JP2004027314A - 被加熱物の温度推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱炉内の被加熱物の温度を長期間に渡り正確に推定することができる被加熱物の温度推定方法を提供する。
【解決手段】加熱炉内の被加熱物の温度推定方法であって、加熱炉内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前の被加熱物の推定温度とから前記被加熱物への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記被加熱物の温度を推定する温度推定ステップとを備える。
【選択図】 図2
【解決手段】加熱炉内の被加熱物の温度推定方法であって、加熱炉内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前の被加熱物の推定温度とから前記被加熱物への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記被加熱物の温度を推定する温度推定ステップとを備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱炉における被加熱物の温度推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延工程においては、圧延される鋼片は加熱炉内で所定の温度に加熱された後、圧延装置に送られる。
【0003】
このような加熱炉においては、加熱炉内の被加熱物の温度を正確に推定することが重要となる。加熱炉内における被加熱物である鋼片の温度を推定する方法として、例えば、特開昭57−108221号公報には、炉壁に設置された熱電対で測定した炉温と鋼片在炉時間とから計算した推定鋼片表面温度と、炉壁に設置された放射温度計で測定した炉内の鋼片表面温度との差から温度推定モデルの係数を修正し、さらに加熱炉出口での鋼片温度が所定の温度となるように制御する制御装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特開昭57−108221号公報に示された制御装置は、炉壁に設置された熱電対で測定した炉温に基づき制御を行っているため、以下のような問題があった。つまり、炉壁に設置された熱電対は、加熱炉内の高温ガス体からの放射伝熱と、その高温ガス体からの放射伝熱により加熱された炉壁からの放射伝熱と、炉壁からの伝導伝熱等とが相乗した状態の温度を計測しているので、一般に高温ガス体の温度よりも低い温度を表示する。また、炉壁や熱電対にはそれぞれ固有の熱容量が存在し、熱平衡に達するまでにある程度時間がかかるため、炉壁に設置された熱電対による計測温度は、加熱炉内の温度変化を正確に反映しない。
【0005】
仮に、加熱炉内が定常状態にあると仮定すれば、定常バイアス分を計測値に上乗せすることにより、熱電対での計測結果で炉内温度を推定することがある程度可能である。しかし、加熱炉内に装入される鋼片の温度は常温から所定の加熱温度まで様々に変化し、また、加熱目標温度も鋼片の種類により様々に変化する等の理由により、炉内は常に非定常状態となる。従って、実際の操業状態においては、熱電対による計測温度に基づく鋼片温度の推定には大きな誤差が伴う可能性がある。
【0006】
さらに、熱電対は一般に炉壁に設置する形態をとるため、熱電対による温度の計測値は設置箇所周辺の炉形状や操業状況の変化に影響を受け易く、また、経時変化等に対しても影響を受け易いため、補正作業等を頻繁に行わなければならない。
【0007】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、加熱炉内の被加熱物の温度を長期間に渡り正確に推定することができる被加熱物の温度推定方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
一般に伝熱の形態には、放射伝熱、対流伝熱、伝導伝熱の3種類の形態が存在し、本発明方法が適用される加熱炉における被加熱物に対する伝熱形態も同様である。しかし、スラブを被加熱物とするような加熱炉では、抽出温度が1000℃を超える高温域にあるため、放射伝熱が支配的となる。
【0009】
図4は、加熱炉内における伝熱の様子を模式的に示した図である。以下、図4を用いて説明する。
【0010】
一般に加熱炉内で最も高温となる部分、つまり大元の熱の供給源は、バーナー10による燃料の燃焼によって生じた高温のガス体11であり、このガス体11からの放射伝熱12がスラブ3への入熱の大部分を占める。従って、この高温ガス体11の温度を正確に知ることにより、スラブ3への入熱量を精度良く算出することが可能となる。ところが従来は、炉壁15に設けられた熱電対16による温度計測結果に基づきスラブ3への入熱量を算出していた。この熱電対16は、高温ガス体11からの放射伝熱12、その高温ガス体11からの放射伝熱により加熱され高温となった炉壁15からの放射伝熱13、さらに炉壁15からの伝導伝熱14等が相乗した状態で温度計測をしていることになり、一般に高温ガス体11の温度よりも低い温度を表示する。また、炉壁15や熱電対16にはそれぞれ固有の熱容量が存在し、熱平衡に達するまでにある程度時間がかかるため、炉壁15に設置された熱電対16による計測温度は、加熱炉内の温度変化を正確に反映せずスラブ3への実際の入熱量を正しく評価できない。
【0011】
