JP2009107929A - 損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
損傷の亜急性期以降に投与した場合でも治療効果を有する、実用性の高い組織修復幇助剤を提供する
【解決手段】
間葉系幹細胞を含む、損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、間葉系幹細胞を含む、損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤に関する。
生体は損傷を受けたときに、損傷部位を自律的に修復する機構を有しており、ある程度の損傷であれば、機能的な障害を残すことなくこれを修復することが可能である。しかしながら、損傷の程度が大きいと、内在的な修復機構だけでは足りず、回復が長引いたり、さらには、損傷が完全には修復されず、機能的な障害が残ってしまう場合がある。従来、このような損傷を受けた生体組織、特に神経組織等の修復は非常に困難と考えられてきたが、最近になって、多分化能を有する幹細胞の発見を契機に、損傷された細胞を幹細胞で補う試みがなされつつある。例えば、特許文献1には、脳梗塞モデルラットに、疾患の急性期(虚血状態惹起の3〜24時間後)において間葉系幹細胞を投与したところ、顕著な治療効果が得られたことが記載されている。
しかしながら、損傷を受けてから時間が経過し、損傷部位がある程度安定した亜急性期以降において、喪失した機能を回復するための有効な手法については、未だ報告がない。
国際公開第WO2005/007176号パンフレット
本発明は、損傷の亜急性期以降に投与した場合でも治療効果を有する、実用性の高い組織修復幇助剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を続けた結果、間葉系幹細胞を亜急性期以降の虚血性神経疾患患者に静脈内投与することにより、意外にも症状の改善がもたらされることを見出した。そして、さらに研究を続ける中で、間葉系幹細胞を慢性糖尿病患者に静脈内投与したところ、糖尿病指標が顕著に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、間葉系幹細胞を含む、損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤に関する。
本発明はまた、間葉系幹細胞の割合が細胞成分の95%以上である上記投与剤に関する。
本発明はさらに、造血幹細胞を実質的に含まない上記投与剤に関する。
本発明はさらにまた、間葉系幹細胞が、CD34、CD45、SH2(CD105)、SH3(CD73)、CD117、CD133、CD166(ALCAM)、CD9およびCD157の表現型を有する上記投与剤に関する。
また、本発明は、間葉系幹細胞の細胞数が10個以上である上記投与剤に関する。
さらに、本発明は、損傷部位の処置の後、または、生体に備わる自律的な修復力を幇助することを目的として投与される上記投与剤に関する。
さらにまた、本発明は、間葉系幹細胞が、損傷発生後に損傷部位を有する対象から採取した細胞に由来する上記投与剤に関する。
さらに、本発明は、間葉系幹細胞が、間葉系幹細胞と抗凝固剤とを実質的に接触させずに培養したものである上記投与剤に関する。
本発明はまた、損傷が、組織機能の喪失および/または低下を伴う上記投与剤に関する。
本発明はさらに、修復の幇助が、サイトカインの分泌、血管新生および/または組織再生を含む上記投与剤に関する。
本発明はさらにまた、損傷部位が神経である上記投与剤に関する。
また、本発明は、虚血性神経疾患の亜急性期に投与される上記投与剤に関する。
さらに、本発明は、修復の幇助が、サイトカインの分泌、血管新生および/または神経再生を含む上記投与剤に関する。
さらにまた、本発明は、損傷部位が腎臓である上記投与剤に関する。
本発明はまた、修復の幇助が、BUN値および/またはクレアチニン値の改善を伴う上記投与剤に関する。
本発明はさらに、損傷部位が膵臓である上記投与剤に関する。
また、本発明は、修復の幇助が、血糖値、血中Glu A1濃度および/または血中HbA1C濃度の改善を伴う上記投与剤に関する。
本発明はさらにまた、損傷部位が心臓である上記投与剤に関する。
また、本発明は、修復の幇助が、血中プロスタグランジンD合成酵素濃度および/または血中ホモシステイン濃度の改善を伴う上記投与剤に関する。
さらに、本発明は、損傷部位が肝臓である上記投与剤に関する。
さらにまた、本発明は、修復の幇助が、GOT値、GPT値および/またはγ−GTP値の改善を伴う上記投与剤に関する。
本発明の投与剤は、従来は有効性が想定されていなかった疾患の亜急性期以降に投与した場合であっても治療効果を奏することから、投与すべき細胞を発症前に調製しておく必要がなく、発症後に対象から採取して培養すれば足りるため、対象の負担を大幅に軽減することが可能となる。
また、本発明の投与剤は、静脈内注射により体内の任意の損傷部位の修復を幇助できるため対象への侵襲が少なく、また、手術の必要がなく、通常の処置室などで投与できるため、医療提供者の負担や医療コストを削減することができる。
さらに、本発明の投与剤は、複数の異なる組織に対して修復幇助効果を奏するため適用範囲が広く、特に複数の異なる損傷部位を有する対象を同時に効果的に処置することが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、間葉系幹細胞を含む、損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤に関する。
