JP5387070B2 - 連続鋳造におけるブレークアウト検出方法及び装置、該装置を用いた鋼の連続鋳造方法、ブレークアウト防止装置 - Google Patents
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Description
このような背景から、高速鋳造を行ないながらも、ブレークアウトの危険を的確に判断できる手法の開発が望まれ、様々な方法が提案されている。
鋳型の外表面に配置した薄板型の表面熱流束計により、鋳型の抜熱量に応じた熱流束を測定して、連続鋳造におけるブレークアウトを防止する方法において、
多数の熱流束計により、鋳型各部の局所的な熱流束を測定し、該熱流束の時間的変化を表した熱流束波形の波高が急激に所定値を上まわった時に鋳込み速度を低下させ、前記波高が元に戻るまで低速鋳込みを行うことにより、ブレークアウトの発生を防止することを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト防止方法。
鋳型各部の局所的な熱流束は、鋳型からの抜熱量を意味しており、抜熱量が凝固シェルの形成に関連している。
したがって、熱流束の変化に異常があったときに凝固シェル厚の形成に異常が生じ、ブレークアウトの発生の危険があると予測することは一応合理的である。
なぜなら、鋳型内での凝固シェル形成過程の初期の段階において熱流束の異常があったとしても、凝固シェル形成過程のその後の段階において凝固シェルが形成され、鋳型出口において所定の厚みの凝固シェルが形成されておれば、ブレークアウト発生の危険はないと判断できる場合もあるからである。
つまり、従来例に示された局所熱流束の変化のみによって、ブレークアウト発生の危険を予測することは十分正確な指標とは言いがたいものであった。
発明者はこの事実を詳細に検討すべく実際の鋳型内における具体的な抜熱状態を調べることとした。
図2は鋳型1の断面図であり、タンディッシュ40の底部に接続され、鋳型1内に設置した浸漬ノズル3から溶鋼5を吐出している(矢印)状態を示している。湯面にはモールドパウダー7(層として示す)が添加され、このモールドパウダー7が鋳型1と溶鋼5の隙間に流れ込み潤滑剤の役割をはたす。溶鋼5はこのモールドパウダー7を介して鋳型1に抜熱され凝固シェル9を形成しながら鋳型出口に向かって引き抜かれる。
この埋設した熱電対17の出力から温度勾配を検出し、この温度勾配に基づいて計算により熱流束を求めることができる。
局所熱流束q1(J/s・m2)の算出は、2本の熱電対17の検出温度をT1(℃)、T2(℃)、埋設間隔をd(m)、及び鋳型1の熱伝導率をλ(J/s・m・℃)として、次式を用いて行なう。
q1=λ(T1−T2)/d
発明者の調査では、鋳型厚み方向に設置した2本の熱電対17からなる一対の熱電対を、例えば鋳型短片(水平断面が直方体を成す鋳型において、短い方の辺)の場合は図4の黒丸印によって示すように通常の湯面位置より下方位置に、高さ40〜200mmおきに合計で8箇所設置した。これらの熱電対17からの出力信号に基づいて、上記の式により局所熱流束を求め、この局所熱流束と湯面からの位置との関係について調査を行なった。
なお、本明細書においては、縦軸を局所熱流束、横軸を湯面からの距離として、局所熱流束と湯面からの距離との関係を示したグラフの形状を熱流束プロファイルという。
図5のグラフに示すように、局所熱流束は湯面から鋳型出口方向に向かって減少し、湯面からの距離が400mmの近傍で極小値をとり、その後、一旦増加傾向を示し、その増加傾向は湯面からの距離が約600mm近傍で極大値を示し、その後再び減少している。
局所熱流束が極小値を示す位置は湯面からの距離が400mm近傍であり、この位置は、浸漬ノズル3の吐出口から吐出される溶鋼5の吐出流が鋳型短辺に衝突する位置と一致している(図2参照)。
このような局所熱流束の変化と溶鋼吐出流との関係は以下のことを物語っている。
そして、浸漬ノズル3から吐出される溶鋼5の吐出流が凝固シェル9に衝突する位置においては、凝固シェル9の再溶解が起こり、凝固シェル厚みが減少し、この薄くなった凝固シェル9の凝固界面に溶鋼流動による熱が加わり局所熱流束が上昇したものと考えられる。
そしてさらに鋳造方向の下流に行くにしたがって、溶鋼流動の影響がなくなり、再び局所熱流束が減少していることから凝固シェル厚が厚くなっていると考えられる。
