JP2012100662A - 細胞増殖方法ならびに組織の修復および再生のための医薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体の組織の修復・再生のための安全かつ有効な医薬を提供するために、生体から採取された細胞を、生体外で迅速かつ大量に増殖させる方法を提供する。
【解決手段】生体から採取された試料中の細胞を、培地中で培養して増殖させる方法であって、好ましくは血清癌マーカーおよび/または感染因子について陰性であることをあらかじめ検査した、同種血清を含む培地において、採取された試料に添加される抗凝固剤(例えば、ヘパリンもしくはヘパリン誘導体またはこれらの塩など)の量を該試料の容積に対して5U/mL未満とするか、または培養を開始する際の培地中の抗凝固剤の量を0.5U/mL未満とすることを特徴とする方法とその利用。
【選択図】なし

Description

本発明は、生体から採取した細胞を生体外で迅速かつ大量に増殖させる方法、ならびにかかる方法によって増殖した細胞、および前記細胞を含む生体組織の修復および再生のための医薬、ならびにかかる医薬を製造する方法に関する。この方法は、特に間葉系幹細胞の自家移植のために好適であり、特に神経系組織の修復および再生のために適用され得る。
従来、損傷を受けた神経組織の機能回復は非常に困難と考えられてきたが、近年になって成熟脳においても自己増殖能と多分化能を保持する神経幹細胞が発見されたことを基に、中枢神経系においても再生医療の研究が精力的に行われている。幹細胞を用いる再生医療として最も実用化に近いと考えられているのは、損傷された細胞の補充をおこなう細胞療法である。細胞療法においては、ドナーから提供される細胞(以下、ドナー細胞)を生体外で培養、増殖、および/または分化誘導し、適切な形態においてレシピエントの生体内へ投与することによって、レシピエントの損傷された組織細胞を補充する。
脳神経疾患に対しては、神経系細胞への分化能を有する細胞を組織から抽出後培養し個体へ移植することが、虚血モデル、外傷モデルなどにおいて試みられている。例えば、本発明者らは、骨髄細胞中に神経細胞へ分化し得る細胞を含む細胞分画が存在することを既に見出しており、さらに、ラット脊髄脱髄モデルへこれらの細胞を移植すると脱髄された神経軸索が再有髄化することを確認している(特許文献1)。
疾患の治療、特に、脳梗塞による虚血脳疾患など急性期の症状を有する疾患の治療に用いる場合、ドナー細胞を迅速かつ大量に増殖させることが重要である。生体外で細胞を増殖させるために、細胞の生存率を向上させ、増殖率を高めるために、様々な試みがなされている。
例えば、細胞の増殖率の改善のために、種々の増殖促進物質を添加した培地が使用されている。例えば、特許文献2においては、白血球阻害因子が細胞増殖の速度を増加させることが開示されており、特許文献3においては、造血細胞を増殖させるための組み替えヒト血清アルブミンを含む培地中が開示されている。特許文献4においては、ビタミンCおよび塩基性繊維芽細胞増殖因子を含む培地中で間葉系幹細胞を培養する方法が開示されている。他の増殖因子(例えば、上皮細胞増殖因子、神経細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、トロンボポエチン、インターロイキンなど)の使用もまた公知である。
より細胞増殖率を高めるような培養基質の開発もなされている。例えば、特許文献5においては、基底膜細胞外基質上で間葉系幹細胞を培養する方法が開示されている。
また、血清も増殖を促進する物質として一般的に使用される。従来、幹細胞の培養においては、細胞増殖因子として10〜20%程度のウシ胎児血清(FBS)を始めとする異種動物血清を添加した培地が広く使用されている。しかし、FBSのような動物血清はロットによる組成の差が大きく、また、ウイルス、プリオンなどの病原体混入の危険性も問題となっている。
このような問題に対応すべく、血清を添加しない培地もまた開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3などを参照のこと)。しかし、無血清培地における培養では、血清添加培地と同等の増殖を得ることは困難であるのが現状である。
一方、ヒト血清を使用する試みにおいては、倫理的観点から胎児血清の使用は困難であるため、成人ヒト血清が使用される(例えば、特許文献6〜8を参照のこと)。成人血清を使用する上での利点は、ドナー細胞を採取した個体と同一の個体の血清を用いることが可能な点であり、適合性および安全性の観点から非常に好ましい。
成人血清を使用する場合の問題点は、例えばFBSと比較した場合の増殖促進活性の低さである。成人血清は単独では充分な細胞増殖促進活性を示さず、FBSと同程度の増殖を得るためには、さらにFBSを添加するか(特許文献6)または他の増殖因子の添加が不可欠である(特許文献7)。しかしながら、増殖因子などの添加によりFBSと同等の効果が得られた場合においてですら、先に述べたような急性期の疾患の治療に対応し得るような迅速かつ大量の増殖は得られていない。
一方、従来、生体から採取した細胞を培養・増殖させる方法においては、血液成分を含む組織または細胞をドナーから採取する際に、血液凝固を阻止するために、ヘパリンが添加される(例えば、特許文献9、非特許文献1、および非特許文献2などを参照のこと)。代表的な場合(例えば、通常の骨髄移植における骨髄細胞採取)においては、細胞液の容積に対するヘパリンの投与量は、数十U/mL(約20〜40U/mL)程度であり、例えば特許文献8は、ヘパリンを5〜15U/mL程度の範囲で含有するヘパリン/緩衝液を骨髄液に添加することを開示している。特許文献2においては、さらに培養培地中にもヘパリンを含有させる方法が開示されている。
ヘパリンは、上記のような血液凝固防止の用途の他に、増殖助剤としてもまた用いられており、例えば特許文献4において、ヘパリンには塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)とそのレセプターとの親和性を高める作用があることが開示されている。また、特許文献10は、ヘパリンを含む硫酸化グリコサミノグリカンの改変体を、神経幹細胞増殖助剤として開示している。しかしながら、これらヘパリンを用いる方法においても、なお十分に迅速かつ大量の増殖率は達成し得ないのが現状である。
ところで、生体は損傷を受けたときに、損傷部位を自律的に修復する機構を有しており、ある程度の損傷であれば、機能的な障害を残すことなくこれを修復することが可能である。しかしながら、損傷の程度が大きいと、内在的な修復機構だけでは足りず、回復が長引いたり、さらには、損傷が完全には修復されず、機能的な障害が残ってしまう場合がある。従来、このような損傷を受けた生体組織、特に神経組織等の修復は非常に困難と考えられてきたが、最近になって、多分化能を有する幹細胞の発見を契機に、損傷された細胞を幹細胞で補う試みがなされつつある。例えば、特許文献11には、脳梗塞モデルラットに、疾患の急性期(虚血状態惹起の3〜24時間後)において間葉系幹細胞を投与したところ、顕著な治療効果が得られたことが記載されている。
しかしながら、損傷を受けてから時間が経過し、損傷部位がある程度安定した亜急性期以降において、喪失した機能を回復するための有効な手法については、未だ報告がない。
国際公開第WO02/00849A1号パンフレット 特表2002-518990号公報 特開2005-204539号公報 特開2006-136281号公報 特開2003-52360号公報 特開平10-179148号公報 特開2003-235548号公報 特開2006-55106号公報 国際公開第WO01/48147A1号パンフレット 特開2005-218308号公報 国際公開第WO2005/007176号パンフレット
高久史麿著、「骨髄移植マニュアル」、初版、内外医学社、1996年、86頁 三浦恭定編、「血液幹細胞培養法」、改訂2版1刷、内外医学社、1989年、38頁
したがって、本発明の課題は、細胞移植のために生体外で細胞を増殖させる場合において、従来技術の問題を解決し、かつ従来の方法より高い増殖率を得、迅速かつ大量に細胞を増殖することにある。さらに、増殖させた細胞を用いて、損傷の亜急性期以降に投与した場合でも治療効果を有する、実用性の高い組織修復幇助剤を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、細胞培養における種々の条件および手順を検証する中で、通常は血液凝固防止の目的で用いられるヘパリンに着目して研究を進めたところ、ヘパリンが細胞増殖に対して著しい阻害作用を及ぼしているという知見を得た。そして、さらに研究を進めた結果、ヘパリンと接触しないような条件下で細胞を培養すれば、FBSの代わりに同種血清を用いた培養方法においても、優れた増殖効率を有する(増殖が早い)細胞を取得でき、しかも得られる細胞は分化能が高い安全なものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、生体から採取された試料中の細胞を、培地中で培養し増殖させる方法であって、同種血清を含む培地において、細胞を抗凝固剤と実質的に接触しない状態で培養する方法に関する。ここで、前記同種血清は血清癌マーカーおよび/または感染因子について陰性であることが検査されていることが好ましく、また細胞を採取した被験者自身の自己血清であることが好ましい。
ここで、血清癌マーカーとしては、例えば、フェリチン、CEA、AFP、BFP、CA125、CA15-3、CA19-9、CA72-4、STN、DUPAN-2、SLX、ST−439、SPAN−1、SCC、PSA、G−セミノプロテイン、TPA、シフラ、PAP、NSE、C-ペプチド、PIVKA、Pro−GRP、HCGβ、エラスターゼ、β2マイクログロブリン、S-NTX、抗p53抗体、HER2等を挙げることができる。また感染因子としては、例えば、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等を挙げることができる。
また、本発明は、採取された試料に添加される抗凝固剤の量を該試料の容積に対して5U/mL未満とする、前記方法に関する。
さらに、本発明は、培養を開始する際の培地中の抗凝固剤の量を0.5U/mL未満とする、前記方法に関する。
また、本発明は、前記抗凝固剤が、ヘパリン、ヘパリン誘導体またはこれらの塩である、前記細胞増殖方法に関する。
本発明は、血清を含む培地中で細胞を増殖させる、前記方法に関する。
また、本発明は、細胞が由来する動物と同種の動物個体の血清を含有する培地中で細胞を増殖させる、前記方法に関する。
さらに、本発明は、自己血清を含有する培地中で細胞を増殖させる、前記方法に関する。
本発明はまた、培地中の血清含有量が1〜20容積%である、前記方法に関する。
本発明は、幹細胞を増殖させる、前記方法に関する。
また、本発明は、間葉系幹細胞を増殖させる、前記方法に関する。
さらに、本発明は、ヒトの細胞を増殖させる、前記方法に関する。
本発明は、幹細胞を未分化な状態で増殖させる、前記方法に関する。
本発明はまた、培地中の間葉系幹細胞の密度が5,500個/cm2以上になった時点で継代培養させる、前記方法に関する。
さらに、本発明は、培地の交換を少なくとも週1回は行う、前記方法に関する。
本発明は、細胞の総数が100,000,000個以上になるまで継代培養を繰り返し行う、前記方法に関する。
本発明は、前記のいずれかの方法によって培養された細胞であって、CD24が発現していないことを特徴とする、単離されたヒト培養細胞に関する。
本発明はまた、前記のいずれかの方法によって培養された細胞であって、表1記載の陽性CD抗原群のうち少なくとも90%が発現し、かつ陰性CD抗原群の少なくとも90%が発現していないことを特徴とする、単離されたヒト培養細胞にも関する。
前記細胞は、さらにヒトでの発現が好ましくない種々の癌関連遺伝子、例えば、EWI-FLI-1、FUS-CHOP、EWS-ATF1、SYT-SSX1、PDGFA、FLI-1、FEV、ATF-1、WT1、NR4A3、CHOP/DDIT3、FUS/TLS、BBF2H7、CHOP、MDM2、CDK4、HGFR、c-met、PDGFα、HGF、GFRA1、FASN、HMGCR、RGS2、PPARγ、YAP、BIRC2、lumican、caldesmon、ALCAM、Jam-2、Jam-3、cadherin II、DKK1、Wnt、Nucleostemin、Neurofibromin、RB、CDK4、p16、MYCN、telomere、hTERT、ALT、Ras、TK-R、CD90、CD105、CD133、VEGFR2、CD99、ets、ERG、ETV1、FEV、ETV4、MYC、EAT-2、MMP-3、FRINGE、ID2、CCND1、TGFBR2、CDKNIA、p57、p19、p16、p53、IGF-1、c-myc、p21、cyclin D1、p21のいずれの遺伝子も異常発現していないことを特徴とする。なお、異常発現とは健常者の発現量に対して有意に高い発現を意味する。
本発明は、前記細胞を用いて組織修復・再生用医薬を製造する方法に関する。
また、本発明は、前記細胞を含む組織修復・再生用医薬に関する。
