JP2012082808A - エンジン回転停止制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて目標軌道情報(目標軌道の算出に用いる基準回転速度とロストルクのずれ量)を学習するシステムにおいて、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制する。
【解決手段】エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で大気圧を検出して、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じた大気圧補正量を算出し、その大気圧補正量を用いて目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)の学習値を補正することで、大気圧に応じて実際の目標軌道情報(目標軌道情報の真値)が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付ける。この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制する。
【選択図】図1
【解決手段】エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で大気圧を検出して、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じた大気圧補正量を算出し、その大気圧補正量を用いて目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)の学習値を補正することで、大気圧に応じて実際の目標軌道情報(目標軌道情報の真値)が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付ける。この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制する。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジン回転停止位置(停止クランク角)を制御する機能を備えたエンジン回転停止制御装置に関する発明である。
近年、例えば、特許文献1(特開2008−215230号公報)に記載されているように、エンジン自動停止・始動システム(アイドルストップシステム)を搭載した車両では、再始動性を向上させるために、エンジン停止時(アイドルストップ時)にエンジン回転停止位置(停止クランク角)を始動に適したクランク角範囲に制御することを目的として、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するまでの回転挙動を目標軌道として算出し、エンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機(オルタネータ)の負荷トルクを制御するエンジン回転停止制御を行うようにしたものがある。具体的には、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機の要求負荷トルクを算出し、発電機の負荷トルク特性(発電指令値とエンジン回転速度と負荷トルクとの関係)を用いて、現在のエンジン回転速度と要求負荷トルクに応じた発電指令値を算出し、この発電指令値で発電機の発電制御電流(フィールド電流)を制御して発電機の負荷トルクを制御するようにしている。
ところで、エンジン回転停止制御の際に、エンジン回転速度が発電機の発電限界回転速度以下に低下すると、発電機の負荷トルクがほとんど発生しなくなる(図3参照)。このような回転速度領域では、発電機の負荷トルクの影響をほとんど受けずにエンジン回転速度が低下してエンジン回転が停止するため、所定の基準タイミング(例えばTDC)を通過する際のエンジン回転速度に応じた停止クランク角でエンジン回転が停止する。
このような特性に着目して、本出願人は、基準タイミングのエンジン回転速度(基準タイミングを通過する際のエンジン回転速度)と停止クランク角との関係を用いて、停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度を基準回転速度として求め、エンジンのロストルク(ポンピングロスやフリクションロスを合計したトルク)を考慮したエネルギ保存則の関係式を用いて、基準回転速度を初期値としてクランク角を溯る方向に目標軌道を設定するシステムを研究しているが、その研究過程で次のような新たな課題が判明した。
エンジンのオイル交換や経時変化等によってエンジンのフリクション等が変化すると、目標軌道の算出に用いる基準回転速度やロストルクも変化する。そこで、目標軌道の算出精度を確保するために、エンジンの完全暖機後にエンジン回転停止制御によってエンジン回転速度が発電機の発電限界回転速度以下に低下したときの実エンジン回転挙動に基づいて基準回転速度の学習値とロストルクのずれ量の学習値を算出して記憶することで、基準回転速度とロストルクのずれ量を学習するシステムを研究している。
しかし、大気圧やエンジン温度(暖機状態)が変化すると、ポンピングロスやフリクションロスが変化して、基準回転速度やロストルクも変化する。このため、例えば、平地でエンジン回転停止制御が実行されて基準回転速度とロストルクのずれ量を学習した後、一度もエンジン回転停止制御が実行されずに高地へ移動したときにエンジン回転停止制御が実行される場合には、大気圧の変化により実際の基準回転速度やロストルクのずれ量が変化しているにも拘らず、平地で学習した基準回転速度の学習値とロストルクのずれ量の学習値をそのまま用いて目標軌道を算出することになるため、その後、学習が何回か実行されて基準回転速度やロストルクのずれ量の学習値が真値(実際の基準回転速度やロストルクのずれ量)に近付くまでは、目標軌道を精度良く設定することができず、エンジン回転停止制御の精度が低下するという問題がある。尚、この問題は、平地から高地に移動した場合だけでなく、高地から平地に移動した場合にも同様に起こり得る。
また、エンジンの完全暖機後にエンジン回転停止制御が実行されて基準回転速度とロストルクのずれ量を学習した後、車両が駐車されてエンジン温度が低下した後にエンジンが始動されて、エンジンの暖機中(暖機前)にエンジン回転停止制御が実行される場合には、エンジン温度の変化により実際の基準回転速度やロストルクのずれ量が変化しているにも拘らず、エンジンの完全暖機後に学習した基準回転速度の学習値とロストルクのずれ量の学習値を用いて目標軌道を算出することになるため、目標軌道を精度良く設定することができず、エンジン回転停止制御の精度が低下するという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、大気圧やエンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができるエンジン回転停止制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで目標軌道情報を学習する学習手段と、大気圧を検出又は推定する大気圧取得手段と、この大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧に応じて補正量を算出し、その補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正する学習値補正手段とを備え、目標軌道算出手段は、学習値補正手段で補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するようにしたものである。
この構成では、大気圧に応じた補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正することで、大気圧に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値(実際の目標軌道情報)に近付けることができ、この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
本発明は、例えば、所定時間毎や所定走行距離毎に大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良いが、請求項2のように、エンジン停止要求が発生したときに大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧(以下「エンジン停止要求時の大気圧」という)に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。このようにすれば、大気圧に応じて目標軌道情報の学習値を補正する回数を必要最小限にして制御回路の演算負荷を軽減しながら、エンジン停止要求が発生してエンジン回転停止制御が実行される際には、そのときの大気圧に応じて適正に補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を精度良く算出することができる。
この場合、請求項3のように、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じて補正量を算出する又は今回のエンジン停止要求時の大気圧に応じて補正量を算出するようにしても良い。前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じて補正量を算出する場合には、その補正量を用いて、前回の目標軌道情報の学習値を補正することで、目標軌道情報の学習値を適正に補正することができる。一方、今回のエンジン停止要求時の大気圧のみに応じて補正量を算出する場合には、その補正量を用いて、所定の基準大気圧(例えば平地での大気圧)で学習した目標軌道情報の学習値を補正することで、目標軌道情報の学習値を適正に補正することができる。
また、請求項4のように、エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで目標軌道情報を学習する学習手段と、エンジン温度情報を検出又は推定する温度情報取得手段と、この温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報に応じて補正量を算出し、その補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正する学習値補正手段とを備え、目標軌道算出手段は、学習値補正手段で補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するようにしても良い。