鋳型内において凝固シェル厚が成長する程度と、凝固シェル9が再溶解することによって一旦形成された凝固シェル9が薄くなる程度との関係は、鋳型出口における凝固シェル厚に直接的に関係していると考えられ、一方ブレークアウトの発生が鋳型出口における凝固シェル厚に関係することを考えると、上記の2つの程度の関係がブレークアウトの発生の有無に深く関わると考えられる。
仮に鋳型内で溶鋼流による凝固シェルの再溶解という現象が発生しないとした場合、例えば浸漬ノズルからの吐出がなく鋳型内の溶鋼が引き抜かれるだけの場合、凝固シェルは湯面から鋳型出口に向かって徐々にその厚みを増していくと考えられる。
このような溶鋼流による凝固シェルの再溶解という現象が発生しない状態を想定して、図5と同様に横軸を湯面からの距離、縦軸を局所熱流束としたグラフを想定すると、図5の場合に見られた途中の盛り上がりのないなだらかな減少曲線になると想定される。
そして、この場合には凝固シェルの鋳型出口での厚みは抜熱量を積算したものに比例すると考えられる。つまり、このような仮定の状況であるなら、上記グラフの熱流束プロファイルを、ブレークアウト発生の指標に容易にできると言える。
したがって、溶鋼流の影響のある状態においては、凝固シェル厚の成長する程度は、単に抜熱量に比例するのではなく、実測される抜熱量から溶鋼流の影響による抜熱量を差し引いたものに比例すると考えられる。この溶鋼流の影響による抜熱量は、溶鋼流による凝固界面への入熱(以下、単に「凝固界面入熱」という。)として評価できる。
このように考えると、浸漬ノズルから溶鋼を吐出している操業状態においては、凝固シェルが薄くなる程度は凝固界面入熱で評価でき、他方、凝固シェルが成長する程度は、熱電対によって測定できる局所熱流束から凝固界面入熱を差し引いたもので評価できる。
よって、これらの2つの評価量を比較検討することで、ブレークアウト発生の指標とできる。
q2=h・Δθ・・・・・・・・・・(1)
但し、h=1.22×105×V0.8
V:溶鋼流速(m/s)
Δθ=T0−TS(℃)
T0:鋳型内溶鋼温度(℃)
TS:溶鋼固相線温度(℃)
なお、鋳型内溶鋼温度T0(℃)は、鋳型内溶鋼温度を実測してもよいし、例えばタンディッシュ(TD)内溶鋼温度(実測値)に基づいて次の鋳型内溶鋼温度推定式によって算出してもよい。
T0=705.156+0.544086・TTD−2.35053・VC−0.00303・W
+18.12663・(0.1018lnFC−0.3362)
但し、TTD:TD内溶鋼温度(℃)(実測値)
VC:鋳造速度(m/min)
W:鋳造幅(m)(実測値)
FC:印加電流値(A)(実測値)
しかしながら、溶鋼流速Vを操業状態においてオンラインで測定することは難しい。
そこで、発明者は、事前に種々の鋳造速度において鋳造された鋳片をサンプリングし、この鋳片におけるデンドライト傾角から各鋳造速度における溶鋼流速値を求めて、この溶鋼流速値に基づく凝固界面入熱q2を求めることを考えた。ここでデンドライト傾角とは、鋳片表面に対する法線方向に対して、表面から厚み方向に伸びているデンドライトの一次枝の傾角であり、溶鋼流速値と相関することが知られている。
この事前に求めた凝固界面入熱q2を「定常状態における凝固界面入熱q2」と称し、定常凝固界面入熱q2regと表記するものとする。なお、定常状態という文言を用いている趣旨は、浸漬ノズルに詰まりがあり溶鋼流速に偏流があるような異常状態を排除する趣旨である。
操業状態における実測された局所熱流束から定常凝固界面入熱q2regを差し引いた熱量についての熱流束プロファイルがなだらかに減少する曲線となった場合には、この熱流束プロファイルが上述した浸漬ノズルからの吐出がなく鋳型内の溶鋼が引き抜かれるだけの場合の熱流束プロファイルと同じであることを意味し、このことは操業状態における凝固界面入熱q2が定常凝固界面入熱q2regと同じであることを意味している。つまり、この状態の場合には凝固シェルを薄くする程度は通常の浸漬ノズルからの溶鋼流によるもの、つまり定常状態と同じであり、このような状況であればあれば鋳型の冷却が通常通り行なわれており、凝固シェルが通常通り成長すればブレークアウトは発生しないと評価できる。
もっとも、凝固界面入熱q2が定常凝固界面入熱q2regと同じ場合には、凝固界面入熱q2の増加によって凝固界面が再溶解することに起因するブレークアウト(以下、「再溶解性ブレークアウト」という)の発生危険はないと言えるが、この場合であっても溶鋼がメニスカスから鋳型下端出口まで移動する間の凝固シェル厚の成長に寄与する抜熱量が小さく、この移動の際に凝固シェルが十分成長ぜずにその厚みが薄い場合には凝固シェル厚の成長に寄与する抜熱量が小さいことに起因するブレークアウト(以下、単に「抜熱不足性ブレークアウト」という)の発生の危険はある。