本発明は、細胞が間葉系幹細胞であり、静脈内投与、腰椎穿刺投与、脳内投与、脳室内投与、局所投与または動脈内投与される、損傷部位の修復を幇助するための、もしくは加齢による廊下した部位の修復を幇助するための前記医薬に関する。組織は、特に限定されないが、たとえば、脳や脊髄を含む神経系組織、腎臓、膵臓、肝臓、腸、胃、消化器官、肺臓、心臓、脾臓、血管、血液、皮膚、骨、軟骨、歯、および前立腺等を例示できる。細胞は好ましくは自己の細胞である。
好ましい実施形態において、本発明の組織修復・再生用医薬は疾患や障害の亜急性期以降に投与され、サイトカインの分泌、血管新生および/または神経再生により、損傷部位の修復を幇助する。
1つの実施形態において、前記損傷部位は腎臓であり、前記医薬はBUN値および/またはクレアチニン値の改善によって損傷部位の修復を促す。
1つの実施形態において、前記損傷部位は膵臓であり、前記医薬は血糖値、血中Glu A1濃度および/または血中HbA1C濃度の改善によって損傷部位の修復を促す。
1つの実施形態において、前記損傷部位が心臓であり、前記医薬は血中プロスタグランジンD合成酵素濃度および/または血中ホモシステイン濃度の改善によって損傷部位の修復を促す。
1つの実施形態において、前記損傷部位が肝臓であり、前記医薬はGOT値、GPT値および/またはγ−GTP値の改善によって損傷部位の修復を促す。
1つの実施形態において、前記損傷部位が脳であり、前記医薬は失語症の指標となるSLTA値、知能回復の指標となるWAIS−R値の改善を促し、失語症や認知症を治療しうる。
1つの実施形態において、前記損傷部位が前立腺であり、前記医薬はPSA値の改善によって損傷部位の修復を促す。
本発明の組織修復・再生用医薬の対象となる疾患や障害としては、具体的には、腎障害、肝障害、糖尿病を含む膵臓障害、前立腺肥大、高脂血症、失語症および認知症を含む高次脳機能障害、蘇生後脳症、心疾患、脊髄損傷等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明はまた、本発明の細胞を調製するためのキットであって、抗凝固剤が0.5U/mL未満であることを特徴とする培地が充填された容器を含むキットに関する。前記キットは、細胞の調整に必要な他の試薬や器具機材を含んでいてもよく、抗凝固剤は(含む場合は)、たとえばヘパリンが用いられる。
さらに本発明は、被験者から単離した細胞を、本発明の方法により培養する工程と、前記工程で得られた細胞について癌関連遺伝子の発現を検査する工程と、前記検査において安全性が確認された細胞を前記被験者に投与する工程とを含む、組織修復・再生のための細胞療法にも関する。ここで、検査対象である癌関連遺伝子としては、前述のものを挙げることができる。
好ましい態様において、前記細胞療法は、組織が神経系組織であり、細胞が自家の間葉系幹細胞であり、静脈内投与、腰椎穿刺投与、脳内投与、脳室内投与、または動脈内投与される、虚血性神経疾患の処置のためのものである。
本発明は、従来では細胞増殖に必須または有用と考えられてきた抗凝固剤をごく微量で添加するか、または抗凝固剤を実質的に添加せず培養を行うことによって、異種血清(FBS)の代わりに同種血清(たとえば、細胞を採取した被験者自身の自己血清)を用いる場合においても、著しい増殖率の改善が達成され、しかも優れた増殖効率を有する(増殖が早い)細胞が得られるという、これまでの常識からは全く予測し得ない驚くべき効果を奏する。自己血清を含まない培養方法は、FBSを用いた従来の培養法に比較して、得られる細胞は安全性と分化能において格段に優れている。
本発明の医薬は、従来は有効性が想定されていなかった疾患の亜急性期以降に投与した場合であっても治療効果を奏することから、投与すべき細胞を発症前に調製しておく必要がなく、発症後に対象から採取して培養すれば足りるため、対象の負担を大幅に軽減することが可能となる。また、本発明の医薬は、静脈内注射により体内の任意の損傷部位の修復を幇助できるため対象への侵襲が少なく、また、手術の必要がなく、通常の処置室などで投与できるため、医療提供者の負担や医療コストを削減することができる。さらに、本発明の医薬は、複数の異なる組織に対して修復幇助効果を奏するため適用範囲が広く、特に複数の異なる損傷部位を有する対象を同時に効果的に処置することが可能である。
図1は、骨髄液に添加するヘパリンの量を0.1U/mL(◆)または267U/mL(■)とした場合のヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。 図2は、骨髄液に極微量(左)または2mL(右)のヘパリンを添加した場合の、培養開始から4日後での細胞数を示すグラフである。添加するヘパリンを極微量にすることで細胞数は約40倍に増加した。 図3は、ヘパリンの添加量を0.1U/mLとして、ヒト成人血清(◆)またはFBS(■)を添加した培地中での間葉系幹細胞増殖を示すグラフである。 図4は、ラット間葉系幹細胞を、様々な量のヘパリンを添加して10%FBS含有培地で培養した場合の増殖率を示すグラフである(上から順に、1U/mL、10U/mL、100U/mL、1000U/mL)。 図5は、ラット間葉系幹細胞を、ヘパリンを添加した培地中で培養した場合(◆)、または、同量のヘパリンを骨髄液中に添加してその後培地中で培養した場合(■)の増殖率を示すグラフである。 図6は、ヘパリンの添加量を0.1U/mLとして、ヒト成人自己血清(実線)またはFBS(点線)のいずれかを添加したαMEM培地中でのヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。 図7は、ヘパリンの添加量を0.1U/mL未満として、グルタミンを添加した場合(◆)またはグルタミン無添加の場合(■)の、ヒト間葉系幹細胞の増殖を示すグラフである。 図8は、ヘパリン未処理(◆)、ヘパリン処理(■)、ヘパリン+プロタミン処理後(▲)のラット間葉系幹細胞をFBS含有培地で培養したときの増殖率を示すグラフである。 図9は、本発明の医薬の治療メカニズムを示した図である。縦軸は症状の軽重、横軸は発症からの経過時間、矢印は本発明の医薬の投与時期をそれぞれ示す。矢印から右側において、上側の曲線は投与剤の投与を受けた対象の症状の推移を、下側の曲線は、投与を受けなかった対象の症状の推移をそれぞれ示す。 図10は、本発明の医薬の投与前(左)および投与の2週間後(右)における虚血性神経疾患患者の脳MRI画像である。損傷部位は白色部分として示される。 図11は、虚血性神経疾患患者の本発明の医薬の投与の前後にわたる脳梗塞レベル(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール(●)、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール(■)、MRS:修正ランキンスケール(▲))の推移を示すグラフである。矢印は細胞投与時点を示す。 図12は、本発明の医薬の投与前(左)および投与の1週間後(右)における虚血性神経疾患患者のサーモグラフィー像である。高温を示す濃色領域が投与の1週間後において顕著に縮小している。 図13は、本発明の医薬の投与前および投与後における糖尿病患者の血糖値(BS:●)、血中Glu A1濃度(■)および血中HbA1C濃度(▲)の推移を示したグラフである。縦軸は左がmg/dl、右が%を、横軸は投与日を0日とした場合の日数をそれぞれ示す。矢印は細胞(本発明の医薬)投与時点を示す。 図14は、本発明の医薬の投与前および投与後における前立腺肥大患者のPSA値の推移を示したグラフである。矢印は細胞(本発明の医薬)投与時点を示す。 図15は、本発明の医薬の投与前および投与後における肝障害病患者のγ‐GTP値(左)とGOT(右◆)およびGPT(右■)推移を示したグラフである。矢印は細胞(本発明の医薬)投与時点を示す。 図16は、本発明の医薬の投与前および投与後における腎障害病患者のβ2−マイクログロブリン値の推移を示したグラフである。矢印は細胞(本発明の医薬)投与時点を示す。 図17は、本発明の医薬の投与前および投与後における高脂血症患者の中性脂肪の推移を示したグラフである。矢印は細胞(本発明の医薬)投与時点を示す。 図18は、本発明の医薬の投与前および投与後における高次脳機能障害患者(認知症と失語症)のSLTAテスト結果とWAIS−Rテスト結果の推移を示したグラフである。 図19は、ラット脳梗塞モデルにおける本発明の医薬の投与による治療効果をMRIと血管新生の側面から各群で比較した結果を示す(図中、左から(i)非移植群、(ii)細胞(1.0×106)静注群、(iii)Angiopoietin遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(iv)VEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(v)AngiopoietinとVEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群:* p<0.05, ** p<0.01)。 図20は、ラット脳梗塞モデルにおける本発明の医薬の投与による治療効果を行動学的側面から各群で比較した結果を示す(図中、左から(i)非移植群、(ii)細胞(1.0×106)静注群、(iii)Angiopoietin遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(iv)VEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(v)AngiopoietinとVEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群:* p<0.05, ** p<0.01)。 図21は、ラット心肺停止モデル(蘇生後脳症)における本発明の医薬の投与による治療効果をTunnel陽性細胞数(A)、神経細胞数(B)で評価した結果を示す(左:対照群、右:細胞投与群:* p<0.05)。 図22は、ラット心肺停止モデルにおける本発明の医薬の投与による治療効果をMorris water maze testで評価した結果を示す(* p<0.05)。 図23は、本発明にかかるヒト間葉系幹細胞を移植した脊髄損傷モデルラットの運動機能の回復をトレッドミルテストで評価したグラフである(図中、左から6時間後、1日後、3日後、7日後、14日後移植)。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2007-235436号(2007年9月11日出願)、特願2007-236499号(2007年9月12日出願)、特願2007-267211号(2007年10月12日出願)、特願2007-278049号(2007年10月25日出願)、特願2007-278083号(2007年10月25日出願)の明細書に記載された内容を包含する。
以下、本発明による細胞増殖の方法について、詳細に説明する。
本発明の方法は、生体から採取された試料中の細胞を、培地中で培養して増殖させる方法であって、同種血清を含む培地において、細胞を抗凝固剤と実質的に接触しない状態で培養することを特徴とする。前記同種血清は血清癌マーカーおよび/または感染因子について陰性であることが検査されていることが好ましく、また細胞を採取した被験者自身の自己血清であることが好ましい。
本発明において検査される血清癌マーカーとしては、例えば、フェリチン、CEA、AFP、BFP、CA125、CA15-3、CA19-9、CA72-4、STN、DUPAN-2、SLX、ST−439、SPAN−1、SCC、PSA、G−セミノプロテイン、TPA、シフラ、PAP、NSE、C-ペプチド、PIVKA、Pro−GRP、HCGβ、エラスターゼ、β2マイクログロブリン、S-NTX、抗p53抗体、HER2を挙げることができる。また、感染因子としては、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等を挙げることができる。
本発明において用いられる試料とは、増殖能を有し、および/または組織の修復・再生のために有用な細胞を含む体液および/または組織であって、例えば、骨髄液、血液(末梢血もしくは臍帯血)またはリンパ液などの体液、筋肉組織、骨組織、皮膚、リンパ系組織、脈管、または消化器などの組織、または胚(ヒト胚を除く)などが挙げられる。生体から採取された試料は、その試料全体をそのまま、または必要に応じて処理(例えば、不要な成分の除去、特定の細胞分画の精製、酵素処理など)を行い、本発明による増殖方法に供する。
本明細書において「細胞が抗凝固剤と実質的に接触しない」とは、細胞の採取から培養期間全体のいずれかの時点において使用する抗凝固剤の量を実質的に減少させることを意味し、例えば、抗凝固剤を、細胞採取のための容器(採血管など)の内壁を抗凝固剤溶液で濡らす程度に添加するか、もしくは全く添加しないか、または培養を開始する際に試料中の抗凝固剤を実質的に除去した場合に得られる状態を意味する。
より迅速かつ大量に細胞増殖を得るためには、試料を採取する際に添加される抗凝固剤の量が少ないことが好ましく、採取した細胞は、凝血を避けるために採取後速やか(たとえば、30分以内)に培養工程に移行させる。より好ましくは、細胞と抗凝固剤とが実質的に接触しないようにする。以上の操作により、従来のおよそ3〜100倍という驚くべき増殖率が得られる。
