JP2012072441A - 導電性アルミニウムフィラー、および、それを含む導電性ペースト組成物、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜 - Google Patents

導電性アルミニウムフィラー、および、それを含む導電性ペースト組成物、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜 Download PDF

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Abstract

【課題】水、酸またはアルカリとの反応による水素ガス発生量を低減することが可能な導電性アルミニウムフィラー、および、それを含む導電性ペースト組成物、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜を提供する。
【解決手段】導電性アルミニウムフィラー1は、アルミニウム粒子11と、アルミニウム粒子11の表面を被覆するリン酸化合物膜12とを備える。リン酸化合物膜12が、アルミニウム粒子11の単位比表面積あたり、リン元素を0.05mg/m2以上、50mg/m2以下、含むことが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般的には導電性アルミニウムフィラー、および、それを含む導電性ペースト組成物、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜に関し、特定的には、水、酸またはアルカリを含む導電性ペーストを作製するために用いられる導電性アルミニウムフィラー、および、水洗工程を含む電子デバイスの電極もしくは配線を形成するために用いられる導電性ペースト、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜に関する。
アルミニウムは、軽量で良好な導電性を示すため、半導体デバイス、太陽電池、電子ディスプレイなどの多くの電子デバイスに電極または配線を形成するための材料として使用されている。従来から、アルミニウムを含む導電性膜は、PVD法(スパッタリング法、真空蒸着法など)、CVD法などの真空プロセス法で形成される。得られたアルミニウム含有導電性膜を、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法により選択的に除去することによって、アルミニウムを含む電極または配線のパターンを形成することが一般的であった。
しかしながら、これらの方法は、真空装置を用いるため、製造設備が大掛かりになることに加えて、生産性が悪く、結果としてコストが掛かりすぎる問題があった。
一方、たとえば、特開2004-247572号公報(特許文献1)、特開2004-87495号公報(特許文献2)に記載されているように、アルミニウムなどの金属微粒子を導電性フィラーとして用いた導電性金属ペーストまたは導電性ペースト組成物を用いて、基板上に配線パターンまたは電極回路を形成する方法が提案されている。この方法は真空装置のような大掛かりな装置を必要としないので、インクジェット印刷法、スクリーン印刷などの従来の印刷方法で回路を直接印刷すること、または、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法により印刷された導電性膜を選択的に除去することによって回路を形成し、焼成すること、によって、導電性を有する回路を形成することができる。
特開2004−247572号公報 特開2004−87495号公報
しかしながら、アルミニウム粒子を導電性フィラーとして用いるには多くの問題が存在している。
たとえば、アルミニウムを含有する導電性膜を、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法により選択的に除去する場合、現像液に水、酸またはアルカリとアルミニウムとが含まれている。このため、エッチング除去された導電性膜を含む現像液を廃液として排出すると、廃液中でアルミニウムと水が反応することにより、水素ガスが発生し、爆発の危険性がある。
また、近年、環境問題として、ペースト組成物に含まれる有機溶剤が問題とされている。この問題を解消するために、ペースト組成物の水性化が求められ始めている。しかし、水性の導電性ペースト組成物中でのアルミニウムは、水の存在により容易に腐食されるので導電性能が低下するだけでなく、水と反応することにより水素ガスが発生し、爆発の危険性がある。
以上のことから、アルミニウム粒子を導電性フィラーとして用いることは、実用的ではない。
そこで、本発明の目的は、水、酸またはアルカリとの反応による水素ガス発生量を低減することが可能な導電性アルミニウムフィラー、および、それを含む導電性ペースト組成物、ならびに、その導電性ペースト組成物を用いて形成された導電性膜を提供することである。
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム粒子の表面をリン酸化合物膜で被覆すると、水、酸またはアルカリとアルミニウム粒子との反応を抑制することができることを見出した。この知見に基づいて、本発明に従った導電性アルミニウムフィラー、導電性ペースト組成物、および、それを用いて形成された導電性膜は、次のような特徴を備えている。
本発明に従った導電性アルミニウムフィラーは、アルミニウム粒子と、アルミニウム粒子の表面を被覆するリン酸化合物膜とを備える。
本発明の導電性アルミニウムフィラーにおいて、リン酸化合物膜が、アルミニウム粒子の単位比表面積あたり、リン元素を0.05mg/m2以上、50mg/m2以下、含むことが好ましい。
また、本発明の導電性アルミニウムフィラーは、リン酸化合物膜の表面を被覆する有機質膜をさらに備えることが好ましい。
上記の場合、有機質膜が、1個以上の重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーを1種以上、重合させることによって得られた重合体を含むことが好ましい。
さらに、上記の場合、リン酸化合物膜が、ラジカル重合性を有するリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルを含むことが好ましい。
本発明に従った導電性ペースト組成物は、上記の導電性アルミニウムフィラーを含む。
本発明に従った導電性膜は、導電性ペースト組成物を用いて形成されたものである。
