以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して防振装置1の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における防振装置1の斜視図であり、図2(a)は、防振装置1の正面図であり、図2(b)は、防振装置1の側面図である。なお、図1及び図2において、矢印F,B方向は車両前後方向を、矢印L,R方向は車両左右方向を、矢印U,D方向は車両上下方向を、それぞれ表している。
図1及び図2に示すように、防振装置1は、自動車の振動源(図示せず)を支持固定しつつ、その振動源から発生する振動を車体(図示せず)へ伝達させないようにするものであり、車体側に取り付けられる筒状の軸短取付金具11及び軸長取付金具12と、それら両取付金具11,12の外周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成される弾性体21,22と、それら両弾性体21,22がそれぞれ圧入される圧入孔を有すると共に樹脂材料から構成されるブラケット部材30と、そのブラケット部材30に形成された内挿孔31に内挿配置されると共に振動源側に取り付けられる内筒部材40と、その内筒部材40に一端側が連結されると共にゴム状弾性体から構成される一対の防振脚部50と、それら一対の防振脚部50の他端側がそれぞれ連結されると共にブラケット部材30に係合される一対の外側部材60(図7参照)と、を主に備えて構成される。
なお、振動源は、本実施の形態では、モータであるが、他には、エンジンやトランスミッションなどが例示される。
軸短取付金具11及び軸長取付金具12は、鉄鋼材料から構成され、車体側に取り付けられる金具である。これら両取付金具11,12は、貫通孔を有する筒状に形成されており、この貫通孔には、ボルト(図示せず)が内挿され、そのボルトの締結により、両取付金具11,12の端面がそれぞれ車体側に取り付けられる。
ブラケット部材30は、樹脂材料から正面視略矩形の枠状体として構成されており、圧入孔と内挿孔31とが厚み方向に貫通して形成されている。圧入孔には、外周面に弾性体21,22が加硫接着された各取付金具11,12が圧入されて保持される。内挿孔31には、内筒部材40が内挿される。なお、内挿孔31の内周面は、大変位入力時における内筒部材40を受け止めてその変位を規制するストッパ部材としても機能する。
ブラケット部材30の上端および下端には、複数の肉抜き穴32が厚み方向に貫通して形成されている。なお、圧入穴、内挿孔31および肉抜き孔32は、開口側へ向けて内径が拡大されるテーパ状の内周を有すると共に、内筒部材40及び後述する外側部材60の孔63aの軸心方向と平行に形成されている。よって、樹脂成形金型400(図11から図14参照)からの脱型性が確保される。
ここで、ブラケット部材30は、車両上下方向および車両左右方向(矢印U,D方向および矢印F,B方向)に平行で内筒部材40の軸心を含む仮想平面に対して面対称となる形状に形成されており、その仮想平面上であってブラケット部材30の正面側、かつ、内挿孔31の下方となる位置に注入ゲート(樹脂成形金型400(図11から図14参照)によりブラケット部材30を樹脂成形する際にキャビティC内へ樹脂材料を注入する注入孔)が設定されている。なお、ブラケット部材30上の注入ゲートに対応する位置を注入ゲート痕30aと称す。
内筒部材40は、アルミ合金から貫通孔を有する断面楕円形の筒状に形成される。内筒部材40は、貫通孔に挿通されたボルト(図示せず)を介して、振動源側に締結固定される。一対の防振脚部50は、ゴム状弾性体から構成され、振動源側で発生する振動が車体側へ伝達されることを抑制するための部材であり、一端側が内筒部材40の外周面に連結されると共に他端側がブラケット部材30における挿通孔31の内周面にそれぞれ連結される。
これら一対の防振脚部50は、内挿孔31の車両前後方向(矢印F,B方向)に対向する内周面にそれぞれ連結されており、防振脚部50と内挿孔31との間には、車両上方側および下方側(矢印U方向側および矢印D方向側)にそれぞれ空間が形成される。そのため、防振脚部50は、内筒部材40を車両上下方向へ変位させる際の上下方向ばね定数が、内筒部材40を車両左右方向へ変位させる際の左右方向ばね定数よりも小さくされている。
防振脚部50の他端側には、ブラケット部材30の前面および背面となる外面(図2(b)左側面および右側面)から、内筒部材40の軸心方向(図2(b)左右方向)へ向けて突出される第2壁覆設ゴム53が連なっている。内筒部材40に締結固定された相手部品500(図15参照)が大変位入力時に相対変位した場合には、その相手部品に第2壁覆設ゴム53が当接して、弾性的に緩衝しつつ受け止めることで、相手部材の変位を規制するストッパ部材として機能する。
次いで、図3及び図4を参照して、外側部材60について説明する。図3(a)は、外側部材60の斜視図であり、図3(b)は、外側部材60の背面図である。図4(a)は、図3(b)のIVa−IVa線における外側部材60の断面図であり、図4(b)は、図3(b)のIVb−IVb線における外側部材60の断面図である。
図3及び図4に示すように、外側部材60は、金属材料からなる1枚の平板状体にプレス加工機による絞り加工を施すことで、一方側(図3(b)紙面手前側)の面が開放した容器状に形成された部材であり、一対の防振脚部50の他端側にそれぞれ埋設されると共に、ブラケット部材30に係合される。
この外側部材60は、背面視矩形状に形成される基板部61と、その基板部61の外縁であって対向する2辺(図3(b)上側および下側)から背面側(図3(b)紙面手前側)へ向けて延設される一対の第1壁部62と、基板部61の残りの2辺から背面側へ向けて延設される一対の第2壁部63とを備える。なお、一対の第1壁部61と一対の第2壁部63とは、端部同士が連結されている。即ち、これら各壁部62,63は、背面視において、周方向に連続して連結されている。
基板部61は、背面側へ向けて凸となり軸心L1を有する円弧状に湾曲して形成される(図4(a)参照)。即ち、基板部61は、図4(a)において、紙面垂直方向に軸心L1が伸びる円筒の側壁の一部を切り取った形状に形成される。基板部61の板面中央には、背面視略矩形状の貫通孔61aが穿設される。
貫通孔61aは、一対の第2壁部63に対してはそれらの対向間中央に配置されているが、一対の第1壁部62に対してはそれらの対向間中央よりも一方側(図3(b)及び図4(a)下側)へ偏って配置されている。よって、図4(a)において、貫通孔61aの上方側の基板部61により形成される弧の中心角θaは、貫通孔61aの下方側の基板部61により形成される弧の中心角θbよりも大きくされている。
第1壁部62は、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両上下方向(矢印U,D)への移動を主に規制するための平板状の部位であり(図16参照)、一対が対向配置されると共に、それら一対の対向間隔が、基板部61の背面側から離間するに従って拡大する末広がり状に形成されている(図4(a)参照)。なお、一対の第1壁部62は互いに同じ形状に形成されている。
第2壁部63は、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両左右方向(矢印L,R)への移動を主に規制するための平板状の部位であり(図15参照)、一対が平行を保ちつつ対向配置されている(図4(b)参照)。これら一対の第2壁部63には、正面視円形の孔63aが、各第2壁部63に対して2箇所ずつ合計4箇所に穿設されている。
これら各孔63aは、図4(a)に示すように、一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62側(図4(a)下側)に偏った位置に配置されている。詳細には、2箇所に穿設される孔63aの内の一方の孔63aは一対の第1壁部62間の略中央に、他方の孔63aは一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62側に、それぞれ配置されている。
第2壁部63には、正面視半円状の膨出部が外縁から膨出形成されており、その膨出部と同心となる位置に各孔63aが配置されている。なお、このように、膨出部と貫通孔61aとが共に、一対の第1壁部61の対向間中央よりも一方側に偏って配置されていることで、貫通孔61aによる強度の低下を、膨出部により補うことができるので、外側部材60全体としての強度の向上を図ることができる。
ここで、一対の第2壁部63は、孔63aの配置も含め、互いに同じ形状に形成されている。そのため、外側部材60は、防振装置1(第1成形体100)の左右いずれにも共通に使用することができる(図7参照)。
次いで、図5から図8を参照して、第1成形体100について説明する。図5は、第1成形体100の斜視図である。図6(a)は、第1成形体100の正面図であり、図6(b)は、第1成形体100の側面図である。また、図7(a)は、図6(a)のVIIa−VIIa線における第1成形体100の断面図であり、図7(b)は、図6(b)のVIIb−VIIb線における第1成形体100の断面図であり、図8は、図6(a)のVIII−VIII線における第1成形体100の断面図である。
図5から図8に示すように、第1成形体100は、防振装置1を製造する過程(ゴム加硫金型300(図9及び図10参照)を使用した加硫工程)における1次加工品であり、内筒部材40と、その内筒部材40に一端側が連結される一対の防振脚部50と、それら一対の防振脚部50の他端側がそれぞれ連結される一対の外側部材60と、その外側部材60を覆う各覆設ゴム51〜53とを主に備え、左右(図6(a)左右)対称に形成される。
