JP2012086249A - 連続鋳造におけるブレークアウト検出方法及び装置 - Google Patents

連続鋳造におけるブレークアウト検出方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】非定常現象を精度良く捉えてブレークアウトを精度良く検知する連続鋳造おけるブレークアウト検出方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る連続鋳造におけるブレークアウト検出方法は、鋳型1における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、一対の熱電対23を鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設し、熱電対23によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出し、鋳型内を鋳造方向に移動する凝固シェルの特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積をブレークアウト発生の判定に用いることを特徴とするものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、連続鋳造において、鋳型内の凝固シェルに発生するブレークアウトにつながる異常現象を精度良く検出する方法に関し、特にパウダーや介在物などの異物により凝固シェルの凝固遅れが発生することに起因する連続鋳造におけるブレークアウト検出方法及び装置に関する。
連続鋳造において、何らかの原因により鋳型内の凝固シェルが正常に成長せずにブレークアウトが発生すると操業ならびに設備保全上の大問題となる。そのため、連続鋳造において鋳型内の凝固シェルを正常に成長させることは、連続鋳造操業ならびに品質上極めて重要である。そこで、ブレークアウトが発生する危険がある場合を予測し、その危険がある場合には操業条件等を変更して鋳型内の凝固シェルを正常に成長させることが有用である。これには、ブレークアウトの危険を予測する必要があり、従来から様々なブレークアウトの検知方法が提案されてきている。
例えば、鋳型銅板に熱電対を埋没させ、その温度情報もしくは熱流束情報から異常を検知する方法(特許文献1参照)や、鋳型振動系設備もしくは鋳型に圧力測定用の測定機器を設置し、抗力・摩擦力の変化から異常を検知する方法などが提案されている。
現在ほとんどの連続鋳造機において、特に拘束性ブレークアウトの検知手段として前記特許文献1の熱電対による温度情報を用いる方法が広く用いられている。
最近では鋳型に埋没した熱電対温度のみでは、非定常伝熱現象におけるブレークアウトの検出は困難であるとして、凝固伝熱解析を組み合わせた検出法が提案されている。(例えば、特許文献2、3参照)。
特開平09-271918号公報 特許4105839号公報 特許4112783号公報
特許文献2、3においては、局所熱流束の算出に対して鋳型厚み方向に2点の温度を測定せずに、1点の温度と銅板冷却スリット内の水温の情報から凝固伝熱計算で熱流束を計算することを特徴として挙げている。
しかしながら、銅板冷却スリット内の温度分布を鋳造方向に測定することは、水漏れの発生が生じやすく極めて困難である。そのため、前述した特許文献においてもスリット内の水温はスリット出側の一定温度Twを用いている計算式が示されている。
しかしながら、鋳造方向の水温分布を用いない限りは、非定常現象を精度良く捉えることは困難と考えられ、パウダーフィルム厚やエアギャップ生成の影響も計算に精度良く取りこんでいるとは言いがたい内容となっている。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、非定常現象を精度良く捉えてブレークアウトを精度良く検知する連続鋳造おけるブレークアウト検出方法及び装置を提供することを目的としている。
ブレークアウト現象の中でも、鋳造スタート時のダミーバーへの湯差しに起因するものや鋳造速度増速期のパウダーフィルムの膜切れに起因するものなどは非定常伝熱現象の影響を大きく受ける可能性がある。
しかし、鋳造速度がほとんど変動しない定常部と呼ばれる大半の鋳造における状態では、鋳型銅板の厚み方向2箇所の温度差により算出される熱流束(下式参照)を用いるほうが、より実現象を捉えることが可能と考えられる。
q=λ/d×(Touter-Tinner)
ただし、q:熱流束(W/m2
λ:鋳型銅板の熱伝導度(W/m/K)
d:熱電対距離(m)
Touter:外側(溶鋼側)の熱電対温度(℃)
Tinner:内側(冷却スリット側)の熱電対温度(℃)
前述した特許文献2、3では、鋳型銅板の熱伝導度を一定値とすることへの問題を挙げているが、鋳型銅板の熱伝導度は一般の連続鋳造時における銅板内の温度50〜500℃の範囲では極端に値が変化することもないため、上式を用いた熱流束をブレークアウト検出の判定に用いることは有効と考えられる。
