JP2012093177A - 炉内における鋼材の表面温度測定方法および表面温度測定装置 - Google Patents

炉内における鋼材の表面温度測定方法および表面温度測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】炉内において鋼材表面の酸化状態が経時的に変化することによって分光放射率が変動する場合でも、表面が酸化されている鋼材の表面温度を精度よく測定する。
【解決手段】3.9μm狭域帯波長の放射温度計61、62を用いて、鋼材Sの表面から観測される放射強度を測定し、迷光補償用の温度計71、72の測定値を用いて、鋼材Sの表面からの迷光放射強度を算出し、鋼材Sの表面の熱履歴から、鋼材Sの表面の酸化層の厚みを算出すると共に、鋼材Sの表面酸化速度が、酸素分子供給過程と鉄原子拡散過程とのいずれに律速されているかを判断することで、鋼材の表面物質がウスタイトまたはヘマタイトのどちらであるかを判別して、前記酸化層の厚みと前記表面物質の判別結果とから分光放射率を算出し、前記観測される放射強度から前記迷光放射強度を引いて得られる放射強度を、前記分光放射率で除して黒体放射強度を求め、鋼材Sの表面温度を算出する。
【選択図】図4

Description

本発明は、表面が酸化している高温の鋼材の表面温度を放射温度計で計測する測定方法およびそのための測定装置に関するものであって、特に、鉄鋼製造において燃焼炉等の炉内で加熱されている鋼材における、測定精度に優れた表面温度測定方法および表面温度測定装置に関するものである。
熱間圧延を行って鋼材を製造する場合には、熱間圧延を行う前にスラブ等の鋼片を、燃焼加熱炉等にて再加熱する。また、所望の鉄鋼材料特性を具備させる場合にも、燃焼加熱方式の熱処理を鋼材に対して行うことがある。炉内での鋼材の温度を知ることは、適切なヒートパターンで鋼材を加熱するために重要である。適切なヒートパターンで鋼材を加熱することによって、熱間圧延における加工精度の向上や、加熱炉における省エネルギーや、生産効率の向上や、所望の材質特性の確保等が実現できるからである。
そこで、炉内における鋼材の表面温度を測定するために、従来から放射温度計を用いて放射測温を行うことが提案されている。しかし、炉内にはバーナー火炎・燃焼ガスから発せられる外乱光や、数100[℃]〜1300[℃]の高温の炉壁が放出する外乱光が存在する。これらの外乱光(以下、必要に応じて迷光雑音と称する)は、鋼材の表面で反射して、被測定物である鋼材の温度に応じた自発光と合わせて放射温度計で検出される。つまり、放射温度計で観測される放射光は、鋼材自体から発せられる自発光の放射光と、迷光雑音の放射光とが混在したものとなる。
そこで、放射温度計を用いて鋼材の表面温度を精度よく測定するためには、迷光雑音を正しく見積もり、放射温度計で観測される放射強度から、迷光雑音による放射強度を正しく除去することが必要となる。
特許文献1には、波長3.9μm狭域帯を用いた放射温度計と、放射温度計の周囲に配置した迷光雑音補正用の温度計と、を用いて、炉内で精度よく鋼材の表面温度を測定する技術が開示されている。この技術によれば、波長3.9μm狭域帯の放射温度計を用いることで、バーナー火炎および燃焼ガスから発せられる外乱光の影響を抑制し、かつ、放射温度計の周囲に配置した迷光雑音補正用の温度計によって炉壁から発せられる外乱光の強度を見積もることができる。このため、被測定物の分光放射率が既知の場合には精度よく被測定物の表面温度を測定することができる。
しかしながら、特段の雰囲気の調整がなされていない燃焼炉では、被加熱鋼材の表面は、高温状態で酸化雰囲気に曝されている。このため、被加熱鋼材の表面の酸化層の状態が経時的に変化する。この表面の酸化層の状態の変化は分光放射率の変動原因となることがあり、放射温度の測定の大きな誤差要因となっている。
特開2008−233020号公報
近藤泰光他著、「材料とプロセス」、Vol.15、2002年、p.1080 工藤恵栄、上原富美哉著、「基礎光学」、現代工学社、1990年 腐食防食協会、「金属材料の高温酸化と高温腐食」、丸善、1982年
そこで、本発明は、炉内において鋼材表面の酸化状態が経時的に変化することによって分光放射率が変動する場合でも、表面が酸化されている鋼材の表面温度を精度よく測定する方法および装置を提供することを目的とする。
より具体的には、酸化速度の律速過程の違いから、鋼材の表面に形成される酸化層の表面物質が変わっても、それを考慮して鋼材の表面温度を精度よく測定する方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)鋼材を加熱処理する炉内において、表面が酸化している鋼材の表面温度を測定する鋼材の表面温度測定方法であって、3.9μm狭域帯波長の放射温度計を用いて、前記鋼材の表面から観測される放射強度を測定する工程と、迷光源の温度を測定する迷光補償用の温度計の測定値を用いて、前記鋼材の表面からの迷光放射強度を算出する工程と、前記鋼材の表面の熱履歴から、前記鋼材の表面の酸化層の厚みを算出すると共に、前記鋼材の表面酸化速度が、酸素分子供給過程と鉄原子拡散過程とのいずれに律速されているかを判断することで、前記鋼材の表面物質がウスタイトまたはヘマタイトのどちらであるかを判別して、前記酸化層の厚みと前記鋼材の表面物質の判別結果とのうち、少なくとも前記鋼材の表面物質の判別結果から分光放射率を導出する工程と、前記観測される放射強度から前記迷光放射強度を差し引いて得られる放射強度を、前記分光放射率で除して黒体放射強度を求め、前記黒体放射強度とプランクの黒体放射式から鋼材の表面温度を算出する工程と、を有することを特徴とする炉内における鋼材の表面温度測定方法。