以上のように、本発明によれば、従来の導電性フィラーとして用いられるアルミニウム粒子と異なり、アルミニウム粒子の表面がリン酸化合物膜で被覆されているので、水、酸またはアルカリとアルミニウム粒子との反応を抑制することができる。このため、たとえば、水を含む導電性ペースト組成物を作製するために本発明の導電性アルミニウムフィラーを用いても、水素ガス発生を抑制し、水素ガス発生量を低減することができる。また、上記の導電性ペースト組成物を用いて導電性膜を形成し、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法によってエッチング除去された導電性膜を含む現像液を廃液として排出しても、水素ガス発生量を抑制することができる。これにより、水素ガスによる爆発の危険性を抑制することができるので、アルミニウム粒子を導電性フィラーとして使用することができる。したがって、高価な貴金属を用いないで、低コストで導電性膜、回路などを形成することが可能となる。
本発明の一つの実施形態として、導電性アルミニウムフィラーの断面構造を概念的かつ模式的に示す断面図である。 本発明のもう一つの実施形態として、導電性アルミニウムフィラーの断面構造を概念的かつ模式的に示す断面図である。 本発明の一つの実施例として、導電性アルミニウムフィラーを作製するために用いられたアルミニウム粉末の体積基準の累積粒度曲線を示す図である。 本発明の実施例において、水素ガス発生量を測定するための装置を模式的に示す図である。
図1に示すように、本発明の一つの実施形態として、概念的に示される導電性アルミニウムフィラー1は、たとえば球状のアルミニウム粒子11と、アルミニウム粒子11の表面を被覆するリン酸化合物膜12とを備える。このように構成されているので、リン酸化合物膜12が、アルミニウム粒子11の表面上に存在することにより、水、酸、アルカリとアルミニウム粒子11の表面との反応を抑制するように作用する。
リン酸化合物膜12が、アルミニウム粒子11の単位比表面積あたり、リン元素を0.05mg/m2以上、5.0mg/m2以下、含むことが好ましく、リン元素を0.1mg/m2以上、1.0mg/m2以下、含むことがより好ましい。リン元素の含有量が0.05mg/m2より少ない場合は、アルミニウム粒子11の表面を十分に覆うことができず、露出したアルミニウム粒子の表面のままと比べると、水、酸、アルカリとの反応を抑制することができるが、充分な効果を得ることはできない可能性がある。一方、リン元素の含有量が5.0mg/m2を超えると、リン酸化合物の処理コストが掛かり過ぎるだけでなく、導電性アルミニウムフィラー1自身が凝集すること、導電性アルミニウムフィラー1を含む導電性ペーストの粘度が異常になること、その導電性ペーストを用いて基材の上に導電性塗布膜を形成した際に導電性塗布膜と基材との密着性が低下すること、などの問題が生じる可能性がある。なお、リン元素の含有量は、ICP発光分析により測定された値を窒素吸着BET法により測定される比表面積で除することによって算出することができる。
本発明に使用することができるリン酸化合物は特に限定はされないが、好ましいリン酸化合物としては、リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、次亜リン酸、亜リン酸、上記これらの各種ポリリン酸類、少なくとも一つのOH基を有する上記これらの各種リン酸塩類、有機酸性リン酸エステルを挙げることができる。具体的には、たとえば、2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2‐メタクリロイロキシプロピルアッシドフォスフェート、ビス(2‐クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネートメチルアッシドフォスフェート、エチルアッシドフォスフェート、ブチルアッシドフォスフェート、イソデシルアッシドフォスフェート、フェニルホスホン酸、2‐エチルヘキシルアッシドフォスフェート、ラウリルアッシドフォスフェート、ステアリルアッシドフォスフェート、オレイルアッシドフォスフェート、ジメチルアッシドフォスフェート、ジエチルアッシドフォスフェート、ジブチルアッシドフォスフェート、ジイソデシルアッシドフォスフェート、ジ−2 − エチルヘキシルアッシドフォスフェート、ジラウリルアッシドフォスフェート、ジステアリルアッシドフォスフェート、ジオレイルアッシドフォスフェートなどが挙げられる。本発明では、上記これらのリン酸化合物のいずれか1種を単独で、もしくは、2種以上のリン酸化合物を混合して用いられる。
リン酸化合物膜12でアルミニウム粒子11の表面を被覆することは、アルミニウム粒子11と溶媒に溶解させたリン酸化合物とをミキサー内で、必要に応じて加熱雰囲気中または減圧雰囲気中などで、混練しながら、溶媒を揮発させることによって達成することができる。
このとき、溶媒としては、リン酸化合物を溶解することができるものであれば特に限定されないが、たとえば、水、アルコール系、グリコール系、エーテル系、エステル系、直鎖炭化水素系、芳香族炭化水素系の溶媒が挙げられる。これらの溶媒のいずれか1種を単独で、もしくは、2種類以上の溶媒を混合して使用することができる。
さらに、アルミニウム粒子11の表面をリン酸化合物膜12でより均一に被覆することは、リン酸化合物とアルミニウム粒子11と溶媒とを攪拌可能なタンクに投入し、これらを分散させてスラリーとした後に、必要に応じて温度を制御して攪拌しながら、アルミニウム粒子11の表面とリン酸化合物とを反応させることによって達成することができる。ここで使用することができる溶媒は、実質的にリン酸化合物を溶解することができ、アルミニウム粒子11が均一に分散されるものが望ましい。
図2に示すように、本発明のもう一つの実施形態として、概念的に示される導電性アルミニウムフィラー2は、たとえば球状のアルミニウム粒子11と、アルミニウム粒子11の表面を被覆するリン酸化合物膜12と、リン酸化合物膜12の表面を被覆する有機質膜13とを備える。リン酸化合物膜12は、腐食防止剤としてアルミニウム粒子11の表面上に存在しているが、さらに、リン酸化合物膜12の表面を有機質膜13が被覆することにより、水、酸、アルカリとアルミニウム粒子11との直接の接触を防ぐことができる。この場合、水、酸、アルカリは有機質膜13内を浸透する速度が非常に遅いので、有機質膜13は水、酸、アルカリとアルミニウム粒子11との反応をより効果的に抑制することができるように作用する。