また、前述した特許文献2,3では銅板厚みが操業の中で徐々に変化していくことも問題として掲げている。凝固伝熱計算に銅板厚みを正しく反映させることは大変な労力が必要となる上、表層の主にNi成分からなる鍍金の状況変化などを凝固伝熱計算に考慮するのは更に難しくなるからである。
この点について、発明者が検討した結果、銅板厚み方向に冷却スリットや溶鋼側の銅板温度の影響が直接影響しない程度の距離を持たせた位置に熱電対を2箇所設置して、その温度差から算出する熱流束の方が実現象を的確に捉えられるとの知見を得た。
上記熱電対の設置位置としては、銅板の溶鋼側の面から5〜15mmとするのが好ましい。
また、発明者らは、熱流束の時間変化をブレークアウト発生の検出に用いることを考えた。この理由は以下の通りである。
鋳型上方での凝固シェルの成長は熱流束に対応した関係を持つことが知られており、凝固シェル成長の異常を把握するには、熱流束の瞬間的な変化に着目することが有効であると考えたからである。
なお、熱電対の絶対値温度の時間変化を用いても同様の傾向を得ることは可能とも考えられる。
しかしながら、熱電対の絶対値温度は、モールドフラックスの種類、銅板厚み、銅板と熱電対の接触状況、冷却スリット内の状況(閉塞や冷却水の流速変化)などに影響を受けるため、同一の鋳造条件でも大きく異なる場合がある。
この点、鋳型厚み方向の2点間の温度差で算出する熱流束を用いれば、上記の影響が少なく、より安定した評価が可能となる。
また、本発明では熱流束時間変化量の積をブレークアウト発生の判定に用いることにしているが、これを熱流束ではなく銅板温度の絶対値を用いて評価すると、上記の影響因子に加えてモールド個体差の影響も受け、閾値を一定値に決定することが難しくなる。
以上の検討を踏まえ、本発明者らは定常、非定常現象を問わず銅板厚み方向の温度差から算出される熱流束を使用する方法が凝固シェルの異常成長現象を検出するのに有効であるという結論に至り、本発明を完成したものであり、具体的には以下の構成を備えたものである。
(1)本発明に係る連続鋳造におけるブレークアウト検出方法は、鋳型における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、一対の熱電対を鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設し、該熱電対によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出し、鋳型内を鋳造方向に移動する凝固シェルの特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積をブレークアウト発生の判定に用いることを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記熱電対のうち、鋳造方向下流側に埋設する熱電対の位置を、メニスカスから下記の(1)式で算出されるLTC(mm)以内に設置することを特徴とするものである。
LTC≦25×LMOLD/(VR×1000/60)----(1)
但し、LTC:熱電対を設置する位置のメニスカスからの距離(mm)
LMOLD:メニスカスから鋳型下端の距離(mm)
VR:鋳造速度(m/min)
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記凝固シェルの特定位置の熱流束時間変化量の積Nを(2)式で求めることを特徴とするものである。
N=(A1×Δq1)×(A2×Δq2)--------(2)
但し、A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE
LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60)(mm)
LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
(4)本発明に係る連続鋳造におけるブレークアウト検出装置は、鋳型における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設された一対の熱電対と、該熱電対によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出する局所熱流束算出手段と、鋳型内を鋳造方向に移動する凝固シェルの特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積を算出し、該積の値に基づいてブレークアウト発生の危険の有無を判定するブレークアウト判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
(5)また、上記(4)に記載のものにおいて、前記熱電対のうち、鋳造方向下流側に埋設される熱電対の位置が、メニスカスから下記の(1)式で算出されるLTC(mm)以内に設定されていることを特徴とするものである。