本発明の好ましい態様においては、生体から採取された試料に添加される(すなわち、採取された試料が収められる採血管に予め添加される)抗凝固剤の量を、試料の容積に対して5U/mL未満、好ましくは2U/mL未満、さらに好ましくは0.2U/mL未満とする。
本発明の別の好ましい態様においては、生体から採取された試料中の細胞を培養する際に、培地中に存在する抗凝固剤の量が、培地の容積に対して0.5U/mL未満、好ましくは0.2U/mL未満、最も好ましくは0.02U/mL未満である。より具体的には、培養を開始する際の抗凝固剤の量が培地の容積に対して0.5U/mL未満になるように、予め試料採取のための採血管に投与する抗凝固剤の量を抑えるか、および/または、培地中に添加する抗凝固剤の量を調整する。
また、本明細書において「抗凝固剤」とは、体液中または培地中に存在する場合、細胞表面に結合して、細胞外マトリクスに存在する抗血液凝固作用を有するタンパク質と相互作用し、細胞と細胞外マトリクス、細胞同士または細胞と基質とが接着することを阻害する物質を指し、典型的には、例えば、ヘパリンおよびヘパリン誘導体(例えば、特開2005-218308A号公報において開示される、ヘパリンを構成するD−グルコサミンの6位を脱硫酸したグリコサミノグリカンなど)またはそれらの塩が用いられる。
本発明の方法において細胞を増殖させるための培地は、細胞培養の分野において通常使用される培地であれば特に限定されないが、より迅速かつ大量の増殖を得るためには、血清含有培地が好ましい。血清含有培地は、本明細書において以下の他の箇所に記載するような標準培地を基に、培地に対して12%未満の量で血清を加えたものを使用する。血清を提供する個体の負担を考えると血清量は少なければ少ないほど好ましいが、所望の迅速な細胞増殖促進作用が得られる範囲内であることを考慮すると、1%〜20容積%であることが好ましく、より好ましくは3〜12%であり、さらに好ましくは5〜10%である。
本発明の方法において使用される血清は、哺乳動物の血清であり、培養される細胞が由来する個体の血清(自己血清)である。ただし、培養される細胞がヒト細胞である場合、自己血清の採取が困難である場合、異種動物血清(例えばFBS)、あるいは同種の他個体の血清(他家血清)を使用しても、細胞が凝固剤と実質的に接触しない状態で培養される限り、高い増殖効率は達成しうる。ただし、例えばFBSに比べ、ヒト血清を用いた場合に、抗凝固剤を添加しないことによる本発明の効果は、より顕著に現れる。血清は、末梢血由来の血清であっても、臍帯血由来の血清であってもよい。
本発明の方法によって増殖させる細胞は、血液成分を含む試料から調製し、付着させて培養する細胞であればよく、例えば、間葉系細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞などの体性幹細胞、胎児幹細胞などの胚性幹細胞単核細胞(ヒト胚を除く)の他、骨芽細胞、繊維芽細胞、靱帯細胞、上皮細胞、血管内皮細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法は、その一態様において、幹細胞を増殖させるために好適であり、例えば、間葉系幹細胞を増殖させるために用いられる。
間葉系幹細胞とは、間葉系組織の間質細胞の中に微量に存在する多分化能および自己複製能を有する幹細胞であり、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などの結合組織細胞に分化するだけでなく、神経細胞や心筋細胞への分化能を有することが近年見出されている。
一態様において、本発明の方法を、ヒトの細胞を増殖させるために用いてもよい。
本発明の別の態様において、増殖させる細胞はヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類、チンパンジーなどの霊長類、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄目、ウマなどの奇蹄目、ウサギ、イヌ、ネコなど)の細胞であってもよい。
さらに、本発明の方法の一態様において、幹細胞を未分化な状態で増殖させてもよい。
一般に、幹細胞は、未分化な状態の方が増殖率および生体内導入後の生存率が高い。例えば、虚血性脳疾患の処置など、迅速かつ大量の細胞増殖が必要とされる場合においては、採取した幹細胞を未分化な状態のままで増殖させることによって、短期間に必要な細胞数を得ることができる。
あるいは、一定の細胞種へ分化した細胞が所望である場合、幹細胞または芽細胞を未分化な状態で大量に増殖させ、次いで、所望の細胞種への分化を誘導する既知の成長因子の添加またはかかる性質を有する遺伝子の導入などによる分化誘導を行うことによって、大量の分化した細胞を得てもよい。
本発明の一態様において、培地中の間葉系幹細胞の密度が5,500個/cm2以上になった時で継代培養させることが好ましい。
培地における細胞の密度は、細胞の性質および分化の方向性に影響を与える。例えば、間葉系幹細胞を培養する場合、培地中の細胞の密度が8,500個/cm2を超えると、細胞の性質が変化してしまうため、最大でも8,500個/cm2以下で継代培養させることが好ましく、より好ましくは、5,500個/cm2以上になった時点で継代培養させる。
また、本発明の好ましい態様において、培地は、少なくとも週1回交換する。
培地の交換は、細胞の培養および増殖に必要な栄養素、成長因子、増殖因子などを供給するため、また、細胞の代謝によって生成する乳酸などの老廃物を除去し、培地のpHを一定に保つために必要である。培地交換の周期は、細胞の種類、培養条件などに依存して選択されるが、特に、ヒト血清含有培地を使用する場合、血清ドナーの負担を考慮して、なるべく少ない回数であることが望ましく、例えば、本発明の方法によって間葉系幹細胞を培養する場合、少なくとも週1回、より好ましくは週1〜2回の培地交換を行う。本発明の方法によって、必要な細胞数を得るまでにかかる培養日数が短縮されるため、培地交換によって使用される血清の量を抑えることができる。
本発明の方法の好ましい一態様において、細胞の総数が100,000,000個以上になるまで継代培養を繰り返し行うことができる。
本発明の方法を用いて細胞を培養することにより、通常より3〜100倍高い増殖率が得られるため、短期間に大量の細胞を得ることができる。必要とされる細胞数は、その細胞を使用する目的に応じて変化し得るが、例えば、脳梗塞による虚血性脳疾患の治療のための移植に必要とされる間葉系幹細胞の数は、10,000,000個以上と考えられている。本発明の方法を用いた場合、典型的には、12日間で10,000,000個の間葉系幹細胞を得ることができる。このような細胞増殖の迅速化はこれまで実現されておらず、本発明の方法によって初めて可能になった。そして、この方法で得られる細胞自体も優れた増殖効率を有する。血清含有培地において実質的にヘパリンを含有させないで培養することによりこのような迅速な細胞増殖や増殖効率の高い(増殖が早い)細胞の取得が可能であることは、当業者にとって極めて驚くべきことである。
本発明の方法で得られる細胞は、分化能が高い安全なものであり、発明者らはこれを「体性基幹細胞」と名付けた。本発明の方法で得られる「体性基幹細胞」では、特定の遺伝子の発現量が、異種血清(例えばFBS)を用いた培養時と比較して変化(発現/非発現、低減/増加)している。
例えば表1には、自己血清培養細胞で発現している細胞表面抗原(CD抗原)群、および、自己血清培養幹細胞で発現していないCD抗原群が示されている。本発明の方法で得られる細胞は、表1記載の陽性CD抗原群のうち少なくとも90%が発現し、かつ陰性CD抗原群の少なくとも90%が発現していないことを特徴とする。本発明の方法で得られる細胞は、異種血清(例えばFBS)培養で発現している分化マーカーCD24が発現しておらず、より未分化の状態が維持されていることを特徴とする。
表3には、5つのケースで共通して増減のみられたサイトカインが示されている。さらに表4には、5つのケースで共通して発現量に2倍以上の差があった遺伝子群が示されている。これらの表に示されるように、本発明の方法で得られる細胞は、一連の増殖因子を発現し、特にEGFについては、異種血清(例えばFBS)を用いた培養方法に比較して、その発現レベルが高い。これは、本発明の細胞が増殖に有利であることの原因である可能性を示唆する。
さらに、表2には、FBS培養細胞と自己血清培養細胞において5つのケースで共通して増減のみられた増殖因子関連因子が示されている。この表で示されるように、本発明の方法で得られる細胞では、異種血清(例えばFBS)を用いた培養方法に比較して癌関連遺伝子群の発現あるいは発現レベルが少ない。なお、好ましくない癌関連遺伝子としては、EWI-FLI-1、FUS-CHOP、EWS-ATF1、SYT-SSX1、PDGFA、FLI-1、FEV、ATF-1、WT1、NR4A3、CHOP/DDIT3、FUS/TLS、BBF2H7、CHOP、MDM2、CDK4、HGFR、c-met、PDGFα、HGF、GFRA1、FASN、HMGCR、RGS2、PPARγ、YAP、BIRC2、lumican、caldesmon、ALCAM、Jam-2、Jam-3、cadherin II、DKK1、Wnt、Nucleostemin、Neurofibromin、RB、CDK4、p16、MYCN、telomere、hTERT、ALT、Ras、TK-R、CD90、CD105、CD133、VEGFR2、CD99、ets、ERG、ETV1、FEV、ETV4、MYC、EAT-2、MMP-3、FRINGE、ID2、CCND1、TGFBR2、CDKNIA、p57、p19、p16、p53、IGF-1、c-myc、p21、cyclin D1、p21等を挙げることができる。
本明細書において、「発現量が低減(または増加)している」は、当該分野において周知のアルゴリズム(GeneChip Algorithm(AFFYMETRIX))に基づく「Signal Log Ratio」が「−1≦」または「1≦」(すなわち、遺伝子発現量の比が2倍以上である(表5))、より好ましくは「−2≦」または「2≦」である(すなわち、遺伝子発現量の比が4倍以上である)ことが意図される。本明細書において用いられる場合、「表に記載の遺伝子」は、表に記載された「Probe Set ID」によって特定される遺伝子(その遺伝子の機能を保持した変異体を含む。)が意図される。これらの遺伝子はGene Symbolで示される遺伝子に相当する。Gene Symbolは米国NCBIによって、各遺伝子に一義的に対応付けされている名称である。Probe Set IDとGene Symbolの対応の詳細についてはAFFYMETRIX 社のNetAffixデータベースに記載されており、当業者であれば容易に理解される。遺伝子について用いられる場合、「変異体」は、「遺伝子変異体」と置換可能に用いられ、(i)特定された遺伝子の塩基配列に1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるもの、(ii)特定された遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列からなるもの、あるいは(iii)特定された遺伝子の塩基配列と少なくとも80%同一な塩基配列からなるもの、のいずれかが意図され、いずれの場合も、特定された遺伝子の機能を保持しているものである。本明細書において用いられる場合、「遺伝子の機能」は「その遺伝子によってコードされるタンパク質の機能」と置換可能に用いられる。「表に記載の遺伝子」によってコードされるタンパク質は、機能が周知のタンパク質であり、その機能を確認するためのアッセイ系も当該分野においてよく知られている。よって、当業者は、当該分野の周知技術を用いることにより、上述したような遺伝子変異体を容易に作製し得かつその機能を容易に確認し得る。例えば、ハイブリダイゼーションの具体的手順および「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件については、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第3版, J. SambrookおよびD. W. Russll編, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (2001)」(本明細書中に参考として援用される。)に記載されている方法のような周知の方法に従って行うことができる。
本発明において、CD抗原群が「発現している」、または「発現していない」とは、Affymetrix社のGenechip Operating Software (GCOS)のAnalysisモードを使用した場合の結果が意図される。また、表に記載の遺伝子の機能を保持した遺伝子変異体によってコードされるタンパク質は、表に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質の変異体であり得る。タンパク質について用いられる場合、「変異体」は、「タンパク質変異体」と置換可能に用いられ、特定された遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるものが意図される。当業者はまた、当該分野の周知技術を用いることにより、上述したようなタンパク質変異体を容易に作製し得かつその機能を容易に確認し得る。
