JP2012095554A - 一本鎖cDNAの合成方法、マイクロアレイ用試料の調製方法および核酸の検出方法 - Google Patents

一本鎖cDNAの合成方法、マイクロアレイ用試料の調製方法および核酸の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋳型として用いるRNAの量に関わらず、ほぼ一定量の増幅産物を得ることができる核酸増幅法を提供することを目的とする。
【解決手段】生体試料から抽出したRNAを鋳型として、オリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成する反応において、該プライマーを終濃度500 pM〜500 nMで用いることを特徴とする一本鎖cDNAの合成方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、一本鎖cDNAの合成方法、およびその合成方法により得られた一本鎖cDNAから、マイクロアレイを用いる核酸の検出に供される試料を調製する方法に関する。また、本発明は、その試料から検出対象の核酸をマイクロアレイにより検出する方法に関する。
近年、検出対象の核酸を検出するためのツールとして、マイクロアレイが注目されている。マイクロアレイは、DNAチップとも呼ばれ、プローブとしての核酸断片がプラスチックやガラスなどの基板上に高密度に配置されたものである。このマイクロアレイのプローブと試料中の核酸(DNA、RNA、cDNAまたはcRNA)とをハイブリダイゼーションさせることにより、検体に含まれる多数の遺伝子を同時に網羅的に解析することができる。
このようにマイクロアレイは、遺伝子の発現解析、変異解析などに非常に有用である。また、マイクロアレイを臨床検査に応用する試みも始まっている。
ここで、マイクロアレイを用いる核酸の検出において、試料中の検出されるべき核酸が微量である場合、核酸の検出精度が低下する。そのため、マイクロアレイによる核酸の検出精度を向上させる観点から、試料中の核酸を増幅し、マイクロアレイ用試料を調製することが知られている(特許文献1〜3参照)。
国際公開第01/038572号 特開2002−262882号公報 特開2007−300829号公報
従来、マイクロアレイにより遺伝子発現を解析する場合、まず生体試料からRNAを抽出し、これを鋳型として一本鎖cDNAを合成する。そして、この一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成し、さらにこの二本鎖cDNAからインビトロ転写(in vitro transcription:IVT)反応によりcRNAを増幅してマイクロアレイ用試料を得る。このマイクロアレイ用試料に含まれるcRNAは、マイクロアレイに供するには濃度が高すぎる場合が多い。そのため、試料をマイクロアレイに供する前に、cRNAを定量して適切な濃度に希釈する。
このように、従来の核酸増幅で得られた試料を用いてマイクロアレイによる検出対象の核酸を検出する場合、試料中に含まれる核酸濃度の定量と、試料の希釈という煩雑な操作を行う必要があった。
また、マイクロアレイによる核酸の検出は、一般に次の(1)〜(4)のような工程が存在する:(1)生体試料からの核酸の抽出、(2)抽出した核酸の増幅、(3)核酸の増幅産物とマイクロアレイのプローブとのハイブリダイゼーションおよび(4)マイクロアレイの測定。現在、上記の(3)および(4)の工程を自動化した装置は市販されている。しかし、全工程を自動化した装置は開発されていない。これは、(2)から(3)への工程において、試料中の核酸の濃度を測定し、その測定結果に応じて適切に希釈するという判断を必要とし、この濃度測定および希釈の作業を自動化することが困難なためである。
そこで、本発明は、定量及び希釈の必要のないマイクロアレイ用試料の調製に用いられる、一本鎖cDNAを合成する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その一本鎖cDNAの合成方法を用いた、マイクロアレイ用試料の調製方法、およびマイクロアレイを用いた核酸の検出方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、一本鎖cDNAの合成反応において、プライマーを極めて低い濃度で用いて一本鎖cDNAを得て、この一本鎖cDNAからcRNAを合成することにより、どのような量のRNAを鋳型として用いても、ほぼ一定量のcRNAを得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、生体試料から抽出したRNAを鋳型として、オリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成する反応において、該プライマーを終濃度500 pM〜500nMで用いることを特徴とする、一本鎖cDNAの合成方法が提供される。