このような状況において本発明者らは、特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測することができる放射温度計が、当該加熱炉内の高温ガス体11の温度計測に適用できるのではないかとの着想に基づき検討を行った。
【0012】
図5は、加熱炉内のガス温度を、従来使用されていた熱電対と前記放射温度計で計測した値を比較したものである。加熱状態において前記放射温度計の計測値の方が熱電対による計測値に比べ100℃近く高い値を示し、さらに、保温状態から加熱状態への移行時に前記放射温度計の計測値の方が10分オーダーでの応答性の速さがみられた。また、前記放射温度計の計測値は、1時間ピッチの温度上昇・下降を捉えられることが示されている。
【0013】
さらに、熱電対は一般に炉壁に設置する形態をとるため、設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等が熱電対への伝熱特性に大きく影響を与える。それに対し、放射温度計は、スラブ近傍のガス温度を直接計測できることから、炉形状や操業状況への依存度が本質的に小さくなる。
【0014】
図6は、同一の加熱炉において、炉内の高温ガス体11からスラブ3への入熱量を求める際の係数となる総括熱吸収率ΦCGを、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出した結果と放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した結果とを比較したものである。なお、図6は、炉内を12の温度制御区分に分割し、それぞれの区分で総括熱吸収率ΦCGを求めたものである。
【0015】
図6に示すように、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出したΦCGは、炉内の各区分で大きく変動しているのに対して、放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した場合は変動が小幅に収まっている。このことは、上述した熱電対の設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等が熱電対への伝熱特性に大きく影響を与え、温度の計測結果を大きく変動させることを示すものである。言いかえれば、熱電対による温度の計測値は、炉内状況等の経時変化に対しても影響を受け易いことをあらわしており、ΦCGの補正作業を頻繁に行う必要があることを示している。
【0016】
それに対し、放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出したΦCGは変動が少なく、放射温度計による計測値は放射温度計の設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等の影響を受けにくいことがわかる。つまり、放射温度計を用いることにより、長期にわたり安定した温度計測が可能であることがわかる。
【0017】
本発明は、正確なガス温度を長期間に渡り信頼性良く計測できるという放射温度計の特徴に基づきなされたもので、以下のような特徴を被加熱物の温度推定方法である。
[1]加熱炉内の被加熱物の温度推定方法であって、加熱炉内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前の被加熱物の推定温度とから前記被加熱物への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記被加熱物の温度を推定する温度推定ステップとを備えたことを特徴とする被加熱物の温度推定方法。
[2]上記[1]において、特定ガス成分がCO2又はH2Oであることを特徴とする被加熱物の温度推定方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る被加熱物の温度推定方法が適用される加熱炉の一実施形態を示す概略構成図であり、箱型のウォーキングビーム式加熱炉を示したものである。
【0019】
図1において、被加熱物であるスラブ3は、加熱炉4の装入側から炉内に装入され、所定の温度に加熱された後、抽出側から炉外に抽出される。加熱炉4から抽出されたスラブは、その後、図示しない圧延装置に送られる。
【0020】
前記加熱炉4は、炉内に装入されたスラブの表面温度を計測するスラブ表面温度計2と、加熱炉4内のガス温度を計測する炉内ガス温度計1と、加熱炉4内壁の表面温度を計測する炉壁温度計6と、スラブ3の温度推定を行う温度推定手段5とを備えている。ここで、前記スラブ表面温度計2としては、加熱炉4内に装入されるスラブの初期の表面温度が計測できるものであれば特に限定されないが、例えば、放射率を適切に調節した放射温度計等を用いることができる。また、前記炉内ガス温度計1としては、加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測することができる、例えば放射温度計を用いることができる。この放射温度計は、波長帯のフィルタリング技術を応用することにより、加熱炉4内の特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを非接触で検出することが可能であり、炉内に存在する他の成分による熱放射の影響や炉壁温度の影響を受けることなく正確に特定ガス成分のガス温度の計測ができる。なお、一般的にガスは熱容量が小さく周囲のガスとの間で熱の授受が短時間で行われるため、前記計測された加熱炉内の特定ガス成分のガス温度は、その近傍雰囲気のガス温度と同じと見ることができる。また、前記炉壁温度計6としては、スラブ3周囲の加熱炉内壁の表面温度が計測できるものであれば特に限定されないが、例えば、加熱炉内壁の表面近傍に埋め込んだ熱電対等を用いることができる。