LTC≦25×LMOLD/(VR×1000/60)----(1)
但し、LTC:熱電対を設置する位置のメニスカスからの距離(mm)
LMOLD:メニスカスから鋳型下端の距離(mm)
VR:鋳造速度(m/min)
(6)また、上記(4)又は(5)に記載のものにおいて、前記ブレークアウト判定手段は、前記凝固シェルの特定位置の熱流束時間変化量の積Nを(2)式で求めることを特徴とするものである。
N=(A1×Δq1)×(A2×Δq2)--------(2)
但し、A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE
LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60)(mm)
LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
本発明によれば、凝固シェルにモールドパウダーや介在物などの異物が噛み込むことに起因するブレークアウトの検出を精度よく判定することができ、安定操業の維持ならびにブレークアウト発生に伴う設備の被害を回避することが出来る。
本発明の一実施の形態に係るブレークアウト検出装置を設置した連続鋳造設備の説明図である。 本実施の形態における鋳型銅板に埋め込む熱電対の位置の説明図である(2段の場合)。 本実施の形態における鋳型銅板に埋め込む熱電対の位置の説明図である(3段の場合)。 鋳造中に異物が噛みこんだことによるブレークアウト発生のメカニズムの説明図である。 熱電対2段の場合における、鋳片異常箇所が発生した際のN値の時系列変化の様子を示すグラフである。 熱電対3段の場合における、鋳片異常箇所が発生した際のN値の時系列変化の様子を示すグラフである。 正常時における熱流束と鋳造長との関係を示すグラフである。 ブレークアウトが発生した場合における熱流束と鋳造長との関係を示すグラフである。 熱電対2段の場合における、ブレークアウトが発生した場合におけるN値と鋳造長との関係を示すグラフである。 熱電対3段の場合における、ブレークアウトが発生した場合におけるN値と鋳造長との関係を示すグラフである。
図1は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造におけるブレークアウト検出装置21が設置された連続鋳造設備の説明図である。
連続鋳造設備は、鋳型1と、タンデッシュ3の底部に接続され鋳型1内に挿入されて、タンデッシュ3からの溶鋼4を吐出する浸漬ノズル5と、鋳型1から出た鋳片7をガイドするガイドローラ9と、鋳片7を引抜くためのピンチロール13と、ピンチロール13を回転駆動するためのモーター15と、モーター15を制御するためのピンチロール制御装置17と、鋳造速度を減速するように制御する制御手段19とを備えている。
このような構成の連続鋳造設備に設置された本実施の形態のブレークアウト検出装置21は、鋳型1における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設された一対の熱電対23と、該熱電対23によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出する局所熱流束算出手段25と、鋳型1内を鋳造方向に移動する凝固シェル26の特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積を算出し、該積の値に基づいてブレークアウト発生の危険の有無を判定するブレークアウト判定手段27とを備えている。
なお、ブレークアウト判定手段27の判定信号は制御手段19と、警報装置29に入力される。制御手段19はブレークアウト判定手段27の信号を入力して、ブレークアウト判定手段27がブレークアウトの危険有りと判定したときに、ブレークアウト判定手段27がブレークアウトの危険有りと判定したときに、鋳造速度を減速するように制御する。
また、警報装置29は、ブレークアウト判定手段27の信号を入力して、ブレークアウト判定手段27がブレークアウトの危険有りと判定したときに、例えば警報音、警報ランプ点灯等の警報を発する。
各構成を詳細に説明する。
<熱電対>
本実施の熱電対23は、鋳型1における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、銅板厚み方向で異なる位置に2つがペアになった一対が埋設されている。図2は、熱電対23が鋳造方向2段の位置に設置された例を模式的に示しており、図中●印が溶鋼側鋳型銅板表面からの距離d1の位置に設置された熱電対23を示し、図中▲印が溶鋼側鋳型銅板表面からの距離d2の位置に設置された熱電対23を示している。図3は、熱電対23が鋳造方向3段の位置に設置された例を模式的に示している。