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系組織等に微量に存在する多分化能および自己複製能を有する幹細胞であり、例えば、骨髄、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、血液、臍帯血、さらには、種々の組織の初期培養物から得ることができる。
本発明における間葉系幹細胞として好ましいのは、例えば、CD34、CD45、SH2、SH3、CD117、CD133、CD166、CD9およびCD157の表現型を有するもの、SH2、SH3、SH4、CD29、CD44、CD11b、CD14、CD34およびCD45の表現型を有するもの、ならびに、SH2、SH3、SH4、CD29、CD44、CD14、CD34およびCD45の表現型を有するものである。
本発明における間葉系幹細胞は、典型的にはヒト由来のものであるが、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類、チンパンジーなどの霊長類、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄目、ウマなどの奇蹄目、ウサギ、イヌ、ネコなど)の間葉系幹細胞であってもよい。また、本発明における間葉系幹細胞は、同一個体に由来する自己細胞であっても、同種の異なる個体に由来する他家細胞であってもよいが、他家細胞を利用する場合には、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19などの病原体に感染していないことが、予め末梢血の検査などにより確認されていることが好ましい。
間葉系幹細胞は、典型的には、骨髄液、臍帯血および/または末梢血を採取し、これを所定の培地で培養し、付着細胞を採取することによって得ることができる。骨髄液には、造血幹細胞等の他の幹細胞も含まれるが、これらは浮遊細胞であるため、培地交換等の際に除去することができる。
骨髄の採取は、例えば、採取源となる動物(ヒトを含む)を麻酔(局所または全身麻酔)し、胸骨または腸骨に針を刺入し、シリンジ等で吸引することにより行うことができる。具体的には、血液内科の専門医が局所麻酔下で骨髄を採取することが好ましい。また、出生児に臍帯に直接針を刺入し、注射器で吸引して、臍帯血を採取保存しておくことは、確立された技術となっている。
骨髄液等の血液成分を含む試料を採取する際には、凝血を防止するために通常ヘパリン等の抗凝固剤を採取容器(例えば採血管など)に添加するが、間葉系幹細胞をより迅速かつ大量に増殖させるためには、試料を採取する際に添加する抗凝固剤の量が少ないことが好ましく、採取した細胞は、凝血を避けるために採取後速やか(30分以内)に培養工程に移行するのが好ましい。細胞と抗凝固剤とを実質的に接触させないことがより好ましい。具体的には、例えば、抗凝固剤を、細胞採取容器の内壁を抗凝固剤溶液で濡らす程度に添加するか、もしくは全く添加しないか、または培養を開始する際に試料中の抗凝固剤を実質的に除去する。好ましい態様においては、生体から採取された試料に添加する(すなわち、試料採取容器に予め添加する)抗凝固剤の量は、試料の容積に対して5U/ml未満、好ましくは2U/ml未満、さらに好ましくは0.2U/ml未満である。
別の好ましい態様においては、生体から採取された試料中の細胞を培養する際に、培地中に存在する抗凝固剤の量は、培地の全体量に対して0.5U/ml未満、好ましくは0.2U/ml未満、最も好ましくは0.02U/ml未満である。より具体的には、培養を開始する際の抗凝固剤の量が培地の全体量に対して0.5U/ml未満になるように、試料採取容器に添加する抗凝固剤の量、および/または培地中に添加する抗凝固剤の量を調整する。
また、細胞を採取する場所(病院など)と、細胞を純化・増殖させる施設との間の距離が離れているケースなど、試料採取後に血液凝固を阻止するために試料に一定量(例えば、20〜40U/ml)の抗凝固剤の添加が必要な場合は、培養を開始する前に、例えば、Ficol遠心分離などによって細胞を試料から単離し、洗浄することで、抗凝固剤を除去することができる。
間葉系幹細胞を増殖させるための培地は、細胞培養の分野において通常使用される培地であれば特に限定されないが、より迅速かつ大量の増殖を得るためには、血清含有培地が好ましい。血清含有培地としては、例えば、DMEM、αMEMなどの細胞培養に通常用いる標準培地を基に、培地に対して12容積%未満の量で血清を加えたもの等が挙げられる。血清を提供する個体の負担を考えると血清量は少なければ少ないほど好ましいが、所望の迅速な細胞増殖促進作用が得られる範囲内であることを考慮すると、1%〜20容積%であることが好ましく、より好ましくは3〜12容積%であり、さらに好ましくは5〜10容積%である。血清は、典型的には哺乳動物の血清であり、好ましくは培養する細胞の由来する動物と同種の動物個体の血清(同種血清)であり、さらに好ましくは培養する細胞が由来する個体の血清(自己血清)であるが、これらに限定されない。培養される細胞がヒト細胞である場合、成人ヒト血清を用いることが好ましいが、採取が困難である場合、異種動物血清(例えばFBS等)や同種の他個体の血清(他家血清)を用いてもよい。また、血清は、末梢血由来の血清であっても、臍帯血由来の血清であってもよい。
上記血清含有培地に、必要に応じて、アミノ酸等の栄養因子、抗生物質、増殖因子および/または成長因子などをさらに加えることができる。また、所望により、細胞培養の分野において通常使用される抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を、単独でまたは併用して使用してもよい。複数の抗生物質を併用することが好ましく、例えば、ペニシリンとストレプトマイシンとを併用する場合、その合計添加量は、培地に対して各0.5〜2容積%であり、好ましくは0.8〜1.2容積%である。
