JP2015101621A - インクジェット記録用顔料水分散体の製造方法 - Google Patents

インクジェット記録用顔料水分散体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吐出耐久性に優れ、かつ、印字濃度が高いインクを与えるインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、及びその方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体を提供する。
【解決手段】[1]水、顔料、水分散性ポリマー、及び水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して顔料分散体を得る製造工程(1)、得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4〜48時間保持する製造工程(2)、及び有機溶媒を除去して顔料水分散体を得る製造工程(3)を有するインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、並びに[2]顔料粒子の体積平均粒径が40〜150nmである前記[1]の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、及びその方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、インクジェット記録方式において、着色剤として顔料を用いるインクジェット記録用インクが広く用いられている。
顔料インクは、顔料をポリマー分散剤の存在下で機械力によって分散させることで作製されるが、顔料へのポリマーの吸着性の問題から、顔料粒子の長期保存安定性に問題があった。この問題に対し、水不溶性ポリマーを分散剤に用いた顔料インクが提案され、長期保存性等の顔料インク固有の課題を解決する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、硬質化したポリマービーズを用いて顔料を分散する際に、弱いせん断力で分散した後、強いせん断力で分散させるインクジェットインクの製造方法が開示されている。
特許文献2には、水不溶性ポリマーを溶媒に溶解し、メディア分散した後、100〜150℃で4時間程度加熱し、最後に溶媒を除去することで、耐熱履歴性と耐光性を改善した顔料分散体の製造方法が開示されている。
特許文献3には、水不溶性ポリマーを溶媒に溶解し、高圧分散処理し、水を加えて撹拌した後、溶媒を除去することで、色材安定化を行うインクの製造方法が開示されている。
特許文献4には、水不溶性ポリマーを溶媒に溶解し、機械力により顔料粒子を分散させた後、50〜90℃で2時間程度加熱し、最後に溶媒を除去することで、顔料表面にポリマーを安定化させ、インク粘度を低下させる水系インクの製造方法が開示されている。
特許文献5には、水不溶性ポリマーを溶媒に溶解し、顔料粒子を分散処理した後、溶媒を除去し、最後に40℃以上で加熱処理することで、吐出性を改善したインクジェット記録用水分散体の製造方法が開示されている。
特開2001−26733号公報 特開2005−015550号公報 特開2007−99915号公報 特開2008−163131号公報 特開2009−155568号公報
本発明は、吐出耐久性に優れ、かつ、印字濃度が高いインクを与えるインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、及びその方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の問題を解決するためには、顔料に対するポリマーの吸着性を高めつつ、顔料表面にポリマーを吸着させて得られる顔料粒子の電気反発性がインク全体で均一になることが望ましいと考えて検討を行った。
その結果、顔料へのポリマー吸着に関して、水に対する溶解度が小さい特定の有機溶媒を使用し、顔料粒子が特定の平均粒径以下になるように分散した後、ポリマーが顔料に吸脱着平衡する環境下で顔料粒子を特定時間保持することにより、電気反発性が均一な顔料水分散体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]に関する。
[1]下記の製造工程(1)、(2)及び(3)を有するインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法。
製造工程(1):水、顔料、水分散性ポリマー、及び20℃における水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して、顔料分散体を得る製造工程。
製造工程(2):製造工程(1)で得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持する製造工程。
製造工程(3):製造工程(2)で得られた顔料分散体の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程。
[2]動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が40nm以上150nm以下である前記[1]の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
本発明によれば、吐出耐久性に優れ、かつ、印字濃度が高いインクを与えるインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、及びその方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体を提供することができる。
規格化ゼータ電位分布1を得る工程(i)の模式図である。 規格化ゼータ電位分布2を得る工程(ii)の模式図である。 規格化ゼータ電位分布3を得る工程(iii)の模式図である。 規格化ゼータ電位分布4を得る工程(iv)の模式図である。 散乱強度面積比を求める範囲の模式図である。
本発明方法により得られる顔料水分散体から調製されるインクジェット記録用水系インクが、吐出耐久性に優れる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
インクジェット記録ヘッドは半導体製造プロセス等の微細加工技術を用いて製造されており、微小な管内をインクが滞りなく流動することが求められる。インク流路中でインクの堆積等が発生し易いインクでは、インク流路に抵抗が生じ易くなるため、吐出ノズルにおけるインク液滴のメニスカス形状が不安定となり易く、吐出不安定、ひいては吐出不能となるおそれがある。
また、特にポリマー分散剤を含む水系インクは、吐出ノズル開口部で乾燥した際にノズル開口部でのインク増粘により、目詰まりや吐出曲がりが発生し易い。この現象は、ノズル開口部では水分が乾燥することにより顔料粒子(即ち、水分散性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子)同士の距離が狭まり、かつ、インクに含まれる溶媒成分全体の比誘電率が低下することにより、顔料粒子間の電荷反発力が低下し、顔料粒子が凝集することで目詰まり、吐出曲がりが発生すると考えられる。
また、このような顔料粒子の凝集現象において、ヘテロ凝集と呼ばれる現象も関係すると考えられる。ヘテロ凝集とは、ゼータ電位の異なる顔料粒子が同一の系内に存在することで凝集が引き起こされる現象であり、一般的には異種粒子間に発生する。本発明では、体積平均粒径が180nm以下の顔料分散体を、製造工程(2)で40℃以下で所定時間保持することにより、顔料表面に吸着した水分散性ポリマーの吸着状態が顔料粒子間で均一となり、顔料粒子におけるゼータ電位のばらつきを低下させることができるため、ヘテロ凝集を抑制でき、吐出耐久性を改善することができたと考えられる。
また、インクジェット用サーマル記録ヘッドは、ヒータの加熱によってインク中の水に膜沸騰を起こさせ、その際に生じる衝撃波によってインクを吐出させる。その際、ヒータの表面が300℃以上に昇温されるため、ヒータ表面にインク成分が焦げ付く、いわゆるコゲーション現象が見られ、吐出耐久性が問題となる。
前記ヒータは主として金属酸化物で形成されており、アニオン性インクが安定化するpH7〜11の環境では、ヒータ表面がわずかに負に帯電し、インク中の陽イオン、例えば中和剤由来のナトリウムイオンを引き寄せている。一方、インク中の顔料粒子も負に帯電しているため、顔料表面にもナトリウムイオンが引き寄せられている。
この顔料粒子が、ヒータ表面に近づくと、ヒータと顔料粒子間に存在するナトリウムイオン濃度が上昇するため、インクバルク中のナトリウム濃度との差から浸透圧が発生し、顔料粒子はヒータから離れる方向に浸透圧による斥力を受ける。
このため、顔料粒子の表面電位が高い場合、顔料粒子自体がヒータに近づきにくく、加熱されたヒータ表層での顔料粒子の焦げ付きが抑制される。本発明では、製造工程(2)で顔料分散体を40℃以下で特定時間保持することにより、顔料粒子におけるゼータ電位のばらつきが減少し、表面電位が低い顔料粒子が減少するため、ヒータ表層で顔料粒子が焦げ付くのを防止できると考えられる。
