JP2002146344A - 砥石用高機能フィラー及びその製造方法、並びに、それを用いた砥石及びその製造方法 - Google Patents

砥石用高機能フィラー及びその製造方法、並びに、それを用いた砥石及びその製造方法

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JP2002146344A
JP2002146344A JP2000350014A JP2000350014A JP2002146344A JP 2002146344 A JP2002146344 A JP 2002146344A JP 2000350014 A JP2000350014 A JP 2000350014A JP 2000350014 A JP2000350014 A JP 2000350014A JP 2002146344 A JP2002146344 A JP 2002146344A
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Tsutomu Takahashi
務 高橋
Naoto Suzuki
直人 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 超砥粒と同程度の密度を備えた砥石用高機能
フィラー及びその製造方法、あるいは優れた耐摩耗性や
硬さ、潤滑性等の複数の機能を兼ね備えた砥石用高機能
フィラー及びその製造方法、並びに、それを用いた砥石
及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明に係る砥石用高機能フィラー8
は、強塩基性陰イオン交換樹脂粒子にWO4 2-、MoO4
2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、TiO4 4-、Z
rO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2-より選択される1種ま
たは2種以上のイオンをイオン交換吸着させ、又は、キ
レート樹脂粒子に金属イオンをイオン交換吸着させ、そ
の後、該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼成
して炭素質化してなることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、砥石用高機能フィ
ラー及びその製造方法、並びに、それを用いた砥石及び
その製造方法に係る。より詳細には、砥粒と略同一の密
度化が図れる、あるいは耐摩耗性、潤滑性及び高硬度な
どの複数の機能を兼ね備えた、砥石用フィラー及びその
製造方法、並びに、それを用いた砥石及びその製造方法
に関する。本発明に係る砥石用フィラーは例えば電鋳薄
刃砥石などに好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】一般に、砥石は、砥粒、結合材、骨材
(フィラーとも呼ぶ)、気孔、台金から構成されてお
り、一般用途の砥石では粒径が1〜500μmの砥粒
を、特殊用途の砥石では粒径が1〜200μmの超砥粒
が使われ、その材質としてはダイヤモンドやc-BN が
多用されている。結合材としては、メタル、レジン(樹
脂)、ビトリファイド(セラミックスガラス)、めっき
が用いられる。結合材をめっきとする際には、台金を使
用する場合が電着と、台金を使用しない場合が電鋳と呼
ばれている。フィラーについては後述する。気孔として
は、連通した構造をなすビトリファイド、独立した構造
をなすグラスバルーン等が挙げられる。台金としては、
例えばFeベースのものやブロンズ、樹脂、セラミック
ス等が知られている。これらに対して、砥石を構成する
フィラーは以下の状況にあった。 フィラーとは、耐摩耗、硬度、潤滑、強度、伝熱、耐
熱などの機能を達成するために使用されるものである。
従来のフィラー(以後、通常フィラーと呼ぶ)として
は、例えば、耐摩耗や硬度を向上させるためにはSiC
やAl23が、潤滑性を向上させるためにはグラファイ
ト等のカーボンやh−BN、CaF2、MoS2、 テフ
ロン(登録商標)が、強度を向上させるためにはメタル
が用いられる。唯一、高硬度と高強度を両立できる材料
としてウィスカーが知られているだけであった。換言す
れば、通常フィラーを用いて上述した複数の機能を同時
に達成するようにするには、これらの材料から適宜選択
した複数の材料を適当な割合で混在させて問題解決を図
るしか術はなかった。
【0003】フィラーには超砥粒との関係において、
分散や密度、形状の点から以下の条件が求められる。ま
ず、フィラーと超砥粒とを均一に分散させることが均一
な研削作業をもたらすので、フィラーの粒径は超砥粒と
略同一とすることが好ましい。また同様の理由から、フ
ィラーの密度も超砥粒と略同一とすることが望ましい。
一方、フィラーの形状は最も分散しやすい球状が好適で
あり、等ピッチに配置させることが大切である。但し、
砥石に同時に含まれるフィラーの形状は必ずしも同一で
ある必要はない。 電鋳薄刃砥石などのめっき型砥石ではフィラーとして
分散配置された固体潤滑剤によって研削抵抗を低減でき
るが、従来砥石用として使用されている通常フィラーの
多くは導電性材料からなるので、現実にはめっき型砥石
には電気伝導性を有する通常フィラーは用いられず、め
っき型砥石に適用できる通常フィラーは限定されたもの
となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、上述した
従来のフィラーすなわち通常フィラーには、次のような
課題が残されていた。 (1)上記より明らかなように、従来入手できた通常
フィラーは単一構成で単機能あり、砥石に利用する場合
は電熱的な側面から考慮し、適宜その材料選択とその混
在比率と検討し、被研削物に応じた構成を実現するため
にその度に製品設計し直す必要があった。そこで、単一
材料からなり複数の機能を同時に満たすことが極めて難
しい従来の通常フィラーに代えて、単一材料からなり上
述した複数の機能、すなわち耐摩耗、硬度、潤滑、強
度、伝熱、耐熱などの機能を同時に兼ね備えるととも
に、分散や密度、形状の点からも上述した望ましい条件