培地に含有される低分子アミノ酸としては、例えば、L-アラニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L-グルタミン、L−イソロイシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−バリン、L−アスコルビン酸、およびL−グルタミン酸が挙げられる。これらのアミノ酸は、細胞培養の分野において通常使用される培地中に栄養素として含まれているものである。間葉系幹細胞の迅速な増殖には、特に、グルタミンを培地総量の0.1〜2%(重量/容積)で添加することが好ましく、さらに、培養中のグルタミンが0.1〜2%(重量/容積)を保つようにグルタミンを補充することが好ましい。
上記の標準培地に、必要に応じて増殖・成長因子および/または分化誘導因子を添加してもよい。増殖・成長因子および分化誘導因子は、所望の分化の方向およびレベル、必要な増殖率などに応じて選択される。かかる因子としては、例えば、アスコルビン酸およびニコチンアミドなどのビタミン類、NGFおよびBDNFなどの神経栄養因子、BMPなどの骨形成因子、上皮細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、IL−2などのサイトカイン等が挙げられるが、これらに限定されない。
所望により、増殖後の細胞の剥離を容易にする細胞足場材を使用することも可能である。好適な足場材の例としては、多孔質の無機系セラミックス、マイクロピラー(例えば、日立製作所製ナノピラー細胞培養シート)、不織布、ハニカム膜フィルム等が挙げられるが、これらに限定されない。
培養する細胞には、予め、例えば、BDNF遺伝子、PLGF遺伝子、GDNF遺伝子、もしくはIL−2遺伝子などの、増殖および分化を誘導する遺伝子を導入してもよい。あるいは、培養する細胞は、テロメラーゼ遺伝子などの不死化遺伝子が導入された不死化した細胞であってもよい。かかる遺伝子の導入については、例えばWO03/038075A1号公報などに開示されている。
上記で例示した培地、足場材、助剤、増殖因子および/または導入遺伝子などから、所望の増殖率および/または特定の細胞種への分化を誘導するような組み合わせを選択することは、当業者の能力の範囲内である。
本発明の投与剤に用いる間葉系幹細胞は、未分化な状態で増殖させてもよい。一般に、幹細胞は、未分化な状態の方が増殖率および生体内導入後の生存率が高いため、例えば、虚血性神経疾患の処置など、迅速かつ大量の細胞増殖が必要とされる場合においては、採取した幹細胞を未分化な状態のままで増殖させることによって、短期間に必要な細胞数を得ることができる。
あるいは、所定の細胞種へ分化した細胞を要する場合、間葉系幹細胞を未分化な状態で大量に増殖させ、次いで、所望の細胞種への分化を誘導する既知の成長因子の添加またはかかる性質を有する遺伝子の導入などによる分化誘導を行うことによって、大量の分化した細胞を得ることができる。
培地中の細胞密度は、細胞の性質および分化の方向性に影響を与える可能性があるため、継代は、培地中の間葉系幹細胞の密度が5,500個/cm以上になった時点で行うことが好ましい。また、培地中の細胞の密度が8,500個/cmを超えると、間葉系幹細胞の性質が変化してしまうため、最大でも8,500個/cm以下で継代培養させることが好ましく、より好ましくは、細胞密度が5,500〜8,500個/cmの状態で継代する。
また、培地は、少なくとも週1回交換することが好ましい。培地の交換は、細胞の培養および増殖に必要な栄養素、成長因子、増殖因子などを供給するため、また、細胞の代謝によって生成する乳酸などの老廃物を除去し、培地のpHを一定に保つために必要である。培地交換の頻度は、培地の組成や培養条件などに依存して選択されるが、特に、ヒト血清含有培地を使用する場合、血清ドナーの負担を考慮して、なるべく少ない回数であることが望ましく、例えば、少なくとも週1回、より好ましくは週1〜2回の培地交換を行う。
以上のサイクルを繰り返すことで、典型的には1×10個の間葉系幹細胞を2週間以内に得ることができる。
間葉系幹細胞の培養は、具体的には、例えば以下のように行う。
1.上記のようにヘパリン液で内壁を濡らしたシリンジにて生体から採取した試料を、100倍以下の希釈率、好ましくは10倍以下の希釈率、さらに好ましくは約2倍〜6倍程度の希釈率で、予め37±0.5℃に保った培地中に加え、これを培養ディッシュに播種し、37±0.5℃、5%の炭酸ガス中でインキュベートする。培地の交換は少なくとも週1回、典型的には週1〜2回行う。培地は、好適な標準培地に血清および必要な助剤を添加して調製し、ろ過滅菌により滅菌し、小分けして4℃の保冷庫に保管したものを、予め37±0.5℃に保って使用する。炭酸ガス濃度は5±1%の範囲が好ましい。全ての工程で細胞に接触する溶液を同様の温度範囲に保つことが、増殖の迅速化を促進する。
2.細胞が培養ディッシュ基材に付着した後、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離、除去する。次いで、洗浄液としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて、付着している幹細胞表面を洗浄する。
3.継代は、ディッシュ内の細胞が5,500個/cm以上となる時点を目安として、細胞密度が8,500個/cmを超えないように、コンフルエントの60〜80%、好ましくは65〜75%になった時点で行う。継代の際は、主としてトリプシンおよび必要に応じてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)からなる剥離剤を、ディッシュ1枚あたり3ml添加して、37±5℃で3〜5分間のインキュベーションの後、付着した幹細胞が剥離したことを確認する。分離液を傾斜法にて培地と置換して、培地中の細胞を所定の遠沈管に移し遠心分離により細胞を遠沈させて継代する。少なくとも間葉系幹細胞の総数が100,000,000個以上になるまで、培養、培地交換、継代のサイクルを繰り返す。培地の交換は、少なくとも週1回は行う。
