JP2012076167A - メタルボンド砥石 - Google Patents

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Abstract

【課題】チップポケットの生成が維持されつつ、研削比を高めることができるメタルボンド砥石を提供することを課題とする。
【解決手段】研削材としての砥粒と、砥石の性能を向上させるコバルト及びフッ素金雲母と、結合材とからなるメタルボンド砥石において、フッ素金雲母の体積%をコバルトの体積%で除した値が、0.14〜0.23であることを特徴とする。
【効果】(フッ素金雲母/コバルト)=0.14〜0.23であれば、所定の研削能率及び所定の研削比方が得られ、砥石の寿命を延ばすことができると共に研削工程の短縮化を図ることができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、ホーニング粗加工に好適なメタルボンド砥石に関する。
近年、あらゆる分野において環境に対する取り組みがなされている。車両においても、燃費向上は取り組むべき重大な事項である。燃費向上対策の一つに、シリンダとピストンとの間の摩擦軽減がある。この摩擦軽減は、燃費向上だけでなく、運動性能の向上にも繋がる。
上述の摩擦軽減を実現するには、プラトーホーニング工法が有効である。
図6はプラトーホーニング加工が施されたシリンダの断面を拡大した模式図であり、プラトーホーニング加工が施されたシリンダ100の表面には、無数のプラトー(丘)101と、隣り合うプラトー101、101の間に形成される谷102とが形成される。プラトー101の頂面103は面粗さを小さくして摩耗を低減させ、谷102に溜めたオイルで頂面103とピストンとの間の潤滑を維持する。この結果、摺動性と潤滑性を両立させることができる。
以上に述べたプラトーホーニング加工に適した砥石として、メタルボンド砥石が提案されている(例えば、特許文献1(第2頁)参照。)。
特許文献1の請求項2に「焼結性メタルボンドの組成が、金属質粒子25〜75体積%とガラス質粒子25〜75体積%である請求項1に記載の超砥粒メタルボンド砥石。」の記載がある。
ガラス質粒子25〜75体積%は、崩壊してチップポケットを生成する役割を果たす。チップポケットの存在により、切り屑の排出が円滑となり、ホーニング加工が安定して行える。
ところで、ガラス質粒子と金属質粒子の配合比を検討すると、ガラス質粒子/金属質粒子=(25体積%/75体積%)〜(75体積%/25体積%)=0.33〜3.0となる。
本発明者らの検討によれば、ガラス質粒子/金属質粒子が大きいほど、ガラス質粒子の崩壊、脱落が顕著になり、研削体積/摩耗体積で定義される研削比が極端に小さくなることが判明した。
チップポケットの生成が維持されつつ、研削比を高めることができる砥石が求められる。
特開2008−229794公報
本発明は、チップポケットの生成が維持されつつ、研削比を高めることができるメタルボンド砥石を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、研削材としての砥粒と、砥石の性能を向上させるコバルト及びフッ素金雲母と、結合材とからなるメタルボンド砥石において、前記フッ素金雲母の体積%を前記コバルトの体積%で除した値が、0.14〜0.23であることを特徴とする。
なお、フッ素金雲母の体積%とは、メタルボンド砥石に占めるフッ素金雲母の含有率を体積%で表したものである。同様に、コバルトの体積%とは、メタルボンド砥石に占めるコバルトの含有率を体積%で表したものである。
請求項1に係る発明では、(フッ素金雲母/コバルト)=0.14〜0.23とした。
フッ素金雲母の体積%をコバルトの体積%で除した値が、0.14を下回るとチップポケットの生成が不足し、切り屑の排出性が低下するため研削能率が小さくなる。研削能率は、(研削体積/研削時間)で定義されるため、所定時間当たりの研削体積が小さくなり、研削工程が延びる。
また、フッ素金雲母の体積%をコバルトの体積%で除した値が、0.23を超えると、研削比が小さくなる。研削比は、(研削体積/摩耗体積)で定義されるため、砥石の寿命が短くなる。
(フッ素金雲母/コバルト)=0.14〜0.23であれば、所定の研削能率及び所定の研削比が得られ、砥石の寿命を延ばすことができると共に研削工程の短縮化を図ることができる。
すなわち、請求項1によれば、チップポケットの生成が維持されつつ、研削比を高めることができるメタルボンド砥石が提供される。