メニスカス位置から熱電対23までの距離は、最下段の熱電対23があまりにも鋳型1の下方にある場合には、凝固シェル26の異常を検知できても鋳造速度が速い場合には、その後の減速処理等での凝固シェル異常部の回復が鋳型下端に達するまでに間に合わないことがある。
そこで、本発明者らは、最下段に設ける熱電対位置を検討したところ、メニスカスからの距離LTC(mm)を (1)式を満足する位置が有効であることを見出した。
LTC≦25×LMOLD/(VR×1000/60)----(1)
但し、LTC:熱電対を設置する位置のメニスカスからの距離(mm)
LMOLD:メニスカスから鋳型下端の距離(mm)
VR:鋳造速度(m/min)
LMOLD=800mm、VR=3.0m/minとすれば、LTC≦400mmとなる。
一般的な連続鋳造のLMOLDは800mm前後であることから、鋳造速度3.0m/minまでの連続鋳造であればメニスカス下400mmまでの位置に2段もしくは3段の熱電対23を設置すると良いこととなる。
幅方向の熱電対23の間隔は、狭い間隔で設置するのが凝固シェル26の異常成長位置を検出するのに有利であるが、銅板加工上の制約や熱電対コスト、熱電対温度計算の負荷が大きくなることから、150〜200mmピッチで設置することが有効であることを本発明者らは見出した。
熱電対の幅方向のピッチを150〜200mmとした理由は以下の通りである。
まず、熱電対23の幅方向の間隔をあまり小さくする必要がない理由は、凝固シェル厚の薄い異常箇所の大きさが小さい場合には、溶鋼4の洩れが瞬間的に生じても、溶鋼4が連続的に流出し続けることにならない場合が多く、このような小さい異常個所を検知する必要性が小さいからである。
また、熱電対23の幅方向の間隔を最大200mmピッチにしてもよい理由は、ブレークアウト発生時の溶鋼4が流出した穴もしくはキレツ箇所は幅方向に100mm程度であることが多いことから、仮に熱電対23の幅方向の間隔を200mmピッチにした場合において、100mmの穴が隣接する熱電対23の丁度真中の位置を通過したとしても、前記穴が通過する際の温度変化を熱電対23によって検知することができるからである。
以上の検討から、熱電対の幅方向のピッチを150〜200mmとすれば、ブレークアウトに至るような凝固シェル成長の異常を捕らえるには必要かつ十分であると考えた。
<局所熱流束算出手段>
局所熱流束算出手段25は、熱電対23によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を、下式(4)に基づいて算出する。
q=λ/d×(Touter-Tinner) -----------(4)
但し、q:熱流束(W/m2
λ:鋳型銅板の熱伝導度(W/m2/K)
d:熱電対距離(m)
Touter:外側(溶鋼側)の熱電対温度(℃)
Tinner:内側(冷却スリット側)の熱電対温度(℃)
熱流束をサンプリングする時間間隔Δtは、短いほど高速鋳造まで対応することが可能となるが、サンプリング時間Δtが短すぎると計算負荷が膨大となるため、0.5秒前後でのサンプリング時間が好ましい。
<ブレークアウト判定手段>
ブレークアウト判定手段27は、鋳型1内を鋳造方向に移動する凝固シェル26の特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積を算出し、該積の値に基づいてブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
熱流束時間変化Δqは、凝固シェル26のメニスカス位置での鋳造長を基準として、その位置が鋳型1内を移動して、上段〜下段の熱電対23の位置を通過する際の熱流束の時間変化として(5)式に基づいて求める。
Δqi=ABS({qi(t)-qi(t-Δt)}/Δt)-----------(5)
但し、Δqi:熱流束時間変化(W/m2/sec)
i:i段目の熱電対を示す添字
ABS():絶対値
Δt:サンプリング時間間隔(sec)
ブレークアウト発生危険の有無の検出は、最下段の熱電対通過時の時間で判定する。
具体的には、熱電対23が鋳造方向に2段の場合を例に挙げて説明する。鋳造速度VRで一定とする。
2段目の熱電対位置を通過する時間をt2とすると、2段目の熱電対位置での熱流束時間変化量Δq2は(6)式で求めることができる。
Δq2(t2)=ABS({q2(t2)-q2(t2-Δt)}/Δt) -----------(6)
時間t2において2段目の熱電対位置を通過している凝固シェル26が、最上段の熱電対位置を通過した時間は(7)式で表記できる。
t1=t2-(LTC2-LTC1)/VR -----------(7)
したがって、凝固シェル26の当該位置が最上段の熱電対23を通過した際の熱流束時間変化Δq1は(8)式で表記できる。
Δq1(t1)=ABS({q1(t1)-q1(t1-Δt)}/Δt)
=ABS({q1(t2-(LTC2-LTC1)/VR)-q1(t2-(LTC2-LTC1)/VR-Δt)}/Δt)-(8)
