JP2012091982A - 立方晶岩塩型構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物およびその製造方法 - Google Patents

立方晶岩塩型構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間の充放電サイクルにおいて3V以上の平均放電電圧を保持でき、且つリチウムコバルト酸化物系正極材料と同等若しくはそれ以上の放電容量を有する材料であって、資源的な制約が少なく且つ安価な原料を使用して得ることができ、更に、公知の低価格の正極材料と比較して、より優れた充放電特性を発揮できる新規な材料を提供する
【解決手段】組成式:Li1+x(Mn1-m-nFemTin)1-xO2 (0<x<1/3, 0≦m≦0.70, 0≦n≦0.70, 0.55≦m+n<1)で表され、主要な結晶相が立方晶岩塩型構造の結晶相であることを特徴とするリチウムマンガン系複合酸化物、及び該複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料。
【選択図】図2

Description

本発明は、次世代低コストリチウムイオン二次電池の正極材料として有用な立方晶岩塩型構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物およびその製造方法に関する。
現在、我が国において、携帯電話、ノートパソコンなどのポータブル機器に搭載されている二次電池のほとんどは、リチウムイオン二次電池である。また、リチウムイオン二次電池は、今後、電気自動車、電力負荷平準化システムなどの大型電池としても実用化されるものと予想されており、その重要性はますます高まっている。
現在、リチウムイオン二次電池においては、正極材料としては主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)材料が使用され、負極材料としては黒鉛などの炭素材料が使用されている。このような構成の二次電池では、充電によりリチウムコバルト酸化物内のコバルトが3価から4価に酸化されつつLi脱離をして負極にLiを供給し、放電時には負極の炭素材料からLi脱離し、4価のコバルトが3価に還元することにより正極側にLi挿入されることにより電池として動作する。
この様なリチウムイオン二次電池では、正極材料において可逆的に脱離(充電に相当)、挿入(放電に相当)するリチウムイオン量が電池の容量を決定づけ、脱離・挿入時の電圧が電池の作動電圧を決定づけるために、正極材料であるLiCoO2は、電池性能に関連する重要な電池構成材料である。このため、今後のリチウムイオン二次電池の用途拡大・大型化に伴い、リチウムコバルト酸化物は、一層の需要増加が予想されている。
しかしながら、リチウムコバルト酸化物は、希少金属であるコバルトを多量に含むために、リチウムイオン二次電池の素材コストを上昇させる要因の一つとなっている。さらに、現在コバルト資源の約20%が電池産業に用いられていることを考慮すれば、LiCoO2からなる正極材料のみでは今後の需要拡大に対応することは困難と考えられる。
現在、より安価で資源的に制約の少ない正極材料として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)等が報告されており、一部代替材料として実用化されている。しかしながら、リチウムニッケル酸化物は、充電時に電池の安全性を低下させるという問題を有し、リチウムマンガン酸化物は、高温(約60℃)充放電時に3価のマンガンが電解液中に溶出し、それが電池性能を著しく劣化させるという問題を有するものであり、これらの材料への代替はあまり進んでいない。またリチウムマンガン酸化物のなかでLiMnO2という正極材料も提案されているが、この材料も、充放電に伴ってもとの構造から徐々にLiMn2O4に代表されるスピネル型の結晶構造に変化するために、充放電曲線の形状が充放電サイクルの進行に伴って大きく変化するという問題点があり、実用化には至っていない。
また、マンガンおよびニッケルに比べて資源的により一層豊富であり、毒性が低く、安価な鉄を含むリチウムフェライト(LiFeO2)について、電極材料としての可能性が検討されている。しかしながら、通常の製造法、すなわち鉄源とリチウム源とを混合し高温焼成することによって得られるリチウムフェライトは、ほとんど充放電しないので、リチウムイオン二次電池正極材料として用いることはできない。
一方、イオン交換法により得られるLiFeO2が充放電可能であることが報告されているが(下記特許文献1および2参照)、これらの材料の平均放電電圧は2.5V以下でありLiCoO2の値(約3.7V)に比べて著しく低いため、LiCoO2の代替とすることは困難である。
本発明者らは、すでに、鉄に次いで安価かつ資源的に豊富なリチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)とリチウムフェライトとからなる層状岩塩型構造の固溶体(Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2、(0<x<1/3, 0<y<1)、以下「鉄含有Li2MnO3」という)が、室温での充放電試験においてはリチウムコバルト酸化物並の4V近い平均放電電圧を有することを見出している(下記特許文献3および4参照)。
更に、本発明者らは、特定の条件を満足するリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が、高温サイクル試験時にLiMn2O4より高容量(150mAh/g)かつ安定した充放電サイクル特性を示すことを見出している(下記特許文献5参照)。
加えて、本発明者らは、鉄とともに資源的に豊富で安価なチタンを含有するリチウムマンガン酸化物(チタン含有Li2MnO3や鉄およびチタン含有Li2MnO3)が、高容量を示し、特に、特定の化学組成、遷移金属イオン分布において、室温における高電流密度下での放電特性や低温での放電特性に優れたものであることを見出している(下記特許文献6-8参照)。また従来からリチウム二次電池正極材料としての活用が困難とされてきた立方晶岩塩型結晶構造を有するリチウムチタン酸化物(鉄含有Li2TiO3や鉄およびニッケル含有Li2TiO3)が、リチウムイオン二次電池用正極材料として活用可能なことを明らかにしている。(下記特許文献9,10参照)
以上の通り、リチウムコバルト系正極材料に代わり得るリチウムマンガン系正極材料について種々の報告がなされているが、より一層の充放電特性改善のためには、結晶構造の制御を含む正極材料の化学組成や製造条件についての最適化が望まれている。
特開平10-120421号公報 特開平8-295518号公報 特開2002-68748号公報 特開2002-121026号公報 特開2005-154256号公報 特開2008-63211号公報 特開2009-179501号公報 特開2009-274940号公報 特開2003-48717号公報 特開2003-306322号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、長期間の充放電サイクルにおいて3V以上の平均放電電圧を保持でき、且つリチウムコバルト酸化物系正極材料と同等若しくはそれ以上の放電容量を有する材料であって、資源的な制約が少なく且つ安価な原料を使用して得ることができ、更に、公知の低価格の正極材料と比較して、より優れた充放電特性を発揮できる新規な材料を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、鉄および/またはチタンを含むマンガン系酸化物固溶体において、化学組成および製造方法を工夫することによって、主要な結晶相を立方晶岩塩型構造の結晶相に制御することができ、これによって、得られる酸化物は、従来の方法で得られる酸化物と比較して優れた放電特性を有するものとなり、特に、初期充放電効率が高くなることを見出した。その結果、該酸化物をリチウムイオン二次電池用の正極材料として用いることによって、初期充電のために必要とする負極材料の量を減少させることができ、結果としてエネルギー密度の高い電池を作製できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のリチウムマンガン系複合酸化物、その製造方法、リチウムマンガン系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料、及びリチウムイオン二次電池を提供するものである。
項1. 組成式:Li1+x(Mn1-m-nFemTin)1-xO2 (0<x<1/3, 0≦m≦0.70, 0≦n≦0.70 , 0.55≦m+n<1)で表され、主要な結晶相が立方晶岩塩型構造の結晶相であることを特徴とするリチウムマンガン系複合酸化物。
項2. 立方晶岩塩型構造の結晶相と層状岩塩型構造の結晶相の比率が、立方晶岩塩型構造結晶相:層状岩塩型構造結晶相(重量比)=100:0〜93:7である上記項1に記載のリチウムマンガン系複合酸化物。
項3. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物と共に、酸化剤の非存在下において、アルカリ性条件下で水熱処理することを特徴とする、上記項1又は2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
