JP2012082698A - エンジン回転停止制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を実行して、エンジン回転停止制御の精度を向上させる。
【解決手段】エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できると判断して、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を実行する。一方、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できないと判断して、エンジン11の燃焼停止前に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を実行する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン回転停止位置(停止クランク角)を制御する機能を備えたエンジン回転停止制御装置に関する発明である。
近年、例えば、特許文献1(特開2008−215230号公報)に記載されているように、エンジン自動停止・始動システム(アイドルストップシステム)を搭載した車両では、再始動性を向上させるために、エンジン停止時(アイドルストップ時)にエンジン回転停止位置(停止クランク角)を始動に適したクランク角範囲に制御することを目的として、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するまでの回転挙動を目標軌道として算出し、エンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機(オルタネータ)の負荷トルクを制御するエンジン回転停止制御を行うようにしたものがある。具体的には、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機の要求負荷トルクを算出し、発電機の負荷トルク特性(発電指令値とエンジン回転速度と負荷トルクとの関係)を用いて、現在のエンジン回転速度と要求負荷トルクに応じた発電指令値を算出し、この発電指令値で発電機の発電制御電流(フィールド電流)を制御して発電機の負荷トルクを制御するようにしている。
特開2008−215230号公報
ところで、エンジンの燃焼停止後のエンジン回転の低下速度は、変速機側のロストルク等によっても左右されるため、トルクコンバータ付きの自動変速機(例えば無段変速機)を搭載した車両では、手動変速機を搭載した車両に比べて、エンジンの燃焼停止後のエンジン回転の低下速度が速くなる傾向がある。このように、エンジンの燃焼停止後のエンジン回転の低下速度が比較的速い車両では、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機(オルタネータ)の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を実行する期間を確保することが困難である。
そこで、本出願人は、エンジンの燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を実行するシステムを研究している。しかし、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が比較的高い場合には、エンジン回転の低下速度が同じでも、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保することが可能となり、このような場合に、オルタF/B停止制御を実行せずに点火F/B停止制御を実行したのでは、かえってエンジン回転停止制御の精度が低下してしまうという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を実行することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができるエンジン回転停止制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように制御する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、停止制御手段は、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御する第1の停止制御を実行する手段と、エンジンの燃焼停止前に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように燃焼を制御する第2の停止制御を実行する手段とを有し、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じて第1の停止制御と第2の停止制御のうちの一方を選択して実行するようにしたものである。このようにすれば、第1の停止制御と第2の停止制御のうちで、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を選択して実行することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
具体的には、請求項2のように、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が所定の判定閾値よりも高い場合に第1の停止制御を実行し、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合に第2の停止制御を実行するようにすると良い。つまり、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、第1の停止制御を実行する期間を確保できると判断して、第1の停止制御を実行する。一方、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、第1の停止制御を実行する期間を確保できないと判断して、第2の停止制御を実行する。これにより、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を選択して実行することができる。
また、請求項3のように、第2の停止制御の際に、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期とスロットル開度のうちの少なくとも一方を制御するようにしても良い。このようにすれば、エンジンの燃焼停止前(燃焼中)に点火時期やスロットル開度(吸入空気量)を制御してエンジンの燃焼を制御することでエンジントルクを制御して実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせることができる。
