JP2010126600A - サーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】〔1〕顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を、遠心加速度が10,000〜30,000Gであり、遠心加速度と遠心分離時間との積が5000〜90,000G・hrである条件下で、分散液と沈殿成分とに遠心分離する工程(1)、及び得られた分散液の液面から、分散液量の70重量%以内の量を分取して、サーマルインクジェット記録用水分散体を得る工程(2)を有するサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法、及び〔2〕前記方法により得られる水分散体を含有するサーマルインクジェット記録用水系インクである。
【選択図】なし
Description
インクジェット記録に使用されるインクとしては、耐水性や耐候性の観点から、近年、顔料、ポリマー、水を分散させた顔料系インクが主に使用されている。
サーマル方式はインクに熱エネルギーを印加するため、いわゆるコゲーション(抵抗素子表面上の残渣沈着)の問題がある。
近年、画像品質向上のために、抵抗素子の表面温度が高くなる傾向にあり、サーマル方式におけるコゲーションは、熱効率の低下、インクの吐出効率の低下、更にはインク液滴の吐出不良による画像品位の低下を招くため大きな問題である。
コゲーションを改善する方法として、例えば、特許文献1には、顔料インク中のリン濃度を30ppmとする技術が開示されている。
また、特許文献3には、中和されたアニオン性基を有するポリマーで顔料が被覆されてなるインクジェットプリンター用水性記録液の製造方法において、水性記録液中の顔料の粗粒を除去するために遠心力4,000〜8,000Gで、顔料の粗粒を質量換算で3〜15%除去する方法が開示されている。
しかしながら、これらの従来技術では、長時間のインクジェット記録を行うと、徐々にコゲが堆積していき、これによりインクの吐出効率の低下や、インク液滴の吐出不良が起こるという問題がある。
〔1〕下記工程(1)及び(2)を有するサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程(1):顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を、遠心加速度が10,000〜30,000Gであり、遠心加速度と遠心分離時間との積が5000〜90,000G・hrである条件下で、分散液と沈殿成分とに遠心分離する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液の液面から、分散液量の70重量%以内の量を分取して、サーマルインクジェット記録用水分散体を得る工程
〔2〕前記〔1〕の製造方法により得られるサーマルインクジェット記録用水分散体を含有するサーマルインクジェット記録用水系インク。
工程(1):顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を、遠心加速度が10,000〜30,000Gであり、遠心加速度と遠心分離時間との積が5000〜90,000G・hrである条件下で、分散液と沈殿成分とに遠心分離する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液の液面から、分散液量の70重量%以内の量を分取して、サーマルインクジェット記録用水分散体を得る工程
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体においては、顔料を含有する粒径の大きいポリマー粒子や、ポリマー中にしっかりと含有されていない粒径の小さい顔料粒子は不安定で、それらの粒子の間でヘテロ凝集が起こり易いと考えられる。そのヘテロ凝集体がインクジェットプリンターの吐出ノズルに付着し、コゲーションの原因になると考えられる。
本発明の水分散体は、前記条件下で水分散体を遠心分離し、得られた分散液の一部を分取することにより、かかる不安定なポリマー粒子や顔料粒子等を除去して、ヘテロ凝集を効果的に防止することができる結果、コゲーションを抑制し、吐出性に優れると考えられる。
本明細書において、「水分散体」とは、水を主媒体とする分散体を意味し、媒体が水のみの場合もあり、有機溶媒の量が0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下の混合溶媒の場合も含まれる。
また、遠心分離後の「分散液」とは、顔料を含有するポリマー粒子、すなわち顔料を内包するポリマー粒子、ないしポリマーが顔料に吸着した粒子を主成分とし、少量の不良粒子、すなわち顔料を含有していないポリマー粒子、ポリマーに吸着していない顔料粒子等を含有する水分散液を意味し、遠心分離後の「沈殿成分」とは、主として前記原液分散体中の分散不良や凝集により生成した粗大粒子からなり、スラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機において試料を入れた容器の底又は側壁に付着するものを意味する。
以下、本発明に用いられる各成分について説明する。
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料としては、いわゆる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、アニオン性親水基又はカチオン性親水基の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。ここで、アニオン性親水基としては、特にカルボキシル基(−COOM1)、スルホン酸基(-SO3M1)が好ましく(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムである)、カチオン性親水基としては、第4級アンモニウム基が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
顔料を含有するポリマー粒子に用いられるポリマーとしては、吐出安定性、印字濃度向上の観点から、水不溶性ポリマーが好ましい。ここで、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させ、恒量に達した後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基の種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーの種類としては、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられるが、ビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
本発明の水系インクをサーマルインクジェット記録用として用いると、インクの吐出ノズルにポリマーが付着したとしても、該ポリマーが容易に脱離されるので固着を低減できると考えられる。
CH2=C(R1)COO(R2O)qR3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数2又は3の炭化水素基、R3は水素原子又は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、qは平均付加モル数を示し1〜60の数である。)
