JP2008275463A - 温度制御システム、加熱炉、温度制御方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 バーナー火炎や燃焼ガスに基づく迷光雑音輝度を実用上無視しえる程度に低減すると共に、予熱帯12の天井面12aからの外乱光に基づく迷光雑音輝度の影響を見積もって、スラブ21自体より発せられる自発光輝度Ib(Ts)を求め、求めた自発光輝度Ib(Ts)に基づいて、スラブ21の表面温度Tsを算出する。そして、数値シミュレーションモデル(熱伝導方程式)における「スラブ21の表面温度に関連するパラメータ(総括熱吸収率φCG)」を、算出したスラブ21の表面温度Tsを用いて修正して、加熱炉10の燃焼制御を行う。
【選択図】 図1
Description
このような加熱炉の燃焼制御を行うために、鋼材の温度を数値シミュレーションにより把握することが行われている。数値シミュレーションを適切に行えば、鋼材の様々な部位の温度を、その履歴を含めて把握することが可能となり、材質や表面品位の均質化を図るために有益な情報を提供することができる。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、炉内の被加熱物体の温度をシミュレーションするための計算パラメータを適切に修正することにより、被加熱物体の温度を所望の温度にするための炉の燃焼制御を従来よりも高精度に行うことができるようにすることを目的とする。
本発明の加熱炉は、前記温度制御システムを有することを特徴とする。
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の温度制御システムの適用対象の一例である多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉の概略構成の一例を示す図である。尚、図1は、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉10を側方から見た図である。また、以下の説明では、多帯式ウォーキングビーム式連続加熱炉10を、加熱炉10と略称する。
図1において、加熱炉10は、非燃焼帯11と、予熱帯12と、加熱帯13と、均熱帯14とを、被測定物体の一例であるスラブ21が順番に通過するようにして、スラブ21を加熱するためのものである。尚、図1では、15個のスラブ21が、加熱炉10内にある場合を例に挙げて示している。
尚、本実施形態では、軸流バーナー15、ルーフバーナー16、及びサイドバーナー17からバーナー火炎を発生させるための燃料として、例えばLNGを用い、支燃剤として空気又は酸素富化空気を用いている。尚、各バーナー15〜17に送られる支燃剤は、400[℃]〜600[℃]程度に予熱されている。
以上のように本実施形態では、例えば、放射温度計100を用いて、発光輝度測定手段が実現される。
図2に示すように、本実施形態では、12個の熱電対200a〜200lを、予熱帯12の天井面12aに取り付けている。具体的に本実施形態では、12個の熱電対200a〜200iを、概ね、1[m]間隔で点在させている。
図3に示すように、本実施形態では、スラブ21表面上の点であって、放射温度計100の入光面100aの中心100bと正対する位置にある点21aから、放射温度計100の方向に広がる天頂角θが45[°](広がり角が90[°])の仮想の円錐41があると見なした場合に、その仮想の円錐41の内部に入るように、12個の熱電対200a〜200lが、予熱帯12の天井面12aに取り付けられるようにしている。
本願発明者らは、加熱炉10による加熱によって表面が酸化したスラブ21の放射率εsは、温度によらず概ね0.85で一定となるという知見を得た。したがって、予熱帯12の天井面12aから発せられる「波長が3.9[μm]の光」の二方向性反射率ρ´´(θ)の天井面12a全体における積分値は、温度によらず概ね0.15(1−0.85)になる。ここで、二方向性反射率ρ´´(θ)とは、例えば、予熱帯12の天井面12aの点(例えば、熱電対200hの中心位置である点12c)から、スラブ21の被測定領域に入射した光のうち、放射温度計100の入光面100aの方向(法線方向)に反射する光がどの位あるのかを示すものである。尚、スラブ21の被測定領域とは、温度測定中心点21aを中心とする領域であって、放射温度計100の入光面100aと正対する領域である。
更に、本願発明者らは、図4に示すグラフ51を表す関数を積分した結果(図4に示したグラフ51の面積)が0.15となるように、グラフ51の縦軸の値を相対値から実際の値に変更する計算をコンピュータに行わせた。その結果、本願発明者らは、波長が3.9[μm]の光の入射角(天頂角)θと、二方向性反射率ρ´´(θ)の実際の値との関係を示す二方向性反射率ρ´´(θ)の関数を得た。