図5から図8に示すように、内筒部材40の上方側および下方側は、一対の防振脚部50の一端側同士が連なることで、ゴム状弾性体により覆われており、車両上下方向(矢印U,D方向)への大変位入力時には、このゴム状弾性体を介して、内筒部材40が挿通孔31の内周面に当接される(図1参照)。
一対の外側部材60は、その正面側を向き合わせつつ所定間隔を隔てて対向配置され、その対向間に内筒部材40が配置される。なお、一対の外側部材60は、その基板部61の軸心L1(図4(a)参照)が内筒部材40の軸心と平行となる状態で配置される。
一対の防振脚部50は、内筒部材40の外周面と一対の外側部材60の基板部61の正面との間をそれぞれ連結し、正面視において、左右に直線状に延びる形状に形成されている。防振脚部50には、外側部材60の外面を覆う各覆設ゴム51〜53が連なって形成されている。
基板覆設ゴム51は、貫通孔61a内に充填されつつ、基板部61の外面を一定の厚み寸法で覆う。基板部61の前面側(第1及び第2壁部62,63が延設される側)に覆設される基板覆設ゴム51の厚み寸法は、十分に薄くされており、本実施の形態では、基板部61の厚み寸法よりも小さくされている。そのため、後述するように、樹脂成形工程において、空間Sに樹脂材料が充填されると、その射出圧力により、樹脂材料が外側部材60の背面側から内筒部材40側へ向けて貫通孔61a内に嵌り込む。
第1壁覆設ゴム52は、一対の第1壁部62の外面をそれぞれ一定の厚み寸法で覆い、第2壁覆設ゴム53は、一対の第1壁部63の外面をそれぞれ一定の厚み寸法で覆う。なお、第2壁部63の孔63aには、ゴム加硫金型300のゴム下型ピン301b及びゴム上型ピン302b(図9参照)が挿通されるので、第2壁覆設ゴム53が充填されていない。同様に、第2壁部63の外面(第2壁部63同士の対向面と反対側の面)は、ゴム加硫金型300のゴム型座部301c,302c(図9参照)が当接されるので、ゴム型座部301c,302cに対応する形状の窪みが第2壁覆設ゴム53に形成される。また、第2壁部63の対向面側に覆設される第2壁覆設ゴム53は、孔63aに対応する部分のみ厚み寸法が厚くされている。
このように、外側部材60の外面を、各覆設ゴム51〜53が所定の厚み寸法で覆うことで、外側部材60の第1壁部62及び第2壁部63の対向面間(即ち、基板部61、第1壁部62及び第2壁部63で取り囲まれた部分)に空間Sが形成される。かかる空間Sには、後述するように、ブラケット部材30の一部が内嵌される。
なお、第2壁覆設ゴム53は、内筒部材40に対して反対側(例えば、図6(b)紙面手前側)に面する側面53aが傾斜して形成されている。具体的には、内筒部材40の軸心方向に沿って、第2壁覆設ゴム53の外面側から空間S側へ向けて上昇傾斜するように形成されている。
次いで、図9から図14を参照して、防振装置1の製造方法について説明する。図9及び図10は、内筒部材40及び外側部材60が設置されて型締めされたゴム加硫金型300の断面図であり、キャビティ内にゴム状弾性体が注入される前の状態が図示されている。また、図11から図14は、第1成形体100が設置されて型締めされた樹脂成形金型400の断面図であり、キャビティC内に樹脂材料が注入される前の状態が図示されている。
なお、図9及び図11における断面は、図7(a)に示す断面に対応する。図10及び図14における断面は、図7(b)に示す断面に対応する。また、図12は、図11の部分拡大図に対応し、図13は、図6(a)のXXXIII−XXXIII線における断面に対応する。さらに、図9及び図10では、ゴム加硫金型300の一部が部分的に拡大図示されている。
図9及び図10に示すように、ゴム加硫金型300は、第1成形体100を加硫成形するための金型であり、上下(図9上下方向または図10紙面垂直方向であって内筒部材40の軸心方向)に型締めされる下型301及び上型302と、それら上下型301,302の間に挟まれる中型303とを備え、ゴム加硫工程において、型締めにより形成されるキャビティ内に注入孔(図示せず)から注入されて充填されたゴム状弾性体を加硫することで、第1成形体100(図5参照)を成形する。
下型301は、第1成形体100の正面側(図6(a)紙面手前側)の外形を形成するための部位であり、内筒部材40を係止するための内筒係止部301aと、外側部材60を係止するためのゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cとを備える。
内筒係止部301aは、内筒部材40の下端を係止する部位であり、内筒部材40の下端が内嵌可能に凹設された凹設溝部と、内筒部材40の下端開口から挿入される挿入ピンとを備える。
ゴム下型ピン301bは、外側部材60の孔63aに挿入される円柱状のピンであり、片側2箇所ずつ合計4箇所に形成されている。これら各ゴム下型ピン301bが各孔63aに挿入されることで、外側部材60が所定位置に位置決めされる。
ゴム下型座部301cは、外側部材60の第2壁部63の外面を支持する部位であり、ゴム下型ピン301bよりも大径の円柱状に形成されると共にゴム下型ピン301bと同心に形成されている。よって、ゴム下型ピン301bは、ゴム下型ピン301bとの間に平坦面状の段差面を有し、その段差面が第2壁部63の外面に当接して支持する円環状の座面とされている。なお、かかる座面は、その直径が第2壁部63に形成される半円状の膨出部よりも小径に設定されており、第2壁部63の外面内に収まるように形成されている。
上型302は、第1成形体100の背面側(図6(a)紙面奥側)の外形を形成するための部位であり、下型301に対して上下動(図9上下方向移動)することで、型締め及び型開き可能に構成され、内筒部材40を係止するための内筒係止部302aと、外側部材60を係止するためのゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cとを備える。
なお、内筒係止部302a、ゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cは、下型301における内筒係止部301a、ゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cと同一の構成であるので、その説明を省略する。但し、ゴム上型ピン302bは、最大径が下型301におけるゴム下型ピン301bの外径よりも若干小さくされると共に、先端側ほど小径となる円錐形状のテーパピンとして構成されている。これにより、外側部材60を設置する際には、その外側部材60の寸法公差を吸収して、作業性の向上を図ることができると共に、外側部材60のキャビティ内での保持を適正な姿勢で強固に行うことができる。
中型303は、第1成形体100の両側面(図6(a)左右面)の外形を形成するための部位であり、分割可能な左右一対から構成され、下型301及び上型302の間の所定位置に配置される。
図11から図14に示すように、樹脂成形金型400は、第1成形体100をブラケット部材30にインサート成形するための金型であり、上下(図11上下方向または図14紙面垂直方向であって内筒部材40の軸心方向)に型締めされる下型401及び上型402を備え、型締めにより形成されるキャビティC内に注入ゲート30a(図1及び図2(a)参照)から樹脂材料を注入(射出)して固化させることで、防振装置1を成形する。
下型401は、上型402と共にブラケット30の外形を形成するための部位であり、内筒部材40を係止するための内筒係止部401aと、外側部材60を係止するための樹脂下型ピン401b及び樹脂下型座部401cとを備える。なお、内筒係止部401a、樹脂下型ピン401b及び樹脂下型座部401cは、ゴム加硫金型300の下型301における内筒係止部301a、ゴム下型ピン301b及びゴム下型座部301cと同一の構成であるので、その説明を省略する。
上型402は、下型401に対して上下動(図11上下方向移動)することで、型締め及び型開き可能に構成され、内筒部材40を係止するための内筒係止部402aと、外側部材60を係止するための樹脂上型ピン402b及び樹脂上型座部402cとを備える。なお、内筒係止部402a、樹脂上型ピン402b及び樹脂上型座部402cは、ゴム加硫金型300の上型302における内筒係止部302a、ゴム上型ピン302b及びゴム上型座部302cと同一の構成であるので、その説明を省略する。
なお、下型401及び上型402には、肉抜き孔形成ピン401d及び圧入孔形成ピン(図示せず)が形成されており、樹脂加硫工程において、ブラケット部材30の所定位置に複数の肉抜き孔と2つの圧入孔(各取付金具11,12とそれらの外周面にそれぞれ加硫接着される弾性体21,22とからなるブッシュが圧入される孔、図1参照)とを貫通形成する。
防振装置1の製造は、まず、ゴム加硫工程を行い、第1成形体100を成形し、次いで、樹脂成形工程へ移行し、第1成形体100をブラケット部材30にインサート成形することで行われる。
即ち、ゴム加硫工程では、まず、ゴム加硫金型300の下型301に内筒部材40及び外側部材60を設置し、次いで、中型303を下型301の所定位置に配置した後、上型302を下降移動させて、型締めする。これにより、図9及び図10に示すように、ゴム状弾性体を加硫するための加硫空間であるキャビティが形成されるので、図示しない注入孔からキャビティ内にゴム状弾性体を注入して、かかるキャビティ内にゴム状弾性体を充填する。そして、ゴム加硫金型300を加圧・加熱した状態で所定時間保持することで、ゴム状弾性体(防振脚部50及び各覆設ゴム51〜53)が加硫され、第1成形体100が成形される。
この場合、外側部材60は、一対の第2壁部63のそれぞれに2箇所ずつ孔63aが穿設されている。これら各孔63aは、一対の第1壁部62の対向間中央よりも一方側に偏った位置に配置されている(図4(a)参照)。そのため、外側部材60をゴム加硫金型300の下型301に設置する際には、第2壁部63に穿設された各孔63aへ各ゴム下型ピン301bをそれぞれ適切に挿通させることが必要とされる。