ここで「本質的に」とは、本発明の効果を損なわない範囲、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下で、他のモノマー成分由来の構成単位を有していてもよいが、他のモノマー成分由来の構成単位を有さないことが好ましいことを意味する。
このポリマーは、(a)成分と、(b)成分、(c)成分及び(d)成分から選ばれる1種以上の成分とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ともいう)を共重合させることにより得ることができる。
塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。その例として、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているもの等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、顔料を含有するポリマー粒子の分散体の分散安定性、インクの吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、(b)マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロマーの中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に前記重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー、及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが挙げられる。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、共重合される他のモノマーとしては、下記式(2)で表されるアクリロニトリル系モノマー等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
(b)マクロマーは、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(3)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)-COOC3H6-〔Si(CH3)2O〕t-Si(CH3)3 (3)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)マクロマーとして商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
(c)(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
その具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はtert−)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アリールエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基を有していてもよい(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
なお、本明細書にいう「(イソ又はtert−)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。
上記の中では、顔料への吸着力を高め、インクのより高い保存安定性と印字濃度を得る観点から、(メタ)アクリル酸アリールエステルが好ましく、メタクリル酸ベンジルがより好ましい。
本発明で用いられるポリマーは、顔料が該ポリマーに含有された後の顔料を含有するポリマー粒子の分散体の安定性を補助し、インクの吐出安定性を高めるという観点から、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸のアルカンジイルオキシドエステル(d)由来の構成単位を有することが好ましい。
CH2=C(R1)COO(R2O)qR3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数2又は3の炭化水素基、R3は水素原子又は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、qは平均付加モル数を示し1〜60の数である。)
R1の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、又はプロパン−1,2−ジイル基等挙げられる。qは平均付加モル数を意味し、好ましくは7〜30であり、より好ましくは8〜23である。qが2以上の場合、R2は同一でも異なっていてもよく、ブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよい。
R3は、好ましくは炭素数3〜22、より好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ又はtert−)ブチル基、(イソ)アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、(イソ)オクチル基、(イソ)デシル基、(イソ)ドデシル基、(イソ)ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。
但し、平均付加モル数qが4以下の場合、インクの吐出安定性及び保存安定性の観点から、R3は炭素数3〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
特に好適な具体例としては、2−エチルヘキシロキシポリエチレングリコール(n=4)メタクリレート、2−エチルヘキシロキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の単官能性アクリレートモノマー(NKエステル)EH−4E、EH−9E、M−90G、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、50PEP−300、50POEP−800B等が挙げられる。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に顔料との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、光沢性及び写像性の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜35重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%である。〔(b)成分+(c)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、光沢性及び写像性の観点から、好ましくは0.02〜0.8、より好ましくは0.03〜0.6、更に好ましくは0.05〜0.5である。
(a)成分と(c)成分との重量比[(a)/(c)]は、分散安定性と吐出安定性との両立の観点から、好ましくは0.1〜0.8、より好ましくは0.2〜0.5である。
(b)成分と(c)成分との重量比[(b)/(c)]は、吐出安定性と印字濃度との両立の観点から、好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.1〜0.4である。
本発明で用いられるポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