そして、本願発明者らは、コンピュータを用いて、次の(1)式の演算を行った。
以上のことから、本願発明者らは、予熱帯12の天井面12a全体から発せられる光の全てではなく、仮想の円錐41の内部の領域から発せられる光に基づいて、予熱帯12の天井面12aから発せられる外乱光に基づく迷光雑音輝度を求めたとしても、その迷光雑音輝度の誤差は、以下の(2)式に示すように、1[%]未満となるという知見を得た。
0.3×0.15×0.2×100=0.9[%] ・・・(2)
以上のように本実施形態では、例えば、12個の熱電対200a〜200lを用いて複数の温度測定手段が実現される。
以上のように本実施形態では、例えば、軸流バーナー15、ルーフバーナー16、サイドバーナー17、及びバーナー制御装置400を用いて加熱手段が実現される。
ゾーン迷光雑音輝度計算部317は、各ゾーンA〜Lにおける迷光雑音輝度を計算するためのものであり、外乱光輝度計算部315と、迷光雑音パラメータ計算部316と、ゾーン単位迷光雑音輝度計算部313とを有している。
外乱光輝度計算部315は、外乱光輝度を計算するためのものであり、熱電対温度取得部302、熱電対位置記憶部303、及び第1の発光輝度算出部308を備えている。
熱電対温度取得部302は、12個の熱電対200a〜200lで測定された温度の信号を入力してRAMに記憶させるためのものである。このとき熱電対温度取得部302は、どの熱電対200a〜200lが測定した温度であるのかを識別できるようにして、その温度をRAMに記憶させる。
C1、C2:物理定数(C1=3.7419×10-16[wm2]、C2=1.4388×10-2[mK])
Tij:各ゾーンA〜Lの代表点の温度[K]
放射率記憶部304は、ユーザによるユーザインターフェース(キーボードやマウス)等の操作に基づいて、加熱炉10による加熱によって表面が酸化されたスラブ21の放射率εsのデータを外部から取得して記憶するためのものである。尚、以下の説明では、必要に応じて、加熱炉10による加熱によって表面が酸化されたスラブ21の放射率εsを、必要に応じて、スラブ21の放射率εs又は単に放射率εsと略称する。
具体的にパラメータ算出部306は、各ゾーンA〜Lの代表点の位置と、温度測定中心点21aの位置と、各ゾーンA〜Lの面積Aijとを、立体角のデータとしてユーザインターフェースから入力する。すると、パラメータ算出部306は、ゾーンA〜Lの代表点(例えば図2の点12c)と温度測定中心点21aとを結ぶ直線の長さlijを、各ゾーンA〜Lについて算出する。また、パラメータ算出部306は、ゾーンA〜Lの代表点と温度測定中心点21aとを結ぶ直線と、温度測定中心点21aと放射温度計100の入光面100aの中心100bとを結ぶ直線とがなす角度θijを、各ゾーンA〜Lについて算出する(図2を参照)。そして、各ゾーンA〜Lについて、以下の(4)式を用いて、ゾーン内迷光雑音パラメータを各ゾーンA〜Lについて計算する。尚、前記において、添字ijは、ゾーンA〜Lを識別するための変数である。
Aij:各ゾーンA〜Lの面積[m2]
ρ´´(θij):二方向性反射率
尚、本実施形態では、(4)式において、(cosθij・Aij/lij 2)が、温度測定中心点21aから各ゾーンA〜Lの代表点を見る立体角である。
Aij:各ゾーンA〜Lの面積[m2]
ρ´´(θij):二方向性反射率
パラメータ記憶部307は、例えば、ハードディスクやROMを用いて構成することができる。
第2の発光輝度算出部309は、12個の熱電対200a〜200lのうち、外側にある熱電対200a、200d、200e、200h〜200lの温度を、熱電対温度取得部302から入力する。そして、第2の発光輝度算出部309は、入力した温度の平均値を、ゾーンA〜L以外の「天井面12aの領域」の温度Toとして計算する。そして、第2の発光輝度算出部309は、ゾーンA〜L以外の「天井面12aの領域」から発光された光に基づく外乱光輝度Io(To)を、以下の(8)式を用いて計算する。
C1、C2:物理定数(C1=3.7419×10-16[wm2]、C2=1.4388×10-2[mK])
To:ゾーンA〜L以外の「天井面12aの領域」の温度[K]
Ib(Tm):放射温度計100で求められた発光輝度[W・m-2・sr-1・μm-1]
Ib(Tij):各ゾーンA〜Lから発光される外乱光輝度[W・m-2・sr-1・μm-1]
Io(To):ゾーンA〜L以外の「天井面12aの領域」から発光された光に基づく外乱光輝度Io(To)[W・m-2・sr-1・μm-1]
θij:ゾーンA〜Lの代表点と温度測定中心点21aとを結ぶ直線と、温度測定中心点21aと放射温度計100の入光面100aの中心100bとを結ぶ直線とがなす角度[°]
Aij:各ゾーンA〜Lの面積[m2]
ρ´´(θij):二方向性反射率
Tij:各ゾーンA〜Lの代表点の温度[K]
To:ゾーンA〜L以外の「天井面12aの領域」の温度[K]