図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。 図2は目標軌道の算出方法を説明する図である。 図3はオルタネータ負荷特性を説明する図である。 図4はエンジン回転停止制御時の見掛上のオルタネータ負荷特性を説明する図である。 図5(a)は基準負荷トルクTref(Ne(i))=0に設定してエンジン回転停止制御を行った比較例を説明するタイムチャートであり、図5(b)は基準負荷トルクTref(Ne(i))を最大負荷の半分に設定してエンジン回転停止制御を行った実施例を説明するタイムチャートである。 図6はエンジンECUのエンジン回転停止制御機能を説明するブロック図である。 図7は負荷トルク特性のマップの一例を概略的に示す図である。 図8はオルタF/B停止制御と点火F/B停止制御の選択方法を説明するためのタイムチャートである。 図9は目標軌道算出ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。 図10は停止制御選択ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。 図11はオルタF/B停止制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。 図12は点火F/B停止制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を概略的に説明する。
エンジン11の吸気ポート12に接続された吸気管13の途中には、スロットルバルブ14が設けられ、このスロットルバルブ14の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ15によって検出される。また、スロットルバルブ14の下流側には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられ、各気筒の吸気ポート12の近傍には、それぞれ吸気ポート12に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁19が取り付けられている。
一方、エンジン11の排気ポート20に接続された排気管21の途中には、排気ガス浄化用の触媒22が設置されている。エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ23が設けられている。エンジン11のクランク軸24に取り付けられたシグナルロータ25の外周に対向してクランク角センサ26が設置され、このクランク角センサ26からシグナルロータ25の回転に同期して所定クランク角毎(例えば30℃A毎)にクランクパルス信号が出力される。また、エンジン11のカム軸27に取り付けられたシグナルロータ28の外周に対向してカム角センサ29が設置され、このカム角センサ29からシグナルロータ28の回転に同期して所定のカム角でカムパルス信号が出力される。
また、オルタネータ33(発電機)には、クランク軸24に連結されたクランクプーリ34の回転がベルト35を介して伝達される。これにより、エンジン11の動力でオルタネータ33が回転駆動されて発電するようになっている。このオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)をデューティ制御することで、オルタネータ33の負荷を制御することができる。
また、エンジン11のクランク軸24の動力は、図示しない自動変速機等を介して車輪側に伝達される。自動変速機は、トルクコンバータと変速機構により構成され、複数の変速段の中から変速段を段階的に切り換える有段変速機であっても良いし、無段階に変速する無段変速機(CVT)であっても良い。
上述した各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「エンジンECU」と表記する)30に入力される。このエンジンECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、各種センサで検出したエンジン運転状態に応じて、燃料噴射弁19の燃料噴射量や燃料噴射時期、点火プラグ31の点火時期を制御すると共に、エンジン運転中に所定の自動停止条件(例えばアクセル全閉、ブレーキ操作中、アイドル運転中等の条件)が成立してエンジン停止要求が発生したときに、燃焼(燃料噴射及び/又は点火)を停止させてエンジン回転を停止させるアイドルストップを実行し、このアイドルストップによるエンジン回転停止中(アイドルストップ中)に運転者が車両発進のための準備操作(ブレーキ解除、シフトレバーのドライブレンジへの操作等)や発進操作(アクセル踏み込み等)が行われたとき、或は車載機器の制御システムからの始動要求が発生したときに、所定の自動始動条件が成立してスタータ(図示せず)に通電してエンジン11をクランキングして再始動させる。
更に、エンジンECU30は、後述する図9乃至図12の各ルーチンを実行することで、エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段として機能すると共に、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように制御するエンジン回転停止制御を実行する停止制御手段として機能する。本実施例では、エンジン回転停止制御として、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷をフィードバック制御するオルタF/B停止制御(第1の停止制御)と、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御(第2の停止制御)のうちの一方を実行する。
エンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)の際に、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下に低下すると、オルタネータ33の負荷トルクがほとんど発生しなくなる(図3参照)。このような回転速度領域では、オルタネータ33の負荷トルクの影響をほとんど受けずにエンジン回転速度が低下してエンジン回転が停止するため、所定の基準タイミングを通過する際のエンジン回転速度に応じた停止クランク角でエンジン回転が停止する。ここで、基準タイミングは、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度以下の回転速度領域でクランク角が所定位置(例えばTDC)となるタイミングである。
このような特性に着目して、本実施例では、基準タイミングのエンジン回転速度(基準タイミングを通過する際のエンジン回転速度)と停止クランク角との関係を用いて、停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度を基準回転速度として求め、目標軌道は、この基準回転速度に至るまでのクランク角と目標エンジン回転速度との関係を所定クランク角間隔で算出してテーブル(図示せず)に割り付けたものである。この目標軌道は、例えば、ロストルクを考慮したエネルギ保存則の関係式を用いて、基準回転速度を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角Δθ毎(例えばTDC毎)に算出される(図2参照)。