(2) 前記鋼材の表面物質がウスタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに関わらず予め定められた値を前記分光放射率として導出し、前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値を前記分光放射率として導出することを特徴とする(1)に記載の炉内における鋼材の表面温度測定方法。
(3) 前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値として、前記酸化層の厚みが厚いほど大きな値を得て、当該得た値を前記分光放射率として導出することを特徴とする(2)に記載の炉内における鋼材の表面温度測定方法。
(4) 鋼材を加熱処理する炉内において、表面が酸化している鋼材の表面温度を測定する鋼材の表面温度測定装置であって、3.9μm狭域帯波長の放射温度計と、前記放射温度計を用いて前記鋼材の表面から観測される放射強度を測定する手段と、前記放射温度計の周辺の迷光源となる領域に配置した1本以上の迷光補償用の温度計と、前記迷光補償用の温度計を用いて測定した前記迷光源の温度を用いて、前記鋼材の表面からの迷光放射強度を算出する手段と、前記鋼材の表面の熱履歴から、前記鋼材の表面の酸化層の厚みを算出すると共に、前記鋼材の表面酸化速度が、酸素分子供給過程と鉄原子拡散過程とのいずれに律速されているかを判断することで、前記鋼材の表面物質がウスタイトまたはヘマタイトのどちらであるかを判別して、前記酸化層の厚みと前記鋼材の表面物質の判別結果とのうち、少なくとも前記鋼材の表面物質の判別結果から分光放射率を導出する手段と、前記観測される放射強度から前記迷光放射強度を差し引いて得られる放射強度を、前記分光放射率で除して黒体放射強度を求め、前記黒体放射強度とプランクの黒体放射式から鋼材の表面温度を算出する手段と、を有することを特徴とする炉内における鋼材の表面温度測定装置。
(5) 前記鋼材の表面物質がウスタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに関わらず予め定められた値を前記分光放射率として導出し、前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値を前記分光放射率として導出することを特徴とする(4)に記載の炉内における鋼材の表面温度測定装置。
(6) 前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値として、前記酸化層の厚みが厚いほど大きな値を得て、当該得た値を前記分光放射率として導出することを特徴とする(5)に記載の炉内における鋼材の表面温度測定装置。
本発明の炉内における鋼材の表面温度測定方法および装置によれば、鋼材の表面の酸化層の厚みと、当該酸化層の表面物質の判別結果と、に基づいて、分光放射率を適正に設定することができる。よって、炉内において鋼材の表面の酸化状態が経時的に変化することによって分光放射率が変動する場合でも、放射温度計を用いて、炉内において表面が酸化している鋼材の表面温度を精度よく測定することができる。
赤外波長における鋼材の酸化層の厚さと分光放射率との関係の一例を示す図である。 ウスタイト、マグネタイト、ヘマタイトからなる酸化層におけるヘマタイト層の厚さばらつきによる分光放射率の干渉への影響の一例を示す図である。 鋼材の表面温度測定装置の演算部の処理の一例を説明するフローチャートである。 本発明の実施例における加熱炉の一例を示す図である。 本発明の実施例における放射温度計と迷光補償用の温度計の配置の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
燃焼加熱炉や焼鈍炉等の「鋼材を加熱や熱処理する炉」内で、被加熱物である鋼材の表面温度を、放射温度計を用いて精度よく計測するためには、種々の誤差要因に適切に対応した方法や装置が必要である。
まず、鋼材の表面の放射強度を観測するために使用する放射温度計の波長帯には3.9μm狭域帯を用いる。すなわち、本実施形態で用いられる放射温度計は3.9μmの波長の光のみを検出する。燃焼炉内には、火炎や燃焼ガスが充満しており、これらは水蒸気や二酸化炭素を成分として含み放射光を射出したり吸収したりすることで、被測定面の温度に応じて射出される自発光の外乱要因となる。前述の特許文献1にあるように波長3.9μm狭域帯の放射温度計を用いることで、バーナー火炎・燃焼ガスから発せられる外乱光の影響を抑制することができる。なお、波長3.9μm狭域帯とは、水蒸気や二酸化炭素に対する透過性が他の波長域に比べて著しく高い波長域を指し、波長3.9μmを中心波長としてその前後0.05μm〜0.1μm程度の範囲の波長域を指す。