項4. 水熱処理に用いる水溶液が、更に還元剤を含有するものである、上記項3に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
項5. 上記項3又は項4の方法によって、水熱処理を行った後、リチウム化合物の存在下で焼成処理を行うことを特徴とする上記項1又は2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
項6. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物及び酸化剤と共に、アルカリ性条件下で水熱処理し、水熱処理後の生成物をリチウム化合物と共に、還元性雰囲気下において焼成することを特徴とする上記項1又は2に記載のリチウムマンガン系酸化物の製造方法。
項7. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物及び酸化剤と共に、アルカリ性条件下で水熱処理し、水熱処理後の生成物をリチウム化合物と共に焼成し、次いで、還元性雰囲気下において焼成することを特徴とする上記項1又は2に記載のリチウムマンガン系酸化物の製造方法。項8. 上記項1又は項2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料。
項9. 上記項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
以下、本発明のリチウムマンガン系複合酸化物及びその製造方法について具体的に説明する。
(1)リチウムマンガン系複合酸化物本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、組成式Li1+x(Mn1-m-nFemTin)1-xO2 (0<x<1/3, 0≦m≦0.70, 0≦n≦0.70, 0.55≦m+n<1)で表される化合物であって、酸化物の一般的な結晶構造である立方晶岩塩型(NaCl型)構造を基本とし、主要な結晶相として、公知物質であるα-LiFeO2やLi2TiO3と同じ立方晶
Figure 2012091982
岩塩型構造の結晶相を含むものである。図1は、立方晶岩塩(NaCl)型構造の結晶相(LiFeO2)の結晶構造を模式的に示す図面である。酸化物イオンは面心立方格子を形成し、その八面体位置をLiとFeが1:1の割合で占有している。本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、この八面体位置にLi及び Mnと、 FeおよびTiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が存在する構造を有するものである。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、主要な結晶相としては、立方晶岩塩型構造の結晶相を含むものであり、立方晶岩塩型構造の結晶相の単相であってもよく、或いは陽イオン分布の異なる層状岩塩型構造の結晶相、例えば、単斜晶層状岩塩型構造の結晶相、六方晶層状岩塩型構造の結晶相等を微量含む混合相であっても良い。この場合、立方晶岩塩型構造の結晶相と層状岩塩型構造の結晶相の割合は、通常、立方晶岩塩型構造結晶相:層状岩塩型構造結晶相(重量比)=100:0〜93:7程度の範囲内であればよい。
従来知られているリチウムマンガン系複合酸化物では、マンガン原子は、基本的には4価の元素として、単斜晶層状岩塩型構造を有するLi2MnO3を構成する成分として存在する。Li2MnO3に関しては、「C. S. Johnson, J. S. Kim, C. Lefief, J. T. Vaughey and M. M. Thackeray, Electrochemistry Communication, vol.6 p.1085-1091 (2004).」(以下、「参考文献1」という)において、初期充電時に4.5 V付近にLi2O脱離に伴う電位平坦部が出現するが、5.0Vまでの充電容量が383mAh/gであるのに対し、放電容量は208 mAh/gであり、初期充放電効率は54%という低い値であることが記載されている。
これに対して、本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、後述するように製造方法を工夫することによって得られるものであり、マンガンを含むにもかかわらず立方晶岩塩型構造を維持できる新規な物質である。この様な特徴を有する本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、従来知られている単斜晶層状岩塩型構造または六方晶層状岩塩型構造を有するLi2MnO3を主要な構成成分として含むリチウムマンガン系複合酸化物と比較して、優れた充放電特性を有するものであり、特に、初期充電効率が高い値となる。この理由については明確ではないが、立方晶岩塩型構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物は、4.5V以下の低い電圧でLi脱離が可能であり、これにより初期充放電効率が改善されるものと考えられる。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物は、上記組成式に示す通り、Li及びMnを必須の元素として含む酸化物であって、更に、Fe及びTiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を固溶させたものである。
固溶させるFe量(m値:Fe/(Fe+Mn+Ti))は、Li以外の金属量の70モル%程度以下(0≦Fe/(Fe+Mn+Ti)≦0.70)であり、好ましくは10モル%以上65モル% 以下(0.1≦Fe/(Fe+Mn+Ti) ≦0.65)である。このような範囲内で資源的に豊富で安価な鉄を含むことによって、安価であって、しかも優れた充放電性能を有する正極材料とすることができる。ただし、Feの固溶量が過剰となると、FeのMnによる希釈が不十分となり、結果として充放電に関与しないFeが多くなり、組成式あたりに含まれるLi含有量が低下するために、電池特性上好ましくない。
本発明リチウムマンガン系複合酸化物に固溶させるTiも、基本的にFeと同様に、MnやLiを置換する形で立方晶岩塩型構造中に存在している。Tiは、4価状態で存在しており、特許文献6で記述したようなLi欠損の抑制や粉体特性の変化に寄与しているものと思われる。本発明複合酸化物に固溶させるTi量(n値:Ti/(Fe+Mn+Ti))は、Li以外の金属量の70モル%程度以下(0≦ Ti/(Fe+Mn+Ti)≦0.70)であり、好ましくは10モル%以上65モル%程度以下(0.1≦Ti/(Fe+Mn+Ti)≦0.65)である。Mnに比べてさらに充放電に関与させることが困難なTiを多量に使用する場合には、充放電容量の低下を招くので好ましくない。一方、Tiの固溶量が少なすぎる場合には、Li欠損抑制などの効果が十分に発揮されないのでやはり好ましくない。
本発明リチウムマンガン系複合酸化物に固溶させるFeとTiの合計量は、前記組成式において0.55≦m+n<1程度の範囲内であり、好ましくは0.6≦m+n≦0.9程度の範囲内である。FeとTiの合計量をこの様な範囲内として、後述するように製造方法を工夫することによって、目的とする立方晶岩塩型構造の結晶相を主要な結晶相とするリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
また、本発明リチウムマンガン系複合酸化物において、立方晶岩塩型の結晶構造を保つことができる限り、Li1+x(Mn1-m-nFemTin)1-xO2のxは、遷移金属の平均価数によって0と1/3の間の値をとることができる。好ましくは0.05〜0.30の範囲である。
さらに、本発明複合酸化物は、充放電特性に重大な影響を及ぼさない範囲の水酸化リチウム、炭酸リチウム、チタン化合物、鉄化合物、マンガン化合物(それらの水和物および複合化合物も含む)などの不純物相を含んでいても良い。また、後述する有機物の存在下での焼成処理を行う場合には、焼成時に残留することのある非晶質又は結晶質の炭素などの不純物相が生成物中に含まれることがあるが、このような不純物相についても、本発明複合酸化物中に存在してもよい。立方晶岩塩型構造と層状岩塩型構造の結晶相からなる岩塩型構造の結晶相以外の不純物相の量については、リチウムマンガン系複合酸化物中に10重量%程度まで存在してもよい。
リチウムマンガン系複合酸化物の製造方法
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法については特に限定はないが、例えば、水熱反応を利用した方法によれば、優れた充放電性能を有する複合酸化物を容易に形成できる。以下、この方法について具体的に説明する。
(i)水熱反応を使用した製造方法の内で、まず、第一の方法は、鉄イオン、マンガンイオン及びチタンイオンの生成源となる金属化合物を水、水/アルコール混合物などに溶解させた混合溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、次いで、これに水溶性リチウム化合物を添加してアルカリ性条件下で水熱処理を行う方法である。この際、酸化剤を添加することなく、水熱処理を行うことによって、目的とする立方晶岩塩型構造の結晶相を主要な結晶相とするリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