このように、実測された局所熱流束から定常凝固界面入熱q2regを差し引いた熱量についての熱流束プロファイルを求めることで、その熱流束プロファイルにおけるコブの有無やその大きさの程度によって凝固シェルの再溶解の程度が定常状態と比べてどの程度であるかを明確に把握でき再溶解性ブレークアウト発生の危険性の評価が可能となり、またコブを除いた抜熱熱量を求めることにより抜熱不足性ブレークアウト発生の危険性の評価も可能となるのである。
以下、この検討内容を具体的に説明する。
このグラフから溶鋼流速(m/s)を求め、上記(1)式に基づいて定常凝固界面入熱q2regを求める。
そして、操業状態における局所熱流束を熱電対で測定し、この測定した操業状態と同じ鋳造速度における定常凝固界面入熱q2regを測定値から差し引き、差し引いた熱量における熱流束プロファイルを求める。
図7は縦軸が局所熱流束を示し、横軸が湯面からの距離を示しており、またグラフにおける黒丸の値(D1)が熱電対による測定値を示し、白丸の値(D2)が熱電対による測定値から定常凝固界面入熱q2regを差し引いた値を示している。
以下、図8に基づいて総括熱流束の求め方を説明する。
まず、図8に示すようにグラフを複数の台形に分割することにより、各台形の面積(Q1−1〜Q1−7)を求め、それらを足し算することで全体の面積Qを求める。
そして、グラフにおける極小点をA、極大点をB、鋳型出口の点をCとし、三角形ABCをコブと捉え、このコブの面積すなわち三角形ABCの面積Q2を以下のようにして求める(図9参照)。
点Aに対応する横軸上の点をA´、点Cに対応する横軸上の点をC´とし、台形ACC´A´の面積Q1−8を求め、このQ1―8とQ1―1〜Q1−3を足し算した面積をQ1とすると、Q2=Q−Q1として求まる。
このようにして求めたQ1とQ2に基づいて、それぞれの鋳造条件におけるブレークアウト発生の有無との関係について検討した。その結果を表1に示す。
領域の境界線は、Q1(α1)=15000(KJ/m2)、Q1(α2)=21000(KJ/m2)、Q2(β)=4500(KJ/m2)である。
なお、図10に示した領域において、領域(1)〜(3)はブレークアウト発生危険有りの領域であり、領域(4)、(5)はブレークアウト発生危険無しの領域である。
まず、ブレークアウト発生危険有りで共通している領域(1)〜(3)について比較検討する。
領域(1)(Q1<α1かつQ2≧β)はQ1が小さく抜熱不足性ブレークアウト発生の危険と、Q2が大きく再溶解性ブレークアウト発生の危険の両方が重なる領域であると評価できる。
そして、領域(1)で実際にブレークアウト発生が有ったことから、このブレークアウトは抜熱不足性ブレークアウト及び再溶解性ブレークアウトの両方の性質を有するものであると言える。なお、領域(1)の状態を凝固シェル厚みという観点からみると、Q1が小さいことから、凝固シェル全体の厚みが薄く、かつQ2が大きいことから局部的にも凝固シェルの厚みが薄くなっている部分が存在し、薄くなる程度が大きいと考えられる。
領域(2)(Q1<α1かつQ2<β)はQ1が小さく抜熱不足性ブレークアウト発生の危険があるが、Q2も小さいことから再溶解性ブレークアウト発生の危険は小さい領域であると評価できる。そして、領域(2)で実際にブレークアウト発生が有ったことから、このブレークアウトは抜熱不足性ブレークアウトの性質を有するものであると言える。
なお、領域(2)の状態を凝固シェル厚みという観点からみると、Q1が小さいことから、凝固シェル全体の厚みが薄いが、Q2が小さいことから局部的に凝固シェルの厚みが薄くなっている部分が存在しないか存在したとしても薄くなる程度が小さいと考えられる。
領域(3)(α1≦Q1≦α2かつQ2≧β)はQ1が比較的大きく抜熱不足性ブレークアウト発生の危険は少ないが、Q2が大きいために再溶解性ブレークアウト発生の危険がある領域であると評価できる。そして、領域(3)で実際にブレークアウト発生が有ったことから、このブレークアウトは再溶解性ブレークアウトの性質を有するものであると言える。
なお、領域(3)の状態を凝固シェル厚みという観点からみると、Q1が大きいことから、凝固シェル全体の厚みは比較的厚いが、Q2が大きいことから局部的に凝固シェルの厚みが薄くなっている部分が存在し、薄くなる程度が大きいと考えられる。