このような3.9μm狭域帯波長の放射温度計は、市販されており、本実施形態においても、これを使用することができる。
続いて、適正な迷光補償が可能な温度計を1つ以上用いて迷光補償を行う。式(1)に示すように、放射温度計が検出する放射光には、被測定面の温度に応じて射出される自発光に加えて、迷光源となる炉壁がその温度に応じて射出する放射光の一部が被測定面で反射した成分が含まれる(以下、この成分を、必要に応じて迷光と称する)。迷光源の温度の測定のための迷光補償用の温度計には熱電対や放射温度計を用いることができる。迷光補償用の温度計として放射温度計を用いる際は、燃焼ガスの影響を低減するために3.9μm狭域帯波長の放射温度計を用いるのが好ましい。また、迷光補償用の温度計の温度測定点は、放射温度計の光軸を中心として、その放射温度計の光路を確保するための炉壁の開口面(窓部)から被測定面までの距離を半径とした範囲内(言い換えると、放射温度計の光軸に沿った炉壁から被測定面までの距離を半径とした範囲内)に設置することが好ましい。その理由は、迷光の大部分はこの範囲の炉壁面から発せられるためである。迷光源(炉壁)の分光放射率は安定しているため、一定値として構わない。
以下に、観測される放射強度と迷光放射強度とを用いて、鋼材表面の温度を求める方法の一例について説明する。
L=ε×Lb(Ts)+(1−ε)×Σ{W×Lb(Tn)} ・・・(1)
式(1)の記号は以下の通りである。
L : 観測される放射強度(W/m2・μm)
Lb : 黒体放射強度(W/m2・μm)
ε : 分光放射率
W : 各迷光源の重み
Ts : 測定しようとする被測定面の温度(K)
Tn : 迷光源の温度(K)
また、式(1)におけるΣは、(1)式の計算で取り扱う全ての迷光源についての和を表す。
(1)式において、(1−ε)×Σ{W×Lb(Tn)}が迷光放射強度となる。
ここで、各迷光源の重みWとは、被測定面が迷光補償用の温度計の代表する炉壁面の面積を見る立体角の割合を表す幾何学的な量であり、以下の式(2)で求められる。
W =cosθ×A/(2×π×l2) ・・・(2)
式(2)の記号は以下の通りである。
θ : 被測定点と迷光補償用の温度計とを結んだ直線が放射温度計の光軸となす角(°)
l : 被測定点と迷光補償用の温度計との距離(m)
A : 迷光補償用の温度計が代表する炉壁面の面積(m2
炉外に設置される放射温度計の光路を確保するための炉壁面の窓(この窓は一般に炉の天井に設けられる)の周辺の炉壁が主な迷光源となる。そこで、前述の特許文献1にあるように、この迷光源となる領域に迷光補償用の温度計を1本以上設置することで迷光の放射強度を評価することができる。放射温度計で観測される放射強度は、被測定面の温度に応じた放射強度と迷光の放射強度との和である。この放射温度計で観測される放射強度から迷光の放射強度を差し引いて被測定面の温度を算出する処理を迷光補償と呼ぶ。この迷光補償用の温度計は専用の温度計を用いてもよいし、炉温制御や炉温監視のための温度計をそのまま用いてもよい。
次に、被測定面の適正な分光放射率εを設定する。この適正な分光放射率の決定方法が本実施形態の核心的な部分であり、詳しく後述する。
放射温度計で観測される放射強度L、迷光の放射強度(1−ε)×Σ{W×Lb(Tn)}、および、分光放射率εが求まると、黒体放射強度Lb(Ts)が算出されて、鋼材の表面温度Tsが求められる。
この手順を式で表現すると、式(1)を変形した式(1')のようになる。放射温度計で観測される放射強度Lから、迷光の放射強度(1−ε)×Σ{W×Lb(Tn)}を差し引いた放射強度が、鋼材表面の被測定面の温度に応じた放射強度であり、さらにそれを後述するようにして求められる分光放射率εで除した値が、被測定面の温度に応じた黒体放射強度Lb(Ts)となる。
Lb(Ts)=[L−(1−ε)×Σ{W×Lb(Tn)}]/ε ・・・ (1')
絶対温度と黒体放射強度は、式(3)で表わされるプランクの黒体放射式で関係づけられている。よって、被測定面の温度に応じた黒体放射強度Lb(Ts)の値が求まれば、それを式(3)に代入することで、測定しようとする被測定面の温度Tsが直ちに求められる。
Lb(Ts)=C1/[λ5×{exp(C2/λTs)−1}] ・・・(3)
式(3)の記号は以下の通りである。
C1、C2 : 放射定数
λ : 測定波長(本実施形態では3.9μm)
3.9μm狭域帯波長の放射温度計を使用して、観測される放射強度Lを求めるには、次のようにする。すなわち、放射温度計の分光放射率の設定を黒体(ε=1)として被測定面の温度を測定し、その放射温度計で得られた温度を、式(3)で表わされるプランクの黒体放射式に代入することで、観測される放射強度Lを求めればよい。
放射温度計は、観測した放射強度を、予め設定した分光放射率で除して黒体放射強度を求め、この黒体放射強度とプランクの黒体放射式とから被測定面の温度を演算する処理を内部的に実行して、被測定面の温度を出力しているため、前記手法により、観測される放射強度Lを求めることができる。
次に、分光放射率εの求め方の一例を説明する。
炉内における略600℃以上の高温の鋼材は、大気雰囲気や燃焼ガス雰囲気中で表面酸化が進行する。そして、その酸化の進み方には雰囲気中の酸素分子が酸化層に供給される過程が律速する場合と、地鉄側から酸化層を通過して鉄原子が表面に拡散する過程が律速する場合とがあることが、例えば非特許文献1にあるように広く知られている。
そして、酸素分子の供給が律速する過程では、酸化度が低いウスタイト単層(以下、必要に応じて単層スケールと称す)の酸化層が形成される。一方、鉄原子の拡散が律速する過程では、地鉄側から表面側に酸化度が徐々に高まり、ウスタイト、マグネタイト、ヘマタイトの複層構造(以下、必要に応じて複層スケールと称す)の酸化層が形成される。複層スケールでは熱力学的な安定条件からウスタイト、マグネタイト、ヘマタイトの厚さ比は概ね94:5:1程度となる。
炉内の酸素濃度は、燃焼炉などにおいては一般的には数パーセント程度であり、この炉内の酸素濃度や成長中の酸化層の厚みによって律速過程が異なり、単層スケールが形成されたり複層スケールが形成されたりする。
前記式(1)に示した通り、単色の放射温度計を用いた表面温度の測定では、被測定物である鋼材の表面の分光放射率の設定値が重要な役割を果たすが、分光放射率は、被測定物である鋼材の表面の物質や状態によって変化する。すなわち、単層スケールと複層スケールとでは表面物質が異なり、その結果として酸化鋼材の表面の分光放射率が変化することが考えられる。
この酸化層の分光反射率は、例えば非特許文献2にあるような簡単な光学理論によって算出することができる。酸化鋼材のような不透過の物質では、分光反射率と分光放射率との和は1となるから、光学理論から算出した分光反射率から直ちに分光放射率を知ることができる。
図1は、赤外波長(波長が3.9μm)である場合における酸化層の厚さと分光放射率との関係の一例を示す図である。図1に示すグラフは、単層スケールと複層スケールとのそれぞれについて前述の光学理論から算出したものである。単層スケールのグラフ101に示すように、酸化膜の厚さが数10μmを超える範囲では、単層スケールの分光放射率は、酸化層の厚さに依らず安定した0.83を示す。一方、複層スケールのグラフ102に示すように、複層スケールの分光放射率は、酸化層の厚さによって振動的に変化する。この振動は光の干渉現象に対応するものである。
本発明者らは、この干渉現象に及ぼす影響を調査した結果、分光放射率が振動的に変化する要因は、酸化層全体の厚さが変化することが原因ではなく、酸化層の最表層物質であるヘマタイト層の厚さが変化することが原因であることを知見した。ヘマタイト層の内側に形成されるマグネタイト層は光の吸収が強いため、マグネタイトよりも深い層は分光放射率に影響しないからである。
また、本発明者らは、様々な厚さの複層スケールのヘマタイト層の厚さ分布を調査した結果、酸化層全体の厚さが200μmのとき、表層物質であるヘマタイト層は2μm程度であり、その厚さのばらつきは標準偏差で0.4μm程度であることを知見した。一般的に燃焼炉内では、鋼材の酸化層の暑さは200μmを超えている。そして、酸化層の厚さが厚くなるほど標準偏差が大きくなることが予測される。よって、ヘマタイト層の厚さのばらつきの標準偏差0.4μmは、ばらつきの下限に近いと考えられる。
前述の光学理論は、完全に平滑な地鉄上に、その界面と完全に平行かつ完全に均一な酸化層が積層したときの分光反射率を算出する理論である。しかし、現実には、地鉄と酸化層との界面には凹凸があり、また、異なる酸化物間の界面もまたランダムに凹凸を有し、酸化膜全体の厚さにもばらつきがある。そして、前述のように最表層のヘマタイト層に厚さのばらつきがある。
図2は、ウスタイト、マグネタイト、ヘマタイトからなる酸化層におけるヘマタイト層の厚さばらつきによる分光放射率の干渉への影響の一例を示す図である。図2では、ヘマタイト層の厚さと分光放射率との関係の一例を、光学理論値と、ヘマタイト層の厚さのばらつきを補正した厚さばらつき補正値とのそれぞれについて示している。
図2において、このようなヘマタイト層の厚さのばらつきを考慮して光学理論値201による分光放射率を補正すると、厚さばらつき補正値202に示すように、分光放射率の振動的な振る舞いは見られなくなり、酸化層(ヘマタイト層)の厚さの増加にしたがって、分光放射率は0.78から0.8へとわずかに増加するような挙動を示すことが判った。この複層スケールの分光放射率の値の範囲は、単層スケールの分光放射率0.83とは異なる値となっている。
前述のような知見から、本発明者らは本実施形態に示す発明に至った。すなわち、酸化鋼材の熱履歴(炉内における鋼材の(或る位置における)温度と時間との関係)から酸化層の厚さの成長を予測することができると共に、酸化速度の律速過程の違いに着目することで酸化層の表層物質がウスタイト(単層スケール)またはヘマタイト(複層スケール)の別を判別することができる。そして、その判別結果と酸化層の厚さとから被測定面の適切な分光放射率を定めることができ、そのような分光放射率を、単色の放射温度計の設定分光放射率に適用することによって、鋼材の表面の酸化状態が経時的に変化する場合であっても精度よく酸化鋼材の表面の温度を測定することができる。