この構成では、エンジン温度情報に応じた補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正することで、エンジン温度に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値(実際の目標軌道情報)に近付けることができ、この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、エンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
本発明は、例えば、所定時間毎や所定走行距離毎に温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良いが、請求項5のように、エンジン停止要求が発生したときに温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。このようにすれば、エンジン温度情報に応じて目標軌道情報の学習値を補正する回数を必要最小限にして制御回路の演算負荷を軽減しながら、エンジン停止要求が発生してエンジン回転停止制御が実行される際には、そのときのエンジン温度に応じて適正に補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を精度良く算出することができる。
また、請求項6のように、エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで目標軌道情報を学習する学習手段と、大気圧を検出又は推定する大気圧取得手段とエンジン温度情報を検出又は推定する温度情報取得手段のうちの少なくとも一方とを備え、学習手段は、大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧と温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報のうちの少なくとも一方に応じて目標軌道情報を学習する際のゲイン(学習ゲイン)を変化させるようにしても良い。
この構成では、大気圧やエンジン温度情報に応じて学習ゲインを変化させることで、大気圧やエンジン温度に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、学習ゲインを変化させて、目標軌道情報の学習値を速やかに真値(実際の目標軌道情報)に近付けることができ、この目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧やエンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
更に、請求項7のように、エンジン温度情報として水温と油温のうちの少なくとも一方を検出又は推定するようにしても良い。水温や油温は、エンジン温度を精度良く反映したパラメータとなるため、エンジン温度情報として用いることができる。
また、請求項8のように、エンジン回転の停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度(以下「基準回転速度」という)と、エンジンのロストルクとに基づいて目標軌道を算出するシステムの場合には、目標軌道情報として基準回転速度とロストルクのずれ量を学習するようにすると良い。このようにすれば、基準回転速度とロストルクに基づいて目標軌道を算出するシステムにおいて、大気圧やエンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図19に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を概略的に説明する。
エンジン11の吸気ポート12に接続された吸気管13の途中には、スロットルバルブ14が設けられ、このスロットルバルブ14の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ15によって検出される。また、スロットルバルブ14の下流側には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられ、各気筒の吸気ポート12の近傍には、それぞれ吸気ポート12に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁19が取り付けられている。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を概略的に説明する。
エンジン11の吸気ポート12に接続された吸気管13の途中には、スロットルバルブ14が設けられ、このスロットルバルブ14の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ15によって検出される。また、スロットルバルブ14の下流側には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられ、各気筒の吸気ポート12の近傍には、それぞれ吸気ポート12に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁19が取り付けられている。
一方、エンジン11の排気ポート20に接続された排気管21の途中には、排気ガス浄化用の触媒22が設置されている。エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ23が設けられている。エンジン11のクランク軸24に取り付けられたシグナルロータ25の外周に対向してクランク角センサ26が設置され、このクランク角センサ26からシグナルロータ25の回転に同期して所定クランク角毎(例えば30℃A毎)にクランクパルス信号が出力される。また、エンジン11のカム軸27に取り付けられたシグナルロータ28の外周に対向してカム角センサ29が設置され、このカム角センサ29からシグナルロータ28の回転に同期して所定のカム角でカムパルス信号が出力される。更に、大気圧センサ38(大気圧取得手段)によって大気圧が検出される。
また、オルタネータ33(発電機)には、クランク軸24に連結されたクランクプーリ34の回転がベルト35を介して伝達される。これにより、エンジン11の動力でオルタネータ33が回転駆動されて発電するようになっている。このオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)をデューティ制御することで、オルタネータ33の負荷を制御することができる。
上述した各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「エンジンECU」と表記する)30に入力される。このエンジンECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、各種センサで検出したエンジン運転状態に応じて、燃料噴射弁19の燃料噴射量や燃料噴射時期、点火プラグ31の点火時期を制御すると共に、エンジン運転中に所定の自動停止条件(例えばアクセル全閉、ブレーキ操作中、アイドル運転中等の条件)が成立してエンジン停止要求が発生したときに、燃焼(燃料噴射及び/又は点火)を停止させてエンジン回転を停止させるアイドルストップを実行し、このアイドルストップによるエンジン回転停止中(アイドルストップ中)に運転者が車両発進のための準備操作(ブレーキ解除、シフトレバーのドライブレンジへの操作等)や発進操作(アクセル踏み込み等)が行われたとき、或は車載機器の制御システムからの始動要求が発生したときに、所定の自動始動条件が成立してスタータ(図示せず)に通電してエンジン11をクランキングして再始動させる。
更に、エンジンECU30は、後述する図14乃至図19の各ルーチンを実行することで、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段として機能すると共に、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段として機能する。本実施例では、エンジン回転停止制御として、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷をフィードバック制御するオルタF/B停止制御を実行する。更に、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を実行するようにしても良い。
エンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)の際に、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下すると、オルタネータ33の負荷トルクがほとんど発生しなくなる(図3参照)。このような回転速度領域では、オルタネータ33の負荷トルクの影響をほとんど受けずにエンジン回転速度が低下してエンジン回転が停止するため、所定の基準タイミングを通過する際のエンジン回転速度に応じた停止クランク角でエンジン回転が停止する。ここで、基準タイミングは、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下の回転速度領域でクランク角が所定位置(例えばTDC)となるタイミングである。
このような特性に着目して、本実施例では、基準タイミングのエンジン回転速度(基準タイミングを通過する際のエンジン回転速度)と停止クランク角との関係を用いて、停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度を基準回転速度として求め、目標軌道は、この基準回転速度に至るまでのクランク角と目標エンジン回転速度との関係を所定クランク角間隔で算出してテーブル(図示せず)に割り付けたものである。この目標軌道は、例えば、ロストルクを考慮したエネルギ保存則の関係式を用いて、基準回転速度を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角Δθ毎(例えばTDC毎)に算出される(図2参照)。