鉄化合物、マンガン化合物及びチタン化合物としては、これらの化合物を含む混合水溶液を形成できる成分であれば特に限定なく使用できる。通常、水溶性の化合物を用いればよい。この様な水溶性化合物の具体例としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩等を挙げることができる。また、マンガン化合物としては、過マンガン酸塩などの水溶性塩を用いることもできる。これらの水溶性化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよい。また、酸化物や水酸化物などの非水溶性化合物であっても、例えば、塩酸などの酸を用いて溶解させて水溶液として用いることが可能である。これらの各原料化合物は、各金属源について、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
該混合水溶液における鉄化合物、マンガン化合物及びチタン化合物の混合割合は、目的とする複合酸化物における各元素比と同様の元素比となるようにすればよい。従って、鉄化合物及びチタン化合物については、目的とする複合酸化物の組成に応じて、これらの少なくとも一種を用いる。
混合水溶液中の各化合物の濃度については、特に限定的ではなく、均一な混合水溶液を形成でき、且つ円滑に共沈物を形成できるように適宜決めればよい。通常、鉄化合物、マンガン化合物及びチタン化合物の合計濃度を、0.01〜5mol/l程度、好ましくは0.1〜2mol/l程度とすればよい。
該混合水溶液の溶媒としては、水を単独で用いる他、メタノール、エタノールなどの水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒を用いても良い。水−アルコール混合溶媒を用いることにより、0℃を下回る温度での沈殿生成や、マンガン源として過マンガン酸カリウムを用いる場合の沈殿形成が可能となる。アルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
該混合水溶液から沈殿物(共沈物)を生成させるには、該混合水溶液をアルカリ性とすればよい。良好な沈殿物を形成する条件は、混合水溶液に含まれる各化合物の種類、濃度などによって異なるので一概に規定出来ないが、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
該混合水溶液をアルカリ性にする方法については、特に限定はなく、通常は、該混合水溶液にアルカリ又はアルカリを含む水溶液を添加すればよい。また、アルカリを含む水溶液に該混合水溶液を添加する方法によっても共沈物を形成することができる。 該混合水溶液をアルカリ性にするために用いるアルカリとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを用いることができる。これらのアルカリを水溶液として用いる場合には、例えば、0.1〜20mol/l程度、好ましくは0.3〜10mol/l程度の濃度の水溶液として用いることができる。また、アルカリは、上記した金属化合物の混合水溶液と同様に、水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒に溶解しても良い。
沈殿生成の際には、混合水溶液の温度を-50℃から+40℃程度、好ましくは-20℃から+30℃程度にすることにより、反応時の中和熱発生に伴うスピネルフェライトの生成が抑制され微細かつ均質な共沈物が形成されやすくなる。
該混合水溶液をアルカリ性とした後、更に、0〜150℃程度(好ましくは10〜100℃程度)で、0.5〜7日間程度(好ましくは1〜4日間程度)にわたり、反応溶液に空気を吹き込みながら、沈殿物の酸化・熟成処理を行うことが好ましい。
得られた沈殿を蒸留水等で洗浄して、過剰のアルカリ成分、残留原料等を除去し、濾別することによって、沈殿を精製することができる。 次いで、上記した方法で得られた沈殿物を、水溶性リチウム化合物とともにアルカリ性条件下で水熱処理に供する。水熱処理は、該沈殿物及び水溶性リチウム化合物を含む水溶液をアルカリ性条件下で加熱することによって行うことができる。加熱は、通常、密閉容器中で行えばよい。第一の方法では、水熱処理は、酸化剤の不存在下において行うことが必要である。これにより、目的とする立方晶岩塩型構造の結晶相を主要な結晶相として含むリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
水熱反応に用いる水溶液では、鉄、マンガン及びチタンを含む沈殿物の含有量は、水1リットルあたり1〜100g程度とすることが好ましく、10〜80g程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム等の水溶性リチウム塩、水酸化リチウム等を用いることができる。これらの水溶性リチウム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、無水物および水和物の何れを用いても良い。
水溶性リチウム化合物の使用量は、沈殿生成物中のFe、Mn及びTiの合計モル数に対するリチウム元素モル比として、Li/(Fe+Mn+Ti)=1〜10程度とすることが好ましく、3〜7程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、1〜8mol/l程度とすることがより好ましい。
水熱反応に用いる水溶液には、更に、還元剤を添加することができる。還元剤を添加した水溶液を用いて水熱合成反応を行うことによって、リチウムマンガン系複合酸化物の結晶構造を立方晶岩塩型に、より安定化させることができる。 還元剤としては、水熱反応時に分解して酸素吸収するものであれば、特に限定無く使用でき、具体例として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムやそれらの水和物等を挙げることができる。これらの還元剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
還元剤の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、0.5〜5mol/l程度とすることがより好ましい。
水熱反応を行う際の水溶液のpHについては、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
沈殿物及び水溶液リチウム化合物を含む水溶液がアルカリ性条件下にある場合には、そのまま加熱すればよいが、pH値が低い場合には、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを添加してpH値を上げればよい。
水熱反応は、通常の水熱反応装置(例えば、市販のオートクレーブ)を用いて行うことができる。
水熱反応条件は、特に限定されるものではないが、通常100〜300℃程度で0.1〜150時間程度とすればよく、好ましくは150〜250℃程度で1〜100時間程度とすればよい。
水熱反応終了後、通常、残存するリチウム化合物などの残存物を除去するために、反応生成物を洗浄する。洗浄には、例えば、水、水-アルコール混合溶液、アルコール、アセトンなどを用いることができる。次いで、生成物を濾過し、例えば、80℃以上の温度(通常は100℃程度)で乾燥することにより、目的とするリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
上記した方法でリチウムマンガン系複合酸化物を得た後、更に、必要に応じて、得られたリチウムマンガン系複合酸化物をリチウム化合物と共に焼成することによって、Li含有量および粉体特性を制御することができる。
焼成工程で用いるリチウム化合物としては、リチウム元素を含む化合物であれば特に限定なく使用でき、具体例として、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等のリチウム塩、水酸化リチウム、これらの水和物等を挙げることができる。これらのリチウム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。リチウム化合物の使用量は、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物1モルに対して0.01〜2モル程度とすればよい。
通常、反応性を向上させるために、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物をリチウム化合物を溶解した水溶液中に分散・攪拌し、乾燥した後、粉砕し、焼成することが好ましい。粉砕の程度については、粗大粒子が含まれず、混合物が均一な色調となっていればよい。
リチウム化合物は、粉末形態、水溶液形態等として用いることができるが、反応の均一性を確保するために、水溶液の形態で使用することが好ましい。この場合、水溶液の濃度については、通常、0.1〜10mol/l程度とすればよい。
