として好適に用いることができる。感光性接着剤層2の組成物を接着剤として適用する場合は、上記実施形態のように、例えば基材3上に感光性接着剤層2が設けられた形態で用いることが好適である。
また、感光性接着剤層2の組成物の露光後の100℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa〜10MPaであることが好ましい。かかる貯蔵弾性率が0.01MPa未満であるとパターン形成後の熱圧着の際に加えられる熱及び圧力に対する耐性が低下して、パターンが潰れ易くなる傾向にあり、10MPaを超えると露光後の再接着性が低下して、パターン形成後に被着体に熱圧着する際、十分な接着力を得るために要する温度が高くなる傾向がある。
貯蔵弾性率の値は、露光され感光性接着剤からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の測定条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリック社製粘弾性アナライザー「RSA−3」が用いられる。
動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には以下のように準備される。まず、PETフィルム及びこれの一面上に形成された厚さ約40μmの接着フィルムを有する接着シートを35mm×10mmの大きさに切り出し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフィルム側から紫外線を照射する。露光後、PETフィルムを剥離して上記試験片が得られる。
感光性接着剤の、露光後、更に加熱硬化された後の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。かかる貯蔵弾性率が1MPa未満であると、上記感光性接着剤層2を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱による剥離または破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
上記貯蔵弾性率の値は、露光後、更に加熱硬化された後の感光性接着剤からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−3」が用いられる。
上記動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には、露光後の動的粘弾性測定のための試験片の作製の説明において上述した条件と同様の条件で露光された接着フィルムをさらに160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させて得られる。
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析における感光性接着剤の質量減少率が5%となる温度(以下「5%質量減少温度」という)は、260℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が260℃を下回ると、感光性接着剤層2を用いて製造した半導体装置20を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱による剥離または破壊を抑制することが困難になる傾向にある。また、加熱時に発生する揮発成分に周辺材料、または部材を汚染する可能性が高くなる。
上述の5%重量減少温度は、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期の質量に対する質量減少率が5%となる温度である。熱重量分析のための試料は、露光後、更に加熱硬化された後の貯蔵弾性率についての説明において上述の条件と同様で露光及び加熱された接着フィルムを乳鉢を細かく砕いて準備される。測定装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示唆熱熱量同時測定装置「EXSTER 6300」が用いられる。
以上の諸特性は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合性開始剤、さらに必要に応じて熱硬化性樹脂及びフィラーを用いて感光性接着剤を調整し、これらの種類、及び配合比を調整することで達成することができる。
また、フィルム状の感光性接着剤層2として、例えば、アルカリ可溶性ポリマー、放射線重合化合物、光重合開始剤、及び必要に応じて他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調整し、基材上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材を必要により除去する方法で得ることができる。上記の混合及び混練は、らいかい機、ボールミルなどの分散機を組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥機中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が十分に揮散する条件で乾燥する。具体的に例えば60℃〜180℃で、0.1分〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
上述の熱硬化樹脂が十分に反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社「DSC−7」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。なお、ワニスの調整に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解または分散できるものであれば、特に制限はない。すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
また、ワニス層の厚みは好ましくは1μm〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを得られる接着フィルム中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
また、フィルム状の感光性接着剤層2中の残存揮発分は好ましくは10%質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組み立てのための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着フィルム内部にボイドが残存しやすくなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発分は、50mm×50mmサイズに切断した接着フィルムの初期の質量をM2としたときに残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
また、フィルム状の感光性接着剤層2を形成するために用いられる基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材として用いることができる。基材としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものでもあってもよい。