JP2004276050A - 連続鋳造のスタート方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】注湯の開始から引抜き開始レベルへの到達までの保持時間を高精度に管理することができ、常に適正な条件下にて引抜きを開始させ得る連続鋳造のスタート方法を提供する。
【解決手段】鋳型2の上下方向に、第1〜第5基準レベルL1 〜L5 を設定し、これらへの到達を定点レベル計7により検出して、夫々への到達時間に基づいてスライディングゲート4の実開口面積を求め、この結果を用いて修正開度を演算して、演算制御装置8からスライディングゲート4の開閉シリンダ41に開度指令を発してスライディングゲート4の開度を変更する。
【選択図】 図1
【解決手段】鋳型2の上下方向に、第1〜第5基準レベルL1 〜L5 を設定し、これらへの到達を定点レベル計7により検出して、夫々への到達時間に基づいてスライディングゲート4の実開口面積を求め、この結果を用いて修正開度を演算して、演算制御装置8からスライディングゲート4の開閉シリンダ41に開度指令を発してスライディングゲート4の開度を変更する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造の操業開始時に、鋳型への溶湯の注入開始からダミーバーの引抜き開始までの過程を自動化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造法は、上下に開口を有する筒形の鋳型に、該鋳型内に延設された注湯ノズルを経て溶融金属(溶湯)を注入し、該鋳型の水冷された内壁に接触せしめて冷却し、外側を凝固シェルにて被覆された鋳片を得て、これを鋳型の下側開口部から連続的に引抜きつつ更に冷却し、内側にまで凝固が進行した後に所定の寸法に切断して、圧延等の後工程での素材となる製品鋳片を得る方法である。
【0003】
以上の如き連続鋳造法は、鋳型の下側開口部にダミーバーを挿入し、鋳型の内壁との間隙に密封材を詰めて前記下側開口部を密に閉塞しておき、該ダミーバーのヘッド部を疑似底とする鋳型の内部に溶湯の注入を開始し、鋳型内部に滞留する溶湯のレベルが所定の引抜き開始レベルに到達するのを待って前記ダミーバーを引抜く手順により開始される。
【0004】
このときダミーバーのヘッド部には、鋳型内部に初期に注湯された溶湯が凝固して係合しており、前記引抜きの開始に伴って鋳型内部の溶湯は、外側を凝固シェルにより被覆された鋳片としてダミーバーと共に引抜かれ、これ以降は、鋳型の内部の湯面レベルを適正レベルに維持すべく、注湯ノズルの中途に設けたスライディングゲートの開度を変えて注湯量を増減制御する湯面レベル制御の実施により、外側を適正な厚さの凝固シェルにて覆われた鋳片が連続的に引抜かれる通常操業に移行することになる。なお、先の操業に連続して実施される操業においては、先行鋳片の後端をダミーバーとして利用する場合もある。
【0005】
さて、以上の如き引抜きの開始に際しては、鋳型内部での鋳片の凝固状態が適正に保たれていることが重要であり、不十分な凝固下にて引抜きが開始された場合、鋳型から引抜かれる鋳片の外側を覆う凝固シェルが破壊され、内部の溶湯が溢れ出すブレークアウトを発生する虞れがあり、逆に過剰な凝固下にて引抜きが開始された場合、引抜き経路の中途でのダミーバーの切り離しに支障を来す虞れがあって、通常操業への移行に支障を来すという難点がある。
【0006】
このような難点を解消するため、従来から、鋳型への注湯開始から引抜き開始までの間の注湯状態の最適化を自動的に行わせることを目的とした連続鋳造のスタート方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
これらのスタート方法は、鋳型内部での鋳片の凝固程度が注湯開始時点から引抜き開始時点までの間の鋳型内部の溶湯の滞留時間に依存することに着目し、注湯開始から予め設定された保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達するように、予め設定された開度パターンに従って前記スライディングゲートの開度を制御し、溶湯の注入量を適正化する手順により実現されている。
【0008】
更に、実設備のスライディングゲートにおいては、ゲート各部における凝固金属の付着、溶融金属の流れ状態の相違等の外乱の影響により、スライディングゲートの開度と実際の注湯量との対応関係、所謂、流量特性に誤差が生じることがあるため、鋳型内部の湯面レベルの上昇を、該鋳型に埋設された熱電対等の定点レベル計により検出し、検出された湯面の上昇パターンが設定された上昇パターンから逸脱している場合、前記スライディングゲートの開度に対して経験的に定まる固定値を加減算する開度修正を行い、前記逸脱を解消するようにしている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2874567号公報
【特許文献2】
特許第3098426号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
さて、近年の連続鋳造設備においては、操業コストの低減を図るべく、複数ロットでの使用を経て劣化したスライディングゲートを、例えば、酸素洗浄により清浄化して再使用する試みがなされている。このように再使用されるスライディングゲートは、前述した酸素洗浄により口径を増大した状態にあるのが一般的である。
【0011】
ところが、このように再使用されるスライディングゲートを用いて前述したスタート方法を実施した場合、該スライディングゲートを所定開度に保ってなされる注湯開始の初期段階において鋳型に注湯される溶湯の量が多く、鋳型の内部における湯面の上昇速度が過大となって、前述した如き開度修正では修正幅が足りず、鋳型上部からの溶湯のオーバフローを生じる虞れがあり、また、このオーバフローを避けるべく、例えば、引抜き開始レベルの近傍にてスライディングゲートを手動操作して微小開度を維持した場合、この維持の間にスライディングゲートに詰まりが生じ易く、引抜き開始後の通常操業に支障を来す虞れがある。
【0012】
このような問題に対しては、酸素洗浄後のスライディングゲートの口径に基づいて開度パターンを変更することにより対応することが可能である。しかしながら、酸素洗浄による口径の増大量は、洗浄前のスライディングゲートの状態に応じて異なるため、洗浄後の口径を精度良く知ることはできず、開度パターンの変更による対応は困難である。
【0013】
同様の問題は、スライディングゲートを再使用する場合に限らず、例えば、スライディングゲートの欠損、変形等、流量特性の大変化を伴う定常的な外乱によっても発生する。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、注湯の開始から引抜き開始レベルへの到達までの保持時間を、スライディングゲートの状態の如何に拘らず適正に管理することができ、常に適正な条件下にて引抜きを開始させ、通常操業への移行に支障を来す虞れのない連続鋳造のスタート方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明に係る連続鋳造のスタート方法は、ダミーバー又は先行鋳片により下側開口部を閉止された連続鋳造用の鋳型の内部にスライディングゲートを経て溶湯を注入し、鋳型内にて上昇する湯面が所定の引抜き開始レベルに到達した時点で前記ダミーバー又は先行鋳片の引抜きを開始する連続鋳造のスタート方法において、前記スライディングゲートを予め設定された初期開度に保って前記溶湯の注入を開始した後、前記引抜き開始レベルよりも低い基準レベルに到達するまでの時間に基づいて前記スライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この結果に基づいて前記基準レベルから前記引抜き開始レベルまでの間のスライディングゲートの開度パターンを修正することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、引抜き開始レベルよりも下位置に設定された基準レベルに達するまでの時間を測定し、この測定結果に基づいてスライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この演算により得られた実開口面積に合うように基準レベルから引抜き開始レベルに至るまでの間のスライディングゲートの開度パターンを、所定の保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達するように修正して、ブレークアウト、鋳型からの溶湯の溢出等の通常操業への移行に支障を来す不具合の発生を未然に防止する。