リチウム化合物の存在下で焼成する方法については、立方晶岩塩型構造の安定化のためには比較的低温の方が好ましい。通常、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物に、上記したリチウム化合物を加えて混合した後、80℃以上の温度、好ましくは100℃程度の温度で加熱乾燥し、粉砕して、焼成すればよい。具体的な焼成温度範囲については、目的とする複合酸化物の組成によって異なるが、通常、150〜650℃程度とすることができる。但し、Mn元素の含有割合が多い複合酸化物を得る場合には、焼成温度を高くすると層状岩塩型構造の結晶相が生じ易くなる傾向がある。このため、Mn元素の含有割合が比較的多い複合酸化物を得る場合には、層状岩塩型構造の結晶相の出現を抑制するために焼成温度を550℃程度以下とすることが好ましい。
焼成の際の雰囲気は、大気中、不活性雰囲気中、酸化雰囲気中いずれでもよい。焼成時間は、焼成温度まで達する時間を含めて0.1〜100時間程度とすることが好ましく、0.5〜60時間程度とすることがより好ましい。
上記した方法で焼成することによって、目的とするリチウムマンガン系複合酸化物について、Li含有量や粉体特性等を制御することができる。例えば、焼成の際に添加するリチウム化合物の量を適宜設定することによって、リチウムマンガン系複合酸化物中のリチウム含有量を調整することができる。また、焼成温度を高くすることによって、リチウムマンガン系複合酸化物の粒径を大きくすることができる。
(ii)水熱反応を使用したリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法の第二の方法は、第一の方法と同様にして、鉄イオン、マンガンイオン及びチタンイオンの生成源となる金属化合物を溶解させた混合溶液をアルカリ性として沈殿物を形成した後、これに水溶性リチウム化合物と酸化剤を添加してアルカリ性条件下で水熱処理を行い、その後、得られたリチウムマンガン系複合酸化物をリチウム化合物と共に、還元性雰囲気下において焼成する工程を含む方法である。
この方法は、酸化剤の存在下に水熱処理を行うことが、第一の方法と異なる点である。酸化剤の存在下に水熱処理を行う場合には、充放電特性上好ましくない不純物相である斜方晶LiMnO2の副生を抑制することができる。
酸化剤としては、水熱反応時に分解して酸素発生するものであれば、特に限定無く使用でき、具体例として、塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水等を挙げることができる。酸化剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。酸化剤の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、0.5〜5mol/l程度とすることがより好ましい。
第二の方法では、鉄、マンガン及びチタンを含む沈殿物に、酸化剤と水溶性リチウムを加えた水溶液を用いて水熱処理を行うことを除いて、その他の条件は、第一の方法の水熱処理と同様である。
上記した方法によって水熱処理を行った後、得られたリチウムマンガン系複合酸化物をリチウム化合物と共に、還元性雰囲気下で焼成することによって、目的とする立方晶岩塩型構造の結晶相を主要な結晶相とするリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
第二の方法では、リチウム化合物としては、第一の方法と同様の化合物を用いることができ、その使用量も、第一の方法と同様とすればよい。
還元性雰囲気下で焼成する方法については、特に限定はないが、例えば、不活性雰囲気下において、有機物、炭素粉末などの存在下に焼成することによって、還元性雰囲気下における焼成が可能である。
有機物としては、特に限定はなく、後述する焼成温度において分解して還元性雰囲気とすることができる炭素含有化合物であればよい。特に、水溶性の有機物を用いる場合には、水溶液状態でリチウムマンガン複合酸化物粉末と分散混合できるので有利である。このような有機物の具体例としては、ショ糖、ブドウ糖、デンプン、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、アミノ酢酸などを挙げることができる。また酢酸リチウムなどの有機リチウム塩およびその水和物を活用しても良い。
炭素粉末としては、例えば、有機物の熱分解によって得られた炭素粉末、例えば、黒鉛、アセチレンブラックなどを用いることができる。
上記した有機物及び炭素粉末は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
有機物及び炭素粉末からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分(以下、「有機物等」ということがある)の使用量は、リチウムマンガン系複合酸化物に対して、炭素のモル量換算で0.001倍〜5倍モル程度とすることが好ましく、0.01倍〜1倍モル程度とすることがより好ましい。水溶液として用いる場合には有機物等の濃度は、上記した使用量の範囲となるように適宜決めればよい。
有機物等の存在下で焼成する方法については、特に限定はないが、例えば、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物に、上記したリチウム化合物及び有機物を加えて混合した後、80℃以上の温度、好ましくは100℃程度の温度で加熱乾燥し、粉砕して、焼成すればよい。焼成温度は、150〜1200℃程度とすることが好ましく、200〜1000℃程度とすることがより好ましい。
焼成の際の雰囲気は、有機物等の分解によって強い還元性の雰囲気となるように、窒素ガス中などの不活性ガス雰囲気とすればよい。焼成時間は、焼成温度まで達する時間を含めて0.1〜100時間程度とすることが好ましく、0.5〜60時間程度とすることがより好ましい。 上記した方法で焼成することによって、立方晶岩塩型構造を維持しつつ、リチウムマンガン系複合酸化物について、Li含有量、粉体特性等を制御することができる。例えば、焼成の際に添加するリチウム化合物の量を適宜設定することによって、リチウムマンガン系複合酸化物中のリチウム含有量を調整することができる。また、焼成温度を高くすることによって、リチウムマンガン系複合酸化物の粒径を大きくすることができる。更に、有機物等の添加量を増加させることによって、立方晶岩塩型構造をより高温まで安定化させることが可能となる。
上記した焼成処理は、リチウムマンガン系複合酸化物にリチウム化合物を添加して、焼成した後、還元性雰囲気下で焼成する二段階の焼成処理としてもよい。二段階の焼成処理を行う場合には、Li含有量、Mn価数、粉体特性等の制御をより精密に行うことができる。
この場合、リチウムマンガン系複合酸化物にリチウム化合物を添加して行う一段階目の焼成処理については、リチウム化合物の使用量などは上記した焼成処理と同様とすればよい。一段階目の焼成処理の条件については、焼成雰囲気は、大気中、酸化性雰囲気中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中等任意の雰囲気を選択できる。焼成温度は、200〜1200℃程度とすることが好ましく、300〜1000℃程度とすることがより好ましい。焼成時間は、焼成温度まで達する時間を含めて0.1〜100時間程度とすることが好ましく、0.5〜60時間程度とすることがより好ましい。
上記した方法で一段階目の焼成処理を行った後、還元性雰囲気下において二段階目の焼成処理を行えばよい。二段階目の焼成処理の条件は、上記したリチウム化合物を添加して還元性雰囲気下で焼成処理を行う場合と同様の条件とすればよい。
上記した第一の方法又は第二の方法でリチウムマンガン系複合酸化物を得た後、通常、過剰のリチウム化合物を除去するために、焼成物を水洗処理、溶媒洗浄処理等に供する。その後、濾過を行い、例えば、80℃以上の温度、好ましくは100℃程度の温度で加熱乾燥してもよい。
更に、必要に応じて、この加熱乾燥物を粉砕し、リチウム化合物、有機物等を加えて、焼成し、洗浄し、乾燥するという一連の操作を繰り返し行うことにより、リチウムマンガン系複合酸化物の優れた特性(リチウムイオン二次電池用正極材料としての作動電圧領域における安定的な充放電特性、高容量など)をより一層改善することができる。
リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、公知の手法により製造することができる。例えば、正極活物質として、本発明のリチウムマンガン系複合酸化物を使用し、負極材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛)、珪素、酸化珪素などを使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどからなる混合溶媒に過塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた溶液(有機電解液)を使用し、さらにその他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てればよい。