酸化鋼材の熱履歴を基に、酸化層の厚さを算出する方法および酸化速度の律速過程を判定する方法としては、以下で説明する、雰囲気からの酸素分子の供給過程が律速する場合の酸化速度と、鉄原子の拡散過程が律速する場合の酸化速度との競争反応を考慮した以下のモデルが知られている(例えば非特許文献3を参照)。
酸素分子の供給が律速する場合の酸化増量および酸化速度の式
w = kl × t ∴ dw/dt = kl ・・・(4)
鉄原子の拡散が律速する場合の酸化増量および酸化速度の式
w = √(kp × t) ∴ dw/dt = kp/(2w) ・・・(5)
実際の酸化速度の式
dw/dt = min(kl,kp/(2w)) ・・・(6)
式(4)〜式(6)の記号は以下の通りである。
w : 酸化層の酸化増量(g/cm2・s)
t : 時間(s)
kl : 直線則速度定数(g/cm2・s2
kp : 放物線則速度定数(g2/cm4・s)
前記式(4)〜(6)から、酸化の律速過程が、酸素分子の供給過程であるか、それとも鉄原子の拡散過程であるかを判別することができる。酸化層の厚さは、酸化層の酸化増量から酸化物の密度を用いて換算することができる。
なお、初期(加熱炉等で加熱する直前)の酸化層の厚さの影響は小さいため、前記酸化層の厚さを求めるに当たっては、実鋼材の実態を調査して、初期の酸化層の厚みを適宜与えればよい。加熱中の酸化層の厚さは、雰囲気の酸素濃度等の加熱中の状態により略決定されるため、初期の酸化層の厚さの影響は小さい。よって、例えば、数十μm〜数百μmの範囲にて、初期の酸化層の厚さを、実態に即したおおよその値として与えれば十分である。また、仮に初期の酸化層の厚さを0μmとしても、本発明の適用は可能である。
直線則速度定数klは、以下の式(7)で表され、雰囲気の酸素濃度に比例する。
kl = kl0 × O2 ・・・(7)
また、放物線則速度定数kpは、以下の式(8)で表される。放物線則速度定数kpは、鉄原子の拡散速度を表しており、それは酸化面の温度に強く依存する。
kp = kp0 × exp(−E/RT) ・・・(8)
式(7)〜式(8)の記号は以下の通りである。
kl0 : 直線則速度定数klの酸素濃度に対する比例係数(g/cm2・s2%)
2 : 雰囲気の酸素濃度(%)
kp0 : 放物線則速度定数kpの温度依存性に対する比例係数(g2/cm4・s)
E : 活性化エネルギー(J/mol・K)
R : 一般ガス定数(J/mol)
T : 酸化面の温度(K)
前述のモデルにおいて、kl0、kp0、Eはモデル定数となる。これらの値は、種々の温度条件や雰囲気条件において酸化層の成長時間が異なる予備実験を多数行い、成長後の酸化層の厚さを測定することによって決定することができる。
また、バッチ式の熱処理炉のように、加熱処理中の被測定面の温度を連続的に測定できる場合には、その熱履歴(測定温度履歴)と前記式(4)〜式(8)とから酸化層の表面物質を推定して、分光放射率を決定することにより、本実施形態による、炉内における鋼材の表面温度の測定を実施することができる。
一方、連続式の加熱炉のように、加熱処理中の被測定面の温度を特定の期間でしか測定できない場合には、加熱中の鋼材の表面温度を、例えば総括熱吸収率(φCG)法のような計算手法で推定することができる。φCG法とは、鋼材の表面の熱流束を式(9)のように表現した簡便なモデルを用い、この式(9)を境界条件として式(10)に示す非定常熱伝導方程式を有限差分法等によって解く方法の総称である。
q = φCG × σ × (TG4 − TS4) ・・・(9)
∂(ρCpT)/∂t=∂{λ(∂T/∂x)/∂x} ・・・(10)
式(9)、式(10)の記号は以下の通りである。
q : 鋼材への熱流束(W/m2
φCG : φCG値
σ : シュテファンボルツマン定数(W/m2・K4
TG : 炉温(K)
TS : 鋼材表面温度(K)
ρ : 鋼材密度(kg/m3
Cp : 鋼材比熱(J/kg・K)
T : 鋼材温度(K)
t : 時間(s)
λ : 鋼材熱伝導率(W/m・K)
x : 鋼材厚さ方向の座標(m)
なお、式(10)には、便宜上、一次元の熱伝導方程式を記載しているが、これの代わりに、二次元や三次元の熱伝導方程式を解いてもよい。また、式(9)には、φCG法による境界条件式を記載しているが、これの代わりに、放射熱伝達による熱流束と対流熱伝達による熱流束とを個別に扱うモデルを用いてもよい。温度の初期値には、炉内に装入される前の鋼材の測定温度や推定温度を与えればよい。
ここまでに述べた迷光補償処理および表面温度履歴から酸化層の厚さの算出と酸化速度の律速過程を判定する処理、および、必要に応じて表面温度履歴を推定する処理はそれぞれコンピューター(計算機)を用いて演算すればよく、それぞれの処理の演算を個別の計算機で実行することもできるし、一台の計算機ですべての処理の演算を実行してもよい。このように本実施形態の処理を実行するハードウェアは公知の技術により実現できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