【0021】
前記加熱炉4内は、スラブ3の進行方向に沿って1又は複数の温度制御区分に分割されており、それぞれの温度制御区分には少なくとも1つの炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6がそれぞれ設置されている。図1では、前記炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6をスラブ3の進行方向に沿ってそれぞれ3ヶ所設置した場合を図示しているが、温度制御区分の分割数、そこに設置する炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6の数は加熱炉の規模或いは被加熱物の品種等により適宜設定され得るものである。
【0022】
前記温度推定手段5では、前記炉内ガス温度計1、炉壁温度計6、スラブ表面温度計2の温度計測結果に基づき、各温度制御区分毎にスラブ3の温度の推定を行う。
【0023】
以下、前記温度推定手段5で行われる被加熱物であるスラブ3の温度を推定する方法について説明する。
【0024】
図2は加熱炉4内におけるスラブ3の温度を推定する方法の一例を示すフロー図である。図2に示すように、スラブ3の温度推定方法は、加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉4内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前のスラブ3の推定温度とから前記スラブ3への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記スラブ3の温度を推定する温度推定ステップとを有する。
【0025】
まず、炉内ガス温度計測ステップでは、炉内のガス温度を計測する手段として、例えば放射温度計を用いた場合、この放射温度計1で加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測し、そのガス温度を炉内ガス温度として記憶させるものである。ここで、前記放射温度計1による温度計測は、予め定められた所定の時間間隔で連続的に行われる。
【0026】
炉内ガス温度の計測に放射温度計を用いることにより、従来行われていた炉壁に設置された熱電対による炉内ガス温度の計測と比較して、より正確な炉内ガス温度をより応答性良く計測することが可能となる。
【0027】
ここで、前記特定ガス成分としては、CO2又はH2Oであることが好ましい。CO2又はH2Oの吸収波長帯域に合わせた狭帯域光学フィルタを前記放射温度計と組み合わせることで、CO2又はH2O成分のガス温度を選択的に計測することが可能となる。また、CO2及びH2Oは炉内に大量に存在し、他の成分、例えばN2と比較して吸収波長帯における熱放射エネルギーは極めて強いため、全波長帯域にわたる炉内の迷光などの影響を受けずに正確な温度の計測が可能となる。
【0028】
また、炉壁温度計測ステップでは、スラブ3周囲の加熱炉内壁の表面温度を計測する手段として、例えば加熱炉内壁の表面近傍に埋め込んだ熱電対を用いた場合、この熱電対6により予め定められた所定の時間間隔で加熱炉内壁の表面温度を計測し、その温度を加熱炉内壁の表面温度として記憶させるものである。なお、この熱電対6による温度の計測間隔は前記放射温度計1による温度の計測間隔と同じとすることが好ましい。
【0029】
次の入熱量算出ステップでは、前記炉内ガス温度計測ステップで計測された加熱炉4内のガス温度(θgas)及び前記炉壁温度計測ステップで計測された加熱炉4内壁の表面温度(θwall)と所定時間前のスラブ3の推定温度(θslab)とから前記スラブ3への入熱量(qi)を算出する。
【0030】
ここで、前記所定時間前のスラブ3の推定温度(θslab)としては、所定の時間間隔(例えば、放射温度計1での計測間隔)で行われている過去分の温度推定結果の内で前回行った推定温度を用いるものとする。
【0031】
前記入熱量(qi)は、加熱炉4内のスラブ3周囲の高温ガス体からスラブ3への入熱量(qi1)とスラブ3周囲の加熱炉内壁からスラブ3への入熱量(qi2)とを合計したものとして次式(1)により算出される。ここでは、高温ガス体からスラブ3への入熱の他に加熱炉内壁からのスラブ3への入熱量を考慮することにより、より正確にスラブ3への入熱量を評価することが可能となる。
【0032】
【式1】
【0033】
ここで、σはボルツマン定数、ΦCG1は加熱炉4内のスラブ3周囲の高温ガス体からスラブ3への総括熱吸収率、ΦCG2はスラブ3周囲の加熱炉内壁からスラブ3への総括熱吸収率を表す。
【0034】
なお、上式(1)における総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 は、測温スラブを使った事前の計測により、各温度制御区分毎に予め決定される定数である。
【0035】
次の温度推定ステップでは、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量(qi)から前記スラブ3の温度を推定する。
【0036】
スラブ3の温度は、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量(qi)、所定時間前のスラブ3の推定温度、および現時刻における炉内ガス温度を入力として、次式(2)及び(3)により推定する。