本発明によれば、安価な原料及び元素を使用して、平均放電電圧が3V以上を保持でき、且つリチウムコバルト酸化物系正極材料と同等またはそれ以上の放電容量(180mAh/g以上)および重量エネルギー密度(550mWh/g以上)を有する、正極材料として有用な新規な複合酸化物を得ることができる。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物がこのような大容量を有するのは、従来の正極材料とは異なり、放電曲線が放電終止電圧(2.0Vまたは1.5V)に向かって緩やかに低下していく形状であることによるものであり、放電終止電圧を2.0V程度又は1.5V程度まで下げることによって、容易に大容量化を実現することができ、小型民生用のみならず車載用などの大型リチウムイオン二次電池用正極材料としてきわめて有用である。
特に、本発明の複合酸化物は、従来の同様の組成を有する複合酸化物と比較して、初期充放電効率が高い(70%以上)という特徴を有するものである。このため、所定の初期放電量を得るために必要な負極材料の量を減少することができ、物質自身の高いエネルギー密度の寄与に加えて負極量低減によって電池のエネルギー密度を向上させることができる。
本発明によるリチウムマンガン系複合酸化物は、上記の優れた性能を有するものであり、高容量で、かつ低コストのリチウムイオン二次電池用正極材料として、極めて有用である。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物の主要な結晶構造である立方晶岩塩型構造の結晶層(α-LiFeO2)の結晶構造を模式的に示す図面。 実施例1および比較例1で得られた試料のX線回折図。 実施例1または比較例1で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量5mg)。 実施例1または比較例1で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量20mg)。 実施例1または比較例1で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池について、2種の異なる電流密度での放電曲線(活物質量5mg)。 実施例2および比較例2で得られた試料のX線回折図。 実施例2または比較例2で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量5mg)。 実施例3および比較例3で得られた試料のX線回折図。 実施例3または比較例3で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量5mg)。 実施例4および比較例4で得られた試料のX線回折図。 実施例4または比較例4で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量5mg)。 実施例5および比較例5で得られた試料のX線回折図。 実施例5または比較例5で得られた試料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の室温での充放電曲線(活物質量5mg)。
以下、実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。
実施例1
塩化鉄(II)4水和物19.88g、30%硫酸チタン(IV)水溶液80.00 g、及び塩化マンガン(II)4水和物9.90 g (全量0.25 mol、Fe:Ti:Mnモル比=4:4:2)を500 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム水溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて、室温にて徐々に滴下して、Fe-Ti-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に、共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理を行い、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、水酸化カリウム309g及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に入れて220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。次いで、濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を酸素気流中で一時間かけて600 ℃まで昇温後、その温度で酸素中において20時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過した後、乾燥して粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
比較例1
実施例1と同様に、沈殿作製から水熱処理、焼成前の水酸化リチウム添加、乾燥、粉砕まで行い、次いで、得られた粉末を酸素中で一時間かけて700 ℃まで昇温後、その温度で酸素中において20時間焼成し、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過した後、乾燥して粉末状生成物を得た。
X線回折分析による結果
図2に、実施例1及び比較例1で得られた各粉末生成物のX線回折(XRD)図を示す。これらのXRDパターンに対して解析プログラムRIETAN-2000(F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, vol.321-324 p.198-203 (2000).)によるリートベルト解析を行い、下記表1に示す結晶学パラメーターを算出した。
Figure 2012091982
図2より、実施例1で得られた試料は、立方晶岩塩型(α-LiFeO2型)構造の結晶相に由来するピークのみが認められるのに対し、比較例1で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3型)構造の結晶相に由来するピーク(▼)も認められた。なお、実施例1で得られた試料の2θ=20°付近に認められるブロードなピークは、立方晶岩塩型結晶相内の短距離秩序配列(格子定数の2倍に相当する超格子線で111面に相当)に由来する成分である(J. M. Cowley, Acta Cryst., A29 537-541 (1973). およびM. Tabuchi, K. Ado, H. Sakaebe, C. Masquelier, H. Kageyama and O. Nakamura, Solid State Ionics, 79, 220-226 (1995).)。
上記表1より、実施例1で得られた試料は、立方晶岩塩型(α-LiFeO2)構造の結晶相のみからなるのに対して、比較例1で得られた試料は、立方晶岩塩型構造の結晶相以外に単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3型)構造の結晶相を約30重量%含むものであることが確認できた。
化学組成および粉体特性
ICP発光分析を用いて、実施例1および比較例1で得られた粉末生成物の化学組成を求め、BET比表面積計を用いてこれらの試料の比表面積を求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 2012091982
表2から明らかなように、実施例1及び比較例1で得られた粉末生成物は、組成式中のx値、m値およびn値については本発明複合酸化物の範囲内であった。尚、一次粒径については、比表面積の測定値から、実施例1で得られた試料の方が小さいと考えられる。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量5mg))
実施例1で得られた試料または比較例1で得られた試料を正極活物質として用い、以下に示す構成のリチウムイオン二次電池を作製し、以下に示す充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を図3および表3に示す。
電池構成:
正極:活物質5mg+AB5mg+PTFE0.5mgを混合しAlメッシュ上に圧着、
負極:金属リチウム、
電解液:LiPF6をEC+DMC溶媒中に溶解させたもの。
AB:アセチレンブラック、PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、EC:エチレンカーボネート、DMC:ジメチルカーボネート
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g、
電位範囲:1.5-4.8V(初期充電のみ5.0Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図3及び表3から明らかなように、実施例1で得られた試料は、比較例1で得られた試料と比較すると、初期平均放電電圧が高く、更に、初期充放電容量、初期充放電効率、初期放電エネルギー密度、及び20サイクル後放電容量がいずれも大きい値であり、充放電特性に優れたものであることが明らかである。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量20mg))