本発明のインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法は、下記の製造工程(1)、(2)及び(3)を有する。
製造工程(1):水、顔料、水分散性ポリマー、及び20℃における水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して、顔料分散体を得る製造工程。
製造工程(2):製造工程(1)で得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持する製造工程。
製造工程(3):製造工程(2)で得られた顔料分散体の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程。
<製造工程(1)>
製造工程(1)は、水、顔料、水分散性ポリマー、及び20℃における水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して、顔料分散体を得る製造工程である。
[顔料]
本発明に用いられる顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料としては、いわゆる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、アニオン性親水基又はカチオン性親水基の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。ここで、アニオン性親水基としては、特にカルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO31)が好ましく(前記式中、M1は、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムである)、カチオン性親水基としては、第4級アンモニウム基が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
顔料の含有量は、顔料水分散体の分散安定性、及びこの顔料水分散体から得られる水系インク(以下、単に「水系インク」という)の保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点、顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、製造工程(1)における水、顔料、水分散性ポリマー、有機溶媒、及び必要に応じて添加する中和剤等を含有する全混合物(以下、「製造工程(1)における全混合物」ともいう)中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
[水分散性ポリマー]
本発明に用いられる水分散性ポリマーとは、常温で水又は水を主成分とする媒体に分散可能なポリマーを意味し、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
また、水分散性ポリマーとしては、イオン性基を含むモノマー(以下、「イオン性モノマー」ともいう)を共重合してなるものが好ましい。さらに、水分散性ポリマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、疎水性モノマー(a)(以下、「(a)成分」ともいう)と、イオン性モノマー(b)(以下、「(b)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このポリマーは、(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有する。
また、本発明に用いられるポリマーには、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、更にノニオン性モノマー(c)(以下、「(c)成分」ともいう)をモノマー成分として用いるのが好ましい。
ビニル系ポリマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、(a)成分と、(b)成分と、更に必要に応じて(c)成分を含むモノマー混合物を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位及び(b)成分由来の構成単位を有し、必要に応じて更に(c)成分由来の構成単位を有する。
<疎水性モノマー(a)>
疎水性モノマー(a)としては、芳香族基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基含有モノマーとしては、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマーや芳香族基含有(メタ)アクリレート等がより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーを併用することも好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートの双方を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。
疎水性モノマー(a)として、マクロマーを用いることもできる。
マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、数平均分子量1,000〜10,000の化合物が好ましい。
なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定される値である。
片末端に存在する重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
マクロマーとしては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記疎水性モノマー(a)で記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社製の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
<イオン性モノマー(b)>
イオン性モノマー(b)は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、モノマー成分として用いることができる。
イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点、吐出耐久性を向上させる観点から、アニオン性モノマーが好ましい。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましく、メタクリル酸が更に好ましい。
<ノニオン性モノマー(c)>
ノニオン性モノマー(c)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等のアラルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。中でもアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
商業的に入手しうる(c)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステルM−20G、同40G、同90G、EH−4E等、日油株式会社製のブレンマーPE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。これらの中では、特に印字濃度の観点から、新中村化学工業株式会社製のNKエステルEH−4E(ポリエチレングリコール[n=4]メタクリレート2−エチルヘキシルエーテル)が好ましい
上記(a)成分、(b)成分、(c)成分の各成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水分散性ポリマー製造時における、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、すなわち水分散性ポリマー中における(a)成分、(b)成分、(c)成分に由来の構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは48質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(b)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは21質量%以下である。
(c)成分の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である。