<領域(4)>
領域(4)(Q1>α2かつQ2≧β)はQ1が大きく抜熱不足性ブレークアウト発生の危険は少ないが、Q2も大きいために再溶解性ブレークアウト発生の危険がある領域であると評価できる。もっとも、この領域(4)ではブレークアウト発生が無かったことから、凝固シェル厚の成長に寄与する抜熱量が十分大きかったため、凝固シェル全体の厚みが厚く、局部的に凝固シェルが薄くなった箇所があったとしてもブレークアウトには至らなかったものと考えられる。
領域(5)(Q1>α1かつQ2<β)はQ1が比較的大きく抜熱不足性ブレークアウト発生の危険が少なく、Q2が小さいので再溶解性ブレークアウト発生の危険もない領域であると評価できる。そして、この領域(5)でブレークアウト発生が無かったことは、凝固シェル厚の成長に寄与する抜熱量が大きかったため、凝固シェル全体の厚みが厚く、局部的に凝固シェルが薄くなる箇所が無かったか、あったとしても薄くなる程度が小さかったものと考えられる。
具体的には、領域(1)の状態である場合には、Q1を大きくして領域(4)の状態にするか、さらにQ2を小さくして領域(5)の状態にするように操業条件を制御すればよい。また、領域(2)の状態にある場合には、Q1を大きくして領域(5)の状態にするように操業条件を制御すればよい。さらに、領域(3)の状態にある場合には、Q2を小さくして領域(5)の状態にするか、あるいはQ1を大きくして領域(4)の状態にするように操業条件を制御すればよい。
例えば熱流束q1は鋳型冷却水の入側、出側の温度から求める方法等の方法によって得ても良い。 また、定常凝固界面入熱q2regは例えば鋳型内数値シミュレーションによる溶鋼流速の推定値の結果に基づいて求めても良い。
なお、(q1−q2reg)の極小値が分かりにくい(曖昧である、2箇所以上見つかる等)の場合は、図8に示されるようなパターンにできるだけ近づくよう近似曲線を描いて、(q1−q2reg)の低減曲線(図9のQ1に対応する曲線、すなわち局所熱流束の低下量が湯面に近いほど大きい曲線)から外れて極小となる点を求めればよい。
Q1、Q2を求めるに際し、上に説明した方法(台形法)以外の積分手段を用いても良いことは言うまでもない。 また図9の解析において、Q1とQ2の境界線ACは直線である必要はなく、例えば湯面からAまでの曲線等を考慮して近似曲線として求めてもよい。
ただし、凝固シェル厚の成長がQ2に関わらず不十分である場合(前記領域(1)および領域(2))に対応するQ1<α1、凝固シェル厚の成長がQ2に関わらずブレークアウトを回避するに充分である場合(前記領域(5)のQ1>α2となる部分、および領域(4))に対応するQ1>α2が存在することが多いので、それぞれの境界地α1およびα2(α1<α2)を予め定めでおくことが好ましい。
この場合、α1≦Q1≦α2の領域は、Q2の大小に影響される領域となるので、Q2の値に応じてブレークアウトの危険があると判定すればよい。すなわち、この場合は予め定められた閾値以上となった場合にブレークアウトの危険があると判定するのが好ましい。このQ2の閾値はQ1に基づき定めることが望ましいが、結果的にα1≦Q1≦α2の全域で一定の値となってもよい。上記表1の例のβがこれに該当する。
以上で例示したα1、α2、βおよびαの値は、溶鋼が極低炭素鋼の場合、よく一致する。 ここで溶鋼が極低炭素鋼とは、鋳造される溶鋼の段階で、C≦0.01%の鋼を指す。
上記ブレークアウト判定法では、凝固シェル形成現象の解析の基本部分は鋼種に依存しない。 したがって、必要に応じ係数や閾値の校正を行うことにより、他の鋼種にも問題なく適用できる。
該熱流束プロファイルにおいて極小値を示す極小点が存在する場合において、該極小点と鋳型出口での局所熱流束値とを直線で結んだときにこの直線よりも上の部分の面積に相当する総括熱流束をQ2とし、湯面位置から鋳型出口間の該熱流束プロファイルの曲線全体で囲まれる全面積に相当する総括熱流束からQ2を差し引いた面積に相当する総括熱流束をQ1とし、Q1について予め定めた閾値α1、α2(α1<α2)について、Q1<α1のときに、ブレークアウトの危険があると判定し、α1≦Q1≦α2のときには、Q2の値に応じてブレークアウトの危険があると判定することを特徴とするものである。
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