ここで使用することができる有機質膜13の材質は、導電性アルミニウムフィラー2を含む導電性ペースト組成物の焼成工程において酸化することにより除去することができるものであれば特に限定されるものではないが、有機質膜13の好ましい材質としては、たとえば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂などをあげることができる。有機質膜13の被覆量は、リン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11の単位比表面積あたり、0.1mg/m2以上、70mg/m2以下が好ましく、0.5mg/m2以上、50mg/m2以下がより好ましい。有機質膜13の被覆量が0.1mg/m2より少ない場合は、アルミニウム粒子11の表面を十分に覆うことができず、水、酸、アルカリとアルミニウム粒子11との反応を抑制する効果が低下する可能性がある。有機質膜13の被覆量が70mg/m2を超えると、導電性アルミニウムフィラー2が嵩高くなるため、導電性アルミニウムフィラー2を含む導電性ペースト組成物の粘度が増加すること、その導電性ペースト組成物の焼成により得られた導電性膜の表面粗度が増加すること、焼成後に導電性アルミニウムフィラー2同士のつながりが不連続になりやすくなるので導電性膜の導電性が低下すること、などの問題が生じる可能性がある。なお、有機質膜13の被覆量は、導電性アルミニウムフィラー2を強酸で溶解することにより残存した有機物の重量を測定すること、空気雰囲気中でのTG‐DTA(示差熱-熱重量同時分析)により有機質膜13の熱分解に伴う重量減少量から見積ること、などによって算出することができる。なお、リン酸化合物膜12で被覆される前のアルミニウム粒子11の比表面積とリン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11の比表面積とは実質的に同一の値を示すことから、リン酸化合物膜12で被覆される前のアルミニウム粒子11の比表面積の値をそのまま用いることにより、リン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11の単位比表面積あたりの有機質膜13の被覆量を算出することができる。
アルミニウム粒子11の表面を被覆するリン酸化合物膜12の表面をさらに有機質膜13で被覆することは、溶媒に溶解させた有機ポリマーと、リン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11(図1に示す導電性アルミニウムフィラー1)とを、ミキサー内で混練しながら、有機溶剤を揮発させることによって達成することができる(この方法は、後述の実施例9に相当する)。有機ポリマーは、溶剤に溶解することができるものであれば特に限定されないが、好ましい有機ポリマーとしては、たとえば、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、セルロース系、ポリアルコール系の有機ポリマーが挙げられる。また、溶媒としては、水、アルコール系、グリコール系、エーテル系、エステル系、直鎖炭化水素系、芳香族炭化水素系の溶媒が挙げられる。
さらに、リン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11の表面を有機質膜13でより均一に被覆することは、リン酸化合物膜12で被覆されたアルミニウム粒子11と重合溶媒とを攪拌可能なタンクに投入し、分散させてスラリーとした後、必要に応じて温度または重合雰囲気を制御した条件下で、このスラリーに、1個以上の重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーを1種以上、重合成分として添加し、さらに、ラジカル重合開始剤を添加することによって達成することができる(この方法は、後述の実施例10に相当する)。これにより、有機質膜13が、1個以上の重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーを1種以上、重合させることによって得られた重合体を含むことになる。
さらに、上記のように有機質膜13を形成するために1個以上の重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーを1種以上、重合成分として用いた場合、リン酸化合物膜12を形成するためのリン酸化合物としてラジカル重合性を有するリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルを1種以上用いて、ラジカル重合開始剤を添加することによって、重合成分が有する重合性二重結合と、リン酸エステル成分が有するラジカル重合性二重結合とにより、重合成分とリン酸エステル成分との間の共有結合による共重合体が形成されるため、アルミニウム粒子11の表面に、より均一で強固なリン酸化合物膜12と有機質膜13とが形成される。これにより、導電性アルミニウムフィラー2と水、酸、アルカリとの接触時において水素ガス発生をより一層抑えることができる。
好ましい上記の重合成分としては、たとえば、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ‐ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ‐トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ‐ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ‐ポリエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート、2‐アクリロイロキシエチルコハク酸、2‐アクリロイロキシエチルフタル酸、2‐アクリロイロキシエチル‐2‐ヒドロキシエチルフタル酸、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,9‐ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール‐トリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2‐エチルヘキシル‐ジグリコールアクリレート、2‐ヒドロキシブチルアクリレート、2‐アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n‐ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n‐ステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフリフラルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、2‐ヒドロキシブチルメタクリレート、2‐メタクリロイロキシエチルコハク酸、2‐メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2‐メタクリロイロキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4‐ブタンジオールジメタクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9‐ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ‐3‐アクリロイロキシプロピルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、n‐ブトキシエチルメタクリレート、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートなどを挙げることができる。また、その他の好ましい重合成分として、たとえば、スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルカルバゾール、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジビニルベンゼンモノオキサイドなどが挙げられる。本発明では、上記これらの重合成分のいずれか1種を単独で、もしくは、2種以上の重合成分を混合して用いられる。なお、上記の重合成分として、重合性二重結合を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを使用した場合には、有機質層13として、3次元架橋した樹脂を含む樹脂層が形成されるので、導電性アルミニウムフィラー2と水、酸、アルカリとの接触時において水素ガス発生を効果的に抑えることができる。