水分散性ポリマーは、上記の疎水性モノマー(a)、イオン性モノマー(b)、更に必要に応じてノニオン性モノマー(c)、及びその他のモノマーの混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる有機溶媒に制限はないが、モノマーの共重合性の観点から、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。中でもアゾ化合物が好ましく、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤が上げられるが、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。重合時間は、好ましく1時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましく10時間以下である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
(水分散性ポリマーの重量平均分子量)
水分散性ポリマーの重量平均分子量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点及び印字濃度が高い印刷物を得る観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは4万以上、より更に好ましくは5万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、より更に好ましくは15万以下、より更に好ましくは10万以下である。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の方法により求めることができる。
(水分散性ポリマーの含有量)
水分散性ポリマーの含有量は、顔料水分散体の分散安定性、及び得られる水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、製造工程(1)における全混合物中、好ましくは1.5質量%以上、より好ましく2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.0質量%が以下である。
[有機溶媒]
本発明において、有機溶媒はポリマーとの親和性が高く、一方で、製造工程(1)において主媒体である水に対する溶解度が小さいことが望ましい。その観点から、20℃における水に対する溶解度が40質量%未満であることが必要であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、そして、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
有機溶媒としては、炭素数2〜8の脂肪族アルコール、ケトン、エーテル、エステル等が好ましく、脂肪族アルコールとしては、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトンとしては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテルとしては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。顔料への濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、ケトンが好ましく、メチルエチルケトン(水に対する溶解度22質量%)がより好ましい。
製造工程(1)における有機溶媒の含有量は、顔料の濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、製造工程(1)における全混合物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは13質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下である。なお、有機溶媒を2種以上含む場合は、それらの合計量を有機溶媒量として算出する。以下においても同様である。
製造工程(1)における、有機溶媒に対する水分散性ポリマーの質量比(水分散性ポリマー/有機溶媒)は、顔料の濡れ性及び顔料へのポリマーの吸着性を向上させる観点から、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.45以下である。
製造工程(1)における水の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、顔料分散体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましく75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
製造工程(1)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)は、顔料の濡れ性改善による分散進行性と、ポリマーの顔料への吸着性の観点から、好ましくは0.27以上、より好ましくは0.29以上であり、そして、好ましくは0.50以下である。
(ポリマーの中和)
本発明においては、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、水分散性ポリマーのイオン性基、好ましくはアニオン性基、を中和するために、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いる場合、顔料水分散体のpHが7〜11になるように中和することが好ましい。
用いられる中和剤としては、イオン性基がアニオン性基である場合、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア等の揮発性塩基、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが挙げられ、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、揮発性塩基が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましい。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。
中和剤は、十分に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、十分に中和を促進させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましく10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
中和剤及び中和剤水溶液は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリマーの中和剤量から計算される中和度は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは100モル%以上であり、そして、好ましくは400モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤量から計算される値、すなわち中和剤のモル当量をポリマーのイオン性基のモル量で除したものであり、イオン性基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の質量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの質量(g)/(56×1000)]}×100
また中和剤として揮発性塩基を用いた場合、製造工程(1)における顔料分散体の中和度と、製造工程(3)を経て作製される顔料分散体及び水系インクの中和度を変更することができる。具体的には、アンモニア等を用い、製造工程(1)ではポリマーのアニオン性基のモル量に対し過剰に中和剤を投入し、製造工程(3)にてアンモニア等の揮発性塩基を除去することで、水系インクとして所望の中和度とすることができる。揮発性塩基を用いる場合の中和度は、好ましくは0モル%以上であり、そして、好ましくは300モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。なお、揮発性塩基を用いる場合の中和度0モル%とは、揮発性塩基を全く用いない場合である。
(分散処理)
製造工程(1)では前記混合物を分散して、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して顔料分散体を得る。分散処理方法に特に制限はないが、分散処理後の顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理を行う。分散処理後の顔料粒子の体積平均粒径は、水系インク中で顔料粒子が沈降するのを防止する観点から、好ましくは150nm以下、より好ましくは125nm以下であり、そして、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上である。顔料粒子の体積平均粒径は、実施例に記載の法で測定することができる。
本分散一回だけで顔料粒子の体積平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行う2段階分散を行い、顔料粒子の体積平均粒径を所望の値とするよう制御することが好ましい。