q1=λ(T1−T2)/d
但し、q1:熱流束(J/s・m2)
λ:鋳型の熱伝導率(J/s・m・℃)
T1、T2:熱電対の検出温度(℃)
d:熱電対の埋設間隔(m)
Q1>α2、または、α1≦Q1≦α2かつQ2がブレークアウトの危険があると判定されないよう低減した値となるように操業条件を制御することを特徴とするものである。
Q1>α2かつQ2≧β、または、Q1≧α1かつQ2<βとなるように操業条件を制御することを特徴とするものである。
q1=λ(T1−T2)/d
但し、q1:熱流束(J/s・m2)
λ:鋳型の熱伝導率(J/s・m・℃)
T1、T2:熱電対の検出温度(℃)
d:熱電対の埋設間隔(m)
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
連続鋳造設備は、鋳型1とタンディッシュ40の底部に接続され鋳型1内に設置されて、タンディッシュ40からの溶鋼5を吐出する浸漬ノズル3と、鋳型1から出た鋳片19をガイドするガイドローラ21と、鋳片19を引抜くためのピンチロール23と、ピンチロール23を回転駆動するためのモーター25と、モーター25を制御するためのピンチロール制御装置27とを備えている。
このような構成の連続鋳造設備には、以下の構成からなるブレークアウト防止装置が設けられている。
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
以下、各構成をさらに詳細に説明する。
熱電対17は図3、図4で示したのと同様に鋳型銅板11に埋め込まれている。すなわち、鋳型銅板11の外側面に形成された冷却水通路の底部に孔をあけ、その中に、熱電対17を埋め込み、深さ方向に一定の距離を離した2箇所に埋没した一対の熱電対17を鋳型鋳造方向に8箇所計16本設置している。
なお、熱電対17は鋳型の短辺側及び長辺側に埋め込まれているが、本発明においては、鋳型の各辺ごとに計測して、各辺ごとの計測値に基づいてブレークアウト発生の有無を判定するものである。
局所熱流束演算手段29は、熱電対17の信号を入力して局所熱流束q1を演算する。局所熱流束演算手段29はCPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには、前述したように、2本の熱電対17の検出温度をT1、T2、埋設間隔をd、及び鋳型1の熱伝導率をλとして、局所熱流束を算出する次式が書き込まれている。
q1=λ(T1−T2)/d
定常凝固界面入熱記憶手段31は、下式(1)に基づいて求めた定常状態における鋳型内の溶鋼流動による定常凝固界面入熱q2regのデータを記憶する。
q2reg=h・Δθ・・・・・・・・・・(1)
但し、h=1.22×105×V0.8
V:溶鋼流速(m/s)
Δθ=T0−TS(℃)
T0:鋳型内溶鋼温度(℃)
TS:溶鋼固相線温度(℃)
なお、定常凝固界面入熱q2regを求める手法は、所定の鋳造速度で操業したときに鋳造した鋳片のデンドライト傾角から溶鋼流速を求め、この溶鋼流速をもとにして上記(1)式に基づいて定常凝固界面入熱q2regを求める。
熱流束プロファイル演算手段32は、これら熱流束q1と定常凝固界面入熱q2regの差(q1−q2reg)について溶鋼が湯面から鋳型出口に至るまでの熱流束プロファイルを求める。
熱流束プロファイル演算手段32は、局所熱流束演算手段29と同様に、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには、上述した熱流束プロファイルを演算するロジックが書き込まれている。
ブレークアウト判定手段33は、熱流束プロファイル演算手段32が演算した熱流束プロファイルに基づいて、例えば上述した図9に示すQ1とQ2の関係を求め、これらの関係と予め定めた閾値からブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
例えば上述した図9に示すQ1、Q2を求め、Q1について予め定めた閾値α1、α2(α1<α2)及びQ2について予め定めた閾値βとの関係から、図10に示されるような基準でブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
具体的には、(i)Q1<α1かつQ2≧β、または(ii)Q1<α1かつQ2<β、(iii)またはα1≦Q1≦α2かつQ2≧βのときにブレークアウトの危険があると判定する。