C1、C2:物理定数
εsIb(Ts):スラブ21自体より発せられる自発光輝度[W・m-2・sr-1・μm-1]
以上のように本実施形態では、例えば、表面温度算出部311を用いて、第1の温度計算手段が実現される。
q:鋼材熱流束[W/m2]
φCG:総括熱吸収率
σ:シュテファンボルツマン定数[W/(m2・K4)]
TG:炉壁の温度[K]
Tst:スラブ表面温度[K]
以上のように本実施形態では、例えば、数値シミュレーション部822を用いて、第2の温度計算手段が実現される。
まず、ステップS1において、発光輝度取得部301は、放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)の信号を取得するまで待機する。そして、放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)の信号を取得すると、ステップS2に進む。ステップS2に進むと、発光輝度取得部301は、放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)をRAMに記憶させる。
次に、ステップS7において、ゾーン単位迷光雑音輝度計算部313は、変数ijで指定されるゾーンのゾーン内迷光雑音パラメータを、パラメータ記憶部307から読み出す。
次に、ステップS8において、ゾーン単位迷光雑音輝度計算部313は、変数ijで指定されるゾーンから発光される外乱光輝度Ib(Tij)を、ステップS5で第1の発光輝度算出部308により算出された外乱光輝度Ib(Tij)の中から取得する。そして、ゾーン単位迷光雑音輝度計算部313は、ステップS7で読み出したゾーン内迷光雑音パラメータと、第1の発光輝度算出部308から取得した外乱光輝度Ib(Tij)とを乗算して((6)式を参照)、計算対象のゾーンから発光される光に基づく迷光雑音輝度(ゾーン毎の迷光雑音輝度)を算出する。
次に、ステップS15において、第3の発光輝度算出部310は、ステップS11で算出された全ゾーン迷光雑音輝度((10)式の右辺第2項)と、ステップS13で算出されたゾーン外迷光雑音輝度((10)式の右辺第3項))と、ステップS14で読み出された「スラブ21の放射率εs」と、ステップS2で記憶された「放射温度計100で求められた発光輝度Ib(Tm)」とを、(10)式(又は(11)式)に代入して、スラブ21自体より発せられる自発光輝度εsIb(Ts)を算出する。
次に、ステップS17において、表面温度算出部311は、ステップS16で算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度(パラメータ修正用スラブ表面温度)Ts」を、数値シミュレーション装置600に出力する。尚、このステップS17で算出された「スラブ21の被測定領域の表面温度(パラメータ修正用スラブ表面温度)Ts」を、測温計算装置500が備える表示装置(例えば液晶ディスプレイ)に表示して、ユーザに報知するようにしてもよい。
まず、ステップS21において、計算パラメータ修正部821は、測温計算装置500から、パラメータ修正用スラブ表面温度Tsを受信したか否かを判定する。この判定の結果、パラメータ修正用スラブ表面温度Tsを受信していない場合には、総括熱吸収率φCGを修正しないので、ステップS22を省略して、後述するステップS23に進む。
次に、ステップS23において、数値シミュレーション部822は、(13)式の計算を行って、鋼材熱流束qを算出し、導出した鋼材熱流束qを境界条件として熱伝導方程式を解いて、スラブシミュレーション温度(スラブ21の現時刻及び加熱終了時の温度)を求める。
まず、ステップS31において、燃焼制御部824は、数値シミュレーション装置600(炉温設定部823)から、加熱炉10の設定温度を受信したか否かを判定する。この判定の結果、加熱炉10の設定温度を受信していない場合には、ステップS32を省略して、ステップS33に進み、その他の処理が行われた後、図12のフローチャートによる処理を終了する。
また、本実施形態では、軸流バーナー15、ルーフバーナー16、及びサイドバーナー17による燃焼量を変更(制御)するようにしたが、燃焼量を変更(制御)する対象は、これらのバーナー15〜17に限定されるものではない。
更に、本実施形態では、ゾーンA〜Lの中心(重心)に熱電対200a〜200lが設置されるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。このようにした場合、熱電対200a〜200lの温度を外挿したり、熱電対200a〜200lの温度に基づいて補間を行って必要な位置の温度を求めたりする等して、ゾーンA〜Lの代表点(例えば中心位置又は重心位置)の温度を求めるようにしてもよい。