増殖した細胞の細胞種の確認を行うことが望ましい場合、当該分野において公知の手段(例えば、フローサイトメトリー法など)を用いて、細胞表面抗原発現またはサイトカイン産生の解析などにより細胞種を決定する。間葉系幹細胞のマーカーとしてCD105、CD73、CD166、CD9、CD157などが公知である。これらの特異的マーカーを選択して組み合わせることは、当業者が有する通常の技術の範囲内である。
増殖させた細胞は、そのまま組織の修復・再生のために投与することも可能であるが、治療効率を向上させるために、任意に種々の薬剤を添加した組成物として、および/または遺伝子導入により改変してから投与してもよい。例えば、間葉系幹細胞の組織内でのさらなる増殖率を向上させる物質、所望の細胞への分化を促進する物質、もしくは組織内での生存率を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;移植される細胞が損傷した生体組織から受ける悪影響を阻止する効果を有する物質の添加、および/またはかかる遺伝子の導入;ドナー細胞の寿命を延長する物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;細胞周期を調節する物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;免疫細胞の抑制を目的とした物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;エネルギー代謝を活発にする物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;ドナー細胞の組織内での遊走能を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入;血流を向上させる物質の添加、および/またはかかる効果を有する遺伝子の導入などが考えられるが、これらに限定されない。
間葉系幹細胞の培養は、好ましくはGMP基準の細胞調製施設「CPC(Cell Processing Center)」で行う。対象へ投与する「臨床グレードの細胞」の調製は、無菌状態で細胞を操作すべく特別に設計された施設、より具体的には、空調制御、室圧制御、温湿度制御、パーティクルカウンター、HEPAフィルターなどにより清潔度が担保されたCPCで行うことが好ましい。また、CPC施設自体のみならず、CPC内で使用する全ての機器は、バリデーションにより性能が保障され、その機能を、随時モニタリング・記録することが好ましく、CPCでの細胞処理操作は、全て「標準手順書」によって厳格に管理・記録することが望ましい。
本発明の投与剤は、細胞成分として間葉系幹細胞以外の細胞種を含んでもよいが、細胞成分に占める間葉系幹細胞の割合が高いものが好ましい。したがって、本発明の投与剤の好ましい態様においては、投与剤に含まれる全細胞数に対する間葉系幹細胞数の割合は、50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上であり、最も好ましくは間葉系幹細胞以外の細胞種、例えば造血幹細胞等を実質的に含まない。細胞成分に占める間葉系幹細胞の割合は、例えば、投与剤に含まれる細胞を間葉系幹細胞に特異的な1種または2種以上のマーカー(例えば、CD105、CD73、CD166、CD9、CD157などの表面抗原)に対する標識化抗体で標識し、フローサイトメトリー法等で解析することにより容易に決定することができる。
本発明の投与剤に含まれる間葉系幹細胞の細胞数は多い程好ましいが、対象への投与時期や、培養に要する時間を勘案すると、効果を示す最小量であることが実用的である。したがって、本発明の投与剤の好ましい態様において、間葉系幹細胞の細胞数は、10個以上、好ましくは5×10個以上、より好ましくは10個以上、さらに好ましくは5×10個以上である。
上記間葉系幹細胞以外の細胞種としては、神経組織の修復の幇助を企図する場合は、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血または胎児肝より分離して得た、神経系細胞へ分化し得る細胞であって、Lin、Sca−1、CD10、CD11D、CD44、CD45、CD71、CD90、CD105、CDW123、CD127、CD164、フィブロネクチン、ALPH、コラゲナーゼ−1の特徴を有する間質細胞、あるいはAC133の特徴を有する細胞などを挙げることができるが、これらに限定されず、神経系細胞へ分化し得るその他の任意の細胞種を用いることができる。
上記間質細胞は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞から遠心分離して得た細胞分画の中から、CD45等の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。また、脊椎動物から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞を、800gで比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07〜1.1g/mlの範囲に含まれる一定の比重の細胞分画を回収することによっても調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味し、通常、10〜30分間程度である。回収する細胞分画の比重は、好ましくは1.07〜1.08g/mlの範囲、例えば、1.077g/mlである。