【0037】
【式2】
【0038】
【式3】
【0039】
ここで、θslab=θslab(x,t)はスラブ温度、xはスラブの厚み方向の座標、tは時間、cはスラブの比熱、γはスラブの比重、λはスラブの熱伝導率を表す。
【0040】
上式(2)、(3)による温度推定は所定の時間間隔(放射温度計1での計測間隔)毎に行われる。このとき、スラブ3が炉内の複数に分割された温度制御区分を通過する場合には、スラブ3が通過するそれぞれの温度制御区分毎に決定された総括熱吸収率ΦCGを用いて算出される入熱量(qi)に基づき温度推定が行われる。
【0041】
なお、上述したスラブ3の温度推定方法では、所定時間前、つまり前回推定したスラブ温度と、前回推定した時点から今回推定を行う時点(現時点)までのスラブ3への入熱量(qi)に基づき現時点でのスラブ3の温度を推定しているが、初回の推定時に用いる前回推定したスラブ温度としては、図1に示したスラブ表面温度計2による計測値を用いることが好ましい。
【0042】
以下、測温スラブを使った総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 の事前の決定方法について説明する。
▲1▼まず、表面及び内部に温度計を取り付けた測温スラブを加熱炉4内に装入し、実際の操業条件と同じ条件で加熱を行いながら測温スラブの表面温度θslab(表面)及び内部温度θslabを時系列データとして計測し記録する。
▲2▼一般に、スラブの表面温度θslab(表面)およびスラブの内部温度θslabは前記(2)式で示される伝熱方程式、および前記(3)式で示される境界条件を満足する。そこで、測温スラブでの計測結果と前記(2)、(3)式の関係から時系列データとして入熱量qiを求め記録する。
▲3▼各温度制御区分毎に、前記▲1▼及び▲2▼で求めたθslab、qi の値、放射温度計1による炉内ガス温度θgas、熱電対6による加熱炉4内壁の表面温度θwall 及び既知のボルツマン定数σの値を前記(1)式に代入し、最小二乗法を用いた解析により総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 を算出する。
【0043】
以上、本発明に係る被加熱物の温度推定方法について説明したが、実際の加熱炉の運転においては、この被加熱物の温度推定方法により推定した温度と、その時点での被加熱物の目標とする温度とを比較して、その差が最小となるように加熱炉の燃焼制御を行っている。ここで、前記燃焼制御の制御アルゴリズムとしては、例えば、一般に広く用いられている次式(4)に示すPIコントローラを使用することができる。
【0044】
【式4】
【0045】
ここで、uは操作量(燃焼バーナー設定値)、rは目標温度、kPはPIコントローラ比例ゲイン、kIはPIコントローラ積分ゲイン、y=θslab(表面)(t)はスラブ表面温度を表す。
【0046】
【実施例】
図3に、実施例として本発明方法を用いてスラブの温度推定を行った場合の推定温度の履歴結果と、実際に測温スラブを用いて実測したスラブ温度の履歴結果とを比較した結果を示す。なお、図3には比較例として、従来技術に係る熱電対の測温結果に基づきスラブ温度を推定した場合の推定温度の履歴結果も示す。
【0047】
図3に示す実施例においては、炉内ガス温度をCO2の吸収波長帯域に合わせた狭帯域光学フィルタと組み合わせた放射温度計を用いて計測した。
【0048】
図3に示すように、本発明方法による推定結果は、炉内の全範囲において実測値と非常に良く近似しており、スラブ温度が正確に推定できていることが確認できた。それに対し、比較例の熱電対の測温結果に基づきスラブ温度を推定する方法においては、実測値と大きく隔たりのある箇所があり、推定精度に問題のあることが示されている。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、加熱炉内の被加熱物の温度を長期間に渡り正確に推定することができる被加熱物の温度推定方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被加熱物の温度推定方法が適用される加熱炉の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る加熱炉内におけるスラブの温度を推定する方法の一例を示すフロー図である。
【図3】実施例として本発明方法を用いてスラブの温度推定を行った場合の推定温度の履歴結果と、実際に測温スラブを用いて実測したスラブ温度の履歴結果とを比較した結果を示す図である。
【図4】加熱炉内における伝熱の様子を模式的に示した図である。
【図5】加熱炉内のガス温度を、従来使用されていた熱電対と放射温度計で計測した値を比較した図である。
【図6】同一の加熱炉において、炉内の高温ガス体からスラブへの入熱量を求める際の係数となる総括熱吸収率ΦCGを、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出した結果と放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した結果とを比較した図である。
【符号の説明】
1 炉内ガス温度計
2 スラブ表面温度計
3 スラブ
4 加熱炉
5 温度推定手段
6 炉壁温度計
10 バーナー
11 高温ガス体
12 高温ガス体からの放射伝熱
13 炉壁からの放射伝熱
14 炉壁内伝導伝熱
15 炉壁
16 熱電対