エネルギ保存則の関係式は次式で表される。
Ne(i+1)2 =Ne(i)2 +2/J×{Tloss( θ(i) ) −Tref(Ne(i))}×Δθ
ここで、Ne(i+1)は、現時点(i) よりも所定クランク角Δθ前の時点(i+1) のエンジン回転速度であり、Ne(i)は現時点(i) のエンジン回転速度である。また、Jはエンジン11の慣性モーメントである。Tloss( θ(i) )は、現時点(i) のクランク角θ(i) におけるポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクであり、予め設定されたマップ等を用いて現時点(i) のクランク角θ(i) に応じたロストルクTloss( θ(i) )が算出される。Tref(Ne(i))は現時点(i) のエンジン回転速度Ne(i)におけるオルタネータ33の基準負荷トルクである。
上記エネルギ保存則の関係式において、「Tloss( θ(i) )−Tref(Ne(i))」は、ポンピングロスとフリクションロスとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を合計したロストルクに相当する。
本実施例では、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))は、図3に示すようにオルタネータ33の制御可能な最大負荷の半分(1/2)に設定されている。このようにすれば、オルタネータ33は、モータジェネレータとは異なり、アシストトルクを出力できないという事情があっても、仮想的にオルタネータ33の負荷トルクを正負両方向に制御することが可能となり(基準負荷Tref 以下の負荷トルクを仮想的に負の負荷トルクとし、基準負荷Tref 以上の負荷トルクを正の負荷トルクとしてオルタネータ33の負荷トルクを制御することが可能となり)、目標軌道へのエンジン回転挙動の追従性を向上することができる。
尚、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))は、最大負荷の半分(1/2)に限定されず、例えば、最大負荷の1/3、1/4、2/3、3/4等であっても良く、要は、オルタネータ33の制御可能な最大負荷よりも小さく、0よりも大きい適宜の負荷を基準負荷トルクTref(Ne(i))に設定すれば良い。
0<Tref(Ne(i))<最大負荷
図5(a)は、基準負荷トルクTref(Ne(i))=0に設定してエンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)を行った比較例を示している。この比較例では、オルタネータ33の負荷トルクを正方向にしか制御できないため、実エンジン回転挙動がオーバーシュートした場合は、実エンジン回転挙動を目標軌道に一致させることができなくなる。
これに対して、本実施例のように、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を最大負荷よりも小さい適宜の負荷に設定すれば、図4に示すように、仮想的にオルタネータ33の負荷トルクを正負両方向に制御することが可能となるため、図5(b)に示すように、実回転挙動がオーバーシュートした場合でも、実回転挙動を目標軌道に一致させることができる。
更に、本実施例では、図6に示すように、目標軌道を算出する際に、オルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))に応じた目標軌道を算出し、エンジン回転停止制御中は、エンジン回転速度Ne(i)に応じた基準負荷トルクTref(Ne(i))を算出すると共に、現時点(i) のクランク角θ(i) における目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との偏差を小さくするようにフィードバック負荷トルクを算出して、このフィードバック負荷トルクに基準負荷トルクTref(Ne(i))を加算して要求負荷トルクTalt を求める(実際には、この要求負荷トルクTalt にプーリ比Ratioを乗算して要求軸トルクTalt.final に変換する)。
この後、図7に示すオルタネータ33の負荷トルク特性を用いて、オルタネータ33の要求負荷トルクTalt (要求軸トルクTalt.final )とエンジン回転速度Ne (又はエンジン回転速度Ne にプーリ比Ratioを乗算して求めたオルタネータ33の回転速度Nalt )に応じた発電指令値(デューティDuty )を算出する。この際、要求負荷トルクTalt とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )から発電指令値(デューティDuty )を直接算出するようにしても良いが、要求負荷トルクTalt とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )から要求フィールド電流(要求励磁電流)を算出し、この要求フィールド電流から発電指令値(デューティDuty )を算出するようにしても良い。
尚、図7に示す負荷トルク特性は、オルタネータ33の出力電圧が所定値(例えば13.5V)で一定の場合の特性であり、出力電圧毎に同様の特性が設定されている。この発電指令値(デューティDuty )に基づいてオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)を制御してオルタネータ33の負荷トルクを制御する。
このようなオルタネータ33の負荷トルクの制御を、エンジン回転速度がオルタネータ33の発電限界回転速度Nelow(図3参照)以下に低下するまで所定クランク角間隔で周期的に実行することで、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するエンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)を行う。
エンジン回転停止制御(オルタF/B停止制御)の際に、エンジンECU30は、所定クランク角周期で発電指令値を演算し、この発電指令値をCAN(Controller Area Network )通信等により所定時間周期で電源系ECU36(図1参照)に送信する。更に、電源系ECU36は、受信した発電指令値をLIN(Local Interconnect Network)通信等により所定時間周期でオルタネータ33に送信する。
ところで、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が比較的高い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できるが、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が比較的低い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できなくなる。