予備分散における温度は、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。予備分散における分散時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
前記混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力や分散処理のパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、好ましくは60MPa以上、より好ましく100MPa以上、更に好ましくは150MPa以上であり、そして、好ましくは250MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは180MPa以下である。
また、分散処理のパス回数は、好ましくは3パス以上、より好ましくは10パス以上、更に好ましくは15パス以上であり、そして、好ましくは30パス以下、より好ましくは25パス以下、更に好ましくは20パス以下である。
<製造工程(2)>
製造工程(2)は、製造工程(1)で得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持する製造工程である。
顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持することで、顔料へのポリマーの吸着均一性を高めることができる。
水を添加した顔料分散体を保持する温度は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。
また、水を添加した顔料分散体を保持する時間は、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは6時間以上であり、そして、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
製造工程(2)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)は、好ましくは0.29以下であり、より好ましくは0.27以下であり、そして、好ましくは0.10以上、より好ましくは、0.15以上、更に好ましくは0.20以上である。
製造工程(2)において、水を添加した顔料分散体を保持する際には、密封下で減圧することが好ましい。これは減圧することで、顔料分散体中の溶存気体が気泡として排出され易くなり、ポリマーの疎水性基が顔料表面に吸着し易くなると考えられるからである。
密封容器内の圧力は、好ましくは5kPa以上、より好ましくは8kPa以上、更に好ましくは10kPa以上であり、そして、好ましくは100kPa以下、より好ましくは50kPa以下である。
また、質量比(有機溶媒/水)を調整した後の顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、製造工程(3)の有機溶媒を除去する過程で凝集物の発生を抑制する観点、及び顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
製造工程(2)において、顔料分散体に水を添加した後、撹拌しても、撹拌しなくてもよいが、顔料分散体の液温を均一にする観点から、発泡の抑制可能な範囲で撹拌することがより好ましい。
<製造工程(3)>
製造工程(3)は、製造工程(2)で得られた顔料分散体の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程である。
有機溶媒を除去する方法に特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。なお、製造工程(2)で得られた顔料分散液に含有される水の一部が有機溶媒と同時に除去されてもよい。
本製造工程において用いられる有機溶媒を除去するための装置としては、回分単蒸留装置、減圧蒸留装置、フラッシュエバポレーター等の薄膜式蒸留装置、回転式蒸留装置、攪拌式蒸発装置等が挙げられる。効率よく有機溶媒を除去する観点から、回転式蒸留装置及び攪拌式蒸発装置が好ましく、回転式蒸留装置がより好ましく、ロータリーエバポレーターが更に好ましい。
有機溶媒を除去する際の分散処理物の温度は、用いる有機溶媒の種類によって適宜選択できるが、減圧下、好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。このときの圧力は、好ましくは5kPa以上、より好ましくは8kPa以上、更に好ましくは10kPa以上であり、そして、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、更に好ましくは20kPa以下である。有機溶媒の除去時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、更に好ましくは10時間以下である。
得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
得られた顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上であり、そして、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは22質量%以下である。
[インクジェット記録用顔料水分散体]
本発明のインクジェット記録用顔料水分散体は、本発明のインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法により得られるもので、水分散性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子(固体分)が水を主媒体とする中に分散しているものである。顔料粒子は、例えば、ポリマーに顔料が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等を包含する。
本発明のインクジェット記録用顔料水分散体は、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が40nm以上150nm以下である。顔料粒子の体積平均粒径は、製造工程(1)での分散処理や揮発性塩基の除去、分級操作等により調整することができる。
顔料水分散体中の顔料粒子の体積平均粒径は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点、及び印字濃度が高い印刷物を得る観点から、40nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上であり、そして、150nm以下、好ましくは140nm以下、より好ましくは130nm以下である。
なお、顔料粒子の体積平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
顔料水分散体における、水分散性ポリマー量に対する顔料量の質量比(顔料/水分散性ポリマー)は、顔料水分散体の分散安定性、及び得られる水系インクの保存安定性、吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは70/30以下であり、そして、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上である。
本発明の顔料水分散体は、吐出耐久性を向上させる観点、及び印字濃度が高い印刷物を得る観点から、顔料水分散体中の顔料粒子の動的光散乱法においてブラウン運動の影響を排除した際に得られるゼータ電位分布において、以下の散乱強度面積比を有することが好ましい。
すなわち、本発明の顔料水分散体は、下記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−60mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が40%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、より更に好ましくは5%以下であることが好ましい。
工程(i):測定セル中の粒子に電界を作用させないでゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程。
工程(ii):測定セル中の粒子に第2の電界を作用させてゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程。
工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程。
工程(iv):規格化ゼータ電位分布3を1mV刻みでヒストグラム化し、規格化することで規格化ゼータ電位分布4を得る工程。