ブレークアウト判定手段27は、ブレークアウト発生の危険の有無の検出は、以下の式に示すN値を用いて、N値が予め定めた閾値を超えるかどうかによって行い、判定は、最下段の熱電対位置を通過時の時間t2毎に行う。
N(t2)=(A1×Δq1(t1))×(A2×Δq2(t2)) --------(2)
但し、N(t2):閾値(W2/m4/sec2
A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE
LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60) (mm)
LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
(2)式中にA1,A2といった熱電対設置位置に対応した定数を設けているのは、鋳型下端に近づくほどブレークアウト発生の危険性が高くなることを反映させるためである。
実際、パウダー噛み込み性のブレークアウトが発生する場合には、鋳型上方でパウダー噛み込みが生じ、熱流束低下が発生した場合でも鋳型下方に凝固シェル26が移動していく際に噛み込み箇所から噛み込み物が除去される場合も多く、逆に上段の熱電対位置では噛み込みがほとんどない場合でもその後噛み込みが急速に進行する場合もあることから、鋳型下端に近いほど噛み込みがブレークアウトに進展する可能性は高いといえる。
図4は凝固シェル26にパウダー等の異物31が噛み込んだ場合の模式図である。図4Bにおいて異物31の噛み込みが発生し、図4C、D、Eに示すように、異物31が噛み込んだ部位は、凝固シェル26の成長が阻害され、凝固シェル厚みが健全な箇所に比べて薄くなる。
パウダー、介在物などの噛み込んだ異物31は、熱伝導度が鋼に比べて極めて小さいため、その箇所で熱流を阻害するため、銅板内の熱電対温度ならびに熱流束が小さくなるものと推定される。
N値の閾値として、本発明者らは、上記のN値の評価を約3ヶ月間の操業に対して実施し、ブレークアウトには至らないものの、図5に示すように、鋳片7に一部溶鋼が流出しかけた異常箇所が発生する閾値を経験的に求めた。
熱電対23が2段の場合には、N値の閾値は、N=1.5×10(W2/m4/sec2)であり、N>1.5×109(W2/m4/sec2)のときにブレークアウト発生に危険ありと判定する。
N値の閾値の規定方法としては、N値が閾値を超過した場合に、鋳造速度を可能な限り低下させ、凝固シェル成長が阻害された箇所のシェル厚みが正常部と同等になるまで低速鋳造を保持することで、鋳型下端でのブレークアウトを防止することが可能となるような値として規定すればよい。
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
浸漬ノズル5から溶鋼4を吐出して鋳型1によって冷却して鋳片7を連続鋳造する操業において、熱電対23からの信号を局所熱流束算出手段25に入力して局所熱流束を算出し、この算出結果をブレークアウト判定手段27に入力する。ブレークアウト判定手段27は、上記(2)式に基づいてN値を算出して、該N値と予め定めた閾値との関係でブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
判定の結果、ブレークアウト発生の危険がない場合には、そのまま操業を続行する。
一方、判定の結果、ブレークアウト発生の危険があると判定された場合には、ブレークアウト判定手段27が、制御手段19に対して鋳造速度の減速を指令する信号を出力すると共に警報装置29に対して警報を発する指令信号を出力する。
制御手段19はブレークアウト判定手段27からの指令信号を入力すると、ピンチロール制御装置17に対してモーター15の回転速度の減速を指令する信号を出力する。この信号を入力したピンチロール制御装置17はモーター15の回転数を下げるように制御する。
モーター15の回転数を下げることにより、鋳造速度が低下し、鋳型1内での凝固シェル厚が厚くなるので、ブレークアウト発生の危険を回避することができる。
また、警報装置29が警報を発することにより、操作員にブレークアウト発生の危険を知らせることができる。
以上のように本実施の形態によれば、凝固シェル26にモールドパウダーや介在物などの異物が噛み込むことに起因するブレークアウトの検出を精度よく判定することができ、安定操業の維持ならびにブレークアウト発生に伴う設備の被害を回避することが出来る。
また、高速鋳造時もブレークアウトの発生を未然に防止することが可能となることから生産性向上ならびに省エネルギーを達成できる。
もっとも、本実施の形態の連続鋳造におけるブレークアウト検出装置21は、非定常現象に基づくブレークアウト検出のみならず、拘束性ブレークアウト、縦割れ性ブレークアウトなどその他のブレークアウトについても凝固シェル成長の異常が認められる場合には検出可能である。
尚、鋳造初期や鋳造末期は鋳造速度を大幅に加減速する場合が生じやすい。この場合には必然的に熱電対の絶対温度や熱流束が変化することとなることから、本実施の形態のブレークアウト検出方法から対応時期を除去するか、本区間に固有の閾値を設けることが望ましい。