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱炉における被加熱物の温度推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延工程においては、圧延される鋼片は加熱炉内で所定の温度に加熱された後、圧延装置に送られる。
【0003】
このような加熱炉においては、加熱炉内の被加熱物の温度を正確に推定することが重要となる。加熱炉内における被加熱物である鋼片の温度を推定する方法として、例えば、特開昭57−108221号公報には、炉壁に設置された熱電対で測定した炉温と鋼片在炉時間とから計算した推定鋼片表面温度と、炉壁に設置された放射温度計で測定した炉内の鋼片表面温度との差から温度推定モデルの係数を修正し、さらに加熱炉出口での鋼片温度が所定の温度となるように制御する制御装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特開昭57−108221号公報に示された制御装置は、炉壁に設置された熱電対で測定した炉温に基づき制御を行っているため、以下のような問題があった。つまり、炉壁に設置された熱電対は、加熱炉内の高温ガス体からの放射伝熱と、その高温ガス体からの放射伝熱により加熱された炉壁からの放射伝熱と、炉壁からの伝導伝熱等とが相乗した状態の温度を計測しているので、一般に高温ガス体の温度よりも低い温度を表示する。また、炉壁や熱電対にはそれぞれ固有の熱容量が存在し、熱平衡に達するまでにある程度時間がかかるため、炉壁に設置された熱電対による計測温度は、加熱炉内の温度変化を正確に反映しない。
【0005】
仮に、加熱炉内が定常状態にあると仮定すれば、定常バイアス分を計測値に上乗せすることにより、熱電対での計測結果で炉内温度を推定することがある程度可能である。しかし、加熱炉内に装入される鋼片の温度は常温から所定の加熱温度まで様々に変化し、また、加熱目標温度も鋼片の種類により様々に変化する等の理由により、炉内は常に非定常状態となる。従って、実際の操業状態においては、熱電対による計測温度に基づく鋼片温度の推定には大きな誤差が伴う可能性がある。
【0006】
さらに、熱電対は一般に炉壁に設置する形態をとるため、熱電対による温度の計測値は設置箇所周辺の炉形状や操業状況の変化に影響を受け易く、また、経時変化等に対しても影響を受け易いため、補正作業等を頻繁に行わなければならない。
【0007】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、加熱炉内の被加熱物の温度を長期間に渡り正確に推定することができる被加熱物の温度推定方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
一般に伝熱の形態には、放射伝熱、対流伝熱、伝導伝熱の3種類の形態が存在し、本発明方法が適用される加熱炉における被加熱物に対する伝熱形態も同様である。しかし、スラブを被加熱物とするような加熱炉では、抽出温度が1000℃を超える高温域にあるため、放射伝熱が支配的となる。
【0009】
図4は、加熱炉内における伝熱の様子を模式的に示した図である。以下、図4を用いて説明する。
【0010】
一般に加熱炉内で最も高温となる部分、つまり大元の熱の供給源は、バーナー10による燃料の燃焼によって生じた高温のガス体11であり、このガス体11からの放射伝熱12がスラブ3への入熱の大部分を占める。従って、この高温ガス体11の温度を正確に知ることにより、スラブ3への入熱量を精度良く算出することが可能となる。ところが従来は、炉壁15に設けられた熱電対16による温度計測結果に基づきスラブ3への入熱量を算出していた。この熱電対16は、高温ガス体11からの放射伝熱12、その高温ガス体11からの放射伝熱により加熱され高温となった炉壁15からの放射伝熱13、さらに炉壁15からの伝導伝熱14等が相乗した状態で温度計測をしていることになり、一般に高温ガス体11の温度よりも低い温度を表示する。また、炉壁15や熱電対16にはそれぞれ固有の熱容量が存在し、熱平衡に達するまでにある程度時間がかかるため、炉壁15に設置された熱電対16による計測温度は、加熱炉内の温度変化を正確に反映せずスラブ3への実際の入熱量を正しく評価できない。
【0011】
このような状況において本発明者らは、特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測することができる放射温度計が、当該加熱炉内の高温ガス体11の温度計測に適用できるのではないかとの着想に基づき検討を行った。
【0012】
図5は、加熱炉内のガス温度を、従来使用されていた熱電対と前記放射温度計で計測した値を比較したものである。加熱状態において前記放射温度計の計測値の方が熱電対による計測値に比べ100℃近く高い値を示し、さらに、保温状態から加熱状態への移行時に前記放射温度計の計測値の方が10分オーダーでの応答性の速さがみられた。また、前記放射温度計の計測値は、1時間ピッチの温度上昇・下降を捉えられることが示されている。
【0013】
さらに、熱電対は一般に炉壁に設置する形態をとるため、設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等が熱電対への伝熱特性に大きく影響を与える。それに対し、放射温度計は、スラブ近傍のガス温度を直接計測できることから、炉形状や操業状況への依存度が本質的に小さくなる。
【0014】