ブレークアウト判定手段33は、ブレークアウトの危険があると判定したときには、その旨を制御手段35に対して出力する。
そのとき、ブレークアウトの危険がQ1<α1かつQ2≧βに基づくものか、あるいはQ1<α1かつQ2<βに基づくものか、またあるいはα1≦Q1≦α2かつQ2≧βに基づくものかを合わせて出力することが好ましい。
なお、閾値α1、α2、βは溶鋼の種類によって決まるものであり、例えば溶鋼が極低炭素鋼の場合には、α1=15000(kJ/m2)、α2=21000(kJ/m2)、β=4500(kJ/m2)である。
なお、極低炭素鋼とは、炭素含有量が0.01mass%以下のものをいう。
例えば上の例で、α1≦Q1≦α2の場合に、Q2がQ1に基づきより細かく設定された閾値以上となった場合にブレークアウトの危険があるかどうか判断してもよい。
ブレークアウト判定手段33についても、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには上述した判定のロジックが書き込まれている。
制御手段35は、ブレークアウト判定手段33がブレークアウトの危険有りと判定したときに、該判定結果に基づいてブレークアウトを回避するために各種の装置の制御を行う。
具体的には、ブレークアウト判定手段33からQ1<α1かつQ2≧βに起因するブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、ピンチロール制御装置27に対してモーター25の回転速度の減速を指令する信号を出力する。また、これに加えて電磁ブレーキ装置41に対して鋳型1内の溶鋼流速を低下させるような直流磁場をかける信号を出力するようにしてもよい。
また、制御手段35は、ブレークアウト判定手段33からQ1<α1かつQ2<βに起因するブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、ピンチロール制御装置27に対してモーター25の回転速度の減速を指令する信号を出力する。
さらにまた、制御手段35は、ブレークアウト判定手段33からα1≦Q1≦α2かつQ2≧βに起因するブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、電磁ブレーキ装置41に対して鋳型1内の溶鋼流速を低下させるような直流磁場をかける信号を出力する。
また、制御手段35は、ブレークアウト判定手段33からのブレークアウトの危険有りとの信号を入力すると、警報装置37に対して警報を発するように指令信号を出力する。
制御手段35についても、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるものであり、このプログラムには上述した指令信号を出力するロジックが書き込まれている。
警報装置37は、ブレークアウト判定手段33からの信号を入力して警報を発する。警報の種類は問わないが、例えば警報音、警報ランプの点灯、これらの組合せなどである。
浸漬ノズル3から溶鋼5を吐出して鋳型1によって冷却して鋳片19を連続鋳造する操業において、熱電対17からの信号を局所熱流束演算手段29に入力して局所熱流束を演算し、この演算結果を熱流束プロファイル演算手段32に入力する。熱流束プロファイル演算手段32は、局所熱流束演算手段29から入力された局所熱流束q1と、定常凝固界面入熱記憶手段31に記憶されている定常凝固界面入熱q2regに基づいて、q1−q2regを演算すると共にこの演算結果に基づいて熱流束プロファイルを演算する。
そして、演算された熱流束プロファイルについて、例えば図9に示したようなQ1、Q2を求め、これらの演算値Q1とQ2をブレークアウト判定手段33に入力する。
ブレークアウト判定手段33は、入力されたQ1とQ2の各値と予め定めた閾値α1、α2、βとの関係でブレークアウト発生の危険の有無を判定する。
一方、判定の結果、ブレークアウト発生の危険があると判定された場合には、ブレークアウト判定手段33が、制御手段35に対してブレークアウトの危険がある旨をその危険がQ1<α1かつQ2≧βに基づくものか、あるいはQ1<α1かつQ2<βに基づくものか、またあるいはα1≦Q1≦α2かつQ2≧βに基づくものかを合わせて出力する。
また、それと同時に警報装置37に対して警報を発する指令信号を出力する。
具体的には、ピンチロール制御装置27に対してモーター25の回転速度の減速を指令する信号を出力する。この信号を入力したピンチロール制御装置27はモーター25の回転数を下げるように制御する。