上記の実施の形態の説明では、主に熱電対23が鋳造方向に2段の場合について説明したが、熱電対23を設ける段数(鋳造方向の位置の数)は、前述のように3段であてもよい。
熱電対23を3段にした場合には、最も下側である3段目の熱電対23を凝固シェル26が通過する時間をt3とすると、判定は時間t3に基づいて行う。
この場合、3段目の熱電対位置での熱流束時間変化量Δq3は(9)式のように表記できる。
Δq3(t3)=ABS({q3(t3)-q3(t3-Δt)}/Δt) -----------(9)
また、2段目、1段目の熱電対を当該凝固シェル26が通過する時間は、t3を用いて下記のように表記できる。
t2=t3-(LTC3-LTC2)/VR -----------(10)
t1=t3-(LTC3-LTC1)/VR -----------(11)
したがって、2段目、1段目における熱流束時間変化量Δq2、Δq1
下記の(12)式、(13)式で表記できる。
Δq2(t2)=ABS({q2(t2)-q2(t2-Δt)}/Δt)
=ABS({q2(t3-(LTC3-LTC2)/VR)-q2(t3-(LTC3-LTC2)/VR-Δt)}/Δt) ----(12)
Δq1(t1)=ABS({q1(t1)-q1(t1-Δt)}/Δt)
=ABS({q1(t3-(LTC3-LTC1)/VR)-q1(t3-(LTC3-LTC1)/VR-Δt)}/Δt) ----(13)
熱電対23が3段の場合、ブレークアウト判定手段27は、ブレークアウト発生の危険の有無の検出は、以下の式に示すN値を用いて、N値が予め定めた閾値を超えるかどうかによって行い、判定は、最下段の熱電対位置を通過時の時間t3毎に行う。
N(t3)=(A1×Δq1(t1))×(A2×Δq2(t2))×(A3×Δq3(t3)) --------(3)
但し、N(t2):閾値(W3/m6/sec3
A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE、A3=LTC3/LTCE
LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60) (mm)
LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
N値の閾値として、熱電対23が2段の場合と同様に、上記のN値の評価を約3ヶ月間の操業に対して実施し、ブレークアウトには至らないものの、図6に示すように、鋳片7に一部溶鋼が流出しかけた異常箇所が発生する閾値を経験的に求めた。
熱電対23が3段の場合のN値の閾値としては、N=1.5×1014(W3/m6/sec3)であり、N>1.5×1014(W3/m6/sec3)の場合にブレークアウト発生の危険ありと判定する。
上記のように、熱電対23を設ける段数は、2段でも3段でもよいが、少なくとも2段設けるようにする。1段のみの場合では、外乱によってブレークアウト発生の危険を精度良く判定することができないからである。
以下、本発明を示す実施例について説明する。
本発明者らは、スラブ連続鋳造機において、銅板に熱電対23を埋没させた鋳型1を用いて長期間の連続鋳造操業を実施した。
スラブ厚みは250mm、スラブ幅は1000〜2000mm、鋳型長(メニスカスから鋳型下端までの距離)LMOLD=800mmである。
鋳造速度VRは最大3.0m/minまでの範囲で操業した。
熱電対23は、鋳型1における鋳造方向で異なる2段及び3段の位置に設置し、各熱電対23の位置は以下の通りである。
<2段の場合>
1段目の熱電対位置LTC1=40mm、2段目の熱電対位置LTC2=190mm
<3段の場合>
1段目の熱電対位置LTC1=40mm、2段目の熱電対位置LTC2=120mm、3段目の熱電対位置LTC3=300mm
1段目と3段目における局所熱流束の変化の様子が図7、図8に示されている。図7、図8において、縦軸が局所熱流束(W/m2)を示し、横軸が鋳造長(m)を示している。図7は正常時であり、図8はブレークアウトが発生した場合である。
ブレークアウトが発生した箇所では、パウダー等の噛み込みが発生し、1段目と3段目のいずれの熱電対23での計測によっても熱流束の低下が生じていることが確認できた。
次に、熱電対23が2段の場合と、3段の場合の両方において、上述した(2)式、(3)式によるN値と鋳造長の関係を求めた。
図9は、熱電対23が2段の場合であって、(2)式によるN値と鋳造長の関係を示している。また、図10は、熱電対23が3段の場合であって、(3)式によるN値と鋳造長の関係を示している。
図9、図10のいずれの場合も、ブレークアウト発生位置ではN値が他の箇所と比較して大きな値となっていることが確認できた。
