JP2012087189A - インクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法 - Google Patents

インクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】過大な遠心加速度を施さずとも、固形分収率を維持しつつフィルター濾過性に優れたインクジェット記録用水系顔料分散体を得る製造方法、及びその水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供する。
【解決手段】〔1〕以下の遠心分離工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行うインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られた水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インクである。
工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法、及びその水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この記録方式はカラー化が容易でありかつ記録部材として普通紙を使用できる利点があるため、近年広く用いられている。インクジェットプリンタに使用されるインクは、耐水性や耐候性の観点から、近年、着色剤として顔料や疎水性染料を用いるインクが主に使用されている。しかしながら、このようなインクは、水系インクとして使用する場合、分散不良の粗大粒子や一旦微粒化された顔料分散体が再凝集することによりフィルターの濾過性が低下するという課題がある。
一方、原液分散体を液分と固形分とに分離する装置として、バスケット型遠心分離機等の遠心分離機が知られており、この遠心分離機を用いた水系顔料分散体の製造方法が知られている。
例えば、特許文献1には、吐出安定性の改善を目的として、水性液体中にカーボンブラックと樹脂を分散又は溶解して分散液を調整し、カーボンブラックに樹脂を吸着させた後、25000〜80000Gの遠心加速度による遠心分離を行い、カーボンブラックに未吸着の樹脂を除くインクジェットインキの製造方法が開示されている。しかし、特許文献1の方法は遠心加速度が過大であるため、カーボンブラック分散体を一旦沈降させ、再分散する必要があり、生産面で負荷が大きい。
特許文献2には、保存安定性、歩留り等の改善を目的として、遠心加速度が500〜5000G、遠心加速度と遠心分離時間との積が1000〜10000G・hrの条件下で遠心分離処理を施す、顔料分散体の製造法が開示されている。
特許文献3には、フィルター濾過性の改善を目的として、顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する分散体を、遠心分離機を用いて液分と固形分とに遠心分離し、液分の少なくとも一部を排出した後、残余の液分を回収する、水系顔料分散体の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献2及び3の方法では濾過性は十分に改善されていない。
特開平10−237368公報 特開2004−203970公報 特開2008−266363公報
本発明は、過大な遠心加速度を施さずとも、固形分収率を維持しつつフィルター濾過性に優れたインクジェット記録用水系顔料分散体を得る製造方法、及びその水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕以下の遠心分離工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行うインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法。
工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
〔2〕前記〔1〕の製造方法によって得られた水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
本発明の製造方法によれば、固形分収率を維持しつつフィルター濾過性に優れたインクジェット記録用水系顔料分散体を得る製造方法、及びその水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することができる。
本発明のインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法は、以下の遠心分離工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行うことを特徴とする。
工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
処理対象である原液分散体は、顔料、水不溶性ポリマー及び水を含有するものであり、主として水不溶性ポリマーが顔料に吸着した顔料の水分散体、又は顔料を含有した水不溶性ポリマー粒子の水分散体からなる。
本明細書において、「水系」とは、分散体に含まれる媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味するものであり、媒体が水のみの場合もあり、水と一種以上の有機溶媒との混合溶媒の場合も含まれる。
また、遠心分離後の「液分」とは、主として、水不溶性ポリマーが顔料に吸着した顔料の水分散体と、顔料に未吸着の水不溶性ポリマーや顔料を含有していない水不溶性ポリマー粒子が水中に分散した分散液を意味し、遠心分離後の「固形分」とは、主として前記原液分散体中の分散不良や凝集により生成した粗大粒子からなる固形分を意味する。この固形分は、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁に付着している。
(顔料)
顔料としては、有機顔料及び無機顔料のいずれも使用できる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されるものではなく、赤色有機顔料、黄色有機顔料、青色有機顔料、オレンジ有機顔料、グリーンオレンジ有機顔料等の有彩色顔料を用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー13, 17, 74, 83,97, 109, 110, 120, 128, 139, 151, 154, 155, 174, 180;C.I.ヒ゜ク゛メント・レット゛48, 57:1, 122, 146, 176, 184, 185, 188, 202;C.I.ピグメント・バイオレット19, 23;C.I.ピグメントブルー15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16, 60;C.I.ピグメント・グリーン7, 36からなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクとしてはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料としては、いわゆる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、アニオン性親水基又はカチオン性親水基の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。ここで、アニオン性親水基としては、特にカルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO31)が好ましく(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムである)、カチオン性親水基としては、第4級アンモニウム基が好ましい。