本発明に係る細胞は、組織の修復および再生に利用可能な増殖能を有する細胞である。組織の修復および再生に用いられるドナー細胞としては、自家または他家の組織幹細胞もしくは体性幹細胞または胚性幹細胞が挙げられる。よって、本発明に係る細胞は、組織幹細胞、体性幹細胞または胚性幹細胞に由来する細胞であり得る。なお、倫理的な問題、感染症の危険性、または免疫抑制剤使用の必要性などを考慮すると、自家細胞、とりわけ、非侵襲的にドナー細胞を確保できる体性幹細胞(例えば、骨髄細胞)に由来する細胞であることが好ましい。
組織幹細胞、体性幹細胞または胚性幹細胞は哺乳動物個体の組織または体液から供給され得、これらの細胞の供給源に好ましい組織としては、例えば、筋肉組織、骨組織、脂肪組織、皮膚、リンパ系組織、脈管、消化器、毛根、歯髄、および胚(ヒト胚を除く)などが挙げられ、供給源に好ましい体液としては、例えば、骨髄液、血液(末梢血もしくは臍帯血)およびリンパ液などが挙げられる。特に、修復および再生の対象が神経系組織である場合、ドナー細胞の供給源としては、例えば、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚、脳などが挙げられ、修復および再生の対象が造血組織である場合、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚などが挙げられる。なお、当業者は、当該分野において周知の技術を用いて、目的の細胞を容易に調製し得る。
本発明に係る細胞は、組織の修復および再生に利用可能な細胞であるので、接着性の細胞であることが好ましく、例えば、間葉系細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、角膜幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞などの体性幹細胞、胎児幹細胞などの胚性幹細胞単核細胞(ヒト胚を除く)の他、骨芽細胞、繊維芽細胞、靱帯細胞、上皮細胞、血管内皮細胞などの細胞に由来することがより好ましい。なお、急性期の神経疾患の治療に用いることが意図される場合は、本発明に係る細胞は、幹細胞、特に間葉系幹細胞に由来することが好ましい。間葉系幹細胞とは、間葉系組織の間質細胞の中に微量に存在する多分化能および自己複製能を有する幹細胞であり、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などの結合組織細胞に分化するだけでなく、神経細胞や心筋細胞への分化能を有することが近年見出されている。なお、幹細胞は未分化な状態の方が増殖率および生体内導入後の生存率が高いので、本発明に係る細胞は幹細胞に由来する未分化な状態の細胞であることが好ましい。
本発明に係る細胞は、ヒト由来の細胞であることが好ましいが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類、チンパンジーなどの霊長類、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄目、ウマなどの奇蹄目、ウサギ、イヌ、ネコなど)に由来する細胞であってもよい。
本明細書において用いられる場合、自己血清は、細胞の由来する個体の血清(自己血清)であるが、自己血清の使用が困難な場合、他の成人ヒト血清を用いても高い増殖率を得ることができる。
上述したように、本発明に係る細胞は、同種、特に自己血清存在下における増殖率が異種血清存在下における増殖率より高く、しかも安全でより未分化の状態が維持された分化能の高い細胞である。本発明に係る細胞の培養に用いられる培地としては、細胞の種類、所望の分化の方向およびレベル、ならびに必要とされる増殖率などに応じて、当該分野において公知の種々の標準培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、NPBM、αMEMなど)から適宜選択されるが、DMEMが好適に用いられる。
一局面において、本発明の方法によって培養させた細胞は、組織修復・再生のための医薬の製造に用いられてもよい。
本発明の増殖方法で得た細胞を有効成分として含む治療薬を被験体に投与することによって、機能を喪失した対象の組織を修復、再生させることができる。特に、間葉系幹細胞を用いる場合、虚血性脳疾患の脳組織を修復、再生させることが可能である(国際公開WO02/00849A1号公報を参照のこと)。本明細書において言及される場合、組織の修復、再生とは、機能の修復、再生と同義であり、治療効果としては、例えば、神経系組織を修復・再生する場合、神経の保護作用(例えば、軸索の再有髄化)、神経栄養作用(例えば、神経膠細胞の補充)、脳血管新生作用、神経再生等を含む。すなわち、本発明の方法によって増殖させた細胞を含む医薬の治療効果の実体としては、組織の修復、再生を、現象としては、その組織の機能障害の修復、再生を意味している。増殖させた細胞を組織の修復・再生のために使用する場合、ドナー細胞のソースがHIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19などに感染していないことが、予め末梢血により確認されていることが好ましい。
また、一態様において、本発明の方法によって増殖させた細胞を、疾患または病原体感染の診断に使用することも可能である。例えば、被験体から採取して体外で増殖させた細胞中に含まれる癌関連遺伝子の状態を調べることによって発癌の危険性を診断することができる。
また、被験体がプリオン病に感染している場合、通常の検査方法では検出が困難であるが、本発明の方法によって細胞を増殖させることで、迅速に検出感度以上まで異常プリオンを増幅させ、プリオン病の診断を行うことができる。
あるいは、本発明の方法によって増殖させた細胞を、インビボまたはインビトロ実験に使用してもよい。
本発明の方法によって増殖させた細胞を含む組織修復・再生用医薬としては、例えば、本発明の方法を用いて生体外増幅された細胞と薬学的に受容可能な希釈剤、賦形剤および/または基材からなる、注射(例えば、神経前駆細胞、造血幹細胞、肝細胞、膵細胞、リンパ球細胞などを含む注射)および移植用インプラント、(例えば、心筋細胞シート、人工皮膚、人工角膜、人工歯根、人工関節など)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法によって培養させた細胞を含む医薬は、神経系組織の修復・再生のために用いられてもよい。例えば、自家の間葉系幹細胞を増殖させて、虚血性神経疾患の処置のための医薬に用いてもよい。好ましい一態様において、前記医薬に含まれる細胞は、細胞が投与される被験体に由来する細胞(自家細胞)である。
かかる細胞療法の対象となる神経系疾患としては、例えば、中枢性および末梢性の脱髄疾患、中枢性および末梢性の変性疾患、脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血を含む)、脳腫瘍、痴呆を含む高次機能障害、精神疾患、てんかん、外傷性の神経系疾患(頭部外傷、脳挫傷、脊髄損傷を含む)、脊髄梗塞、ならびにクロイツフェルトヤコブ病、クールー病、牛海綿状脳症、スクレイピーなどのプリオン病が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法によって増殖される細胞は、神経系疾患以外の疾患の処置においても有用である。例えば、急性白血病の治療のために、造血幹細胞を生体外増幅して骨髄中に移植してもよい。通常の骨髄移植においては、自家移植の場合でレシピエントの体重あたり典型的には2×108個、他家移植の場合4×108個の細胞数が必要とされ、細胞ドナーから採取される骨髄液の量は1000mLに及ぶこともあり得るが、本発明の方法を用いて生体外で細胞を迅速に増殖させることにより、細胞ドナーの身体的な負担を軽減することができる。また、ウイルス感染などの治療のために、患者の末梢血から採取したTリンパ球を、本発明の方法を用いて生体外で増幅し、同一患者に移植してもよい。
組織の修復・再生のための細胞補充に用いられるドナー細胞のソースは、自家または他家の組織幹細胞もしくは体性幹細胞または胚性幹細胞に求め得るが、倫理的な問題、感染症の危険性、または免疫抑制剤使用の必要性などの困難を考慮すると、自家細胞、とりわけ、非侵襲的にドナー細胞を確保できる体性幹細胞(例えば、骨髄細胞)を使用する自家移植療法が望ましい。自家移植療法が困難な場合には、他人または他の動物由来の細胞を利用することも可能である。ドナー細胞は、培養を開始する際の試料中に含まれる抗凝固剤の量が5U/mL未満であれば、培養の直前に採取された試料に含まれる細胞であっても、凍結保存した細胞であってもよい。例えば、国際公開WO 2005/001732A1号公報に記載の治療用細胞の配送支援システムを用いる治療モデルのように、予め自家細胞を増殖し、凍結保存して、疾患時に投与してもよい。
細胞のソースは、修復・再生の対象とする特定の組織の細胞種へ分化することが既に分かっている細胞、例えば、同じ胚葉系の細胞または全能性幹細胞を含むものであることが望ましいが、ある程度他の胚葉へ分化している幹細胞(例えば、胎児肝細胞)が、神経系細胞など他の組織の細胞に再分化することも見出されている(例えば、WO 02/00849A1号公報に記載の細胞)ことを考慮すれば、公知の分化誘導因子などを用いて所望の細胞種への分化を誘導することができるものであれば、異なる胚葉系の細胞を含む組織であってもよい。
修復の対象となる組織が神経系の場合、ドナー細胞のソースとして、例えば、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚、脳などに由来する細胞が挙げられる。修復の対象となる組織が造血組織の場合、骨髄、末梢血、臍帯血、胎児胚などに含まれる、造血幹細胞、臍帯血幹細胞などが挙げられる。
神経系組織の修復のために骨髄由来の間葉系幹細胞を利用する場合、以下のような利点が存在する:1)顕著な効果が期待できる、2)副作用の危険性が低い、3)充分なドナー細胞の供給が期待できる、4)非侵襲的な治療であり自家移植が可能であるので、5)感染症のリスクが低い、6)免疫拒絶反応の心配がない、7)倫理的問題がない、8)社会的に受け入れられやすい、9)一般的な医療として広く定着しやすいなど。さらに、骨髄移植療法は既に臨床の現場で用いられている治療であり、安全性も確認されている。また、骨髄由来の幹細胞は遊走性が高く、局所への移植ばかりか、静脈内投与によっても目的の損傷組織へ到達し、治療効果が期待できる。
骨髄液の採取は、例えば、採取源となる動物(ヒトを含む)を麻酔(局所または全身麻酔)し、胸骨または腸骨に針を刺し、シリンジで吸引することにより行うことができる。また、出生児に臍帯に直接針を刺し、注射器で吸引して、臍帯血を採取保存しておくことは、確立された技術となっている。従来の方法においては、採取した骨髄液中で血液成分の凝固が起こることを防ぐために抗凝固剤を用いるが、本発明の方法においては、抗凝固剤を使用しないことは、先に述べたとおりである。
本発明の方法によって増殖された細胞を含む医薬を損傷組織へ送達する方法として、例えば、外科的手段による局所移植、静脈内投与、腰椎穿刺投与、局所注入投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、または静脈投与などが考えられる。また、本発明の方法によって増殖された細胞を、インプラント、細胞シート基材、人工関節などに含有または播種させて生体内へ移植してもよい。
患者への細胞の注射による移植は、例えば、神経系の修復のために用いられる場合、移植する細胞を、人工脳脊髄液や生理食塩水などを用いて浮遊させた状態で注射器に溜め、手術により損傷した神経組織を露出し、この損傷部位に注射針で直接注入することにより行うことができる。組織内を移動することができる程度に遊走性の高い細胞(例えば、WO 02/00849A1号公報に記載の細胞など)の場合、損傷部位の近傍へ移植してもよく、また、脳脊髄液中への注入によっても効果が期待できる。この場合、通常の腰椎穿刺で細胞を注入することができるため、患者の手術の必要はなく、局所麻酔のみですむため、病室で患者を処置できる点で好適である。さらに、静脈内への注入でも効果が期待できる。したがって、通常の輸血の要領での移植が可能となり、病棟での移植操作が可能である点で好適である。
本発明による細胞の増殖に好適な培地は、細胞の種類、所望の分化の方向およびレベル、ならびに必要とされる増殖率などに応じて選択される。例えば、神経系の修復に用いるために間葉系幹細胞を増殖させる場合に好適な培地としては、以下に示すダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の他、神経前駆細胞標準培地(NPBM:Clontech製)、αMEM培地などが挙げられるが、これらに限定されない。このような標準培地を基に、上記のように血清を添加し、さらに必要に応じてアミノ酸等の栄養因子、抗生物質、増殖因子および/または成長因子などを加える。
標準培地の具体例としては、以下の成分を以下の濃度(mg/L)で含むダルベッコ改変培地が挙げられる:
CaCl2(無水物):160〜240
KCL:320〜480
Fe(NO3)3・9H2O:0.08〜1.2
MgSO4(無水物):80〜120
NaCl:5120〜7680
NaHCO3:2960〜4440
NaH2PO4・H2O:100〜150