前記ポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価(HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。ポリマーの酸価又はアミン価は、50〜200が好ましく、50〜150が更に好ましい。
本発明において、ポリマー粒子は、顔料を安定に分散させるために、顔料を含有するポリマー粒子の形態で用いられる。顔料を含有するポリマー粒子の水分散体の製造方法は、特に限定はないが、次の工程(I)〜(III)によれば、効率的に得ることができる。
工程(I):ポリマー、有機溶媒、顔料、水、及び必要により中和剤を含有する混合物を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた混合物を分散処理して、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(III):工程(II)で得られた原液分散体から有機溶媒を除去して、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体(原液分散体)を得る工程
水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましいが、中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
工程(II)における分散温度は5〜50℃が好ましく、10〜35℃が更に好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
また、超音波ホモジナイザーを用いることもできる。例えば、超音波ホモジナイザーとしては、周波数20〜2000kHz、反応総液量の1リットル当たりのワット数が好ましくは20〜1000W、より好ましくは50〜800Wであるものが望ましい。かかる超音波分散機は、株式会社日本精機製作所、アレックス社等から市販されている。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
得られた原液分散体は、前記のとおり、顔料を含有するポリマー粒子が水を主媒体とする中に分散しているものである。
原液分散体中の顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径は、分散安定性、吐出性の観点から、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは70〜170nm、特に好ましくは90〜150nmである。なお、平均粒径は実施例に記載の方法で測定する。
原液分散体中の固形分濃度は、生産性と分離性の観点から、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜28重量%であり、これが、以下で説明する本発明における遠心分離操作の対象となる。
本発明のサーマルインクジェット記録用水分散体は、上記のようにして得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(原液分散体)を、更に下記工程(1)及び(2)に付すことにより製造される。
工程(1):顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を、遠心加速度が10,000〜30,000Gであり、遠心加速度と遠心分離時間との積が5000〜90,000G・hrである条件下で、分散液と沈殿成分とに遠心分離する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液の液面から、分散液量の70重量%以内の量を分取して、サーマルインクジェット記録用水分散体を得る工程
該ヘテロ凝集を起こし易い成分とは、顔料粒子や水不溶性ポリマー粒子同士が凝集した粗大粒子、顔料を含有する粒径の大きいポリマー粒子や、ポリマー中にしっかりと含有されていない粒径の小さい顔料粒子等であり、これらを遠心分離によりできるだけ低減させることが好ましい。その観点から、原液分散体に遠心分離処理を施す際の遠心加速度は好ましくは12,000G以上、より好ましくは15,000G以上である。
しかしながら、実際には遠心分離機の耐久性に上限があるため、遠心加速度は、好ましくは28,000G以下、より好ましくは26,000G以下である。これらの観点から、遠心加速度は、好ましくは12,000〜28,000G、より好ましくは15,000〜26,000Gである。
ここで、遠心加速度は、下記式により定義される。
遠心加速度[m/s2]=N2π2r/900
(式中、Nは1分あたりの回転数(min-1)、rは回転先端部までの半径(m)、πは円周率を示す。)
すなわち、単位「G」は、地平面上の重力の強さを基準とし、その何倍の強さの力がかかっているかを意味し、重力加速度(9.8m/s2)の倍数で示される。
遠心分離の時間については特に制限はなく、使用するスケールによっても異なるが、効率よく粒子径の大きい粒子を除くという観点から、10分〜3時間が好ましく、20〜90分がより好ましく、30〜60分が更に好ましい。
遠心分離操作では粒子径の大きい粒子は小さい粒子に比べて沈降する速度が速いことから、このように遠心分離機の液面から70重量%以内の量を水分散体として選択的に分取することによって、より効率的にヘテロ凝集を起こし易い粒子を取り除いた水分散体を得ることができる。
より具体的には、原液分散体のうち沈殿成分が好ましくは15重量%未満、分散液が85重量%以上、より好ましくは沈殿成分が10重量%未満、分散液が90重量%以上、更に好ましくは沈殿成分が8重量%未満、分散液が92重量%以上になるように遠心分離した後、分散液全体に対して、液面から70重量%以内の量、好ましくは65重量%以内の量、より好ましくは60重量%以内の量、更に好ましくは55重量%以内の量を水分散体として分取することが望ましい。
分散液から分取されない30重量%以上の量の分散液中には、主として顔料を含有していないポリマー粒子やポリマーに吸着していない顔料粒子が含まれている。これらの不良粒子が効果的に取り除かれることにより、得られる水分散体又は水系インクの吐出性が大幅に改善される。
また、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁に付着しているので、容易に取り除くことができる。
以上のようにして分取された水分散体は、顔料を含有するポリマー粒子、すなわち顔料を内包するポリマー粒子、ないしポリマーが顔料に吸着した粒子が水中に安定に分散した水分散体となっている。
水分散体の分取は、遠心分離終了後、好ましくは5分以内に行う。また、遠心分離操作中に、液面からスキミング法で水分散体を分取することもできる。
遠心沈降機としては、例えば、遠心沈降管型、円筒型、分離板型、バスケット型、スクリデカンター型等の遠心沈降機が挙げられるが、それらの中では、バスケット型遠心沈降機は、製品切り替え時の洗浄等の操作性に優れているので、好ましい。
バスケット型遠心沈降機の中では、上澄み液を効率的に分取する観点から、上澄み液にノズルを挿入して分取する機能(スキミング機能)を備えているものが好ましい。
周壁部に透過孔を有しない無孔壁タイプのバスケットは、微小な沈殿成分が液中に分散している原液分散体から粗大粒子を分離する場合に液層部を保持できる容量が大きいため、特に好ましい。