また、好ましい上記の重合溶媒としては、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、イソプロピルアルコール、n‐ブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノールなどのアルコール類、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル‐n‐ブチルケトン、メチル‐n‐プロピルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル類、テトラハイドロフラン、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテルなどのエーテル類を挙げることができる。
さらに、上記のラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル発生剤として知られているラジカル開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのパーオキサイド類、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)のようなアゾ化合物などが挙げられる。
また、上記のラジカル重合性を有するリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルとしては、たとえば、2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル‐2‐アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2‐メタクリロイロキシプロピルアッシドフォスフェート、ビス(2‐クロロエチル) ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネートなどが挙げられる。本発明では、上記これらのリン酸化合物のいずれか1種を単独で、もしくは、2種以上のリン酸化合物を混合して用いられる。
本発明に用いられるアルミニウム粒子11の形状は特に限定されないが、好ましい形状としては、たとえば、球状、非球状、鱗片状が挙げられる。
上記アルミニウム粒子11としては、公知の方法によって製造されるものを使用することができる。これらのアルミニウム粒子11はどのような方法で作製されたものであってもよい。たとえば、球状または非球状のアルミニウム粒子11は、アトマイズ法によって製造することができる。鱗片状のアルミニウム粒子11は、プラスチックフィルムの表面に蒸着により形成されたアルミニウム薄膜をプラスチックフィルムの表面から剥離した後に破砕することにより製造することができる。また、アルミニウム粒子11を、従来から公知の溶媒の存在下でボールミルを用いて鱗片化することによって、鱗片状のアルミニウム粒子11を製造してもよい。
一般的に前述のボールミルを用いて製造された鱗片状のアルミニウム粒子11の表面には、たとえば、ボールミルによる鱗片化の際に使用した高級脂肪酸などの潤滑助剤が付着している。本発明においては、表面に潤滑助剤が付着したアルミニウム粒子11を使用してもよく、表面から潤滑助剤が除去されたアルミニウム粒子11を使用してもよい。いずれのアルミニウム粒子11を用いても、上述した作用効果を達成することができる。ボールミルを用いて鱗片化する場合の潤滑助剤としては、たとえば、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸の他、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール、エステル化合物などが挙げられる。これらの潤滑助剤は、リン酸化合物膜12でアルミニウム粒子11の表面を被覆する処理を行うまで、薄片状のアルミニウム粒子11の表面の不必要な酸化を抑制し、形成されるリン酸化合物膜12の導電性などを改善する効果を有する。
また、潤滑助剤にリン酸化合物を用いてもよい。この場合、アルミニウム粒子11を鱗片化しながら、リン酸化合物膜12でアルミニウム粒子11の表面を被覆する処理を行うことができるので、工程の簡略化を図ることも可能である。これにより、製造コストを抑えることもできる。
アルミニウム粒子11の粒径は、D50が1.0μm以上、100μm以下の範囲内のものが好ましく、さらにD50が1.0μm以上、50μm以下の範囲内のものがより好ましい。
ここで、アルミニウム粉末中に粒径Dμm以下のアルミニウム粒子11が含まれる体積基準の累積割合としてのQ[vol%]を、横軸を粒径D[μm]、縦軸を累積体積Q[vol%]としたグラフにプロットした累積粒度曲線において、Q[vol%]に対応する粒径D[μm]をDQ[μm]と表す。すなわち、「D50」とは、累積粒度曲線において、体積基準の累積割合として50[vol%]に対応する粒径[μm]をいう。
特にアルミニウム粒子11の粒径が小さい場合、アルミニウム粒子11自体の製造コストが増大するだけでなく、アルミニウム粒子11の表面エネルギーの増大によって凝集が生じること、焼成時にアルミニウム粒子11の表面が酸化されやすくなること、によって、導電性アルミニウムフィラー1、2を含む導電性ペーストを用いて形成された導電性膜の導電性の喪失または低下が生じる可能性がある。また、リン酸化合物膜12でアルミニウム粒子11を被覆する処理を行う場合には、アルミニウム粒子11の比表面積が非常に大きいために、リン酸化合物の使用量が増えるだけでなく、その処理によって凝集を引き起こしやすくなる可能性がある。
一方、アルミニウム粒子11の粒径が大きすぎると、アルミニウム粒子11自身の嵩が高くなるため、所定量の導電性アルミニウムフィラー1、2を含む導電性ペースト組成物の粘度が増加すること、その導電性ペーストを用いて形成された導電性膜の表面粗度が増加すること、導電性膜中での導電性アルミニウムフィラー1、2同士のつながりが不連続になりやすいので導電性が低下すること、などの問題が生じる可能性がある。また、上記の導電性膜で回路を形成した際に、隣り合う配線を形成する導電性アルミニウムフィラー1、2が接触することにより、短絡を起こす恐れがある。