また、本実施形態では、熱電対200を1[m]間隔で規則的に設置するようにしたが、炉壁温度に分布が見られる位置に熱電対200を設置していれば、必ずしも熱電対200を規則的に設置する必要はない。例えば、温度分布の差が大きい領域については、熱電対200の設置間隔を短くし、温度分布の差が小さい領域については、熱電対200の設置間隔を長くすることができる。更に、熱電対200の数、ゾーンA〜Lの数は、「12」に限定されるものではない。
また、本実施形態では、12個の熱電対200a〜200lの設置位置として、熱電対200a〜200lが属するゾーンA〜Lの位置を記憶するようにしたが、孔12bの中心を原点とするxy座標を、12個の熱電対200a〜200lの設置位置として記憶してもよい。
また、本実施形態では、サイドバーナー17を、スラブ21よりも下側に設けた場合を例に挙げて説明したが、サイドバーナー17を、スラブ21よりも上側に設けてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、放射温度計100と、複数の熱電対200との組みを、予熱帯12に1組み設け、1つの被測定領域における表面温度(パラメータ修正用スラブ表面温度)Tsを求める場合について説明した。これに対し、本実施形態では、放射温度計と、12個の熱電対との組みを、予熱帯12と加熱帯13とに夫々1組みずつ設け、情報処理装置において、スラブ21の略同一の領域におけるパラメータ修正用スラブ表面温度Tsを2回求めるようにする。そして、パラメータ修正用スラブ表面温度Tsが求められる度に、スラブ21の表面温度に関連する計算パラメータ(総括熱吸収率φCG)を修正する。このように前述した第1の実施形態と、本実施形態とは、放射温度計と、12個の熱電対との組み数及び設置箇所と、測温計算装置500及び数値シミュレーション装置600の機能の一部とが主として異なる。従って、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、例えば、図1〜図12に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の温度制御システムは、放射温度計100、110と、複数の熱電対200(図2を参照)と、測温計算装置501と、数値シミュレーション装置601と、バーナー制御装置400とを備えて構成される。尚、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、図2に示したようにして、予熱帯12の天井面12aに熱電対200が取り付けられているようにしている。更に、本実施形態では、加熱帯13の天井面13aにも、図2に示したようにして、熱電対200が取り付けられているようにしている。すなわち、本実施形態では、各放射温度計100、110に対して、図2に示したような12個の熱電対200a〜200lが夫々設けられている。したがって、図13には、熱電対200が現れない。
放射温度計110は、第1の実施形態で説明した放射温度計100と同じ構成を有している。放射温度計110は、加熱帯13の上方から、加熱帯13の天井面13aの一部に形成された孔13bを通して、加熱帯13内を搬送されるスラブ21の表面を望む位置に設置されている。
そして、数値シミュレーション装置601は、測温計算装置501でパラメータ修正用スラブ表面温度Tsが算出される度に、前述した第1の実施形態と同様にして、総括熱吸収率φCGを修正する。そして、数値シミュレーション装置601は、修正した総括熱吸収率φCGを適用した熱伝導方程式による数値シミュレーションを行って、スラブシミュレーション温度(スラブ21の現時刻及び加熱終了時の温度)を計算し、計算した結果に基づいて加熱炉10の設定温度を求める。
また、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採ることができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、1つの帯(予熱帯12)に、放射温度計100と、複数の熱電対200との組みを、1組み設け、1つのパラメータ修正用スラブ表面温度Tsを求める場合について説明した。これに対し本実施形態では、放射温度計と、12個の熱電対との組みを、スラブ21の長手方向(加熱炉10の幅方向)に2組み設け、2つのパラメータ修正用スラブ表面温度Tsを求めるようにする。このように前述した第1の実施形態と、本実施形態とは、放射温度計と、12個の熱電対との組みの設置位置と、測温計算装置500及び数値シミュレーション装置600の機能の一部とが主として異なる。従って、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、例えば、図1〜図12に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
更に、本実施形態においても、前述した第1及び第2の実施形態で説明した種々の変形例を採ることができる。