を満たすことが可能な、砥石用高機能フィラー及びその
製造方法の開発が期待されていた。
【0005】(2)上記より明らかなように、分散、
密度及び形状において上記の好適条件を同時に満たすも
のは、従来入手できる通常フィラーには存在しなかっ
た。そこで、金属結合相中にフィラーと超砥粒とが均一
に分散できるように、一緒に用いる超砥粒の密度とフィ
ラーそれ自体の密度を略同一の密度にすることが可能な
砥石用高機能フィラー及びその製造方法が求められてい
た。そのためには、ミクロレベル、換言すれば原子オー
ダーで自由に変質させることができる、あるいは化学合
成に近い制御が可能な材質からなる砥石用高機能フィラ
ーが望ましい。 (3)上記より明らかなように、従来の砥粒用フィラ
ーすなわち通常フィラーの中で導電性を有する材料につ
いてはめっき型砥石への適用が困難であり、電気伝導性
のない砥粒用高機能フィラー及びその製造方法の開発も
強く期待されていた。
【0006】更には、従来、例えば電鋳薄刃砥石などの
めっき型砥石では、異なる機能をそれぞれ有する複数の
種類からなる通常フィラーを均一に分散配置することが
求められていたため、この分散配置を満たすための条件
が複雑であり、砥石の薄型化も難しくしていた状況にあ
った。これに対して、上記特性を備えた砥粒用高機能フ
ィラー、すなわち単一材料からなり複数の機能を備えた
砥粒用高機能フィラーが得られれば、分散配置を満たす
ための製造条件が緩和され、一段と薄型化を図ることが
可能な砥石及びその製造方法が実現できるものと期待さ
れる。特に、分散めっき法等の通常のめっき法を用い、
超砥粒と共に砥粒用フィラーを金属結合相中に適切に分
散固着させる際に極めて有効に機能するものと思われ
る。
【0007】本発明は、このような実情に鑑みて、金属
結合相中に均一に分散でき、砥石の切れ味と剛性を向上
させるようにした砥石用高機能フィラー及びその製造方
法を提供することを目的とする。また本発明の他の目的
は、金属結合相中にフィラーと超砥粒とを分散配置させ
る製造条件が緩和され、一段と薄型化も図ることが可能
な砥石及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第一の砥石
用高機能フィラーは、強塩基性陰イオン交換樹脂粒子に
WO4 2-、MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、Ti
3 2-、TiO4 4-、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27
2- より選択される1種または2種以上のイオンをイオ
ン交換吸着させ、該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲
気中で焼成して炭素質化してなることを特徴としてい
る。上記第一の砥石用高機能フィラーは、炭材すなわち
炭素質の元となる物質として、塩基性の変換基により金
属イオンや陰イオンの交換吸着を行うことができる強塩
基性陰イオン交換樹脂粒子を用意し、この樹脂にWO4
2-、MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、T
iO4 4-、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2-より選択
される1種または2種以上のイオンを含む水溶液を接触
させ、イオン交換吸着させる。そして、粒子の酸化を防
ぎつつ炭化を促進するため、イオン交換吸着させた粒子
を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼成し、粒子を炭
素質化させる。この焼成条件のうち、焼成温度条件によ
り炭素質化させた粒子の密度を、焼成時間条件により炭
素質化させた粒子の安定化を適宜調整することができ
る。
【0009】また、本発明に係る第二の砥石用高機能フ
ィラーは、キレート樹脂粒子に金属イオンをイオン交換
吸着させ、該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で
焼成して炭素質化してなることを特徴としている。上記
第二の砥石用高機能フィラーは、炭材として、金属イオ
ンとキレートを形成する能力のあるリガンド構造を高分
子に導入した所謂キレート樹脂粒子を用意し、この樹脂
に所望の金属イオンを接触させ、イオン交換吸着させ
る。そして、粒子の酸化を防ぎつつ炭化を促進するた
め、イオン交換吸着させた粒子を500℃以上の非酸化
性雰囲気中で焼成し、粒子を炭素質化させる。この焼成
条件のうち、焼成温度条件により炭素質化させた粒子の
密度を、焼成時間条件により炭素質化させた粒子の安定
化を適宜調整することができる。
【0010】上述した第一あるいは第二の何れの砥石用
高機能フィラーでも、焼成し炭素質化を図ることによっ
て、超砥粒と同程度の密度を備えることができるので超
砥粒と共に金属結合相中に均一に分散配置させることを
容易に行える。また炭素質化を図ったフィラーの大きさ
を、炭素質化を図る前あるいは後に加工処理などを行い
超砥粒と同程度に調整すると、金属結合相中に一段と均
一に分散配置できることからより好ましい。更に砥粒層
の自生発刃作用を促して切れ味を向上できる。しかも炭
素質化させた粒子は一般的に剛性と潤滑性を有するため
に砥粒層を高剛性に形成できる上に砥石用高機能フィラ
ーが砥粒層の表面に露出して研削で摩耗することでその
粉末が潤滑作用を発揮して研削抵抗を低減して研削熱を
抑制できる。
【0011】また上記構成からなる砥石用高機能フィラ
ーであれば、砥石を例えば電気めっきや無電解めっき等
で製造するメタルボンド砥石に用いた場合、分散めっき
法等の通常のめっき法によって超砥粒と共にそれぞれ均
一に金属結合相中に析出でき、或いは金属粉末と超砥粒
と共に均一に混合して成形して焼結できる。ただし、本
発明に係る砥石用高機能フィラーの適用はメタルボンド
砥石に限定されるものではなく、レジンボンド砥石やビ
トリファイドボンド砥石等各種の砥石に採用できる。
尚、上述した第一あるいは第二の何れの砥石用高機能フ
ィラーは球状の形態が望ましい。球状にすることで金属
結合相中での分散性を向上できる。また、この分散性の