通常の顔料を自己分散型顔料とするには、上記のアニオン性親水基又はカチオン性親水基の必要量を、公知の方法、例えば、酸によってカルボキシ基を導入する方法、過硫酸化合物の熱分解によってスルホン基を導入する方法、カルボキシ基、スルホン基、アミノ基等を有するジアゾニウム塩化合物によって上記のアニオン性親水基を導入する方法により顔料表面に化学結合させればよい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
(塩生成基を有する水不溶性ポリマー)
本発明においては、塩生成基を有する水不溶性ポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう)を用いる。ここで、「水不溶性」とは、対象ポリマーの未中和品を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であることをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基の種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられ、架橋剤との反応性の観点から、特にカルボキシ基が好ましい。
用いるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー等が挙げられるが、その分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニルポリマーが好ましい。
(ビニルポリマー)
ビニルポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ともいう)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物A」ともいう)を共重合させてなるビニルポリマーが好ましい。このビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。より好適なビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位、又は(a)及び(c)成分由来の構成単位を主鎖として有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖として有するグラフトポリマーである。
〔(a)塩生成基含有モノマー〕
(a)塩生成基含有モノマーは、得られる分散体の分散安定性を高める観点から用いられる。
塩生成基含有モノマーとしては、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
〔(b)マクロマー〕
(b)マクロマーは、顔料含有架橋コアシェルポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、(b)マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロマーの中では、顔料含有架橋コアシェルポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
(b)マクロマーは、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(1)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32O〕t−Si(CH33 (1)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
〔(c)疎水性モノマー〕
(c)疎水性モノマーは、印字濃度の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー(c−1成分)、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2成分)が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられる。
(c)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(c−1成分)が好ましく、スチレン系モノマー(c−1成分)としては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、印字濃度及び光沢性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
〔(d)水酸基含有モノマー〕
モノマー混合物Aには、更に、(d)水酸基含有モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていてもよい。(d)水酸基含有モノマーは、分散安定性を高めるという優れた効果を発現させるものである。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
〔(e)成分〕
モノマー混合物Aには、更に、(e)下記式(2)で表されるモノマー(以下「(e)成分」ともいう)が含有されていてもよい。
CH2=C(R1)COO(R2O)q3 (2)
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R3は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、qは平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、吐出性を向上するという優れた効果を発現する。
式(2)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
1の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
2O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
3の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(2)中のqの値を示す。以下、同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
商業的に入手しうる(d)、(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、日油株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B等が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
塩生成基を有するポリマーの製造時における、上記(a)〜(e)成分のモノマー混合物A中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は該ポリマー中における(a)〜(e)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に顔料との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、吐出性向上の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物A中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
(塩生成基を有する水不溶性ポリマーの製造)