また、本発明によれば、生体試料からRNAを抽出する工程と、抽出されたRNA及びプライマーを含む反応溶液を用いて、一本鎖cDNAを合成する工程と、合成されたcDNAを鋳型として検出用核酸を合成し、マイクロアレイ用試料を調製する工程とを含み、ここで、反応溶液中のプライマーの終濃度が500 pM〜500 nMである、マイクロアレイ用試料の調製方法が提供される。
さらに、本発明によれば、生体試料からRNAを抽出する工程と、抽出されたRNA及びプライマーを含む反応溶液を用いて、一本鎖cDNAを合成する工程と、合成されたcDNAを鋳型として検出用核酸を合成し、マイクロアレイ用試料を調製する工程と、調製されたマイクロアレイ用試料をマイクロアレイに接触させて、マイクロアレイ用試料に含まれる検出用核酸とマイクロアレイに配置されたプローブとをハイブリダイゼーションさせる工程と、前記検出用核酸と前記プローブとのハイブリダイゼーションにより生じるシグナルを測定する工程と、測定結果に基づいて、前記マイクロアレイ用試料から検出対象の核酸を検出する工程とを含み、ここで、反応溶液中のプライマーの終濃度が500 pM〜500 nMである、
マイクロアレイによる核酸の検出方法が提供される。
本発明の一本鎖cDNAの合成方法によれば、どのような量のRNAを鋳型として用いても、ほぼ一定量の一本鎖cDNAが得られるので、RNAを生体試料から抽出した後の定量および希釈工程を省略することができる。
また、本発明のマイクロアレイ用試料の調製方法では、そのような合成方法により得られた一本鎖cDNAを用いるので、得られた試料中の検出用核酸はほぼ一定量である。したがって、本発明のマイクロアレイ用試料の調製方法によれば、試料の調製後の核酸の定量および希釈工程を省略することができる。
よって、このような試料に含まれる標的核酸をマイクロアレイにより検出する本発明の核酸の検出方法は、核酸の定量および希釈工程を要しないので、マイクロアレイ用試料の調製からマイクロアレイ測定までを自動化するシステムに好適に用いることができる。
T7-オリゴdTプライマーの終濃度とcRNA収量との関係を示すグラフである。 鋳型として用いたRNA量とcRNA収量との関係を示すグラフである。 異なる量のRNAから合成したcRNAをマイクロアレイで検出したときの相関関係を示すグラフである。 NTPミックスの終濃度とcRNA収量との関係を示すグラフである。 異なる濃度のNTPミックスを用いた反応系における、IVT反応時間とcRNA収量との関係を示すグラフである。
[1.一本鎖cDNAの合成方法]
本実施形態にかかる一本鎖cDNAの合成方法(以下、単に「合成方法」ともいう)について、以下に説明する。
本発明の合成方法では、生体試料から抽出したRNAを鋳型として用いる。生体試料は、そこからRNAを抽出できる生体由来の試料であれば特に限定されないが、例えば生体から採取された血液(全血、血漿、血清を含む)、リンパ液、尿、細胞、組織などが挙げられる。
本発明の合成方法に鋳型として用いられるRNAは、上記の生体試料から当該技術において公知の方法によって抽出することができるRNA画分であればよいが、好ましくはmRNAである。なお、真核生物においては、mRNAはその3’末端にポリ(A)テールと呼ばれるポリアデニル酸(ポリA)配列を有している。
生体試料からRNAを抽出する方法は特に限定されないが、例えばフェノールやチオシアン酸グアニジンなどの変性剤を生体試料に添加し、該試料からmRNAを溶液中に遊離させることにより行うことができる。なお、生体試料から抽出したRNAを必要に応じて精製してもよい。RNAの精製方法としては、例えばフェノール/クロロホルムを用いる方法、密度勾配遠心による方法、オリゴdTカラムを用いる方法などが挙げられる。なお、RNAの精製および抽出には、市販のRNA抽出・精製キットを用いることもできる。また、生体試料が血液である場合は、グロビンのmRNAなどを除去するためにGLOBINclear-Human kit(Ambion社)などを用いてもよい。
本発明の合成反応では、鋳型として用いるRNAの量は特に限定されないが、一例を挙げるとすれば、20μlの反応系の場合、通常0.1〜10μg、好ましくは1.0〜10μgである。すなわち、RNA濃度として、0.005〜0.5μg/μL、好ましくは0.05〜0.5μg/μLである。