観点から上記砥石用高機能フィラーの大きさは超砥粒と
同程度の大きさが好ましい。本発明に係る砥石用高機能
フィラーをこの大きさとするためには、大別して以下に
示す2通りの方法がある。
【0012】一つは上述したように先ずイオン交換吸着
させ、非酸化性雰囲気中で焼成し、粒子の炭素質化を終
えた後に例えば粉砕処理を施し、砥石用高機能フィラー
の小径化を図る方法である。もう一つは予めイオン交換
吸着前に超砥粒と同程度の大きさに強塩基性陰イオン交
換樹脂粒子やキレート樹脂粒子を粉砕等の加工処理を行
い樹脂粒子の小径化を図った後、この樹脂粒子に対して
上述したイオン交換吸着等の処理を施す方法である。い
ずれの方法によっても小径の砥石用高機能フィラーを作
製できるが、予め樹脂粒子を粉砕し小径化した粒子にイ
オン交換吸着等の処理を施す後者の処理法の方が好まし
い。何故ならば、後者の処理法によれば、焼結した際、
吸着させたイオンに起因する内部ひずみの発生が少ない
から、内部に欠陥が少なく、安定して球状をなす小径の
砥石用高機能フィラーが得られるからである。
【0013】また他のフィラー材料はマイクロビッカー
ス硬さが1000kg/mm2 以上の硬質フィラーであ
っても良い。上述した第一あるいは第二の砥石用高機能
フィラーの硬さはマイクロビッカース硬さで400〜6
00kg/mm2 前後であり、他のフィラーとしてこれ
より硬いマイクロビッカース硬さが1000kg/mm
2 以上である硬質フィラーがバインダーで固着されるこ
とにより砥石用高機能フィラーに潤滑性とより高い硬
さ、剛性を同時に付与できる。また他のフィラー材料は
マイクロビッカース硬さが300kg/mm2 以下の潤
滑性フィラーであってもよい。マイクロビッカース硬さ
が300kg/mm2 以下の他のフィラー材料を固着す
ると砥石用高機能フィラーの潤滑性を一段と高めること
ができる。
【0014】また本発明に係る第一あるいは第二の砥石
用高機能フィラーは非導電性材料からなる被覆層を備え
てもよい。上述した第一あるいは第二の砥石用高機能フ
ィラーは作製条件によっては導電性を有するものとして
得られる場合もある。この場合には、剥き出しで分散め
っき法等に用いるとめっき時に第一あるいは第二の砥石
用高機能フィラーに直接金属結合相が析出するために砥
粒層内部に空洞ができるおそれがある。そのため、この
導電性を有する第一あるいは第二の砥石用高機能フィラ
ーは非導電性のバインダーでその外表面を被覆すること
で超砥粒と同じく非導電性に設定できる。これにより、
台金等の基台に金属結合相を析出させる際に超砥粒や砥
石用高機能フィラーの間隙を通してこれら超砥粒や砥石
用高機能フィラーを確実に固着できるように金属結合相
が析出される。上述した非導電性のバインダーとしては
例えば合成樹脂、低融点ガラス、ケイ酸塩ガラスやケイ
酸塩樹脂等が好適に用いられる。
【0015】また本発明に係る第一あるいは第二の砥石
用高機能フィラーは、その密度が2.5〜4.5g/c
3 であることを特徴としている。砥石用高機能フィラ
ーの密度がこの範囲にあれば、砥石用高機能フィラー
は、種々の超砥粒、例えばダイヤモンド(密度3.5g
/cm3)やc-BN(密度3.45g/cm3) と略同
一の密度をもつことができるので、金属結合相中に砥石
用高機能フィラーと超砥粒とを均一に分散することが可
能となる。以上説明したように、本発明に係る砥石用高
機能フィラーは超砥粒と略同一の密度となるように自由
に制御して形成することができると共に、フィラーに例
えば非導電性材料からなる被覆層を設けることで電気的
な性質を変質させたり、あるいは潤滑性を付与したりす
ることが可能となる。つまり、本発明によれば、単一材
料からなり複数の機能、すなわち耐摩耗、硬度、潤滑、
強度、伝熱、耐熱などの機能を同時に兼ね備えるととも
に、分散や密度、形状の点からも望ましい条件を満たす
ことが可能な砥石用高機能フィラーを自由に設計して形
成することができる。これは、本発明に係る砥石用高機
能フィラーが、ミクロレベル、換言すれば原子オーダー
で自由に変質させることができることに基づくものであ
り、換言すれば当該砥石用高機能フィラーは化学合成に
近い制御が可能な材質からなることを意味する。
【0016】本発明に係る第一の砥石用高機能フィラー
の製造方法は、強塩基性陰イオン交換樹脂粒子にWO4
2-、MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、T
iO4 4 -、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2- より選択
される1種または2種以上のイオンをイオン交換吸着さ
せた後、該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼
成して炭素質化させることを特徴としている。上記構成
からなる第一の砥石用高機能フィラーの製造方法によれ
ば、上述した第一の砥石用高機能フィラー、すなわち超
砥粒と同程度の密度を備えた砥石用高機能フィラーが安
定して得られる。この第一の砥石用高機能フィラーは、
超砥粒と共に金属結合相中に均一に分散配置させること
ができるという利点を有している。本発明に係る第二の
砥石用高機能フィラーの製造方法は、キレート樹脂粒子
に金属イオンをイオン交換吸着させた後、該粒子を50
0℃以上の非酸化性雰囲気中で焼成して炭素質化させる
ことを特徴としている。上記構成からなる第二の砥石用
高機能フィラーの製造方法によれば、上述した第二の砥
石用高機能フィラー、すなわち超砥粒と同程度の密度を
備えた砥石用高機能フィラーが安定して得られる。この
第二の砥石用高機能フィラーも、超砥粒と共に金属結合
相中に均一に分散配置させることができるという利点を
有している。
【0017】本発明に係る砥石は、超砥粒を金属結合相
中に分散配置してなる砥石において、前記金属結合相内
に上述した本発明に係る砥石用高機能フィラーが分散配
置されていることを特徴とする。この発明に係る砥石に
よれば、本発明に係る砥石用高機能フィラーによって剛
性を高めると共に耐摩耗性を抑え自生発刃を促進して切
れ味を向上させることができ、更にこの砥石用高機能フ
ィラーが砥粒層表面から露出して研削で摩耗して粉体に