塩生成基を有する水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物Aを共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法に用いられる溶媒は特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物A1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物Aの重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、印字濃度、光沢性及び顔料の分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万が更に好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す方法により測定する。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価(HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。又は、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して滴定する方法でも求めることができる。
(水系顔料分散体の製造方法)
本発明の水系顔料分散体は、次の工程(1)〜(3)により得ることが好ましい。
工程(1):ポリマー、有機溶媒、顔料、水及び必要により中和剤を含有する混合物を分散処理して、分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から有機溶媒を除去して、原液分散体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた原液分散体を用いて、以下の工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行う遠心分離工程
工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
(工程(1):分散体の調製)
工程(1)では、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得ることが好ましい。混合物中、顔料は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。塩生成基を有する水不溶性ポリマーには中和剤を用いることが好ましいが、その中和度には特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、水100gに対する溶解量が20℃において、5g以上のものが好ましく、10g以上のものが更に好ましく、より具体的には5〜80gのものが好ましく、10〜50gのものが更に好ましい。特に、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。中和剤としては、前記のものが挙げられる。
工程(1)における混合物の分散方法には特に制限はない。好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、工程(2)で、所望の平均粒径の原液分散体混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔荏原製作所株式会社、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、プライミクス株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、混合物に含まれている顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
(工程(2):原液分散体の調製)
工程(2)では、工程(1)で得られた分散体から有機溶媒を留去して水系にすることで、所望の平均粒径を有する原液分散体を得ることができる。水分散体に含まれる有機溶媒の除去は、減圧蒸留等による一般的な方法により行うことができる。得られた水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下である。
原液分散体は、顔料又は水不溶性ポリマー粒子の固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、水不溶性ポリマーが顔料に吸着した顔料の水分散体の形態には特に制限はなく、例えば、水不溶性ポリマーが一般的なループ、トレイン、テイル型で吸着した分散形態等が挙げられる。また、顔料を含有した水不溶性ポリマー粒子の形態も特に制限はなく、例えば、水不溶性ポリマーに顔料が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれる。
原液分散体の平均粒径は、分散安定性、吐出性の観点から、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは70〜170nm、特に好ましくは90〜150nmである。なお、平均粒径は実施例に記載の方法で測定する。
(工程(3):原液分散体の遠心分離)
工程(3)では、工程(2)で得られた原液分散体を用いて、以下の遠心分離工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行う。
工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
工程(A)
工程(A)は、顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下、好ましくは1/2〜1/3となるように、遠心分離機に仕込む工程である。原液分散体の総量が遠心分離機の最大容量の2/3に満たない場合は、一度の遠心分離処理で終了することも可能となるが、たとえ原液分散体の総量が遠心分離の最大容量の2/3に満たない場合でも、分割して工程(A)〜(C)の操作を、2〜50回、好ましくは2〜40回、より好ましくは2〜30回、より好ましくは2〜20回、更に好ましくは2〜15回繰り返して遠心分離処理を行うことにより、実製造プロセスにおいても、過大な遠心加速度を施さずとも、固形分収率を維持しつつフィルター濾過性に優れた水系顔料分散体を効率的に得ることができる。
工程(B)
工程(B)は、遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程である。
本発明に用いる遠心分離機としては特に制限はないが、例えば、特開2003−93811号公報等に記載のバスケット型遠心分離機が好ましい。
バスケット型遠心分離機のバスケットのタイプにも特に制限はない。周壁部に透過孔を有しない無孔壁タイプのバスケットは、微小な固形分が液体中に分散してなる原液分散体から粗大粒子を分離する場合に液層部を保持できる容量が大きいため、特に好ましく用いられる。そのようなバスケットを備えた無孔壁バスケット型遠心分離機としては、例えば、株式会社関西遠心分離機械製作所製のKBS型、タナベウィルテック株式会社製のS型の遠心分離機等が挙げられる。
原液分散体に遠心分離処理を施す際の遠心加速度は、原液分散体に含有されているフィルター濾過性や分散安定性を阻害する成分、例えば、顔料粒子や水不溶性ポリマー粒子同士が凝集した粗大粒子等の含有量を低減させる観点から、500G以上、好ましくは1000G以上である。また、遠心加速度は、固形分の損失を抑制して歩留りを高めるとともに、遠心分離機の耐久性を高める観点から、5000G以下、好ましくは3000G以下である。これらの観点から、遠心加速度は、好ましくは500〜5000G、より好ましくは1000〜3000Gである。
遠心分離の際には、遠心加速度と遠心分離時間との積は、固形分のバスケット内壁への付着を十分にし、無孔壁バスケットの回転を停止した際に液分と混合するのを回避する観点から、好ましくは1000G・h以上、より好ましくは1500G・h以上であり、また処理時間の短縮及び遠心分離機の耐久性の観点から、好ましくは4500G・h以下、より好ましくは4000G・h以下である。これらの観点から、遠心加速度と遠心分離時間の積は、好ましくは1000〜4500G・h、より好ましくは1500〜4000G・hである。
工程(C)
工程(C)は、工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程である。