以上の特徴を有する本発明の導電性アルミニウムフィラー1、2を含ませて導電性ペースト組成物が作製される。この場合、有機質ビヒクル、ガラスフリット、金属アルコキシドなどを導電性ペースト組成物中に含ませて用いられる。
<有機質ビヒクル>
本発明の導電性ペースト組成物中に含有される有機質ビヒクルとしては、各種バインダー樹脂を溶媒で溶解したものが用いられる。
本発明の導電性ペースト組成物に含有される有機質ビヒクルを構成するバインダー樹脂の成分は特に限定されないが、バインダー樹脂としては、たとえば、エチルセルロース系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系などの樹脂を用いることができる。バインダー樹脂は、本発明の導電性ペースト組成物を基板に塗布後加熱することにより、焼成温度で完全に燃焼して分解するものが好ましい。また、バインダー樹脂を溶解させるために用いられる溶媒は特に限定されないが、溶媒としては、たとえば、水、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエーテル系、ターピネオール系などの溶媒を使用することができる。本発明の導電性ペースト組成物中の有機質ビヒクルの含有量は、40質量%以上、95質量%以下であることが好ましい。有機質ビヒクルの含有量が上記の範囲内であれば、導電性アルミニウムフィラー1、2を含む導電性ペースト組成物は、各種基板への塗布性と印刷性の点で優れる。
なお、有機質ビヒクル中のバインダー樹脂の含有量は特に限定されないが、通常、有機質ビヒクル中のバインダー樹脂の含有量は0.5質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。
<ガラスフリット>
さらに、本発明の導電性ペースト組成物はガラスフリットを含んでいてもよい。ガラスフリットの含有量は、0.5質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。ガラスフリットは、導電性ペースト組成物の焼成後において得られる導電性膜の基板との密着性を向上させる。しかし、ガラスフリットの含有量が5質量%を超えると、ガラスの偏析が生じ、形成される導電性膜の導電性を低下させる恐れがある。ガラスフリットの平均粒子径は、本発明の効果に悪影響を与えない限り特に限定されないが、通常1〜4μm程度が好ましい。
本発明の導電性ペースト組成物に含められるガラスフリットとしては、特に組成と各成分の含有量が限定されないが、通常、その軟化点が焼成温度以下のものを用いる。通常、ガラスフリットとして、SiO2‐Bi23‐PbO系の他に、B23‐SiO2‐Bi23系、B23‐SiO2‐ZnO系、B23‐SiO2‐PbO系などを使用することができる。
<金属アルコキシド>
本発明の導電性ペーストは金属アルコキシドを含んでいてもよい。金属アルコキシドの具体的な例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランなどのシリコンアルコキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、テトラブトキシチタンなどのチタニウムアルコキシドと、それらの多量体が挙げられる。ただし、金属アルコキシドは上記のものに限定されるわけではなく、Mg、Zn,Mn,Zr,Ceなどのあらゆる金属のアルコキシドが使用され得る。金属アルコキシドは、ガラスフリットと併用してもよく、単独で使用してもよい。また、複数の金属アルコキシドを併用してもよい。
<その他>
また、本発明の導電性ペースト組成物は、本発明の効果を妨げないものであれば、種々のものを含有することができる。たとえば、適宜、公知の樹脂、粘度調整剤、表面調整剤、沈降防止剤、消泡剤などの他の構成成分を含ませることにより、導電性ペースト組成物として調製されることができる。
<導電性ペースト組成物の製造方法>
なお、本発明の導電性ペースト組成物は、たとえば、公知の攪拌機を用いて各成分を攪拌混合する方法、ロールミルなどの混練機により各成分を混練する方法などにより製造することができるが、導電性ペースト組成物の製造方法はこれらの製造法に限定されるものではない。
<導電性膜の形成方法>
本発明のペースト組成物が塗布される基板の材質、形状などは特に制限されないが、基板の材質は次工程の熱処理に耐えられるものが好ましく、基板の形状は平面形状でもよく、段差または凹凸のある非平面形状でもよく、その形態は特に限定されるものではない。基板の材質の具体例としては、セラミックス質、ガラス質などを挙げることができ、セラミックス質としては、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物、ガラス質としては石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラスなどを使用することができる。
また、本発明のペースト組成物の塗布方法は特に限定されず、塗布方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スプレー塗装法、スクリーン印刷法、インクジェット法などを採用することができる。また、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法を併用することにより、回路パターンを形成することも可能である。塗布回数は、1回でもよく、または複数回でもよく、本発明のペースト組成物を重ね塗りすることもできる。好適な導電性膜の塗布膜の厚みは、塗布方法、固形分濃度に依存して適宜変動するが、0.1〜100μmが好ましく、0.3〜20μmであるのがさらに好ましい。塗布膜が厚すぎると膜の平坦性が得られ難く、薄すぎると塗布膜中において導電性アルミニウムフィラー1、2が不連続になるので導電性膜の導電性が低下する可能性がある。
上記の塗布膜には、必要に応じて乾燥処理と脱脂処理を施してもよい。乾燥と脱脂の処理条件は特に限定されず、通常、乾燥温度は20℃〜150℃、脱脂温度は200℃〜450℃である。また、乾燥処理時と脱脂処理時の雰囲気は一般に大気であるが、限定されるものではない。
さらに、上記の塗布膜を焼成することにより、導電性膜を形成することができる。焼成温度は、400℃〜650℃とするのが好ましく、450℃〜625℃とするのがさらに好ましい。また、焼成する時の雰囲気は特に限定されず、空気中、非酸化雰囲気中、還元雰囲気中または真空中のいずれの焼成雰囲気においても、良好な導電性と密着性を示す導電性膜を得ることができる。より好ましい焼成雰囲気は、非酸化性雰囲気、還元雰囲気または真空である。上記の非酸化性雰囲気は、酸素を含まない、たとえば、アルゴン、ヘリウム、窒素などのいずれかのガスを含む雰囲気、または、上記のガスを複数種含む混合ガス雰囲気でもよい。また、上記のガスに、還元性ガス、たとえば、水素ガスなどを混合して還元雰囲気としてもよい。