即ち、外側部材60の向きを正しく設定して、各孔63aのそれぞれへ対応するゴム下型ピン301bをそれぞれ挿通させなければ、外側部材60の第2壁部63を下型301のキャビティ(凹部)内に収容させることができない(第1壁覆設ゴム52の厚み寸法が一対の第2壁部63の離間間隔よりも十分に小さいため)。よって、貫通孔61aが偏った位置に形成され、外側部材60に方向性がある場合であっても、かかる外側部材60をゴム加硫金型300へ設置する際の作業不良(設置不良)を確実に抑制することができる。
また、一対の第2壁部63には、それぞれ2箇所ずつに孔63aが穿設されるので、ゴム加硫工程において、外側部材60を下型301に設置した状態では、かかる外側部材60の回転を確実に規制することができる。よって、上型302を下型301に型締めする際には、各ゴム上型ピン302bを各孔63aへ確実に挿入させることができる。
更に、一対の第2壁部63のそれぞれの各孔63aにゴム下型ピン301b及びゴム上型ピン302bがそれぞれ挿通されることで、ゴム加硫金型300のキャビティ内において、外側部材60を確実に保持できるので、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力による外側部材60の変形を抑制することができる。
また、このように、外側部材60の設置不良および変形の抑制を可能とするために、孔63a及びゴム下型ピン301b等を複数設ける構成であっても、これら孔63a及びゴム下型ピン301b等は、断面円形という簡素な形状に形成されているので、その製造を容易として、防振装置1及びゴム加硫金型300の製品コストの低減を図ることができる。
外側部材60を覆う各覆設ゴム51〜53は、防振脚部50に連なるゴム状弾性体からなるので、防振脚部50と各覆設ゴム51〜53とを同時に加硫成形することができ、その分、製造コストの削減を図ることができる。また、このように、各覆設ゴム51〜53を形成することで、外側部材60全体をゴム状弾性体で覆うことができるので、外側部材60の耐食性の向上を図ることができる。
ここで、ゴム加硫金型300のキャビティ内に設置された外側部材60は、その外面を覆う各覆設ゴム51〜53の厚みの分、全面にわたってゴム加硫金型300との間に隙間が空くため、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力によって、変形されやすい。特に、基板部61は、ゴム下型ピン301b等により支持される第2壁部63に比較して、変形が顕著となる。これに対し、本実施の形態における防振装置1では、基板部61に貫通孔61aが貫通形成されているので、ゴム状弾性体を介して作用する加硫圧力を、貫通孔61aによって逃がすことができ、その結果、外側部材60の変形を抑制することができる。
なお、ゴム加硫金型300は、下型301と中型303との合わせ面および上型302と中型303との合わせ面であるパーティングラインPLの位置が、第2壁覆設ゴム53の側面53a及び第1壁覆設ゴム52の側面に設定されている。これらパーティングラインPLの位置は、第1成形体100を樹脂成形金型400に設置した場合に、パーティングラインPLに沿って形成されるゴムバリが、型締めされた樹脂成形金型400に形成されるキャビティC内に位置し、樹脂成形後には、ゴムバリが樹脂材料(ブラケット部材30)内に埋設される位置である。詳細については、後述する。
次いで、樹脂成形工程では、樹脂成形金型400の下型401に第1成形体100を設置し、次いで、上型402を下降移動させて、型締めする。これにより、図11から図14に示すように、樹脂材料を充填して固化させるための空間であるキャビティCが形成されるので、注入ゲートからキャビティC内に樹脂材料を注入(射出)して、所定時間保持することで、樹脂材料が固化され、第1成形体100がブラケット部材30にインサート成形される。最後に、ブッシュをブラケット部材30の圧入孔へ圧入することで、防振装置1の製造が完了する。
この場合、樹脂成形金型400の下型401への第1成形体100の設置は、外側部材60の第2壁部63に穿設された孔63aに樹脂下型ピン401bを挿通させることで行われるので、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、第1成形体100の向き(即ち、外側部材60の向き)を正しく設定して、各孔63aのそれぞれへ対応する樹脂下型ピン401bをそれぞれ挿通させなければ、第1成形体100を下型401のキャビティ(凹部)内に収容させることができない。よって、外側部材60の貫通孔61aが偏った位置に形成され、第1成形体100に方向性がある場合であっても、かかる第1成形体100を樹脂成形金型400へ設置する際の作業不良(設置不良)を確実に抑制することができる。
また、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、第1成形体100を下型401に設置した状態では、第2壁部63の2箇所の孔63aそれぞれに樹脂下型ピン401bが挿入されることで、第1成形体100の回転を確実に規制することができる。よって、上型402を下型401に型締めする際には、各樹脂上型ピン402bを各孔63aへ確実に挿入させることができる。
更に、一対の第2壁部63のそれぞれの各孔63aに樹脂下型ピン401b及び樹脂上型ピン402bがそれぞれ挿通されることで、樹脂成形金型400のキャビティC内において、外側部材60を確実に保持できるので、キャビティ内に射出された樹脂材料の射出圧力による外側部材60の変形を抑制することができる。
なお、上述したゴム加硫工程の場合と同様に、樹脂下型ピン401b及び樹脂上型ピン402bは、断面円形という簡素な形状に形成されているので、その製造を容易として、樹脂成形金型400の製品コストの低減を図ることができる。
ここで、ゴム加硫工程では、外側部材60の第2壁部63をゴム下型座部301c及びゴム上型座部302cとで支持する。これらゴム下型座部301c及びゴム上型座部302cの座面は、孔63aと同心で第2壁部63の膨出部よりも直径が小さい円環状なので、第2壁部63の外縁からはみ出さずその第2壁部63の板面内に収まる。よって、第2壁部63を覆う第2壁覆設ゴム53は、孔63a近傍が部分的に凹設されるのみであり、四隅に凹部が形成されない。
即ち、従来の製造方法では、第2壁部63の四隅をゴム加硫金型で支持するので、第2壁覆設ゴム53の四隅にゴム加硫金型の支持部に対応する凹部が形成される。そのため、樹脂成形工程では、樹脂材料のシール性を確保することが困難となるため、樹脂成形金型の構造や形状が複雑化して、製造コストが嵩む。これに対し、本実施の形態における製造方法によれば、第2壁覆設ゴム53の四隅に凹部がなく、シール性の確保が容易であるので、樹脂成形金型400の構造や形状を簡素化して、製造コストの低減を図ることができる。
また、従来の製造方法のように、第2壁部63の四隅をゴム加硫型で支持する構造であると、第2壁部63と基板部61との間に曲げ加工によるR形状がある場合、かかるR形状は寸法公差が大きいため、その分、R形状部を支持するゴム加硫金型側の支持部も寸法公差を大きく設定する必要が生じ、外側部材60のゴム加硫金型に対する位置精度が低下する。これに対し、本実施の形態における製造方法によれば、第2壁部63の孔63aにゴム下型ピン301b等を挿通させる構成であれば、寸法公差を小さくして、ゴム加硫金型300に対する位置精度の向上を図ることができる。その結果、外側部材60と内筒部材40や防振脚部50との相対位置精度を向上させることができるので、防振装置1の静的および動的な特性の安定化を図ることができる。
ここで、ゴム加硫工程で成形される第1成形体100には、外側部材60の第1壁部62と第2壁部63とで取り囲まれた部分(即ち、第1壁覆設ゴム52と第2壁覆設ゴム53とに囲まれた部分)に空間Sが形成される。樹脂成形工程において樹脂材料が樹脂成形金型のキャビティ内に注入されると、その樹脂材料が空間Sに充填される。その結果、ブラケット部材30の一部が空間Sに内嵌された状態に第1成形体100がブラケット部材30にインサート成形される。
この場合、外側部材60の基板部61に貫通孔61aが貫通形成されているので、樹脂成形工程において、樹脂成形金型のキャビティ内に注入された樹脂材料の注入(射出)圧力を、貫通孔61aを通じて、防振脚部50へ作用させることができる。これにより、防振脚部50に予圧縮を付与することができるので、耐久性の優れた防振部材50を製造することができる。
また、樹脂材料の注入圧力を変更することで、防振脚部50に付与される予圧縮量を変化させることができるので、防振部材1を製造する際に、防振脚部50のばね特性を調整することができる。即ち、防振脚部50の特性をゴム状弾性体の特性(例えば、ゴム硬度)を変更することで調整する場合、そのゴム硬度のロット毎のばらつきが大きいため、特性の微調整が困難である。これに対し、樹脂材料の注入(射出)圧力は、射出成形機の設定により高精度か容易に調整できるので、予圧縮量の変更による防振脚部50のばね特性の調整を確実に行うことができる。
また、例えば、かかる樹脂材料の注入(射出)圧力を高めることで、空間Sに充填された樹脂材料を、貫通孔61aを通じて、防振脚部50側へ押し込み、かかる樹脂材料が貫通孔61aを貫通しつつ防振脚部50に嵌り込んだ内嵌状態を形成することができる(但し、後述する図15及び図16では、樹脂材料の注入圧力が低い場合の成形状態が図示されている)。よって、このような内嵌状態を形成した場合には、ブラケット部材30からの外側部材60の抜け出しをより確実に防止し得る防振装置1を製造することができる。
次いで、第1成形体100に形成されたゴムバリを樹脂材料で覆う(ブラケット部材30に埋設する)構造について、図9から図14を参照して説明する。