工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは75〜95%に相当する量の液分を遠心分離機から排出した後、再び工程(A)に戻し、工程(A)〜(C)の操作を繰り返す。その際に残余の液分はそのまま再度工程(A)に戻してもよいし、一度遠心分離工程を停止して、固形分を取り出し、その固形分と合わせて遠心分離機から排出し、遠心分離機内を空にしてもよい。収率の面からは残余の液分をそのままに再度工程(A)に戻すことが好ましい。
ここで、「固形分」は、主として顔料や顔料を含有した水不溶性ポリマー粒子同士が凝集した粗大粒子からなり、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁に付着しているので、容易に取り除くことができる。
工程(A)、(B)、(C)の操作を繰り返すことで、例えば一定量毎の原液分散体を2〜50回繰り返し遠心分離処理する場合と、遠心分離機の最大容量に合わせて原液分散体を仕込んで遠心分離処理を繰り返さないで行う場合とを比較すると、同一の合計遠心分離時間では、遠心分離工程を2〜50回繰り返し行う場合の方が、水系顔料分散体のフィルターろ過性を大幅に改善することができる。
この遠心分離処理では液分が製品となり、固形分は製品として含まれないために、この液分の量が収率として生産性に寄与するが、本発明の方法によると固形分の発生量は同等である。すなわち、本発明の方法は優れた分級性能を示すことを意味し、本発明の製造方法によれば、固形分収率を維持しつつフィルター濾過性に優れたインクジェット記録用水系顔料分散体を効率的に得ることができる。その理由は明確ではないが、本発明において液分収率が向上しているのは、最大容量と比して少ない量で遠心分離処理を施すことで、粗大粒子を沈降除去するのに必要な沈降距離が短くなり、遠心分離処理上、不必要な沈降干渉現象が起こりにくくなったためであると推測される。
前記のようにして得られる水系顔料分散体は、そこに含まれている粗大粒子を除去するために、フィルターで濾過することが好ましい。用いられるフィルターの平均孔径は、0.5〜10μm、好ましくは0.8〜5μmである。
(水系顔料分散体及び水系インク)
上記で得られた水系顔料分散体はそのまま水系インクとして用いることができるが、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、キレート剤等を添加することができる。
水系顔料分散体及び水系インクにおける平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは10〜500nm、より好ましくは10〜300nm、特に好ましくは50〜200nmである。なお、平均粒径の測定は、実施例に記載の方法で行う。
水系顔料分散体(固形分濃度25%)の粘度(20℃)は、水系インクとした時に良好な粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sが更に好ましい。
また、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。なお、粘度の測定は、E型粘度計〔東機産業株式会社製、RE80型、測定時間1分、回転数100rpm、ロータは標準(1°34′×R24)〕を用いて測定する。
水不溶性ポリマーが顔料に吸着した水分散体中の水不溶性ポリマー粒子の含有量、又は顔料を含有した水不溶性ポリマー粒子の含有量は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように調整することが望ましい。水系インクにおける顔料の含有量は、印字濃度の観点から、好ましくは0.4〜20重量%、より好ましくは0.8〜15重量%であり、水系インク中の水の含有量は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量等の測定方法は以下のとおりである。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
カラムとして東ソー株式会社製、HLC−8120GPCを用い、溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリマーの重量平均分子量を測定した。
(2)固形分の測定
平底皿に充分乾燥させた無水硫酸ナトリウム(乾燥助剤)を約10g入れ、平底皿と合わせて乾燥前の重量を正確に測定した。測定するサンプルを2g精秤し、105℃で2時間乾燥させた後、室温まで放冷し、乾燥後の平底皿の重量を正確に測定した。以下の計算式により固形分を求めた。
固形分(%)={〔乾燥前の重量(g)−乾燥後の重量(g)〕÷サンプル量(g)]×100
(3)平均粒径の測定
大塚電子株式会社製のELS−8000を用いて測定した。測定条件は、温度が25℃、入射光と検出器との角度が90°、積算回数が200回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。また標準物質としてセラディン(Seradyn)社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ(平均粒径204nm)を用いた。
(4)ろ過量の測定
水系顔料分散体の濾過性を平均孔径が5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、Sartorius社製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ株式会社製〕で濾過し、フィルター1個が目詰まりするまでの通液量を測定して評価した。この評価で得られたろ過量を5μmろ過量という。
このろ過品を更に、平均孔径が0.8μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、Sartorius社製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジでろ過紙、フィルター1個が目詰まりするまでの通液量を測定して評価した。この評価で得られたろ過量を0.8μmろ過量という。
製造例1(水不溶性ポリマー溶液の製造)
反応容器内に、メチルエチルケトン10部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.02部、及び表1に示す初期仕込みモノマー(重量部表示)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す滴下モノマー(重量部表示)を仕込み、次いで前記の重合連鎖移動剤0.08部、メチルエチルケトン80部及び重合開始剤〔2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〕0.5部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温した後、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を75℃で2時間維持した後、前記の重合開始剤0.6部をメチルエチルケトン10部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に75℃で1時間を3回繰返した後、85℃で2時間熟成させ、水不溶性ポリマー溶液を得た。
得られた水不溶性ポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって水不溶性ポリマーを単離し、その重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の各モノマーの数値は、有効分の重量部を示す。
Figure 2012087189
製造例2(イエロー顔料と水不溶性ポリマーとを含有する原液分散体の製造)