尚、図15において、抽出温度誤差は、スラブ21に埋め込まれた熱電対の「加熱終了時間における温度」と、前述したようにして数値シミュレーション装置601〜602で計算された「加熱終了予定時間におけるスラブシミュレーション温度」との差を示すものである。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述した第1〜第3の実施形態では、スラブ21の温度に関連する計算パラメータとして、総括熱吸収率φCGを修正する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、鋼材熱流束qが、炉内のガスの温度(又はその分布)と、炉壁温度(又はその分布)と、炉内のガスの放射とを考慮した形態係数で評価される場合について説明する。このように本実施形態と、前述した第1〜第3の実施形態とでは、鋼材熱流束qの算出方法だけが異なる。したがって、前述した第1〜第3の実施形態と同一の部分についての説明を省略する。
Fs→w、Fs→g:形態係数(添え字sはスラブ表面、添え字wは炉壁面、gは炉内のガスを表す)
κ:放射吸収係数
σ:シュテファンボルツマン定数[W/(m2・K4)]
Tw:炉壁の温度[K]
Tg:炉内のガスの温度[K]
Tst:スラブ表面温度[K]
尚、炉内のガスの温度Tgは、例えば、既存熱電対700で測定された炉壁の温度を、経験的に求められている演算式に代入することにより決定することができる。
尚、数値シミュレーションモデルにおいて、スラブ21の温度に関連する計算パラメータは、(13)式に示した総括熱吸収率φCGや、(14)式に示した放射吸収係数κに限定されるものではない。例えば、Discrete Ordinate法等の放射強度を用いた評価方法でも放射吸収係数が使用されるので、Discrete Ordinate法等の放射強度を用いた評価方法では、この放射吸収係数を修正することになる。
次に、本発明の実施形態の第1の変形例について説明する。前述した各実施形態では、パラメータ修正用スラブ表面温度Tsを求めるために設定するゾーンA〜Lの数と、熱電対200の設置数とが同じである場合を例に挙げて説明した(図2を参照)。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。
尚、熱電対200の設置数よりも多い数のゾーンを、温度測定対象領域210内に定義していれば、ゾーンの分け方や数は、前述したものに限定されない。
次に、本発明の実施形態の第2の変形例について説明する。
本変形例では、温度測定対象領域210内だけでなく、温度測定対象領域210外にもゾーンを定義する。具体的に説明すると、例えば、図2に示した温度測定対象領域210内に定義されているゾーンA〜Lのうち、外側にあるゾーンA、D、E、H〜Lと隣接する位置に、ゾーンA〜Lと同じ大きさの矩形状の12個のゾーンを更に定義する。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
11 非燃焼帯
12 予熱帯
12a 天井面
12b 天井面に形成された孔
12c 天井面の任意の点
13 加熱帯
13a 天井面
13b 天井面に形成された孔
14 均熱帯
15 軸流バーナー
16 ルーフバーナー
17 サイドバーナー
21 スラブ
21a 温度測定中心点
41 仮想の円錐
91 実際の放射率が0.87であったときの、スラブの表面温度の算出値と真値との誤差を示すグラフ
92 実際の放射率が0.83であったときの、スラブの表面温度の算出値と真値との誤差を示すグラフ
100、110、120、130 放射温度計
100a、110a、120a、130a 放射温度計の入光面
100b、110b、120b、130b 放射温度計の入光面の中心
200 熱電対
301 発光輝度取得部
302 熱電対温度取得部
303 熱電対位置記憶部
304 放射率記憶部
305 二方向性反射率導出部
306 パラメータ算出部
307 パラメータ記憶部
308 第1の発光輝度算出部
309 第2の発光輝度算出部
310 第3の発光輝度算出部
311 表面温度算出部
312 表面温度表示部
400 バーナー制御装置
500〜502 測温計算装置
600〜602 数値シミュレーション装置
700 既存熱電対
821 計算パラメータ修正部
822 数値シミュレーション部
823 炉温設定部
824 燃焼制御部
θ 仮想の円錐の天頂角
φCG 総括熱吸収率
κ 放射吸収係数
Claims (21)
- 被測定物体の加熱温度を制御する温度制御システムであって、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域の温度を測定する複数の温度測定手段と、
前記被測定物体から発光される光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、