【0017】
本発明の第2発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記基準レベルへの到達時間を、該基準レベルに対応するように埋設された熱電対による前記鋳型の温度変化の測定結果に基づいて算出することを特徴とする。
【0018】
この発明においては、鋳型の周壁に基準レベルに対応するように熱電対を埋設し、この熱電対による鋳型温度の測定結果に基づいて基準レベルへの到達の有無を検出し、この検出結果を用いて到達時間を算出する。このような到達時間の算出は、熱電対の埋設位置の設定により鋳型の上下方向の適宜位置にて実施することができ、広範囲に亘って基準レベルを設定することができる。
【0019】
本発明の第3発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記基準レベルを複数設定し、夫々の基準レベルにおいて前記開度パターンの修正を実施することを特徴とする。
【0020】
この発明においては、基準レベルを複数箇所に設定し、これらの夫々への到達の都度、開度パターンの修正を実施して、引抜き開始レベルへの到達するまでの保持時間を高精度に実現する。
【0021】
本発明の第4発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記引抜き開始レベルの近傍を検出域に含む渦流レベル計を用い、該渦流レベル計の検出結果に基づいて前記引抜きの開始タイミングを決定することを特徴とする。
【0022】
この発明においては、湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る渦流レベル計により引抜き開始レベルへの到達を検出し、この検出結果に基づいて引抜き開始タイミングを決定する。渦流レベル計は、検出可能な範囲が狭いという欠点を有しているが、引抜き開始レベル近傍の検出に限って用いることは可能であり、引抜き開始タイミングを誤りなく決定することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る連続鋳造のスタート方法(以下本発明方法という)が適用される連続鋳造設備の模式的ブロック図である。
【0024】
図中1は、その内部に溶湯10を貯留するタンディッシュであり、該タンディッシュ1の下方に適長離隔した位置には、上下に開口を有する筒形の鋳型2が配設されている。鋳型2の内部には、タンディッシュ1の底面にその上端を開口させた注湯ノズル3が延設され、タンディッシュ1内の溶湯10は、注湯ノズル3を介して鋳型2に注湯されるようになしてある。
【0025】
注湯ノズル3の基部には、該注湯ノズル3の軸方向と略直交する面内にて移動するゲート板40を備え、該ゲート板40の移動により該注湯ノズル3を開閉して、鋳型2への注湯量を調節するスライディングゲート4が固設してある。ゲート板40は、注湯ノズル3の内側断面に相当する開口を略中央に有する平板であり、油圧シリンダを用いてなる開閉シリンダ41の出力ロッドの先端に連結されている。而して、スライディングゲート4の開度調節は、開閉シリンダ41の進退動作によりゲート板40を移動せしめて行われ、鋳型2への注湯量に対応するスライディングゲート4の開度は、開閉シリンダ41に付設された開度検出器42により、該開閉シリンダ41の進退位置を媒介として検出されている。
【0026】
図1には、操業開始時の状態が示されており、連続鋳造設備の操業は、鋳型2の下側開口部にダミーバー5を挿入し、内壁との間の間隙に耐火ボード等の密封材を詰めて密に閉塞した後、スライディングゲート4を開放して、ダミーバー5を疑似底とする鋳型2の内部にタンディッシュ1内の溶湯10を注入して開始される。前記ダミーバー5は、鋳型2の下方に延設され、鋳片引抜き用のピンチロール(図示せず)に挾持させてあり、該ピンチロールの回転に応じて下向きに引抜かれる構成となっている。また、鋳型2の内部に位置するダミーバー5のヘッド部には、略全面を覆う皿状体の中央部に管状をなす係合突起が突設された係合治具50が取付けてある。
【0027】
ダミーバー5の引抜きは、鋳型2の内部に注入される溶湯10のレベルが所定の引抜き開始レベルLP に到達するのを待って行われる。このとき、ダミーバー5の係合治具50には、鋳型2内に初期に注湯された溶湯10が凝固して係合し、また鋳型2内部の溶湯10は、鋳型2の水冷内壁との接触により、外側を凝固シェルにより被覆された鋳片となっており、該鋳片はダミーバー5の引抜きに伴って係合治具50との係合下にて下方に引抜かれる。
【0028】
ダミーバー5は、引抜き経路の中途において鋳片から分離され、これ以降は、タンディッシュ1から注湯ノズル3を経て注入される溶湯10が、鋳型2の内壁との接触により冷却されて適正な厚さの凝固シェルにより外側が覆われた鋳片となり、前記ピンチロールの回転により鋳型2の下方に連続的に引抜かれる通常操業に移行される。この通常操業は、後述する湯面レベル制御により、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルを引抜き開始レベルLP よりも高い操業レベルLに維持して行われる。なお、以上の如き一連に連続鋳造のスタート過程は、先の操業に連続して行われる場合、ダミーバー5の代わりに先の操業により得られる先行鋳片の末端を疑似底として実施することも可能である。
【0029】
鋳型2の内部に滞留する溶湯10の湯面レベルは、鋳型2の上側開口部から溶湯10の表面を臨むように配設された連続レベル計6と、鋳型2の内壁に埋設された定点レベル計7とにより検出されている。
【0030】
連続レベル計6は、鋳型2内部の溶湯10の表面に臨ませた検出コイルに高周波電流を通電し、これにより溶湯10表面に誘起される渦電流を前記検出コイルのインピーダンス変化を媒介として捉える公知の渦流レベル計であり、該連続レベル計6の出力は、連続レベル演算部60に与えられている。連続レベル演算部60は、連続レベル計6の出力を用いて、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルを前記操業レベルLの近傍において高精度に演算し、この演算結果を現状の湯面レベルを示す信号として出力する動作をなす。
【0031】
ここで連続レベル計6として用いられている渦流レベル計は、鋳型2内の湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る反面、検出可能な範囲が狭いという難点がある。本発明方法の実施に当たっては、操業レベルLの上位置から、該操業レベルLよりも下に設定された引抜き開始レベルLP の下位置までの検出範囲に含むように連続レベル計6を配設する。
【0032】
一方定点レベル計7は、鋳型2の上下方向に適宜の間隔を隔てて並設された複数(図においては5つ)の熱電対を備えて構成されており、該定点レベル計7の出力、即ち、夫々の熱電対による鋳型2の内壁温度の測温結果は、定点レベル演算部70に与えられている。定点レベル演算部7は、夫々の熱電対の測温結果を比較し、例えば、測温結果が大きく変化する熱電対の間に溶湯10の湯面が存在するとして、鋳型2内部の湯面レベルを広範囲に亘って概略的に演算し、この演算結果を出力する動作をなす。
【0033】
以上の如き連続レベル演算部60及び定点レベル演算部70の出力は、開度検出器42により検出されるスライディングゲート4の開度と共に演算制御装置8に与えられている。