図9及び図10に示すように、ゴム加硫金型300は、下型301と中型303との合わせ面および上型302と中型303との合わせ面であるパーティングラインPLの位置が、第2壁覆設ゴム53の側面53a及び第1壁覆設ゴム52の側面(図12から図14参照)に設定されている。具体的には、図9に示すように、第2壁覆設ゴム53の側面に設定されるパーティングラインPLは、第2壁部63の下面(一対の第2壁部63の対向面)よりも空間S側となる位置に設定される。また、図10に示すように、第1壁覆設ゴム52の側面に設定されるパーティングラインPLは、基板部61よりも内筒部材40と反対側となる位置に設定されている。
図12から図14に示すように、ゴム加硫金型300により加硫成形された第1成形体100(第2壁覆設ゴム53の側面53a及び第1壁覆設ゴム52の側面)には、パーティングラインPLに沿って、ゴムバリBRが形成される。この場合、ゴムバリBRが形成される位置は、ブラケット部材30にインサート成形される部位(即ち、第2壁覆設ゴム53及び第1壁覆設ゴム52であって樹脂成形金型400のキャビティCに面する部位)の外面に設定されている。
よって、第1成形体100にゴムバリBRが形成されたとしても、かかる第1成形体100を樹脂成形金型に設置してインサート成形をする際には、ゴムバリBRが形成された部分を樹脂成形金型400の所定部位(第2壁覆設ゴム53や第1壁覆設ゴム52の外形に密着してシールする部位)に挿入する必要がない。即ち、ゴムバリBRを樹脂成形金型400のキャビティCに収容させることができる。
これにより、第1成形体100を樹脂成形工程において樹脂成形金型400へ設置する場合には、ゴムバリBRがあるまま無理な挿入をすることによる第2壁覆設ゴム53や第1壁覆設ゴム52の破損を回避できると共に、第2壁覆設ゴム53や第1壁覆設ゴム52を樹脂成形金型400の所定部位(第2壁覆設ゴム53や第1壁覆設ゴム52の外形に密着してシールする部位)に容易に挿入可能として、設置作業に要する作業時間の短縮を図ることができる。その結果、設置作業の作業性の向上を図ることができる。
また、このように、樹脂成形金型400の所定部位(第2壁覆設ゴム53の外形に密着してシールする部位)にゴムバリBRが位置しないので、かかる所定部位の密着によるシール性を確保して、樹脂バリの発生を抑制することができる。その結果、第2壁覆設ゴム53の近傍に樹脂バリが形成され、第2覆接ゴム53による弾性的なストッパ機能が阻害されることを抑制できる。
さらに、防振装置100の外観からゴムバリBRを隠すことができ、製品の美観を高めることができるだけでなく、鋭角形状を有するゴムバリBRが基点となり第2壁覆設ゴム53に亀裂が発生することを抑制できる。
また、第2壁覆設ゴム53の側面53aに形成されるゴムバリBRの位置は、第2壁部63の下面(一対の第2壁部63の対向面)よりも空間S側となる位置に設定される(図12及び図13参照)。即ち、第2壁部63を避けた位置に設定されているので、第2壁覆設ゴム53(側面53a)の変形性を確保できる。よって、ゴムバリBRが樹脂材料に埋設される際には、かかるゴムバリBR近傍の変形を樹脂材料の流動に従わせて、エアの噛み込みを抑制することができる。
ここで、図12及び図13に示すように、第2壁覆設ゴム53は、空間S側からストッパ面側(図12及び図13上側)へ向かうに従って、その断面積が減少するように、側面53a(ゴムバリBRが形成される外面)がテーパ状に傾斜されている。そのため、図9に示すように、ゴム加硫金型300の上型302の内面も、第2壁覆設ゴム53の側面53aに対応して、テーパ状に傾斜される。よって、ゴムバリBRを樹脂材料で覆うために、パーティングラインPLの形成位置が、上型302の型抜き方向とは反対側(図9下側)へ後退されたとしても、上型302の型抜き抵抗を低減して、その脱型性を確保することができる。なお、下型301についても同様である。
また、このように、第2壁覆設ゴム53の側面53aを、空間S側からストッパ面側へ向かうに従って第2壁覆設ゴム53の断面積が減少するようにテーパ状に傾斜させるので、その分、第2壁覆設ゴム53のゴムボリュームを小さくできる。その結果、ストッパ部材として機能する部位である第2壁覆設ゴム53のストッパ面側の部分において、加硫成形後の収縮の影響を抑制して、その耐久性の向上を図ることができる。
また、図12及び図13に示すように、第2壁覆設ゴム53には、外側部材60の第2壁部63が、第2壁覆設ゴム53のストッパ面および空間S側の面と平行に、埋設されており、第2壁部63は、第2壁覆設ゴム53のストッパ面(図12及び図13上側面、突出先端面)までの距離が、第2壁覆設ゴム53の空間S側の面までの距離よりも小さくなる位置に配設されている。
よって、第2壁覆設ゴム53において、ストッパ面側の部分(即ち、ストッパ面と第2壁部63との間の部分)のゴムボリュームを、空間S側の部分(即ち、第2壁部63と空間Sとの間の部分)のゴムボリュームに対して相対的に小さくできる。これにより、加硫成形後には、ゴムボリュームが大きな空間S側の部分の収縮を相対的に大きくして、その分、ストッパ面側における収縮を緩和することができる。その結果、ストッパ部材として機能する部位である第2壁覆設ゴム53のストッパ面側の部分の耐久性の向上を図ることができる。
さらに、図12及び図13に示すように、第2壁覆設ゴム53は、側面53aが、ゴムバリBRよりも空間S側においても、上述したテーパ状に傾斜されているので、その分、空間S側の部分のゴムボリュームが大きくされている。よって、この点においても、第2壁覆設ゴム53は、ストッパ面側の部分のゴムボリュームが、空間S側の部分のゴムボリュームに対して相対的に小さくなるので、加硫成形後には、ゴムボリュームが大きな空間S側の部分の収縮を相対的に大きくして、その分、ストッパ面側における収縮を緩和することができる。その結果、ストッパ部材として機能する部位である第2壁覆設ゴム53のストッパ面側の部分の耐久性の向上をより一層図ることができる。
なお、このように、第2壁覆設ゴム53の側面53aをテーパ状に傾斜させることで、例えば、第2壁覆設ゴム53の空間S側の部分の厚み寸法(図12及び図13上下方向寸法)を大きくする場合と比較して、ストッパ面側における収縮の緩和を効果的に行うことができる。また、この場合には、空間Sの幅寸法(図12及び図13上下方向寸法)を確保できるので、ブラケット部材30から防振脚部50の他端側が抜け出にくくすることができる。
以上のように構成された防振装置1の詳細構成について、図15及び図16を参照して説明する。図15及び図16は、防振装置1の部分断面図であり、それぞれ図7(a)及び図7(b)に示す断面に対応する。なお、図15では、防振装置1が車両へ組み付けられた際に第2壁覆設ゴム53に対向配置される相手部品500が図示されている。また、図16では、防振装置1の一部が部分的に拡大図示され、かかる拡大部分では、図面を簡素化するために、ブラケット部材30及び各覆設ゴム51,52の断面線の図示が省略されている。
図15及び図16に示すように、防振脚部50の他端側(図15及び図16左側)が基板部61の正面側に加硫接着され、その基板部61の外縁からは、ブラケット部材30へ向けて(即ち、防振脚部50と反対側へ向けて)、一対の第1壁部62が末広がり状に延設されると共に、一対の第2壁部63が平行を保ちつつ延設され、これら第1壁部62及び第2壁部63が周方向に(即ち、基板部61の外縁に沿って)連結されつつ、ブラケット部材30に埋設されている。
よって、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両左右方向(矢印L,R方向、図15上下方向)の移動については、一対の第2壁部63とそれら一対の第2壁部63の対向間に内嵌されたブラケット部材30の被内嵌部分との係合により、規制することができる。
また、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両上下方向(矢印U,D方向、図16上下方向)の移動については、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62の対向間に内嵌されたブラケット部材30の被内嵌部分との係合、及び、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62を両側から狭持するブラケット部材30の狭持部分との係合により、規制することができる。
更に、ブラケット部材30に対する外側部材60の車両前後方向(矢印F,B方向、図16左右方向)であって、ブラケット部材30から抜け出る方向(図16右方向)への外側部材60の移動については、一対の第1壁部62とそれら一対の第1壁部62の外面側に突出するブラケット部材30の突出部分(即ち、図16において範囲Lで示す部分)との係合により、規制することができる。
このように、外側部材60とブラケット部材30との車両前後方向における係合は、外側部材60の一対の第1壁部62をブラケット部材30に埋設させることで達成する構造であるので、外側部材60を係合するためにブラケット部材30を防振脚部50へ向けて張り出させる必要がなく、従来品のようにアンダーカット形状が形成されることを抑制することができる。よって、ブラケット部材30を成形する樹脂成形金型400の構造の簡素化を図ることができる。
また、防振装置1は、ブラケット部材30に対する外側部材60の移動を各方向において規制することができるので、内筒部材40がいずれの方向へ変位しても、外側部材60とブラケット部材30との係合状態を保ち、かかる外側部材60がブラケット部材30から抜け出ることを防止することができる。