モーター25の回転数を下げることにより、鋳造速度が低下し、鋳型1内での凝固シェル厚が厚くなるので、抜熱不足性ブレークアウト発生の危険を回避することができる。
また、制御手段35は電磁ブレーキ装置41に対して鋳型1内の溶鋼流速を低下させるような直流磁場をかける信号を出力し、この信号が出力されると電磁ブレーキ装置41によって鋳型1に直流磁場がかけられ鋳型1内の溶鋼流速が低下し、溶鋼流速が低下して溶鋼が凝固シェル界面に衝突する速度が低下し、凝固シェルの再溶解の程度が小さくなるので、凝固シェルの再溶解に起因するブレークアウト発生の危険を回避することができる。
また、極低炭素鋼について、2.5m/分の鋳造速度で操業を行っていたところ、Q1の値が15000JK/m2≦Q1≦21000JK/m2で、Q2の値がQ2≧4500JK/m2になり再溶解性ブレークアウト発生の危険が生じたので、電磁ブレーキ装置41を作動させたところQ2の値を低下させることができ、再溶解性ブレークアウト発生を防止できた。
3 浸漬ノズル
5 溶鋼
7 モールドパウダー
9 凝固シェル
11 鋳型銅板
17 熱電対
19 鋳片
21 ガイドローラ
23 ピンチロール
25 モーター
27 ピンチロール制御装置
29 局所熱流束演算手段
31 定常凝固界面入熱記憶手段
32 熱流束プロファイル演算手段
33 ブレークアウト判定手段
35 制御装置
37 警報装置
41 電磁ブレーキ装置
Claims (10)
- 連続鋳造における鋳型内の溶鋼が湯面から鋳型出口に至るまでの間に凝固界面へ入熱する熱流束q1を測定し、定常状態における鋳型内の溶鋼流動による定常凝固界面入熱q2regを下式(1)に基づいて求め、これら熱流束q1と定常凝固界面入熱q2regの差(q1−q2reg)について溶鋼が湯面から鋳型出口に至るまでの熱流束プロファイルを求め、該熱流束プロファイルにおいて極小値を示す極小点が存在する場合において、該極小点と鋳型出口での局所熱流束値とを直線で結んだときにこの直線よりも上の部分の面積に相当する総括熱流束をQ2とし、湯面位置から鋳型出口間の該熱流束プロファイルの曲線全体で囲まれる全面積に相当する総括熱流束からQ2を差し引いた面積に相当する総括熱流束をQ1とし、Q1について溶鋼の種類ごとに予め定めた閾値α1、α2(α1<α2)及びQ2について溶鋼の種類ごとに予め定めた閾値βに対して、Q1<α1かつQ2≧β、またはQ1<α1かつQ2<β、またはα1≦Q1≦α2かつQ2≧βのときにブレークアウトの危険があると判定することを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)であり、
溶鋼流速に関係する量
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
Δθ=T 0 −T S (℃)
T 0 :鋳型内溶鋼温度(℃)
T S :溶鋼固相線温度(℃) - 溶鋼が極低炭素鋼であり、α1が15000(KJ/m2)、α2が21000(KJ/m2)、βが4500(KJ/m2)であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
- 熱流束q1は、鋳型内に鋳型厚み方向で埋め込み深さの異なる2点間に埋め込んだ一対の熱電対を、鋳型鋳造方向に複数設置して、前記一対の熱電対の出力に基づいて下式によって求める局所熱流束であることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出方法。
q1=λ(T1−T2)/d
但し、q1:熱流束(J/s・m2)
λ:鋳型の熱伝導率(J/s・m・℃)
T1、T2:熱電対の検出温度(℃)
d:熱電対の埋設間隔(m) - 請求項1に記載のブレークアウト検出方法を用いた鋼の連続鋳造方法であって、
Q1>α2かつQ2≧β、または、Q1≧α1かつQ2<βとなるように操業条件を制御することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。 - 請求項4に記載の、鋼の連続鋳造方法であって、操業中において、Q1<α1かつQ2≧βになった場合には鋳造速度を下げる及び/又は鋳型冷却を強くするように操業条件を制御し、または該制御に加えて鋳型内の溶鋼流速を低下させるように操業条件を制御し、Q1<α1かつQ2<βになった場合には鋳造速度を下げる及び/又は鋳型冷却を強くするように操業条件を制御し、α1≦Q1≦α2かつQ2≧βになった場合は、鋳型内の溶鋼流速を低下させるか、あるいはさらに鋳造速度を下げる及び/または鋳型冷却を強くするように操業条件を制御することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