本発明の合成方法に用いられるプライマーは、5’末端側にプロモーター配列を有し、3’末端側にオリゴdT配列を有する。オリゴdT配列のTの数は、該プライマーがオリゴdT配列を介してmRNAのポリA配列にアニールし、一本鎖cDNAを合成できる程度であれば特に限定されないが、通常15〜40、好ましくは40である。
上記のプロモーター配列は、RNAポリメラーゼが認識してIVT反応を行うことができる配列であれば特に限定されないが、例えばT7プロモーター、T3プロモーター、Sp6プロモーターなどが挙げられる。なお、本発明の合成方法に用いられるプライマーは、後述する本発明の検体の調製方法において、該プロモーター配列を利用する二本鎖cDNAからのcRNAの合成反応を阻害しない限り、他の配列を含んでいてもよい。
上記のプライマー自体は、当該技術において公知の方法により合成することができる。また、市販されているオリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを用いてもよい。
本発明の合成方法では、上記のとおり、オリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを反応溶液中の終濃度として500 pM〜500 nMで用いる。このようなプライマー濃度は、当該技術における一般的な濃度(通常5μM)に比べて極めて低い。このようにプライマーを極めて低い濃度で用いることにより、逆転写反応中にプライマーが枯渇して一本鎖cDNAの合成が停止する。その結果、鋳型として用いたRNAがどのような量であっても、ほぼ一定量の一本鎖cDNAを得ることができる。なお、本明細書において「ほぼ一定量の一本鎖cDNA」とは、得られた一本鎖cDNAが、その全てまたは一部を希釈せずに次の二本鎖cDNAの合成反応に用いることができる量(濃度)であることも含まれる。
本発明の合成反応では、当該技術において公知の逆転写酵素が用いられる。そのような逆転写酵素としては、例えばAMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素、M-MLV(Molony Murine Leukemia Virus)逆転写酵素などが挙げられる。
本発明の合成反応は、上記のプライマーの終濃度を500 pM〜500 nMとすること以外は、当該技術において慣用されるRNAの逆転写反応と同様にして行うことができる。また、必要に応じて、合成した一本鎖cDNAを精製してもよい。この精製には、エタノール沈殿などの当該技術において公知の方法や市販の核酸精製キットを用いることができる。
[2.検体の調製方法]
本実施形態にかかる、マイクロアレイを用いる核酸の検出に供されるマイクロアレイ用試料の調製方法(以下、単に「調製方法」ともいう)について、以下に説明する。
本発明の調製方法では、上記の合成方法により得ることができる一本鎖cDNAを鋳型として、検出用核酸を合成することによって行われる。検出用核酸は、使用するマイクロアレイに応じて適宜選択することができ、通例cDNAやcRNA等が用いられている。検出用核酸を合成する工程には当該技術において公知の方法を利用できる。
ここで、調製方法の一例として検出用核酸がcRNAである場合について説明する。まず、上記の合成方法により得ることができる一本鎖cDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼを用いて二本鎖cDNAを合成する。上記の本発明の合成方法で得られた一本鎖cDNAはほぼ一定量であるので、この二本鎖cDNAの合成工程の前に一本鎖cDNAを定量して希釈する必要がない。
上記の二本鎖cDNAの合成工程には、当該技術において公知の方法、例えばニックトランスレーション法などを利用できる。ニックトランスレーション法では、例えばRNase Hにより、一本鎖cDNAとハイブリッドを形成している鋳型RNAにニックを入れ、そして大腸菌(E.coli)由来のDNAリガーゼおよびDNAポリメラーゼIにより該鋳型RNAをDNA鎖に置き換えて、二本鎖cDNAを合成することができる。また、市販のcDNA合成キットを用いることもできる。なお、必要に応じて、合成した二本鎖cDNAを精製してもよい。この精製には、エタノール沈殿などの当該技術において公知の方法や市販の核酸精製キットを用いることができる。
次いで、上記のようにして得られた二本鎖cDNAを鋳型として、上記のプライマーのプロモーター配列に対応するRNAポリメラーゼを用いてcRNAを合成することにより、マイクロアレイ用試料を得る。このようにして得られた該試料には、ほぼ一定量のcRNAが含まれる。なお、本明細書において「ほぼ一定量のcRNA」とは、cRNAを含む該試料が、その全てまたは一部を希釈せずに次のマイクロアレイによる核酸の検出に用いることができる量(濃度)であることも含まれる。