なると潤滑作用を発揮できるために研削抵抗を低減して
研削熱を抑制できる。この作用・効果は、砥石を構成す
る結合材の種類に依存するものではなく、結合材はメタ
ルやレジン(樹脂)、ビトリファイド(セラミックスガ
ラス)、めっき(台金有りの電着、台金無しの電鋳)の
いずれであっても構わない。中でも、本発明に係る砥石
は前記金属結合相がめっき製法により形成される場合が
好適である。何故ならば、結合材がめっきの場合、すな
わち金属結合相がめっき製法により形成される場合は厚
みの薄い砥石を形成することができるが、その際には本
発明に係る砥石用高機能フィラーが特に有効に機能する
からである。すなわち、本発明に係る砥石用高機能フィ
ラーは超砥粒と同程度の密度をもつことができるので、
超砥粒と共に金属結合相中に均一に分散配置させること
が可能となる。更には、本発明に係る砥石用高機能フィ
ラーは単一の複合材料からなり複数の機能、すなわち耐
摩耗、硬度、潤滑、強度、伝熱、耐熱などの機能を同時
に兼ね備えることができるので、従来のように単一の機
能を有する多種類の通常フィラーを混在させる必要がな
くなることから、良好な分散性を常に安定して実現でき
るという利点が得られる。
【0018】また本発明による砥石用高機能フィラーを
用いた砥石の製造方法は、めっき槽内に満たされた金属
イオンを含むめっき液中に電源陰極に接続された基板を
配置し、めっき液中に超砥粒と本発明に係る砥石用高機
能フィラーを入れて超砥粒と砥石用高機能フィラーを分
散させた金属結合相を前記基板に析出させて砥粒層を形
成するようにしたことを特徴としている。通電状態で超
砥粒と本発明に係る砥石用高機能フィラーを分散させた
金属結合相を基板上に析出する際に砥石用高機能フィラ
ーの密度を超砥粒の密度に対して予め適宜調整しておく
ことで、金属結合相中での砥石用高機能フィラーの分散
割合を設定できる上に金属結合相の析出に際しては超砥
粒や砥石用高機能フィラーを強固に固着できるから超砥
粒と砥石用高機能フィラーを確実に固着した砥粒層を製
造できることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面により説明する。図1乃至図4は実施の形態に関す
るものであって、図1は本発明に係る砥石用高機能フィ
ラーを示す模式的な断面図であり、(a)は炭素質化し
た樹脂のみからなる場合を、(b)は外表面に非導電性
材料の被覆層を備えた場合を示す。図2は実施の形態に
よる電鋳薄刃砥石の縦断面図であり、図3は電鋳薄刃砥
石の製造装置を示す図、図4は電鋳薄刃砥石の製造工程
を示す図である。本発明に係る砥石用高機能フィラー8
は、例えば図2に示すようなメタルボンド砥石の一つで
ある電鋳薄刃砥石1を構成する骨材として好適に用いら
れる。図2に示すように、電鋳薄刃砥石1は例えば薄板
状をなしており、その厚さ方向の縦断面において、砥粒
層2としてNi、Coまたはこれらの合金等からなる金
属めっき相(金属結合相)4中にダイヤモンド或いはc
-BN 等の超砥粒6が均一に分散して配設されている。
しかもこの砥粒層2内には潤滑性と高剛性を兼ね備え、
更には超砥粒6とほぼ同じ大きさや密度に調製された砥
石用高機能フィラー8が分散状態で添加されている。
【0020】本発明では、この砥石用高機能フィラー8
として以下に述べる2種類の樹脂粒子を炭素質化させて
用いる。第一は、炭材すなわち炭素質の元となる物質と
して強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる場合である。予
め強塩基性陰イオン交換樹脂(例えば、三菱化学製のPA
312L)を粉砕し、マルメライザー等により角を取り超砥
粒6とほぼ同じ程度の大きさの略球状の強塩基性陰イオ
ン交換樹脂粒子を作製する。この強塩基性陰イオン交換
樹脂粒子を常法により洗浄した後、乾燥処理を行う。乾
燥処理を終えた強塩基性陰イオン交換樹脂粒子を所定の
容器に充填後、所定のイオンを含む水溶液を流通接触さ
せることにより、強塩基性陰イオン交換樹脂粒子にイオ
ン交換吸着させる。所定のイオンとしては、WO4 2-
MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、TiO4
4 -、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2- より選択され
る1種または2種以上のイオンが用いられる。次いで、
このイオン交換吸着処理を終えた樹脂粒子に対して、乾
燥処理を施す。この乾燥処理としては、大気中における
自然乾燥に加え、吸着物の離脱を促進するため100〜
150℃の加熱処理が好ましい。後者の加熱処理におい
ては、雰囲気ガスおよびその流量や温度を適宜制御して
行うのがよい。このように充分に乾燥処理された強塩基
性陰イオン交換樹脂粒子を非酸化性雰囲気とした電気炉
内に配置し、炉内温度を所定の温度まで上げて、所定時
間加熱保持することにより強塩基性陰イオン交換樹脂粒
子を焼成して炭素質化させた。その際、加熱温度として
は400℃〜900℃、加熱保持時間としては2〜5時
間程度が好ましく、中でも500℃以上としたとき強塩
基性陰イオン交換樹脂粒子の炭素質化が十分図れるので
望ましい。加熱時間は、炭素質化された強塩基性陰イオ
ン交換樹脂粒子からなる砥石用高機能フィラー8が、後
述するメタルボンド砥石において一緒に用いる超砥粒6
の密度とほぼ同じ程度の密度となる時間が好適である。
吸着したイオンは熱処理により炭化物や酸化物となって
炭素質化された強塩基性陰イオン交換樹脂粒子内にミク
ロレベルの均一性を持って分散した、超砥粒6とほぼ同
じ大きさで同程度の密度を備えた砥石用高機能フィラー
8を得る。
【0021】第二は、炭材すなわち炭素質の元となる物
質としてキレート樹脂を用いる場合である。予めキレー
ト樹脂(例えば、三菱化学製のCR11)を粉砕し、マルメ
ライザー等により角を取り超砥粒6とほぼ同じ程度の大
きさの略球状のキレート樹脂粒子を作製する。このキレ
ート樹脂粒子を常法により洗浄した後、乾燥処理を行
う。乾燥処理を終えたキレート樹脂粒子を所定の容器に
充填後、所定の金属イオンを含む水溶液を流通接触させ
ることにより、キレート樹脂粒子にイオン交換吸着させ
る。所定の金属イオンとしては、例えばFe3+、N
