以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における防振装置1の平面図である。なお、防振装置1は自動車用のトルクロッドを図示している。
図1に示すように防振装置1は、図示しないエンジン側(振動発生側)に取着される第1ブッシュ10と、図示しない車体側(振動受け側)に取着される第2ブッシュ20と、これら第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を互いに連結する連結部材30とを備えている。第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20は連結部材30により軸方向が互いに直交するように連設されており、加速時におけるエンジンのロール方向への変位や前後方向の変位を規制し得るように構成されている。
第1ブッシュ10は、エンジン側に取着される第1内筒11と、その第1内筒11の外周側に位置する第1外筒12と、それら第1内筒11及び第1外筒12の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第1防振基体13とを備えている。
第1内筒11は金属材料から筒状に構成される部材であり、中央に穿設された挿通孔11aにボルト等の締結部材(図示せず)が挿通され、その締結部材を介してエンジン側に締結固定される。第1外筒12は金属材料から筒状に構成されると共に連結部材30と一体に連設され、第1内筒11の外周側に所定間隔を隔てて位置する。
第1防振基体13は、ゴム状弾性材により構成される部材である。第1内筒11及び第1外筒12に対して一体に加硫接着され、第1内筒11と第1外筒12との間を周方向全周にわたって連結している。第1防振基体13には、第1内筒11を挟む対角位置に第1防振基体13を軸方向(図1紙面垂直方向)に貫通するすぐり部13aが形成されている。
第1注入跡部14は、第1防振基体13を加硫成形する際に、後述する加硫金型(上型60)に形成された注入孔62(図3参照)と逃がし孔64とにより形成される部位であり、第1防振基体13の一方の軸方向端面(図1紙面垂直方向手前)の軸方向に形成されている。また、第1注入跡部14は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向(図1左右方向)に対し直交する方向(図1上下方向)、且つ、第1ブッシュ10の軸直角方向の投影で第1内筒11に重なる領域pに、第1内筒11を挟んで各々1個ずつ形成されている。
第2ブッシュ20は、車体側に取着される第2内筒21と、その第2内筒21の外周側に位置する第2外筒22と、それら第2内筒21及び第2外筒22の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第2防振基体23とを備えている。
第2内筒21は金属材料から筒状に構成される部材であり、中央に穿設された挿通孔にボルト等の締結部材(図示せず)が挿通され、その締結部材を介して車体側に締結固定される。第2外筒22は金属材料から筒状に構成されると共に連結部材30と一体に連設され、第2内筒21の外周側に所定間隔を隔てて位置する。第2外筒22は、軸方向長(図1上下方向)が第2内筒21の軸方向長より短く形成されており、内径(図1左右方向)が第1外筒12の内径より小さく形成されている。
第2防振基体23は、ゴム状弾性材により構成される部材である。第2内筒21及び第2外筒22に対して一体に加硫接着され、第2内筒21と第2外筒22との間を周方向全周にわたって連結している。第2防振基体23は、全体の軸方向長(図1上下方向)が第2外筒22の軸方向長より長く形成されており、軸方向端面が第2外筒22の軸方向端面より軸方向外側(図1上側および下側)に突出して位置している。
第2注入跡部24は、第2防振基体23を加硫成形する際に、後述する加硫金型(上型60)に形成された注入孔66(図4参照)と逃がし孔68とにより形成される部位であり、第2外筒22の軸方向端面より軸方向外側(図1上側および下側)に全体が突出する第2防振基体23の軸方向端面の外周面(図1紙面垂直方向手前)に形成されている。本実施の形態では、第2注入跡部24は、第2防振基体23の軸方向端面の外周面に第2外筒22を挟んで各々1箇所ずつ形成されている。具体的には、第2注入跡部24は、第2防振基体23の軸方向端面の外周面の外周方向に凸起する凸起部23aに形成されている。
連結部材30は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を連結するための部材であり、金属材料からロッド状に構成されている。連結部材30は、第1ブッシュ10の軸方向(図1紙面垂直方向)と第2ブッシュ20の軸方向(図1上下方向)とが互いに直交するように第1外筒12及び第2外筒22と一体に連設されている。このように第1ブッシュ10の軸方向(図1紙面垂直方向)と第2ブッシュ20の軸方向(図1上下方向)とが互いに直交する関係にあっても、防振装置1の第1注入跡部14及び第2注入跡部24は、第1ブッシュ10の軸方向(図1紙面垂直方向)に沿う一方向から視認できる位置に配置されている。
次に、図2から図4を参照して、防振装置1が製造される加硫金型(下型50、上型60及びランナープレート70)について説明する。なお、図2から図4は、加硫金型の下型50及び上型60が型閉めされると共に、第1内筒11、第2内筒21、第1外筒12及び第2外筒22を連設する連結部材30がセットされて形成されたキャビティ内にゴム状弾性材が充填された状態を図示する。図2は防振装置1及び加硫金型(下型50及び上型60)の断面図である。第1内筒11は、軸方向長(図2上下方向)が第2外筒12の軸方向長より大きく設定されている。
図2に示すように、下型50は、上型60に対して上下(図2上下方向)に移動することで型閉め及び型開き可能に構成される部材である。下型50の上面に、第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22が嵌合保持される嵌合孔部50a,50c,50d,50e及び嵌合段部50g(図4参照)、第1防振基体13及び第2防振基体23が成形されるキャビティの一部を構成する成形面50b,50f(図4参照)が凹設されている。