ここで、プロモーター配列に対応するRNAポリメラーゼとは、上記のプライマーのプロモーター配列を認識してIVT反応を行うことができる酵素である。例えば、プライマーのプロモーター配列がT7プロモーターである場合は、T7 RNAポリメラーゼが用いられる。なお、この工程における二本鎖cDNAからのcRNAの合成反応は、当該技術において公知の方法により行うことができる。また、市販のcRNA合成キットを用いることもできる。なお、必要に応じて、合成したcRNAを精製してもよい。この精製には、エタノール沈殿などの当該技術において公知の方法や市販の核酸精製キットを用いることができる。
本発明の調製方法により得られたマイクロアレイ用試料はマイクロアレイ測定に供されるので、試料中のcRNAとプローブとのハイブリダイゼーションを容易にするために、cRNAを断片化することが好ましい。cRNAの断片化は当該技術において公知の方法により行うことができ、例えば、金属イオン存在下で加熱する方法、リボヌクレアーゼなどの酵素を用いる方法などが挙げられる。
後述するマイクロアレイによる核酸の検出方法において、マイクロアレイ用試料中のcRNAとプローブとのハイブリッドの形成を蛍光物質または色素の検出により測定する場合、該cRNAは標識物質で標識されていることが好ましい。よって、本発明の調製方法は、合成したcRNAを標識する工程をさらに含むことが好ましい。このような標識物質は、当該技術において通常用いられる物質であれば特に限定されず、例えばCy3、Cy5、Alexa Fluor(商標)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの蛍光物質、ビオチンなどのハプテン、放射性物質などが挙げられる。cRNAを標識物質で標識する方法は当該技術において公知である。例えば、上記のcRNAを合成する工程において、ビオチン化リボヌクレオチドを基質として反応液に混合しておくことにより、ビオチンで標識されたcRNAを得ることができる。
[3.マイクロアレイを用いる核酸の検出方法]
本実施形態にかかる、マイクロアレイによる核酸の検出方法(以下、単に「検出方法」ともいう)について、以下に説明する。
本発明の検出方法では、まず、上記のマイクロアレイ用試料の調製方法により得ることができる試料をマイクロアレイに接触させて、試料中の検出用核酸とマイクロアレイに配置されたプローブとをハイブリダイゼーションさせる。
ここで「ハイブリダイゼーション」とは、例えば検出用核酸がcRNAである場合、ストリンジェントな条件下でプローブとマイクロアレイ用試料中のcRNAとがハイブリッドを形成することをいう。なお、ストリンジェントな条件は、マイクロアレイに配置されたプローブと試料中のcRNAとをハイブリダイゼーションさせる際に当業者が一般的に用いる条件であれば、特に限定されない。
本発明の検出方法に用い得るマイクロアレイは、核酸プローブが基板上に配置されたものであれば特に限定されないが、好ましくはDNAマイクロアレイ(DNAチップ)である。そのようなマイクロアレイは、GeneChip(登録商標)(Affymetrix社)などの市販のマイクロアレイを購入することでき、また当該技術において公知の方法によって作製することもできる。
上記のマイクロアレイ用試料とマイクロアレイの接触は、上記の本発明の調製方法により得られた試料をそのまま添加することにより行うことができる。すなわち、本発明の検出方法においては、この接触の前に、マイクロアレイ測定に適する濃度に希釈するためのマイクロアレイ用試料中の核酸の定量は不要である。なお、接触は、マイクロアレイの種類により異なるが、約10〜70℃にて2〜20時間行えばよい。また、接触は、Affymetrix社のHybridization Oven 640などを用いて行うこともできる。
さらに、マイクロアレイ用試料との接触後のマイクロアレイを染色および洗浄する工程に付してもよい。次工程におけるシグナルの測定が蛍光強度または発色強度に基づく場合、この染色工程により検出用核酸とプローブとのハイブリッドの検出が可能となる。例えば試料中の検出用核酸がビオチンで標識されている場合、このビオチンに、適切な蛍光物質などで予め標識されたアビジンまたはストレプトアビジンをマイクロアレイ上で結合させることができる。これにより、ハイブリッドを染色することができる。そのような蛍光物質としては、例えばFITC、Alexa Fluor(商標)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリン、フィコエリスリンなどが挙げられる。フィコエリスリン−ストレプトアビジンのコンジュゲートが市販されているので、これを用いることが簡便である。