前述した処理を行うに際し、予め設定されるパラメーターはHDD等の記憶媒体に記憶される。特に、分光放射率εについては、鋼材の表面に形成された酸化層の表層物質がウスタイトであると判別された場合には(当該酸化層の厚さに関わらず)例えば0.83が読み出され、鋼材の表面に形成された酸化層の表層物質がヘマタイトであると判別された場合には、当該酸化層の厚みに応じて例えば0.78から0.8の何れかが読み出される構造のテーブルに記憶される。ここで、図2に示すように、ヘマタイトの厚さが厚いほど、分光放射率εは大きくなるので、鋼材の表面に形成された酸化層の厚さが厚いほど大きな分光放射率εが読み出されるように前述したテーブルを構成する。
図3は、鋼材の表面温度測定装置の演算部の処理の一例を説明するフローチャートである。全体の処理は、ある時間ステップ間隔で同じことを繰り返すものである(ステップS11)。
まず、鋼材の表面温度の予測計算をする場合の処理は、最新の炉内の温度を読み込み、式(9)〜式(10)を用いて炉内のすべての鋼材の表面温度(被測定面の温度Ts)を算出する処理である(ステップS12、S13)。炉内に装入される前の鋼材の表面温度を測定または推定してそれを初期温度分布とし、適当な時間刻みを設定して式(9)〜(10)を有限差分法などの数値計算方法によって解くことにより、各時刻の鋼材の表面温度履歴を算出する。
続いて第一の処理は、炉内のすべての鋼材に対して、それぞれの鋼材の最新の表面温度と、現在時刻の炉内の酸素濃度とから、当該時間ステップでのそれぞれの鋼材の酸化層の厚さおよび当該時間ステップでの酸化速度の律速過程を算出する処理である(ステップS14、S15)。前述の式(4)〜式(8)を用いて酸化層の厚さと酸化速度の律速過程とを導出する。
続いて第二の処理は、酸化速度の律速過程の予測結果と酸化層の厚さから、分光放射率を設定する処理である(ステップS16)。酸化速度の律速過程の予測結果から、鋼材の表面物質がウスタイトと判定された場合には、分光放射率εを0.83とし、表面物質がヘマタイトと判定された場合には、図2に示したように、酸化層の厚さによって分光放射率εを0.78〜0.8に設定する。ここでは、ウスタイトの分光放射率εを0.83、ヘマタイトの分光放射率εを0.78〜0.8とした例を示したが、ウスタイト、ヘマタイトの分光放射率εは、これらの値に限られるものではない。ウスタイト、ヘマタイトの分光放射率εは、被測定材をサンプルとした種々の予備測定の結果に基づいて決定することができる。
さらに第三の処理は迷光補償処理である(ステップS17)。迷光補償用の温度計による炉壁の温度測定値(迷光源の温度Tn)と、その迷光補償用の温度計と被測定面との幾何関係から定まる各迷光源の重みWと、前述の分光放射率εと、観測される放射強度Lまたは温度と、から、式(1)および式(3)の関係式を用いて被測定面の温度Tsを算出する。
そして、表示処理は、第三の処理で得られた被測定面の温度Tsをコンピュータディスプレイに表示する処理である(ステップS18)。
これらの一連の処理を適当な時間ステップ(間隔)で実行することにより、表面が酸化した鋼材の熱履歴から酸化速度の律速過程の違いに着目することで、酸化層の表層物質を判定して、放射温度計による測定で設定すべき分光放射率を、すべての鋼材に対して定めることができる。したがって、鋼材の表面の酸化状態が経時的に変化する場合であっても、それぞれの鋼材に適した分光放射率を設定することができるから、精度よく鋼材の表面温度を測定することができる。
また、本実施形態は、炉内が酸化雰囲気であり、炉内に存在する鋼材の表面が酸化される状態となる炉であれば、炉の種類を問わずに適用可能である。
更にまた、本実施形態で説明した処理を実行することにより、鋼材の表面温度が精度よく測定されることで、その温度に基づいて炉を運転することにより、適切なヒートパターンで鋼材を加熱することができる。その結果、例えば、熱間圧延における加工精度の向上や、炉の省エネルギーや、生産効率の向上や、所望の材質特性の確保を実現することもできるようになる。
以下、実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明する。
本実施例における加熱炉の一例を図4に示す。尚、図4では、表記の都合上、加熱炉における必要な部分のみを簡略化して示している。
加熱炉1は、予熱帯2、第一加熱帯3、第二加熱帯4、および均熱帯5からなる、炉長が40mの多帯式ウォーキングビーム型加熱炉である。第一加熱帯3の出側および均熱帯5の出側の天井部から鉛直下向きに、市販品の測定波長が3.9μmの放射温度計61および62を設置した。放射温度計61の測定結果に基づいて予熱帯2および第一加熱帯3の炉温を運転者が調整し、放射温度計62の測定結果に基づいて第二加熱帯4および均熱帯5の炉温を調整した。
放射温度計61および62は加熱炉1外に置かれ、耐熱ガラス(図示外)を隔てて光路を確保し(この光路を確保するために炉壁(天井)には開口面(窓部)73が形成されている)、加熱炉1内の鋼材Sの表面を視野に入れ、その表面温度を測定した。その際、放射温度計61および62の周辺には、加熱炉1の天井の温度を測定するための、迷光補償用の温度計71および72をそれぞれ4本配置してその測定温度を用いて迷光補償をした。これら4本の迷光補償用の温度計71a〜71d、72a〜72dは、それぞれ放射温度計61、62の光軸を中心とする半径1.5mの円周を四等分する位置に配置した。そのため式(2)で表わされる、各迷光源の重みWはすべて0.25とした。図5に、放射温度計61、62と迷光補償用の温度計71a〜71d、72a〜72dの配置の一例を示す。図5に示す記号は、式(2)に対応するものである。