実施例1で得られた試料と比較例1で得られた試料を正極活物質として用い、活物質量を20mgとして、以下に示す構成の試験用のリチウムイオン二次電池を作製し、下記に示す充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を図4および表4に示す。
電池構成:
正極:活物質20mg+AB5mg+PTFE0.5mgを混合しAlメッシュ上に圧着
負極:金属リチウム、
電解液:LiPF6をEC+DMC溶媒中に溶解させたもの。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g、
電位範囲:1.5-4.8V(初期充電のみ5.0Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図4及び表4から明らかなように、実施例1で得られた試料は、比較例1で得られた試料と比較した場合に、初期充電容量が多少低く、平均放電電圧については同等であるが、初期充放電容量、初期充放電効率、初期放電エネルギー密度、及び20サイクル後放電容量がいずれも大きい値であった。このため、電池のエネルギー密度向上に対応する活物質量を20mgに増加させた場合であっても、実施例1で得られた試料は、優れた充放電特性を発揮できることが確認できた。
充放電特性評価(室温での放電レート特性(活物質量5mg))
上記した充放電特性評価法における活物質量5mgの場合と同様の構造の二次電池を作製し、下記の条件で充放電試験を行った。結果を下記表5及び図5に示す。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、
電流密度(活物質あたり):40mA/g(充電時)、120mA/gまたは600mA/g(放電時)
電位範囲:1.5-4.8V(初期充電のみ5.0Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図5および表5から明らかなように、120mA/gまたは600mA/gという高い電流密度における放電試験結果では、実施例1で得られた試料は、比較例1で得られた試料と比較すると、平均放電電圧は同等以上であり、放電容量については増加していることが判る。
この結果から明らかなように、立方晶岩塩型結晶相のみからなる実施例1で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型結晶相が約30重量%含まれる比較例1で得られたと比較して、初期充放電効率などの充放電特性に優れたものであることが判る。
実施例2
30%硫酸チタン(IV)水溶液120.00 g、及び塩化マンガン(II)4水和物19.79 g (全量0.25 mol、Ti:Mnモル比=6:4)を500 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム水溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて、室温にて徐々に滴下して、Ti-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理を行い、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、水酸化カリウム309g、亜硫酸ナトリウム7水和物50g、及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れて、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置して、220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
比較例2
沈殿作製、水熱処理、その後水洗処理・濾過までの工程を実施例2と同様にして行い、次いで、濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を窒素気流中で一時間かけて600 ℃まで昇温後、その温度で窒素中において20時間焼成し、炉中で室温付近まで冷却した後、過剰のリチウム塩を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過、乾燥して粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
X線回折分析による結果
図6に、実施例2及び比較例2で得られた各粉末生成物のX線回折(XRD)図を示す。これらのXRDパターンに対して解析プログラムRIETAN-2000(F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, vol.321-324 p.198-203 (2000).)によるリートベルト解析を実施し、下記表6に示す結晶学パラメーターを算出した。
Figure 2012091982
図6より、実施例2で得られた試料は、立方晶岩塩型(Li2TiO3)構造の結晶相に由来するピークのみ認められるのに対して、比較例1で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3)の結晶相に由来するピーク(▼) も認められ、立方晶岩塩型の結晶相と共存していることが確認できた。なお実施例2で得られた試料の2θ=20°付近に認められるブロードなピークは、実施例1の試料と同様に立方晶岩塩型結晶相に由来する短距離秩序成分(格子定数の2倍に相当する超格子線で111面に相当)である。
上記表6より、実施例2で得られた試料は、立方晶岩塩型の結晶相のみからなるのに対し、比較例2で得られた試料は、立方晶岩塩型の結晶相以外に単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3 型)の結晶相を47重量%含むものであることが確認できた。
化学組成および粉体特性の評価
ICP発光分析を用いて、実施例2および比較例2で得られた各粉末生成物の化学組成を求め、BET比表面積計を用いてこれらの試料の比表面積を求めた。結果を表7に示す。
Figure 2012091982
表7から明らかなように、実施例2及び比較例2で得られた粉末生成物は、組成式中のx値およびn値については本発明複合酸化物の範囲内であった。尚、一次粒径については、比表面積の測定値から実施例2で得られた試料の方が小さいと考えられる。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量5mg))
実施例2または比較例2で得られた試料を正極活物質として用いること以外は、実施例1と同様にして、正極活物質量を5mgとして、リチウムイオン二次電池を作製し、下記充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を図7および表8に示す。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g
電位範囲:1.5-4.8V(初期充電のみ5.0Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図7および表8から明らかなように、実施例2で得られた試料は、比較例2で得られた試料と比較すると、初期平均放電電圧は同等であるが、初期充放電効率については大きく向上していることが明らかである。
この結果から、立方晶岩塩型結晶相のみからなる実施例2で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型結晶相が共存する比較例2で得られた試料と比較すると、初期充放電効率の観点から優れたものであることが確認できた。
実施例3
硝酸鉄(III)9水和物60.60g、及び過マンガン酸カリウム15.80 g (全量0.25 mol、Fe: Mnモル比=6:4)を700 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gおよびエタノール200mlを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて、室温にて徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、塩素酸カリウム50g及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gおよびショ糖0.71gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム−ショ糖水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を窒素気流中で3時間かけて500 ℃まで昇温後、その温度で窒素中において1時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
比較例3