D−グルコース:3600〜5400
フェノールレッド:12〜18
ピルビン酸ナトリウム:88〜132
L−アルギニン・HCl:67〜101
L−システィン・2HCl:50〜76
L−ヒスチジン・HCl・H2O:34〜50
L−イソロイシン:84〜126
L−ロイシン:84〜126
L−リジン・HCl:117〜175
L−メチオニン:24〜36
L−フェニルアラニン:53〜79
L−セリン:34〜50
L−スレオニン:76〜114
L−トリプトファン:13〜19
L−チロシン(2ナトリウム塩):83〜125
L−バリン:75〜113
塩化コリン:3.2〜4.8
D−Ca−パントテン酸:3.2〜4.8
葉酸:3.2〜4.8
i−イノシトール:5.8〜8.6
ナイアシンアミド:3.2〜4.8
ピリドキサール・HCl:3.2〜4.8
リボフラビン:0.3〜0.5
チアミン・HCl:3.2〜4.8
所望により、細胞培養の分野において通常使用される抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を、単独でまたは併用して使用してもよい。複数の抗生物質を併用することが好ましく、例えば、ペニシリンとストレプトマイシンとを併用する場合、培地に対して各0.5〜2容積%であり、好ましくは0.8〜1.2容積%である。
培地に含有される低分子アミノ酸としては、L-アラニン、L−アスパラギンサン、L−システイン、L-グルタミン、L−イソロイシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−バリン、L−アスコルビン酸、およびL−グルタミン酸が挙げられる。これらのアミノ酸は、細胞培養の分野において通常使用される培地中に栄養素として含まれているものである。
さらに、本発明者らは、グルタミンを培地総量の0.1〜2%(重量/容積)で添加することが、間葉系幹細胞の迅速な増殖にとって不可欠であり、さらに、培養中のグルタミンが0.1〜2%(重量/容積)を保つように補充を行うことが、迅速な増殖をさらに促進することを見出した。
上記の標準培地に、必要に応じて増殖・成長因子および/または分化誘導因子を添加してもよい。増殖・成長因子および分化誘導因子は、所望の分化の方向およびレベル、必要な増殖率などに応じて選択される。例えば、アスコルビン酸およびニコチンアミドなどのビタミン類、NGFおよびBDNFなどの神経栄養因子、BMPなどの骨形成因子、上皮細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、IL−2などのサイトカインが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の細胞培養方法は、具体的には例えば以下のように行う。
1.上記のようにヘパリン液にて内壁を濡らしたシリンジにて生体から採取した試料を、100倍以下の希釈率、好ましくは10倍以下の希釈率、さらに好ましくは約2倍〜6倍程度の希釈率で、予め37±0.5℃に保った培地中に加え、培養ディッシュに播種し、37±0.5℃、5%の炭酸ガス中でインキュベートする。培地の交換は少なくとも週1回、典型的には週1〜2回行う。培地は、好適な標準培地に血清および必要な助剤を添加して調製し、ろ過滅菌機により滅菌し、小分けして4℃の保冷庫に保管したものを、予め37±0.5℃に保って使用する。37.5℃を超えると死滅細胞が増え、36.5℃未満では生育が遅い。炭酸ガス濃度は5±1%の範囲が好ましい。全ての工程で細胞に接触する溶液を同様の温度範囲に保つことが、増殖の迅速化を促進する。
2.細胞が培養ディッシュ基材に付着した後、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離、除去する。次いで、洗浄液としてリン酸緩衝食塩水を用いて、付着している幹細胞表面を洗浄する。
3.継代は、ディッシュ内の細胞が5,500個/cm2以上となる時点を目安として、細胞密度が8,500個/cm2を超えないように、コンフルエントの60〜80%、好ましくは65〜75%になった時点で行う。継代の際は、主としてトリプシンおよび必要に応じてEDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)からなる剥離剤を、ディッシュ1枚あたり3mL添加して、37±5℃で3〜5分間のインキュベーションの後、付着した幹細胞が剥離したことを確認する。分離液を傾斜法にて培地と置換して、培地中の細胞を所定の遠沈管に移し遠心分離により細胞を遠沈させて継代する。少なくとも間葉系幹細胞の総数が100,000,000個以上になるまで、培養、培地交換、継代のサイクルを繰り返す。培地の交換は、少なくとも週1回は行う。
以上のサイクルを繰り返すことで、迅速に目的とする細胞数が得られる(例えば、間葉系幹細胞の場合、1×108個の細胞を2週間以内に得ることができる)。
所望により、増殖後の細胞の剥離を容易にする細胞足場材を使用することも可能である。好適な足場材の例としては、多孔質の無機系セラミックス、マイクロピラー(例えば、日立製作所製ナノピラー細胞培養シート)、不織布、ハニカム膜フィルム等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一つの局面において、培養される細胞は、予め、例えば、BDNF遺伝子、PLGF遺伝子、GDNF遺伝子、若しくはIL−2遺伝子などの、増殖および分化を誘導する遺伝子を導入されていてもよい。あるいは、培養される細胞は、テロメラーゼ遺伝子などの不死化遺伝子が導入された不死化した細胞であってもよい。かかる遺伝子の導入については、例えばWO03/038075A1号公報などにおいて開示されている。
上記で例として挙げたような培地、足場剤、助剤、増殖因子および/または遺伝子導入などから、所望の増殖率および/または特定の細胞種への分化を誘導するような組み合わせを選択することは、当業者の能力の範囲内である。
本発明の方法によって増殖させた細胞は、そのまま組織の修復・再生のために投与することも可能であるが、治療効率を向上させるために、任意に種々の薬剤を添加した組成物として、あるいは遺伝子導入により改変し、投与または移植することも考えられる。例えば、本発明の方法によって増殖させた細胞の組織内でのさらなる増殖率を向上させる物質、所望の細胞への分化を促進する物質、もしくは組織内での生存率を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;移植される細胞が損傷した生体組織から受ける悪影響を阻止する効果を有する物質の添加、および/またはかかる遺伝子の導入;ドナー細胞の寿命を延長する物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;細胞周期を調節する物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;免疫細胞の抑制を目的とした物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;エネルギー代謝を活発にする物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;ドナー細胞の組織内での遊走能を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;血流を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入などが考えられるが、これらに限定されない。
細胞の培養は、好ましくはGMP基準の細胞調製施設「CPC(Cell Processing Center)」で行う。対象へ投与する「臨床グレードの細胞」の調製は、無菌状態で細胞を操作すべく特別に設計された施設、より具体的には、空調制御、室圧制御、温湿度制御、パーティクルカウンター、HEPAフィルターなどにより清潔度が担保されたCPCで行うことが好ましい。また、CPC施設自体のみならず、CPC内で使用する全ての機器は、バリデーションにより性能が保障され、その機能を、随時モニタリング・記録することが好ましく、CPCでの細胞処理操作は、全て「標準手順書」によって厳格に管理・記録することが望ましい。
本発明の医薬は、細胞成分として間葉系幹細胞以外の細胞種を含んでもよいが、細胞成分に占める間葉系幹細胞の割合が高いものが好ましい。したがって、本発明の医薬の好ましい態様においては、医薬に含まれる全細胞数に対する間葉系幹細胞数の割合は、50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であり、最も好ましくは間葉系幹細胞以外の細胞種、例えば造血幹細胞等を実質的に含まない。細胞成分に占める間葉系幹細胞の割合は、例えば、医薬に含まれる細胞を間葉系幹細胞に特異的な1種または2種以上のマーカー(例えば、CD105、CD73、CD166、CD9、CD157などの表面抗原)に対する標識化抗体で標識し、フローサイトメトリー法等で解析することにより容易に決定することができる。
本発明の医薬に含まれる間葉系幹細胞の細胞数は多い程好ましいが、対象への投与時期や、培養に要する時間を勘案すると、効果を示す最小量であることが実用的である。したがって、本発明の医薬の好ましい態様において、間葉系幹細胞の細胞数は、107個以上、好ましくは5×107個以上、より好ましくは108個以上、さらに好ましくは5×108個以上である。
上記間葉系幹細胞以外の細胞種としては、神経組織の修復の幇助を企図する場合は、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血または胎児肝より分離して得た、神経系細胞へ分化し得る細胞であって、Lin−、Sca−1+、CD10+、CD11D+、CD44+、CD45+、CD71+、CD90+、CD105+、CDW123+、CD127+、CD164+、フィブロネクチン+、ALPH+、コラゲナーゼ−1+の特徴を有する間質細胞、あるいはAC133+の特徴を有する細胞などを挙げることができるが、これらに限定されず、神経系細胞へ分化し得るその他の任意の細胞種を用いることができる。
上記間質細胞は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞から遠心分離して得た細胞分画の中から、CD45等の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。また、脊椎動物から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞を、800gで比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07〜1.1g/mlの範囲に含まれる一定の比重の細胞分画を回収することによっても調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味し、通常、10〜30分間程度である。回収する細胞分画の比重は、好ましくは1.07〜1.08g/mlの範囲、例えば、1.077g/mlである。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した骨髄液または臍帯血を同量の溶液(PBS+2%BSA+0.6%クエン酸ナトリウム+1%ペニシリン−ストレプトマイシン)溶液に混合し、そのうちの5mlをFicol+Paque液(1.077g/ml)と混合し、遠心(800gで20分間)し、単核細胞分画を抽出する。この単核細胞分画を細胞の洗浄のために培養溶液(αMEM、12.5%FBS、12.5%ウマ血清、0.2%i−イノシトール、20mM葉酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、1μM ヒドロコルチゾン、1%anti-biotic-antimycotic solution)に混合し、遠心(2000rpm、15分間)する。次いで、遠心後の上澄みを除去した後、沈降した細胞を回収し、培養する(37℃、5%CO2)。
上記AC133+細胞は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞から遠心分離して得た細胞分画の中から、AC133の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。また、その他の態様として、脊椎動物から採取した胎児肝細胞を、2000回転で比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07〜1.1g/mlの範囲に含まれる細胞分画を回収し、この細胞分画から、AC133+の特徴を有する細胞を回収することによっても調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味し、通常、10〜30分間程度である。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した肝臓組織をL−15溶液内で洗浄し、酵素処理(L−15+0.01%DNaseI、0.25%トリプシン、0.1%コラーゲナーゼを含む溶液中で、37℃で30分間)し、ピペッティングにより単一細胞にする。この単一細胞となった胎児肝細胞を遠心分離する。これにより得られた細胞を洗浄し、洗浄後の細胞からAC133抗体を利用してAC133+細胞を回収する。これにより胎児肝細胞から神経系細胞へ分化し得る細胞を調製することができる。抗体を利用したAC133+細胞の回収は、マグネットビーズを利用して、または、セルソーター(FACSなど)を利用して行うことができる。