- 請求項4又は5に記載の、鋼の連続鋳造方法であって、熱流束q1が、鋳型内に鋳型厚み方向で埋め込み深さの異なる2点間に埋め込んだ一対の熱電対を、鋳型鋳造方向に複数設置して、前記一対の熱電対の出力に基づいて下式によって求める局所熱流束であることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
q1=λ(T1−T2)/d
但し、q1:熱流束(J/s・m2)
λ:鋳型の熱伝導率(J/s・m・℃)
T1、T2:熱電対の検出温度(℃)
d:熱電対の埋設間隔(m) - 鋳型厚み方向に異なる深さの2点に埋め込んだ一対の熱電対を、鋳型鋳造方向に複数設置してなる熱電対群と、該熱電対群からの温度情報を入力して各熱電対設置部位における局所熱流束q1を求める局所熱流束演算手段と、定常状態における鋳型内の溶鋼流動による定常凝固界面入熱q2regを下式(1)に基づいて求めたデータを記憶する定常凝固界面入熱記憶手段と、これら熱流束q1と定常凝固界面入熱q2regの差(q1−q2reg)について溶鋼が湯面から鋳型出口に至るまでの熱流束プロファイルを求める熱流束プロファイル演算手段と、該熱流束プロファイル演算手段によって求められた熱流束プロファイルにおいて極小値を示す極小点が存在する場合において、該極小点と鋳型出口での局所熱流束値とを直線で結んだときにこの直線よりも上の部分の面積に相当する総括熱流束をQ2とし、湯面位置から鋳型出口間の該熱流束プロファイルの曲線全体で囲まれる全面積に相当する総括熱流束からQ2を差し引いた面積に相当する総括熱流束をQ1とし、Q1について溶鋼の種類ごとに予め定めた閾値α1、α2(α1<α2)及びQ2について溶鋼の種類ごとに予め定めた閾値βに対して、Q1<α1かつQ2≧β、またはQ1<α1かつQ2<β、またはα1≦Q1≦α2かつQ2≧βのときにブレークアウトの危険があると判定するブレークアウト判定手段とを備えたことを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
q2reg=h・Δθ ・・・・・・・・・・ (1)
但し、q2reg:定常凝固界面入熱(J/s・m2)
h:溶鋼と凝固シェルの間の熱伝達係数(J/s・m2・℃)であり、
溶鋼流速に関係する量
Δθ:溶鋼の過熱度(℃)
Δθ=T 0 −T S (℃)
T 0 :鋳型内溶鋼温度(℃)
T S :溶鋼固相線温度(℃) - 溶鋼が極低炭素鋼である場合において、α1が15000(KJ/m2)、α2が21000(KJ/m2)、βが4500(KJ/m2)に設定されていることを特徴とする請求項7に記載の連続鋳造におけるブレークアウト検出装置。
- 請求項7又は8に記載のブレークアウト検出装置を用いたブレークアウト防止装置であって、ブレークアウト判定手段の信号を入力して、ブレークアウト判定手段がブレークアウトの危険有りと判定した場合において、鋳造速度を下げるように操業条件を制御し、または該制御に加えて鋳型内の溶鋼流速を低下させる制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト防止装置。
- 請求項7又は8に記載のブレークアウト検出装置を用いたブレークアウト防止装置であって、ブレークアウト判定手段の信号を入力して、ブレークアウト判定手段がブレークアウトの危険有りと判定した場合において、この危険有りとの判定がQ1<α1かつQ2≧βに基づく危険判定の場合には鋳造速度を下げる及び/又は鋳型冷却を強くするように操業条件を制御し、または該制御に加えて鋳型内の溶鋼流速を低下させる制御を行い、Q1<α1かつQ2<βに基づく危険判定の場合には鋳造速度を下げる及び/又は鋳型冷却を強くするように操業条件を制御し、α1≦Q1≦α2かつQ2≧βに基づく危険判定の場合は鋳型内の溶鋼流速を低下させるか、あるいはさらに鋳造速度を下げる及び/または鋳型冷却を強くする制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする連続鋳造におけるブレークアウト防止装置。
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