また、上記と同様の観点から、前記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−58mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が、好ましくは全体の10%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは4%以下、より更に好ましくは2%以下であり、さらに、0〜−55mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が、好ましくは全体の5%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下、より更に好ましくは0%である。
なお、「電界を作用させない」とは0V/mの電界を作用させることを意味する。また、ゼータ電位分布の規格化は、ピーク最大強度が1となるように、1mV毎の各ピーク強度をピーク最大強度値で除することにより行う。
ゼータ電位分布の測定方法は、動的光散乱法であることが好ましく、ゼータ電位分布の散乱強度面積比は実施例に記載の方法により求めることができる。
図1に規格化ゼータ電位分布1を得る工程(i)の模式図を示し、図2に規格化ゼータ電位分布2を得る工程(ii)の模式図を示し、図3に規格化ゼータ電位分布3を得る工程(iii)の模式図を示し、図4に規格化ゼータ電位分布4を得る工程(iv)の模式図を示し、図5に散乱強度面積比を求める範囲の模式図を示す。
本発明の顔料水分散体の表面張力(20℃)は、好ましくは30mN/m以上、より好ましくは35mN/m以上であり、そして、65mN/m以下、より好ましくは60mN/m以下である。
本発明の、顔料水分散体の20質量%(固形分)の粘度(20℃)は、水系インクとした際に好ましい粘度とするために、好ましくは2mPa・s以上であり、好ましくは6mPa・s以下、より好ましくは5mPa・s以下である。
なお、粘度は実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の水分散体はそのまま水系インクとして用いることができるが、必要に応じて、さらに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加して調製することができる。
[インクジェット記録用水系インク]
インクジェット記録用水系インクは、本発明のインクジェット記録用顔料水分散体に、各種の添加剤、水を添加して製造することができる。
水系インク中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
顔料の含有量は、インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点、印字濃度が高い印刷物を得る観点から、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
水分散性ポリマーの含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点、印字濃度が高い印刷物を得る観点から、水系インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは1.8質量以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量以下である。
水の含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
水系インクの20℃における静的表面張力は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは25mN/m以上、より好ましくは30mN/m以上、更に好ましくは32mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは38mN/m以下である。
また、水系インクの35℃における粘度は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上であり、より好ましくは1.5mPa・s以上であり、更に好ましくは2mPa・s以上であり、そして、好ましくは10mPa・s以下であり、より好ましくは7mPa・s以下であり、更に好ましくは4mPa・s以下である。
水系インクは、必要に応じて、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、界面活性剤等の分散剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の粘度調整剤、シリコーン油等の消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してインク物性を調整することができる。
湿潤剤、浸透剤としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類等が挙げられ、グリセリン、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンが好ましい。これらの中でも、水系インク中で、顔料粒子間の電荷反発力を阻害せずに立体的反発を付与して顔料粒子の凝集を抑制することにより、さらに吐出耐久性を向上する観点から、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールの平均分子量は、顔料粒子間の立体的反発を付与する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上であり、水系インクの粘度増加を抑制する観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、より更に好ましくは1500以下である。
界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
得られる水系インクにおける、顔料粒子の体積平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下である。
なお、顔料粒子の体積平均粒径は実施例に記載の方法により測定することができる。
インクジェット記録方式は特に制限されず、ピエゾ方式等の電気−機械変換方式、サーマル方式等の電気−熱変換方式等いずれの吐出方式にも用いることができる。
本発明のインクジェット記録用顔料水分散体を含む水系インクに含まれる顔料粒子は、コゲーション現象に対する抑制効果がある点で、サーマル方式のインクジェット記録方式に用いることが好ましい。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法、及びインクジェット記録用顔料水分散体を開示する。
<1> 下記の製造工程(1)、(2)及び(3)を有するインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法。
製造工程(1):水、顔料、水分散性ポリマー、及び20℃における水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して、顔料分散体を得る製造工程。
製造工程(2):製造工程(1)で得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持する製造工程。
製造工程(3):製造工程(2)で得られた顔料分散体の有機溶媒を除去し、顔料水分散体を得る製造工程。
<2> 有機溶媒の20℃における水に対する溶解度が、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、そして、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上である、前記<1>に記載の顔料水分散体の製造方法。
<3> 有機溶媒がメチルエチルケトンである、前記<1>又は<2>に記載の顔料水分散体の製造方法。