嵌合孔部50aは、第1内筒11の軸方向端部が嵌合保持される部位であり、支持ピン51が中央に突設されている。支持ピン51は、第1内筒11の挿通孔11aに嵌入し第1内筒11を係止する部材である。成形面50bは、キャビティの一部を構成し、第1防振基体13の軸方向端面(図2下側)を成形するための湾曲面である。
成形面50bは、第1ブッシュ10(図1参照)及び第2ブッシュ20を結ぶ方向(図2左右方向)に沿って嵌合孔部50aから外周方向に向かうにつれ上昇傾斜し、軸方向に湾入しつつ嵌合孔部50cに連設されている。嵌合孔部50c,50d,50eは、第1外筒12の軸方向端部、連結部材30、第2外筒22の外周面(軸方向端部の一部)がそれぞれ嵌合保持される部位である。
上型60は、下型50に対し型閉め及び型開き可能に構成される部材であり、下型50の上側に対向配置されている。下型50及び上型60を型閉めした状態で、第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22を押圧挟持する被嵌部60a,60c,60d,60e、60g(図4参照)、第1防振基体13及び第2防振基体23が成形されるキャビティの一部を構成する成形面60b,60f(図4参照)が、上型60の下面に凹設されている。
被嵌部60aは、第1内筒11の軸方向端部を押圧挟持する部位であり、支持ピン51と同心に対向配置された内筒押え61が中央に突設されている。内筒押え61は、第1内筒11の挿通孔11aに嵌入し第1内筒11を係止する部材である。成形面60bは、キャビティの一部を構成し、第1防振基体13の軸方向端面(図2上側)を成形するための湾曲面である。
成形面60bは、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向(図2左右方向)に沿って被嵌部60aから外周方向に向かうにつれ下降傾斜し、軸方向に湾入しつつ被嵌部60cに連設されている。被嵌部60c,60d,60e,60g(図4参照)は、第1外筒11の軸方向端部、連結部材30、第2外筒22の外周面(軸方向端部の一部)をそれぞれ押圧挟持する部位である。
図2に示すように、下型50及び上型60にそれぞれ形成された成形面50b,60bの軸方向間隔(図2上下方向)は、第1外筒12に近づくと第1外筒12の軸方向長より短く形成されている。これにより、第1防振基体13の第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向(図2左右方向)に位置する部位に、第1防振基体13の軸方向端面から軸方向(図2上下方向)に向かって凹設されるすぐり部13bが形成される。
また、下型50及び上型60に内嵌固定される入れ子型(図示せず)により、第1防振基体13の軸方向端面を貫通するすぐり部13a(図1参照)が形成される。第1防振基体13の第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向に位置する部位にすぐり部13a,13bを形成することにより、第1防振基体13の第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向を低ばね化することができる。その結果、防振装置1に入力される連結部材30の長手方向の振動を抑制する防振性能を向上させることができる。
次に図3を参照して、第1防振基体13について説明する。図3は図2のIII−III線における防振装置1及び加硫金型(下型50、上型60及びランナープレート70)の断面図である。ランナープレート70は、上型60の上面に載設される部材であり、下型50及び上型60の型開きのときに上型60より分離可能に構成されている。ランナープレート70は、ゴム状弾性材等の成形材料の注入用ランナー溝71と、エア及び成形材料の逃がし溝72とが下面に形成されている。注入用ランナー溝71は、下型50及び上型60の型閉めのときに、成形材料の射出装置(図示せず)の射出口と一端が連通し、他端が上型60に形成された注入孔62に連通される。逃がし溝72は、下型50及び上型60の型閉めのときに、上型60に形成された逃がし孔64に一端が連通し、他端が加硫金型(上型60)の側面に開放されている。
注入孔62は成形材料が注入される流路であり、上型60の上面から成形面60bまで上型60の上下方向に貫通形成されている。注入孔62は、上型60の下面に向かうにつれ縮径するテーパー状に形成されると共に、成形面60bの近傍にくびれ形状をなすゲート63が形成されている。成形後の型抜きのときに、成形された第1防振基体13と成形材料の不要部分とがゲート63で切り離され、第1注入跡部14(図1参照)が形成される。
逃がし孔64は、エア及び余剰分の成形材料が流出する流路であり、上型60の上面から成形面60bまで上型60の上下方向に貫通形成されている。逃がし孔64は、上型60の下面に向かうにつれ縮径するテーパー状に形成されると共に、成形面60bの近傍にくびれ形状をなすゲート65が形成されている。成形後の型抜きのときに、成形された第1防振基体13と成形材料の不要部分とがゲート65で切り離され、第1注入跡部14(図1参照)が形成される。
注入孔62及び逃がし孔64は、キャビティの軸心(第1内筒11)を挟んで略180°相対する位置であって、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向(図3紙面垂直方向)に対し直交する方向に形成されている。また、注入孔62及び逃がし孔64と連通するキャビティを構成する成形面50bと成形面60bとの軸方向間隔(図3上下方向)は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向に対し直交する方向(図3左右方向)に沿って、軸心(第1内筒11)に向かうにつれ漸次増加している。これにより、第1防振基体13の第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向に対し直交する方向(図3左右方向)、且つ、第1ブッシュ10の軸直角方向の投影で第1内筒11に重なる領域p(図1参照)を高ばね化することができる。この領域pに第1注入跡部14を形成することにより、防振装置1の使用時における第1注入跡部14の付根の変形量を抑制できる。
ここで、第1防振基体13に第1注入跡部14が起立状態で残っていると、第1注入跡部14が第1防振基体13の表面に存在する異物のように挙動し、特に、第1注入跡部14の付根の箇所に応力集中が発生する。これに起因してその付根に亀裂が発生し、その亀裂が進行すると、防振装置1の耐久性が低下する要因となるおそれがある。