【0034】
通常操業中の演算制御装置8は、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果を予め設定された目標レベルと比較し、両者の偏差を解消するために必要なスライディングゲート4の目標開度を、例えば、PID演算により求め、この演算結果と開度検出器42から与えられる現状の開度との偏差に対応する動作指令をスライディングゲート4の開閉シリンダ41に与え、該開閉シリンダ41を進退動作せしめて、スライディングゲート4の開度調節を行うことにより、鋳型2の内部の湯面レベルを目標レベルLに維持する公知の湯面レベル制御動作を行う。
【0035】
また演算制御装置8は、前述の如く行われる連続鋳造のスタート時に、定点レベル演算部70の出力、即ち、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果と共に用い、これらの検出結果に基づいてスライディングゲート4の開度を増減制御する以下に示す制御動作を行う。
【0036】
図2及び図3は、連続鋳造のスタート時における演算制御装置8の動作内容を示すフローチャートである。連続鋳造のスタートに際し演算処理装置8は、まず鋳型2への注湯を開始すべく、スライディングゲート4に開放指令を発し、スライディングゲート4を初期開度(例えば50%)に開放せしめ(ステップ1)、その後、定点レベル演算部70の出力、即ち、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ2)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが前記引抜き開始レベルLP よりも十分低い第1基準レベルL1 に達したか否かを判定する(ステップ3)。
【0037】
ステップ1における初期開度の維持は、スライディングゲート4に詰まりが生じ易い注湯開始初期に十分な開度下にて注湯を行わせて詰まりの発生を回避するためになされる。またステップ3の判定は、正常な注湯が開始されたか否かを判定すべくなされる。この判定に用いる第1基準レベルL1 は、例えば、定点レベル計7を構成する複数(5つ)の熱電対のうち、最下位置にある熱電対の高さ位置に設定すればよい。
【0038】
ステップ3の判定は、所定時間が経過するまで行われ(ステップ4)、所定時間が経過したにも拘らず第1基準レベルL1 への到達が判定されなかった場合、演算制御装置8は、スライディングゲート4に閉止指令を発し(ステップ5)、以下の動作を行うことなく制御動作を終える。なおこのとき、図示しない警報装置に警報動作を行わせ、注湯開始が正常に行えなかったことをオペレータに報知するのが望ましい。
【0039】
一方、ステップ3において第1基準レベルL1 への到達が判定された場合、演算制御装置8は、鋳型2への注湯が正常に開始されたと判定し、下記の(1)式、(2)式により基準開度Xを決定し(ステップ6)、この基準開度Xを実現すべくスライディングゲート4に開度指令を発し、スライディングゲート4の開度を基準開度Xに変更する(ステップ7)。
【0040】
【数1】
【0041】
図4は、基準開度Xの算出方法の説明図である。基準開度Xは、図のO点での注湯の開始後、鋳型2内部を上昇する溶湯10の湯面レベルが、予め設定された所定の保持時間Tp が経過した時点において引抜き開始レベルLP に達するように決定される開度であり、第1基準レベルL1 に到達するまでの時間がT1 であるとき、まず(1)式により、鋳型2の残りの体積DP を残り時間(Tp −T1 )で満たすスライディングゲート4の開口面積Sを算出し、更に、この開口面積Sを用いて(2)式によって基準開度Xを決定する。
【0042】
なお前記保持時間Tp は、鋳型2の内部での冷却により溶湯10の周囲に形成される凝固シェルの生成速度に基づいて決定される時間であり、溶湯10の種別、鋳型2内での冷却条件等の操業条件に応じて経験的に定められる。
【0043】
(1)式中のhは、スライディングゲート4から、タンディッシュ1内部の溶湯10の表面までの高さであり、例えば、タンディッシュ1内部の溶湯10の重量を該タンディッシュ1の支持部に介装されたロードセルにより検出した結果に基づいて求めることができる。またαは、経験的に定まる流量係数であり、gは、重力の加速度である。また(2)式中のRは、スライディングゲート4の開口半径である。
【0044】
以上の如く算出される基準開度Xは、注湯開始時に実現される初期開度よりも一般的に小さく、ステップ7での基準開度Xの実現により、鋳型2内部の溶湯10の注入量が減じられる。図5は、鋳型2の内部における湯面レベルの変化状態の説明図である。本図に示す如く湯面レベルは、前記初期開度を保ってなされる注湯開始時に急増し、第1基準レベルL1 に到達した後、前述の如く求められる基準開度Xの実現により、理想的には、図中に実線により示す如く変化し保持時間Tp の経過後に引抜き開始レベルLP に達する。
【0045】
ところが、例えば、酸素洗浄されたスライディングゲート4を再使用する場合等、基準開度Xの下にて得られるスライディングゲート4の実際の開口面積S′が、前記(2)式にて算出される開口面積Sと異なる場合がある。
【0046】
図6は、再使用されるスライディングゲート4における開口面積の変化の様子を示す説明図である。本図中の実線は、内径がRであるスライディングゲート4の開口4aに対し、これと同径のゲート孔4bを備えるゲート板40が移動して開度Xが実現された状態を示しており、この場合の開口面積Sは、開口4aとゲート孔4bとの重なり部分の面積となる。
【0047】
このようなスライディングゲート4に対して再使用のための酸素洗浄が行われた場合、図中に破線により示す如く、スライディングゲート4の開口4a及びゲート孔4bの内径が夫々R′に拡大し、両者の重なり部分としての開口面積はS′となり、前記開度Xが同一であるという条件下において、図中にハッチングを施して示す面積分だけ拡大する。このように拡大した開口面積S′が得られた場合、スライディングゲート4を経て鋳型2に注湯される溶湯10の量が増大するため、湯面レベルは図5中に破線により示す如く上昇し、保持時間Tp の経過時点において引抜き開始レベルLP を大きく超える状態となる虞れがある。内径拡大後の開口面積S′を拡大前の開口面積と一致させるためには、開度Xを、内径拡大量ΔR(=R′−R)の2倍分だけ小さい修正開度X′(=X−2ΔR)に変更する必要がある。
【0048】
このような問題を解消すべく、演算制御装置8は、ステップ7において基準開度Xを実現した後、開度補正サブルーチンに従って動作する(ステップ8)。図3に示す開度補正サブルーチンにおいて演算制御装置8は、まず、監視対象となる湯面レベルの位置を示す変数iを「2」に初期設定し(ステップ81)、次いで、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ82)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが、監視対象としている第iレベルLi に到達したか否かを判定し(ステップ83)、第iレベルLi への到達が判定された場合、スライディングゲート4の実開口面積S′及び実開口半径R′を演算する(ステップ84)。
【0049】
i=2である場合、前回の監視レベルは、第1基準レベルL1 である。今回の監視レベルである第2基準レベルL2 は、第1基準レベルL1 よりも適長上のレベルであればよく、例えば、定点レベル計7を構成する5つの熱電対のうち、最下位置から2番目に位置する熱電対の高さ位置に設定される。演算制御装置8は、ステップ83において第2基準レベルL2 への到達が判定された場合、この到達までの所要時間T2 と第1基準レベルL1 への到達時間T1 との差(T2 −T1 )を求め、この結果を(1)式中の(Tp −T1 )に置き換え、また、第1基準レベルL1 と第2基準レベルL2 との間の鋳型2の体積D2 を(1)式中のDp に置き換えて、スライディングゲート4の実開口面積S′を推定演算し、更にこの結果を(2)式に適用して実開口半径R′を推定演算する。