エネルギ保存則の関係式は次式で表される。
Ne(i+1)2 =Ne(i)2 +2/J×{Tloss−Tref(Ne(i))}×Δθ
ここで、Ne(i+1)は、現時点(i) よりも所定クランク角Δθ前の時点(i+1) のエンジン回転速度であり、Ne(i)は現時点(i) のエンジン回転速度である。また、Jはエンジン11の慣性モーメントである。Tlossはポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクであり、Tref(Ne(i))は現時点(i) のエンジン回転速度Ne(i)におけるオルタネータ33の基準負荷トルクである。
Ne(i+1)2 =Ne(i)2 +2/J×{Tloss−Tref(Ne(i))}×Δθ
ここで、Ne(i+1)は、現時点(i) よりも所定クランク角Δθ前の時点(i+1) のエンジン回転速度であり、Ne(i)は現時点(i) のエンジン回転速度である。また、Jはエンジン11の慣性モーメントである。Tlossはポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクであり、Tref(Ne(i))は現時点(i) のエンジン回転速度Ne(i)におけるオルタネータ33の基準負荷トルクである。
上記エネルギ保存則の関係式において、「Tloss−Tref(Ne(i))」は、ポンピングロスとフリクションロスとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を合計したロストルクに相当する。
本実施例では、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))は、図3に示すようにオルタネータ33の制御可能な最大負荷の半分(1/2)に設定されている。このようにすれば、オルタネータ33は、モータジェネレータとは異なり、アシストトルクを出力できないという事情があっても、仮想的にオルタネータ33の負荷トルクを正負両方向に制御することが可能となり(基準負荷Tref 以下の負荷トルクを仮想的に負の負荷トルクとし、基準負荷Tref 以上の負荷トルクを正の負荷トルクとしてオルタネータ33の負荷トルクを制御することが可能となり)、目標軌道へのエンジン回転挙動の追従性を向上することができる。
尚、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))は、最大負荷の半分(1/2)に限定されず、例えば、最大負荷の1/3、1/4、2/3、3/4等であっても良く、要は、オルタネータ33の制御可能な最大負荷よりも小さく、0よりも大きい適宜の負荷を基準負荷トルクTref(Ne(i))に設定すれば良い。
0<Tref(Ne(i))<最大負荷
0<Tref(Ne(i))<最大負荷
図5(a)は、基準負荷トルクTref(Ne(i))=0に設定してエンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)を行った比較例を示している。この比較例では、オルタネータ33の負荷トルクを正方向にしか制御できないため、実エンジン回転挙動がオーバーシュートした場合は、実エンジン回転挙動を目標軌道に一致させることができなくなる。
これに対して、本実施例のように、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を最大負荷よりも小さい適宜の負荷に設定すれば、図4に示すように、仮想的にオルタネータ33の負荷トルクを正負両方向に制御することが可能となるため、図5(b)に示すように、実回転挙動がオーバーシュートした場合でも、実回転挙動を目標軌道に一致させることができる。
更に、本実施例では、図6に示すように、目標軌道を算出する際に、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))に応じた目標軌道を算出し、エンジン回転停止制御の実行中は、エンジン回転速度Ne(i)に応じた基準負荷トルクTref(Ne(i))を算出すると共に、現時点(i) のクランク角θ(i) における目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との偏差を小さくするようにフィードバック負荷トルクを算出して、このフィードバック負荷トルクに基準負荷トルクTref(Ne(i))を加算して要求負荷トルクTalt を求める(実際には、この要求負荷トルクTalt にプーリ比Ratioを乗算して要求軸トルクTalt.final に変換する)。
この後、図7に示すオルタネータ33の負荷トルク特性を用いて、オルタネータ33の要求負荷トルクTalt (要求軸トルクTalt.final )とエンジン回転速度Ne (又はエンジン回転速度Ne にプーリ比Ratioを乗算して求めたオルタネータ33の回転速度Nalt )に応じた発電指令値(デューティDuty )を算出する。この際、要求負荷トルクTalt とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )から発電指令値(デューティDuty )を直接算出するようにしても良いが、要求負荷トルクTalt とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )から要求フィールド電流(要求励磁電流)を算出し、この要求フィールド電流から発電指令値(デューティDuty )を算出するようにしても良い。
尚、図7に示す負荷トルク特性は、オルタネータ33の出力電圧が所定値(例えば13.5V)で一定の場合の特性であり、出力電圧毎に同様の特性が設定されている。この発電指令値(デューティDuty )に基づいてオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)を制御してオルタネータ33の負荷トルクを制御する。
このようなオルタネータ33の負荷トルクの制御を、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度Nelow(図3参照)以下に低下するまで所定クランク角間隔で周期的に実行することで、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するエンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)を行う。
エンジン回転停止制御の際に、エンジンECU30は、所定クランク角周期で発電指令値を演算し、この発電指令値をCAN(Controller Area Network )通信等により所定時間周期で電源系ECU36(図1参照)に送信する。更に、電源系ECU36は、受信した発電指令値をLIN(Local Interconnect Network)通信等により所定時間周期でオルタネータ33に送信する。
ところで、エンジン11のオイル交換や経時変化等によってエンジン11のフリクション等が変化すると、目標軌道の算出に用いる基準回転速度やロストルクも変化する。そこで、本実施例では、目標軌道の算出精度を確保するために、図8に示すように、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するエンジン回転停止制御を実行し、このエンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときの実エンジン回転挙動に基づいて基準回転速度の学習値とロストルクのずれ量の学習値を算出して記憶することで、基準回転速度とロストルクのずれ量を学習し、その基準回転速度の学習値と、ロストルクのずれ量の学習値から求めたロストルクの学習値を用いて目標軌道を算出する。
以下、ロストルクと基準回転速度の学習方法について説明する。
以下、ロストルクと基準回転速度の学習方法について説明する。
[ロストルクの学習方法]
図9に示すように、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、基準タイミング(例えば最初のTDC)の実エンジン回転速度Ne1を検出した後、所定の検出タイミング(例えば基準タイミングの次のTDC)の実エンジン回転速度Ne2を検出する。基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1と、検出タイミングの実エンジン回転速度Ne2と、ロストルクTlossとの関係は、エネルギ保存則を用いて、下記(1)式のように表すことができる。
図9に示すように、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、基準タイミング(例えば最初のTDC)の実エンジン回転速度Ne1を検出した後、所定の検出タイミング(例えば基準タイミングの次のTDC)の実エンジン回転速度Ne2を検出する。基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1と、検出タイミングの実エンジン回転速度Ne2と、ロストルクTlossとの関係は、エネルギ保存則を用いて、下記(1)式のように表すことができる。
上記(1)式によりロストルクTlossを算出する。
また、エンジンECU30のバックアップRAM37等の書き換え可能な不揮発性メモリ(エンジンECU30の電源オフ中でも記憶データを保持する書き換え可能なメモリ)に記憶されているロストルクの学習値Tlossの記憶データを、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) として読み込む。
また、エンジンECU30のバックアップRAM37等の書き換え可能な不揮発性メモリ(エンジンECU30の電源オフ中でも記憶データを保持する書き換え可能なメモリ)に記憶されているロストルクの学習値Tlossの記憶データを、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) として読み込む。
この後、今回算出したロストルクTlossと、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) を用いて、次式により今回のロストルクのずれ量の学習値ΔTloss(i) を算出する。
ΔTloss(i) =Tloss−Tloss(i-1)