これに対し、第1防振基体13の第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を結ぶ方向と比較して領域p(図1参照)を相対的に高ばね化し、この領域pに第1注入跡部14を形成することにより、第1注入跡部14の付根に亀裂を生じ難くすることができる。これにより防振装置1の耐久性が低下することを防止できる。
次に図4を参照して、第2防振基体23について説明する。図4は図2のIV−IV線における防振装置1及び加硫金型(下型50、上型60及びランナープレート70)の断面図である。嵌合孔部50eは、第2外筒21の軸方向の両端部が嵌合保持される部位であり、下型50の上面に形成され成形面50fに連設されている。成形面50fは、第2防振基体23の軸方向端面を成形するための面であり、キャビティ全体の軸方向長(図4左右方向)が、第2外筒22が嵌合される嵌合孔部50eの軸方向長より長くなるように形成されている。嵌合段部50gは、第2内筒21の軸方向の両端部が嵌合保持される部位であり、上下方向に延びる成形面50fから軸方向外側に突出するように段差を付けて成形面50fに連設されている。
被嵌部60eは、第2外筒21の外周面を押圧挟持する部位であり、上型60の下面に形成されている。被嵌部60eの軸方向の両側に成形面60fが連設されている。成形面60fは、第2防振基体23の軸方向端面を形成するキャビティを形成するための面であり、キャビティ全体の軸方向長(図4左右方向)が、第2外筒22が被嵌される被嵌部60eの軸方向長より長くなるように形成されている。成形面60fの上端に、被嵌部60eの上端の軸方向両側に連設される凹陥部60f1,60f2が凹設されている。被嵌部60gは、第2内筒21の軸方向の両端部を押圧挟持する部位であり、軸方向外側に突出するように段差を付けて成形面60fに連設されている。
注入孔66は、上端が注入用ランナー溝73に連通し、上型60を上下方向に貫通し、ゲート67を介して下端が凹陥部60f1に連通している。逃がし孔68は、逃がし用ランナー溝74に上端が連通し、上型60を上下方向に貫通し、ゲート69を介して下端が凹陥部60f2に連通している。成形材料は注入孔66から注入されてキャビティに充填され、逃がし孔68から余剰分が流出する。成形後の型抜きのときに、成形された第2防振基体23と成形材料の不要部分とがゲート67,69で切り離され、第2注入跡部24が形成される。
ここで、注入孔66及び逃がし孔68は、第2外筒22を挟んで略180°相対する位置に形成されており、ゲート67,69は第2外筒22の軸方向端面の軸方向外側に形成されている。これにより、第2注入跡部24を、第2外筒22の軸方向端面より軸方向外側に突出した第2防振基体23の外周面に形成することができる。第2防振基体23に第2注入跡部24が突起状に残ると、その付根の箇所に、第2防振基体23の弾性変形により応力集中が起こり易く、それに起因して亀裂が発生し易い。
ところが、第2外筒22の軸方向端面より軸方向外側に位置する第2防振基体23の外周面に作用する応力は小さいので、その外周面に第2注入跡部24を形成することにより、第2注入跡部24の付根の箇所に亀裂を生じ難くできる。その結果、第2防振基体23に亀裂が生じて耐久性が低下することを防止できる。
また、上型60は、成形面60fの上端に凹設されると共に被嵌部60eの軸方向両側に連設される凹陥部60f1,60f2を備え、この凹陥部60f1,60f2にゲート67,69が連通している。成形材料が凹陥部60f1,60f2に充填されることにより、第1外筒22の軸方向端面より軸方向外側に突出する第2防振基体23の外周面に凸起する凸起部23a(図1参照)が形成され、この凸起部23aに第2注入跡部24が形成される。凸起部23aが形成された第2防振基体23の外周面に作用する応力は小さく、さらに、凸起部23aは曲率を第2注入跡部24の曲率に比べて小さくできるので、凸起部23aの応力集中は緩和される。その結果、第2注入跡部24の応力集中も抑制できる。このように、凸起部23aに第2注入跡部24を形成することにより、第2注入跡部24の付根に亀裂をさらに生じ難くできる。
次に、以上説明した加硫金型(下型50、上型60及びランナープレート70)による防振装置1の製造方法について説明する。第1内筒11及び第2内筒21の外周面、第1外筒12及び第2外筒22の内周面に接着剤を塗布した後、上型50と下型60とが離間した型開き状態において、下型50の嵌合孔部50e(図4参照)に第2外筒22を嵌合しつつ嵌合段部50gに第2内筒21を嵌合し、嵌合孔部50c,50d(図2参照)に第1外筒12及び連結部材30を嵌合する。また、第1内筒11を支持ピン51に嵌合する。次いで、上型60に対して下型50を上下(図2上下方向)に移動させ、下型50及び上型60を閉じ合わせる。これにより、第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22が、上型60の被嵌部60a,60c,60d,60e,60gで押圧される。その結果、第1内筒11及び第2内筒12の周囲に、下型50及び上型60並びに第1外筒12及び第2外筒22に囲まれたキャビティが形成される。
ランナープレート70を閉じた後、射出装置(図示せず)から注入用ランナー溝71,73及び注入孔62,66を通じて、所定量の成形材料を所定の圧力で注入する。注入された成形材料は、第1内筒11及び第1外筒12、第2内筒21及び第2外筒22の間に充填される。成形材料の流動および充填に伴ってエアが逃がし孔64,68から排出される。余剰分の成形材料は逃がし孔64,68からオーバーフローする。
成形材料がキャビティに充填された後、成形材料を加圧・加熱状態に一定時間保持することにより成形材料(ゴム状弾性材)が加硫反応し、同時に第1内筒11及び第1外筒12、第2内筒21及び第2外筒22に対して一体に加硫接着される。これにより第1防振基体13及び第2防振基体23が成形される。
成形後、下型50及び上型60を開くと共に、ランナープレート70を上型60の上面から分離させる。その際、成形材料をゲート63,65,67,69の箇所で切り離す。このときに第1注入跡部14及び第2注入跡部24が形成される。下型50の支持ピン51を上方へ突き上げることにより、第1防振基体13及び第2防振基体23が成形された防振装置1を下型50から離脱させることができ、防振装置1を加硫金型(下型50、上型60及びランナープレート70)から取り出すことができる。