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アルミニウム粒子として鱗片状のアルミニウム粒子11(D50:14.0μm、比表面積7.2m2/g)を含むペースト(ペースト化剤:ミネラルスピリット)を準備した。アルミニウム粒子11のレーザー回折法による体積基準の累積粒度曲線は、図3に示すとおりである。
この体積基準の累積粒度曲線の測定は、レーザー回折法にて実施した。使用した装置は日機装株式会社製(MT3300EX II)である。本測定においては、エタノールをキャリアー溶媒とし、装置付属の超音波照射装置によって、投入したアルミニウム粒子11の試料を良く分散した後、行った。上記のD50の値は、測定された体積基準の累積粒度曲線から算出された数値である。
上記のペーストを、吸引ろ過器上でイソプロピルアルコールによってよく洗浄した後、ろ過した。
ろ過後のペーストの不揮発成分(アルミニウム粒子11)は70質量%(残部はイソプロピルアルコール)であった。
次に、3リットルのセパラブルフラスコに、ろ過後の500gのペースト(350gのアルミニウム粒子11)と、720gのイソプロピルアルコールとを投入した後、攪拌することにより、スラリーとした。このスラリーを75℃に昇温した。この温度を維持した状態で攪拌を継続しながら、0.52gの85%リン酸水溶液を上記のスラリーに添加した。
そして、上記の状態を10時間保持した後、冷却することにより、固液分離を行った。分離された固形分を、吸引ろ過器上で、イソプロピルアルコールを用いて洗浄し、さらに湿潤溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルにてさらに洗浄置換することにより、実施例1の試料として、リン酸化合物膜12でアルミニウム粒子11の表面が被覆された導電性アルミニウムフィラー1(図1)を含むペーストを作製した。
(実施例2)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を0.94gとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の試料を作製した。
(実施例3)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を2.60gとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の試料を作製した。
(実施例4)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を6.51gとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の試料を作製した。
(実施例5)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を26.0gとした以外は、実施例1と同様にして実施例5の試料を作製した。
(実施例6)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を47.0gとした以外は、実施例1と同様にして実施例6の試料を作製した。
(実施例7)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を52.5gとした以外は、実施例1と同様にして実施例7の試料を作製した。
(実施例8)
実施例1において85%リン酸水溶液の添加量を65.8gとした以外は、実施例1と同様にして実施例8の試料を作製した。
(実施例9)
アルミニウム粒子として実施例1で使用したものと同一の鱗片状のアルミニウム粒子11を含むペーストを準備した。このペーストを、吸引ろ過器上でプロピレングリコールモノメチルエーテルにて洗浄置換し、ろ過することによって、プロピレングリコールモノメチルエーテルで湿潤されたアルミニウム粒子11を含むペーストを得た。
ろ過後のペーストの不揮発成分(アルミニウム粒子11)は68質量%(残部はプロピレングリコールモノメチルエーテル)であった。
次に、ろ過後の735.3gのペースト(500gのアルミニウム粒子)を混練機に投入した。さらに、3.35gの85%リン酸と25gのプロピレングリコールモノメチルエーテルとを予め混合しておいた溶液の全量を混練しながら、上記のペーストにゆっくり加え、15分間常温で混練した。
そして、105gのニトロセルロースを200gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させた溶液を全量、上記の混練物に加え、さらに15分間、常温で混練した。15分後、混練機内の雰囲気を75℃に昇温し、減圧雰囲気下で40分間混練することにより、リン酸化合物膜12と有機質膜13でアルミニウム粒子11の表面が被覆された導電性アルミニウムフィラー2(図2)を含むペーストを作製した。
(実施例10)
アルミニウム粒子として実施例1で使用したものと同一の鱗片状のアルミニウム粒子11を含むペーストを準備した。このペーストを、吸引ろ過器上でプロピレングリコールモノメチルエーテルにて洗浄置換し、ろ過することによって、プロピレングリコールモノメチルエーテルで湿潤されたアルミニウム粒子11を含むペーストを得た。
ろ過後のペーストの不揮発成分(アルミニウム粒子11)は68質量%(残部はプロピレングリコールモノメチルエーテル)であった。
次に、3リットルのセパラブルフラスコに、ろ過後の514.7gのペースト(350gのアルミニウム粒子11)と、830gのプロピレングリコールモノメチルエーテルとを投入した後、攪拌することにより、スラリーとした。このスラリーを75℃に昇温した。この温度を維持した状態で攪拌を継続しながら、13.0gのジ‐2‐メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート(共栄社化学株式会社製ライトエステルP‐2M)を上記のスラリーに添加した。
そして、上記のリン酸化合物を添加した後、攪拌を10時間継続した。その後、吸引ろ過器を用いて固液分離を行った。分離された固形分を、吸引ろ過器上で、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いて洗浄することにより、リン酸化合物膜12で表面が被覆されたアルミニウム粒子11を含むペーストを作製した(リン酸化合物膜形成工程)。上記のペーストの不揮発成分は65質量%であった。
さらに、461.5gの上記のペースト(300gの固形分)を、吸引ろ過器上でミネラルスピリットにてよく洗浄した後、ろ過を行なった。
ろ過後のペースト(300gの不揮発成分)を3リットルのセパラブルフラスコに投入し、1400gのミネラルスピリットを添加した後、攪拌することにより、スラリーとした。攪拌を継続しながら、系内に窒素ガスをパージして窒素雰囲気下とした後、80℃まで昇温した。以下の操作は、本条件を維持したまま行なった。