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した骨髄液または臍帯血を同量の溶液(PBS+2%BSA+0.6%クエン酸ナトリウム+1%ペニシリン−ストレプトマイシン)溶液に混合し、そのうちの5mlをFicol+Paque液(1.077g/ml)と混合し、遠心(800gで20分間)し、単核細胞分画を抽出する。この単核細胞分画を細胞の洗浄のために培養溶液(αMEM、12.5%FBS、12.5%ウマ血清、0.2%i−イノシトール、20mM葉酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、1μM ヒドロコルチゾン、1%anti-biotic-antimycotic solution)に混合し、遠心(2000rpm、15分間)する。次いで、遠心後の上澄みを除去した後、沈降した細胞を回収し、培養する(37℃、5%CO)。
上記AC133細胞は、例えば、骨髄細胞、臍帯血細胞、あるいは末梢血細胞から遠心分離して得た細胞分画の中から、AC133の細胞表面マーカーを有する細胞を選択することにより得ることができる。また、その他の態様として、脊椎動物から採取した胎児肝細胞を、2000回転で比重に応じた分離に十分な時間、溶液中にて密度勾配遠心を行い、遠心後、比重1.07〜1.1g/mlの範囲に含まれる細胞分画を回収し、この細胞分画から、AC133の特徴を有する細胞を回収することによっても調製することができる。ここで「比重に応じた分離に十分な時間」とは、密度勾配遠心のための溶液内で、細胞がその比重に応じた位置を占めるのに十分な時間を意味し、通常、10〜30分間程度である。密度勾配遠心のための溶液としては、Ficol液やPercol液を用いることができるがこれらに制限されない。
具体例を示せば、まず、脊椎動物から採取した肝臓組織をL−15溶液内で洗浄し、酵素処理(L−15+0.01%DNaseI、0.25%トリプシン、0.1%コラーゲナーゼを含む溶液中で、37℃で30分間)し、ピペッティングにより単一細胞にする。この単一細胞となった胎児肝細胞を遠心分離する。これにより得られた細胞を洗浄し、洗浄後の細胞からAC133抗体を利用してAC133細胞を回収する。これにより胎児肝細胞から神経系細胞へ分化し得る細胞を調製することができる。抗体を利用したAC133細胞の回収は、マグネットビーズを利用して、または、セルソーター(FACSなど)を利用して行うことができる。
本発明の投与剤は、好ましくは非経口投与製剤、より好ましくは非経口全身投与製剤、特に静脈内投与製剤である。非経口投与に適した剤形としては、限定することなく、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤等の注射剤や移植片などが挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。具体的には、例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、培地、PBSなどの生理緩衝液、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、適切な単位投与形態に製剤化することができる。
注射用の水溶液としては、限定することなく、例えば生理食塩水、培地、PBSなどの生理緩衝液、ブドウ糖やその他の補助剤を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80、HCO−50等と併用してもよい。
本発明において、損傷とは、生体が、内的および/または外的要因により全身的もしくは局所的に何らかの障害を受けることをいう。したがって、本発明における損傷には、種々の外傷、梗塞、退行性病変、組織破壊など様々な状態が含まれる。また、損傷部位も、全身の種々の組織、例えば、脳、神経、腎臓、膵臓、肝臓、心臓、皮膚、骨、軟骨等を包含する。損傷部位は1箇所であっても複数箇所であってもよい。本発明の投与剤は、種々の組織に効果があり、単回の投与で複数箇所の損傷部位を一度に修復することができるため、損傷部位を複数有する対象の処置に特に有効である。損傷を引き起こす要因としては、例えば、物理的な外力(事故、火傷、被爆など)、種々の虚血性疾患(脳梗塞、脊髄梗塞等の虚血性神経疾患、心筋梗塞等の虚血性心疾患など)、種々の炎症、糖尿病、種々の感染症、自己免疫疾患、腫瘍、毒物への暴露、中枢性および末梢性の脱髄疾患、中枢性および末梢性の変性疾患、脳出血、クモ膜下出血、脳腫瘍、痴呆を含む高次機能障害、精神疾患、てんかん、クロイツフェルトヤコブ病、クールー病、牛海綿状脳症、スクレイピーなどのプリオン病などが挙げられるが、これに限定されない。本発明における損傷は、典型的には組織機能の喪失および/または低下を伴うものを指す。
組織機能の喪失および/または低下としては、限定することなく、例えば神経組織であれば、痛み、シビレ、感覚鈍麻等の感覚障害、麻痺、ツッパリ、半身不随、ふらつき、歩行障害、運動緩慢やぎこちなさなどの運動障害、頭痛、記憶障害、意識障害、言語障害、けいれん、ふるえ、認知症、幻覚、異常行動などの脳機能障害、立ちくらみ、めまい、失神、排尿障害、発汗障害などの自律神経障害など、腎臓であれば、排泄機能、電解質・水分バランス等の体液バランスの調節機能、内分泌機能の喪失および/または低下など、膵臓であれば、外分泌機能および内分泌機能の喪失および/または低下など、肝臓であれば、物質代謝機能、物質合成機能、外分泌機能の喪失および/または低下など、心臓であれば、血液拍出機能、内分泌機能の喪失および/または低下などを挙げることができる。ある組織が障害を受けた場合に生じる具体的な機能の喪失および/または低下、ならびにそれに伴う症状は、当業者に知られている。