以上説明したように、第1防振基体13の注入孔62及び逃がし孔64、第2防振基体23の注入孔66及び逃がし孔68を、第1ブッシュ10の軸方向に沿う一方向に設けることで、防振装置1の第1注入跡部14及び第2注入跡部24が、第1ブッシュ10の軸方向に沿う一方向から視認できる位置に配置される。その結果、上型60の注入孔62,66や逃がし孔64,68の引き回しやゲート63,65,67,69の構造を簡素化できる。これにより、加硫金型に注入されたゴム状弾性材をゲート63,65,67,69で詰まり難くできる。これにより加硫金型(上型60)の寿命を向上できる。その結果、加硫成形に要するコストを削減できる。
また、第1防振基体13の注入孔62及び逃がし孔64、第2防振基体23の注入孔66及び逃がし孔68を第1ブッシュ10の軸方向に沿う一方向に位置させることで、加硫金型(下型50及び上型60)における型割り(分割)の方向を、第1ブッシュ10と第2ブッシュ20とで異ならせることなく、第1ブッシュ10の軸方向に沿う一方向にすることができる。
特に防振装置1では、第1注入跡部14は第1防振基体13の軸方向端面の軸方向に形成され、第2注入跡部24は第2防止基体23の軸方向端面が第2外筒22の軸方向端面より軸方向外側に位置する外周面に形成されている。これにより、加硫金型の型割り(分割)方向を第1ブッシュ10の軸方向と一致させることができる。その結果、加硫金型の構造を簡素化することができ、加硫金型のコストを削減できる。また、加硫金型の構造を簡素化できるので、型組みや型ばらしを含む成形作業を簡素化できる。これにより防振装置1の加硫成形に要するコストを削減できる。さらに、加硫金型(下型50及び上型)の構造を簡素化できることで、加硫金型1個当たりの防振装置1の取り個数を多くすることができ、防振装置1の製造コストを削減できる。
次に第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1防振基体13の軸方向端面の軸方向に第1注入跡部14が形成され、第2防振基体23の外周面の外周方向に第2注入跡部24が形成される場合について説明した。これに対し、第2実施の形態では、第1防振基体113の軸方向端面の外周方向に第1注入跡部114が形成され、第2防振基体123の軸方向端面の軸方向に第2注入跡部124が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第2実施の形態における防振装置101の側面図である。
図5に示すように防振装置101は、図示しないエンジン側(振動発生側)に取着される第1ブッシュ110と、図示しない車体側(振動受け側)に取着される第2ブッシュ120と、これら第1ブッシュ110及び第2ブッシュ120を互いに連結する連結部材30とを備えている。第1ブッシュ110及び第2ブッシュ120が連結部材30により軸方向が互いに直交するように連設されており、加速時におけるエンジンのロール方向への変位や前後方向の変位を規制し得るように構成されている。
第1ブッシュ110は、エンジン側に取着される第1内筒11と、その第1内筒11の外周側に位置する第1外筒12と、それら第1内筒11及び第1外筒12の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第1防振基体113とを備えている。
第1防振基体113は、ゴム状弾性材により構成される部材である。第1内筒11及び第1外筒12に対して一体に加硫接着され、第1内筒11と第1外筒12との間を周方向全周にわたって連結している。第1防振基体113には、第1内筒11を挟む位置に第1防振基体13の軸方向端面から軸方向(図1上下方向)に向かうすぐり部113bが凹設されている。
凸起部113cは、第1外筒12の軸方向端面より軸方向外側に突出する第1防振基体113の軸方向端面の外周方向に凸起する部位である。凸起部113cは、第1ブッシュ110及び第2ブッシュ120を結ぶ方向(図5左右方向)に対し直交する方向(図5紙面垂直方向)、且つ、第1ブッシュ110の軸直角方向の投影で第1内筒11に重なる領域に凸起し、第1外筒12の軸方向端面より軸方向外側に第1外筒12を挟んで並設されている。
第1注入跡部114は、第1防振基体113を加硫成形する際に、後述する加硫金型(上型160)に形成された注入孔162(図7参照)及び逃がし孔164によって形成される部位であり、本実施の形態では、凸起部113cに形成されている。
第2ブッシュ120は、車体側に取着される第2内筒21と、その第2内筒21の外周側に位置する第2外筒22と、それら第2内筒21及び第2外筒22の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第2防振基体123とを備えている。第2防振基体123は、ゴム状弾性材により構成される部材である。第2内筒21及び第2外筒22に対して一体に加硫接着され、第2内筒21と第2外筒22との間を周方向全周にわたって連結している。
第2注入跡部124は、第2防振基体123を加硫成形する際に、後述する加硫金型(上型60)に形成された注入孔166(図9参照)及び逃がし孔168によって形成される部位であり、第2防振基体123の軸方向端面の軸方向(図5紙面垂直方向)に形成されている。第1ブッシュ110の軸方向(図5上下方向)と第2ブッシュ120の軸方向(図5紙面垂直方向)とは互いに直交する関係にあるが、防振装置101の第1注入跡部114及び第2注入跡部124は、第2ブッシュ120の軸方向(図1紙面垂直方向)に沿う一方向から視認できる位置に配置されている。
次に、図6から図9を参照して、防振装置101が製造される加硫金型(下型150、上型160、ランナープレート170及び中型181,182)について説明する。なお、図6から図9は、加硫金型の下型150及び上型160が型閉めされると共に、第1内筒11、第2内筒21、第1外筒12及び第2外筒22を連設する連結部材30がセットされて形設されたキャビティ内にゴム状弾性材が充填された状態を図示する。図6は防振装置101及び加硫金型(下型150、上型160及び中型181,182)の断面図である。