2+、Co2+等が用いられる。次いで、このイオン交換
吸着処理を終えたキレート樹脂粒子に対して、乾燥処理
を施す。この乾燥処理としては、大気中における自然乾
燥に加え、吸着物の離脱を促進するため100〜150
℃の加熱処理が好ましい。後者の加熱処理においては、
雰囲気ガスおよびその流量や温度を適宜制御して行うの
がよい。このように充分に乾燥処理されたキレート樹脂
粒子を非酸化性雰囲気とした電気炉内に配置し、炉内温
度を所定の温度まで上げて、所定時間加熱保持すること
によりキレート樹脂粒子を焼成して炭素質化させた。そ
の際、加熱温度としては400℃〜900℃、加熱保持
時間としては2〜5時間程度が好ましいのは、上述した
強塩基性陰イオン交換樹脂粒子の場合と同様である。ま
たキレート樹脂粒子の場合も、加熱温度を500℃以上
としたとき炭素質化が安定して生ずるのでより望まし
い。加熱時間については、キレート樹脂粒子からなる砥
石用高機能フィラー8の場合も、後述するメタルボンド
砥石において一緒に用いる超砥粒6の密度とほぼ同じ程
度の密度となるように炭素質化が図れる時間が好まし
い。これにより、Fe或いはNi等の酸化物を含み、超
砥粒とほぼ同じ大きさで同程度の密度を備えた砥石用高
機能フィラー8を得る。
【0022】上述した第一あるいは第二の樹脂粒子から
作製された砥石用高機能フィラー8としては図1(a)
に示すように略球状を呈し、その粒径はダイヤモンドか
らなる超砥粒6の平均粒径dの1/20〜3倍の範囲、
好ましくは略同一径としたものが、超砥粒6と共に砥粒
用高機能フィラー8を金属結合相(金属めっき相)4中
に適切に分散固着させる上から、特に好ましい。この砥
石用高機能フィラー8は炭素質化の作製条件を適宜選択
することで、非導電性であって粒子状、好ましくは球状
を呈していて剛性と潤滑性を備え、更には超砥粒6とほ
ぼ同程度の密度(約3.5)とされていて、また略球状
であるため造粒し易い特性を有する。また、上述した砥
石用高機能フィラー8は図1(b)に示すように、砥石
用高機能フィラー8を核として砥石用高機能フィラー8
の外表面に非導電性材料からなる被覆層9を備えてもよ
い。砥石用高機能フィラー8は炭素質化の作製条件によ
っては導電性を示すこともあるが、このような場合はそ
の外皮として非導電性材料からなる被覆層9を設けるこ
とで、砥石用高機能フィラー8を非導電性材料として取
扱うことが可能となる。ただし、被覆層9は、砥石用高
機能フィラー8が導電性か非導電性かに拘わらず、砥石
用高機能フィラー8の潤滑性や耐摩耗性を改善する目的
から設けられる。
【0023】被覆層9としては硬質耐磨耗性粒子あるい
は潤滑性粒子を含有するものが好ましい。例えば、砥石
用高機能フィラー8の外表面上に硬質耐磨耗性粒子ある
いは潤滑性粒子として砥石用高機能フィラー8とは異な
る他のフィラー材料12を含有し、この他のフィラー材
料12をバインダー14で結合させることで形成でき
る。このように、砥石用高機能フィラー8の外表面上に
硬質耐磨耗性粒子あるいは潤滑性粒子をなす他のフィラ
ー材料12を配し、これをバインダー14で結合して一
体化させた被覆層9を設けることによって、砥石用高機
能フィラー全体の密度を更に微調整することができる。
これにより、砥石用高機能フィラー8を超砥粒6と共に
金属結合相4中に均一に分散配置させることが一段と容
易に行うことができる。更に砥粒層の自生発刃作用を促
して切れ味を向上できる。しかも剛性や潤滑性を有する
被覆層9の存在により、砥石用高機能フィラー8が砥粒
層4の表面に露出して研削で摩耗することでその粉末が
潤滑作用を発揮して研削抵抗を低減して研削熱を抑制で
きる。また砥石を例えば電気めっきや無電解めっき等で
製造する際に、分散めっき法等の通常のめっき法によっ
て超砥粒と共にそれぞれ均一に金属結合相中に析出で
き、或いは金属粉末と超砥粒と共に均一に混合して成形
して焼結できる。従って、本発明に係る砥石用高機能フ
ィラー8はめっき製法により形成されるメタルボンド砥
石にその用途が限定されるものではなく、レジンボンド
砥石やビトリファイドボンド砥石等各種の砥石に採用で
きる。
【0024】硬質耐磨耗性粒子からなる他のフィラー材
料12としてはマイクロビッカース硬さが1000kg
/mm2 以上の硬質フィラーが好ましい。樹脂に対して
イオン交換吸着を施し、焼成して炭素質化を図ることで
作製した砥石用高機能フィラー8の硬さはマイクロビッ
カース硬さで400〜500kg/mm2 前後であり、
他のフィラー材料12としてこれより硬いマイクロビッ
カース硬さが1000kg/mm2 以上である硬質耐磨
耗性粒子を用い、これがバインダー14で固着された形
態からなる被覆層9を設けることによって、砥石用高機
能フィラー8に潤滑性とより高い硬さ、剛性を同時に付
与できる。また潤滑性粒子からなる他のフィラー材料1
2としてはマイクロビッカース硬さが300kg/mm
2 以下の潤滑性フィラーが望ましい。マイクロビッカー
ス硬さが300kg/mm2 以下の潤滑性粒子からなる
他のフィラー材料12がバインダー14で固着された形
態からなる被覆層9を設けることによって、砥石用高機
能フィラー8の潤滑性を一段と高めることができる。
【0025】非導電性材料からなる被覆層9を設けるた
めには、被覆層9を構成するバインダー14として非導
電性材料が使用される。導電性を有するバインダー14
を含む被覆層9を外表面に設けた砥石用高機能フィラー
8を剥き出しで分散めっき法等に用いると、めっき時に
被覆層9に直接金属結合相4が析出するために砥粒層4
内部に空洞ができるおそれがある。そのため砥石用高機
能フィラー8を非導電性のバインダー14で被覆する
と、被覆層9が外皮をなす砥石用高機能フィラー8は超
砥粒6と同じく非導電性に設定できるので、台金等の基
台24に金属結合相4を析出させる際に超砥粒6や砥石
用高機能フィラー8の間隙を通してこれら超砥粒6や砥
石用フィラー8を確実に固着できるように金属結合相4
が析出される。この非導電性のバインダー14として
は、例えば合成樹脂、低融点ガラス、ケイ酸塩ガラスや
ケイ酸塩樹脂等が好適である。
【0026】ここで、上記第一あるいは第二の樹脂粒子
を炭素質化して得られた砥石用高機能フィラー8は、研