一方で、温度計算モデルを用いて、鋼材Sの表面および内部の温度の計算と、酸化層の厚みの計算とを実施した。加熱炉1内に装入される前に装入テーブル上で放射温度計95によって鋼材Sの温度を測定し、その値を温度計算の初期値とした。温度計算モデルには、式(9)を境界条件とする前述のφCG法によるモデルを用いた。各燃焼制御帯の炉温は、炉温計91〜94で測定し、加熱炉1内の酸素濃度は酸素濃度計96で測定した。また、酸化層の厚み計算モデルには、式(4)〜(8)で説明した競争反応モデルを用いた。
温度計算モデルのφCG値は、熱電対を埋設した鋼材Sを加熱炉1で加熱して、その熱電対により測定された温度履歴から予め導出した。また、酸化層の厚み計算モデルのパラメーターは、加熱温度および加熱時間および酸素濃度が異なる条件で鋼材サンプルを加熱試験し、試験後の酸化層の厚さから予め導出した。
この競争反応モデルによって、酸素分子の供給過程が律速すると判定された場合には、鋼材Sの表面物質がウスタイトであると判定して分光放射率εを0.83として放射温度計による鋼材Sの表面温度の測定を実施した。一方、鉄原子の拡散が律速すると判定された場合には、鋼材Sの表面物質がヘマタイトであると判定し、この場合には、図2に示したように、酸化層の厚さに応じて分光放射率εを0.78〜0.8として放射温度計による鋼材Sの表面温度の測定を実施した。
温度計算と、鋼材Sの酸化層の厚み計算と、酸化速度の律速過程の判定と、迷光補償処理は、一台の計算機8で実行した。この計算機8には、鋼材Sの温度計算を実行するためのプログラムと、鋼材Sの酸化層の厚さ計算を実行するためのプログラムと、迷光補償処理をするためのプログラムとが実装されている。鋼材Sの温度計算と、鋼材Sの酸化層の厚さ計算は、処理されるすべての鋼材Sに対して実行する。そして、放射温度計61および62によって測定されている鋼材S1およびS2のスケール構造を推定する。その推定された結果に基づいて、放射温度計61および62の設定分光放射率εを決定し、迷光補償処理に反映して放射温度計61および62による測定値を算出した。
前述の表面温度測定方法を用いて測定した、鋼材Sの表面温度を運転者に表示し、運転者はその表面温度に基づいて各燃焼制御帯2〜5の設定炉温を変更した。すなわち、鋼材ごとに定められている抽出目標温度およびそれを満足するために必要な第一加熱帯3の出側温度を、前述の表面温度測定方法による測定値と比較して、鋼材の表面温度の過不足を判定して、設定炉温を変更したり鋼材の進度を調整したりして加熱炉1を操業した。抽出端で、鋼材Sの表面温度の不足が生じたときは、鋼材Sの表面温度が所定の温度に達してから抽出処理した。
なお、抽出目標温度を満足するために必要な第一加熱帯3の出側温度は予め温度モデルを用いて計算しておき、種々の装入温度や在炉時間条件に対する表としてまとめ、それを参照した。
本実施例による表面温度測定方法で計測した結果に基づいて操業した結果、表1のような操業実績となった。比較例では、分光放射率εを0.78または0.83に固定して、鋼材の表面温度を測定した結果に基づいて操業した。それぞれの操業における操業時間は圧延単位二単位分とし、約10時間であった。本実施例による表面温度測定方法において、第一加熱帯3の放射温度計61では、当該操業時間のうち約6.5時間で、酸化面をウスタイトと判定し、残りの約3.5時間で、酸化面をヘマタイトと判定した。ヘマタイトの厚さは約1μmとなり、分光放射率εは0.78程度であった。一方で、均熱帯5の放射温度計62では、ほぼすべての時間で酸化面をヘマタイトと判定した。ヘマタイトの厚さは約2μmとなり分光放射率εは0.79程度であった。いずれの操業においても運転者は測定結果と目標温度とを比較して、設定炉温を5℃単位で適宜変更した。
Figure 2012093177
本実施例による表面温度測定方法を用いた操業では、加熱炉1の処理能率が最も高く、また、燃料原単位が最も低くなった。一方、分光放射率εを0.78に固定した場合では表面物質がウスタイトになっている鋼材(分光放射率ε=0.83相当)の温度を、特に第一加熱帯3の出側の放射温度計61で、過小に測定することにより、炉温を必要以上に高めに設定したため燃料原単位が悪化した。一方で、分光放射率εを0.83に固定した場合は、表面物質がヘマタイトになっている鋼材(分光放射率ε=0.78相当)の温度を過大に測定することにより、炉温の設定が低くなるため、抽出端での鋼材温度が抽出目標温度に達せず抽出端で焼け待ちが発生して処理能率が低下し、さらに処理能率が低下した影響で燃料原単位も悪化した。