【0050】
このように実開口面積S′及び実開口半径R′を演算した後、演算制御装置8は、下記の(3)、(4)式により修正開度X′を決定し(ステップ85)、スライディングゲート4に開度指令を発して、該スライディングゲート4の開度を修正開度X′に変更する(ステップ86)。
【0051】
【数2】
【0052】
(3)式及び(4)式は、(1)式及び(2)式における開口面積Sを実開口面積S′に置き換え、同じく開口半径Rを実開口半径R′に置き換えたものであり、ステップ85において決定される修正開度X′は、スライディングゲート4の実寸法に応じて基準開度Xを修正した値となる。演算制御装置8は、次に、監視対象を示す変数iに1を加え(ステップ87)、該変数iが6となったか否かを判定して(ステップ88)、前述した修正開度X′の決定及びスライディングゲート4の開度変更を、iが6となるまで、即ち、鋳型2内部の湯面レベルが、定点レベル計7を構成する5つの熱電対のうち、最上位置にある熱電対の高さ位置に対応する第5基準レベルL5 に達するまで繰り返し、iが6となった場合、即ち、前記第5基準レベルL5 での修正開度X′の決定及びスライディングゲート4の開度変更を終えた後にリターンする。
【0053】
以上の動作によりスライディングゲート4の開度は、鋳型2内部の湯面レベルが、第2〜第5基準レベルL2 〜L5 に達する都度繰り返されることとなり、図5中に1点鎖線により示す如く、湯面レベルの変化率が第2〜第5基準レベルL2 〜L5 の夫々において変更され、これらの変更により、注湯の開始後、所定の保持時間Tp が経過した時点において引抜き開始レベルLP に正確に到達させることができる。
【0054】
なお基準レベルは、以上の実施の形態に示す5つに限らず、適宜の数だけ設定することができることは言うまでもない。また修正開度は、(3)式及び(4)式により決定される固定値に限らず、時間の経過に従って変動する値とすることもでき、この場合、湯面レベルの変動パターンは、図5に示す直線状ではなく、曲線状となる。
【0055】
以上の如く開度補正サブルーチンを終えた後、演算制御装置8は、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ9)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが前記引抜き開始レベルLP に到達したか否かを判定し(ステップ10)、到達の判定がなされた場合、ダミーバー5の下部を挾持する図示しないピンチロールに動作指令を発し、該ダミーバー5の引抜きを開始させ(ステップ11)、連続鋳造のスタートのための一連の動作を終了する。
【0056】
この動作により、ダミーバー5の引抜き開始タイミングが連続レベル計6の検出結果に基づいて決定されることとなる。連続レベル計6は、前述の如く、鋳型2内部の湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る渦流レベル計であり、正確なタイミングでの引抜き開始を遅れなく実現することが可能となる。また、連続レベル計6による検出結果の取込みを、開度補正ルーチンの終了後、即ち、鋳型2内部の湯面が第5基準レベルL5 に達した後に開始させるようにしたから、検出可能範囲が狭い連続レベル計6の検出結果に基づく正確なタイミング決定が可能となる。
【0057】
また前述の開度補正ルーチンの実施により、引抜き開始レベルLP に到達するまでの保持時間Tp を高精度に管理することができるから、ダミーバー5の引抜きを常に適正な条件下にて開始させ、ブレークアウトの発生、鋳型2からの溶湯10の溢出等、通常操業への移行に支障を来す不具合の発生を確実に防止することができる。
【0058】
最後に、直径335mmの丸ビレットの連続鋳造設備において、以上の如き本発明方法を実施した操業実験の結果について述べる。連続鋳造設備の仕様は、鋳型2の内径が350mm、同じく高さが900mmであり、また、スライディングゲート4の内径が50mmである。
【0059】
本発明方法の実施に当たっては、引抜き開始レベルLP を、鋳型2の上端から120mmの高さ位置に設定し、また、定点レベル計7により検出される第1基準レベルL1 〜第5基準レベルL5 を、鋳型2の上端から450、400、350、300、250mmの高さ位置に夫々設定し、更には、注湯開始時におけるスライディングゲート4の初期開度は、11mmとし、引抜き開始レベルLP に到達するまでの間の保持時間Tp は、55secとした。
【0060】
図7は、以上の操業実験の結果を示す図であり、図7(a)には、鋳型2内部の湯面レベルの変化の様子が、図7(b)には、スライディングゲート4の開度変化の様子が、夫々の時間軸を一致させて示してある。図7(a)に示す如く、注湯の開始から第3基準レベルL3 に達するまでの間には、初期開度の維持により急激な湯面レベルの上昇が生じており、第3基準レベルL3 、第4基準レベルL4 、第5基準レベルL5 への到達時点(図7(a)中に○印にて示す時点)においてスライディングゲート4の開度が夫々減じられ、注湯量が減少せしめられて、引抜き開始レベルLP への到達までの保持時間Tp を正確に実現し得ることがわかる。従って、ブレークアウトの発生、鋳型2内部の溶湯10のオーバフローの発生を確実に防止することができ、常に適正な条件下にて引抜きを開始させ、通常操業への移行に支障を来す虞れを未然に回避することが可能となる。
【0061】
図7(b)に示す如く、第1基準レベルL1 及び第2基準レベルL2 の到達時点において開度変更がなされていないのは、これらのレベル検出が正常に行えなかったためである。引抜き開始レベルLP に達するまでの間に、第1〜第5基準レベルL1 〜L5 を設定したことにより、検出ミスによる制御不能の発生を未然に防止することができる。なお、第1基準レベルL1 及び第2基準レベルL2 の検出が正常になされた場合、これらにおいても夫々開度変更が行われるため、全体に亘ってより滑らかな開度変化が生じ、保持時間Tp の実現精度をより高めることが可能となる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明方法においては、鋳型の上下方向に設定された基準レベルへの到達時間に基づいてスライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この演算結果に基づいてスライディングゲートの開度パターンを修正するから、予め設定された保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達する湯面の上昇パターンを高精度に実現することができ、ブレークアウトの発生、鋳型からの溶湯の溢出等の不具合の発生を未然に防止し、連続鋳造のスタートを誤りなく行わせることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法が適用される連続鋳造設備の模式的ブロック図である。
【図2】連続鋳造のスタート時における演算制御装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図3】連続鋳造のスタート時における演算制御装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図4】基準開度の算出方法の説明図である。
【図5】鋳型の内部における湯面レベルの変化状態の説明図である。
【図6】再使用されるスライディングゲートにおける開口面積の変化の様子を示す説明図である。
【図7】本発明方法を実施した操業実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 注湯ノズル
4 スライディングゲート
5 ダミーバー
6 連続レベル計
7 定点レベル計
8 演算制御装置
10 溶湯