そこで、本実施例では、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じてオルタF/B停止制御(第1の停止制御)と点火F/B停止制御(第2の停止制御)のうちの一方を選択して実行する。これにより、オルタF/B停止制御と点火F/B停止制御のうちで、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を選択して実行する。
具体的には、図8に示すように、エンジン運転中にエンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生してエンジン停止要求フラグが「1」にセットされた時点t1 で、エンジン回転速度が所定の判定閾値よりも高いか否かを判定する。ここで、判定閾値は、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなってオルタF/B停止制御を実行する期間を確保できるようなエンジン回転速度に設定される。
その結果、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できると判断する。この場合、燃料カット要求フラグを「1」にセットして、燃料噴射を停止する燃料カットを実行することで、エンジン11の燃焼を停止させると共に、オルタF/B停止制御許可フラグを「1」にセットして、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を実行する。
一方、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できないと判断する。この場合、点火F/B停止制御許可フラグを「1」にセットして、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を実行すると共に、燃料カット要求フラグを「1」にセットして、燃料噴射を停止する燃料カットを実行することで、エンジン11の燃焼を停止させる。点火F/B停止制御では、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に点火時期の制御してエンジン11の燃焼を制御することでエンジントルクを制御して実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせることができる。
以上説明した本実施例のエンジン回転停止制御は、エンジンECU30によって図9乃至図12の各ルーチンに従って実行される。以下、これら各ルーチンの処理内容を説明する。
[目標軌道算出ルーチン]
図9に示す目標軌道算出ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、目標軌道算出完了フラグが目標軌道の算出前を意味する「0」にセットされているか否かを判定し、この目標軌道算出完了フラグが目標軌道算出完了を意味する「1」にセットされていれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
一方、このステップ101で、目標軌道算出完了フラグ=0(目標軌道の算出前)と判定されれば、ステップ102に進み、ロストルクTloss( θ(i) )とオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を用いて、次式で表されるエネルギ保存則の関係式を用いて次の時点(i+1) の目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗を算出する。
Ne(i+1)2 =Ne(i)2 +2/J×{Tloss( θ(i) )−Tref(Ne(i))}×Δθ
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメント、Tloss( θ(i) )は、ポンピングロスとフリクションロスを合計したロストルクであり、予め設定されたマップ等を用いて、現時点(i) のクランク角θ(i) に応じたロストルクTloss( θ(i) )を算出する。
上記エネルギ保存則の関係式において、「Tloss( θ(i) )−Tref(Ne(i))」は、ポンピングロスとフリクションロスとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne(i))を合計したロストルクに相当する。
初期値は、i=0、θ(0) =基準タイミングのクランク角、Ne(0)=基準回転速度である。この基準回転速度Ne(0)は、停止クランク角が目標停止クランク角となる基準タイミングのエンジン回転速度である。目標軌道は、基準回転速度Ne(0)を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角Δθ毎(例えばTDC毎)に算出する。
この後、ステップ103に進み、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えたか否かを判定し、まだ最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えていなければ、ステップ104に進み、目標軌道算出完了フラグを「0」に維持する(セットし直す)。
この後、ステップ106に進み、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗の平方根を算出して目標エンジン回転速度Ne(i+1)を求め、これを目標軌道のテーブル(図示せず)に割り付けて、本ルーチンを終了する。尚、エンジンECU30の演算負荷を低減するため、エンジン回転速度の二乗をそのままテーブルに割り付けても良い。目標軌道のテーブルは、エンジンECU30のメモリに記憶される。
以上のような処理を繰り返して、基準回転速度Ne(0)を初期値としてクランク角を溯る方向に所定クランク角毎(例えばTDC毎)に目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗を算出して目標軌道のテーブルに目標エンジン回転速度Ne(i+1)を割り付ける処理を繰り返す。そして、上記ステップ103で、目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxの二乗を越えたと判定された時点で、ステップ105に進み、目標軌道算出完了フラグを目標軌道算出完了を意味する「1」にセットして、ステップ106に進み、最後の目標エンジン回転速度Ne(i+1)の二乗の平方根を算出して目標エンジン回転速度Ne(i+1)を求め、これを目標軌道のテーブルに割り付けて、本ルーチンを終了する。
[停止制御選択ルーチン]