<4> 製造工程(1)における分散処理を、顔料粒子の体積平均粒径が、好ましくは150nm以下、より好ましくは125nm以下となり、そして、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上となるまで行う、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<5> 製造工程(2)において、水を添加した顔料分散体を保持する温度が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<6> 製造工程(2)において、水を添加した顔料分散体を保持する時間が、好ましくは6時間以上であり、そして、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<7> 製造工程(1)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)が、好ましくは0.27以上、より好ましくは0.29以上であり、そして、好ましくは0.50以下である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<8> 製造工程(2)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)が、好ましくは0.29以下であり、より好ましくは0.27以下であり、そして、好ましくは0.10以上、より好ましくは、0.15以上、更に好ましくは0.20以上である、前記<1>〜<7>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<9> 水分散性ポリマーが、イオン性基を含むモノマー(b)を共重合してなるものである、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<10> 水分散性ポリマーが、疎水性モノマー(a)と、イオン性基を含むモノマー(b)とを含むモノマー混合物を共重合させてなるものである、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<11> 水分散性ポリマーが、疎水性モノマー(a)と、イオン性基を含むモノマー(b)と、更にノニオン性モノマー(c)を含むモノマー混合物を共重合させてなるものである、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<12> 水分散性ポリマー中の疎水性モノマー(a)由来の構成単位の含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは48質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、前記<10>又は<11>に記載の顔料水分散体の製造方法。
<13> 水分散性ポリマー中のイオン性基を含むモノマー(b)由来の構成単位の含有量が、好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは21質量%以下である、前記<9>〜<12>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<14> 水分散性ポリマー中のノニオン性モノマー(c)由来の構成単位の含有量が、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である、前記<11>〜<13>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<15> 水分散性ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは4万以上、より更に好ましくは5万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、より更に好ましくは15万以下、より更に好ましくは10万以下である、前記<11>〜<14>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<16> 顔料粒子が、水分散性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
<17> 動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下である、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
<18> 水分散性ポリマー量に対する顔料量の質量比(顔料/水分散性ポリマー)が、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは70/30以下であり、そして、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上である、前記<1>〜<17>のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
<19> 顔料水分散体の表面張力(20℃)が、好ましくは30mN/m以上、より好ましくは35mN/m以上であり、そして、65mN/m以下、より好ましくは60mN/m以下である、前記<1>〜<18>のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
<20> 顔料水分散体の20質量%(固形分)の粘度(20℃)は、水系インクとした際に好ましい粘度とするために、好ましくは2mPa・s以上であり、好ましくは6mPa・s以下、より好ましくは5mPa・s以下である、前記<1>〜<19>のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
<21> 下記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−60mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が40%以下である、前記<17>〜<20>のいずれかに記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
工程(i):測定セル中の粒子に電界を作用させないでゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程。
工程(ii):測定セル中の粒子に第2の電界を作用させてゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程。
工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程。
工程(iv):規格化ゼータ電位分布3を1mV刻みでヒストグラム化し、規格化することで規格化ゼータ電位分布4を得る工程。
<22> 前記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−58mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が10%以下である、前記<21>に記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
<23> 前記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−55mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が5%以下である、前記<21>に記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
<24> ゼータ電位分布の測定方法が動的光散乱法である、前記<21>〜<23>のいずれかに記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
なお、ポリマーの重量平均分子量、ポリマー溶液及び顔料水分散体の固形分濃度、顔料分散体及び顔料水分散体中の顔料粒子の体積平均粒径、水系インクの表面張力、水系インクの粘度、ゼータ電位分布の測定は、以下の方法により行った。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として、予め重量平均分子量が単分散で特定されているポリスチレンを用いて測定した。
(2)ポリマー溶液、顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプレピレン製容器(40mmφ、高さ30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(3)顔料分散体及び顔料水分散体中の顔料粒子の体積平均粒径
製造工程(1)で得られた顔料分散体、又は製造工程(3)で得られた顔料水分散体を、予め0.2μmのフィルターでろ過したイオン交換水を用いて希釈し、大塚電子株式会社製、レーザー粒径解析システム「ELS−6100」を用いて、25℃にて、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径を測定した。
(4)水系インクの表面張力
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて水系インクの静的表面張力を測定した。
(5)水系インクの粘度
東機産業株式会社製のE型粘度計RE80を用い、測定温度20℃、測定時間1分、回転数100rpm、ロータは標準(1°34′×R24)を使用して、粘度を測定した。
(6)ゼータ電位分布の測定
ゼータ電位測定機(大塚電子株式会社製、商品名:ELSZ−1000)を用いて、以下の条件下で測定した。測定セル及びユニットは希釈測定用ガラスセル及びユニットを用いた。測定液の調製は、固形分濃度20%の顔料水分散体を用い、予め1×10-2〜1×10-4Nの濃度に調整した水酸化ナトリウム水溶液によって顔料水分散体の固形分濃度が0.01wt%、希釈液のpHが9.5になるように希釈した後、ろ過孔径0.45μmのザルトリウス社製フィルターを用いてろ過することで行った。測定は以下の条件下で行った。
(i)装置測定条件
・ベース測定における光量調整:有り、泳動方向テストによる光量調整:無し
・電気泳動測定の測定繰り返し回数:6、電気泳動測定における光量調整:有り