また、損傷部位の修復、再生とは、機能の修復、再生と同義であり、治療効果としては、例えば、神経系組織を修復・再生する場合、神経の保護作用(例えば、軸索の再有髄化)、神経栄養作用(例えば、神経膠細胞の補充)、脳血管新生作用、神経再生等を含む。すなわち、本発明の投与剤の治療効果の実体としては、組織の修復、再生を、現象としては、その組織の機能障害の修復、再生を意味する。例えば、脳の損傷であれば、治療効果の実体は浮腫の低減、軸索の再有髄化、神経膠細胞の増加、血管新生、神経再生等であるが、現象的には、脳血流の回復、麻痺の回復、痛みやしびれなどの軽減などとして現れる。これらの効果は、損傷組織の物理学的検査、例えば、X線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査、内視鏡検査、バイオプシーなどによって確認することができるほか、種々の血液学的検査、生化学検査、内分泌学的検査、運動機能検査、脳機能検査、認知機能検査等によっても確認することができる。
本発明の投与剤が、損傷部位の「修復を幇助する」とは、典型的には、本発明の投与剤の投与により、本剤の成分が生体の修復機構を支援、補助し、損傷部位の修復が、本剤を投与しなかった場合と比べて促進、増強されることを意味するが、これに限られず、損傷部位の損傷の拡大や重篤化の抑制や、進行中の損傷を阻止し、さらにはこれを回復に導くことも包含する。本剤の投与により、生体の修復機構が機能するために好適な環境が損傷部位において醸成される。具体的には、本発明の投与剤がもたらす修復の幇助は、限定することなく、例えば、サイトカインの分泌、血管新生および/または組織再生によってもたらされ得る(図1参照)。
また、本発明の投与剤により、例えば、腎不全を伴う損傷腎臓においてはBUN値および/またはクレアチニン値などの腎機能指標の改善、膵臓ランゲルハンス島のインスリン分泌機能低下を伴う損傷膵臓においては、インスリン分泌や、血糖値、血中Glu A1濃度および/または血中HbA1C濃度などの糖尿病指標の改善、虚血性心疾患による損傷心臓においては血中プロスタグランジンD合成酵素濃度および/または血中ホモシステイン濃度などの改善、肝不全を伴う損傷肝臓においてはGOT値、GPT値および/またはγ−GTP値などの肝機能指標の改善等がそれぞれもたらされ得る。
本発明の投与剤の好ましい態様において、該投与剤は損傷部位の処置の後に投与される。ここで、損傷部位の処置とは、典型的には損傷の超急性期や急性期の処置を意味し、例えば、損傷の拡大を抑制する処置や、損傷を外科的に修復する処置などが含まれる。また、別の好ましい態様において、本発明の投与剤は、生体に備わる自律的な修復力を幇助することを目的として投与する。
また、本発明の投与剤は、好ましくは、損傷の亜急性期以降に投与する。亜急性期は、損傷による症状の増悪期(超急性期や急性期)の後におとずれる回復期を指し、例えば、脳梗塞の場合は、発症後1〜2ヶ月の時期を指す。
本発明の投与剤における間葉系幹細胞として好ましいのは、損傷部位を有する対象から採取した細胞に由来する、自己間葉系幹細胞である。自己細胞を用いることで、拒絶反応や、感染などのリスクを回避することができる。また、自己間葉系幹細胞は、損傷発生前に採取しても、損傷発生後に採取してもよい。損傷発生前に採取する場合は、損傷発生の予測が通常困難であるため、採取した細胞を、任意に純化・増殖させてから、凍結保存などの手法で保存しておく必要がある。損傷発生後に採取する場合は、採取した細胞を純化・増殖させた後、そのまま対象に投与することもできるし、凍結保存などの手法で保存し(例えば、−152℃のディープフリーザーにて)、タイミングを見計らって適宜投与することもできる。また、一度に全ての細胞を投与することもできるし、一部を保存しておき、必要に応じて追加投与することも可能である。
なお、本発明における用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は典型的には何らかの損傷部位を有している。
間葉系幹細胞を含む本発明の投与剤を利用する場合、以下のような利点が存在する:1)顕著な効果が期待できる、2)副作用の危険性が低い、3)充分なドナー細胞の供給が期待できる、4)非侵襲的な治療であり自己移植が可能であるので、5)感染症のリスクが低い、6)免疫拒絶反応の心配がない、7)倫理的問題がない、8)社会的に受け入れられやすい、9)一般的な医療として広く定着しやすいなど。さらに、間葉系幹細胞は遊走性が高く、静脈内投与によっても目的の損傷組織へ到達し、治療効果が期待できる。
以下の実施例は、本発明の投与剤について、さらに具体的に説明するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。細胞培養および/または細胞療法の分野において通常の知識および技術を有する者は、本発明の精神を逸脱しない範囲で、下記実施例で示された態様に多様な改変を行うことができるが、かかる改変された態様も本発明に含まれる。
実施例1
患者(52歳、男性)は、虚血性神経疾患(脳梗塞:右内頸動脈閉塞)により左半身麻痺を発症した。治療前の症状として、左半身麻痺、特に上肢に強い麻痺があり、手を開いたり握ったりすることが全くできず、物(積木など)を握ったり離したりすることができず、腕を肩の位置より高く上げることができず、手首を曲げたり伸ばしたりすることもできなかった。
この患者から、内壁を予め微量のヘパリン(骨髄液1mlあたり0.1U)で濡らした採血管を用いて、骨髄液を60ml採取し、210mlの培地中に添加し、総量270mlとした。この骨髄液含有培養液を18等分して、15mlずつ150mm径のディッシュ(IWAKI製Tissue culture dish #3030-150)中に播種し、培地を5mlずつ添加して1ディッシュあたり総量20mlとした。播種後、9ディッシュずつ、別々のインキュベーターに静置して、37±0.5℃、5%の炭酸ガス雰囲気下で培養した。骨髄液は、予め末梢血の検査によって、HIV、ATL、HB、HC、梅毒、ヒトパルボウイルスB19等に感染していないことを確認した。