本発明の医薬は、好ましくは非経口投与製剤、より好ましくは非経口全身投与製剤、特に静脈内投与製剤である。非経口投与に適した剤形としては、限定することなく、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤等の注射剤や移植片などが挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。具体的には、例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、培地、PBSなどの生理緩衝液、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、適切な単位投与形態に製剤化することができる。
注射用の水溶液としては、限定することなく、例えば生理食塩水、培地、PBSなどの生理緩衝液、ブドウ糖やその他の補助剤を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80、HCO−50等と併用してもよい。
本発明において、損傷とは、生体が、内的および/または外的要因により全身的もしくは局所的に何らかの障害を受けることをいう。したがって、本発明における損傷には、種々の外傷、梗塞、退行性病変、組織破壊など様々な状態が含まれる。また、損傷部位も、全身の種々の組織、例えば、脳、神経、腎臓、膵臓、肝臓、心臓、皮膚、骨、軟骨等を包含する。損傷部位は1箇所であっても複数箇所であってもよい。本発明の医薬は、種々の組織に効果があり、単回の投与で複数箇所の損傷部位を一度に修復することができるため、損傷部位を複数有する対象の処置に特に有効である。損傷を引き起こす要因としては、例えば、物理的な外力(事故、火傷、被爆など)、種々の虚血性疾患(脳梗塞、脊髄梗塞等の虚血性神経疾患、心筋梗塞等の虚血性心疾患など)、種々の炎症、糖尿病、種々の感染症、自己免疫疾患、腫瘍、毒物への暴露、中枢性および末梢性の脱髄疾患、中枢性および末梢性の変性疾患、脳出血、クモ膜下出血、脳腫瘍、痴呆を含む高次機能障害、精神疾患、てんかん、クロイツフェルトヤコブ病、クールー病、牛海綿状脳症、スクレイピーなどのプリオン病などが挙げられるが、これに限定されない。本発明における損傷は、典型的には組織機能の喪失および/または低下を伴うものを指す。
組織機能の喪失および/または低下としては、限定することなく、例えば神経組織であれば、痛み、シビレ、感覚鈍麻等の感覚障害、麻痺、ツッパリ、半身不随、ふらつき、歩行障害、運動緩慢やぎこちなさなどの運動障害、頭痛、記憶障害、意識障害、言語障害、けいれん、ふるえ、認知症、幻覚、異常行動などの脳機能障害、立ちくらみ、めまい、失神、排尿障害、発汗障害などの自律神経障害など、腎臓であれば、排泄機能、電解質・水分バランス等の体液バランスの調節機能、内分泌機能の喪失および/または低下など、膵臓であれば、外分泌機能および内分泌機能の喪失および/または低下など、肝臓であれば、物質代謝機能、物質合成機能、外分泌機能の喪失および/または低下など、心臓であれば、血液拍出機能、内分泌機能の喪失および/または低下などを挙げることができる。ある組織が障害を受けた場合に生じる具体的な機能の喪失および/または低下、ならびにそれに伴う症状は、当業者に知られている。
また、損傷部位の修復、再生とは、機能の修復、再生と同義であり、治療効果としては、例えば、神経系組織を修復・再生する場合、神経の保護作用(例えば、軸索の再有髄化)、神経栄養作用(例えば、神経膠細胞の補充)、脳血管新生作用、神経再生等を含む。すなわち、本発明の医薬の治療効果の実体としては、組織の修復、再生を、現象としては、その組織の機能障害の修復、再生を意味する。例えば、脳の損傷であれば、治療効果の実体は浮腫の低減、軸索の再有髄化、神経膠細胞の増加、血管新生、神経再生等であるが、現象的には、脳血流の回復、麻痺の回復、痛みやしびれなどの軽減などとして現れる。これらの効果は、損傷組織の物理学的検査、例えば、X線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、内視鏡検査、バイオプシーなどによって確認することができるほか、種々の血液学的検査、生化学検査、内分泌学的検査、運動機能検査、脳機能検査、認知機能検査等によっても確認することができる。
本発明の医薬が、損傷部位の「修復を幇助する」とは、典型的には、本発明の医薬の投与により、本剤の成分が生体の修復機構を支援、補助し、損傷部位の修復が、本剤を投与しなかった場合と比べて促進、増強されることを意味するが、これに限られず、損傷部位の損傷の拡大や重篤化の抑制や、進行中の損傷を阻止し、さらにはこれを回復に導くことも包含する。本剤の投与により、生体の修復機構が機能するために好適な環境が損傷部位において醸成される。具体的には、本発明の医薬がもたらす修復の幇助は、限定することなく、例えば、サイトカインの分泌、血管新生および/または組織再生によってもたらされ得る(図9参照)。
また、本発明の医薬により、例えば、腎不全を伴う損傷腎臓においてはBUN値および/またはクレアチニン値などの腎機能指標の改善、膵臓ランゲルハンス島のインスリン分泌機能低下を伴う損傷膵臓においては、インスリン分泌や、血糖値、血中Glu A1濃度および/または血中HbA1C濃度などの糖尿病指標の改善、虚血性心疾患による損傷心臓においては血中プロスタグランジンD合成酵素濃度および/または血中ホモシステイン濃度などの改善、肝不全を伴う損傷肝臓においてはGOT値、GPT値および/またはγ−GTP値などの肝機能指標の改善等がそれぞれもたらされ得る。
本発明の医薬の好ましい態様において、該医薬は損傷部位の処置の後に投与される。ここで、損傷部位の処置とは、典型的には損傷の超急性期や急性期の処置を意味し、例えば、損傷の拡大を抑制する処置や、損傷を外科的に修復する処置などが含まれる。また、別の好ましい態様において、本発明の医薬は、生体に備わる自律的な修復力を幇助することを目的として投与する。
また、本発明の医薬は、好ましくは、損傷の亜急性期以降に投与する。亜急性期は、損傷による症状の増悪期(超急性期や急性期)の後におとずれる回復期を指し、例えば、脳梗塞の場合は、発症後1〜2ヶ月の時期を指す。
本発明の医薬における間葉系幹細胞として好ましいのは、損傷部位を有する対象から採取した細胞に由来する、自己間葉系幹細胞である。自己細胞を用いることで、拒絶反応や、感染などのリスクを回避することができる。また、自己間葉系幹細胞は、損傷発生前に採取しても、損傷発生後に採取してもよい。損傷発生前に採取する場合は、損傷発生の予測が通常困難であるため、採取した細胞を、任意に純化・増殖させてから、凍結保存などの手法で保存しておく必要がある。損傷発生後に採取する場合は、採取した細胞を純化・増殖させた後、そのまま対象に投与することもできるし、凍結保存などの手法で保存し(例えば、−152℃のディープフリーザーにて)、タイミングを見計らって適宜投与することもできる。また、一度に全ての細胞を投与することもできるし、一部を保存しておき、必要に応じて追加投与することも可能である。
なお、本発明における用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は典型的には何らかの損傷部位を有している。
本発明は、生体外で培養した細胞が、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であるか否かを評価する評価方法にも利用できる。一実施形態において、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において特定の遺伝子の発現量を測定する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞において表1〜4に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定する工程を包含し得る。本実施形態に係る評価方法は、表1〜4に記載の遺伝子の少なくとも1つの、コントロール細胞における遺伝子の発現量と比較する工程をさらに包含してもよい。
本発明において、コントロール細胞は、評価すべき細胞と同じ供給源から調製されかつ異種血清を用いて培養された細胞が用いられる。コントロール細胞における目的遺伝子の発現量は、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量を測定する際に同時に測定されてもよく、予め取得されていてもよい。すなわち、本発明に係る評価方法は、コントロール細胞における目的遺伝子の発現量を測定する工程をさらに包含してもよい。
本発明を用いれば、対象とする遺伝子が表2〜4のBに記載の遺伝子である場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、コントロール細胞における該遺伝子の発現量より低い場合に、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。また、対象とする遺伝子が表2〜4のAに記載の遺伝子である場合、評価すべき細胞における目的遺伝子の発現量が、コントロール細胞における該遺伝子の発現量より高い場合に、生体組織の修復および再生に利用可能な細胞であると評価される。
本発明において、遺伝子の発現量の測定は、mRNA量に基づいて行われてもタンパク質量に基づいて行われてもよい。上述したように、「表に記載の遺伝子」は、表に記載された「Probe Set ID」によって特定される遺伝子(その遺伝子の機能を保持した変異体を含む。)が意図され、当業者であれば、表中の「Gene Title」に基づいて容易に理解されるので、当業者は、mRNA量の測定に必要な配列なツール(例えば、プライマーまたはプローブ)を容易に構築し得るとともに、タンパク質量の測定に必要な抗体を容易に入手し得る。また、本発明に係る評価方法は、本実施例に記載のシステムにおいて遺伝子発現量の比が4倍以上であることを指標にして行われてもよい。
本発明に係る評価方法は、評価すべき細胞の同種血清存在下における増殖率と異種血清存在下における増殖率とを比較する工程を包含してもよい。本発明は、ヒト由来の細胞に適用されることが好ましく、この場合、異種血清はFBSであることが好ましい。これまで、ヒト血清は、FBSと比較して増殖促進活性が著しく劣り、ヒト血清単独では十分な細胞増殖促進活性を示さないことが知られており、ヒト血清(とくに自己血清)使用時の細胞増殖率とFBS使用時の細胞増殖率とを比較することによって生体組織の修復および再生に利用可能であるか否かを評価し得るということは予期されるものではなかった。
以下の実施例は、本発明の方法による細胞の増殖、および本発明の方法によって増殖された細胞を含む組織の修復・再生のための医薬について、さらに具体的に説明するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。細胞培養および/または細胞療法の分野において通常の知識および技術を有する者は、本発明の精神を逸脱しない範囲で、多様な改変を行うことができる。
実施例1
内壁を予め微量のヘパリン(骨髄液1mLあたり0.1U)で濡らした採血管を用いて、脳疾患患者から骨髄液を60mL採取し、210mLの培地中に添加し、総量270mLとした。この骨髄液含有培養液を18等分して、15mLずつ150mm径のディッシュ(IWAKI製Tissue culture dish #3030-150)中に播種し、培地を5mLずつ添加して1ディッシュあたり総量20mLとした。播種後、9ディッシュずつ、別々のインキュベーターに静置して、37±0.5℃、5%の炭酸ガス雰囲気下で培養した。骨髄液は、予め末梢血の検査によって、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等に感染していないことを確認した。
培地は、ダルベッコ改変イーグル培地500mLに、自己末梢血由来の血清56.8mL、抗生物質5.7mL(ペニシリン10,000U/mL、ストレプトマイシン10mg/mLよりなる)、およびグルタミン5.7mL(292.3mg/L)を添加して調製し、ろ過滅菌し、小分けして4℃の保冷庫に保管したものを、予め37℃に保って使用した。
4日目に培養容器に付着した間葉系幹細胞を洗浄するに当たって、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離、除去し、次いで洗浄液としてリン酸緩衝食塩水5mLを用いて、付着している間葉系幹細胞表面を6回洗浄した。
8日目に第一継代を行うにあたり、リン酸緩衝食塩水5mLを用いて洗浄後、付着した幹細胞を剥離するために、分離液(0.25%トリプシン−2.21mM EDTA)4mLをディッシュに添加し、3分間37℃でインキュベートし、剥れを確認した。付着分離させた分離液に同量の培地を加え、傾斜法にて全量を回収した。ディッシュ9枚分の細胞を遠沈管9本に移して、遠心分離機により800rpmで5分間遠心した。分離後各遠沈管の上澄み液を除去し、DMEMを加えて細胞を集めた。集めた細胞溶液を、再度800rpmで5分間遠心した。遠心分離後、各遠沈管の上澄み液を除去し、培地300mLを加えて細胞を集めた。この細胞溶液をディッシュ15枚に小分けして継代し、初代培養と同様に37±0.5℃、炭酸ガス濃度5%中でインキュベートした。同様の継代操作を残り9ディッシュについても行った。