ここで、外側部材60は、ブラケット部材30に対する移動を各方向において規制可能としつつ、その製造を簡易に行うことができる。即ち、外側部材60は、板状の基板部61の外縁から板状の第1及び第2壁部62,63が一方へ向けて延設される形状(いわゆる容器形状)に形成されているので(図3及び図4参照)、1枚の平らな素板にパンチとダイとを用いてプレス加工機により絞り加工を施すことで、簡易に製造することができる。従って、外側部材60の製造コストを低減して、その分、防振装置1全体としての製品コストを低減することができる。
この場合、第1壁部62と第2壁部63とは、その端部同士が連結される、即ち、周方向に連続して形成されているので、それら各壁部62,63の曲げ方向(基板部61に対して揺動する方向)の強度を高めることができる。よって、その分、外側部材60の板厚を小さくすることができるので、材料コストの低減を図ることができると共に、軽量化を図ることができる。
また、上述した通り、第2壁覆設ゴム53には、第2壁部63が埋設されているので、第2壁覆設ゴム53を、相手部品500に当接してその変位を規制するストッパ部材として利用する場合、相手部品500が当接される際の衝撃力を第2壁部63(即ち、外側部材60)で受け止めて、ブラケット部材30の負担を軽減することができる。これにより、ブラケット部材30が樹脂材料から形成される場合であっても、その耐久性の向上を図ることができる。
更に、第2壁部63は、上述したように、その端部が第1壁部62の端部と連結され、曲げ方向の強度が高められているので、相手部品500が当接される際の衝撃力を強固に受け止めることができると共に、外側部材60自体だけでなくブラケット部材30の耐久性も向上させることができる。
次いで、図17から図19を参照して、第2実施の形態について説明する。図17(a)は、第2実施の形態における外側部材2060の側面図であり、図17(b)は、外側部材2060の正面図である。また、図18(a)は、図17(b)のXVIIa−XVIIa線における外側部材2060の断面図であり、図18(b)は、図17(b)のXVIIb−XVIIb線における外側部材2060の断面図である。
第1実施の形態では、外側部材60の基板部61が背面側に凸の断面円弧状に湾曲して形成される場合を説明したが、第2実施の形態における外側部材2060の基板部2061には、背面側に凸の断面円弧状に湾曲した面から正面側へ向けて突部2061bが突設されている。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図17及び図18に示すように、外側部材2060は、正面視矩形状に形成される基板部2061を備える。なお、第1実施の形態の場合と同様に、基板部2061の外縁からは、背面側(図17(a)及び図18(a)左側)へ向けて第1壁部62及び第2壁部63が延設される。
基板部2061は、背面側へ向けて凸となり軸心L1(図4(a)参照)を有する円弧状に湾曲して形成され、その板面の略中央および下方(図17(b)下側)部分には、突部2064が突設される。また、基板部2061の板面中央(即ち、突部2064を含む領域)には、正面視略矩形状の貫通孔2061aが穿設される。
突部2064は、基板部2061の正面側(図17(a)及び図18(a)右側)から内筒部材40(図19参照)へ向けて突設されると共にその突設高さが基板部2061の略中央(即ち、一対の第1壁部62間の略中央)から一方の第1壁部63側(図17(a)及び図18(a)下側)へ離間するに従って漸次大きくなる。
また、突部2061bは、突設高さが最も大きくなる最頂部が、一対の第2壁部63を結ぶ方向(図17(b)左右方向)に沿って所定幅を有して形成されている。なお、この最頂部の所定幅は、基板部2061の幅に対して、50%以上であることが好ましい。50%以上とすることで、車両上下方向のばね定数を十分に大きくすることができる。
外側部材2060は、金属材料からなる1枚の平板状体にプレス加工機による絞り加工を施すことで形成される。そのため、外側部材2060は、基板部2061と各壁部62,63と突部2064が一体に形成され、基板部2061の正面側(図18(a)右側)には突部が突設されると共に、基板部2061の背面側(図18(a)左側)には突部2064に対応する凹部が形成される。
次いで、このように構成された外側部材2060が使用される防振装置2001について、図19を参照して説明する。図19は、防振装置2001の部分拡大断面図であり、図16に対応する。
図19に示すように、防振装置2001は、防振脚部2050の他端側(図19左側)が基板部2061の正面側に加硫接着され、これにより、突部2064が防振脚部2050に埋設されている。基板覆設ゴム2051は、防振脚部2050に連なると共に、基板部2051及び突部2064の外面を一定の厚み寸法で覆う。そのため、外側部材2060の各壁部62,63の対向面間(即ち、基板部2061、突部2064、第1壁部62及び第2壁部63で取り囲まれた部分)に形成される空間S(図示せず、図7(b)参照)には、突部2064に対応する凹部が形成され、かかる凹部にブラケット部材2030の一部が内嵌されている。
防振装置2001によれば、外側部材2060の基板部2061には、突部2064が形成され、その突部2064は、内筒部材40へ向けて突設されると共にその突設高さが基板部2061の略中央から一方の第1壁部62側へ離間するに従って漸次大きくなり且つ最頂部が一対の第1壁部61を結ぶ方向(即ち、内筒部材40の軸心方向)に沿って所定幅を有するので、車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両左右方向(矢印L,R方向)のばね定数の上昇は抑制しつつ、車両上下方向(矢印U,D方向)のばね定数のみを大きくすることができる。
即ち、車両上下方向(矢印U,D方向)へ内筒部材40が変位する場合には、突部2064の最頂部と内筒部材40の外周面とを結ぶ比較的距離が短い部分の伸縮変形が支配的となり、ばね定数が大きくなる。
一方、内筒部材40が車両左右方向(矢印L,R方向)へ変位する場合は、基板部2061の突部が形成されていない領域(図19の上側の領域)及び突部2064の突接高さが低い領域と内筒部材40の外周面とを結ぶ比較的距離が長くゴムボリュームの大きい部分のせん断変形が支配的となるため、ばね定数の上昇を抑制できる。また、内筒部材40が車両前後方向(矢印F,B方向)へ変位する場合には、基板部2061の突部2064が形成されていない領域および突部2064の突接高さが低い領域と内筒部材40の外周面とを結ぶ比較的距離が長くゴムボリュームの大きい部分の伸縮変形が支配的となり、ばね定数の上昇を抑制できる。
なお、突部2064は、突設高さが漸次大きくされる基板部2061の略中央から最頂部までの領域が、基板部2061の背面側へ向けて凸になると共に基板部2061に滑らかに連なる円弧状に湾曲して形成されている(図18(a)参照)。
これによれば、突部2064の最頂部と内筒部材40の外周面とを結ぶ部分は、その距離を短くしつつ、基板部2061の突部が形成されていない領域(図19の上側の領域)及び突部2064の突接高さが低い領域と内筒部材40の外周面とを結ぶ部分に対しては、その距離を長くし且つゴムボリューム大きくすることができる。よって、かかる構成も、車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両左右方向(矢印L,R方向)のばね定数の上昇は抑制しつつ、車両上下方向(矢印U,D方向)のばね定数のみを大きくすることに有効となる。
ここで、内筒部材49に突部を設けることで、車両上下方向のばね定数を大きくすることもできるが、内筒部材40は、振動源側に締結固定され比較的強度が要求される部位であるため、鉄鋼材料やアルミニウム合金から比較的肉厚の円筒状に形成される。そのため、内筒部材40に突部を形成することは、加工コスト及び材料コストの上昇を招く。
これに対し、防振装置2001によれば、平板状体からなる外側部材2060に突部2064を形成するので、プレス加工機による絞り加工を利用して、かかる突部2064を容易に形成することができる。よって、加工コスト及び材料コストの削減を図ることができる。
また、内筒部材40に突部を形成する場合には、突部が中実となり、重量が増加するところ、防振装置2001によれば、平板状体からなる外側部材2060に絞り加工を施すことで、突部2064が形成されるので、重量の増加を抑制しつつ、かかる突部2064を形成することができる。
さらに、突部2064を形成することで、外側部材2060の背面側(図19左側)には、突部2064に対応して凹部が形成され、かかる凹部にブラケット部材2030の一部を内嵌させることができる。これにより、防振脚部2050とブラケット部材2030との係合をより強固として、ブラケット部材2030から防振脚部2050の他端側が抜け出ることを抑制できる。
次いで、図20から図22を参照して、第3実施の形態について説明する。図20(a)は、第3実施の形態における外側部材3060の側面図であり、図20(b)は、外側部材3060の正面図である。また、図21(a)は、図20(b)のXXIa−XXIa線における外側部材3060の断面図であり、図21(b)は、図20(b)のXXIb−XXIb線における外側部材3060の断面図である。
第1実施の形態では、外側部材60の基板部61が背面側に凸の断面円弧状に湾曲して形成される場合を説明したが、第2実施の形態における外側部材2060の基板部2061には、背面側に凸の断面円弧状に湾曲した面から正面側へ向けて突設される突部2061bが2ヶ所に設けられている。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図20及び図21に示すように、外側部材3060は、正面視矩形状に形成される基板部3061を備える。なお、第1実施の形態の場合と同様に、基板部3061の外縁からは、背面側(図20(a)及び図21(a)左側)へ向けて第1壁部62及び第2壁部63が延設される。