また、ビオチンにアビジンまたはストレプトアビジンを結合させた後、アビジンまたはストレプトアビジンに対する標識抗体をマイクロアレイに接触させることにより、ハイブリッドを染色することもできる。
なお、マイクロアレイの染色および洗浄は、Affymetrix社のFluidic Station 450などの装置を用いて行うことができる。
本発明の検出方法では、次いで、試料中の検出用核酸とプローブとのハイブリダイゼーションにより生じるシグナルを測定する。
上記のシグナルは、マイクロアレイの種類に応じて異なるが、例えば、検出用核酸とプローブとのハイブリダイゼーションにより発生する電気的シグナル(電流量の変化)であってもよい。また、上記のように検出用核酸が標識されている場合は、標識物質から生じる蛍光、発色などのシグナル(蛍光強度、発色強度など)であってもよい。それらのシグナルの中でも、上記の標識物質により生じるシグナルが好ましく、蛍光シグナルがより好ましい。
シグナルの測定は、通常のマイクロアレイ測定装置に備えられたスキャナーにより行うことができる。スキャナーとしては、例えばGeneChip(登録商標)Scanner 3000 7G(Affymetrix社)などが挙げられる。
本発明の検出方法では、上記のシグナル測定の結果に基づいて、マイクロアレイ用試料から検出対象の核酸を検出する。本明細書において「検出する」とは、マイクロアレイ用試料中の検出対象の核酸の存否を検出することを意味する。また、マイクロアレイ用試料中に検出対象の核酸が存在する場合、該試料中での該核酸の量を測定することも、本発明の検出方法の範囲に含まれる。
シグナル測定の結果に基づくマイクロアレイ用試料から検出対象の核酸の検出は、当該技術において公知の方法により行うことができる。例えば、マイクロアレイから得られたシグナル測定値をGeneChip(登録商標)Operating Softwae(Affymetrix社)、ArrayAssist(Stratagene社)などのソフトウェアを用いて解析することにより、マイクロアレイ用試料中の検出対象の核酸の存否また存在量を検出することができる。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1:一本鎖cDNAの合成反応におけるプライマー終濃度の検討
(1)生体試料からのRNAの抽出
K562細胞から、以下の手順に従ってRNeasy mini kit(QIAGEN社)を用いてトータルRNAを抽出した。なお、用いた試薬およびカラムは、全てRNeasy mini kitに含まれている。
K562細胞(1×106 cell)にRLTバッファー693μlと2-メルカプトエタノール7μlを加え、混合した。さらに、100%エタノール500μlを加えて、ピペッティングにより混合した。混合液をカラムにアプライし、10,000×g、25℃で15秒間遠心した後、ろ液を捨てた。このカラムに350μlのRW1をカラムにアプライし、10,000×g、25℃で15秒間の遠心した後、ろ液を捨てた。このカラムにDNase溶液10μlとRDDバッファー70μlとの混合液をカラムにアプライし、室温で20分間静置した。さらに、350μlのRW1をカラムにアプライし、10,000×g、25℃で15秒間の遠心した後、ろ液を捨てた。このカラムにRPEバッファー500μlをアプライし、10,000×g、25℃で15秒間遠心した後、ろ液を捨てた。さらに、カラムにRPEバッファー500μlをアプライし、10,000×g、25℃で5分間遠心した後、カラムを新しいコレクションチューブに移した。カラムの中心にRNaseフリー水を30μlアプライして室温で1分間静置し、14,000 rpm、25℃で1分間遠心した。さらに、カラムの中心にRNaseフリー水を30μlアプライして室温で1分間静置し、14,000 rpm、25℃で1分間遠心してトータルRNA溶液を得た。
(2)ビオチン標識cRNAの調製
得られたトータルRNAを鋳型として、T7-オリゴdTプライマーを5pM、500 pM、5nM、50 nM、500 nMおよび5μMの各終濃度で用いて一本鎖cDNAを合成し、該一本鎖cDNAからビオチン標識cRNAを調製した。具体的には、以下の手順に従って、GeneChip One-Cycle Target Labeling and Control Reagents(Affymetrix社製)を用いてビオチン標識cRNAを調製した。
(2-1)一本鎖cDNAの合成
PCR用のチューブに、以下の試薬を入れ、70℃にて10分間、次いで4℃にて2分間インキュベートした。なお、T7-オリゴdTプライマーの配列は、配列番号1に示されるとおりである。