・測定前待ち時間:0、測定後待ち時間:0、ピンホール:50μm
・光量最適値:80000、光量最大値:100000、光量最小値:40000
(ii)セル条件
・測定シーケンス:Type2
・セル選択:Flow Cell、セル種:Flow Cell、セル定数:70
・センター位置Z軸:6、センター位置X軸:7.11
・相関計:Linear
(iii)ベース測定条件
・積算回数:100回、相関方法:TD:タイムドメイン法
・サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回
・モジュレータディレイ:0.15、モジュレータ時間:1.024秒
(iv)電気泳動方向テスト条件
・積算回数:2回、相関方法:TD:タイムドメイン法
・泳動サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回
・モジュレータディレイ:0.15、モジュレータ時間:1.024秒
・印加電圧波形タイプ:Negative
・印加電圧:60V、電極間距離:50mm
・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒
・泳動切り替えwait比:0.1024、定電流:51
(v)電気泳動測定1の条件
・積算回数:100回
・セル測定位置:0.65/0.35/0/−0.35/−0.65、相関方法:TD:タイムドメイン法
・サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回
・モジュレータディレイ:0.15秒、モジュレータ時間:1.024秒
・印加電圧:Fixed、印加電圧:0V(電界:0V/m、電界を作用させない)
・電極間距離:50mm、印加電圧波形タイプ:Auto、定電流:51
・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒
・泳動切り替えwait比:0.1024
(vi)電気泳動測定2の条件
・積算回数:100回
・セル測定位置:0.65/0.35/0/−0.35/−0.65、相関方法:TD
・サンプリング時間:800マイクロ秒、相関チャンネル数:512回
・モジュレータディレイ:0.15秒、モジュレータ時間:1.024秒
・印加電圧:Fixed、印加電圧:60V(電界:1200V/m)
・電極間距離:50mm、印加電圧波形タイプ:Auto、定電流:51
・Voltage delay:0.2秒、Voltage applytime:1.024秒
・泳動切り替えwait比:0.1024
(vii)溶媒条件
・溶媒選択:WATER、屈折率:1.33、粘度:0.89、誘電率:78.3
(viii)解析条件
・FFTフィルタ:BLACKMAN、データ量:1024、スムージング:LOW
・ローレンツフィット:1peak、ゼータ電位換算式:Smoluchowski
・FFTフィルタ(ベース):BLACKMAN、データ量(ベース):1024
・スムージング(ベース):LOW、ローレンツフィット(ベース):1peak
・FFTフィルタ(泳動方向):BLACKMAN、データ量(泳動方向):1024
・スムージング(泳動方向):LOW、ローレンツフィット(泳動方向):1peak
(1)ゼータ電位測定工程(i):規格化ゼータ電位分布1の取得
電気泳動測定1の測定結果のセルの測定位置のうち、セル測定位置ゼロのデータのみを用いて、ゼータ電位分布1を得た。得られた測定結果において、散乱強度のピークトップの周波数をゼロとして、ピーク強度が1になるよう規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得た。
(2)ゼータ電位測定工程(ii):規格化ゼータ電位分布2の取得
上記工程(i)と同様の方法により、電気泳動測定2から規格化ゼータ電位分布2を得た。
(3)ゼータ電位測定工程(iii):規格化ゼータ電位分布3の取得
(a)規格化ゼータ電位分布1及び2にて、規格化した強度の0.02〜1.0の範囲における周波数の正側の値を0.01刻みで読み取った。
(b)強度毎に、規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の正側の値の差分を求める。次いで((電気泳動測定2における印加電圧)/((電気泳動測定2における印加電圧)−(電気泳動測定1における印加電圧))で得られる補正値と規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の正側の差分値の積をそれぞれ求めた。
(c)同様に、規格化ゼータ電位分布1及び2にて、規格化した強度の0.02〜1.0の範囲における周波数の負側の値を0.01刻みで読み取った。
(d)強度毎に、規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の負側の値の差分を求める。次いで((電気泳動測定2における印加電圧)/((電気泳動測定2における印加電圧)−(電気泳動測定1における印加電圧))で得られる補正値と規格化ゼータ電位分布1と2の周波数の負側の差分値の積をそれぞれ求めた。
(e)得られた正側と負側の周波数の差分をX軸に、強度をY軸に再プロットし、規格化ゼータ電位分布3を得た。
(4)ゼータ電位測定工程(iv):規格化ゼータ電位分布3のヒストグラム化
(a)電気泳動測定2で得られたゼータ電位平均値を規格化ゼータ電位分布3のピークとして換算し、ゼータ電位分布3を得た。
(b)得られたゼータ電位分布3を、X軸をゼータ電位値、Y軸を規格化された出現頻度のヒストグラムとして再プロットし、各ゼータ電位値毎の出現頻度を積算した上で再度規格化した。これを顔料水分散体中の粒子が持つゼータ電位分布4とした。
(5)ゼータ電位測定工程(v):ヒストグラムの面積計算
ゼータ電位分布4において、ゼータ電位の値が0から−55mVまでの範囲と、ゼータ電位分布4と散乱強度ゼロの線で挟まれた面積の割合を読み取り、ゼータ電位0〜−55mVの散乱強度面積(%)とした。同様に、ゼータ電位が0から−58mVまでの範囲からゼータ電位0〜−58mVの散乱強度面積比(%)を、ゼータ電位が0から−60mVまでの範囲からゼータ電位0〜−60mVの散乱強度面積比(%)を求めた。結果を表2に示す。この値はどれも小さいほど好ましい。
製造例1(水分散性ポリマーの製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」欄に示す組成のモノマー、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、表1の「滴下モノマー溶液1」欄及び「滴下モノマー溶液2」欄に示す組成のモノマー、有機溶媒(メチルエチルケトン(MEK))、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)、及び重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液1と滴下モノマー溶液2を調製し、それぞれ滴下ロート1及び2の中に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら75℃に維持し、滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下し、次いで滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。
滴下終了後、反応容器内の混合溶液を75℃で2時間攪拌した。次いで前記の重合開始剤(V−65)1.5部を有機溶媒(MEK)10部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、75℃で1時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に2回行った。次いで反応容器内の反応溶液を85℃に2時間維持し、水分散性ポリマー溶液を得た。得られた水分散性ポリマー溶液の一部を減圧して溶媒を除去し、重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
得られた水分散性ポリマーの固形分を測定し、MEKを添加して固形分濃度を50%に調整して、以下の実施例、比較例に供した。
実施例1〜12、及び比較例1〜4(顔料水分散体・水系インクの製造)
(1)製造工程(1)
容器容量2Lのディスパー(プライミクス株式会社製、T.K.ロボミックス、撹拌部ホモディスパー2.5型、羽直径40mm)に、製造例1で得られた水分散性ポリマー溶液85.7部を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、有機溶媒(MEK:20℃における水に対する溶解度は22%)93部を加え、さらにイオン交換水の所定量、5N(16.9%)水酸化ナトリウム水溶液23.6部、及び25%アンモニア水溶液の所定量を添加し、0℃の水浴で冷却しながら、1400rpmで15分間撹拌した。撹拌後、顔料(Degussa社製、カーボンブラック「Nipex160」)100部を加え、6000rpmの条件にて3時間撹拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名:型式M−140K)を用いて、180MPaの圧力にて、20パス分散処理し、顔料分散体を得た。