図6に示すように、下型150は、上型160に対して上下(図6上下方向)に移動することで型閉め及び型開き可能に構成される部材である。下型150の上面に、第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22が嵌合保持される嵌合孔部150a,150d,150e,150g及び嵌合段部150c(図7参照)が凹設されている。また、第1防振基体113及び第2防振基体123が成形されるキャビティを構成する成形面150b(図7参照),150fが、下型150の上面に凹設されている。
上型160は、下型150に対し型閉め及び型開き可能に構成される部材であり、下型150に対向配置されている。下型150及び上型160を型閉めした状態で、下型150に嵌合保持された第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22が押圧挟持される。上型160の被嵌部160a,160dは、下型50の嵌合孔部150a,150dに嵌合保持された第1外筒12及び連結部材30を押圧挟持し、被嵌部160eは、下型150の嵌合孔部150eに嵌合保持された第2内筒21を押圧挟持する。また、被嵌部160gは、嵌合孔部150gに嵌合保持された第2外筒22を押圧挟持する。
中型181,182は、第1防振基体113の軸方向に貫通形成されるすぐり部113aを形成するための部材であり、下型150及び上型160の分割方向(図6上下方向)と直交する方向(図6紙面垂直方向)にスライドするスライド型として構成されている。
成形面150f,160fは、第2防振基体123の軸方向端面を成形するための面であり、嵌合孔部150e,150g、被嵌部160e,160gにそれぞれ連設されている。第2防振基体123を成形する成形面150f,160fは、キャビティ全体の軸方向長(図6上下方向)が、第2外筒22が押圧挟持される嵌合孔部150gと被嵌部160gとの軸方向間隔より長くなるように形成されている。嵌合孔部150eの中心に、第2内筒21を係止する支持ピン151が突設され、支持ピン151と対向して被嵌部160eに内筒押え161が突設されている。
次に図7を参照して、第1防振基体113について説明する。図7は図6のVII−VII線における防振装置101及び加硫金型(下型150、上型160、中型181,182及びランナープレート170)の断面図である。嵌合孔部150aは、第1外筒12の軸方向端面が嵌合保持される部位であり、下型150の上面に形成され成形面150bに連設されている。
成形面150bは、第1防振基体113の軸方向端面を成形するための湾曲面であり、第1内筒11及び第1外筒12の軸方向(図7左右方向)に下型150内をスライドする中型181の先端に形成され嵌合孔部150cに連設されている。成形面150bは、第1外筒の軸方向端面より軸方向内側に突出する湾曲面として形成されているので、第1防振基体113の軸方向端面にすぐり部113bが凹設される。嵌合孔部150cは、第1内筒11の軸方向端面を嵌合保持するための部位であり、下型150及び中型181に形成されている。
被嵌部160aは、第1外筒12の軸方向端面が嵌合保持される部位であり、第1内筒11及び第1外筒12の軸方向(図7左右方向)にスライドする中型182に形成され成形面160bに連設されている。成形面160bは、第1防振基体113の軸方向端面を成形すると共に、軸方向端面の軸方向に凹設されるすぐり部113bを形成するための面である。成形面160bは、第1外筒12の軸方向端面より軸方向内側に突出する湾曲面として形成され、被嵌部160cに連設されている。被嵌部160cは、第1内筒11の軸方向端面を嵌合保持するための部位であり、中型182及び上型160に形成されている。
注入孔162は、上端が注入用ランナー溝171に連通し、中型182を上下方向に貫通しつつ下端がゲート163を介して成形面160bに凹設された凹陥部160b1に連通している。逃がし孔164は、上端が逃がし用ランナー溝172に連通し、中型182を上下方向に貫通しつつ下端がゲート165を介して凹陥部160b2に連通している。凹陥部160b1,160b2は、第1防振基体113に凸起部113c(図5参照)を形成するための部位である。成形材料は注入孔162から注入されてキャビティに充填され、逃がし孔164から余剰分が流出する。成形後の型抜きのときに、成形された第1防振基体113と成形材料の不要部分とがゲート163,165で切り離され、第1注入跡部113が形成される。
注入孔162及び逃がし孔164は、第1外筒12を挟んで略180°相対する位置に形成されており、ゲート163,165は、第1内筒11の軸方向端面の近傍に形成された凹陥部160b1,160b2の上に形成されている。これにより、第1注入跡部114(図5参照)を、第1外筒12の軸方向端面より軸方向外側に存在する第1防振基体113の外周面に突出した凸起部113cに形成することができる。
ここで、第1防振基体113に第1注入跡部114が突起状に残ると、その付根の箇所に、第1防振基体113の弾性変形により応力集中が起こり易く、それに起因して亀裂が発生し易い。その応力集中は、突起の曲率が大きいほど生じ易い。ところが、第1注入跡部114は、曲率が第1注入跡部114の付根の曲率より小さな凸起部113cに形成されているので、凸起部113cの付根に生じる応力集中を緩和することができ、ひいては第1注入孔部114の付根に生じる応力集中を抑制できる。その結果、第1注入跡部114の付根の箇所に亀裂を生じ難くでき、第1防振基体113に亀裂が生じて耐久性が低下することを防止できる。
また、第1注入跡部114は、すぐり部113bの内側に位置する第1防振基体113の軸方向端面の第1内筒11近傍に形成されている。この部位は、第1防振基体113の変形が第1内筒11によってある程度規制される。そのため、この部位に第1注入跡部114を形成することにより、第1注入跡部114の付根の箇所に亀裂を生じ難くできる。
次に図8を参照して、第1防振基体113の軸方向端面の軸方向に貫通形成されるすぐり部113aについて説明する。図8は、図6のVIII−VIII線における防振装置101及び加硫金型(下型150、上型160及びランナープレート170)の断面図である。中型181,182は、嵌合孔部150a及び被嵌部160aに挟持される第1内筒11及び第1外筒12の軸方向(図8左右方向)にスライド可能なスライド型として構成されると共に、第1内筒11及び第1外筒12の間に挿入され軸方向に互いに当接している。これにより第1防振基体113の軸方向端面に貫通形成されるすぐり部113aが形成される。すぐり部113aが形成されることにより、第1防振基体113は軸直角方向のばね定数が部分的に小さくされる。
