JP5092631B2 - 連続鋳造におけるブレークアウト検出方法及び装置、該装置を用いた鋼の連続鋳造方法、ブレークアウト防止装置 - Google Patents
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Description
このような背景から、高速鋳造を行ないながらも、ブレークアウトの危険を的確に判断できる手法の開発が望まれ、様々な方法が提案されている。
鋳型の外表面に配置した薄板型の表面熱流束計により、鋳型の抜熱量に応じた熱流束を測定して、連続鋳造におけるブレークアウトを防止する方法において、
多数の熱流束計により、鋳型各部の局所的な熱流束を測定し、該熱流束の時間的変化を表した熱流束波形の波高が急激に所定値を上まわった時に鋳込み速度を低下させ、前記波高が元に戻るまで低速鋳込みを行うことにより、ブレークアウトの発生を防止することを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト防止方法。
鋳型各部の局所的な熱流束は、鋳型からの抜熱量を意味しており、抜熱量が凝固シェルの形成に関連している。
したがって、熱流束の変化に異常があったときに凝固シェル厚の形成に異常が生じ、ブレークアウトの発生の危険があると予測することは可能である。
すなわち、鋳型内での凝固シェル形成過程の初期の段階において熱流束の異常があったとしても、凝固シェル形成過程のその後の段階において凝固シェルが形成され、鋳型出口において所定の厚みの凝固シェルが形成されておれば、ブレークアウト発生の危険はないと判断できるからである。
つまり、従来例に示された局所熱流束の変化のみによって、ブレークアウト発生の危険を予測することは十分正確な指標とは言いがたいものであった。
このようなことはよく知られた事実であるが、発明者はこの事実を詳細に検討すべく実際の鋳型内における具体的な抜熱状態を調べることとした。
図2は鋳型1の断面図であり、鋳型1内に設置した浸漬ノズル3から溶鋼5を吐出している状態を示している。湯面にはモールドパウダー7が添加され、このモールドパウダー7が鋳型1と溶鋼5の隙間に流れ込み潤滑剤の役割をはたす。溶鋼5はこのモールドパウダー7を介して鋳型1に抜熱され凝固シェル9を形成しながら鋳型出口に向かって引き抜かれる。
この埋設した熱電対17の出力から温度勾配を検出し、この温度勾配に基づいて計算により熱流束を求めることができる。
局所熱流束qの算出は、2本の熱電対17の検出温度をT1、T2、埋設間隔をd、及び鋳型1の熱伝導率をλとして、次式を用いて行なう。
q=λ(T1−T2)/d
これらの熱電対17からの出力信号に基づいて、上記の式により局所熱流束を求め、この局所熱流束と湯面からの位置との関係について調査を行なった。
図5に示すように、局所熱流束は湯面から鋳型出口方向に向かって減少し、湯面からの距離が400mmの近傍で極小値をとり、その後、一旦増加傾向を示し、その増加傾向は湯面からの距離が約600mm近傍で極大値を示し、その後再び減少している。
局所熱流束が極小値を示す位置は湯面からの距離が400mm近傍であり、この位置は、浸漬ノズル3の吐出口から吐出される溶鋼5の吐出流が鋳型短辺に衝突する位置と一致している(図2参照)。
このような局所熱流束の変化と溶鋼吐出流との関係は以下のことを物語っている。
図5に示すように、湯面から鋳造方向に行くにしたがって局所熱流束が減少しているのは、熱抵抗が増したこと、すなわち、図2に示すように凝固シェル厚が徐々に厚くなっていることを示している。
そして、浸漬ノズル3から吐出される溶鋼5の吐出流が凝固シェル9に衝突する位置においては、凝固シェル9の再溶解が起こり、凝固シェル厚みが減少し、この薄くなった凝固シェル9の凝固界面に溶鋼流動による熱が加わり局所熱流束が上昇したものと考えられる。
そしてさらに鋳造方向に行くにしたがって、溶鋼流動の影響がなくなり、再び局所熱流束が減少していることから凝固シェル厚が厚くなっていると考えられる。
図6は図5における横軸を、湯面から鋳型出口までの距離を鋳造速度(2m/分)で除算して求めた湯面から鋳型出口に至る鋳造時間で示したものである。
図6から理解できるように、鋳型内では溶鋼5が湯面位置から鋳型出口に向かって移動して、その移動過程において凝固シェル厚が徐々に厚くなり、途中で再溶解によって薄くなり、さらに厚くなって鋳型1から出て行くのである。
鋳型内において凝固シェル厚が成長する程度と、凝固シェル9が再溶解することによって一旦形成された凝固シェル9が薄くなる程度との関係は、鋳型出口における凝固シェル厚に直接的に関係していると考えられ、一方ブレークアウトの発生が鋳型出口における凝固シェル厚に関係することを考えると、上記の2つの程度の関係がブレークアウトの発生の有無に深く関わると考えられる。
鋳型内において凝固シェル厚が成長する程度は、抜熱量に比例することから、凝固シェル厚が成長過程にある状態の局所熱流束を時間で積分した総括熱流束(Q1)に比例する。
また、再溶解によって凝固シェル9が薄くなる程度は、凝固シェル厚が減少過程にある状態の局所熱流束を時間で積分した総括熱流束(Q2)に比例する。