13日目に、洗浄、剥離、遠心分離を上記と同様に行い、小分けしたもので細胞数を血球計測盤で計測したところ、1.1×10個に達していたので、更に継代させた。培養を継続し、20日目に同様の細胞数計測を行ったところ、細胞総数が1.0×10に達したので、洗浄、剥離、遠心分離を行い、凍結保存液(通常の濾過滅菌したRPMI20.5mLと、患者から採取した自己血清20.5mL、デキストラン5mL、DMSO 5mL)に懸濁して−150℃度で凍結した。細胞中の間葉系幹細胞の比率は98%以上(CD105陽性(陽性率=99.9%)、CD34陰性(陰性率=98.8%)、CD45陰性(陰性率=98.5%)であった。
比較例1
試料中のへパリンの含量を2mL(267U/mL)に変えた他は全て実施例1と同様の条件で培養を行った。結果を図1および図2に示す。ヘパリンを極微量(0.1U/mL)しか添加しない場合、培養開始から4日後で、8×10個の増殖を得、一方、2mLのヘパリンを添加した場合、2×10個の増殖を得、ヘパリンが微量である場合において約40倍の増殖率を得た(図1および図2)。培養を続けた場合、培養開始から12日後での細胞数は、ヘパリンを極微量添加した細胞で1.4×10個まで増加し、一方、ヘパリン2mLを添加した細胞は、2.9×10個であった(図1)。これらの結果は、ヘパリンの添加が細胞増殖に対して阻害効果を及ぼすことを示すとともに、抗凝固剤の添加量がごく微量であるかまたは実質的に添加しなくとも、本発明の方法によって細胞を迅速に増殖させることが可能であることを確認し、さらに、試料中のヘパリンの量を極微量とすることによって、著しい増殖率の改善を得ることを示す。
比較例2
ヒト末梢血由来の血清の代わりにFBSを用いる他は全て実施例1と同様の条件で、8日間培養を行った。細胞数計測による間葉系幹細胞の増殖速度の比較を、図3に示す。本発明の条件下においてヒト間葉系幹細胞を培養する場合、ヒト成人血清を用いた場合、FBSを用いた場合と比較して、培養開始から5日後で約2.6倍、8日後で約6倍の増殖率を得た。この結果は、ヒト骨髄細胞の培養において、試料中のヘパリンの量を極微量とすることによって、ヒト成人血清を使用してFBSより高い増殖率が得られることを示す。
比較例3
ラット間葉系幹細胞を用いて実験を行った。ラット大腿骨2本から採取した骨髄細胞を、実施例1と同様の培地にヘパリンをそれぞれ1U/mL、10U/mL、100U、または1000U/mLで添加して培養した。ヒト末梢血由来の血清の代わりにFBSを用いる他は、全て実施例1と同様の条件で培養を行った。結果を図4に示す。培地中のヘパリンの濃度が高くなるほど、増殖に対する阻害効果が高くなることが示された。
比較例4
ラット間葉系細胞を用いて、以下のように実験を行った。1群:ラット大腿骨1本より、DMEM4mLを用いて骨髄液を押し出し、合計4mL強の試料を得た。この試料を、ヘパリン160Uを添加したDMEM36mLに加え、培養を開始した。培地中のヘパリン濃度は、4U/mLであった。2群:ラット大腿骨1本より、ヘパリン160Uを添加したDMEM4mLを用いて骨髄液を押し出し、合計4mL強の試料を得た。この試料を、このまま高濃度のヘパリンに曝した状態で、5分間室温で放置した後、DMEM36mLに加え、培養を開始した。培地中のヘパリン濃度は、4U/mLであった。これら2群の細胞数の変化を、図5に示す。1群において、2群と比較して著しい増殖率の低下が観察された。この結果は、試料採取の際(または培養に移行する前)に細胞試料にヘパリンを添加した場合、培養時の培地中にヘパリンを添加した場合と比較して、細胞の増殖効率が低下するがことを示唆する。
実施例2
標準培地としてDMEMの代わりにαMEM培地を使用した他は、全て実施例1と同様の条件で培養を行った。結果を図6に示す。αMEM培地を用いる場合においても、ヘパリンの量を抑えることにより、ヒト血清を用いてFBSよりも迅速な増殖が得られることを確認した。
比較例5
培地中にグルタミンを含まない以外はすべて実施例1と同様にして7日間培養した。細胞数計測による間葉系幹細胞の増殖速度の比較を、図7に示す。培養開始から1週間後で、グルタミンを使用する場合において約1.6倍の増殖率が観察された。この結果は、間葉系幹細胞の迅速な増殖のために、グルタミンの添加が必要であることを示す。
実施例3
〔方法〕
ラットの大腿骨3本を採取し、それぞれDMEM(5ml)で骨髄細胞を洗い出し、下記を添加して3群のサンプルを調製した。
(i)DMEM(5ml)
(ii)DMEM(5ml)+ヘパリンを2μl
(iii)DMEM(5ml)+ヘパリンを2μl+プロタミン2μl
各サンプルは、DMEMで洗浄し、10mlの培養液(DMEM+10%FBS+1%penicillin/streptomycin+2mM L-Glutamine)に入れ、10cmディッシュへ播種し、14日間培養した。継代は5,500個/cm2を越えた時点で行った。
〔結果〕
図8に示すとおり、ヘパリン処理を経ない細胞は、ヘパリン処理を経た細胞と比較して初期量も多いが、増殖率も高く、それは培養8〜11日において顕著であった。また、ヘパリンの活性を阻害する物質であるプロタミンを加えた細胞も、ヘパリン処理を経た細胞と同様に、初期量も増殖率も低かった。
実施例4
細胞がヘパリンと実質的に接触しない状態、すなわち低濃度ヘパリン条件下において、自己血清培養した間葉系幹細胞とFBS培養した間葉系幹細胞を比較した。
〔cDNAの合成および精製〕
実施例1の方法にしたがい自己血清含有培地で培養した間葉系幹細胞と、比較例2の方法にしたがいFBS含有培地で培養した間葉系幹細胞を1×10cell/sampleに別々に調整し、それぞれからRNeasy Protect Min Kit (QIGEN,Cat.No.74124)を用いてtotal RNAを抽出した。細胞の破壊にはQIA shredder (QIAGEN,Cat.No.79654)を使用した。得られたRNA溶液を0.5μg/μlに調整し、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)を使用してRNAの品質をチェックした。
GeneChip Eukaryotic Poly-A RNA Control Kit (AFFYMETRIX, P/N900433) およびMessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791) を用いて、1st strand cDNAを合成した。具体的には、70℃にて10分間反応させた反応溶液(I)に、反応溶液(II)を加えて20μlの反応系で42℃にて2時間反応させた。
Figure 2012100662
Figure 2012100662
続いて、MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、2nd strand cDNAを合成および精製した。具体的には、反応溶液(III)を、反応後の反応溶液(II)に加えて100μlの反応系で16℃にて2時間反応させ、キットに付属のcDNA Filter Cartridgeを用いて、最終的に24μlのNuclease-free Waterを2回に分けてFilterに添加して溶出することによってcDNAを精製した。
Figure 2012100662
〔IVT反応〕
MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、IVT反応およびaRNAの精製を行った。具体的には、反応溶液(IV)を37℃にて14時間反応させた後、60μlのNuclease-free Waterを加えて反応を停止させ、キットに付属のaRNA Filter Cartridgeを用いて、最終的に100μlのNuclease-free WaterをFilterに添加して溶出することによってaRNAを精製した。得られたRNA溶液を20μg/32μlに調整し、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)を使用してRNAの品質をチェックした。
Figure 2012100662
〔Hybridization Cocktailの調製〕
MessageAmpII-Biotin Enhanced Kit (Ambion, Catalog#1791)を用いて、aRNAをフラグメント化し、Hybridization Cocktailを調製した。具体的には、反応溶液(V)を94℃にて35分間反応させた後に、GeneChip Expression 3’-Amplification Reagents Hybridization control kit (AFFYMETRIX, P/N900454)を用いてHybridization Cocktailを調製し、99℃にて5分間反応させた後45℃で5分間反応させた。
Figure 2012100662
Figure 2012100662
〔ハイブリダーゼーション〕
GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array (AFFYMETRIX, P/N900466)を1×Hybridization bufferで満たし、60rpm、45℃にて10分間のprehybridizationを行った。その後、1×Hybridization bufferを除き、調製したHybridization Cocktailで満たして60rpm、45℃にて一晩hybridizationを行った。
〔洗浄および染色〕
Wash Buffer A (6×SSPE, 0.01% Tween-20)、Wash Buffer B (100mM MES,0.1M [Na+], 0.05% Tween-20) およびWaterをFluidics Stationにセットし、GCOS (GeneChip Operating Software)のプログラムよりPrimingを行った。次いで、Hybridization Cocktailを除き、Wash Buffer Aで満たしたArrayならびにSAPE Solution Mix (1×Stain buffer, 2mg/ml BSA, 10μg/ml SAPE)およびAntibody Solution Mix (1×Stain buffer, 2mg/ml BSA, 0.1mg/ml Goat IgG Stock, 3μg/ml biotinylated antibody)をFluidics Stationにセットした。その後、GCOSのプログラムにより洗浄および染色を行った。
〔スキャン〕
Gene Array ScannerにArrayをセットし、スキャンおよび解析を行った。解析結果を表1〜5に示す。
Figure 2012100662
Figure 2012100662
Figure 2012100662
Figure 2012100662
〔結果〕
表1には、FBS培養細胞と自己血清培養細胞において5つのケースで共通して増減のみられた細胞表面抗原が示されている。表2には5つのケースで共通して発現に増減のみられた増殖因子関連因子が列挙されている。また表3には、5つのケースで共通して発現に増減のみられたサイトカインが示されている。さらに表4には、5つのケースで共通して発現量に2倍以上の差があった遺伝子群が示されている。
表1に示されるとおり、自己血清培養細胞ではFBS培養細胞で発現している分化マーカーCD24が発現しておらず、より未分化状態が維持されていることがわかる。また、表2〜4に示されるとおり、自己血清培養細胞は一連の増殖因子を発現し、いくつかの増殖因子ではFBS培養細胞に比較して発現の増加がみられた。さらに、本解析の結果、自己血清培養細胞では、一連の癌関連遺伝子群の発現は低く、安全性も高いことが確認された。
以上のことから、本発明の自己血清培養方法では、FBSを用いることなく、高い増殖効率で細胞を培養でき、かつ、より安全で高い分化能を有する細胞が得られることが確認された。
実施例5
患者(52歳、男性)は、虚血性神経疾患(脳梗塞:右内頸動脈閉塞)で、2007年2月4日に左半身麻痺を発症し、同年2月19日、札幌医科大学付属病院へ転院した。治療前の症状として;左半身麻痺、特に上肢に強い麻痺があり;手を開いたり握ったりすることが全く出来ず;物(積木など)を握ったり離したりすることが出来ず;腕を肩の位置より高く上げることが出来ず;手首を曲げたり伸ばしたりすることも出来なかった。この患者から、実施例1に記載のとおりに間葉系幹細胞を採取して増殖させ、その全量に、凍結保存液(通常の濾過滅菌したRPMI20.5mLと、患者から採取した自己血清20.5mL、デキストラン5mL、DMSO 5mL)を加え、治療薬を製造した。なお、骨髄液は、あらかじめ末梢血の検査によって、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等に感染していないことを確認した。この治療薬を、3月19日に上記の患者に静脈内に30分間で投与した。副作用は全く認められなかった。
結果