そして、トリメチロールプロパントリメタクリレートとジビニルベンゼンの混合物を70g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.67gを上記のスラリーに添加した。上記の混合物とAIBNとを添加した後、10時間、ラジカル重合反応させた。その後、冷却することにより、反応を終了させた。さらに、反応終了後のスラリーをろ過し、少量のミネラルスピリットで洗浄した後、さらに、湿潤溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルにてさらに洗浄置換することにより、化学結合されたリン酸化合物膜12と有機質膜13とでアルミニウム粒子11の表面が被覆された導電性アルミニウムフィラー2(図2)を含むペーストを作製した(有機質膜形成工程)。
(従来例)
アルミニウム粒子として実施例1で使用したものと同一の鱗片状のアルミニウム粒子11を含むペーストを準備した。このペーストを、吸引ろ過器上でプロピレングリコールモノメチルエーテルにて洗浄置換し、ろ過することによって、従来例の試料として、プロピレングリコールモノメチルエーテルで湿潤されたアルミニウム粒子11を含むペーストを作製した。
(比較例)
実施例10において、リン酸化合物膜形成工程を行わずに、有機質膜形成工程のみを行うことにより、比較例の試料として、有機質膜13のみでアルミニウム粒子11の表面が被覆された導電性アルミニウムフィラーを作製した。
なお、実施例1〜10、従来例および比較例の各試料において、表1に示すリン元素含有量、有機質膜被覆量、アルミニウム(Al)1gあたりの水素ガス発生量、導電性膜の外観、導電性膜の抵抗率について、次に説明するようにして測定または評価を行った。
〈比表面積〉
アルミニウム粒子11の比表面積の測定を行うに先立ち、アルミニウム粒子11を、予めイソプロピルアルコールにてよく洗浄し、ろ過した後、130℃の温度に保たれた熱風乾燥機中で2時間乾燥することによって、完全なパウダー状態とした。なお、測定装置は、シスメックス株式会社製の比表面積測定装置(QUADRASORB SI)を使用した。
まず、上記のようにして準備したパウダー状のアルミニウム粒子11を、比表面積測定用のガラスセル内に充填し、装置付属の前処理装置を用いて、窒素を流通させながら、150℃の温度で3時間加熱することにより、アルミニウム粒子11に脱気処理を施した。この前処理終了後に窒素吸着BET法にてアルミニウム粒子11の比表面積を測定した。
〈リン元素含有量〉
リン元素含有量の測定を行うに先立ち、導電性アルミニウムフィラー1、2を、予めイソプロピルアルコールにてよく洗浄し、ろ過した後、130℃の温度に保たれた熱風乾燥機中で2時間乾燥することによって、完全なパウダー状態とした。なお、使用した装置はThermo Electron Corporation社製のiCAP6500である。
パウダー状となった導電性アルミニウムフィラー1、2を0.500g、プラスティック容器に採取し、精秤して、6Nの濃度の塩酸水溶液を15ml、13Nの濃度の硝酸水溶液を2ml、加え、導電性アルミニウムフィラー1、2のアルミニウム粒子11分を完全に溶解させた。この溶液をろ過して、ろ液を50mlのメスフラスコ内に注ぎ込むことにより、採取した。装置内壁に付着している残渣付着分も、純水によって流し込むことにより採取した。
上記の採取されたろ液を全容量が50mlとなるように純水で希釈して、ICP発光分析法にて測定波長178nmでリン濃度を測定し、その測定されたリン濃度を酸可溶性リン量に換算した。
一方、上記の採取された残渣を、ろ紙ごとガラスビーカーに入れ、6Nの濃度の硝酸を約10ml、60質量%の過塩素酸を約5ml、加え、200℃の温度に加熱して、固形分が完全に溶解し、液が透明になるまで加熱を継続した。その際、硝酸が蒸発していくため、逐次硝酸を添加した。その後、加熱を継続すると液分がなくなり、白煙を生じた。この白煙が出なくなった時点で冷却し、6Nの濃度の塩酸水溶液を10ml添加し、加熱することにより内容物を完全に溶解させた。この溶液を50mlのメスフラスコ内にて全容量が50mlとなるように純水で希釈して、上述と同様にしてICP発光分析法にてリン濃度を測定し、残渣中のリン量を算出した。このようにして測定された、酸可溶性リン量と残渣中のリン量との合計値を、上記で測定されたアルミニウム粒子11の比表面積で除した値を、リン元素含有量[mg/m2]とした。
〈有機質膜被覆量〉
有機質膜被覆量はTG‐DTA(示差熱-熱重量同時分析)により算出した。なお、使用した装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差熱重量同時測定装置(EXSTAR6000)である。
まず、測定を行うに先立ち、導電性アルミニウムフィラー1、2を、予めイソプロピルアルコールにてよく洗浄し、ろ過した後、130℃の温度に保たれた熱風乾燥機中で2時間乾燥することにより、完全なパウダー状態とした。パウダー状態となった導電性アルミニウムフィラー1、2をアルミニウム製の測定容器内に適量充填した。また、比較物質にはアルミナ粉末を使用した。測定条件は、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分、最終到達温度600℃とした。有機質膜13の酸化分解による重量減少量から有機質膜13の含有率を算出した。この算出された値から、アルミニウム粒子11の表面を被覆している有機質膜13の重量を見積もった。この重量を、上記で測定されたアルミニウム粒子11の比表面積で除した値を、有機質膜被覆量[mg/m2]とした。
〈水素ガス発生量〉
具体的には下記の手順に従って測定を実施した。
(a)導電性アルミニウムフィラー1、2の乾燥
導電性アルミニウムフィラー1、2を予めイソプロピルアルコールにてよく洗浄し、ろ過した後、130℃に保たれた熱風乾燥機中で2時間乾燥することによって、完全なパウダー状態とした。
(b)アルカリ水溶液の作製
モノエタノールアミンをイオン交換水にて0.3質量%の水溶液となるように希釈した。このようにして調製した0.3質量%のモノエタノールアミン水溶液の温度25℃におけるpHは10.6であった。
(c)水素発生試験
上記(a)で得られた乾燥済みの導電性アルミニウムフィラー1、2を0.4g、分散用有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを5cc、図4に示す試験管10内で混合した。次に、この混合物に、40℃の温度に加熱した上記(b)のアルカリ水溶液を45cc、加えて試験溶液20を作製し、図4に示すフッ素樹脂製のチューブ40が取り付けられたシリコン栓30を素早く試験管10の開口部に接続した。さらに、試験管10を40℃の湯浴60に浸した。一方、チューブ40の他方の開口部を25℃の温度に保たれた水70中に導入し、その開口部から出る気体をガラス製のメスシリンダー50で捕集した。
このようにして図4の状態で、チューブ40の他方の開口部から出てくる水素ガスの捕集雰囲気を25℃の温度に保ち、24時間後に捕集された水素ガスの総量をメスシリンダー50の目盛りで読み取った。