ΔTloss(i) =Tloss−Tloss(i-1)
この後、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されているロストルクのずれ量の学習値ΔTlossの記憶データを、今回算出したロストルクのずれ量の学習値ΔTloss(i) の算出データで更新する。
この後、目標軌道の算出に用いるロストルクの学習値Tloss(i) を算出する場合には、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) と、学習ゲインGain と、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されているロストルクのずれ量の学習値ΔTloss(又は後述する補正後のロストルクのずれ量の学習値ΔTloss)を用いて、次式により今回のロストルクの学習値Tloss(i) を算出する。
Tloss(i) =Tloss(i-1) +Gain ×ΔTloss
Tloss(i) =Tloss(i-1) +Gain ×ΔTloss
この後、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されているロストルクの学習値Tlossの記憶データを、今回算出したロストルクの学習値Tloss(i) の算出データで更新する。
[基準回転速度の学習方法]
図10に示すように、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、基準タイミング(例えば最初のTDC)の実エンジン回転速度Ne1を検出した後、エンジン回転が停止した停止クランク角Xを検出し、停止クランク角Xと目標停止クランク角Xtgt とを用いて、次式により停止位置ずれ量ΔXを算出する。
ΔX=X−Xtgt
図10に示すように、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、基準タイミング(例えば最初のTDC)の実エンジン回転速度Ne1を検出した後、エンジン回転が停止した停止クランク角Xを検出し、停止クランク角Xと目標停止クランク角Xtgt とを用いて、次式により停止位置ずれ量ΔXを算出する。
ΔX=X−Xtgt
この後、図11に示すエネルギずれ量Δeのマップを参照して、停止位置ずれ量ΔXに応じたエネルギずれ量Δeを算出する。ここで、エネルギずれ量Δeは、基準点(基準タイミングで基準回転速度となる点)に対するエネルギずれ量であり、エネルギずれ量Δeのマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、エンジンECU30のROMに記憶されている。
また、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている基準回転速度の学習値Netgtの記憶データを、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) として読み込む。
この後、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) と、エネルギずれ量Δeと、ロストルク学習分の補正係数αを用いて、エンジン回転が停止クランク角Xで停止する基準タイミングの推定エンジン回転速度Neestを下記(2)式により算出する。
この後、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) と、エネルギずれ量Δeと、ロストルク学習分の補正係数αを用いて、エンジン回転が停止クランク角Xで停止する基準タイミングの推定エンジン回転速度Neestを下記(2)式により算出する。
この後、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) と、学習ゲインGain と、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1及び推定エンジン回転速度Neestを用いて、次式により今回の基準回転速度の学習値Netgt(i) を算出する。
Netgt(i) =Netgt(i-1) +Gain ×(Ne1−Neest)
Netgt(i) =Netgt(i-1) +Gain ×(Ne1−Neest)
この後、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている基準回転速度の学習値Netgtの記憶データを、今回算出した基準回転速度の学習値Netgt(i) の算出データで更新する。
ところで、大気圧やエンジン温度(暖機状態)が変化すると、ポンピングロスやフリクションロスが変化して、基準回転速度やロストルクも変化する。このため、例えば、図12に示すように、平地でエンジン回転停止制御が実行されて基準回転速度とロストルクのずれ量(以下これらを「目標軌道情報」と総称する)を学習した後、一度もエンジン回転停止制御が実行されずに高地へ移動したときに、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生してエンジン回転停止制御が実行される場合には、図12(a)に示す比較例のように、大気圧の変化により実際の目標軌道情報(目標軌道情報の真値)が変化しているにも拘らず、平地で学習した目標軌道情報の学習値をそのまま用いて目標軌道を算出するシステムでは、その後、学習が何回か実行されて目標軌道情報の学習値が真値に近付くまでは、目標軌道を精度良く設定することができず、エンジン回転停止制御の精度が低下するという問題がある。尚、この問題は、平地から高地に移動した場合だけでなく、高地から平地に移動した場合にも同様に起こり得る。
この対策として、本実施例1では、図12(b)に示すように、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧に基づいて大気圧補正量を算出し、その大気圧補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正することで、大気圧に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付ける。この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を確保する。
具体的には、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧をエンジン停止要求時の大気圧として検出する。この後、図13に示す大気圧補正量のマップを参照して、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差(大気圧差)に応じた大気圧補正量を算出する。この大気圧補正量のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、エンジンECU30のROMに記憶されている。尚、図13は、ロストルクのずれ量の学習値を補正するための大気圧補正量のマップの一例を示している。
この後、大気圧補正量を用いて、前回の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を補正して、補正後の目標軌道情報の学習値を求める。
補正後の目標軌道情報の学習値=前回の目標軌道情報の学習値+大気圧補正量
この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出する。尚、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値の記憶データは、更新せずにそのまま保持するようにしても良いし、或は、補正後の目標軌道情報の学習値で更新するようにしても良い。
この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出する。尚、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値の記憶データは、更新せずにそのまま保持するようにしても良いし、或は、補正後の目標軌道情報の学習値で更新するようにしても良い。
以上説明した本実施例のエンジン回転停止制御及びそれに関連する制御は、エンジンECU30によって図14乃至図19の各ルーチンに従って実行される。以下、これら各ルーチンの処理内容を説明する。
[学習値補正ルーチン]
図14に示す学習値補正ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう学習値補正手段としての役割果たす。尚、実際には、ロストルクのずれ量の学習値補正ルーチンと基準回転速度の学習値補正ルーチンを別々に実行するが、以下の説明では、基準回転速度とロストルクのずれ量を「目標軌道情報」と総称して説明する。
図14に示す学習値補正ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう学習値補正手段としての役割果たす。尚、実際には、ロストルクのずれ量の学習値補正ルーチンと基準回転速度の学習値補正ルーチンを別々に実行するが、以下の説明では、基準回転速度とロストルクのずれ量を「目標軌道情報」と総称して説明する。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ101で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ102に進み、大気圧センサ38で検出した現在の大気圧をエンジン停止要求時の大気圧として検出する。
この後、ステップ103に進み、エンジン停止要求時の大気圧(現在の大気圧)が所定の基準大気圧(例えば平地での大気圧)相当であるか否かを、例えば、エンジン停止要求時の大気圧と基準大気圧との差の絶対値が所定値以下であるか否かによって判定する。
このステップ103で、エンジン停止要求時の大気圧が基準大気圧相当であると判定された場合には、目標軌道情報の学習値を補正する必要が無いと判断して、ステップ104に進み、前回の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を目標軌道の算出に用いる。