これに対して、検討例6〜10のQ2/Q1の値は0.3以上となり、これら場合の鋳造条件ではブレークアウトが発生している。
この結果、Q2/Q1の値が0.3未満の場合にはブレークアウトが発生せず、逆にQ2/Q1の値が0.3以上ではブレークアウトが発生することが分かった。
Q2≧0.3Q1
かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 )
Q2≧0.3Q1
かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 )
操業条件の制御としては、例えば鋳造速度を減速するために鋳片引抜速度を減速するような制御が挙げられる。
連続鋳造設備は、鋳型1と鋳型1内に設置されて溶鋼5を吐出する浸漬ノズル3と、鋳型1から出た鋳片19をガイドするガイドローラ21と、鋳片19を引抜くためのピンチロール23と、ピンチロール23を回転駆動するためのモーター25と、モーター25を制御するためのピンチロール制御装置27とを備えている。
このような構成の連続鋳造設備には、以下の構成からなるブレークアウト防止装置が設けられている。
以下、各構成をさらに詳細に説明する。
熱電対17は図3、図4で示したのと同様に鋳型銅板11に埋め込まれている。すなわち、鋳型銅板11の外側面に形成された冷却水通路の底部に孔をあけ、その中に、熱電対17を埋め込み、深さ方向に一定の距離を離した2箇所に埋没した一対の熱電対17を鋳型鋳造方向に9箇所計18本設置している。鋳型幅方向にはこのような一対の熱電対17を冷却水路ごとに11箇所設置している。
局所熱流束演算手段29は、熱電対17の信号を入力して局所熱流束qを演算する。局所熱流束演算手段29はCPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには、前述したように、2本の熱電対17の検出温度をT1、T2、埋設間隔をd、及び鋳型1の熱伝導率をλとして、局所熱流束を算出する次式が書き込まれている。
q=λ(T1−T2)/d
総括熱流束演算手段31は、局所熱流束の演算結果を入力して局所熱流束が減少状態にあるときの総括熱流束Q1と局所熱流束が増加状態にあるときの総括熱流束Q2を求める。
局所熱流束が減少状態にあるときとは、局所熱流束を鋳造時間の関数で表した場合に、局所熱流束が減少している状態をいい、局所熱流束が増加状態にあるときとは同様の場合において、局所熱流束が増加している状態をいう。
ブレークアウト判定手段33は、総括熱流束演算手段31の演算結果に基づいてQ1とQ2の関係を求め、これらの関係と予め定めた閾値からレークアウト発生の危険の有無を判定する。
Q1とQ2の関係とは、例えばQ2とQ1の比の値であり、このQ2/Q1の値が予め定めた閾値以上のときにブレークアウト発生の危険有りと判定する。
この閾値は溶鋼の種類によって決まるものであり、例えば溶鋼が極低炭素鋼の場合には0.3である。
ブレークアウト判定手段33についても、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには上述した判定のロジックが書き込まれている。
制御手段35は、ブレークアウト判定手段33がブレークアウトの危険有りと判定したときに、鋳造速度を減速するように制御する。
具体的には、ブレークアウト判定手段33からのブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、ピンチロール制御装置27に対してモーター25の回転速度の減速を指令する信号を出力する。
また、制御手段35は、ブレークアウト判定手段からのブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、警報装置37に対して警報を発するように指令信号を出力する。
制御手段35についても、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには上述した指令信号を出力するロジックが書き込まれている。
警報装置37は、ブレークアウト判定手段33からの信号を入力して警報を発する。警報の種類は問わないが、例えば警報音、警報ランプの点灯、これらの組合せなどである。
浸漬ノズル3から溶鋼5を吐出して鋳型1によって冷却して鋳片19を連続鋳造する操業において、熱電対17からの信号を局所熱流束演算手段29に入力して局所熱流束を演算し、この演算結果を総括熱流束演算手段31に入力して、総括熱流束Q1、Q2を演算する。この演算値をブレークアウト判定手段33に入力し、Q1とQ2の比を求め、この比の値と予め定めた閾値との関係でブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
一方、判定の結果、ブレークアウト発生の危険があると判定された場合には、ブレークアウト判定手段33が、制御手段35に対して鋳造速度の減速を指令する信号を出力すると共に警報装置37に対して警報を発する指令信号を出力する。