図6は、同一の加熱炉において、炉内の高温ガス体11からスラブ3への入熱量を求める際の係数となる総括熱吸収率ΦCGを、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出した結果と放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した結果とを比較したものである。なお、図6は、炉内を12の温度制御区分に分割し、それぞれの区分で総括熱吸収率ΦCGを求めたものである。
【0015】
図6に示すように、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出したΦCGは、炉内の各区分で大きく変動しているのに対して、放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した場合は変動が小幅に収まっている。このことは、上述した熱電対の設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等が熱電対への伝熱特性に大きく影響を与え、温度の計測結果を大きく変動させることを示すものである。言いかえれば、熱電対による温度の計測値は、炉内状況等の経時変化に対しても影響を受け易いことをあらわしており、ΦCGの補正作業を頻繁に行う必要があることを示している。
【0016】
それに対し、放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出したΦCGは変動が少なく、放射温度計による計測値は放射温度計の設置箇所周辺の炉形状及び操業状況の変化等の影響を受けにくいことがわかる。つまり、放射温度計を用いることにより、長期にわたり安定した温度計測が可能であることがわかる。
【0017】
本発明は、正確なガス温度を長期間に渡り信頼性良く計測できるという放射温度計の特徴に基づきなされたもので、以下のような特徴を被加熱物の温度推定方法である。
[1]加熱炉内の被加熱物の温度推定方法であって、加熱炉内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前の被加熱物の推定温度とから前記被加熱物への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記被加熱物の温度を推定する温度推定ステップとを備えたことを特徴とする被加熱物の温度推定方法。
[2]上記[1]において、特定ガス成分がCO2又はH2Oであることを特徴とする被加熱物の温度推定方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る被加熱物の温度推定方法が適用される加熱炉の一実施形態を示す概略構成図であり、箱型のウォーキングビーム式加熱炉を示したものである。
【0019】
図1において、被加熱物であるスラブ3は、加熱炉4の装入側から炉内に装入され、所定の温度に加熱された後、抽出側から炉外に抽出される。加熱炉4から抽出されたスラブは、その後、図示しない圧延装置に送られる。
【0020】
前記加熱炉4は、炉内に装入されたスラブの表面温度を計測するスラブ表面温度計2と、加熱炉4内のガス温度を計測する炉内ガス温度計1と、加熱炉4内壁の表面温度を計測する炉壁温度計6と、スラブ3の温度推定を行う温度推定手段5とを備えている。ここで、前記スラブ表面温度計2としては、加熱炉4内に装入されるスラブの初期の表面温度が計測できるものであれば特に限定されないが、例えば、放射率を適切に調節した放射温度計等を用いることができる。また、前記炉内ガス温度計1としては、加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測することができる、例えば放射温度計を用いることができる。この放射温度計は、波長帯のフィルタリング技術を応用することにより、加熱炉4内の特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを非接触で検出することが可能であり、炉内に存在する他の成分による熱放射の影響や炉壁温度の影響を受けることなく正確に特定ガス成分のガス温度の計測ができる。なお、一般的にガスは熱容量が小さく周囲のガスとの間で熱の授受が短時間で行われるため、前記計測された加熱炉内の特定ガス成分のガス温度は、その近傍雰囲気のガス温度と同じと見ることができる。また、前記炉壁温度計6としては、スラブ3周囲の加熱炉内壁の表面温度が計測できるものであれば特に限定されないが、例えば、加熱炉内壁の表面近傍に埋め込んだ熱電対等を用いることができる。
【0021】
前記加熱炉4内は、スラブ3の進行方向に沿って1又は複数の温度制御区分に分割されており、それぞれの温度制御区分には少なくとも1つの炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6がそれぞれ設置されている。図1では、前記炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6をスラブ3の進行方向に沿ってそれぞれ3ヶ所設置した場合を図示しているが、温度制御区分の分割数、そこに設置する炉内ガス温度計1及び炉壁温度計6の数は加熱炉の規模或いは被加熱物の品種等により適宜設定され得るものである。
【0022】
前記温度推定手段5では、前記炉内ガス温度計1、炉壁温度計6、スラブ表面温度計2の温度計測結果に基づき、各温度制御区分毎にスラブ3の温度の推定を行う。
【0023】
以下、前記温度推定手段5で行われる被加熱物であるスラブ3の温度を推定する方法について説明する。