一方、上記ステップ103で、エンジン停止要求時の大気圧が基準大気圧相当ではないと判定された場合には、目標軌道情報の学習値を補正する必要が有ると判断して、ステップ105に進み、図13の大気圧補正量のマップを参照して、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差(大気圧差)に応じた大気圧補正量を算出する。
この後、ステップ106に進み、大気圧補正量を用いて、前回の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を補正して、補正後の目標軌道情報の学習値を求める。
補正後の目標軌道情報の学習値=前回の目標軌道情報の学習値+大気圧補正量
この後、ステップ107に進み、補正後の目標軌道情報の学習値を目標軌道の算出に用いる。
この後、ステップ107に進み、補正後の目標軌道情報の学習値を目標軌道の算出に用いる。
上記ステップ104又は上記ステップ107で、目標軌道の算出に用いる目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)を設定した後、ステップ108に進み、後述する図15の目標軌道算出ルーチンを実行して、目標軌道を算出する。
[目標軌道算出ルーチン]
図15に示す目標軌道算出ルーチンは、前記図14の学習値補正ルーチンのステップ108で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、目標軌道算出完了フラグが目標軌道の算出前を意味する「0」にセットされているか否かを判定し、この目標軌道算出完了フラグが目標軌道算出完了を意味する「1」にセットされていれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
図15に示す目標軌道算出ルーチンは、前記図14の学習値補正ルーチンのステップ108で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、目標軌道算出完了フラグが目標軌道の算出前を意味する「0」にセットされているか否かを判定し、この目標軌道算出完了フラグが目標軌道算出完了を意味する「1」にセットされていれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
一方、このステップ201で、目標軌道算出完了フラグ=0(目標軌道の算出前)と判定されれば、ステップ202に進み、ロストルクTlossと、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を用いて、次式で表されるエネルギ保存則の関係式を用いて次の時点(i+1) の目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗を算出する。
Ne(i+1)2 =Ne(i)2 +2/J×{Tloss−Tref(Ne(i))}×Δθ
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメント、Tlossはポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクである。上記エネルギ保存則の関係式において、「Tloss−Tref(Ne(i))」は、ポンピングロスとフリクションロスとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を合計したロストルクに相当する。
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメント、Tlossはポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクである。上記エネルギ保存則の関係式において、「Tloss−Tref(Ne(i))」は、ポンピングロスとフリクションロスとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を合計したロストルクに相当する。
初期値は、i=0、θ(0) =基準タイミングのクランク角、Ne(0)=基準回転速度である。この基準回転速度Ne(0)は、停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度である。目標軌道は、基準回転速度Ne(0)を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角Δθ毎(例えばTDC毎)に算出する。
この後、ステップ203に進み、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えたか否かを判定し、まだ最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えていなければ、ステップ204に進み、目標軌道算出完了フラグを「0」に維持する(セットし直す)。
この後、ステップ206に進み、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗の平方根を算出して目標エンジン回転速度Ne(i+1)を求め、これを目標軌道のテーブル(図示せず)に割り付けて、本ルーチンを終了する。尚、エンジンECU30の演算負荷を低減するため、エンジン回転速度の二乗をそのままテーブルに割り付けても良い。目標軌道のテーブルは、エンジンECU30のメモリに記憶される。
以上のような処理を繰り返して、基準回転速度Ne(0)を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角毎(例えばTDC毎)に目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗を算出して目標軌道のテーブルに目標エンジン回転速度Ne(i+1)を割り付ける処理を繰り返す。そして、上記ステップ203で、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えたと判定された時点で、ステップ205に進み、目標軌道算出完了フラグを目標軌道算出完了を意味する「1」にセットして、ステップ206に進み、最後の目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗の平方根を算出して目標エンジン回転速度Ne(i+1)を求め、これを目標軌道のテーブルに割り付けて、本ルーチンを終了する。
[オルタF/B停止制御ルーチン]
図16に示すオルタF/B停止制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
図16に示すオルタF/B停止制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ301で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ302に進み、現在のクランク角θとエンジン回転速度Ne を算出する。この後、ステップ303に進み、現在のクランク角θがオルタネータ33の負荷トルクの制御タイミング(例えばTDC)であるか否かを判定し、オルタネータ33の負荷トルクの制御タイミングでなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
上記ステップ303で、現在のクランク角θがオルタネータ33の負荷トルクの制御タイミングであると判定されれば、ステップ304に進み、現在のエンジン回転速度Ne がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いか否かを判定し、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemax以上であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ304で、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いと判定されれば、ステップ305に進み、エンジン11が燃焼中であるか否かを判定する。このステップ305で、エンジン停止要求が発生した直後でエンジン11がまだ燃焼中であると判定されれば、ステップ306に進み、エンジン回転停止制御を開始する際のオルタネータ33の要求負荷トルクTalt を初期値(例えば基準負荷トルクTref(Ne) )に設定する。
Talt =Tref(Ne)
Talt =Tref(Ne)
その後、上記ステップ305で、エンジン11の燃焼が停止したと判定された場合には、ステップ307に進み、目標軌道のテーブルを参照して、今回の制御タイミングに対応した目標エンジン回転速度Netg を求める。
この後、ステップ308に進み、現在の実エンジン回転速度Ne と目標エンジン回転速度Netg とのエネルギ差分ΔEを次式により算出する。
ΔE=J/2×(Ne 2 −Netg 2 )
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメントである。
ΔE=J/2×(Ne 2 −Netg 2 )
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメントである。
この後、ステップ309に進み、エネルギ差分ΔEとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne) を用いて、次式により要求負荷トルクTalt を算出する。
Talt =K×ΔE/Δθ+Tref(Ne)
ここで、「K×ΔE/Δθ」はフィードバック負荷トルクであり、Kはフィードバックゲイン、Δθはクランク角変化量である。
Talt =K×ΔE/Δθ+Tref(Ne)
ここで、「K×ΔE/Δθ」はフィードバック負荷トルクであり、Kはフィードバックゲイン、Δθはクランク角変化量である。
この後、ステップ310に進み、要求負荷トルクTalt にプーリ比Ratioを乗算して、オルタネータ33の要求軸トルクTalt.final に変換する。
この後、ステップ311に進み、バッテリ電圧を検出した後、ステップ312に進み、バッテリ電圧毎に作成された複数の負荷トルク特性マップ(図7参照)の中から、現在のバッテリ電圧に対応する負荷トルク特性マップを選択して、現在の要求負荷トルクTalt (要求軸トルクTalt.final )とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )に応じた発電指令値(デューティDuty )を算出する。