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造の操業開始時に、鋳型への溶湯の注入開始からダミーバーの引抜き開始までの過程を自動化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造法は、上下に開口を有する筒形の鋳型に、該鋳型内に延設された注湯ノズルを経て溶融金属(溶湯)を注入し、該鋳型の水冷された内壁に接触せしめて冷却し、外側を凝固シェルにて被覆された鋳片を得て、これを鋳型の下側開口部から連続的に引抜きつつ更に冷却し、内側にまで凝固が進行した後に所定の寸法に切断して、圧延等の後工程での素材となる製品鋳片を得る方法である。
【0003】
以上の如き連続鋳造法は、鋳型の下側開口部にダミーバーを挿入し、鋳型の内壁との間隙に密封材を詰めて前記下側開口部を密に閉塞しておき、該ダミーバーのヘッド部を疑似底とする鋳型の内部に溶湯の注入を開始し、鋳型内部に滞留する溶湯のレベルが所定の引抜き開始レベルに到達するのを待って前記ダミーバーを引抜く手順により開始される。
【0004】
このときダミーバーのヘッド部には、鋳型内部に初期に注湯された溶湯が凝固して係合しており、前記引抜きの開始に伴って鋳型内部の溶湯は、外側を凝固シェルにより被覆された鋳片としてダミーバーと共に引抜かれ、これ以降は、鋳型の内部の湯面レベルを適正レベルに維持すべく、注湯ノズルの中途に設けたスライディングゲートの開度を変えて注湯量を増減制御する湯面レベル制御の実施により、外側を適正な厚さの凝固シェルにて覆われた鋳片が連続的に引抜かれる通常操業に移行することになる。なお、先の操業に連続して実施される操業においては、先行鋳片の後端をダミーバーとして利用する場合もある。
【0005】
さて、以上の如き引抜きの開始に際しては、鋳型内部での鋳片の凝固状態が適正に保たれていることが重要であり、不十分な凝固下にて引抜きが開始された場合、鋳型から引抜かれる鋳片の外側を覆う凝固シェルが破壊され、内部の溶湯が溢れ出すブレークアウトを発生する虞れがあり、逆に過剰な凝固下にて引抜きが開始された場合、引抜き経路の中途でのダミーバーの切り離しに支障を来す虞れがあって、通常操業への移行に支障を来すという難点がある。
【0006】
このような難点を解消するため、従来から、鋳型への注湯開始から引抜き開始までの間の注湯状態の最適化を自動的に行わせることを目的とした連続鋳造のスタート方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
これらのスタート方法は、鋳型内部での鋳片の凝固程度が注湯開始時点から引抜き開始時点までの間の鋳型内部の溶湯の滞留時間に依存することに着目し、注湯開始から予め設定された保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達するように、予め設定された開度パターンに従って前記スライディングゲートの開度を制御し、溶湯の注入量を適正化する手順により実現されている。
【0008】
更に、実設備のスライディングゲートにおいては、ゲート各部における凝固金属の付着、溶融金属の流れ状態の相違等の外乱の影響により、スライディングゲートの開度と実際の注湯量との対応関係、所謂、流量特性に誤差が生じることがあるため、鋳型内部の湯面レベルの上昇を、該鋳型に埋設された熱電対等の定点レベル計により検出し、検出された湯面の上昇パターンが設定された上昇パターンから逸脱している場合、前記スライディングゲートの開度に対して経験的に定まる固定値を加減算する開度修正を行い、前記逸脱を解消するようにしている。
【0009】
【特許文献1】
特許第2874567号公報
【特許文献2】
特許第3098426号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
さて、近年の連続鋳造設備においては、操業コストの低減を図るべく、複数ロットでの使用を経て劣化したスライディングゲートを、例えば、酸素洗浄により清浄化して再使用する試みがなされている。このように再使用されるスライディングゲートは、前述した酸素洗浄により口径を増大した状態にあるのが一般的である。
【0011】
ところが、このように再使用されるスライディングゲートを用いて前述したスタート方法を実施した場合、該スライディングゲートを所定開度に保ってなされる注湯開始の初期段階において鋳型に注湯される溶湯の量が多く、鋳型の内部における湯面の上昇速度が過大となって、前述した如き開度修正では修正幅が足りず、鋳型上部からの溶湯のオーバフローを生じる虞れがあり、また、このオーバフローを避けるべく、例えば、引抜き開始レベルの近傍にてスライディングゲートを手動操作して微小開度を維持した場合、この維持の間にスライディングゲートに詰まりが生じ易く、引抜き開始後の通常操業に支障を来す虞れがある。
【0012】
このような問題に対しては、酸素洗浄後のスライディングゲートの口径に基づいて開度パターンを変更することにより対応することが可能である。しかしながら、酸素洗浄による口径の増大量は、洗浄前のスライディングゲートの状態に応じて異なるため、洗浄後の口径を精度良く知ることはできず、開度パターンの変更による対応は困難である。
【0013】
同様の問題は、スライディングゲートを再使用する場合に限らず、例えば、スライディングゲートの欠損、変形等、流量特性の大変化を伴う定常的な外乱によっても発生する。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、注湯の開始から引抜き開始レベルへの到達までの保持時間を、スライディングゲートの状態の如何に拘らず適正に管理することができ、常に適正な条件下にて引抜きを開始させ、通常操業への移行に支障を来す虞れのない連続鋳造のスタート方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明に係る連続鋳造のスタート方法は、ダミーバー又は先行鋳片により下側開口部を閉止された連続鋳造用の鋳型の内部にスライディングゲートを経て溶湯を注入し、鋳型内にて上昇する湯面が所定の引抜き開始レベルに到達した時点で前記ダミーバー又は先行鋳片の引抜きを開始する連続鋳造のスタート方法において、前記スライディングゲートを予め設定された初期開度に保って前記溶湯の注入を開始した後、前記引抜き開始レベルよりも低い基準レベルに到達するまでの時間に基づいて前記スライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この結果に基づいて前記基準レベルから前記引抜き開始レベルまでの間のスライディングゲートの開度パターンを修正することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、引抜き開始レベルよりも下位置に設定された基準レベルに達するまでの時間を測定し、この測定結果に基づいてスライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この演算により得られた実開口面積に合うように基準レベルから引抜き開始レベルに至るまでの間のスライディングゲートの開度パターンを、所定の保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達するように修正して、ブレークアウト、鋳型からの溶湯の溢出等の通常操業への移行に支障を来す不具合の発生を未然に防止する。
【0017】
本発明の第2発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記基準レベルへの到達時間を、該基準レベルに対応するように埋設された熱電対による前記鋳型の温度変化の測定結果に基づいて算出することを特徴とする。
【0018】
この発明においては、鋳型の周壁に基準レベルに対応するように熱電対を埋設し、この熱電対による鋳型温度の測定結果に基づいて基準レベルへの到達の有無を検出し、この検出結果を用いて到達時間を算出する。このような到達時間の算出は、熱電対の埋設位置の設定により鋳型の上下方向の適宜位置にて実施することができ、広範囲に亘って基準レベルを設定することができる。
【0019】