このように、前述した表面温度測定方法では、炉における処理能率を高めつつ、炉の燃料原単位を削減することができる。このほかにも再加熱温度のばらつきが小さくなることから、主に固溶元素の析出を制御することによって材料強度を確保する製品においてその材料間の材料強度のばらつきが低減する効果も期待できる。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、またはかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体およびプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の表面温度測定方法によれば、鋼材の表面に形成された酸化層の表面物質を推定してその推定結果に基づいて放射温度計の分光放射率を適正に設定するので、酸化鋼材の表面温度を放射温度計によって精度よく測定できる。そのため、例えば、このように測定された温度に基づいて再加熱条件や圧延条件や冷却条件を自動制御または運転者による手動設定をすることで、材料強度の確保や表面キズの防止といった鋼材の品質管理とエネルギー原単位の削減や歩留まりの向上や生産能率の適正化などを図ることができる。
1 加熱炉
2 予熱帯
3 第一加熱帯
4 第二加熱帯
5 均熱帯
61、62 (炉内の鋼材の表面温度の測定を行う)放射温度計
71、72 迷光補償用の温度計
73 開口面(窓部)
8 計算機
91、92、93、94 炉温計
95 (装入前に鋼材の表面温度の測定を行う)放射温度計
96 酸素濃度計

Claims (6)

  1. 鋼材を加熱処理する炉内において、表面が酸化している鋼材の表面温度を測定する鋼材の表面温度測定方法であって、
    3.9μm狭域帯波長の放射温度計を用いて、前記鋼材の表面から観測される放射強度を測定する工程と、
    迷光源の温度を測定する迷光補償用の温度計の測定値を用いて、前記鋼材の表面からの迷光放射強度を算出する工程と、
    前記鋼材の表面の熱履歴から、前記鋼材の表面の酸化層の厚みを算出すると共に、前記鋼材の表面酸化速度が、酸素分子供給過程と鉄原子拡散過程とのいずれに律速されているかを判断することで、前記鋼材の表面物質がウスタイトまたはヘマタイトのどちらであるかを判別して、前記酸化層の厚みと前記鋼材の表面物質の判別結果とのうち、少なくとも前記鋼材の表面物質の判別結果から分光放射率を導出する工程と、
    前記観測される放射強度から前記迷光放射強度を差し引いて得られる放射強度を、前記分光放射率で除して黒体放射強度を求め、前記黒体放射強度とプランクの黒体放射式から鋼材の表面温度を算出する工程と、
    を有することを特徴とする炉内における鋼材の表面温度測定方法。
  2. 前記鋼材の表面物質がウスタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに関わらず予め定められた値を前記分光放射率として導出し、前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値を前記分光放射率として導出することを特徴とする請求項1に記載の炉内における鋼材の表面温度測定方法。
  3. 前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値として、前記酸化層の厚みが厚いほど大きな値を得て、当該得た値を前記分光放射率として導出することを特徴とする請求項2に記載の炉内における鋼材の表面温度測定方法。
  4. 鋼材を加熱処理する炉内において、表面が酸化している鋼材の表面温度を測定する鋼材の表面温度測定装置であって、
    3.9μm狭域帯波長の放射温度計と、
    前記放射温度計を用いて前記鋼材の表面から観測される放射強度を測定する手段と、
    前記放射温度計の周辺の迷光源となる領域に配置した1本以上の迷光補償用の温度計と、
    前記迷光補償用の温度計を用いて測定した前記迷光源の温度を用いて、前記鋼材の表面からの迷光放射強度を算出する手段と、
    前記鋼材の表面の熱履歴から、前記鋼材の表面の酸化層の厚みを算出すると共に、前記鋼材の表面酸化速度が、酸素分子供給過程と鉄原子拡散過程とのいずれに律速されているかを判断することで、前記鋼材の表面物質がウスタイトまたはヘマタイトのどちらであるかを判別して、前記酸化層の厚みと前記鋼材の表面物質の判別結果とのうち、少なくとも前記鋼材の表面物質の判別結果から分光放射率を導出する手段と、
    前記観測される放射強度から前記迷光放射強度を差し引いて得られる放射強度を、前記分光放射率で除して黒体放射強度を求め、前記黒体放射強度とプランクの黒体放射式から鋼材の表面温度を算出する手段と、
    を有することを特徴とする炉内における鋼材の表面温度測定装置。
  5. 前記鋼材の表面物質がウスタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに関わらず予め定められた値を前記分光放射率として導出し、前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値を前記分光放射率として導出することを特徴とする請求項4に記載の炉内における鋼材の表面温度測定装置。
  6. 前記鋼材の表面物質がヘマタイトであると判別すると、前記酸化層の厚みに応じて予め定められた値として、前記酸化層の厚みが厚いほど大きな値を得て、当該得た値を前記分光放射率として導出することを特徴とする請求項5に記載の炉内における鋼材の表面温度測定装置。
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