この後、ステップ311に進み、バッテリ電圧を検出した後、ステップ312に進み、バッテリ電圧毎に作成された複数の負荷トルク特性マップ(図7参照)の中から、現在のバッテリ電圧に対応する負荷トルク特性マップを選択して、現在の要求負荷トルクTalt (要求軸トルクTalt.final )とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )に応じた発電指令値(デューティDuty )を算出する。
この発電指令値(デューティDuty )に基づいてオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)を制御してオルタネータ33の負荷トルクを制御することで、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を行う。
[学習制御ルーチン]
図17に示す学習制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう学習手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ401で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
図17に示す学習制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう学習手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ401で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ401で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ402に進み、学習実行条件が成立しているか否かを、例えば、エンジン11が暖機状態(冷却水温が所定値以上)であるか否か等によって判定し、学習実行条件が成立していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ402で、学習実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ403に進み、後述する図18のロストルク学習ルーチンを実行することで、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときの実エンジン回転挙動に基づいてロストルクのずれ量を学習する。更に、次のステップ404で、後述する図19の基準回転速度学習ルーチンを実行することで、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときの実エンジン回転挙動に基づいて基準回転速度を学習する。
[ロストルク学習ルーチン]
図18に示すロストルク学習ルーチンは、前記図17の学習制御ルーチンのステップ403で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ501で、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、現在のクランク角が基準タイミング(例えば最初のTDC)であるか否かを判定し、基準タイミングであると判定された時点で、ステップ502に進み、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1を検出する。
図18に示すロストルク学習ルーチンは、前記図17の学習制御ルーチンのステップ403で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ501で、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、現在のクランク角が基準タイミング(例えば最初のTDC)であるか否かを判定し、基準タイミングであると判定された時点で、ステップ502に進み、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1を検出する。
この後、ステップ503に進み、現在のクランク角が検出タイミング(例えば基準タイミングの次のTDC)であるか否かを判定し、検出タイミングであると判定された時点で、ステップ504に進み、検出タイミングの実エンジン回転速度Ne2を検出する。
この後、ステップ505に進み、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1と、検出タイミングの実エンジン回転速度Ne2を用いて、前記(1)式によりロストルクTlossを算出した後、ステップ506に進み、エンジンECU30のバックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されているロストルクの学習値Tlossの記憶データを、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) として読み込む。
この後、ステップ507に進み、今回算出したロストルクTlossと、前回のロストルクの学習値Tloss(i-1) を用いて、次式により今回のロストルクのずれ量の学習値ΔTloss(i) を算出する。
ΔTloss(i) =Tloss−Tloss(i-1)
ΔTloss(i) =Tloss−Tloss(i-1)
この後、ステップ508に進み、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されているロストルクのずれ量の学習値ΔTlossの記憶データを、今回算出したロストルクのずれ量の学習値ΔTloss(i) の算出データで更新する。
[基準回転速度学習ルーチン]
図19に示す基準回転速度学習ルーチンは、前記図17の学習制御ルーチンのステップ404で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ601で、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、現在のクランク角が基準タイミング(例えば最初のTDC)であるか否かを判定し、基準タイミングであると判定された時点で、ステップ602に進み、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1を検出する。
図19に示す基準回転速度学習ルーチンは、前記図17の学習制御ルーチンのステップ404で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ601で、エンジン回転停止制御によってエンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下したときに、現在のクランク角が基準タイミング(例えば最初のTDC)であるか否かを判定し、基準タイミングであると判定された時点で、ステップ602に進み、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1を検出する。
この後、ステップ603に進み、エンジン回転が停止したか否かを判定し、エンジン回転が停止したと判定された時点で、ステップ604に進み、エンジン回転が停止した停止クランク角Xを検出する。
この後、ステップ605に進み、停止クランク角Xと目標停止クランク角Xtgt とを用いて、次式により停止位置ずれ量ΔXを算出する。
ΔX=X−Xtgt
ΔX=X−Xtgt
この後、ステップ606に進み、図11に示すエネルギずれ量Δeのマップを参照して、停止位置ずれ量ΔXに応じたエネルギずれ量Δeを算出した後、ステップ607に進み、エンジンECU30のバックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている基準回転速度の学習値Netgtの記憶データを、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) として読み込む。
この後、ステップ608に進み、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) と、エネルギずれ量Δeと、ロストルク学習分の補正係数αを用いて、エンジン回転が停止クランク角Xで停止する基準タイミングの推定エンジン回転速度Neestを前記(2)式により算出する。
この後、ステップ609に進み、前回の基準回転速度の学習値Netgt(i-1) と、学習ゲインGain と、基準タイミングの実エンジン回転速度Ne1及び推定エンジン回転速度Neestを用いて、次式により今回の基準回転速度の学習値Netgt(i) を算出する。
Netgt(i) =Netgt(i-1) +Gain ×(Ne1−Neest)
Netgt(i) =Netgt(i-1) +Gain ×(Ne1−Neest)
この後、ステップ610に進み、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている基準回転速度の学習値Netgtの記憶データを、今回算出した基準回転速度の学習値Netgt(i) の算出データで更新する。
以上説明した本実施例1では、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧をエンジン停止要求時の大気圧として検出して、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差(大気圧差)に応じた大気圧補正量を算出し、その大気圧補正量を用いて目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)の学習値を補正するようにしたので、大気圧に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付けることができ、この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するようにしたので、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を確保することができる。