【0024】
図2は加熱炉4内におけるスラブ3の温度を推定する方法の一例を示すフロー図である。図2に示すように、スラブ3の温度推定方法は、加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉4内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前のスラブ3の推定温度とから前記スラブ3への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記スラブ3の温度を推定する温度推定ステップとを有する。
【0025】
まず、炉内ガス温度計測ステップでは、炉内のガス温度を計測する手段として、例えば放射温度計を用いた場合、この放射温度計1で加熱炉4内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより、その特定ガス成分のガス温度を直接計測し、そのガス温度を炉内ガス温度として記憶させるものである。ここで、前記放射温度計1による温度計測は、予め定められた所定の時間間隔で連続的に行われる。
【0026】
炉内ガス温度の計測に放射温度計を用いることにより、従来行われていた炉壁に設置された熱電対による炉内ガス温度の計測と比較して、より正確な炉内ガス温度をより応答性良く計測することが可能となる。
【0027】
ここで、前記特定ガス成分としては、CO2又はH2Oであることが好ましい。CO2又はH2Oの吸収波長帯域に合わせた狭帯域光学フィルタを前記放射温度計と組み合わせることで、CO2又はH2O成分のガス温度を選択的に計測することが可能となる。また、CO2及びH2Oは炉内に大量に存在し、他の成分、例えばN2と比較して吸収波長帯における熱放射エネルギーは極めて強いため、全波長帯域にわたる炉内の迷光などの影響を受けずに正確な温度の計測が可能となる。
【0028】
また、炉壁温度計測ステップでは、スラブ3周囲の加熱炉内壁の表面温度を計測する手段として、例えば加熱炉内壁の表面近傍に埋め込んだ熱電対を用いた場合、この熱電対6により予め定められた所定の時間間隔で加熱炉内壁の表面温度を計測し、その温度を加熱炉内壁の表面温度として記憶させるものである。なお、この熱電対6による温度の計測間隔は前記放射温度計1による温度の計測間隔と同じとすることが好ましい。
【0029】
次の入熱量算出ステップでは、前記炉内ガス温度計測ステップで計測された加熱炉4内のガス温度(θgas)及び前記炉壁温度計測ステップで計測された加熱炉4内壁の表面温度(θwall)と所定時間前のスラブ3の推定温度(θslab)とから前記スラブ3への入熱量(qi)を算出する。
【0030】
ここで、前記所定時間前のスラブ3の推定温度(θslab)としては、所定の時間間隔(例えば、放射温度計1での計測間隔)で行われている過去分の温度推定結果の内で前回行った推定温度を用いるものとする。
【0031】
前記入熱量(qi)は、加熱炉4内のスラブ3周囲の高温ガス体からスラブ3への入熱量(qi1)とスラブ3周囲の加熱炉内壁からスラブ3への入熱量(qi2)とを合計したものとして次式(1)により算出される。ここでは、高温ガス体からスラブ3への入熱の他に加熱炉内壁からのスラブ3への入熱量を考慮することにより、より正確にスラブ3への入熱量を評価することが可能となる。
【0032】
【式1】
【0033】
ここで、σはボルツマン定数、ΦCG1は加熱炉4内のスラブ3周囲の高温ガス体からスラブ3への総括熱吸収率、ΦCG2はスラブ3周囲の加熱炉内壁からスラブ3への総括熱吸収率を表す。
【0034】
なお、上式(1)における総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 は、測温スラブを使った事前の計測により、各温度制御区分毎に予め決定される定数である。
【0035】
次の温度推定ステップでは、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量(qi)から前記スラブ3の温度を推定する。
【0036】
スラブ3の温度は、前記入熱量算出ステップで算出した入熱量(qi)、所定時間前のスラブ3の推定温度、および現時刻における炉内ガス温度を入力として、次式(2)及び(3)により推定する。
【0037】
【式2】
【0038】
【式3】
【0039】
ここで、θslab=θslab(x,t)はスラブ温度、xはスラブの厚み方向の座標、tは時間、cはスラブの比熱、γはスラブの比重、λはスラブの熱伝導率を表す。
【0040】
上式(2)、(3)による温度推定は所定の時間間隔(放射温度計1での計測間隔)毎に行われる。このとき、スラブ3が炉内の複数に分割された温度制御区分を通過する場合には、スラブ3が通過するそれぞれの温度制御区分毎に決定された総括熱吸収率ΦCGを用いて算出される入熱量(qi)に基づき温度推定が行われる。
【0041】
なお、上述したスラブ3の温度推定方法では、所定時間前、つまり前回推定したスラブ温度と、前回推定した時点から今回推定を行う時点(現時点)までのスラブ3への入熱量(qi)に基づき現時点でのスラブ3の温度を推定しているが、初回の推定時に用いる前回推定したスラブ温度としては、図1に示したスラブ表面温度計2による計測値を用いることが好ましい。
【0042】
以下、測温スラブを使った総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 の事前の決定方法について説明する。