ここで、各々の導電性アルミニウムフィラー1、2においては、リン酸化合物膜と有機質膜の量が異なっており、上記の24時間後の水素ガス発生量の実測値だけでは、本発明の効果を比較することができない。したがって、上記の〈リン元素含有量〉と〈有機質膜被覆量〉に記載の方法により決定される、リン酸化合物量または/および有機質膜被覆量の値を、評価に用いた0.4gの導電性アルミニウムフィラー1、2の量から減じることにより、正味のアルミニウム量を算出した。そして、上記の方法にて実測された24時間後の水素ガス発生量を、正味のアルミニウム量で除した値を、アルミニウムの単位質量(1g)あたりのガス発生量[mL/g]とした。
〈導電性膜の抵抗率〉
具体的には下記の手順に従って測定を実施した。
(1)導電性ペースト組成物の作製
エチルセルロースの含有量が6質量%となるように、酢酸nブチルにエチルセルロースを溶解させた有機質ビヒクルを作製した。次に、実施例1〜10、従来例および比較例で作製された、固形分換算で17.0gの導電性アルミニウムフィラー1、2に、上記の有機質ビヒクルを50.0g、加えて、周知の混合機にて混合した。さらに、この混合物に酢酸nブチルを加えて、所定の粘度に調整して、導電性ペースト組成物を作製した。
(2)導電性膜の形成
予め作製した導電性ペースト組成物を、ドクターブレード法により市販の厚みが2.0mmのソーダライムガラス基板上へ塗布することにより、塗膜を形成した。なお、導電性塗膜の厚みは、焼成後の導電性膜の厚みが2〜10μmとなるように制御した。
次に、この塗膜を大気中にて50℃の温度で10分間乾燥した後、さらに電気炉内で大気中にて350℃の温度で120分間加熱することにより、塗膜に脱脂処理を施した。このように処理された塗膜を焼成炉内でアルゴンガス雰囲気中にて600℃の温度で60分間焼成することにより、導電性膜を形成した。
(3)導電性膜の厚み測定
上記の方法により形成された導電性膜をガラス基板ごと長方形に2分割して二つの試料を作製し、一方の試料を用いて下記のようにした導電性膜の厚みを測定した。
まず、導電性膜にカッターナイフで任意の5箇所に傷をつけ、基材であるガラスを露出させた。次に、株式会社東京精密製の表面粗度計(サーフコム1400D)を用いて、5箇所の傷の深さを測定し、その平均値を導電性膜の厚みとした。
(4)導電性膜の抵抗率測定
三菱アナリテック社製の4探針式表面抵抗測定器(ロレスタGP)によって任意の5点を測定し、その平均値を導電性膜の抵抗率とした。具体的には、上記の二つの試料のうち、導電性膜の厚みを測定しなかった無傷の他方の試料を用いて、導電性膜の寸法、上記(3)で算出された導電性膜の平均厚み、測定点の座標を上記の4探針式表面抵抗測定器にデータ入力し、自動的に計算されることによって得られる値を導電性膜の抵抗率とした。
〈導電性膜の外観〉
焼成後の導電性膜の状態を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
良好;剥離なし、表面が平滑、析出物なし。
不良;剥離あり、表面粗度大(ざらざらな状態)、析出物(異物)あり、その他外観上の異常。
Figure 2012072441
表1に示す従来例と実施例1〜8の結果から、アルミニウム粒子11の表面がリン酸化合物膜12で被覆されることにより、水、アルカリと導電性アルミニウムフィラー1とが接触した際に発生する水素ガス発生量を低減することができることがわかる。
実施例9〜10と比較例の結果から、有機質膜13のみでアルミニウム粒子11の表面が被覆されている比較例では、水、アルカリと導電性アルミニウムフィラーが接触した際に発生する水素ガス発生量を低減することができないことがわかる。
リン酸化合物膜12のみでアルミニウム粒子11の表面が被覆されている実施例1〜8と、リン酸化合物膜12および有機質膜13の両方でアルミニウム粒子11の表面が被覆されている実施例9〜10の結果から、リン酸化合物膜12と有機質膜13でアルミニウム粒子11を被覆することにより、水、アルカリと導電性アルミニウムフィラー2が接触した際に発生する水素ガス発生量をさらに低減することができることがわかる。
実施例9と実施例10の結果から、アルミニウム粒子11がリン酸化合物膜12と有機質膜13で被覆されており、かつ、リン酸化合物膜12と有機質膜13が化学結合されている実施例10では、水、アルカリと導電性アルミニウムフィラー2が接触した際に発生する水素ガス発生量をより効果的に低減することができることがわかる。
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
水を含む導電性ペースト組成物を作製するために本発明の導電性アルミニウムフィラーを用いても、水素ガス発生を抑制し、水素ガス発生量を低減することができる。また、上記の導電性ペースト組成物を用いて導電性膜を形成し、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング法によってエッチング除去された導電性膜を含む現像液を廃液として排出しても、水素ガス発生量を抑制することができる。これにより、水素ガスによる爆発の危険性を抑制することができるので、アルミニウム粒子を導電性フィラーとして使用することができる。したがって、高価な貴金属を用いないで、低コストで導電性膜、回路などを形成するためには、本発明の導電性アルミニウムフィラーが有用である。
1,2:導電性アルミニウムフィラー、11:アルミニウム粒子、12:リン酸化合物膜、13:有機質膜

Claims (7)

  1. アルミニウム粒子と、
    前記アルミニウム粒子の表面を被覆するリン酸化合物膜と、
    を備える、導電性アルミニウムフィラー。
  2. 前記リン酸化合物膜が、前記アルミニウム粒子の単位比表面積あたり、リン元素を0.05mg/m2以上、50mg/m2以下、含む、請求項1に記載の導電性アルミニウムフィラー。
  3. 前記リン酸化合物膜の表面を被覆する有機質膜をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の導電性アルミニウムフィラー。
  4. 前記有機質膜が、1個以上の重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーを1種以上、重合させることによって得られた重合体を含む、請求項3に記載の導電性アルミニウムフィラー。
  5. 前記リン酸化合物膜が、ラジカル重合性を有するリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルを含む、請求項4に記載の導電性アルミニウムフィラー。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の導電性アルミニウムフィラーを含む、導電性ペースト組成物。
  7. 請求項6に記載の導電性ペースト組成物を用いて形成された、導電性膜。
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