本発明の第3発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記基準レベルを複数設定し、夫々の基準レベルにおいて前記開度パターンの修正を実施することを特徴とする。
【0020】
この発明においては、基準レベルを複数箇所に設定し、これらの夫々への到達の都度、開度パターンの修正を実施して、引抜き開始レベルへの到達するまでの保持時間を高精度に実現する。
【0021】
本発明の第4発明に係る連続鋳造のスタート方法は、前記引抜き開始レベルの近傍を検出域に含む渦流レベル計を用い、該渦流レベル計の検出結果に基づいて前記引抜きの開始タイミングを決定することを特徴とする。
【0022】
この発明においては、湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る渦流レベル計により引抜き開始レベルへの到達を検出し、この検出結果に基づいて引抜き開始タイミングを決定する。渦流レベル計は、検出可能な範囲が狭いという欠点を有しているが、引抜き開始レベル近傍の検出に限って用いることは可能であり、引抜き開始タイミングを誤りなく決定することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る連続鋳造のスタート方法(以下本発明方法という)が適用される連続鋳造設備の模式的ブロック図である。
【0024】
図中1は、その内部に溶湯10を貯留するタンディッシュであり、該タンディッシュ1の下方に適長離隔した位置には、上下に開口を有する筒形の鋳型2が配設されている。鋳型2の内部には、タンディッシュ1の底面にその上端を開口させた注湯ノズル3が延設され、タンディッシュ1内の溶湯10は、注湯ノズル3を介して鋳型2に注湯されるようになしてある。
【0025】
注湯ノズル3の基部には、該注湯ノズル3の軸方向と略直交する面内にて移動するゲート板40を備え、該ゲート板40の移動により該注湯ノズル3を開閉して、鋳型2への注湯量を調節するスライディングゲート4が固設してある。ゲート板40は、注湯ノズル3の内側断面に相当する開口を略中央に有する平板であり、油圧シリンダを用いてなる開閉シリンダ41の出力ロッドの先端に連結されている。而して、スライディングゲート4の開度調節は、開閉シリンダ41の進退動作によりゲート板40を移動せしめて行われ、鋳型2への注湯量に対応するスライディングゲート4の開度は、開閉シリンダ41に付設された開度検出器42により、該開閉シリンダ41の進退位置を媒介として検出されている。
【0026】
図1には、操業開始時の状態が示されており、連続鋳造設備の操業は、鋳型2の下側開口部にダミーバー5を挿入し、内壁との間の間隙に耐火ボード等の密封材を詰めて密に閉塞した後、スライディングゲート4を開放して、ダミーバー5を疑似底とする鋳型2の内部にタンディッシュ1内の溶湯10を注入して開始される。前記ダミーバー5は、鋳型2の下方に延設され、鋳片引抜き用のピンチロール(図示せず)に挾持させてあり、該ピンチロールの回転に応じて下向きに引抜かれる構成となっている。また、鋳型2の内部に位置するダミーバー5のヘッド部には、略全面を覆う皿状体の中央部に管状をなす係合突起が突設された係合治具50が取付けてある。
【0027】
ダミーバー5の引抜きは、鋳型2の内部に注入される溶湯10のレベルが所定の引抜き開始レベルLP に到達するのを待って行われる。このとき、ダミーバー5の係合治具50には、鋳型2内に初期に注湯された溶湯10が凝固して係合し、また鋳型2内部の溶湯10は、鋳型2の水冷内壁との接触により、外側を凝固シェルにより被覆された鋳片となっており、該鋳片はダミーバー5の引抜きに伴って係合治具50との係合下にて下方に引抜かれる。
【0028】
ダミーバー5は、引抜き経路の中途において鋳片から分離され、これ以降は、タンディッシュ1から注湯ノズル3を経て注入される溶湯10が、鋳型2の内壁との接触により冷却されて適正な厚さの凝固シェルにより外側が覆われた鋳片となり、前記ピンチロールの回転により鋳型2の下方に連続的に引抜かれる通常操業に移行される。この通常操業は、後述する湯面レベル制御により、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルを引抜き開始レベルLP よりも高い操業レベルLに維持して行われる。なお、以上の如き一連に連続鋳造のスタート過程は、先の操業に連続して行われる場合、ダミーバー5の代わりに先の操業により得られる先行鋳片の末端を疑似底として実施することも可能である。
【0029】
鋳型2の内部に滞留する溶湯10の湯面レベルは、鋳型2の上側開口部から溶湯10の表面を臨むように配設された連続レベル計6と、鋳型2の内壁に埋設された定点レベル計7とにより検出されている。
【0030】
連続レベル計6は、鋳型2内部の溶湯10の表面に臨ませた検出コイルに高周波電流を通電し、これにより溶湯10表面に誘起される渦電流を前記検出コイルのインピーダンス変化を媒介として捉える公知の渦流レベル計であり、該連続レベル計6の出力は、連続レベル演算部60に与えられている。連続レベル演算部60は、連続レベル計6の出力を用いて、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルを前記操業レベルLの近傍において高精度に演算し、この演算結果を現状の湯面レベルを示す信号として出力する動作をなす。
【0031】
ここで連続レベル計6として用いられている渦流レベル計は、鋳型2内の湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る反面、検出可能な範囲が狭いという難点がある。本発明方法の実施に当たっては、操業レベルLの上位置から、該操業レベルLよりも下に設定された引抜き開始レベルLP の下位置までの検出範囲に含むように連続レベル計6を配設する。
【0032】
一方定点レベル計7は、鋳型2の上下方向に適宜の間隔を隔てて並設された複数(図においては5つ)の熱電対を備えて構成されており、該定点レベル計7の出力、即ち、夫々の熱電対による鋳型2の内壁温度の測温結果は、定点レベル演算部70に与えられている。定点レベル演算部7は、夫々の熱電対の測温結果を比較し、例えば、測温結果が大きく変化する熱電対の間に溶湯10の湯面が存在するとして、鋳型2内部の湯面レベルを広範囲に亘って概略的に演算し、この演算結果を出力する動作をなす。
【0033】
以上の如き連続レベル演算部60及び定点レベル演算部70の出力は、開度検出器42により検出されるスライディングゲート4の開度と共に演算制御装置8に与えられている。
【0034】
通常操業中の演算制御装置8は、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果を予め設定された目標レベルと比較し、両者の偏差を解消するために必要なスライディングゲート4の目標開度を、例えば、PID演算により求め、この演算結果と開度検出器42から与えられる現状の開度との偏差に対応する動作指令をスライディングゲート4の開閉シリンダ41に与え、該開閉シリンダ41を進退動作せしめて、スライディングゲート4の開度調節を行うことにより、鋳型2の内部の湯面レベルを目標レベルLに維持する公知の湯面レベル制御動作を行う。
【0035】
また演算制御装置8は、前述の如く行われる連続鋳造のスタート時に、定点レベル演算部70の出力、即ち、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果と共に用い、これらの検出結果に基づいてスライディングゲート4の開度を増減制御する以下に示す制御動作を行う。
【0036】
図2及び図3は、連続鋳造のスタート時における演算制御装置8の動作内容を示すフローチャートである。連続鋳造のスタートに際し演算処理装置8は、まず鋳型2への注湯を開始すべく、スライディングゲート4に開放指令を発し、スライディングゲート4を初期開度(例えば50%)に開放せしめ(ステップ1)、その後、定点レベル演算部70の出力、即ち、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ2)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが前記引抜き開始レベルLP よりも十分低い第1基準レベルL1 に達したか否かを判定する(ステップ3)。