前記被測定物体の表面で前記発光輝度測定手段へ反射した迷光雑音輝度を、前記複数の温度測定手段により測定された温度を用いて計算する迷光雑音計算手段と、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算手段により計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定手段により測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算手段と、
前記自発光輝度計算手段により計算された自発光輝度を用いて、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度を計算する第1の温度計算手段と、
前記被測定物体の温度を、数値シミュレーションモデルを用いて計算する第2の温度計算手段と、
前記第1の温度計算手段により計算された被測定物体の表面温度を用いて、前記数値シミュレーションモデルにおける、前記被測定物体の温度に関連する計算パラメータを修正するパラメータ修正手段と、
前記第2の温度計算手段により計算された被測定物体の温度に基づいて、前記被測定物体を加熱する加熱手段を制御する制御手段とを有し、
前記第2の温度計算手段は、前記パラメータ修正手段により、前記計算パラメータが修正されると、その修正された計算パラメータを前記数値シミュレーションモデルに適用して、前記被測定物体の温度を計算することを特徴とする温度制御システム。 - 前記パラメータ修正手段は、前記第2の温度計算手段により計算された、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度と、前記第1の温度計算手段により計算された被測定物体の表面温度とが、一致する又はそれらの差が所定の範囲内に収まるように、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項1に記載の温度制御システム。
- 前記被測定物体は、炉内で加熱され、
前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向及び幅方向の何れか又は両方にn(nは2以上の自然数)組み設けられ、
前記第1の温度計算手段は、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度をn回計算し、
前記計算パラメータ修正手段は、前記第1の温度計算手段によりn回計算された被測定物体の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御システム。 - 前記炉の長手方向に前記被測定物体を搬送する搬送手段を有し、
前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向にn(nは2以上の整数)組み設けられ、
前記第1の温度計算手段は、前記発光輝度測定手段の測定領域に搬送された被測定物体の略同一の領域の表面温度をn回計算し、
前記計算パラメータ修正手段は、前記第1の温度計算手段によりn回計算された被測定物体の略同一の領域の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項3に記載の温度制御システム。 - 前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向又は幅方向にn(nは2以上の整数)組み設けられ、
前記第1の温度計算手段は、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体のn箇所の領域における略同時刻の表面温度を計算し、
前記計算パラメータ修正手段は、前記第1の温度計算手段により計算された、前記被測定物体のn箇所の領域における略同時刻の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項3に記載の温度制御システム。 - 前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算手段を有し、
前記迷光雑音計算手段は、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算手段により計算された温度分布を用いて計算することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の温度制御システム。 - 前記迷光雑音計算手段は、前記複数の温度測定手段による温度測定対象領域を含む領域を複数に分割したゾーン毎に、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算するゾーン迷光雑音計算手段を有し、