次に図9を参照して、第2防振基体123について説明する。図9は、図6のIX−IX線における防振装置101及び加硫金型(下型150、上型160及びランナープレート170)の断面図である。注入孔166は、上端が注入用ランナー溝173に連通し、上型160を上下方向に貫通しつつ下端がゲート167を介して成形面160fに開口し、キャビティに連通している。逃がし孔168は、上端が逃がし用ランナー溝174に連通し、上型160を上下方向に貫通しつつ下端がゲート169を介して成形面160fに開口し、キャビティに連通している。成形材料は注入孔166から注入されてキャビティに充填され、逃がし孔168から余剰分が流出する。成形後の型抜きのときに、成形された第2防振基体123と成形材料の不要部分とがゲート167,169で切り離され、第2注入跡部124(図5参照)が形成される。注入孔166及び逃がし孔168は、第2内筒21を挟んで略180°相対する位置に形成されている。
次に、以上説明した加硫金型(下型50、上型60、ランナープレート70及び中型181,182)による防振装置101の製造方法について説明する。第1内筒11及び第2内筒21の外周面、第1外筒12及び第2外筒22の内周面に接着剤を塗布した後、上型150と下型160とが離間した型開き状態において、嵌合孔部150e,150d(図6参照)に第2外筒22及び連結部材30を嵌合し、第2内筒21を支持ピン151に嵌合する。また、嵌合孔部150a(図7参照)に第1外筒12を嵌合し、中型181をスライドしつつ嵌合段部150cに第1内筒11を嵌合する。次いで、上型160に対して下型150を上下(図6上下方向)に移動させ、下型150及び上型160を閉じ合わせる。また、中型182をスライドさせて第1内筒11及び第1外筒12を挟持する。これにより、第1内筒11及び第2内筒12の周囲に第1外筒12及び第2外筒22に囲まれたキャビティが形成される。
ランナープレート170を閉じた後、射出装置(図示せず)から注入用ランナー溝171,173及び注入孔162,166を通じて、所定量の成形材料を所定の圧力で注入する。注入された成形材料は第1内筒11及び第1外筒12、第2内筒21及び第2外筒22の間に充填される。成形材料の流動および充填に伴ってエアが逃がし孔164,168から排出され、余剰分の成形材料は逃がし孔164,168からオーバーフローする。
成形材料がキャビティに充填された後、成形材料を加圧・加熱状態に一定時間保持することにより成形材料(ゴム状弾性材)が加硫反応し、同時に第1内筒11及び第1外筒12、第2内筒21及び第2外筒22に対して一体に加硫接着される。これにより第1防振基体113及び第2防振基体123が成形される。
成形後、下型150、上型160及び中型181,182を開くと共に、ランナープレート170を上型160の上面から分離させる。その際、成形材料をゲート163,165,167,169の箇所で切り離す。このときに第1注入跡部114(図5参照)及び第2注入跡部124が形成される。下型150の支持ピン151(図6参照)を上方へ突き上げることにより、第1防振基体113及び第2防振基体123が成形された防振装置101を下型150から離脱させることができ、防振装置101を取り出すことができる。
以上説明したように、第1防振基体113の注入孔162及び逃がし孔164、第2防振基体123の注入孔166及び逃がし孔168を、第2ブッシュ120の軸方向(図9上下方向)に沿う一方向に設けることで、防振装置101の第1注入跡部114及び第2注入跡部124が、第2ブッシュ120の軸方向に沿う一方向から視認できる位置に配置される。その結果、上型160の注入孔162,166及び逃がし孔164,168の引き回しやゲート163,165,167,169の構造を簡素化できる。これにより、加硫金型(上型160)に注入されたゴム状弾性材をゲート163,165,167,169で詰まり難くできる。これにより加硫金型の寿命を向上できる。その結果、加硫成形に要するコストを削減できる。
また、第1防振基体113の注入孔162及び逃がし孔164、第2防振基体123の注入孔166及び逃がし孔168を第2ブッシュ120の軸方向(図9上下方向)に沿う一方向に位置させることで、加硫金型(下型150及び上型160)における型割り(分割)の方向を、第1ブッシュ110と第2ブッシュ120とで異ならせることなく、第2ブッシュ120の軸方向に沿う一方向にすることができる。第1防振基体113に軸方向端面に軸方向内側に向かうすぐり部113a,113bが凹設されているので、第1ブッシュ110の軸方向(図7左右方向)にスライド可能に構成される中型181,182(スライド型)は必要であるが、加硫金型の構造を簡素化することができ、加硫金型のコストを削減できる。
また、加硫金型の構造を簡素化できるので、型組みや型ばらしを含む成形作業を簡素化できる。これにより防振装置101の加硫成形に要するコストを削減できる。さらに、加硫金型の構造を簡素化できることで、加硫金型1個当たりの防振装置101の取り個数を多くすることができ、防振装置101の製造コストを削減できる。
次に、図10及び図11を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第2防振基体23の外周面に第2注入跡部24が形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、第2防振基体223が接着される第2外筒22に貫通孔22aを形成し、この貫通孔22aから成形材料を注入することにより第2防振基体223が成形されると共に、貫通孔22aの部分に第2注入跡部224が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図10は第3実施の形態における防振装置201の平面図である。
図10に示すように防振装置201は、図示しないエンジン側(振動発生側)に取着される第1ブッシュ10と、図示しない車体側(振動受け側)に取着される第2ブッシュ220と、これら第1ブッシュ10及び第2ブッシュ220を互いに連結する連結部材30とを備えている。