【0037】
ステップ1における初期開度の維持は、スライディングゲート4に詰まりが生じ易い注湯開始初期に十分な開度下にて注湯を行わせて詰まりの発生を回避するためになされる。またステップ3の判定は、正常な注湯が開始されたか否かを判定すべくなされる。この判定に用いる第1基準レベルL1 は、例えば、定点レベル計7を構成する複数(5つ)の熱電対のうち、最下位置にある熱電対の高さ位置に設定すればよい。
【0038】
ステップ3の判定は、所定時間が経過するまで行われ(ステップ4)、所定時間が経過したにも拘らず第1基準レベルL1 への到達が判定されなかった場合、演算制御装置8は、スライディングゲート4に閉止指令を発し(ステップ5)、以下の動作を行うことなく制御動作を終える。なおこのとき、図示しない警報装置に警報動作を行わせ、注湯開始が正常に行えなかったことをオペレータに報知するのが望ましい。
【0039】
一方、ステップ3において第1基準レベルL1 への到達が判定された場合、演算制御装置8は、鋳型2への注湯が正常に開始されたと判定し、下記の(1)式、(2)式により基準開度Xを決定し(ステップ6)、この基準開度Xを実現すべくスライディングゲート4に開度指令を発し、スライディングゲート4の開度を基準開度Xに変更する(ステップ7)。
【0040】
【数1】
【0041】
図4は、基準開度Xの算出方法の説明図である。基準開度Xは、図のO点での注湯の開始後、鋳型2内部を上昇する溶湯10の湯面レベルが、予め設定された所定の保持時間Tp が経過した時点において引抜き開始レベルLP に達するように決定される開度であり、第1基準レベルL1 に到達するまでの時間がT1 であるとき、まず(1)式により、鋳型2の残りの体積DP を残り時間(Tp −T1 )で満たすスライディングゲート4の開口面積Sを算出し、更に、この開口面積Sを用いて(2)式によって基準開度Xを決定する。
【0042】
なお前記保持時間Tp は、鋳型2の内部での冷却により溶湯10の周囲に形成される凝固シェルの生成速度に基づいて決定される時間であり、溶湯10の種別、鋳型2内での冷却条件等の操業条件に応じて経験的に定められる。
【0043】
(1)式中のhは、スライディングゲート4から、タンディッシュ1内部の溶湯10の表面までの高さであり、例えば、タンディッシュ1内部の溶湯10の重量を該タンディッシュ1の支持部に介装されたロードセルにより検出した結果に基づいて求めることができる。またαは、経験的に定まる流量係数であり、gは、重力の加速度である。また(2)式中のRは、スライディングゲート4の開口半径である。
【0044】
以上の如く算出される基準開度Xは、注湯開始時に実現される初期開度よりも一般的に小さく、ステップ7での基準開度Xの実現により、鋳型2内部の溶湯10の注入量が減じられる。図5は、鋳型2の内部における湯面レベルの変化状態の説明図である。本図に示す如く湯面レベルは、前記初期開度を保ってなされる注湯開始時に急増し、第1基準レベルL1 に到達した後、前述の如く求められる基準開度Xの実現により、理想的には、図中に実線により示す如く変化し保持時間Tp の経過後に引抜き開始レベルLP に達する。
【0045】
ところが、例えば、酸素洗浄されたスライディングゲート4を再使用する場合等、基準開度Xの下にて得られるスライディングゲート4の実際の開口面積S′が、前記(2)式にて算出される開口面積Sと異なる場合がある。
【0046】
図6は、再使用されるスライディングゲート4における開口面積の変化の様子を示す説明図である。本図中の実線は、内径がRであるスライディングゲート4の開口4aに対し、これと同径のゲート孔4bを備えるゲート板40が移動して開度Xが実現された状態を示しており、この場合の開口面積Sは、開口4aとゲート孔4bとの重なり部分の面積となる。
【0047】
このようなスライディングゲート4に対して再使用のための酸素洗浄が行われた場合、図中に破線により示す如く、スライディングゲート4の開口4a及びゲート孔4bの内径が夫々R′に拡大し、両者の重なり部分としての開口面積はS′となり、前記開度Xが同一であるという条件下において、図中にハッチングを施して示す面積分だけ拡大する。このように拡大した開口面積S′が得られた場合、スライディングゲート4を経て鋳型2に注湯される溶湯10の量が増大するため、湯面レベルは図5中に破線により示す如く上昇し、保持時間Tp の経過時点において引抜き開始レベルLP を大きく超える状態となる虞れがある。内径拡大後の開口面積S′を拡大前の開口面積と一致させるためには、開度Xを、内径拡大量ΔR(=R′−R)の2倍分だけ小さい修正開度X′(=X−2ΔR)に変更する必要がある。
【0048】
このような問題を解消すべく、演算制御装置8は、ステップ7において基準開度Xを実現した後、開度補正サブルーチンに従って動作する(ステップ8)。図3に示す開度補正サブルーチンにおいて演算制御装置8は、まず、監視対象となる湯面レベルの位置を示す変数iを「2」に初期設定し(ステップ81)、次いで、定点レベル計7による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ82)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが、監視対象としている第iレベルLi に到達したか否かを判定し(ステップ83)、第iレベルLi への到達が判定された場合、スライディングゲート4の実開口面積S′及び実開口半径R′を演算する(ステップ84)。
【0049】
i=2である場合、前回の監視レベルは、第1基準レベルL1 である。今回の監視レベルである第2基準レベルL2 は、第1基準レベルL1 よりも適長上のレベルであればよく、例えば、定点レベル計7を構成する5つの熱電対のうち、最下位置から2番目に位置する熱電対の高さ位置に設定される。演算制御装置8は、ステップ83において第2基準レベルL2 への到達が判定された場合、この到達までの所要時間T2 と第1基準レベルL1 への到達時間T1 との差(T2 −T1 )を求め、この結果を(1)式中の(Tp −T1 )に置き換え、また、第1基準レベルL1 と第2基準レベルL2 との間の鋳型2の体積D2 を(1)式中のDp に置き換えて、スライディングゲート4の実開口面積S′を推定演算し、更にこの結果を(2)式に適用して実開口半径R′を推定演算する。
【0050】
このように実開口面積S′及び実開口半径R′を演算した後、演算制御装置8は、下記の(3)、(4)式により修正開度X′を決定し(ステップ85)、スライディングゲート4に開度指令を発して、該スライディングゲート4の開度を修正開度X′に変更する(ステップ86)。
【0051】
【数2】
【0052】
(3)式及び(4)式は、(1)式及び(2)式における開口面積Sを実開口面積S′に置き換え、同じく開口半径Rを実開口半径R′に置き換えたものであり、ステップ85において決定される修正開度X′は、スライディングゲート4の実寸法に応じて基準開度Xを修正した値となる。演算制御装置8は、次に、監視対象を示す変数iに1を加え(ステップ87)、該変数iが6となったか否かを判定して(ステップ88)、前述した修正開度X′の決定及びスライディングゲート4の開度変更を、iが6となるまで、即ち、鋳型2内部の湯面レベルが、定点レベル計7を構成する5つの熱電対のうち、最上位置にある熱電対の高さ位置に対応する第5基準レベルL5 に達するまで繰り返し、iが6となった場合、即ち、前記第5基準レベルL5 での修正開度X′の決定及びスライディングゲート4の開度変更を終えた後にリターンする。
【0053】