また、本実施例1では、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧に基づいて大気圧補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしたので、大気圧に応じて目標軌道情報の学習値を補正する回数を必要最小限にしてエンジンECU30の演算負荷を軽減しながら、エンジン停止要求が発生してエンジン回転停止制御が実行される際には、そのときの大気圧に応じて適正に補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を精度良く算出することができる。
尚、上記実施例1では、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じて大気圧補正量を算出し、その補正量を用いて、前回の目標軌道情報の学習値を補正するようにしたが、これに限定されず、例えば、今回のエンジン停止要求時の大気圧のみに応じて大気圧補正量を算出し、その補正量を用いて、所定の基準大気圧(例えば平地での大気圧)で学習した目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。
また、上記実施例1では、エンジン停止要求時の大気圧が所定の基準大気圧(例えば平地での大気圧)相当であるか否かを判定し、エンジン停止要求時の大気圧が基準大気圧相当ではないと判定された場合に、大気圧に応じた補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正するようにしたが、これに限定されず、エンジン停止要求時の大気圧が基準大気圧であるか否かに拘らず、大気圧に応じた補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。
また、上記実施例1では、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしたが、これ限定されず、例えば、所定時間毎や所定走行距離毎に大気圧センサ38で検出した大気圧に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。
また、上記実施例1では、大気圧センサ38で大気圧を検出するようにしたが、これに限定されず、例えば、吸気管圧力センサ18の出力等に基づいて大気圧を推定するようにしても良い。
次に、図20乃至図22を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
エンジン11の完全暖機後にエンジン回転停止制御が実行されて目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)を学習した後、例えば、図20に示すように、車両が駐車されてエンジン温度が低下した後にエンジン11が始動されて、エンジン11の暖機中(暖機前)にエンジン回転停止制御が実行される場合には、図20(a)に示す比較例のように、エンジン温度(冷却水温)の変化により実際の目標軌道情報(目標軌道情報の真値)が変化しているにも拘らず、エンジン11の完全暖機後に学習した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するシステムでは、目標軌道を精度良く設定することができず、エンジン回転停止制御の精度が低下するという問題がある。
この対策として、本実施例2では、図20(b)に示すように、エンジン停止要求が発生したときに冷却水温センサ23で検出した冷却水温(エンジン温度情報)に基づいて温度補正量を算出し、その温度補正量を用いて目標軌道情報の学習値を補正することで、エンジン温度に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付ける。この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、エンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を確保する。
具体的には、エンジン停止要求が発生したときに冷却水温センサ23で冷却水温を検出する。この後、図21に示す温度補正量のマップを参照して、冷却水温に応じた温度補正量を算出する。この温度補正量のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、エンジンECU30のROMに記憶されている。尚、図21は、ロストルクのずれ量の学習値を補正するための温度補正量のマップの一例を示している。
この後、温度補正量を用いて、完全暖機後の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を補正して、補正後の目標軌道情報の学習値を求める。
補正後の目標軌道情報の学習値=完全暖機後の目標軌道情報の学習値+温度補正量
この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出する。尚、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値の記憶データは、更新せずにそのまま保持するようにしても良いし、或は、補正後の目標軌道情報の学習値で更新するようにしても良い。
この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出する。尚、バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値の記憶データは、更新せずにそのまま保持するようにしても良いし、或は、補正後の目標軌道情報の学習値で更新するようにしても良い。
以下、本実施例2でエンジンECU30により実行される図22の学習値補正ルーチンの処理内容を説明する。尚、実際には、ロストルクのずれ量の学習値補正ルーチンと基準回転速度の学習値補正ルーチンを別々に実行するが、以下の説明では、基準回転速度とロストルクのずれ量を「目標軌道情報」と総称して説明する。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ701で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ701で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ702に進み、冷却水温センサ23で現在の冷却水温を検出した後、ステップ703に進み、現在の冷却水温が完全暖機温度(例えば80℃)よりも低いか否かによって、エンジン11の暖機中であるか否かを判定する。
このステップ703で、冷却水温が完全暖機温度以上である(エンジン11の完全暖機後である)と判定された場合には、目標軌道情報の学習値を補正する必要が無いと判断して、ステップ704に進み、前回の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を目標軌道の算出に用いる。
一方、上記ステップ703で、冷却水温が完全暖機温度よりも低い(エンジン11の暖機中である)と判定された場合には、目標軌道情報の学習値を補正する必要が有ると判断して、ステップ705に進み、図21の温度補正量のマップを参照して、現在の冷却水温に応じた温度補正量を算出する。
この後、ステップ706に進み、温度補正量を用いて、完全暖機後の目標軌道情報の学習値(バックアップRAM37等の不揮発性メモリに記憶されている目標軌道情報の学習値)を補正して、補正後の目標軌道情報の学習値を求める。
補正後の目標軌道情報の学習値=完全暖機後の目標軌道情報の学習値+温度補正量
この後、ステップ707に進み、補正後の目標軌道情報の学習値を目標軌道の算出に用いる。
この後、ステップ707に進み、補正後の目標軌道情報の学習値を目標軌道の算出に用いる。
上記ステップ704又は上記ステップ707で、目標軌道の算出に用いる目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)を設定した後、ステップ708に進み、前記図15の目標軌道算出ルーチンを実行して、目標軌道を算出する。
以上説明した本実施例2では、エンジン停止要求が発生したときに冷却水温センサ23で検出した冷却水温に応じた温度補正量を算出し、その温度補正量を用いて目標軌道情報(基準回転速度とロストルクのずれ量)の学習値を補正するようにしたので、エンジン温度に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、目標軌道情報の学習値を適正に補正して、目標軌道情報の学習値を真値に近付けることができ、この補正後の目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するようにしたので、エンジン温度の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制することが可能となり、エンジン11の暖機中でも、エンジン回転停止制御の精度を確保することができる。
また、本実施例2では、エンジン停止要求が発生したときに冷却水温センサ23で検出した冷却水温に基づいて温度補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしたので、エンジン温度に応じて目標軌道情報の学習値を補正する回数を必要最小限にしてエンジンECU30の演算負荷を軽減しながら、エンジン停止要求が発生してエンジン回転停止制御が実行される際には、そのときのエンジン温度に応じて適正に補正した目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を精度良く算出することができる。
尚、上記実施例2では、エンジン停止要求が発生したときに冷却水温センサ23で検出した冷却水温に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしたが、これ限定されず、例えば、所定時間毎や所定走行距離毎に冷却水温センサ23で検出した冷却水温に基づいて補正量を算出して目標軌道情報の学習値を補正するようにしても良い。
また、上記実施例2では、エンジン温度情報として、冷却水温を検出するようにしたが、油温を検出するようにしても良い。或は、冷却水温や油温に基づいてエンジン温度を推定するようにしても良い。