ホットプレスの断面図である。 砥石の断面模式図である。 フッ素金雲母/コバルトと研削比(相対比A)の相関図である。 フッ素金雲母/コバルトと研削能率(相対比B)の相関図である。 フッ素金雲母/コバルトと(相対比A)×(相対比B)の相関図である。 プラトーホーニング加工が施されたシリンダの断面を拡大した模式図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、圧力に関しては次の表記を採用する。減圧状態には、絶対真空をゼロとした絶対圧を使用し、単位の後に(a)を記す。加圧状態には、大気圧をゼロとしたケージ圧を使用し、単位の後に(G)を記す。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、ホットプレス10は、水冷ジャケット11を備え、内圧が0.98MPa(G)まで耐える炉殻12と、この炉殻12の底から上向きに挿入された下部パンチ13と、この下部パンチ13に載せられる円筒状のダイ14と、炉殻12のトップから下向きに挿入され、ダイ14に挿入される上部パンチ15と、ダイ14の周囲に配置される黒鉛ヒータ16と、この黒鉛ヒータ16を囲う断熱室17とからなる焼結炉(耐加圧型ホットプレス)である。
下部パンチ13の下部はシリンダ18に挿入され、このシリンダ18へ油圧ポンプ19から圧油が送られると下部パンチ13は上昇する。油圧は圧力検出手段21で検出する。
水冷ジャケット11へは、水ポンプ22で給水される。この水はチラー23に排出され、温度調節がなされた後、水ポンプ22に戻される。
黒鉛ヒータ16は炉温制御部25で制御される。すなわち、炉温検出手段26で検出した温度が設定値より低い場合には、黒鉛ヒータ16への給電量を増加し、温度が設定値より高い場合には、黒鉛ヒータ16への給電量を減少させることにより、昇温速度の制御を含む炉温制御が可能となる。
また、炉殻12には、炉内の圧力を検出する炉圧検出手段27及び排気・加圧兼用の管28が設けられ、この管28に真空ポンプやエジェクターなどの排気手段29及び不活性ガス供給源31が接続されている。不活性ガスは、アルゴンガスや窒素ガスが入手容易である。ただし、排気手段29と不活性ガス供給源31とは同時に使用されることはない。
また、炉圧検出手段27は減圧用と加圧用とは別々に設けることが望ましいが、ここでは便宜的に共用とした。
以上に説明したホットプレス10を用いて次に述べる実験を行った。
(実験例)
本発明に係る実験例を以下に述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
○素材:
砥粒(粒度170):6.25体積%
フッ素金雲母:7.75〜19.75体積%
コバルト:56〜44体積%
結合材:30体積%
○素材充填:
上記素材を、図1のダイ14に充填した。なお、ダイ14の最大径は200mmである。
○排気:
炉内の空気を排除するために、図1の排気手段29により、炉内を20Pa(a)又はそれ以下の圧力に減圧する。これで、酸素は殆ど除去される。
○不活性ガス充填:
図1の不活性ガス供給源31からアルゴンガスを炉内へ吹き込み、炉圧を所定の圧力に維持する。
○プレス:
図1のパンチ13、15により、素材に15MPaのプレス圧を付与する。
○加熱及び昇温速度:
大気温度(25℃)から焼結温度(740℃)まで、12.5℃/分の昇温速度で加熱する。740℃で一定時間保持することにより、焼結処理がなされる。
○加熱停止及び降温速度:
図1の黒鉛ヒータ16を止める。これで、炉内及び素材の温度は下がる。降温の際には、炉内のアルゴンガスの圧力が約0.92MPa(G)に維持されるように、炉圧検出手段27で圧力を監視して排気手段29、及び不活性ガス供給源31を制御する。結果、18.0℃/分の降温速度になった。
得られた砥石の断面図(模式図)を、図2に示す。
砥石50は、砥粒51と、コバルト粒子52と、フッ素金雲母粒子53と、これらを結合する金属系結合材54とからなる。
以上の条件に加えて、フッ素金雲母の体積%とコバルトの体積%を変えながら、実験01〜05の砥石を得た。結果を、表1に示す。
Figure 2012076167
すなわち、実験01では、砥粒6.25体積%とフッ素金雲母7.75体積%とコバルト粒子56体積%と結合材30体積%からなるメタルボンド砥石(ホーニング粗加工用砥石)を作製した。この砥石を用いて次の条件でホーニング粗加工を実施した。
○ホーニング粗加工条件(実験01〜05共通):
ホーニングヘッドに取付けた砥石の数:3枚
砥石の拡張圧力:1.3MPa
ホーニングヘッドの回転数:毎分700回転
ホーニングヘッドの振動数:3.8Hz
ホーニングヘッドの送り速度:45.6m/分
以上の条件でホーニング粗加工を施し、研削比と研削能率を求めた。