トータルRNA(1μg) 3μl
RNaseフリー水 5μl
20倍希釈されたPoly-A RNA Control 2μl
T7-オリゴdTプライマー 2μl
合計 12μl
ここに、以下の試薬をさらに添加してタッピングした。
5×First Strand Reaction Mix 4μl
DTT 0.1M 2μl
dNTP 10 mM 1μl
合計 7μl
42℃にて2分間インキュベートし、Super Script IIを1μl加えて42℃にて1時間、次いで4℃にて2分以上インキュベートして、一本鎖cDNAを合成した。
(2-2)二本鎖cDNAの合成
合成された一本鎖cDNAに以下の試薬を添加し、タッピングした。
RNaseフリー水 91μl
5×2nd Strand Reaction Mix 30μl
dNTP 10mM 3μl
E. coli DNAリガーゼ 1μl
E. coli DNAポリメラーゼI 4μl
RNaseH 1μl
合計 130μl
混合物を16℃にて2時間インキュベートし、T4 DNAポリメラーゼIを2μl加え、16℃にて5分間インキュベートした。その後、0.5M EDTAを10μl加えて、二本鎖cDNAを合成した。
(2-3)cDNAの洗浄
合成された二本鎖cDNAを1.5 mLチューブに移し、600μlのcDNA Binding Bufferを加え、ボルテックスにて混和した。500μlを、cDNA Cleanup Spin Columnにいれ、10000 rpmで1分間遠心し、ろ液を捨てた。残りのcDNAもカラムに載せ、同様にして遠心した。カラムを新しい2 mLチューブに移し、750μlのcDNA Wash Bufferをカラムに載せて遠心し、ろ液を捨てた。さらに、このカラムを14000 rpmで5分間遠心した。カラムを新しい1.5 mLチューブに移し、14μlのcDNA Elution Bufferをカラムに載せ、1分間放置した後に、14000 rpmで1分間遠心して、cDNAを洗浄した。
(2-4)IVTラベリング
得られたcDNAから、以下の手順によりインビトロ転写(IVT)にてビオチン標識cRNAを合成した。
PCR用チューブに以下の各試薬を入れ、軽く混合して、37℃にて16時間インキュベートして、cRNAを得た。なお、用いた各試薬はOne-Cycle Target Labeling and Control Reagentsキットに含まれる。
工程(2-3)からのcDNA 12μl
RNaseフリー水 8μl
10×IVT Labeling Buffer 4μl
IVT Labeling NTP Mix 12μl
IVT Labeling Enzyme Mix 4μl
合計 40μl
(2-5)cRNAの洗浄
得られたcRNAを1.5 mLチューブに移し、60μlのRNaseフリー水を加え、ボルテックスで混合した。350μlのIVT CRNA Binding Bufferを加え、ボルテックスで混合し、250μlの100% EtOHを加えてピペットで混合した。cRNA Cleanup Spin Columnに載せ、1000 rpmで15秒間遠心し、カラムを新しいチューブに移した。500μlのIVT cRNA Wash Bufferをカラムに入れ、10000 rpmで15秒間遠心し、ろ液を捨てた。80% EtOHを500μl入れ、10000 rpmで15秒間遠心し、ろ液を捨てた。14000 rpmで5分間遠心してカラムを乾燥させた後に、新しいチューブにカラムを移し、RNaseフリー水11μlをカラムに載せて1分間放置し、14000 rpmで1分間遠心した。さらに、RNaseフリー水10μlをカラムに載せて1分間放置し、14000 rpmで1分間遠心した。得られたろ液を200倍希釈して吸光度を測定し、cRNAの量を測定した。各プライマー濃度とcRNA収量との関係を、図1に示した。
T7-オリゴdTプライマーの終濃度を調節することによりcRNA収量を一定にするためには、該プライマー濃度が律速になる条件、すなわちmRNA量に対してT7-オリゴdTプライマーが少ない状態を見出さねばならない。さらに、その条件で得られるcRNA量がマイクロアレイによる核酸の検出に十分な量でなければならない。
図1より、適当なT7-オリゴdTプライマーの終濃度は、500 pM〜500 nMであることが明らかとなった。以降の試験では、プライマーの終濃度を5nMに設定した。
試験例2:鋳型RNA量とcRNA収量との関係の検討
上記の試験例1(1)と同様にして得たRNA 2.5、5.0または10μgを鋳型とし、T7-オリゴdTプライマーを終濃度5nMまたは5μMで用いて、試験例1(2-1)と同様にして一本鎖cDNAを合成した。そして、得られた一本鎖cDNAから、試験例1(2-2)〜(2-5)と同様にしてビオチン標識cRNAを合成して、その量を測定した。結果を以下の表1に示す。また、2.5μgのRNAを鋳型とした場合のcRNA収量を1とした場合の、cRNAの収量の比を図2に示した。