次に、図23を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
本実施例3では、エンジンECU30により後述する図23の学習ゲイン変更ルーチンを実行することで、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧に応じて目標軌道情報を学習する際のゲイン(学習ゲイン)を変化させることで、大気圧に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、学習ゲインを変化させて、目標軌道情報の学習値を速やかに真値(実際の目標軌道情報)に近付ける。この目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出することで、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を確保する。
以下、本実施例3でエンジンECU30により実行される図23の学習ゲイン変更ルーチンの処理内容を説明する。尚、実際には、ロストルクのずれ量の学習ゲイン変更ルーチンと基準回転速度の学習ゲイン変更ルーチンを別々に実行するが、以下の説明では、基準回転速度とロストルクのずれ量を「目標軌道情報」と総称して説明する。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ801で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ601で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ802に進み、大気圧センサ38で現在の大気圧を検出した後、ステップ803に進み、現在の大気圧が所定の基準大気圧(例えば平地での大気圧)相当であるか否かを、例えば、現在の大気圧と基準大気圧との差の絶対値が所定値以下であるか否かによって判定する。
このステップ803で、大気圧が基準大気圧相当であると判定された場合には、ステップ806に進み、学習ゲインを通常値に維持したまま、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ803で、大気圧が基準大気圧相当ではないと判定された場合には、ステップ804に進み、学習ゲインを通常値よりも大きくする。これにより、目標軌道情報の学習値の更新速度を速くして(1回当りの更新量を大きくして)、目標軌道情報の学習値を速やかに目標軌道情報の真値に近付ける。
一方、上記ステップ803で、大気圧が基準大気圧相当ではないと判定された場合には、ステップ804に進み、学習ゲインを通常値よりも大きくする。これにより、目標軌道情報の学習値の更新速度を速くして(1回当りの更新量を大きくして)、目標軌道情報の学習値を速やかに目標軌道情報の真値に近付ける。
この後、ステップ805に進み、目標軌道情報の学習値が収束状態(ほぼ一定)になったか否かを、例えば、前回の目標軌道情報の学習値と今回の目標軌道情報の学習値との差の絶対値が所定値以下であるか否かによって判定する。
このステップ805で、目標軌道情報の学習値が収束状態(ほぼ一定)になったと判定されたときに、目標軌道情報の学習値が目標軌道情報の真値付近に収束したと判断して、ステップ806に進み、学習ゲインを通常値に戻して、本ルーチンを終了する。
以上説明した本実施例3では、エンジン停止要求が発生したときに大気圧センサ38で検出した大気圧に応じて目標軌道情報を学習する際のゲイン(学習ゲイン)を変化させるようにしたので、大気圧に応じて実際の目標軌道情報が変化するのに対応して、学習ゲインを変化させて、目標軌道情報の学習値を速やかに真値(実際の目標軌道情報)に近付けることができ、この目標軌道情報の学習値を用いて目標軌道を算出するようにしたので、大気圧の変化による目標軌道の算出精度の低下を抑制して、エンジン回転停止制御の精度を確保することができる。
尚、上記実施例3では、大気圧センサ38で大気圧を検出するようにしたが、これに限定されず、例えば、吸気管圧力センサ18の出力等に基づいて大気圧を推定するようにしても良い。
また、上記実施例3では、大気圧に応じて学習ゲインを変化させるようにしたが、エンジン温度情報(冷却水温や油温等)を検出又は推定して、そのエンジン温度情報に応じて学習ゲインを変化させるようにしても良い。
また、上記各実施例1〜3では、目標軌道情報(目標軌道の算出に用いる情報)として基準回転速度とロストルクのずれ量の両方を学習するシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、目標軌道情報として基準回転速度とロストルクのずれ量のうちの一方のみを学習するシステムに本発明を適用したり、或は、目標軌道情報として基準回転速度やロストルクのずれ量以外の他の情報(例えばポンピングロスやフリクションロス等)を学習するシステムに本発明を適用しても良い。
また、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
更に、本発明の適用範囲は、車両の動力源としてエンジンのみを備えた一般的な車両に限定されず、車両の動力源としてエンジンとモータを備えたハイブリッド車に本発明を適用しても良い。
11…エンジン(内燃機関)、13…吸気管、14…スロットルバルブ、18…吸気管圧力センサ、19…燃料噴射弁、21…排気管、23…冷却水温センサ(温度情報取得手段)、30…エンジンECU(目標軌道算出手段,停止制御手段,学習手段,学習値補正手段)、33…オルタネータ(発電機)、37…バックアップRAM、38…大気圧センサ(大気圧取得手段)
Claims (8)
- エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、
前記エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて前記目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで前記目標軌道情報を学習する学習手段と、
大気圧を検出又は推定する大気圧取得手段と、
前記大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧に応じて補正量を算出し、その補正量を用いて前記目標軌道情報の学習値を補正する学習値補正手段とを備え、
前記目標軌道算出手段は、前記学習値補正手段で補正した目標軌道情報の学習値を用いて前記目標軌道を算出することを特徴とするエンジン回転停止制御装置。 - 前記学習値補正手段は、前記エンジン停止要求が発生したときに前記大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧(以下「エンジン停止要求時の大気圧」という)に基づいて前記補正量を算出して前記目標軌道情報の学習値を補正することを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転停止制御装置。
- 前記学習値補正手段は、前回のエンジン停止要求時の大気圧と今回のエンジン停止要求時の大気圧との差に応じて前記補正量を算出する又は今回のエンジン停止要求時の大気圧に応じて前記補正量を算出することを特徴とする請求項2に記載のエンジン回転停止制御装置。
- エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、
前記エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて前記目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで前記目標軌道情報を学習する学習手段と、
エンジン温度情報を検出又は推定する温度情報取得手段と、
前記温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報に応じて補正量を算出し、その補正量を用いて前記目標軌道情報の学習値を補正する学習値補正手段とを備え、
前記目標軌道算出手段は、前記学習値補正手段で補正した目標軌道情報の学習値を用いて前記目標軌道を算出することを特徴とするエンジン回転停止制御装置。 - 前記学習値補正手段は、前記エンジン停止要求が発生したときに前記温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報に基づいて前記補正量を算出して前記目標軌道情報の学習値を補正することを特徴とする請求項4に記載のエンジン回転停止制御装置。
- エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、
前記エンジン回転停止制御が実行されたときの実エンジン回転挙動に基づいて前記目標軌道の算出に用いる情報(以下「目標軌道情報」という)の学習値を算出して記憶することで前記目標軌道情報を学習する学習手段と、
大気圧を検出又は推定する大気圧取得手段とエンジン温度情報を検出又は推定する温度情報取得手段のうちの少なくとも一方とを備え、
前記学習手段は、前記大気圧取得手段で検出又は推定した大気圧と前記温度情報取得手段で検出又は推定したエンジン温度情報のうちの少なくとも一方に応じて前記目標軌道情報を学習する際のゲインを変化させることを特徴とするエンジン回転停止制御装置。 - 前記温度情報取得手段は、前記エンジン温度情報として水温と油温のうちの少なくとも一方を検出又は推定することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のエンジン回転停止制御装置。
- 前記目標軌道算出手段は、エンジン回転の停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度(以下「基準回転速度」という)と、エンジンのロストルクとに基づいて前記目標軌道を算出し、
前記学習手段は、前記目標軌道情報として前記基準回転速度と前記ロストルクのずれ量を学習することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のエンジン回転停止制御装置。
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2010
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