▲1▼まず、表面及び内部に温度計を取り付けた測温スラブを加熱炉4内に装入し、実際の操業条件と同じ条件で加熱を行いながら測温スラブの表面温度θslab(表面)及び内部温度θslabを時系列データとして計測し記録する。
▲2▼一般に、スラブの表面温度θslab(表面)およびスラブの内部温度θslabは前記(2)式で示される伝熱方程式、および前記(3)式で示される境界条件を満足する。そこで、測温スラブでの計測結果と前記(2)、(3)式の関係から時系列データとして入熱量qiを求め記録する。
▲3▼各温度制御区分毎に、前記▲1▼及び▲2▼で求めたθslab、qi の値、放射温度計1による炉内ガス温度θgas、熱電対6による加熱炉4内壁の表面温度θwall 及び既知のボルツマン定数σの値を前記(1)式に代入し、最小二乗法を用いた解析により総括熱吸収率ΦCG1及びΦCG2 を算出する。
【0043】
以上、本発明に係る被加熱物の温度推定方法について説明したが、実際の加熱炉の運転においては、この被加熱物の温度推定方法により推定した温度と、その時点での被加熱物の目標とする温度とを比較して、その差が最小となるように加熱炉の燃焼制御を行っている。ここで、前記燃焼制御の制御アルゴリズムとしては、例えば、一般に広く用いられている次式(4)に示すPIコントローラを使用することができる。
【0044】
【式4】
【0045】
ここで、uは操作量(燃焼バーナー設定値)、rは目標温度、kPはPIコントローラ比例ゲイン、kIはPIコントローラ積分ゲイン、y=θslab(表面)(t)はスラブ表面温度を表す。
【0046】
【実施例】
図3に、実施例として本発明方法を用いてスラブの温度推定を行った場合の推定温度の履歴結果と、実際に測温スラブを用いて実測したスラブ温度の履歴結果とを比較した結果を示す。なお、図3には比較例として、従来技術に係る熱電対の測温結果に基づきスラブ温度を推定した場合の推定温度の履歴結果も示す。
【0047】
図3に示す実施例においては、炉内ガス温度をCO2の吸収波長帯域に合わせた狭帯域光学フィルタと組み合わせた放射温度計を用いて計測した。
【0048】
図3に示すように、本発明方法による推定結果は、炉内の全範囲において実測値と非常に良く近似しており、スラブ温度が正確に推定できていることが確認できた。それに対し、比較例の熱電対の測温結果に基づきスラブ温度を推定する方法においては、実測値と大きく隔たりのある箇所があり、推定精度に問題のあることが示されている。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、加熱炉内の被加熱物の温度を長期間に渡り正確に推定することができる被加熱物の温度推定方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被加熱物の温度推定方法が適用される加熱炉の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る加熱炉内におけるスラブの温度を推定する方法の一例を示すフロー図である。
【図3】実施例として本発明方法を用いてスラブの温度推定を行った場合の推定温度の履歴結果と、実際に測温スラブを用いて実測したスラブ温度の履歴結果とを比較した結果を示す図である。
【図4】加熱炉内における伝熱の様子を模式的に示した図である。
【図5】加熱炉内のガス温度を、従来使用されていた熱電対と放射温度計で計測した値を比較した図である。
【図6】同一の加熱炉において、炉内の高温ガス体からスラブへの入熱量を求める際の係数となる総括熱吸収率ΦCGを、熱電対を用いて計測した温度に基づき算出した結果と放射温度計を用いて計測した温度に基づき算出した結果とを比較した図である。
【符号の説明】
1 炉内ガス温度計
2 スラブ表面温度計
3 スラブ
4 加熱炉
5 温度推定手段
6 炉壁温度計
10 バーナー
11 高温ガス体
12 高温ガス体からの放射伝熱
13 炉壁からの放射伝熱
14 炉壁内伝導伝熱
15 炉壁
16 熱電対
Claims (2)
- 加熱炉内の被加熱物の温度推定方法であって、
加熱炉内に存在する特定ガス成分の吸収波長帯における熱放射エネルギーを検出することにより前記加熱炉内のガス温度を計測する炉内ガス温度計測ステップと、
前記加熱炉内壁の表面温度を計測する炉壁温度計測ステップと、
前記炉内ガス温度計測ステップにより計測された加熱炉内のガス温度及び前記炉壁温度計測ステップにより計測された加熱炉内壁の表面温度と所定時間前の被加熱物の推定温度とから前記被加熱物への入熱量を算出する入熱量算出ステップと、
前記入熱量算出ステップで算出した入熱量から前記被加熱物の温度を推定する温度推定ステップとを備えたことを特徴とする被加熱物の温度推定方法。 - 特定ガス成分がCO2又はH2Oであることを特徴とする請求項1に記載の被加熱物の温度推定方法。
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WO2024176281A1 (ja) * | 2023-02-20 | 2024-08-29 | 千代田化工建設株式会社 | 加熱炉の熱流束取得装置、熱流束取得システム、及び熱流束取得方法 |
-
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- 2002-06-27 JP JP2002187516A patent/JP2004027314A/ja active Pending
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