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー30部を、メチルエチルケトン87.5部に溶かし、その中にイオン交換水242.2部と中和剤(5N−水酸化ナトリウム水溶液)を8.37部加えた混合物で塩生成基を中和し、更にイエロー顔料(山陽色素株式会社製、商品名:FY7414)70部を加え、ディスパーを用いて分散した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて180MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散体から、エバポレーターを用いて減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、イエロー顔料と水不溶性ポリマーとを含有する原液分散体(固形分量26.2%)を得た。この原液分散体の固形分、平均粒径、ろ過量を測定した結果を表2に示す。
実施例1
製造例2で得られた原液分散体3kg(比重1.09)を無孔バスケット型遠心分離機(株式会社関西遠心分離機製作所製、型番:KBS−10型、内容量5.5L、バスケットの内径26cm、高さ16cm)に仕込んだ。仕込んだ原液分散体は、遠心分離機の最大容量に対して50%である。
遠心分離を3200r/min(1500G)で45分間行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を2minかけて2kg排出した。その状態に原液分散体を2kg仕込んだ。仕込んだ原液分散体は遠心分離機の最大容量に対して33%である。回転数を3200r/min(1500G)にして45分間遠心分離を行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を2minかけて2kg排出した。
したがって、合計5kgの原液分散体に対して、合計90分間の遠心分離を行い、4kgの液分を回収したことになる。この液分の固形分は24.0%であった。この液分の固形分、平均粒径、ろ過量を測定した結果を表2に示す。
前記で得られた液分を5μmのメンブランフィルターでろ過した水系顔料分散体を固形分20%に調整したものを25部、グリセリン10部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール5部、ヘキサンジオール2部、アセチレングリコールEO付加物(n=10)0.5部及びイオン交換水57.5部を混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インクを得た。
実施例2
製造例2で得られた原液分散体2kgを実施例1で用いたのと同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。仕込んだ原液分散体は、遠心分離機の最大容量に対して33%である。
遠心分離を3200r/min(1500G)で22分30秒間行い、その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を1minかけて1kg排出した。
その状態に原液分散体を1kg仕込んだ。仕込んだ原液分散体は遠心分離機の最大容量に対して17%である。回転数を3200r/min(1500G)にして22分30秒間遠心分離を行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を1minかけて1kg排出した。同様の操作をさらに2回繰り返した。
したがって、合計5kgの原液分散体に対して、合計90分間の遠心分離を行い、4kgの液分を回収したことになる。この液分の固形分は24.0%であった。結果を表2に示す。
比較例1
製造例2で得られた原液分散体5kgを実施例1で用いたのと同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。仕込んだ原液分散体は、遠心分離機の最大容量に対して83%である。
遠心分離を3200r/min(1500G)で90分間行い、その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を4minかけて4kg排出した。この液分の固形分は23.7%であった。結果を表2に示す。
実施例3
製造例2で得られた原液分散体3kgを実施例1で用いたのと同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。
遠心分離を3200r/min(1500G)で22分30秒間行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を2minかけて2kg排出した。その状態に原液分散体を2kg仕込んだ。回転数を3200r/min(1500G)にして22分30秒間遠心分離を行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を2minかけて2kg排出した。
したがって、合計5kgの原液分散体に対して、合計45分間の遠心分離を行い、4kgの液分を回収したことになる。この液分の固形分は25.2%であった。結果を表2に示す。
比較例2
製造例2で得られた原液分散体5kgを実施例1で用いたのと同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。
遠心分離を3200r/min(1500G)で45分間行った。その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を4minかけて4kg排出した。この液分の固形分は25.1%であった。結果を表2に示す。
比較例3
製造例2で得られた原液分散体5kgを実施例1で用いたのと同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。
遠心分離を3200r/min(1500G)で22分30秒分間行い、その後スキミングノズルを使用して回転数2000r/minで液分を4minかけて4kg排出した。この液分の固形分は25.7%であった。結果を表2に示す。
Figure 2012087189
表2から、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように原液分散体を仕込んで遠心分離を行う(実施例参照)と、同じ量の原液分散体を合計同じ時間遠心分離した場合(比較例参照)に比べ、固形分収量を維持しつつ、ろ過量が改善されることが分かる。このことから、同じろ過量を必要とする場合、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように原液分散体を仕込んで、液分を排出する操作を繰り返すと、合計の遠心分離時間を短縮できることが分かる。

Claims (4)

  1. 以下の遠心分離工程(A)〜(C)を2〜50回繰り返し行うインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法。
    工程(A):顔料、塩生成基を有する水不溶性ポリマー、及び水を含有する原液分散体を、遠心分離機の最大容量の2/3以下となるように仕込む工程
    工程(B):遠心分離機を用いて液分と固形分に分離する工程
    工程(C):工程(A)で仕込んだ原液分散体の20%以上に相当する量の液分を遠心分離機から排出する工程
  2. 工程(C)で、工程(A)で仕込んだ原液分散体の50%以上に相当する量の液分を排出する、請求項1に記載のインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法。
  3. 遠心分離機がバスケット型遠心分離機である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水系顔料分散体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られた水系顔料分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
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