基板部3061は、背面側へ向けて凸となり軸心L1(図4(a)参照)を有する円弧状に湾曲して形成され、その正面側(図20(b)紙面手前側)には、一対の突部3064が突設される。一対の突部3064は、基板部3061の板面略中央を挟んだ両側(図20(a)上側および下側)に、向かい合わせの状態で配設されている。また、基板部3061の板面中央(即ち、一対の突部3064を含む領域)には、正面視略矩形状の貫通孔3061aが穿設される。
ここで、一対の突部3064のそれぞれは、第2実施の形態における突部2064と同一に構成されている。即ち、第3実施の形態における外側部材3060は、第2実施の形態における外側部材2060に対し、配設方向(突設高さが変化する方向)を反転させ、向かい合わせの状態となるように、1の突部2064を追加した構成となっている。よって、以下においては、その詳細説明は省略する。
次いで、このように構成された外側部材3060が使用される防振装置3001について、図22を参照して説明する。図22は、防振装置3001の部分拡大断面図であり、図16に対応する。
図22に示すように、防振装置3001は、防振脚部3050の他端側(図22左側)が基板部3061の正面側に加硫接着され、これにより、一対の突部3064が防振脚部3050に埋設されている。基板覆設ゴム3051は、防振脚部3050に連なると共に、基板部3051及び一対の突部3064の外面を一定の厚み寸法で覆う。そのため、外側部材3060の各壁部62,63の対向面間(即ち、基板部3061、一対の突部3064、第1壁部62及び第2壁部63で取り囲まれた部分)に形成される空間S(図示せず、図7(b)参照)には、一対の突部2064に対応する一対の凹部が形成され、かかる一対の凹部のそれぞれにブラケット部材3030の一部が内嵌されている。
防振装置3001によれば、外側部材3060の基板部3061には、一対の突部3064が形成され、それら一対の突部3064は、一方の突部3064の突設高さが基板部3061の略中央から一方の第1壁部62側(図22下側)へ向けて漸次高くなると共に他方の突部3064の突設高さが基板部3061の略中央から他方の第1壁部62側(図22上側)へ向けて漸次高くなるように、向かい合わせに配設される。よって、車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両左右方向(矢印L,R方向)のばね定数の上昇は抑制しつつ、車両上下方向(矢印U,D方向)のばね定数のみを、車両上方向(矢印U方向)へ内筒部材40が変位する場合と車両下方向(矢印D方向)へ内筒部材40が変位する場合との両者において大きくすることができる。
さらに、突部3064を一対形成することで、外側部材3060の背面側(図22左側)には、一対の突部3064に対応して凹部が2ヶ所に分散して形成され、これら2ヶ所の凹部にブラケット部材3030の一部をそれぞれ内嵌させることができる。これにより、防振脚部3050とブラケット部材3030との係合をより強固として、ブラケット部材3030から防振脚部3050の他端側が抜け出ることを抑制できる。
次いで、図23から図25を参照して、第4実施の形態について説明する。図23(a)は、第4実施の形態における外側部材4060の側面図であり、図23(b)は、外側部材4060の正面図である。また、図24(a)は、図23(b)のXXIVa−XXIVa線における外側部材4060の断面図であり、図24(b)は、図23(b)のXXIVb−XXIVb線における外側部材4060の断面図である。
第2実施の形態および第3実施の形態では、外側部材2060,3060の基板部2061,3061の正面側に部分的に突部2064,3064が形成される場合を説明したが、第4実施の形態における外側部材4060は、基板部4061全体により突部が形成されている。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図23及び図24に示すように、外側部材4060は、正面視矩形状に形成される基板部4061を備える。なお、第1実施の形態の場合と同様に、基板部4061の外縁からは、背面側(図23(a)及び図24(a)左側)へ向けて第1壁部62及び第2壁部63が延設される。
基板部4061は、突部正面部4061bと、一対の突部側面部4061cとを備えて形成される。突部正面部4061bは、一対の第1壁部62の間を連結すると共に基板部4061の略中央から一方の第1壁部62(図23(a)及び図24下側)へ向かうに従って突設高さが漸次大きくなるように断面円弧状に湾曲しつつ内筒部材40(図25参照)へ向けて突設される。突部側面部4061cは、突部正面部4061bの両側(図24(a)紙面手前側および紙面奥側)に位置し突部正面部4061b及び第2壁部63を連結すると共に平板状に形成され第2壁部63に面一に連なる。第4実施の形態では、これら突部正面部4061b及び一対の突部側面部4061cにより突部が形成される。
これにより、第4実施の形態では、外側部材4060を全体に滑らかな曲線で形成し、折り曲げ変形される箇所を少なくすることができる。その結果、平板状の外側部材4060に突部を形成する場合であっても、狭い空間(角部)が形成されることを抑制して、外側部材4060と防振脚部4050との間に接着不良が発生することを抑制することができる。また、外側部材4060にプレス加工機による絞り加工を施す際に、その一部に負荷が集中することを抑制して、外側部材4060に割れなどの成形不良が発生することを抑制できる。
次いで、このように構成された外側部材4060が使用される防振装置4001について、図25を参照して説明する。図25は、防振装置4001の部分拡大断面図であり、図16に対応する。
図25に示すように、防振装置4001は、防振脚部4050の他端側(図25左側)が基板部4061の正面側に加硫接着される。基板覆設ゴム4051は、防振脚部4050に連なると共に、基板部4051の外面を一定の厚み寸法で覆う。そのため、外側部材4060の各壁部62,63の対向面間(即ち、基板部4061、第1壁部62及び第2壁部63で取り囲まれた部分)に形成される空間S(図示せず、図7(b)参照)には、基板部4061に対応する凹部が形成され、かかる凹部にブラケット部材4030の一部が内嵌されている。
防振装置4001によれば、外側部材4060の基板部4061は、内筒部材40へ向けて突設されると共にその突設高さが基板部4061の略中央から一方の第1壁部62側へ離間するに従って漸次大きくなるので、車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両左右方向(矢印L,R方向)のばね定数の上昇は抑制しつつ、車両上下方向(矢印U,D方向)のばね定数のみを大きくすることができる。
なお、基板部4061は、最頂部の近傍から他方の第1壁部62(図23(a)及び図24(a)上側)までの領域が、基板部4061の背面側へ向けて凸となる円弧状に湾曲して形成されている(図24(a)参照)。これによれば、基板部4061の最頂部と内筒部材40の外周面とを結ぶ部分は、その距離を短くしつつ、基板部4061の上記領域と内筒部材40の外周面とを結ぶ部分に対しては、その距離を長くし且つゴムボリューム大きくすることができる。よって、かかる構成も、車両前後方向(矢印F,B方向)及び車両左右方向(矢印L,R方向)のばね定数の上昇は抑制しつつ、車両上下方向(矢印U,D方向)のばね定数のみを大きくすることに有効となる。
次いで、図26から図30を参照して、第5実施の形態について説明する。図26(a)は、第5実施の形態における外側部材5060の斜視図であり、図26(b)は、図26(a)の矢印XXVIb方向視における外側部材5060の側面図である。また、図27(a)は、外側部材5060の側面図であり、図27(b)は、外側部材5060の正面図である。
第1実施の形態では、外側部材60の基板部61から延設された第1壁部62及び第2壁部63が周方向に連続する場合を説明したが、第5実施の形態における外側部材5060では、第1壁部62の一部に金具切欠き5065が設けられ、第1壁部62及び第2壁部63による周方向への連続性が一部で分断されている。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、第5実施の形態における外側部材5060と第1実施の形態における外側部材60との違いは、金具切欠き5065及び金具凹部5066の有無のみであり、その他の構成については同一であるので、各構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図26及び図27に示すように、一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62には、金具切欠き5065が設けられている。金具切欠き5065は、第1壁部62の幅方向(図26(b)左右方向)中央を、第2壁部63に連結される両端部分を残しつつ、基板部61に達する位置まで切欠いた1の凹欠部として形成される。
なお、金具切欠き5065が設けられる第1壁部62は、孔63aが偏って配置される側(図27(a)下側)に位置する第1壁部62であり、これは、注入ゲート痕30a(図2(a)参照)に近い側の第1壁部62に対応する。
基板部61には、一対の金具凹部5066が設けられている。一対の金具凹部5066は、金具切欠き5065の幅方向(図26(b)左右方向)両側に位置し、貫通孔61aへ向けて基板部61に凹設される。これにより、プレス加工機による絞り加工を行う場合に、金具切欠き5065が設けられていても、外側部材5060の成形性を向上させることができる。即ち、金具切欠き5065の両側に残る第1壁部62の成形性を向上させることができる。
次いで、第5実施の形態における第1成形体5100について、図28及び図29を参照して説明する。図28は、第1成形体5100の部分拡大断面図であり、図7(b)に対応する。また、図29は、図28の矢印XXIX方向視における第1成形体5100の側面図である。