培地は、ダルベッコ改変イーグル培地500mlに、自己末梢血由来の血清56.8ml、抗生物質5.7ml(ペニシリン10,000U/ml、ストレプトマイシン10mg/mlよりなる)、およびグルタミン5.7ml(292.3mg/l)を添加して調製し、ろ過滅菌し、小分けして4℃の保冷庫に保管したものを、予め37℃に保って使用した。
4日目に培養容器に付着した間葉系幹細胞を洗浄するに当たって、培地および培地中に浮遊している血球成分を吸引して分離、除去し、次いで洗浄液としてリン酸緩衝食塩水5mlを用いて、付着している間葉系幹細胞表面を6回洗浄した。
8日目に第一継代を行うにあたり、リン酸緩衝食塩水5mlを用いて洗浄後、付着した幹細胞を剥離するために、分離液(0.25%トリプシン−2.21mM EDTA)4mlをディッシュに添加し、3分間37℃でインキュベートし、剥れを確認した。付着分離させた分離液に同量の培地を加え、傾斜法にて全量を回収した。ディッシュ9枚分の細胞を遠沈管9本に移して、遠心分離機により800rpmで5分間遠心した。分離後各遠沈管の上澄み液を除去し、DMEMを加えて細胞を集めた。集めた細胞液を、再度800rpmで5分間遠心した。遠心分離後、各遠沈管の上澄み液を除去し、培地300mlを加えて細胞を集めた。この細胞液をディッシュ15枚に小分けして継代し、初代培養と同様に37±0.5℃、炭酸ガス濃度5%中でインキュベートした。同様の継代操作を残り9ディッシュについても行った。
13日目に、洗浄、剥離、遠心分離を上記と同様に行い、小分けしたもので細胞数を血球計測盤で計測したところ、1.1×10個に達していたので、更に継代させた。培養を継続し、20日目に同様の細胞数計測を行ったところ、細胞総数が1.0×10に達したので、洗浄、剥離、遠心分離を行い、凍結保存液(通常の濾過滅菌したRPMI1640 20.5mlと、患者から採取した自己血清20.5ml、デキストラン5ml、DMSO 5ml)を加え、本発明の投与剤を製造した。なお、フローサイトメーターにて解析したところ、投与剤に含まれる細胞成分における間葉系幹細胞の比率は98%以上(CD105陽性(陽性率=99.9%)、CD34陰性(陰性率=98.8%)、CD45陰性(陰性率=98.5%))であった。この投与剤を、発症の43日後に上記の患者に静脈内に30分間で投与した。副作用は全く認められなかった。
本発明の投与剤の投与により、以下の結果が得られた。すなわち、この患者は、細胞治療前は左手指全5指の運動機能不全であったが、細胞投与の翌朝には全く動かなかった左手の指が動くようになり、握ったり開いたりができるようになった。1週間後には運動機能改善が見られ、ステイック運搬運動が可能となった。2週間後には、脳梗塞が著明に縮小していることがMRIによって確認された(図2)。また、手を握ったり開いたりすることがより早くできるようになり、積木をつまんだり離したりすることもできるようになった。腕も肩の位置より高く上げ、「バンザイ」することができるようになった。肘の曲げ伸ばしおよび手首の曲げ伸ばしもできるようになった。図3に、細胞治療の前後にわたるこの患者の脳梗塞レベルの推移を、脳梗塞の評価のための周知のスケール(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール、MRS:修正ランキンスケール)を用いて示す。
図2は、この患者の脳MRI画像である。右大脳の脳梗塞で障害された部位(白色部分)の縮小がみられる。また、図4は、同じ患者のサーモグラフィー像であるが、治療1週間後において、頭部の高温領域が顕著に縮小しており、損傷部位における脳血流の回復が認められる。これらの結果は、上記の運動機能回復と合わせて、本投与剤の投与により、亜急性期以降の顕著な改善効果を示すことが実証された。
実施例2
患者(50代、女性)は、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)を長期間患っており、これにより左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から約2ヶ月後に同患者に静脈内投与した。投与後に行ったMRI(PWI)検査により、脳血流の改善が確認された。
実施例3
患者(60代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から4ヶ月後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与翌日より硬直の緩和と関節可動域の拡大を認め、その後の経過でも筋力の回復が顕著であり、握力の計測も可能となった(4kg)。さらに、投与から約2ヶ月半後には独歩可能となり、左手も実用的に使用できるレベルに回復した。
実施例4
患者(50代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から6週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与翌日より指の動きが改善し、その後の経過でも筋力の回復が顕著であり、握力の計測も可能となった(8kg)。また、より細かい作業を、より素早く行えるようになり、割り箸を割ることが可能となるなど、指先の力も回復し、日常生活で役立つ動作が行えるようになった。
実施例5