遠心分離機の運転方法にも特に制限はない。(i)原液分散体を供給しながら分離液層を分取する連続式、及び(ii)原液分散体を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を分取するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
図1は、本発明で用いられる無孔壁バスケット型遠心分離機の無孔壁バスケットの一例を示す概略縦断面図であり、図2は、無孔壁バスケットの内壁に仕切板が配設されたときの一例を示す概略縦断面図である。
図1に示すように、遠心分離機の無孔壁バスケット1をモータ6により回転させ、無孔壁バスケット1の内側に保持された分散液2と沈殿成分3に分離する。この際の遠心加速度、及び遠心加速度と遠心分離時間との積は、前記のとおりである。
次に、分散液2に、分散液分取り出しパイプ(スキミングパイプ)4のノズル先端の開口部を挿入することにより、遠心分離機内の分散液2(液相)の液面(表面層)から分散液の70重量%以内を、本発明の水分散液として分取することができる。水分散液の分取は、無孔壁バスケットの回転の運動エネルギーによってもよく、ポンプ等を用いてもよい。
また、回転数を変化させた際に液分がスリップして分離した沈殿成分を乱すのを防止する観点から、例えば、図2に例示するように、無孔壁バスケット1の内壁に仕切板5を配設してもよい。
前記のようにして得られる水分散体は、粗大粒子を除去するために、更にフィルターで濾過することが好ましい。用いられるフィルターの平均孔径は、3〜10μm、好ましくは3〜7μmである。
本発明の顔料を含有するポリマー粒子の水分散体及びそれを用いたインクジェット記録用水系インク中の水の含有量は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
本発明の水分散体の表面張力(20℃)は、好ましくは30〜65mN/m、更に好ましくは35〜60mN/mである。また、水系インクの表面張力(25℃)は、インクノズルからの良好な吐出性を確保する観点から、好ましくは20〜35mN/m、更に好ましくは25〜35mN/mである。
本発明の水分散体の10重量%の粘度(20℃)は、水系インクとした際に好ましい粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sが更に好ましい。また、本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。
本発明の水系インクは、通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。
得られる水分散体及び水系インクにおける、ポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量は、次の方法により測定した。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定方法
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)平均粒径の測定
粒径は、前述のとおり、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定する。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定濃度は、5×10-3重量%とする。
(3)固形分濃度の測定
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体1gと硫酸ナトリウム(芒硝)10gとを均一に混合し、蒸発皿10.5cm2に均一に広げて、105℃、2時間、−0.07MPaで減圧乾燥させ、乾燥後の水分散体の重量を測定し、次式により固形分濃度(重量%)を求めた。
固形分濃度(%)=(乾燥後の水分散体の重量/乾燥前の水分散体の重量)×100
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示す各モノマーの200部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。結果を表1に示す。
(b)スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製、商品名:AS−6(S)、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基、固形分濃度50%
(d)ポリエチレングリコールモノメタクリレート:新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルEH−4E、エチレンオキシド平均付加モル数=4、末端:2−エチルへキシル基
(1)顔料を含有するポリマー粒子の水分散体の製造
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をメチルエチルケトン70部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム溶液)6.7部(中和度75%)及びイオン交換水230部加えて塩生成基を中和し、これに更に顔料(C.I.ピグメントブラック7、キャボットスペシャルティケミカルズ社製、商品名:Monarch880)75部を加え、プライミクス株式会社製、TKロボミックス(商品名)+TKホモディスパー2.5型を用いて回転数8000/分で60分間分散し、さらに、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で180MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた分散液に、イオン交換水250部を加えて攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、原液分散体(固形分濃度25%)を得た。
得られた原液分散体を、日立工機株式会社製の冷却遠心分離機「himacCR22G」及びロータ(R12A 半径15.1cm)を用い、同社製遠心沈降管500PAボトルに300g入れて、12000回転/分で遠心加速度24300Gをかけ、この状態で30分間保持(12150G・hr)した。
遠心分離処理後、5分以内に、遠心沈降管内の分散液の液面を乱さないように遠心分離機及びロータから取り出し、液面の上部から水分散体を180gだけ分取した(液面から61重量%)。このとき、分取せずに廃棄した分散液は115gであり、さらに、遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は5gであった。
分取した分散液を5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過したのちに適宜イオン交換水で希釈して固形分濃度が20%になるように調整し、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。
上記(1)で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体25部、グリセリン7部、トリエチレングリコール7部、トリメチロールプロパン5部、アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド10モル付加物)0.5部、イオン交換水55.5部を混合して本発明のインクジェット記録用水系インクを得た。得られたインクは、1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過して、物性を評価した。