ここで、第5実施の形態における第1成形体5100と第1実施の形態における第1成形体100との違いは、ゴム切欠き5055の有無のみであり、その他の構成については同一であるので、各構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図28及び図29に示すように、一対の第1壁覆設ゴム52の内の一方の第1壁覆設ゴム52には、ゴム切欠き5055が設けられている。即ち、第1壁覆設ゴム52は、第1壁部62の外面を一定の厚み寸法で覆っているので、第1壁部62に形成された金具切欠き5065に対応する位置に、その金具切欠き5065よりも若干(覆設されるゴムの厚み寸法の分だけ)小さな面積の1の凹欠部として、ゴム切欠き5055が形成される。
なお、ゴム切欠き5055の底面(図28及び図29下側面)は、図28に示すように、基板覆設ゴム51の上面と面一に連なっている。これにより、後述するように、樹脂材料の流動性が向上される。また、ゴム切欠き5055は、金具切欠き5065に対応する位置に設けられるので、かかるゴム切欠き505が設けられる第1壁覆設ゴム52は、一対の第1壁覆設ゴム52の内の注入ゲート痕30a(図2(a)参照)に近い側の第1壁覆設ゴム52となる。
次いで、第1成形体5100をブラケット部材30にインサート成形する樹脂成形工程について、図30を参照して説明する。図30(a)及び図30(b)は、樹脂成形工程における樹脂材料の流動方向を矢印により示す模式図であり、図30(a)は、防振装置5001を側面視した場合の模式図に対応し、図30(b)は、樹脂成形金型400に第1成形体5100が設置された状態の模式図に対応する。
図30に示すように、樹脂成形工程では、まず、樹脂成形金型400に第1成形体5100を設置して型締めする。これにより、樹脂材料を充填して固化させるための空間であるキャビティCが形成されるので、かかるキャビティC内に注入ゲート(図30(b)では注入ゲート痕30aとして図示する)から樹脂材料を注入(射出)する。注入された樹脂材料は、図中に矢印で示すように、注入ゲートから左右に流動し、ブッシュが圧入される圧入孔の周りに充填されると共に、第1成形体5100の両側面を上昇しつつ、ブラケット部材30の側壁に対応する部分に充填され、最後に最頂部で合流されることで、ブラケット部材30の天井部に対応する部分に充填される。
この場合、第1成形体5100には、一対の第1壁覆設ゴム52の内の注入ゲート側に位置する第1壁覆設ゴム52にゴム切欠き5055が形成されている。よって、注入ゲートから樹脂成形金型400のキャビティC内に注入された樹脂材料が第1成形体5100の両側面を上昇する際には、樹脂材料の流動圧をゴム切欠き5055により逃がすことができ、かかる樹脂材料により第1壁覆設ゴム52が押圧されることを抑制できる。これにより、防振脚部50の位置ズレや第1壁覆設ゴム52の変形によるシール不良を引き起こし難くして、第2壁覆設ゴム53の近傍に樹脂バリが形成されることを抑制できる。その結果、第2壁覆設ゴム53による弾性的なストッパ機能を確保することができる。
また、このように、ゴム切欠き5055を備えることで、樹脂材料の流動が阻害されることを抑制して、その流動性を向上させることができるので、その分、樹脂材料の注入圧力を下げることができる。
さらに、製造された防振装置5001によれば、外側金具5060には、第1壁部62の両端部分を残した状態で金具切欠き5065が形成されているので(図26参照)、その分、ブラケット部材30との係合面積(図16の長さLを有する領域の面積)を確保して、防振脚部50の他端側がブラケット部材30から抜け出ることを防止できる。
特に、本実施の形態では、金具切欠き6065の両側に残された第1壁部62の両端部分は、第2壁部63にそれぞれ接続されているので、その分、金具強度を確保することができる。よって、ブラケット部材30に対し、より強固に係合することができるので、防振脚部50の他端側がブラケット部材30から抜け出ることをより確実に防止できる。
また、第1壁部62の両端部分を残した状態で金具切欠き6065が設けられることで、ゴム切欠き5055を1の凹欠部として形成することができるので、防振装置5001の歩留まりの向上を図ることができる。即ち、1の第1壁覆設ゴム52に複数のゴム切欠きが形成されていると、樹脂材料が第1成形体5100の両側面を上昇する際に、樹脂材料の流動が複数に分岐するため、樹脂材料の融合部が形成され、ウェルドラインの発生を招く。これに対し、本実施の形態では、ゴム切欠き5055が1の凹欠部として形成されることで、樹脂材料の融合部が形成されることを抑制して、歩留まりの向上を図ることができる。
次いで、図31を参照して、第6実施の形態について説明する。図31は、第6実施の形態における外側部材6060の斜視図である。
第5実施の形態では、外側部材5060の一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62のみに金具切欠き5065を設ける場合を説明したが、第6実施の形態における外側部材6060は、一対の第1壁部62の両方に金具切欠き5065が設けられている。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、第6実施の形態における外側部材6060と第5実施の形態における外側部材5060との違いは、金具切欠き5065及び金具凹部5066の配設数のみであり、その他の構成については同一である。即ち、第6実施の形態における外側部材6060は、第5実施の形態における外側部材5060に対し、配設方向を反転させ、向かい合わせの状態となるように、金具切欠き5065及び金具凹部5066を追加した構成となっている。よって、同一の構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
なお、外側部材6060は、第1壁部62の外面が第1壁覆設ゴム52により一定の厚み寸法で覆われているので、第6実施の形態における第1成形体(図示せず)には、一対の第1壁覆設ゴム52のそれぞれに(即ち、注入ゲート側に位置する第1壁覆設ゴム52のみでなく、注入ゲートから離間する側の第1壁覆設ゴム52にも)ゴム切欠き5055(図28及び図29参照)が形成される。
よって、これら2つのゴム切欠き5055により、一対の第1壁覆設ゴム52と一対の第2壁覆設ゴム53に囲まれた空間S(図28参照)に樹脂材料の入口と出口とを形成することができる。よって、第1成形体をブラケット部材30にインサート成形する場合には、注入ゲートから樹脂成形金型400のキャビティC内に注入された樹脂材料が、第1成形体の両側面を上昇する際に(図30参照)、その樹脂材料の流動をよりスムーズとして、かかる樹脂材料により第1壁覆設ゴム52が押圧されることを抑制できる。
これにより、防振脚部50の位置ズレや第1壁覆設ゴム52の変形によるシール不良を引き起こし難くして、第2壁覆設ゴム53の近傍に樹脂バリが形成されることを抑制できる。その結果、第2壁覆設ゴム53による弾性的なストッパ機能を確保することができる。また、このように、ゴム切欠き5055を2ヶ所に備えることで、樹脂材料の流動が阻害されることを抑制して、その流動性をより一層向上させることができるので、その分、樹脂材料の注入圧力を下げることができる。
次いで、図32から図35を参照して、第7実施の形態について説明する。図32(a)は、第7実施の形態における外側部材7060の斜視図であり、図32(b)は、図32(a)の矢印XXXIIIb方向視における外側部材7060の側面図である。また、図33(a)は、外側部材7060の側面図であり、図33(b)は、外側部材7060の正面図である。
第1実施の形態では、外側部材60の基板部61から延設された第1壁部62及び第2壁部63が周方向に連続する場合を説明したが、第5実施の形態における外側部材7060では、第1壁部62及び第2壁部63による周方向への連続性は維持しつつ、第1壁部62の一部に金具切欠き7065が設けられている。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、第7実施の形態における外側部材7060と第1実施の形態における外側部材60との違いは、金具切欠き7065の有無のみであり、その他の構成については同一であるので、各構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図32及び図33に示すように、一対の第1壁部62の内の一方の第1壁部62には、金具切欠き7065が設けられている。金具切欠き7065は、第1壁部62の幅方向(図32(b)左右方向)中央において、その第1壁部62の延設先端側(図32(b)上側)のみを切欠くことで、第2壁部63に連結される両端部分とそれら両端部分を連結すると共に基板部61に連結される部分とを残した1の凹欠部として形成される。
なお、金具切欠き7065が設けられる第1壁部62は、孔63aが偏って配置される側(図33(a)下側)に位置する第1壁部62であり、これは、注入ゲート痕30a(図2(a)参照)に近い側の第1壁部62に対応する。
次いで、第7実施の形態における第1成形体7100について、図34及び図35を参照して説明する。図34は、第1成形体7100の部分拡大断面図であり、図7(b)に対応する。また、図35は、図34の矢印XXXV方向視における第1成形体7100の側面図である。