第2ブッシュ220は、車体側に取着される第2内筒21と、その第2内筒21の外周側に位置する第2外筒22と、それら第2内筒21及び第2外筒22の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第2防振基体223とを備えている。第2防振基体223はゴム状弾性材により構成され、第2内筒21及び第2外筒22に対して一体に加硫接着され、第2内筒21と第2外筒22との間を周方向全周にわたって連結している。
第2防振基体223は、軸方向長(図10上下方向)が、第2外筒22の軸方向長より大きく、第2内筒21の軸方向長より小さくなるように設定されている。第2外筒22は、第1ブッシュ10の軸方向(図10紙面垂直方向)と同一方向に内周面と外周面とを貫通する貫通孔22aが形成されており、その貫通孔22aの部分に第2注入跡部224が形成されている。その結果、防振装置201の第1注入跡部14及び第2注入跡部224は、第1ブッシュ10の軸方向(図10紙面垂直方向)に沿う一方向から視認できる位置に配置される。
次に図11を参照して、加硫金型により製造される防振装置201について説明する。なお、図11は加硫金型の下型50及び上型260が型閉めされると共に、第1内筒11、第2内筒21、第1外筒12及び第2外筒22を連設する連結部材30がセットされて形設されたキャビティ内にゴム状弾性材が充填された状態を図示する。また、ランナープレートの図示は省略している。図11は防振装置201及び加硫金型(下型50及び上型260)の断面図である。
図11に示すように、上型260は、下型50に対し型閉め及び型開き可能に構成される部材であり、下型50に対向配置されている。下型50及び上型260を型閉めした状態で、下型50に嵌合保持された第1内筒11、第1外筒12、連結部材30、第2内筒21及び第2外筒22が押圧挟持される。上型260の被嵌部260a,260cは、下型50の嵌合孔部50a,50cに嵌合保持された第1内筒11及び第2外筒12を押圧挟持し、被嵌部260a,260cに連設される成形面260bは成形面50bとの間にキャビティを形成する。キャビティの軸心に支持ピン51と対向する内筒押え261が配置されている。被嵌部260dは嵌合孔部50dとの間で連結部材30を押圧挟持し、被嵌部260eは、嵌合孔部50eに嵌合保持された第2外筒22を押圧挟持する。
注入孔266は、上端が注入用ランナー溝(図示せず)に連通し、上型260を上下方向に貫通しつつ下端がゲート267を介して第2外筒22に形成された貫通孔22aに連通している。第2防振基体223を構成する成形材料は、注入孔267から注入されて第2内筒21と第2外筒22との間および貫通孔223a内に充填される。第2内筒21と第2外筒22との間に注入された成形材料により第2防振基体223が成形され、貫通孔223a内に注入された成形材料により注入部223aが成形される。キャビティ内のエア等は逃がし孔(図示せず)から排出される。第1防振基体13についても同様に注入孔(図示せず)から成形材料が充填され、すぐり部13bを有する第1防振基体13が成形される。
成形後の型抜きのときに、成形された第1防振基体13と成形材料の不要部分とがゲート(図示せず)で切り離され、第1注入跡部14(図10参照)が形成される。また、成形された第2防振基体223と成形材料の不要部分とがゲート267で切り離され、注入部223aに第2注入跡部224(図10参照)が形成される。その結果、第2注入跡部224の付根の周囲は、第2外筒22の内周面(貫通孔22aの周囲)で拘束される。
ここで、第2注入跡部224の付根の箇所は、第2防振基体223の弾性変形により応力集中が起こり易く、それに起因して亀裂が発生し易い。しかし、防振装置201は第2注入跡部224の付根の周囲が貫通孔22aの周囲で拘束されるので、付根の変形量を小さくすることができる。これにより、第2注入跡部224に亀裂が生じることを防止し、第2防振基体223の耐久性が低下することを防止できる。
また、第2防振基体223は、軸方向長(図10上下方向)が、第2外筒22の軸方向長より大きく、第2内筒21の軸方向長より小さくなるように形成されているので、加硫金型(下型50及び上型260)における型割り(分割)の方向を第1ブッシュ10の軸方向(図11)に沿う一方向にすると共に、スライド型等を省略することができ、加硫金型の構造を簡素化できる。
次に、図12及び図13を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、第2防振基体223が接着される第2外筒22に貫通孔22aを形成し、この貫通孔22aから成形材料を注入することにより第2防振基体223が成形される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、第1防振基体313が接着される第1外筒12に貫通孔12aを形成し、この貫通孔12aから成形材料を注入することにより第1防振基体313が成形される場合について説明する。なお、第1実施の形態または第2実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図12は第4実施の形態における防振装置301の側面図であり、図13は防振装置301の平面図である。
図12に示すように防振装置301は、図示しないエンジン側(振動発生側)に取着される第1ブッシュ310と、図示しない車体側(振動受け側)に取着される第2ブッシュ120と、これら第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を互いに連結する連結部材30とを備えている。
第1ブッシュ310は、車体側に取着される第1内筒11と、その第1内筒11の外周側に位置する第1外筒12と、それら第1内筒11及び第1外筒12の間に介設されると共にゴム状弾性材から構成される第1防振基体313とを備えている。第1防振基体313はゴム状弾性材により構成され、第1内筒11及び第1外筒12に対して一体に加硫接着され、第1内筒11と第1外筒12との間を周方向全周にわたって連結している。
第1防振基体313は、軸方向端面の第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ軸直角方向に、軸方向内側に向かうすぐり部313bが凹設されている。これにより第1防振基体313は、第1外筒12側の軸方向長(図12上下方向)が第1外筒12の軸方向長より短くなるように形成されている。また、図13に示すように第1防振基体313は、軸方向端面を軸方向(図13紙面垂直方向)に貫通するすぐり部313aが形成されている。これにより第1防振基体313は、第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ方向(図13左右方向)のばね定数が、第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ方向に対して直交する方向(図13上下方向)のばね定数より小さくなるように設定される。