患者(60代、男性)は、アテローム血栓症により左半身麻痺を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から5週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与当日の夜より、主に下肢の運動の改善が自覚され、投与翌日には、手の運動の改善も自覚された。その後の経過でも運動機能の改善が続いている。
実施例6
患者(70代、男性)は、ラクナ梗塞により左半身麻痺および構語障害を発症した。この患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、発症から8週後に同患者に静脈内投与した。この結果、投与の翌朝より、足の指が動くようになり、肩や肘の動きにも改善が認められた。そして、投与から3日後には、手の指を動かせる程に回復した。
実施例7
慢性糖尿病患者から、実施例1と同様に間葉系幹細胞を採取、培養し、同患者に静脈内投与した。この結果、投与前は約190mg/dl前後であった血糖値が投与後約1ヶ月で正常値にまで改善したほか、その他の糖尿病指標にも顕著な改善が見られた(図5参照)。
本発明の投与剤は、疾患の亜急性期以降に投与した場合であっても治療効果を奏することから、投与すべき細胞を発症前に調製しておく必要がなく、発症後に対象から採取して培養すれば足りるため、患者の負担を大幅に軽減することが可能となる。また、損傷部位の機能回復により、患者のQOLを著しく改善するとともに、介護者の負担および介護費用を軽減させることよって、社会的負担の低減にもつながるものであり、老齢化社会に光明を投げかけるものである。
本発明の投与剤の治療メカニズムを示した図である。縦軸は症状の軽重、横軸は発症からの経過時間、矢印は本発明の投与剤の投与時期をそれぞれ示す。矢印から右側において、上側の曲線は投与剤の投与を受けた対象の症状の推移を、下側の曲線は、投与を受けなかった対象の症状の推移をそれぞれ示す。 本発明の投与剤の投与前および投与の2週間後における虚血性神経疾患患者の脳MRI画像である。損傷部位は白色部分として示される。 虚血性神経疾患患者の本発明の投与剤の投与の前後にわたる脳梗塞レベル(NIHSS:米国立衛生研究所脳卒中スケール、JSS:日本脳卒中学会脳卒中スケール、MRS:修正ランキンスケール)の推移を示すグラフである。 本発明の投与剤の投与前および投与の1週間後における虚血性神経疾患患者のサーモグラフィー像である。高温を示す濃色領域が投与の1週間後において顕著に縮小している。 本発明の投与剤の投与前および投与後における糖尿病患者の血糖値(BS)、血中Glu A1濃度および血中HbA1C濃度の推移を示したグラフである。縦軸は左がmg/dl、右が%を、横軸は投与日を0日とした場合の日数をそれぞれ示す。

Claims (21)

  1. 間葉系幹細胞を含む、損傷部位の修復を幇助する非経口全身投与剤。
  2. 間葉系幹細胞の割合が細胞成分の95%以上である、請求項1に記載の投与剤。
  3. 造血幹細胞を実質的に含まない、請求項1または2に記載の投与剤。
  4. 間葉系幹細胞が、CD34、CD45、SH2、SH3、CD117、CD133、CD166、CD9およびCD157の表現型を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の投与剤。
  5. 間葉系幹細胞の細胞数が10個以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の投与剤。
  6. 損傷部位の処置の後、または、生体に備わる自律的な修復力を幇助することを目的として投与される、請求項1〜5のいずれかに記載の投与剤。
  7. 間葉系幹細胞が、損傷発生後に損傷部位を有する対象から採取した細胞に由来する、請求項1〜6のいずれかに記載の投与剤。
  8. 間葉系幹細胞が、間葉系幹細胞と抗凝固剤とを実質的に接触させずに培養したものである、請求項1〜7のいずれかに記載の投与剤。
  9. 損傷が、組織機能の喪失および/または低下を伴う、請求項1〜8のいずれかに記載の投与剤。
  10. 修復の幇助が、サイトカインの分泌、血管新生および/または組織再生を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の投与剤。
  11. 損傷部位が神経である、請求項1〜10のいずれかに記載の投与剤。
  12. 虚血性神経疾患の亜急性期以降に投与される、請求項11に記載の投与剤。
  13. 修復の幇助が、サイトカインの分泌、血管新生および/または神経再生を含む、請求項11または12に記載の投与剤。
  14. 損傷部位が腎臓である、請求項1〜10のいずれかに記載の投与剤。
  15. 修復の幇助が、BUN値および/またはクレアチニン値の改善を伴う、請求項14に記載の投与剤。
  16. 損傷部位が膵臓である、請求項1〜10のいずれかに記載の投与剤。
  17. 修復の幇助が、血糖値、血中Glu A1濃度および/または血中HbA1C濃度の改善を伴う、請求項16に記載の投与剤。
  18. 損傷部位が心臓である、請求項1〜10のいずれかに記載の投与剤。
  19. 修復の幇助が、血中プロスタグランジンD合成酵素濃度および/または血中ホモシステイン濃度の改善を伴う、請求項18に記載の投与剤。
  20. 損傷部位が肝臓である、請求項1〜10のいずれかに記載の投与剤。
  21. 修復の幇助が、GOT値、GPT値および/またはγ−GTP値の改善を伴う、請求項20に記載の投与剤。
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WO2014126175A1 (ja) * 2013-02-13 2014-08-21 国立大学法人名古屋大学 糖尿病の予防又は治療用組成物

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