前記ゾーン迷光雑音計算手段により計算されたゾーン毎の迷光雑音輝度を加算した値を用いて、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の温度制御システム。 - 前記発光輝度測定手段の測定領域内の点から、前記発光輝度測定手段の方向に広がる天頂角が45[°]の円錐があると見なした場合のその円錐の内部の領域内に、前記複数の温度測定手段の温度測定対象領域が存在するように、前記複数の温度測定手段を点在させるようにしたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の温度制御システム。
- 前記被測定物体は、ガス焚き加熱炉内で加熱されている鋼材であり、
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記加熱炉の上方から、加熱炉の天井に開けられた孔を通して、前記加熱炉内にある被測定物体を望む位置に設けられ、
前記複数の温度測定手段は、前記加熱炉の天井の炉壁に設けられ、
前記発光輝度測定手段により測定する特定波長は、略3.9[μm]であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の温度制御システム。 - 請求項1〜9の何れか1項に記載の温度制御システムを有することを特徴とする加熱炉。
- 被測定物体の加熱温度を制御する温度制御方法であって、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域の温度を、複数の温度測定手段を用いて測定する温度測定ステップと、
前記被測定物体から発光される光の発光輝度を、発光輝度測定手段により測定する発光輝度測定ステップと、
前記被測定物体の表面で前記発光輝度測定手段へ反射した迷光雑音輝度を、前記温度測定ステップにより測定された温度を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、
前記発光輝度測定ステップにより測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定ステップにより測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、
前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度を計算する第1の温度計算ステップと、
前記被測定物体の温度を、数値シミュレーションモデルを用いて計算する第2の温度計算ステップと、
前記第1の温度計算ステップにより計算された被測定物体の表面温度を用いて、前記数値シミュレーションモデルにおける、前記被測定物体の温度に関連する計算パラメータを修正するパラメータ修正ステップと、
前記第2の温度計算ステップにより計算された被測定物体の温度に基づいて、前記被測定物体を加熱する加熱手段を制御する制御ステップとを有し、
前記第2の温度計算ステップは、前記パラメータ修正ステップにより、前記計算パラメータが修正されると、その修正された計算パラメータを前記数値シミュレーションモデルに適用して、前記被測定物体の温度を計算することを特徴とする温度制御方法。 - 前記パラメータ修正ステップは、前記第2の温度計算ステップにより計算された、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度と、前記第1の温度計算ステップにより計算された被測定物体の表面温度とが、一致する又はそれらの差が所定の範囲内に収まるように、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項11に記載の温度制御方法。
- 前記被測定物体は、炉内で加熱され、
前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向及び幅方向の何れか又は両方にn(nは2以上の自然数)組み設けられ、
前記第1の温度計算ステップは、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度をn回計算し、
前記計算パラメータ修正ステップは、前記第1の温度計算ステップによりn回計算された被測定物体の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項11又は12に記載の温度制御方法。 - 前記炉の長手方向に前記被測定物体を搬送する搬送ステップを有し、
前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向にn(nは2以上の整数)組み設けられ、
前記第1の温度計算ステップは、前記発光輝度測定手段の測定領域に搬送された被測定物体の略同一の領域の表面温度をn回計算し、