削時に摩耗して生成される粉体が潤滑剤として作用して
被削材との間の研削抵抗を低減して研削熱の発生を抑制
することができ、更に例えば黒鉛等の固体潤滑剤に比べ
て硬さ及び圧縮強度、曲げ強度等が大きいために電鋳薄
刃砥石1等のメタルボンド砥石が変形したり偏摩耗する
ことをより効果的に抑制することができる。また本実施
の形態では砥石用高機能フィラー8の密度をダイヤモン
ドからなる超砥粒6の密度(約3.5)と同一に設定し
ており、これは各樹脂粒子を炭素質化する諸条件を制御
することで密度調整を図っている。
【0027】また非導電性材料からなる被覆層9を設け
る場合は、硬質耐磨耗性粒子からなる他のフィラー材料
12としては例えばWC(タングステンカーバイド)
が、また潤滑性粒子としてはMoS2 (二硫化モリブデ
ン)が好適である。WCは密度が約15.7で潤滑性と
剛性が高く、MoS2 は密度が約4.6で潤滑性が高
い。そのため、被覆層9としてWCを採用した場合には
MoS2 を採用した場合よりも砥石用高機能フィラー8
の1個当たりの被覆層9の被覆量が少なくてよいことに
なる。或いはWCとMoS2 を混合して配設してもよい
し、剛性と潤滑性を備えた超砥粒6より高密度の非導電
性材料からなる被覆層9を採用しても構わない。またW
CとMoS2 等の高密度のものに超砥粒6より低密度の
他の非導電性材料を混合して密度調整を行ってもよい。
このような被覆層9を設ける方法としては、例えばスプ
レードライヤ法、マイクロカプセル法、ゾルゲル法等が
挙げられる。
【0028】また略球状の樹脂粒子を炭素質化して形成
される砥石用高機能フィラー8も略球状を有しており、
めっき液中での分散安定性が良く、また砥粒層内にあっ
ては略球状であるため応力緩和能力や圧縮剛性が高い利
点を有する。以上の説明では、予め強塩基性陰イオン交
換樹脂またはキレート樹脂を粉砕し、角を取る加工など
を施し、超砥粒6とほぼ同じ程度の大きさの略球状の各
樹脂粒子を作製してから、この所望の大きさとした樹脂
粒子に対してイオン交換吸着、次いで焼成することで炭
素質化を図った。しかしながら、まず上記の粉砕加工等
を施さずに各樹脂に対してイオン交換吸着を行い、次い
で焼成し炭素質化を図った後、この炭素質化された樹脂
に粉砕等の加工を施すことによって、樹脂の大きさを超
砥粒6と同程度に小型化し、砥石用高機能フィラー8と
して好適な大きさの樹脂粒子を作製しても構わない。た
だし、予め粉砕加工を施し小径の樹脂粒子を作製した
後、この樹脂粒子に対してイオン交換吸着や焼成を行い
炭素質化を図る手順の方が、この逆の手順とした場合と
比較して、所望の密度となるまで焼成する際に、吸着し
たイオンに起因した内部歪みの発生量を抑制できるので
好ましい。
【0029】また砥粒層2に対する超砥粒6の含有率は
3〜40vol%の範囲とし、同じく砥石用高機能フィ
ラー8の含有率は5〜50vol%の範囲とするのが好
ましい。超砥粒6の含有率が3vol%より小さいと超
砥粒6の配設間隔が大きすぎて研削効率と切れ味が悪く
40vol%より多いと目詰まりを起こしやすくなる。
また砥石用高機能フィラー8の含有率が5vol%より
小さいと砥石用高機能フィラーの配設間隙が大きすぎて
潤滑性と剛性と切れ味の向上という目的を達成し得ず、
50vol%より多いと超砥粒6の保持力が低下して砥
粒寿命を低下させることになる。更に砥粒層2における
超砥粒6と砥石用高機能フィラー8の合計の含有率は1
0〜55vol%の範囲とする。超砥粒6と砥石用高機
能フィラー8の合計の含有率が55vol%より多いと
超砥粒6の保持力が低下して砥粒寿命を低下させること
になる。
【0030】次に実施の形態による電鋳薄刃砥石1の製
造方法について図3及び図4により説明する。図3に示
す砥石製造装置16において、めっき槽18内にはNi
またはCo等の金属イオンを含むめっき液Mが満たされ
ており、このめっき液M中には同一密度の超砥粒6と砥
石用高機能フィラー8が添加されている。このめっき槽
18には、図示しない超音波攪拌機等の攪拌機が配設さ
れていてめっき液Mの攪拌を行うことで、めっき液M中
のNiまたはCo等の金属イオンに対して超砥粒6及び
砥石用高機能フィラー8がそれぞれ均等間隔に分散配置
されるように調整させられている。まためっき槽18内
には非導電性の材質からなる台座20が水平に配置され
ており、この台座20上には製造すべき砥石の原型形状
をなす部分を残してマスキング22が施された導電性の
平面基板24が載置されている。そして平面基板24を
電源の陰極に接続して陰極板とすると共に、めっき槽1
8内においてめっき液M中に平面基板24に対向する位
置にNi等の陽極板26を配設する。
【0031】さて、このような砥石製造装置16におい
て、電鋳薄刃砥石1を製造するには、まず攪拌機を作動
させつつ平面基板24を電源の陰極に通電して陽極板2
6との間に通電する。この状態で台座20を例えば10
m/min程度の低速回転させた状態でめっきを行う。
これによって陰極である平面基板24上に超砥粒6及び
砥石用高機能フィラー8を含むNiまたはCo等の金属
めっき相(金属結合相)4が析出する。その際、超砥粒
6と砥石用高機能フィラー8が密度をほぼ等しくしてい
るためにめっき液Mを攪拌することでそれぞれほぼ均等
に分散混合されて平面基板24上に降下させることがで
き、しかも砥石用高機能フィラー8は略球状であるため
に分散性が一層良好となる。また超砥粒6と砥石用高機
能フィラー8は非導電性であるために金属めっき相4を
析出させる際に超砥粒6や砥石用高機能フィラー8の間
隙を通して平面基板24上に析出するために、金属めっ
き相4によって超砥粒6や砥石用高機能フィラー8を緻
密で堅固に固定保持できる。
【0032】砥粒層内における超砥粒6と砥石用高機能
フィラー8の分配比を変える場合、砥石用高機能フィラ
ーの密度を超砥粒6よりも大きくすると砥粒層内での砥
石用高機能フィラー8の存在比を相対的に高めることが
でき、砥石用高機能フィラーの密度を超砥粒6よりも小
さくすると砥粒層内での砥石用高機能フィラー8の存在
比は相対的に小さくなる。ただし、炭素質化の条件によ
っては樹脂粒子から得られた砥石用高機能フィラー8が
導電性を示す場合がある。このような導電性の砥石用高