硝酸鉄(III)9水和物60.60g、及び塩化マンガン4水和物19.79 g (全量0.25 mol、Fe: Mnモル比=6:4)を500 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム溶液(蒸留水500 mlに水酸化リチウム1水和物50 gおよびエタノール150mlを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌し、-10℃に冷却された恒温槽内に静置した。上記溶液が-10℃に冷却されたことを確認した後、攪拌された水酸化リチウム溶液に上記金属塩水溶液を2〜3時間かけ徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で2日間空気を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、水酸化カリウム309g、塩素酸カリウム50g及び蒸留水400 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220 ℃で48時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて700 ℃まで昇温後、大気中で、その温度において20時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
X線回折結果
図8に、実施例3及び比較例3で得られた各粉末生成物のX線回折(XRD)図を示す。これらのXRDパターンに対して解析プログラムRIETAN-2000(F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, vol.321-324 p.198-203 (2000).)によるリートベルト解析を行い、下記表9に示す結晶学パラメーターを算出した。
Figure 2012091982
図8より、実施例3で得られた試料は、立方晶岩塩型(α-LiFeO2型)構造の結晶相に由来するピークのみが認められるのに対し、比較例3で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3型)構造の結晶相に由来するピーク(▼)も認められた。なお、実施例3で得られた試料の2θ=20°付近に認められるブロードなピークは、実施例1の試料と同様に立方晶岩塩型結晶相内の短距離秩序配列(格子定数の2倍に相当する超格子線で111面に相当)に由来する成分である。
以上より、実施例3で得られた試料は、立方晶岩塩型構造の結晶相のみからなるのに対して、比較例3で得られた試料は、立方晶岩塩型の結晶相以外に単斜晶岩塩型層状構造の結晶相を35重量%含むものであることが確認できた。
化学組成および粉体特性
ICP発光分析を用いて、実施例3および比較例3で得られた各試料の化学組成を求め、BET比表面積計を用いて両試料の比表面積を求めた。結果を下記表10に示す。
Figure 2012091982
表10から明らかなように、実施例3及び比較例3で得られた粉末生成物は、組成式中のx値およびm値については、本発明複合酸化物の組成範囲内であった。尚、実施例3で得られた試料は、比較例3で得られた試料に比べて、比表面積が大きいことから一次粒子が小さいと考えられる。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量5mg))
実施例3または比較例3で得られた試料を正極活物質として用いること以外は、実施例1と同様にして、正極活物質量を5mgとして、リチウムイオン二次電池を作製し、下記の充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を下記表11及び図9に示す。尚、10サイクル後放電容量維持率(%)は、(10サイクル後放電容量)×100/ (初期放電容量)で表されるものある。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g
電位範囲:2.0-4.8V(充電のみ4.8Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図9および表11から明らかなように、実施例3で得られた試料は、比較例3で得られた試料と比較すると、10サイクル後放電容量と初期放電エネルギー密度はほぼ同等であるが、初期充放電効率、及び初期放電容量が向上していることが判る。
この結果から、立方晶岩塩型結晶相のみからなる実施例3で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型結晶相を含む比較例3で得られた試料と比較すると、初期充放電効率の観点から優れたものであることが確認できた。
実施例4
30%硫酸チタン(IV)水溶液120.00g、及び塩化マンガン(II)4水和物19.79 g (全量0.25 mol、Ti: Mnモル比=6:4)を500 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gを溶解させた水溶液)を作製した。この水酸化リチウム溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて、室温にて徐々に滴下して、Ti-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、塩素酸カリウム50g及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gおよびショ糖0.71gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム−ショ糖水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を窒素気流中で3時間かけて600 ℃まで昇温後、その温度で窒素中において1時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
比較例4
金属塩の使用量を、30%硫酸チタン(IV)水溶液100.00g、及び塩化マンガン(II)4水和物24.74 g (全量0.25 mol、Ti: Mnモル比=5:5)に変えること以外は、実施例4と同様にしてTi-Mn沈殿作製、熟成、水熱処理、及び水洗処理・濾過を行った。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を大気中、1時間かけて650 ℃まで昇温後、その温度で大気中において20時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
X線回折結果
図10に、実施例4よび比較例4で得られた各粉末生成物のX線回折(XRD)図を示す。これらのXRDパターンに対して解析プログラムRIETAN-2000(F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, vol.321-324 p.198-203 (2000).)によるリートベルト解析を行い、下記表12に示す結晶学パラメーターを算出した。
Figure 2012091982
図10より、実施例4で得られた試料は、立方晶岩塩型(Li2TiO3 型)構造の結晶相に由来するピークのみ認められるのに対し、比較例4で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3 型)構造の結晶相に由来するピーク(▼) が認められた。なお、実施例4で得られた試料の2θ=20°付近に認められるブロードなピーク(●)は、実施例1の試料と同様に、立方晶岩塩型結晶相に由来する短距離秩序成分である。
上記表12より、実施例4で得られた試料は、立方晶岩塩型の結晶相のみからなるのに対して、比較例4で得られた試料については、立方晶岩塩型構造の結晶相は含まれず、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3 )の結晶相のみからなることが確認できた。
化学組成および粉体特性
ICP発光分析を用いて、実施例4および比較例4で得られた各試料の化学組成を求め、BET比表面積計を用いて両試料の比表面積を求めた。結果を下記表13に示す。
Figure 2012091982
表13から明らかなように、実施例4で得られた試料は、組成式中のx値およびn値については、本発明複合酸化物の組成範囲内であったが、比較例4で得られた試料は、TiとFeの合計量であるn値とm値の合計値については、本発明複合酸化物の組成範囲外であった。尚、比表面積の測定結果から、実施例4で得られた試料と比較例4で得られた試料は、ほぼ同一の一次粒子の大きさを持つと考えられる。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量5mg))
実施例4または比較例4で得られた試料を正極活物質として用いること以外は、実施例1と同様にして、正極活物質量を5mgとして、リチウムイオン二次電池を作製し、下記の充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を下記表11及び図9に示す。尚、10サイクル後放電容量維持率(%)は、(10サイクル後放電容量)×100/ (初期放電容量)で表されるものである。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g
電位範囲:2.0-4.8V(充電のみ4.8Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図11および表14から明らかなように、実施例4で得られた試料は、比較例4で得られた試料と比較すると、10サイクル後放電容量、10サイクル後放電容量維持率、初期放電容量、初期放電平均電圧、及び初期放電エネルギー密度については、ほぼ同等であるが、初期充放電効率については優れたものであることが判る。