制御手段35はブレークアウト判定手段33からの指令信号を入力すると、ピンチロール制御装置27に対してモーター25の回転速度の減速を指令する信号を出力する。この信号を入力したピンチロール制御装置27はモーター25の回転数を下げるように制御する。
モーター25の回転数を下げることにより、鋳造速度が低下し、鋳型1内での凝固シェル厚が厚くなるので、ブレークアウト発生の危険を回避することができる。
また、警報装置37が警報を発することにより、操作員にブレークアウト発生の危険を知らせることができる。
本発明においては、熱流束が減少状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q1と、熱流束が増加状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q2とが鋳型出口における凝固シェル厚に互いに深く関係しているという第1の知見を得たことに一つの意義があり、これらの比がブレークアウト発生の有無と密接に関連しているという第2の知見を得たことにもう一つの意義がある。
したがって、第1の知見が得られたことにより、Q1、Q2の種々の関係とブレークアウト発生との関係を調査研究することにより、ブレークアウト発生と密接な関わりのあるQ1、Q2の他の関係を得ることができるのであり、上記の実施の形態においてはこの関係の一つの態様を示したにすぎず、本発明はこれに限られるものではない。
3 浸漬ノズル
5 溶鋼
7 モールドパウダー
9 凝固シェル
11 鋳型銅板
17 熱電対
19 鋳片
21 ガイドローラ
23 ピンチロール
25 モーター
27 ピンチロール制御装置
29 局所熱流束演算手段
31 総括熱流束演算手段
33 ブレークアウト判定手段
35 制御装置
37 警報装置
Claims (5)
- 極低炭素鋼の連続鋳造における鋳型内の溶鋼が湯面から鋳型出口に至るまでの間に凝固界面へ入熱する熱流束を求め、該熱流束をそれが減少状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q1と、前記熱流束をそれが増加状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q2を求め、総括熱流束Q1と総括熱流束Q2との関係が、下式を満たすときにブレークアウトの危険があると判定することを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
Q2≧0.3Q1
かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 ) - 極低炭素鋼の溶鋼が注入される鋳型内に鋳型厚み方向で埋め込み深さの異なる2点間に埋め込んだ一対の熱電対を、鋳型幅方向および鋳型鋳造方向に複数設置して、前記一対の熱電対の出力に基づいて各熱電対設置部位における局所熱流束qを求め、該局所熱流束qをそれが減少状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q1と、局所熱流束qをそれが増加状態にある時間で積分して得られる総括熱流束Q2を求め、総括熱流束Q1と総括熱流束Q2との関係が、下式を満たすときにブレークアウトの危険があると判定することを特徴とする極低炭素鋼の連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
Q2≧0.3Q1
かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 ) - 請求項1又は2に記載のブレークアウト検出方法を用いた鋼の連続鋳造方法であって、
Q2<0.3Q1かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 )となるように操業条件を制御することを特徴とする極低炭素鋼の連続鋳造方法。 - 極低炭素鋼の溶鋼が注入される鋳型内に鋳型厚み方向に異なる深さの2点に埋め込んだ一対の熱電対を、鋳型幅方向および鋳造方向に複数設置してなる熱電対群と、該熱電対群からの温度情報を入力して各熱電対設置部位における局所熱流束qを求める局所熱流束演算手段と、局所熱流束演算手段の演算結果に基づいて局所熱流束qが減少状態にあるときの総括熱流束Q1と局所熱流束qが増加状態にあるときの総括熱流束Q2を求める総括熱流束演算手段と、該総括熱流束演算手段の演算結果に基づいてQ1とQ2の比の値Q2/Q1を求め、この比の値Q2/Q1が0.3以上かつ、20970≧Q1≧18100(KJ/m 2 )のときにブレークアウト発生の危険有りと判定することを特徴とする極低炭素鋼の連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
- 請求項4に記載のブレークアウト検出装置を用いたブレークアウト防止装置であって、ブレークアウト判定手段の信号を入力して、ブレークアウト判定手段がブレークアウトの危険有りと判定したときに、鋳造速度を減速するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト防止装置。
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