機能フィラー8を剥き出しでめっき液Mに投入すれば金
属めっき相4は導電性を有する砥石用高機能フィラー8
上に析出して砥粒層2内に空洞を形成するおそれがあ
る。また砥石用高機能フィラー8の密度が超砥粒6の密
度と相違すれば超砥粒6に対して砥石用高機能フィラー
8が偏在して砥粒層2に固着されるおそれがある。しか
しながら、このような導電性の砥石用高機能フィラー8
は、図2(b)に示すように、その外表面に非導電性材
料からなる被覆層9を設けることによって採用できる。
【0033】このようにして図1に示すような所定肉厚
の砥粒層2が形成されたら、平面基板24をめっき槽1
8から取り出して水洗し、平面基板24から砥粒層2を
剥がすことで平面基板24の形状が砥粒層2に転写され
ており、これを所定形状に成形すれば図1に示す電鋳薄
刃砥石1を形成できる。このようにして得られた電鋳薄
刃砥石1を図示しない砥石軸に固定する。この状態の電
鋳薄刃砥石1を砥石軸の軸線まわりに回転させつつ砥粒
層2の外周面で電子部品材料等の被削材を切断(切削)
加工する。電鋳薄刃砥石1は砥石用高機能フィラー8に
よって高剛性に設定されているために切断加工時にそり
等を生じない。また砥石用高機能フィラー8によって砥
粒層2の耐摩耗性や砥粒保持強度を抑制して自生発刃作
用を発揮できることで切断抵抗を抑えて切れ味を向上で
きる。そして砥石用高機能フィラー8が砥粒層2の表面
に露出すると球状であるために切断(切削)時に砥粒層
2に作用する応力を緩和させることができると共に被削
材に点接触するために被削材との摩擦抵抗が小さく摩擦
熱の発生を抑制できる。
【0034】次に砥石用高機能フィラー8が図1(a)
の構造からなる場合は、砥石用高機能フィラー8自体が
徐々に摩耗、粉砕されて粉体となり潤滑作用を発揮す
る。或いは、砥石用高機能フィラー8が図1(b)の構
造からなる場合は、徐々に摩耗、粉砕されてMoS2
からなる被覆層9が粉体となって潤滑作用を発揮し、更
に摩耗が進むと砥石用高機能フィラー8自体も摩耗によ
って粉体となって潤滑作用を発揮する。そのため研削時
の摩擦熱を効果的に抑制できる。そして砥石用高機能フ
ィラー8が脱落してできた砥粒層2の表面に略半球状の
凹部が形成されてチップポケット8Aとして機能し(図
2参照)、切り粉やクーラント等を内部に保持して切れ
味を確保して切り粉等を効率的に排出できる。また被覆
層9がWC等の硬質耐摩耗性をもった材料からなる場合
は、炭質質化した樹脂からなる砥石用高機能フィラー8
の潤滑作用とWCの耐摩耗性が相俟って電鋳薄刃砥石は
剛性があって潤滑性、耐摩耗性に優れ非常にバランスの
優れた理想の薄刃砥石の特性を示す。
【0035】上述のように本実施の形態によれば、砥粒
層2中に砥石用高機能フィラー8を配設することで電鋳
薄刃砥石1の剛性を向上できる上に耐摩耗性向上と潤滑
性効果により切断抵抗や傑作抵抗を小さくして切れ味を
向上できる。更に切断・切削時に砥石用高機能フィラー
8が摩耗することで潤滑作用を発揮させて摩擦熱を抑制
できる。更に砥石用高機能フィラー8が球状であるため
に研削時に応力緩和して摩擦熱を抑え脱落後にはチップ
ポケット8Aを形成できる。しかも電鋳薄刃砥石1の製
造に当たって、砥石用高機能フィラー8の密度が超砥粒
6の密度と同程度であるために分散めっき法等の通常の
めっき条件で製造でき、砥石用高機能フィラー8が球状
であるためにめっき時の分散性がよく非導電性であるた
めに金属めっき相4で緻密で堅固に固着できる。また炭
素質化の作製条件を適宜設定することで砥石用高機能フ
ィラー8の密度は自由に調整可能となるので、これによ
って砥粒層2内における砥石用高機能フィラー8の割合
も自在に調節できる。
【0036】尚、上述の実施の形態では、電鋳薄刃砥石
1の砥石用高機能フィラー8を添加した構成を説明した
が、本発明はこのような構成に限定されることなく電着
砥石に砥石用高機能フィラー8を添加してもよい。ま
た、図3及び図4に示す電鋳薄刃砥石の製造方法は電解
めっき法によるものを説明したが、無電解めっき法によ
って製造してもよく、この場合には陽極26は設けなく
てもよい。或いは、金属粉末と超砥粒6とをバインダー
と共に混合して型込め焼結してなる焼結タイプのメタル
ボンド砥石に砥石用高機能フィラー8を添加混合した状
態で焼結するようにしても良い。ほぼ同一密度とした超
砥粒6と砥石用高機能フィラー8によって原料粉末等の
混合時の分散性が良くなる。また砥石用高機能フィラー
8はレジンボンド砥石やビトリファイド砥石に分散配置
させてもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、強
塩基性陰イオン交換樹脂粒子またはキレート樹脂粒子に
対して所望のイオンをイオン交換吸着させ、次いで焼成
し炭素質化を図ることによって、超砥粒とほぼ同じ大き
さで同程度の密度を備えた砥石用高機能フィラーが得ら
れる。この砥石用高機能フィラーは超砥粒とほぼ同じ大
きさで同程度の密度に設定されているから、めっき型砥
石の場合、分散めっき法等の通常のめっき法によって砥
石を製造できて超砥粒と共に金属結合相中に均一に分散
配置させることを容易に行える。また焼結型等の砥石の
場合でも超砥粒と共に均一に混合して成形して焼結でき
る。しかも炭素質化された砥石用高機能フィラーは剛性
と潤滑性を有するために砥石の剛性を向上させると共に
研削抵抗を抑制できて切れ味を向上でき、砥石用高機能
フィラーが砥粒層の表面に露出して研削で摩耗すること
で潤滑作用を発揮して研削抵抗を低減して研削熱を抑制
でき、脱落すればチップポケットを形成できる。
【0038】また砥石用高機能フィラー8の外表面には
非導電性材料からなる被覆層9を設けることにより、た
とえ砥石用高機能フィラー8が導電性を示しても、金属
めっき相4が導電性を有する砥石用高機能フィラー8上
に析出して砥粒層2内に空洞を形成するという不具合発
生が防止できる。なお、この被覆層9は砥石用高機能フ
ィラー8が非導電性の場合にも設けても構わない。特
に、被覆層9として、マイクロビッカース硬さが100
0kg/mm2 以上の硬質耐磨耗性粒子を含有する形態
を採用した場合は、砥石用高機能フィラーに潤滑性とよ
り高い硬さ、剛性を同時に付与できる。また被覆層9と
して、マイクロビッカース硬さが300kg/mm2