以上の動作によりスライディングゲート4の開度は、鋳型2内部の湯面レベルが、第2〜第5基準レベルL2 〜L5 に達する都度繰り返されることとなり、図5中に1点鎖線により示す如く、湯面レベルの変化率が第2〜第5基準レベルL2 〜L5 の夫々において変更され、これらの変更により、注湯の開始後、所定の保持時間Tp が経過した時点において引抜き開始レベルLP に正確に到達させることができる。
【0054】
なお基準レベルは、以上の実施の形態に示す5つに限らず、適宜の数だけ設定することができることは言うまでもない。また修正開度は、(3)式及び(4)式により決定される固定値に限らず、時間の経過に従って変動する値とすることもでき、この場合、湯面レベルの変動パターンは、図5に示す直線状ではなく、曲線状となる。
【0055】
以上の如く開度補正サブルーチンを終えた後、演算制御装置8は、連続レベル演算部60の出力、即ち、連続レベル計6による湯面レベルの検出結果を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ9)、鋳型2内部の溶湯10の湯面レベルが前記引抜き開始レベルLP に到達したか否かを判定し(ステップ10)、到達の判定がなされた場合、ダミーバー5の下部を挾持する図示しないピンチロールに動作指令を発し、該ダミーバー5の引抜きを開始させ(ステップ11)、連続鋳造のスタートのための一連の動作を終了する。
【0056】
この動作により、ダミーバー5の引抜き開始タイミングが連続レベル計6の検出結果に基づいて決定されることとなる。連続レベル計6は、前述の如く、鋳型2内部の湯面レベルを高精度にしかも高応答に検出し得る渦流レベル計であり、正確なタイミングでの引抜き開始を遅れなく実現することが可能となる。また、連続レベル計6による検出結果の取込みを、開度補正ルーチンの終了後、即ち、鋳型2内部の湯面が第5基準レベルL5 に達した後に開始させるようにしたから、検出可能範囲が狭い連続レベル計6の検出結果に基づく正確なタイミング決定が可能となる。
【0057】
また前述の開度補正ルーチンの実施により、引抜き開始レベルLP に到達するまでの保持時間Tp を高精度に管理することができるから、ダミーバー5の引抜きを常に適正な条件下にて開始させ、ブレークアウトの発生、鋳型2からの溶湯10の溢出等、通常操業への移行に支障を来す不具合の発生を確実に防止することができる。
【0058】
最後に、直径335mmの丸ビレットの連続鋳造設備において、以上の如き本発明方法を実施した操業実験の結果について述べる。連続鋳造設備の仕様は、鋳型2の内径が350mm、同じく高さが900mmであり、また、スライディングゲート4の内径が50mmである。
【0059】
本発明方法の実施に当たっては、引抜き開始レベルLP を、鋳型2の上端から120mmの高さ位置に設定し、また、定点レベル計7により検出される第1基準レベルL1 〜第5基準レベルL5 を、鋳型2の上端から450、400、350、300、250mmの高さ位置に夫々設定し、更には、注湯開始時におけるスライディングゲート4の初期開度は、11mmとし、引抜き開始レベルLP に到達するまでの間の保持時間Tp は、55secとした。
【0060】
図7は、以上の操業実験の結果を示す図であり、図7(a)には、鋳型2内部の湯面レベルの変化の様子が、図7(b)には、スライディングゲート4の開度変化の様子が、夫々の時間軸を一致させて示してある。図7(a)に示す如く、注湯の開始から第3基準レベルL3 に達するまでの間には、初期開度の維持により急激な湯面レベルの上昇が生じており、第3基準レベルL3 、第4基準レベルL4 、第5基準レベルL5 への到達時点(図7(a)中に○印にて示す時点)においてスライディングゲート4の開度が夫々減じられ、注湯量が減少せしめられて、引抜き開始レベルLP への到達までの保持時間Tp を正確に実現し得ることがわかる。従って、ブレークアウトの発生、鋳型2内部の溶湯10のオーバフローの発生を確実に防止することができ、常に適正な条件下にて引抜きを開始させ、通常操業への移行に支障を来す虞れを未然に回避することが可能となる。
【0061】
図7(b)に示す如く、第1基準レベルL1 及び第2基準レベルL2 の到達時点において開度変更がなされていないのは、これらのレベル検出が正常に行えなかったためである。引抜き開始レベルLP に達するまでの間に、第1〜第5基準レベルL1 〜L5 を設定したことにより、検出ミスによる制御不能の発生を未然に防止することができる。なお、第1基準レベルL1 及び第2基準レベルL2 の検出が正常になされた場合、これらにおいても夫々開度変更が行われるため、全体に亘ってより滑らかな開度変化が生じ、保持時間Tp の実現精度をより高めることが可能となる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明方法においては、鋳型の上下方向に設定された基準レベルへの到達時間に基づいてスライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この演算結果に基づいてスライディングゲートの開度パターンを修正するから、予め設定された保持時間の経過後に引抜き開始レベルに達する湯面の上昇パターンを高精度に実現することができ、ブレークアウトの発生、鋳型からの溶湯の溢出等の不具合の発生を未然に防止し、連続鋳造のスタートを誤りなく行わせることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法が適用される連続鋳造設備の模式的ブロック図である。
【図2】連続鋳造のスタート時における演算制御装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図3】連続鋳造のスタート時における演算制御装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図4】基準開度の算出方法の説明図である。
【図5】鋳型の内部における湯面レベルの変化状態の説明図である。
【図6】再使用されるスライディングゲートにおける開口面積の変化の様子を示す説明図である。
【図7】本発明方法を実施した操業実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 注湯ノズル
4 スライディングゲート
5 ダミーバー
6 連続レベル計
7 定点レベル計
8 演算制御装置
10 溶湯
Claims (4)
- ダミーバー又は先行鋳片により下側開口部を閉止された連続鋳造用の鋳型の内部にスライディングゲートを経て溶湯を注入し、鋳型内にて上昇する湯面が所定の引抜き開始レベルに到達した時点で前記ダミーバー又は先行鋳片の引抜きを開始する連続鋳造のスタート方法において、
前記スライディングゲートを予め設定された初期開度に保って前記溶湯の注入を開始した後、前記引抜き開始レベルよりも低い基準レベルに到達するまでの時間に基づいて前記スライディングゲートの実開口面積を推定演算し、この結果に基づいて前記基準レベルから前記引抜き開始レベルまでの間のスライディングゲートの開度パターンを修正することを特徴とする連続鋳造のスタート方法。 - 前記基準レベルへの到達時間を、該基準レベルに対応するように埋設された熱電対による前記鋳型の温度変化の測定結果に基づいて算出する請求項1記載の連続鋳造のスタート方法。
- 前記基準レベルを複数設定し、夫々の基準レベルにおいて前記開度パターンの修正を実施する請求項1又は請求項2記載の連続鋳造のスタート方法。
- 前記引抜き開始レベルの近傍を検出域に含む渦流レベル計を用い、該渦流レベル計の検出結果に基づいて前記引抜きの開始タイミングを決定する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の連続鋳造のスタート方法。
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2003
- 2003-03-13 JP JP2003068753A patent/JP2004276050A/ja active Pending
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