前記計算パラメータ修正ステップは、前記第1の温度計算ステップによりn回計算された被測定物体の略同一の領域の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項13に記載の温度制御方法。 - 前記発光輝度測定手段と前記複数の温度測定手段とが、前記炉の長手方向又は幅方向にn(nは2以上の整数)組み設けられ、
前記第1の温度計算ステップは、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体のn箇所の領域における略同時刻の表面温度を計算し、
前記計算パラメータ修正ステップは、前記第1の温度計算ステップにより計算された、前記被測定物体のn箇所の領域における略同時刻の表面温度を用いて、前記計算パラメータを修正することを特徴とする請求項13に記載の温度制御方法。 - 前記発光輝度測定ステップは、700[℃]以上、1100[℃]以下に加熱されている被測定物体から入射する光を検出することを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の温度制御方法。
- 前記複数の温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記被測定物体に入射する外乱光を発生する領域の温度分布を計算する温度分布計算ステップを有し、
前記迷光雑音計算ステップは、前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を、前記温度分布計算ステップにより計算された温度分布を用いて計算することを特徴とする請求項11〜16の何れか1項に記載の温度制御方法。 - 前記迷光雑音計算ステップは、前記複数の温度測定手段による温度測定対象領域を含む領域を複数に分割したゾーン毎に、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算するゾーン迷光雑音計算ステップを有し、
前記ゾーン迷光雑音計算ステップにより計算されたゾーン毎の迷光雑音輝度を加算した値を用いて、前記被測定物体の表面で反射した迷光雑音輝度を計算することを特徴とする請求項11〜17の何れか1項に記載の温度制御方法。 - 前記発光輝度測定手段の測定領域内の点から、前記発光輝度測定手段の方向に広がる天頂角が45[°]の円錐があると見なした場合のその円錐の内部の領域内に、前記複数の温度測定手段の温度測定対象領域が存在するように、前記複数の温度測定手段を点在させるようにしたことを特徴とする請求項11〜18の何れか1項に記載の温度制御方法。
- 前記被測定物体は、ガス焚き加熱炉内で加熱されている鋼材であり、
前記発光輝度測定手段は、その光の検出面が、前記加熱炉の上方から、加熱炉の天井に開けられた孔を通して、前記加熱炉内にある被測定物体を望む位置に設けられ、
前記複数の温度測定手段は、前記加熱炉の天井の炉壁に設けられ、
前記発光輝度測定手段により測定する特定波長は、略3.9[μm]であることを特徴とする請求項11〜19の何れか1項に記載の温度制御方法。 - 被測定物体から発光される光の発光輝度を測定する発光輝度測定手段と、
前記被測定物体の表面に入射する外乱光を発生する領域の温度を測定する複数の温度測定手段と、における測定値を用いて、被測定物体の加熱温度を制御することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記被測定物体の表面で前記発光輝度測定手段へ反射した迷光雑音輝度を、前記複数の温度測定手段により測定された温度を用いて計算する迷光雑音計算ステップと、
前記発光輝度測定手段により測定される発光輝度のうち、前記被測定物体自体から発生している自発光輝度を、前記迷光雑音計算ステップにより計算された迷光雑音輝度と、前記発光輝度測定手段により測定された発光輝度とを用いて計算する自発光輝度計算ステップと、
前記自発光輝度計算ステップにより計算された自発光輝度を用いて、前記発光輝度測定手段の測定領域における前記被測定物体の表面温度を計算する第1の温度計算ステップと、
前記被測定物体の温度を、数値シミュレーションモデルを用いて計算する第2の温度計算ステップと、
前記第1の温度計算ステップにより計算された被測定物体の表面温度を用いて、前記数値シミュレーションモデルにおける、前記被測定物体の温度に関連する計算パラメータを修正するパラメータ修正ステップと、
前記第2の温度計算ステップにより計算された被測定物体の温度に基づいて、前記被測定物体を加熱する加熱手段を制御する制御ステップとをコンピュータに実行させ、
前記第2の温度計算ステップは、前記パラメータ修正ステップにより、前記計算パラメータが修正されると、その修正された計算パラメータを前記数値シミュレーションモデルに適用して、前記被測定物体の温度を計算することを特徴とするコンピュータプログラム。
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