Figure 2012095554
表1および図2に示されるように、プライマー濃度が5μMの反応系では、鋳型として用いたRNAの量に比例して得られるcRNA量が増加していた。これに対し、プライマー濃度が5nMの反応系では、いずれの量のRNAを鋳型としてもほぼ一定量のcRNAを得ることができた。
したがって、本発明の一本鎖cDNAの合成方法および検体の調製方法により、鋳型RNA量に依存せずに、ほぼ一定量のcRNAを合成できることが示された。
試験例3:鋳型RNA量とマイクロアレイの測定結果との関係の検討
上記の試験例1(1)と同様にして得たRNA 1.0または10μgを鋳型とし、T7-オリゴdTプライマーを終濃度5nMで用いて、試験例1(2-1)と同様にして一本鎖cDNAを合成した。そして、得られた一本鎖cDNAから、試験例1(2-2)〜(2-5)と同様にしてビオチン標識cRNAを合成して、その量を測定した。得られたcRNAと、以下の試薬をチューブに入れ、混合して94℃にて35分間インキュベートしてcRNAをフラグメント化した後に、4℃にて保存した。なお、用いた試薬は、One-Cycle Target Labeling and Control Reagentsキットに含まれるものである。
cRNA 10μl
5×Fragmentation Buffer 8μl
RNaseフリー水 22μl
合計 40μl
得られた断片化されたビオチン標識cRNAを用いて、GeneChip (登録商標)でのハイブリダイゼーションにより、遺伝子の発現量の測定を行った。用いた核酸チップは、Human Genome U133 Plus 2.0 Arrayであった。また、ハイブリダイゼーションの条件は、以下のとおりであった。
<ハイブリダイゼーション溶液>
断片化されたcRNA 15μg
Control Oligo B2 5μl
20×Eukaryotic Hyb control 15μl
2×Hybridization Mix 150μl
DMSO 30μl
ヌクレアーゼフリー水 合計300μlまで
<ハイブリダイゼーション温度条件>
99℃、5分→45℃、5分→14000 rpm、5分
チップの染色及び洗浄は、Fluidic Station 450(Affymetrix社)装置を用い、ハイブリッド形成したターゲットcRNAをストレプトアビジン-フィコエリスリンコンジュゲートにより染色するGeneChip Hybridization Wash and Stain kit(Affymetrix社)のキットを使用説明書に従って用いて行った。
スキャニングは、GeneChip Scanner 3000 (Affymetrix)を用いて行った。
DNAマイクロアレイ解析ソフトであるGeneChip Operating Software(GCOS;Affymetrix社)を用いて、スキャニングした画像データをCELファイルに変換し、ArrayAssist(Stratagene社)ソフトウェアで正規化し、各鋳型RNA量における測定結果間の相関係数を算出した。正規化のアルゴリズムは、MAS5.0を用いた。結果を表2および図3に示す。なお、表2において、「SF」とは正規化する際に乗じた係数を示し、「%P」とはDNAチップに搭載されたプローブで検出される遺伝子のうち有意に発現しているとされた遺伝子の割合を示し、「%A」とはDNAチップに搭載されたプローブで検出される遺伝子のうち発現していないとされた遺伝子の割合を示し、「GAPDH3/5比」とはGAPDH遺伝子の配列に対し3'側を検出するプローブのシグナル値と5'側を検出するプローブのシグナル値の比(使用したRNAが分解されていると高い値を示す。基準は3以内)を示す。
Figure 2012095554
鋳型RNA量1.0μgおよび10μgのデータ間の相関係数は、R2=0.989と非常に高かった。したがって、本発明の核酸の検出方法では、鋳型として用いたRNA量に関わらず、同程度に検出対象の核酸をマイクロアレイにより検出できることが示唆された。
比較例:IVT反応におけるNTPミックスの濃度とcRNA収量との関係の検討
本発明の一本鎖cDNAの合成方法および検体の調製方法においては、用いるプライマー濃度を調節することにより、一定量のcRNAを得るという課題を解決した。他方、本発明者らは、プライマー濃度以外に、RNA合成の基質となるNTPミックスについてもcRNA収量との関係を検討した。すなわち、IVT反応に用いるNTPミックスをある一定量の生成物(cRNA)が得られた時点で枯渇させ、合成反応を終了させることが可能であるかを調べるために実験を行なった。