この患者は、細胞治療前は左手指全5指の運動機能不全であったが、細胞投与の翌朝には全く動かなかった左手の指が動くようになり、握ったり開いたりができるようになった。1週間後には運動機能改善が見られ、ステイック運搬運動が可能となった。2週間後には、脳梗塞が著明に縮小していることがMRIによって確認された(図10)。また、手を握ったり開いたりすることが、より早くできるようになり、積木をつまんだり、離したりすることもできるようになった。腕も肩の位置より高く上げ、「バンザイ」することが出来るようになった。肘の曲げ伸ばしおよび手首の曲げ伸ばしも出来るようになった。細胞治療の前後にわたるこの患者の脳梗塞レベルの推移を、脳梗塞の評価のための周知のスケール(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール、MRS:修正ランキンスケール)を用いて図11に示す。
図10は、この患者の脳MRI画像である。右大脳の脳梗塞で障害された部位(白色部分)の減縮がみられる。また、図12は、同じ患者の脳血流画像であるが、治療1週間後において、損傷部位における脳血流の回復が認められる。これらの結果は、上記の運動機能回復と合わせて、本投与剤の投与により、亜急性期以降の顕著な改善効果を示すことが実証された。上記の運動機能回復と合わせて、これらの結果から、本発明の医薬の投与が亜急性期以降の脳梗塞に対して顕著な改善効果を示すことが実証された。
実施例6
患者(50代、女性)は、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)を長期間患っており、これにより左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から約2ヶ月後に同患者に静脈内投与した。投与後に行ったMRI(PWI)検査により、脳血流の改善が確認された。
実施例7
患者(60代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から4ヶ月後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与翌日より硬直の緩和と関節可動域の拡大を認め、その後の経過でも筋力の回復が顕著であり、握力の計測も可能となった(4kg)。さらに、投与から約2ヶ月半後には独歩可能となり、左手も実用的に使用できるレベルに回復した。
実施例8
患者(50代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から6週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与翌日より指の動きが改善し、その後の経過でも筋力の回復が顕著であり、握力の計測も可能となった(8kg)。また、より細かい作業を、より素早く行えるようになり、割り箸を割ることが可能となるなど、指先の力も回復し、日常生活で役立つ動作が行えるようになった。
実施例9
患者(60代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から5週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与当日の夜より、主に下肢の運動の改善が自覚され、投与翌日には、手の運動の改善も自覚された。その後の経過でも運動機能の改善が続いている。
実施例10
患者(70代、男性)は、ラクナ梗塞により左半身麻痺および構語障害を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から8週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与の翌朝より、足の指が動くようになり、肩や肘の動きにも改善が認められた。そして、投与から3日後には、手の指を動かせる程に回復した。
実施例11
慢性糖尿病患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、投与前は約190mg/dl前後であった血糖値が投与後約1ヶ月で正常値にまで改善したほか、その他の糖尿病指標にも顕著な改善が見られた(図13)。
実施例12
前立腺肥大患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、前立腺肥大の指標であるPSA値が、投与前と比べると投与後では顕著な改善が見られた(図14)。
実施例13
肝障害患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、肝障害の指標であるγ−GTP値、GOT値、GPT値が、投与前と比べると投与後では顕著な改善が見られた(図15)。
実施例14
腎障害患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、腎障害の指標であるβ2-マイクログロブリン値が、投与前と比べると投与後では顕著な改善が見られたほか、その他の腎障害指標(BUN値および/またはクレアチニン値)にも顕著な改善が見られた(図16)。
実施例15
高脂血症患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、高脂血症の指標である中性脂肪値が、投与前と比べると投与後では顕著な改善が見られたほか、その他の高脂血症指標にも顕著な改善が見られた(図17)。
実施例16
高次脳機能障害/失語症患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。投与前後において、標準失語症検査(SLTA)とウェクスラー成人知能検査(WAIS−R)を実施した。この結果、投与前に比較してSLTAおよびWAIS−Rの値に有意な改善が見られた(図18)。
実施例17
ヒト健常者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養した。ラット脳梗塞モデル(中大脳動脈閉塞モデル)に対して、前述のヒト間葉系幹細胞を調製した。次いで、(i)非移植群、(ii)細胞(1.0×106)静注群、(iii)Angiopoietin遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(iv)VEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、(v)AngiopoietinとVEGF遺伝子導入した細胞(1.0×106)静注群、に分けて治療を行い、治療効果について比較検討を行った。治療効果をMRIで評価した結果(図19A)、(ii)、(iii)、(v)の群で治療効果が見られたが、その治療効果の強さは、(v)>(iii)>(ii)であった。
また、治療効果を血管新生の側面から解析した結果(図19B)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)の群で治療効果が見られたが、その治療効果の強さは、(v)>(iii)>(iv)>(ii)であった。
また、治療効果を行動学的側面からTreadmill stress testを用いて解析した結果(図20)、(ii)、(iii)、(v)の群で治療効果が見られたが、その治療効果の強さは、(v)>(iii)>(ii)であった。
実施例18
ヒト健常者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養した。ラット心肺停止モデルに対して、前述のヒト間葉系幹細胞(1.0×106)を静脈内投与し治療効果を判定した。治療によりアポトーシスが抑制され(Tunnel陽性の細胞数が減少)(図21)、生き残った神経細胞の数も多かった(図22)。また、脳高次機能をMorris water maze testで評価した結果、治療群で改善が見られた。
実施例19
ヒト健常者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養した。Laminectomyしたラット脊髄(Th 11)にNYU imactorを用い、脊髄損傷モデルを作成し、6時間後、1日後、3日後、7日後、14日後に前述のヒト間葉系幹細胞(1.0 x 106)を大腿静脈より移植し、トレッドミルテストにより経時的に運動評価を行った。すなわち、予め、走るのを止めると電気ショックを受けるように設計された20 m/minで動くトレッドミル上で、ラットを1週間に2日、1日20分走らせることを脳梗塞作成前よりトレーニングしておいてから、各群における経時的な回復の程度をグラフ化した。横軸は時間、縦軸はmaximum speed。脊髄損傷後、6時間後および1日後に移植した群で、著明な治療効果が見られた(図23)。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
本発明は、組織の修復・再生に顕著な効果を示す治療薬の迅速な提供を可能とするものであり、この治療薬提供の迅速化により、特に早期の細胞療法が有効な疾患、例えば脳神経に損傷を受けた患者の脳神経再生などに甚大な効果を有し、さらに、細胞提供者の不足および身体的負担を軽減する。本発明の方法によって製造される医薬は、治療薬としての効果は言うまでもなく、迅速に提供されることにより治療効果を増幅し、患者のQOLを著しく改善するとともに、介護者の負担および介護費用を軽減させることよって、社会的負担の低減にもつながるものであり、老齢化社会に光明を投げかけるものである。

Claims (16)

  1. 表1記載の陽性CD抗原群のうち少なくとも90%が発現し、かつ陰性CD抗原群の少なくとも90%が発現していないことを特徴とする、細胞。
  2. 採取された試料に添加される抗凝固剤の量を該試料の容積に対して0.2U/mL未満とすることにより細胞が抗凝固剤と実質的に接触しない状態で骨髄または血液から採取された細胞を、培地中に存在する抗凝固剤の量が培地の容積に対して0.02U/mL未満として培養して増殖させる方法により得られた、請求項1に記載の細胞。
  3. 同種血清を含む培地において培養することを特徴とする、請求項2に記載の細胞。
  4. 採取された試料に抗凝固剤を添加しないことを特徴とする、請求項2または3のいずれか1項に記載の細胞
  5. 同種血清が細胞を採取した被験者の自己血清である、請求項3または4のいずれか1項に記載の細胞。
  6. 細胞が、幹細胞である、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞。
  7. 幹細胞が、間葉系幹細胞である、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞。
  8. 細胞が、ヒト細胞である、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞。
  9. 細胞を未分化な状態で増殖させる、請求項2〜8のいずれかに記載の細胞。
  10. EWI-FLI-1、FUS-CHOP、EWS-ATF1、SYT-SSX1、PDGFA、FLI-1、FEV、ATF-1、WT1、NR4A3、CHOP/DDIT3、FUS/TLS、BBF2H7、CHOP、MDM2、CDK4、HGFR、c-met、PDGFα、HGF、GFRA1、FASN、HMGCR、RGS2、PPARγ、YAP、BIRC2、lumican、caldesmon、ALCAM、Jam-2、Jam-3、cadherin II、DKK1、Wnt、Nucleostemin、Neurofibromin、RB、CDK4、p16、MYCN、telomere、hTERT、ALT、Ras、TK-R、CD90、CD105、CD133、VEGFR2、CD99、ets、ERG、ETV1、FEV、ETV4、MYC、EAT-2、MMP-3、FRINGE、ID2、CCND1、TGFBR2、CDKNIA、p57、p19、p16、p53、IGF-1、c-myc、p21、cyclin D1、p21からなる遺伝子群のいずれの遺伝子も異常発現していないことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の細胞。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞を含む、組織修復・再生用医薬。
  12. 細胞が間葉系幹細胞であり、静脈内投与、腰椎穿刺投与、脳内投与、脳室内投与、局所投与、または動脈内投与される、損傷部位の修復を幇助するための、もしくは加齢による老化した部位の修復を幇助するための、請求項11に記載の医薬。
  13. 損傷部位もしくは加齢による老化した部位が神経系組織であり、静脈内に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項12に記載の医薬。
  14. 神経系組織が脳であることを特徴とする、請求項13に記載の医薬。
  15. 疾患あるいは障害の亜急性期以降に投与される、請求項11〜14のいずれか1項に記載の医薬。
  16. サイトカインの分泌、血管新生および/または神経再生により、損傷部位の修復を幇助するものである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の医薬。
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