実施例1(1)において、遠心分離後、液面の上部から水分散体を150gだけ分取した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た(液面から51重量%)。このとき廃棄した分散液は145gであり、さらに、遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は5gであった。
得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を用いて、実施例1(2)と同様にして水系インクを得た。
実施例1において、日立工機株式会社製の冷却遠心分離機「himacCR22G」及びロータ(R12A、半径15.1cm)の代わりに、タナベウェルテック株式会社製BS−20型、を用い、20kgの分散液に15、000Gをかけ、この状態で60分間保持(15000G・hr)し、その後液面の上部から水分散体を12.2kgだけ分取する(液面から63.5重量%)。
尚、本装置は連続式の遠心分離装置であるため、20kgの分散液はバスケット内の滞留時間が60分となるように徐々に供給され、また分取もそれにつれて連続的に行われる。
このとき、分取せずに廃棄した分散液は7.0kgであり、さらに、遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は0.8kgであった。
この分取した分散液12.2kgを5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過したのちに適宜イオン交換水で希釈して固形分濃度が20%になるように調整し、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。
実施例1(1)において、遠心分離後、分散液295g全てを分取した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が20%の、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。このとき遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は5gであった。
得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を用いて、実施例1(2)と同様にして水系インクを得た。
比較例2
実施例1(1)において、遠心分離後、液面の上部から分散液を240gだけ分取した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が20%の、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た(液面から81重量%)。このとき廃棄した水分散液は55gであり、さらに、遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は5gであった。
得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を用いて、実施例1(2)と同様にして水系インクを得た。
実施例1において、遠心分離操作を7000回転/分として遠心加速度8270Gをかけ、この状態で30分間保持(4135G・hr)した。
30分経過後、遠心沈降管内の分散液の液面を乱さないように遠心分離機及びロータから取り出し、液面の上部から分散液を180gだけ分取した以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が20%の、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た(液面から60重量%)。このとき、分取せずに廃棄した分散液は119gであり、さらに、遠心沈降管の底部に付着した沈殿成分は1gであった。
得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を用いて、実施例1(2)と同様にして水系インクを得た。
(吐出性の評価)
調製した水系インクを市販のサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン株式会社製、商品名PIXUS iP3500)を用い、普通紙(ゼロックス社製、商品名4200)に10枚ベタ印字して、10枚目の印字状態を観察し、以下の4段階の基準で評価した。
4:スジやムラが全くない
3:スジやムラがほとんどない
2:スジはないがムラの発生が認められる
1:スジがある
なお、「スジ」とはインクが印字されていない部分をいい、「ムラ」とはインクは印字されているが濃度が薄くなっている部分をいう。
2:分散液
3:沈殿成分
4:液分取り出しパイプ
5:仕切板
6:モータ
Claims (5)
- 下記工程(1)及び(2)を有するサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程(1):顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を、遠心加速度が10,000〜30,000Gであり、遠心加速度と遠心分離時間との積が5000〜90,000G・hrである条件下で、分散液と沈殿成分とに遠心分離する工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液の液面から、分散液量の70重量%以内の量を分取して、サーマルインクジェット記録用水分散体を得る工程 - ポリマー粒子を構成するポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル系マクロマー(b)由来の構成単位、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル又はアリールエステル(c)由来の構成単位、及び下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸のアルカンジイルオキシドエステル(d)由来の構成単位から選ばれる1種以上の構成単位とから本質的になる、請求項1に記載のサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法。
CH2=C(R1)COO(R2O)qR3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数2又は3の炭化水素基、R3は水素原子又は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示し、qは平均付加モル数を示し1〜60の数である。) - 工程(1)における顔料を含有するポリマー粒子の水分散体の固形分濃度が10〜30重量%である、請求項1又は2に記載のサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 無孔壁バスケット型遠心分離機を用いて遠心分離する、請求項1〜3のいずれかに記載のサーマルインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られるサーマルインクジェット記録用水分散体を含有するサーマルインクジェット記録用水系インク。
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