図12及び図13に示すように、第1外筒12は第2ブッシュ120の軸方向(図13上下方向)と同一方向に内周面と外周面とを貫通する貫通孔12aが形成されている。その貫通孔12aの部分に成形材料(ゴム状弾性材)が注入された注入部313cが形成され、その注入部313cに第1注入跡部314が形成されている。その結果、防振装置301の第1注入跡部314及び第2注入跡部124は、第2ブッシュ120の軸方向(図12紙面垂直方向)に沿う一方向から視認できる位置に配置される。
特に、第1外筒12は第1外筒12の外周面と内周面とに亘って貫通形成される貫通孔12aを備え、第1注入跡部314は、貫通孔12aに注入されたゴム状弾性材から構成される注入部313cに形成されている。一方、第2注入跡部124は第2防止基体123の軸方向端面の軸方向に形成されている。そのため、第2ブッシュ120の軸方向と、第1防振基体313及び第2防振基体123の注入孔(図示せず)の方向とを一致させることができる。これにより、第1防振基体313にすぐり部313a,313bを形成するためのスライド型(図示せず)を併用することにより、加硫金型(図示せず)における型割り(分割)の方向を、第2ブッシュ120の軸方向に沿う一方向にすることができる。その結果、加硫金型の構造を簡素化して加硫金型のコストを削減できる。また、型組みや型ばらしを含む成形作業を簡素化できるため、防振装置の加硫成形に要するコストを削減できる。
また、第1注入跡部314は第1外筒12に貫通形成された貫通孔12aに注入されたゴム状弾性材から構成される注入部313cに形成されているので、第1注入跡部314の付根の周囲が、第1外筒12の内周面(貫通孔12aの周囲)で拘束される。その結果、第1注入跡部314の付根の変形量を小さくすることができ、第1注入跡部314に亀裂が生じることを防止できる。これにより、第1防振基体313の耐久性が低下することを防止できる。
また、防振装置301の第1防振基体313は、軸方向端面の第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ方向(図12左右方向)に位置すると共に軸方向(図12上下方向)に凹設されるすぐり部313a,313bを備えているので、第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ方向に第1防振基体313を低ばね化できる。その結果、防振装置301の防振性能を向上できる。
一方、第1防振基体313の第1ブッシュ310及び第2ブッシュ120を結ぶ方向に対し直交する方向(図13上下方向)、且つ、第1ブッシュ310の軸直角方向の投影で第1内筒11に重なる領域p(図13参照)を、相対的に高ばね化することができる。この領域pに第1注入跡部314を形成することにより、第1注入跡部314の付根の変形量を抑制できるので、付根に亀裂が生じることを防止できる。これにより、防振装置301の防振性能を向上させつつ第1防振基体313の耐久性が低下することを防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値や形状は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態で説明した第1注入跡部14,114,314、第2注入跡部23,123,223の数量や形状、寸法(外径)、突出長(高さ)等は一例であり、防振装置1,101,201,301の大きさや加硫金型の構造等により任意に設定することは当然可能である。
上記各実施の形態では、第1内筒11、第1外筒12、第2内筒21、第2外筒22及び連結部材30が金属材料から構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、合成樹脂材料から構成されるようにすることは当然可能である。
また、上記各実施の形態では、第1外筒12及び第2外筒22が連結部材30と一体に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1外筒12及び第2外筒22と連結部材30とを別部材により形成し、それらを溶接等により接合して連結することは当然可能である。
また、上記各実施の形態においては、連結部材30がロッド状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、平板状に構成されるものやフランジ部を備えるもの等、軽量化等の要求に応じて、他の連結部材を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、第1内筒11、第1外筒12、第2内筒21、第2外筒22が円筒状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、要求特性に応じて、角筒状に形成されるものを採用することは当然可能である。
上記各実施の形態においては、第1防振基体13,113,313にすぐり部13a,13b,113a,113b,313a,313bが形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、要求特性に応じて、第1防振基体13,113,313にすぐり部を形成しないようにすることは当然可能である。
上記各実施の形態においては、第1ブッシュ10,110,310及び第2ブッシュ20,120,220が無底の筒状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、特開2005−23973号公報等に開示されるように有底の筒状(椀状)に形成することは当然可能である。
上記各実施の形態においては、防振装置1,101,201,301として自動車用のトルクロッドを例示したが、トルクロッドのみに適用されるものではなく、例えば、サスペンションアーム等にも好適に採用される。また、自動車用に限定されるものではなく、列車用やその他各種の連結ロッドとして適用できる。