上記の試験例1(1)と同様にして得たRNA0.25μgを鋳型とし、T7-オリゴdTプライマーを終濃度5μMで用いて、試験例1(2-1)と同様にして一本鎖cDNAを合成した。そして、得られた一本鎖cDNAから、IVT Labeling NTP Mixを23.0μM〜3.0mMの終濃度としたこと以外は試験例1(2-2)〜(2-5)と同様にしてビオチン標識cRNAを合成して、その量を測定した。各NTPミックス濃度とcRNA収量との関係を、図4に示した。
NTPミックスの濃度とcRNA収量との間には比例関係があることが分かった。したがって、NTPミックスは飽和状態にないことが示唆された。これはNTPミックスの濃度が反応速度の律速となっている(反応速度がNTP mix濃度に依存している)ためであると予想される。
この点を確認するため終濃度3.0 mMおよび1.5 mMのNTPミックスを用いた場合の反応時間(2時間、4時間、6時間、16時間)とcRNA収量との関係を調べた。結果を図5に示す。
図5より、反応速度はNTPミックスの濃度に依存して変化することが明らかとなった。したがって、NTPミックスの濃度を低くしても反応速度が低下するので、反応中にNTPミックスが枯渇することはないと予想される。よって、NTPミックスの濃度を調整することにより、一定量のcRNAを得るという方法は不可能であると考えられる。

Claims (11)

  1. 生体試料から抽出したRNAを鋳型として、オリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成する反応において、前記プライマーを終濃度500 pM〜500 nMで用いることを特徴とする、一本鎖cDNAの合成方法。
  2. 前記生体試料が、血液、リンパ液、尿、組織または細胞である、請求項1に記載の合成方法。
  3. 一本鎖DNAを合成する反応において、反応溶液中に含まれる鋳型として用いられるRNAの濃度が0.005〜0.5μg/μLである、請求項1または2に記載の合成方法。
  4. 生体試料からRNAを抽出する工程と、
    抽出されたRNA、ならびにオリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを含む反応溶液を用いて、一本鎖cDNAを合成する工程と、
    合成されたcDNAを鋳型として検出用核酸を合成し、マイクロアレイ用試料を調製する工程と
    を含み、
    ここで、一本鎖cDNAを合成する反応溶液中の前記プライマーの終濃度が500 pM〜500 nMである、
    マイクロアレイ用試料の調製方法。
  5. 前記生体試料が、血液、リンパ液、尿、組織または細胞である、請求項4に記載の調製方法。
  6. 鋳型として用いられるRNAの濃度が0.005〜0.5μg/μLである、請求項4または5に記載の調製方法。
  7. 検出用核酸がcRNAである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の調製方法。
  8. 生体試料からRNAを抽出する工程と、
    抽出されたRNA、ならびにオリゴdTおよびプロモーター配列を有するプライマーを含む反応溶液を用いて、一本鎖cDNAを合成する工程と、
    合成されたcDNAを鋳型として検出用核酸を合成し、マイクロアレイ用試料を調製する工程と、
    調製されたマイクロアレイ用試料をマイクロアレイに接触させて、マイクロアレイ用試料に含まれる検出用核酸とマイクロアレイに配置されたプローブとをハイブリダイゼーションさせる工程と、
    前記検出用核酸と前記プローブとのハイブリダイゼーションにより生じるシグナルを測定する工程と、
    測定結果に基づいて、前記マイクロアレイ用試料から検出対象の核酸を検出する工程と
    を含み、
    ここで、一本鎖cDNAを合成する反応溶液中の前記プライマーの終濃度が500 pM〜500 nMである、
    マイクロアレイによる核酸の検出方法。
  9. 前記生体試料が、血液、リンパ液、尿、組織または細胞である、請求項8に記載の検出方法。
  10. 鋳型として用いられるRNAの濃度が0.005〜0.5μg/μLである、請求項8または9に記載の検出方法。
  11. 検出用核酸が、cRNAである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の検出方法。
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