砥石でワークを研削した場合に、ワークは所定の体積だけ研削除去される。この体積を研削体積と呼ぶ。また、砥石側もある程度の体積が摩耗する。この体積を摩耗体積と呼ぶ。
(研削体積/摩耗体積)=研削比と定義する。研削比は砥石の寿命そのものを表すので、研削比の大きな砥石、すなわち、砥石の摩耗量が少なく、ワークの研削量が大きい砥石が望まれる。
また、ワークを一定時間で加工する時、研削体積は大きいほど生産性が高まる。そこで、研削能率=(研削体積/加工時間)と定義する。研削能率の単位はmm/secとする。
実験01での研削比は24225であり、研削能率は75mm/secであった。
実験02〜実験05では、砥粒6.25体積%と結合材30体積%とは変えないで、フッ素金雲母の体積%とコバルト粒子の体積%とを変えて、研削比と研削能率を求めた。結果は表1に示す通りである。
表1から明らかなように、フッ素金雲母及びコバルトの体積%を変えると、研削比が著しく変わり、研削能率が穏やかに変わることが分かった。この変化をより分かり易くするために、次のようにデータを処理する。
フッ素金雲母の体積%をコバルトの体積%で除する(割る)ことで、フッ素金雲母/コバルトで表す指標を作る。
実験01では、フッ素金雲母が7.75体積%でコバルトが56体積%であるから、フッ素金雲母/コバルト=7.75/56=0.138の計算により、0.138となる。
また、表1において研削比が大きく変わっているため、最小値の5307(実験05での研削比)を1.00とし、他の実験の研削比を相対比(便宜上、相対比Aと呼ぶ。)で求めることにする。具体的には、実験01は、研削比が24225であるから、5307で割ることにより、4.56を得る。すなわち、実験01の研削比は、実験05の研削比の4.56倍に相当する。
また、表1において研削能率は変化が小さいが、最小値の75mm/sec
(実験01での研削能率)を1.00とし、他の実験の研削能率を相対比(便宜上、相対比Bと呼ぶ。)で求めることにする。具体的には、実験02は、研削能率が103であるから、75で割ることにより、1.37を得る。すなわち、実験02の研削能率は、実験01の研削能率の1.37倍に相当する。
以上のデータ処理を行うことで表2が得られる。
Figure 2012076167
表2における、フッ素金雲母/コバルトを横軸に取り、相対比Aを縦軸に取って描いたグラフを、図3に示す。フッ素金雲母/コバルトが増加するほど、研削比(相対比A)が急減する。
フッ素金雲母はチップポケット生成要素であるが、過剰になると脱落が顕著になる。合わせて、フッ素金雲母/コバルトが増加するほど、補強作用を発揮するコバルトが減少するため、研削比が急減したと推定される。
また、表2における、フッ素金雲母/コバルトを横軸に取り、相対比Bを縦軸に取って描いたグラフを、図4に示す。フッ素金雲母/コバルトが増加するほど、研削能率(相対比B)が穏やかに増加する。
図3と図4からでは、フッ素金雲母/コバルトの好適範囲を見出すことが難しいため、さらなるデータ処理を施すことにした。
すなわち、表2中の相対比Aに相対比Bを乗じる。具体的には、実験01では、4.56×1.00=4.56の計算により、(相対比A)×(相対比B)を得る。同様の処理を実験02〜05にも施す。結果を表3に示す。
Figure 2012076167
表3における、フッ素金雲母/コバルトを横軸に取り、(相対比A)×(相対比B)を縦軸に取って描いたグラフを、図5に示す。
図5から明らかなように、実験02が最良である。実験02でのフッ素金雲母/コバルトは、0.203であるから、最も好ましいフッ素金雲母/コバルトは、0.20である。
次に良いのは実験01であり、実験01までを良好とすれば、実験01の点を通る横線Cを引くことができる。この横線Cとグラフが交わった2箇所から縦線Dと縦線Eを下ろすと、縦線Dは0.14の横軸目盛りで横軸と交わり、縦線Eは0.23の横軸目盛りで横軸と交わる。
すなわち、フッ素金雲母/コバルトは0.14〜0.23であれば、良好な研削比と良好な研削能率が得られることが判明した。
本発明は、ホーニング粗加工に用いるメタルボンド砥石に好適である。
50…メタルボンド砥石、51…砥粒、52…コバルト粒子、53…フッ素金雲母粒子、54…結合材(金属系結合材)。

Claims (1)

  1. 研削材としての砥粒と、砥石の性能を向上させるコバルト及びフッ素金雲母と、結合材とからなるメタルボンド砥石において、
    前記フッ素金雲母の体積%を前記コバルトの体積%で除した値が、0.14〜0.23であることを特徴とするメタルボンド砥石。
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