ここで、第7実施の形態における第1成形体7100と第1実施の形態における第1成形体100との違いは、ゴム切欠き7055の有無のみであり、その他の構成については同一であるので、各構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図34及び図35に示すように、一対の第1壁覆設ゴム52の内の一方の第1壁覆設ゴム52には、ゴム切欠き7055が設けられている。即ち、第1壁覆設ゴム52は、第1壁部62の外面を一定の厚み寸法で覆っているので、第1壁部62に形成された金具切欠き7065に対応する位置に、その金具切欠き7065よりも若干(覆設されるゴムの厚み寸法の分だけ)小さな面積の1の凹欠部として、ゴム切欠き7055が形成される。
なお、ゴム切欠き7055の底面(図34及び図35下側面)は、図34に示すように、基板覆設ゴム51の上面よりも一段高い位置に配設されている。また、ゴム切欠き7055は、金具切欠き7065に対応する位置に設けられるので、かかるゴム切欠き505が設けられる第1壁覆設ゴム52は、一対の第1壁覆設ゴム52の内の注入ゲート痕30a(図2(a)参照)に近い側の第1壁覆設ゴム52となる。
よって、注入ゲートから樹脂成形金型400のキャビティC内に注入され樹脂材料が第1成形体7100の両側面を上昇する際には(図30参照)、樹脂材料の流動圧をゴム切欠き7055により逃がすことができ、かかる樹脂材料により第1壁覆設ゴム52が押圧されることを抑制できる。これにより、防振脚部50の位置ズレや第1壁覆設ゴム52の変形によるシール不良を引き起こし難くして、第2壁覆設ゴム53の近傍に樹脂バリが形成されることを抑制できる。その結果、第2壁覆設ゴム53による弾性的なストッパ機能を確保することができる。
また、このように、ゴム切欠き7055を備えることで、樹脂材料の流動が阻害されることを抑制して、その流動性を向上させることができるので、その分、樹脂材料の注入圧力を下げることができる。
さらに、製造された第7実施の形態における防振装置によれば、外側金具7060には、第1壁部62の両端部分とそれら両端部分を連結すると共に基板部61に連結される部分とを残した状態で金具切欠き7065が形成されているので(図32参照)、その分、ブラケット部材30との係合面積(図16の長さLを有する領域および長さLを有さないがブラケット部材30に係合する領域の面積)を確保して、防振脚部50の他端側がブラケット部材30から抜け出ることを防止できる。
特に、本実施の形態では、金具切欠き6065の両側に残された第1壁部62の両端部分が第2壁部63にそれぞれ接続されるだけでなく、それら両端部分が第1壁部62の基板部61側の部分により連結されているので、その分、金具強度を確保することができる。よって、ブラケット部材30に対し、より強固に係合することができるので、防振脚部50の他端側がブラケット部材30から抜け出ることをより確実に防止できる。
また、ゴム切欠き7055を1の凹欠部として形成することができるので、第1成形体7100をブラケット部材30にインサート成形する際には、樹脂材料の融合部が形成されることを抑制して、防振装置の歩留まりの向上を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態では、孔63aを一対の第2壁部63の合計4箇所に穿設する場合を説明したが、合計3箇所以下であっても良く、或いは、合計5箇所以上であっても良い。例えば、一対の第2壁部63の一方には2箇所に、他方には1箇所に穿設する構成でも良い。最小の配設個数により、外側部材60のゴム加硫工程における回転および倒れを確実に防止できるからである。
なお、上記各実施の形態のように、一対の第2壁部63のそれぞれに形成する孔63aの配設個数を同数とすることで、絞り加工や穴あけ加工を対称に行い得るようにして、その加工精度の向上を図ることができる。
上記各実施の形態では、外側部材60〜7060を、1枚の平板状体(平らな素板)からプレス加工機を用いた絞り加工によりプレス成形する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の成形方法を採用することは当然可能である。なお、他の成形方法としては、例えば、複数の板材料を溶接固定して成形する方法や直方体の素材から切削可能による削り出しにより成形する方法などが例示される。
上記各実施の形態では、対向する一対の第1壁部62の全体が基板部61,2061〜4061から離間するに従って末広がり状に延設される(即ち、一対の第1壁部62の全体がその対向間隔を拡大させる)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対の第1壁部62の少なくとも一部がブラケット部材30に係合可能であれば良い。なお、係合可能とは、第1壁部62がブラケット部材30内から抜き取られる方向へ外側部材60〜7060が変位する場合に、第1壁部62の抜き取り方向への移動がブラケット部材30の樹脂材料により規制されることを意味する。従って、例えば、一対の第1壁部62は、基板部61側(図4(a)右側)の部分が互いに平行に形成され、残りの部分(基板部61と反対側の部分、図4(a)左側)のみが末広がり状(対向間隔が漸次大きくなる形状)に形成されていても良い。或いは、一対の第1壁部62は、互いに平行に形成され第2壁部63と同じ高さ位置まで延設される部位と、その部位の延設端(図4(a)左側端)から外方または内方へ向けて折り返されるフランジ状の部位とを有して形成されていても良い。いずれの形状であっても、ブラケット部材30と係合可能になるからである。
上記各実施の形態では、一対の第1壁部62と一対の第2壁部63との端部同士が連結される(周方向に連続して形成される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら第1壁部62及び第2壁部63の端部同士の一部または全部を連結せずに形成することは当然可能である。
上記各実施の形態では、基板部61,2061〜4061に貫通孔61a,2061a〜4061aを貫通形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる貫通孔61a61a,2061a〜4061aの形成を省略しても良い。また、貫通孔61a61a,2061a〜4061aの形状は、正面視矩形状である必要はなく、円形や楕円形などの曲線形状であっても良く、或いは、三角形や五角形以上の多角形であっても良い。また、その配設個数も任意の個数を設定できる。
上記第1実施の形態では、外側部材60を防振脚部50の他端側に埋設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる外側部材60の埋設を省略しても良い。即ち、ゴム加硫工程において、内筒部材40のみをゴム加硫金型300に設置し、外側部材60を省略した状態で第1成形体100を加硫成形し、次いで、その第1成形体100を樹脂成形金型400に設置しインサート成形することで、防振装置1を製造しても良い。この場合でも、ゴムバリBRを樹脂材料に埋設することができるので、第1実施の形態で説明したゴムバリBRを樹脂材料に埋設することによる効果を同様に奏することができる。
なお、この場合には、ゴム下型ピン301bや樹脂下型ピン401bなどの各ピン301b,302b,401b,402b、及び、ゴム下型座部301cや樹脂下型座部401cなどの各座部301c,302c,401c,402cは省略する。この場合であっても、防振脚部50の他端側に窪んで形成される空間S(図7参照)へのブラケット部材30の内嵌および第1壁覆設ゴム52の傾斜によるブラケット部材30への係合(図16参照)により、ブラケット部材30から防振脚部50が抜け出ることを、外側部材60が埋設される場合と同様に、抑制することができる。
上記第5実施の形態および第6実施の形態では、基板部61に一対の金具凹部5066を凹設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる一対の金具凹部5066の凹設を省略しても良い。
上記第7実施の形態では、金具切欠き7065及びゴム切欠き7055が一対の第1壁部52の内の一方の第1壁部52のみに設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第6実施の形態の場合と同様に、金具切欠き7065及びゴム切欠き7055を一対の第1壁部52のそれぞれに設けても良い。なお、この場合には、金具切欠き7065及びゴム切欠き7055の形状(面積)は、一方の第1壁部52側と他方の第1壁部52側とで異なる形状(面積)であっても良い。第6実施の形態の場合も同様である。
上記第5実施の形態から第7実施の形態では説明を省略したが、ゴム切欠き部5055,7055の面積(図29及び図35に示す正面視における面積)は、かかるゴム切欠き5055,7055が形成される前の第1壁覆設ゴム52の面積に対して、1%以上、且つ、50%以下であることが好ましく、15%以上、且つ、35%以下であることがさらに好ましい。ゴム切欠き部5055,7055の面積を所定量以上確保することで、樹脂材料の流動性の向上を図ることができる一方で、ゴム切欠き部5055,7055の面積を所定量以下とすることで、外側金具5060〜7060(第1壁部62)の金具強度を確保できるからである。なお、金具切欠き部5065,7065の面積についても同様である。
上記各実施の形態の内の1の実施の形態と他の実施の形態と組み合わせて構成することは当然可能である。かかる組み合わせの一例としては、例えば、第1実施の形態において、外側部材60を、第2から第4実施の形態における外側部材2060〜4060のいずれか、或いは、第5実施の形態から第7実施の形態における外側部材5060〜7060のいずれかに代えて、防振装置1を構成するものが例示される。また、例えば、第2から第4実施の形態における外側部材2060〜4060のいずれかと、第5実施の形態から第7実施の形態における外側部材5060〜7060のいずれかとを組み合わせて、突部2064,3064或いは突部としての基板部4061と、金具切欠き5065,7065とを備える外側部材を構成するものが例示される。