その後、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径を測定し、体積平均粒径が180nm以下であることを確認した。
(2)製造工程(2)
製造工程(1)で得られた顔料分散体を2Lのナスフラスコに入れ、表2に示す所定量のイオン交換水を加え、表2に示す温度±1℃の範囲で所定時間保持した。
なお、実施例7では減圧可能な密閉チャンバー内で10kPaまで減圧した上で密封し、35℃で4時間保持した。実施例7以外の圧力は常圧(100kPa)である。
また、比較例1では製造工程(2)を経ず、即座に製造工程(3)を実施した。
(3)製造工程(3)
減圧蒸留装置〔ロータリーエバポレーター、東京理化器械株式会社製、商品名:N−1000S〕を用いて、製造工程(2)で得られた顔料分散体を、40℃に調整した温浴中、10kPaの圧力で2時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を15kPaに上げて4時間保持し、有機溶媒及び一部の水を除去し、顔料とポリマーの合計濃度を23〜25%とした。次いで顔料とポリマーの合計濃度を測定し、イオン交換水で顔料とポリマーの合計濃度が20%となるように調整した。
次いで5μmと1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕を用いて順に濾過し、顔料水分散体を得た。これらの顔料粒子の体積平均粒径を表2に示す。
(4)インク化製造工程
製造工程(2)で得られた顔料水分散体35.7部に対し、表2に記載の通り、実施例1〜11及び比較例1〜4では溶媒セット1として、グリセリン(和光純薬工業株式会社製、試薬)5部、トリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬)5部、トリメチロールプロパン(和光純薬工業株式会社製、試薬)7部と、実施例12では溶媒セット2として、ポリエチレングリコール400(和光純薬工業株式会社製、平均分子量400、試薬)17部と、界面活性剤(日信化学工業株式会社製、オルフィンE1010:アセチレンジオールのエチレンオキシド(10モル)付加物)0.5部、防黴剤(アーチケミカルズジャパン株式会社製、プロキセルLV(S):1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、有効分20%、)0.1部、及びイオン交換水を添加、混合し、得られた混合液を0.45μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インクを得た。得られた水系インクの20℃における表面張力は36mN/mであった。
実施例1〜12、比較例1〜4で得られた水系インクについて、以下の評価を行った。
(1)印字濃度の測定
LGエレクトロニクス社製のサーマルインクジェットプリンター「LPP−6010N」のイエローの中間タンクのインクを詰め替え、温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、Xerox社製の普通紙「Xerox4024」を用いて、ベストモードで印字を行った。得られた印字物の印字濃度(黒の光学濃度として出力される値)をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ、測定条件 観測視野角:2度、観測光源:D50、白色基準:紙基準、偏光フィルター:なし、濃度基準:ANSI−A)で計5点測定し、その平均値を求め印字濃度とした。結果を表2に示す。
印字濃度は0.90以上であれば普通紙において十分な印字品質が得られ、特に0.95以上が好ましい。
(2)吐出耐久性の評価
上記(1)印字濃度の測定と同じプリンターを用いて、同じ印字条件で、前記普通紙に、幅200mm×長さ254mmのベタ画像を印字した。印刷を繰り返し、印刷によって印字濃度が当初から10%低下するまでの印字枚数を計測した。なお、上記評価はインク毎に新品の記録ヘッドに交換して行った。結果を表2に示す。
また、印字濃度が10%低下した記録ヘッドのヒータを光学顕微鏡で観察すると、ヒータ上に黒い焦げが確認された。
表2から、実施例1〜12の水系インクは、比較例1〜4の水系インクに比べて、吐出耐久性に優れ、印字濃度が高いことが分かる。

Claims (12)

  1. 下記の製造工程(1)、(2)及び(3)を有するインクジェット記録用顔料水分散体の製造方法。
    製造工程(1):水、顔料、水分散性ポリマー、及び20℃における水に対する溶解度が40質量%未満の有機溶媒を含有する混合物を、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が180nm以下になるまで分散処理して、顔料分散体を得る製造工程。
    製造工程(2):製造工程(1)で得られた顔料分散体に水を添加し、40℃以下で4時間以上48時間以下保持する製造工程。
    製造工程(3):製造工程(2)で得られた顔料分散体の有機溶媒を除去して、顔料水分散体を得る製造工程。
  2. 製造工程(1)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)が0.27以上であり、製造工程(2)における、水に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/水)が0.29以下である、請求項1に記載の顔料水分散体の製造方法。
  3. 有機溶媒がメチルエチルケトンである、請求項1又は2に記載の顔料水分散体の製造方法。
  4. 水分散性ポリマーがイオン性基を含むモノマーを共重合してなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  5. 水分散性ポリマー中のイオン性基を含むモノマー由来の構成単位の含有量が15質量%以上25質量%以下である、請求項4に記載の顔料水分散体の製造方法。
  6. 顔料粒子が、水分散性ポリマーが吸着した顔料粒子又は顔料を含有するポリマー粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  7. 製造工程(3)で得られた顔料分散体の動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径が40nm以上150nm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
  8. ポリエチレングリコールを含有するインクに用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得られるインクジェット記録用顔料水分散体。
  9. 下記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−60mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が40%以下である、請求項7に記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
    工程(i):測定セル中の粒子に電界を作用させないでゼータ電位分布1を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布1を得る工程。
    工程(ii):測定セル中の粒子に第2の電界を作用させてゼータ電位分布2を測定し、次いで規格化し、規格化ゼータ電位分布2を得る工程。
    工程(iii):規格化ゼータ電位分布1及び2の差分を取った規格化ゼータ電位分布3を得る工程。
    工程(iv):規格化ゼータ電位分布3を1mV刻みでヒストグラム化し、規格化することで規格化ゼータ電位分布4を得る工程。
  10. 前記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−58mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が10%以下である、請求項9に記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
  11. 前記ゼータ電位測定工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)により得られた規格化ゼータ電位分布4の0〜−55mVの範囲に含まれる成分の散乱強度面積比が5%以下である、請求項9に記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
  12. ゼータ電位分布の測定方法が動的光散乱法である、請求項9〜11のいずれかに記載のインクジェット記録用顔料水分散体。
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