図10に示す停止制御選択ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、エンジン停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを判定し、エンジン停止要求が発生していなければ、ステップ203に進み、燃料カット要求フラグを「0」に維持すると共に、オルタF/B停止制御許可フラグと点火F/B停止制御許可フラグを両方とも「0」に維持したまま、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ201で、エンジン停止要求が発生したと判定された時点で、ステップ202に進み、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高いか否かを判定する。ここで、判定閾値は、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなってオルタF/B停止制御を実行する期間を確保できるようなエンジン回転速度に設定される。この判定閾値は、予め試験データや設計データ等に基づいて設定され、エンジンECU30のROMに記憶されている。尚、判定閾値は、冷却水温や油温等に応じて変化させるようにしても良い。
このステップ202で、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高いと判定された場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できると判断して、ステップ204に進み、燃料カット要求フラグを「1」にセットすると共に、オルタF/B停止制御許可フラグを「1」にセットして、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ202で、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下であると判定された場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できないと判断して、ステップ205に進み、点火F/B停止制御許可フラグを「1」にセットすると共に、燃料カット要求フラグを「1」にセットして、本ルーチンを終了する。
[オルタF/B停止制御ルーチン]
図11に示すオルタF/B停止制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、オルタF/B停止制御許可フラグがオルタF/B停止制御の許可を意味する「1」にセットされているか否かを判定し、オルタF/B停止制御許可フラグが「0」であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ301で、オルタF/B停止制御許可フラグ=1と判定された時点で、ステップ302に進み、現在のクランク角θとエンジン回転速度Ne を算出する。この後、ステップ303に進み、現在のクランク角θがオルタネータ33の負荷トルクの制御タイミング(例えばTDC)であるか否かを判定し、オルタネータ33の負荷トルクの制御タイミングでなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
上記ステップ303で、現在のクランク角θがオルタネータ33の負荷トルクの制御タイミングであると判定されれば、ステップ304に進み、現在のエンジン回転速度Ne がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いか否かを判定し、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemax以上であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ304で、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いと判定されれば、ステップ305に進み、エンジン11が燃焼中であるか否かを判定する。このステップ305で、エンジン停止要求が発生した直後でエンジン11がまだ燃焼中であると判定されれば、ステップ306に進み、エンジン回転停止制御を開始する際のオルタネータ33の要求負荷トルクTalt を初期値(例えば基準負荷トルクTref(Ne) )に設定する。
Talt =Tref(Ne)
その後、上記ステップ305で、エンジン11の燃焼が停止したと判定された場合には、ステップ307に進み、目標軌道のテーブルを参照して、今回の制御タイミングに対応した目標エンジン回転速度Netg を求める。
この後、ステップ308に進み、現在のエンジン回転速度Ne と目標エンジン回転速度Netg とのエネルギ差分ΔEを次式により算出する。
ΔE=J/2×(Ne 2 −Netg 2
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメントである。
この後、ステップ309に進み、エネルギ差分ΔEとオルタネータ33の基準負荷トルクTref(Ne) を用いて、次式により要求負荷トルクTalt を算出する。
Talt =K×ΔE/Δθ+Tref(Ne)
ここで、「K×ΔE/Δθ」はフィードバック負荷トルクであり、Kはフィードバックゲイン、Δθはクランク角変化量である。
この後、ステップ310に進み、要求負荷トルクTalt にプーリ比Ratioを乗算して、オルタネータ33の要求軸トルクTalt.final に変換する。
この後、ステップ311に進み、バッテリ電圧を検出した後、ステップ312に進み、バッテリ電圧毎に作成された複数の負荷トルク特性マップ(図7参照)の中から、現在のバッテリ電圧に対応する負荷トルク特性マップを選択して、現在の要求負荷トルクTalt (要求軸トルクTalt.final )とエンジン回転速度Ne (又はオルタネータ33の回転速度Nalt )に応じた発電指令値(デューティDuty )を算出する。
この発電指令値(デューティDuty )に基づいてオルタネータ33の発電制御電流(フィールド電流)を制御してオルタネータ33の負荷トルクを制御することで、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を行う。
[点火F/B停止制御ルーチン]
図12に示す点火F/B停止制御ルーチンは、エンジンECU30の電源オン中に所定周期(所定クランク角周期)で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ401で、点火F/B停止制御許可フラグが点火F/B停止制御の許可を意味する「1」にセットされているか否かを判定し、点火F/B停止制御許可フラグが「0」であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ401で、点火F/B停止制御許可フラグ=1と判定された時点で、ステップ402に進み、現在のクランク角θとエンジン回転速度Ne を算出する。この後、ステップ403に進み、現在のクランク角θが点火時期の制御タイミング(例えばTDC)であるか否かを判定し、点火時期の制御タイミングでなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