この結果から、立方晶岩塩型結晶相のみからなる実施例4で得られた試料は、層状岩塩型結晶相のみからなる比較例4で得られた試料と比較すると、初期充放電効率の点で優れたものであることが確認できた。
実施例5
硝酸鉄(III)9水和物30.30g、30%硫酸チタン水溶液60.00g及び過マンガン酸カリウム15.80 g (全量0.25 mol、Fe:Ti:Mnモル比=3:3:4)を700 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gおよびエタノール200mlを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけ、室温にて徐々に滴下して、Fe-Ti-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、塩素酸カリウム50g及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れて、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gおよびショ糖0.71gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム−ショ糖水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を窒素気流中で3時間かけて600 ℃まで昇温後、その温度で窒素中において1時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
比較例5
硝酸鉄(III)9水和物20.20g、30%硫酸チタン水溶液40.00g及び塩化マンガン4水和物29.69 g (全量0.25 mol、Fe:Ti:Mnモル比=2:2:6)を500 mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム溶液(蒸留水1000 mlに無水水酸化リチウム60 gを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム溶液をチタン製ビーカーに入れ攪拌した。この水酸化リチウム溶液を撹拌しつつ、上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて、室温にて徐々に滴下して、Fe-Ti-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50 g、塩素酸カリウム50g及び蒸留水600 mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220 ℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去した。濾過して得た粉末(リチウムマンガン系複合酸化物)を、水酸化リチウム1水和物5.25 gを蒸留水100 mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液中に添加して、撹拌しつつ分散・混合し、撹拌後、100 ℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて650 ℃まで昇温後、その温度で大気中において20時間焼成後、炉中で室温付近まで冷却し、過剰のリチウム塩等を除去するために焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
X線回折結果
図12に、実施例5および比較例5で得られた各粉末生成物のX線回折(XRD)図を示す。これらのXRDパターンに対して解析プログラムRIETAN-2000(F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Forum, vol.321-324 p.198-203 (2000).)によるリートベルト解析を行い、下記表15に示す結晶学パラメーターを算出した。
Figure 2012091982
図12より、実施例5で得られた試料は、立方晶岩塩型(Li2TiO3 )構造の結晶相に由来するピークのみが認められるのに対し、比較例5で得られた試料は、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3 )構造の結晶相に由来するピーク(▼) が認められた。なお、実施例5で得られた試料の2θ=20°付近に認められるブロードなピーク(●)は、実施例1の試料と同様に立方晶岩塩型結晶相内の短距離秩序配列(格子定数の2倍に相当する超格子線で111面に相当)に由来する成分である。。
上記表14より、実施例5で得られた試料は、立方晶岩塩型の結晶相のみからなるのに対して、比較例5で得られた試料は、立方晶岩塩型構造の結晶相は含まれず、単斜晶層状岩塩型(Li2MnO3 型)の結晶相のみからなることが確認できた。
化学組成および粉体特性
ICP発光分析により実施例5および比較例5で得られた各試料の化学組成を求め、BET比表面積計を用いて両試料の比表面積を求めた。結果を下記表16に示す。
Figure 2012091982
表16から明らかなように、実施例5で得られた試料は、組成式中のx値、m値およびn値が、いずれも本発明複合酸化物の組成範囲内であったが、比較例5で得られた試料については、組成式中のm値とn値の合計値が本発明複合酸化物の組成範囲外であった。尚、一次粒径については、比表面積の測定値から、実施例5で得られた試料の方が小さい値であると考えられる。
充放電特性評価(室温での充放電サイクル特性(活物質量5mg))
実施例5または比較例5で得られた試料を正極活物質として用いること以外は、実施例1と同様にして、正極活物質量を5mgとして、リチウムイオン二次電池を作製し、下記充放電試験条件に従って充放電試験を行った。結果を図13および表17に示す。
充放電試験条件:
試験温度:30℃、電流密度(活物質あたり):40mA/g、
電位範囲:1.5-4.8V(初期充電のみ4.8Vまでの定電流―定電圧充電(10mA/gに下がるまで))
Figure 2012091982
図13および表17から明らかなように、実施例5で得られた試料は、比較例5で得られた試料と比較すると、10サイクル後放電容量は劣り、初期平均放電電圧、初期放電容量、及び初期放電エネルギー密度は同等であるが、初期充放電効率が100%に近く、比較例5で得られた試料の初期充放電効率が60%であることと比較して、充放電特性に優れたものであることが明らかである。

Claims (9)

  1. 組成式:Li1+x(Mn1-m-nFemTin)1-xO2 (0<x<1/3, 0≦m≦0.70, 0≦n≦0.70, 0.55≦m+n<1)で表され、主要な結晶相が立方晶岩塩型構造の結晶相であることを特徴とするリチウムマンガン系複合酸化物。
  2. 立方晶岩塩型構造の結晶相と層状岩塩型構造の結晶相の比率が、立方晶岩塩型構造結晶相:層状岩塩型構造結晶相(重量比)=100:0〜93:7である請求項1に記載のリチウムマンガン系複合酸化物。
  3. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物と共に、酸化剤の非存在下において、アルカリ性条件下で水熱処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
  4. 水熱処理に用いる水溶液が、更に還元剤を含有するものである、請求項3に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
  5. 請求項3又は項4の方法によって、水熱処理を行った後、リチウム化合物の存在下で焼成処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法。
  6. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物及び酸化剤と共に、アルカリ性条件下で水熱処理し、水熱処理後の生成物をリチウム化合物と共に、還元性雰囲気下において焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムマンガン系酸化物の製造方法。
  7. チタン化合物及び鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物と、マンガン化合物を含む混合水溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を水溶性リチウム化合物及び酸化剤と共に、アルカリ性条件下で水熱処理し、水熱処理後の生成物をリチウム化合物と共に焼成し、次いで、還元性雰囲気下において焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムマンガン系酸化物の製造方法。
  8. 請求項1又は項2に記載のリチウムマンガン系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料。
  9. 請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
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