下の潤滑性粒子を含有する形態を採用した場合は、砥石
用高機能フィラーの潤滑性を一段と高めることができ
る。またバインダー14は非導電性材料からなっていて
外表面を被覆形成しているから、分散めっき法等のめっ
き法によって砥石を製造する場合、空洞等のない緻密で
強固な砥粒層を形成できる。
【0039】また本発明によるメタルボンド砥石は、金
属結合相内に本発明に係る砥石用高機能フィラーが分散
配置されているから、剛性を高める上に研削時に砥石用
高機能フィラーが砥粒層表面から露出して潤滑作用を発
揮できるために研削抵抗を低減して研削熱を抑制でき、
脱落すればチップポケットを形成できる。しかも耐摩耗
性の向上と研削抵抗の低減による切れ味の向上とを両立
できる。
【0040】また本発明による砥石用高機能フィラーを
用いた砥石の製造方法は、めっき槽内に満たされた金属
イオンを含むめっき液中に電源陰極に接続された基板を
配置し、めっき液中に超砥粒と本発明に係る砥石用高機
能フィラーを分散させて基板に超砥粒と砥石用フィラー
を分散させた金属結合相を析出させて砥粒層を形成する
ようにしたので、砥石用高機能フィラーの密度を超砥粒
の密度に対して適切な比に設定することで金属結合相中
での分散割合を適切に設定できる上に超砥粒と砥石用高
機能フィラーを緻密で強固に金属結合相で固着できるこ
とになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る砥石用高機能フィラーを示す模
式的な断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態による電鋳薄刃砥石の部
分縦断面図である。
【図3】 実施の形態による電鋳薄刃砥石の製造装置を
示す説明図である。
【図4】 図3に示す電鋳薄刃砥石の製造工程を示す図
である。
【符号の説明】
M めっき液、 1 電鋳薄刃砥石、 2 砥粒層、 4 金属めっき相(金属結合相)、 6 超砥粒、 8 砥石用高機能フィラー、 9 被覆層、 12 他のフィラー部材、 14 バインダー、 16 砥石製造装置、 18 めっき槽、 20 台座、 22 マスキング、 24 平面基板、 26 陽極板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B24D 3/06 B24D 3/06 B

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強塩基性陰イオン交換樹脂粒子にWO4
    2-、MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、T
    iO4 4-、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2-より選択
    される1種または2種以上のイオンをイオン交換吸着さ
    せ、 該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼成して炭
    素質化してなることを特徴とする砥石用高機能フィラ
    ー。
  2. 【請求項2】 キレート樹脂粒子に金属イオンをイオン
    交換吸着させ、 該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼成して炭
    素質化してなることを特徴とする砥石用高機能フィラ
    ー。
  3. 【請求項3】 非導電性材料からなる被覆層を備えたこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の砥石用高機能フ
    ィラー。
  4. 【請求項4】 前記被覆層は、マイクロビッカース硬さ
    で1000kg/mm2 以上の硬質耐磨耗性粒子を含有
    することを特徴とする請求項1又は2に記載の砥石用高
    機能フィラー。
  5. 【請求項5】 前記被覆層は、マイクロビッカース硬さ
    で300kg/mm 2 以下の潤滑性粒子を含有すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の砥石用高機能フィ
    ラー。
  6. 【請求項6】 密度が2.5〜4.5g/cm3 である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の砥石用高機能
    フィラー。
  7. 【請求項7】 強塩基性陰イオン交換樹脂粒子にWO4
    2-、MoO4 2-、SiO4 4-、AlO2 -、TiO3 2-、T
    iO4 4-、ZrO4 4-、CrO4 2-、Cr27 2-より選択
    される1種または2種以上のイオンをイオン交換吸着さ
    せた後、該粒子を500℃以上の非酸化性雰囲気中で焼
    成して炭素質化させることを特徴とする砥石用高機能フ
    ィラーの製造方法。
  8. 【請求項8】 キレート樹脂粒子に金属イオンをイオン
    交換吸着させた後、該粒子を500℃以上の非酸化性雰
    囲気中で焼成して炭素質化させることを特徴とする砥石
    用高機能フィラーの製造方法。
  9. 【請求項9】 超砥粒を金属結合相中に分散配置してな
    る砥石において、前記金属結合相内に請求項1乃至6の
    いずれか1項に記載の砥石用高機能フィラーが分散配置
    されていることを特徴とする砥石用高機能フィラーを用
    いた砥石。
  10. 【請求項10】 前記金属結合相がめっき製法により形
    成されることを特徴とする請求項9に記載の砥石用高機
    能フィラーを用いた砥石。
  11. 【請求項11】 めっき槽内に満たされた金属イオンを
    含むめっき液中に電源陰極に接続された基板を配置し、
    めっき液中に超砥粒と請求項1乃至6のいずれか記載の
    砥石用高機能フィラーを入れて超砥粒と砥石用高機能フ
    ィラーを分散させた金属結合相を前記基板に析出させて
    砥粒層を形成するようにしたことを特徴とする砥石用高
    機能フィラーを用いた砥石の製造方法。
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