上記ステップ403で、現在のクランク角θが点火時期の制御タイミングであると判定されれば、ステップ404に進み、現在のエンジン回転速度Ne がエンジン回転停止制御を実行可能な最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いか否かを判定し、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemax以上であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
その後、上記ステップ404で、現在のエンジン回転速度Ne が最大エンジン回転速度Nemaxよりも低いと判定されれば、ステップ405に進み、エンジン11が燃焼中であるか否かを判定する。このステップ405で、エンジン停止要求が発生した直後でエンジン11がまだ燃焼中(燃焼停止前)であると判定されれば、ステップ406に進み、目標軌道のテーブルを参照して、今回の制御タイミングに対応した目標エンジン回転速度Netg を求める。
この後、ステップ407に進み、現在のエンジン回転速度Ne と目標エンジン回転速度Netg とのエネルギ差分ΔEを次式により算出する。
ΔE=J/2×(Ne 2 −Netg 2
ここで、Jはエンジン11の慣性モーメントである。
この後、ステップ408に進み、エネルギ差分ΔEに応じた点火補正量(点火時期の補正量)をマップ又は数式等により算出する。この点火補正量のマップ又は数式等は、エネルギ差分ΔEが0よりも大きい領域では、点火補正量が点火時期の進角方向(エンジントルクの増加方向)となり、エネルギ差分ΔEが0よりも小さい領域では、点火補正量が点火時期の遅角方向(エンジントルクの減少方向)となるように設定されている。
この点火補正量だけ点火時期を補正することで、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を行う。
その後、上記ステップ405で、エンジン11の燃焼が停止したと判定された場合には、上記ステップ406〜408の処理を行うことなく、本ルーチンを終了することで、点火F/B停止制御を終了する。
以上説明した本実施例では、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値よりも高い場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的長くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できると判断して、実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにオルタネータ33の負荷トルクをフィードバック制御するオルタF/B停止制御を実行する。一方、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合には、エンジン回転が停止するまでの期間が比較的短くなるため、オルタF/B停止制御を実行する期間を確保できないと判断して、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるように点火時期をフィードバック制御する点火F/B停止制御を実行する。これにより、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じた適正な停止制御を選択して実行することができ、エンジン回転停止制御の精度を向上させることができる。
尚、上記実施例では、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が判定閾値以下の場合に、点火F/B停止制御を実行するようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン11の燃焼停止前(燃焼中)に実エンジン回転挙動を目標軌道に合わせるようにスロットル開度(吸入空気量)をフィードバック制御するスロットルF/B停止制御を実行するようにしても良い。或は、点火F/B停止制御とスロットルF/B停止制御を両方とも実行するようにしても良い。
また、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に代えて、燃料カットを開始するときのエンジン回転速度(例えば予測値)や燃料カットによりエンジン回転速度が低下し始めるときのエンジン回転速度(例えば予測値)を用いるようにしても良い。
また、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
更に、本発明の適用範囲は、自動変速機(オートマチック・トランスミッション)を搭載した車両に限定されず、手動変速機(マニュアル・トランスミッション)を搭載した車両に本発明を適用しても良い。
その他、本発明の適用範囲は、車両の動力源としてエンジンのみを備えた一般的な車両に限定されず、車両の動力源としてエンジンとモータを備えたハイブリッド車に本発明を適用しても良い。
11…エンジン(内燃機関)、13…吸気管、14…スロットルバルブ、18…吸気管圧力センサ、19…燃料噴射弁、21…排気管、30…エンジンECU(目標軌道算出手段,停止制御手段)、31…点火プラグ、33…オルタネータ(発電機)

Claims (3)

  1. エンジン回転が目標停止クランク角で停止するようにエンジン回転挙動の目標軌道を算出する目標軌道算出手段と、エンジン停止要求に応じてエンジン回転を停止させる際に実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように制御する停止制御手段とを備えたエンジン回転停止制御装置において、
    前記停止制御手段は、実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように発電機の負荷を制御する第1の停止制御を実行する手段と、前記エンジンの燃焼停止前に実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように燃焼を制御する第2の停止制御を実行する手段とを有し、エンジン停止要求時のエンジン回転速度に応じて前記第1の停止制御と前記第2の停止制御のうちの一方を選択して実行することを特徴とするエンジン回転停止制御装置。
  2. 前記停止制御手段は、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が所定の判定閾値よりも高い場合に前記第1の停止制御を実行し、エンジン停止要求時のエンジン回転速度が前記判定閾値以下の場合に前記第2の停止制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転停止制御装置。
  3. 前記停止制御手段は、前記第2の停止制御の際に、実エンジン回転挙動を前記目標軌道に合わせるように点火時期とスロットル開度のうちの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン回転停止制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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