N値の閾値として、上述したように、熱電対23が2段の場合はN=1.5×10(W2/m4/sec2)と設定し、N>1.5×109(W2/m4/sec2)のときにブレークアウト発生に危険ありと判定し、熱電対23が3段の場合はN=1.5×1014(W3/m6/sec3)と設定し、N>1.5×1014(W3/m6/sec3)の場合にブレークアウト発生の危険ありと判定することにした。
N値が閾値を超えたときに、鋳造速度を1.0m/min以下に低下させる操業を継続した。その結果、従来と操業条件の変更無しに1年以上ブレークアウトの発生を完全に抑制できており、本発明によるブレークアウト検出法の有効性が確認された。
1 鋳型
3 タンデッシュ
4 溶鋼
5 浸漬ノズル
7 鋳片
9 ガイドローラ
13 ピンチロール
15 モーター
17 ピンチロール制御装置
19 制御手段
21 ブレークアウト検出装置
23 熱電対
25 局所熱流束算出手段
26 凝固シェル
27 ブレークアウト判定手段
29 警報装置

Claims (6)

  1. 鋳型における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、一対の熱電対を鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設し、該熱電対によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出し、鋳型内を鋳造方向に移動する凝固シェルの特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積をブレークアウト発生の判定に用いることを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
  2. 前記熱電対のうち、鋳造方向下流側に埋設する熱電対の位置を、メニスカスから下記の(1)式で算出されるLTC(mm)以内に設置することを特徴とする請求項1記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
    LTC≦25×LMOLD/(VR×1000/60)----(1)
    但し、LMOLD:メニスカスから鋳型下端の距離(mm)
    VR:鋳造速度(m/min)
  3. 前記凝固シェルの特定位置の熱流束時間変化量の積Nを(2)式で求めることを特徴とする請求項1又は2記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
    N=(A1×Δq1)×(A2×Δq2)--------(2)
    但し、A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE
    LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60)(mm)
    LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
    Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
  4. 鋳型における鋳造方向で異なる少なくとも2段の位置において、鋳型銅板厚み方向で異なる位置に埋設された一対の熱電対と、該熱電対によって計測される温度に基づいて前記各位置における局所熱流束を算出する局所熱流束算出手段と、鋳型内を鋳造方向に移動する凝固シェルの特定位置が前記各位置を通過するときの熱流束時間変化量の積を算出し、該積の値に基づいてブレークアウト発生の危険の有無を判定するブレークアウト判定手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
  5. 前記熱電対のうち、鋳造方向下流側に埋設される熱電対の位置が、メニスカスから下記の(1)式で算出されるLTC(mm)以内に設定されていることを特徴とする請求項4記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
    LTC≦25×LMOLD/(VR×1000/60)----(1)
    但し、LMOLD:メニスカスから鋳型下端の距離(mm)
    VR:鋳造速度(m/min)
  6. 前記ブレークアウト判定手段は、前記凝固シェルの特定位置の熱流束時間変化量の積Nを(2)式で求めることを特徴とする請求項4又は5記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
    N=(A1×Δq1)×(A2×Δq2)--------(2)
    但し、A1=LTC1/LTCE、A2=LTC2/LTCE
    LTCE=25×LMOLD/(VR×1000/60)(mm)
    LTCi:i段目の熱電対のメニスカスからの距離(mm)
    Δqi:i段目の熱電対より算出される熱流束の時間変化値(W/m2/sec)
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