JP2012067880A - 周波数応答型液圧緩衝装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】周波数応答型のサスペンション用ダンパ10に設けた周波数応答部30は、伸び側減衰バルブ21をバイパスしてピストン上室16とピストン下室17を連通するバイパス通路50と連通する吐出通路44と、このピストン下室17側開口を開閉する減衰力可変バルブ51と、バイパス通路50を絞る背圧オリフィス52と、この背圧オリフィス52を介して連通するとともに減衰力可変バルブ51の背面に臨む背圧室55と、この背圧室55と連絡通路56を介して連通する背圧調整室70と、この背圧調整室70に設けられたフロートバルブ72及び背圧調整室70と背圧室55を連通する連絡通路56を開閉するブローバルブ71を備え、ブローバルブ71をピストン作動の初期では閉じたままにする。
【選択図】図3
Description
この図において、周波数応答部30は伸び側の減衰力を調整するものであり、減衰バルブの伸び側を構成する伸び側減衰バルブ21をバイパスしてピストン上室16とピストン下室17を連通するバイパス通路50と、このバイパス通路50と連通する吐出通路44と、このピストン下室17側開口を開閉する減衰力可変バルブ51と、バイパス通路50を絞る背圧オリフィス52と、この背圧オリフィス52を介して連通するとともに減衰力可変バルブ51の背面に臨む背圧室55と、この背圧室55と連絡通路56を介して連通する背圧調整室70と、この背圧調整室70に設けられたフロートバルブ72を備える。
このように、まだあまりピストン上室16の液圧が上がっていないピストン作動の初期領域において減衰力可変バルブ51が開くと、ピストン上室16の液圧を伸び側減衰バルブ21の減衰力発生圧まで上昇させるための時間が長くなる。すなわち減衰力の立ち上がりが遅れることになり、この間は周波数応答部30によってサスペンション用ダンパは柔らかくなる。
そこで、本願発明は、周波数応答特性を備えつつも、ピストン作動の初期領域における迅速な減衰力の立ち上がりを実現させることを目的とする。
前記周波数応答部(30)は、
前記バイパス通路(50)と前記ピストン上室(16)又はピストン下室(17)とを連通する吐出通路(44)と、
この吐出通路(44)の前記ピストン上室(16)又はピストン下室(17)側開口を開閉する減衰力可変バルブ(51)と、
この減衰力可変バルブ(51)の背面に臨み背圧オリフィス(52)を介して前記バイパス通路(50)と連通する背圧室(55)と、
この背圧室(55)と連通する背圧調整室(70)と、
この背圧調整室(70)内に設けられて前記背圧室(55)の液圧に応じて変形もしくは変位することにより前記背圧調整室(70)内の容積を可変にする容積可変部材(72)とを備えるとともに、
前記背圧調整室(70)を前記背圧室(55)と連通するために開き又は遮断するために閉じるブローバルブ(71)を設け、
このブローバルブ(71)をピストン作動の初期領域で閉じることを特徴とする。
背圧調整室(70)と背圧室(55)とを連通又は遮断するためのブローバルブ(71)を設けたので、ピストン作動の初期領域において、このブローバルブ(71)を閉じておけば、背圧室(55)の液圧上昇遅れが発生しないため、減衰力可変バルブ(51)による減衰力低下を阻止するので、ピストン上室(16)の液圧上昇を迅速にして減衰力の立ち上がりを速くすることができる。このため、周波数応答型の液圧緩衝装置であるにもかかわらず、ピストン作動の初期領域における迅速な減衰力の立ち上げにより減衰力を高くして緩衝装置を硬くすることができる。そのうえ、ピストン作動の初期領域以外では、通常の周波数応答特性を発揮させることができる。
これらサスペンション用ダンパ10の減衰力とダンパスプリング14のバネ弾性によって車輪の振動を吸収するようになっている。
シリンダ12の下端部とリザーバ室18下端部間にはボトムバルブ19bが設けられ、このボトムバルブ19bを通して、伸び側行程にはリザーバ室18からピストン下室17に作動液が補給され、圧縮側行程にはピストン下室17からリザーバ室18へ作動液を押し出し、このとき圧縮側減衰力の一部を発生するようになっている。
そのうえ、本実施形態では、ピストン作動の初期領域において周波数応答部30を機能させないようになっている。
図2に示すように、減衰バルブ20は、ピストン15に設けられた伸び側減衰バルブ21と圧縮側減衰バルブ25を有する。ピストン15の外周部はシリンダ12の内周面へ液密に密接している。
伸び側減衰バルブ21は1又は複数枚のディスクバルブで構成され、ピストン15を軸方向へ貫通する伸び側通路22におけるピストン下室17側の開口端部に設けられた伸び側出口ポート23aを開閉している。伸び側減衰バルブ21は伸び側行程に開き、液圧の上昇したピストン上室16の作動液を、伸び側入口ポート23b→伸び側通路22→伸び側出口ポート23a→ピストン下室17へと流し、このとき伸び側減衰バルブ21部分にて所定の伸び側減衰力を発生させる。
このとき、環状をなす圧縮側減衰バルブ25はその中央部が、ピストン15とストッパピース41の間に挟持され、環状をなす伸び側減衰バルブ21はその中央部をピストン15とバルブストッパ43の間に挟持される。
このバイパス通路50の上端部はストッパピース40の軸方向中間部に位置し、ストッパピース40の中心部に形成された軸方向の貫通穴40aに連通し、この貫通穴40aを介してピストン上室16へ連通している。
図3に示すように、周波数応答部30は、減衰力可変バルブ51、背圧オリフィス52、バルブハウジング53を備え、バルブストッパ43が取付けられた小径部13bの周囲へ、減衰力可変バルブ51、背圧オリフィス52を外嵌し、さらにバルブハウジング53の軸心部に形成されたナット部54を小径部13bのネジ部13eへ締結することにより、バルブストッパ43とバルブハウジング53の間に減衰力可変バルブ51と背圧オリフィス52を挟持して一体化している。
バルブストッパ43には下方に向かって開放された凹部43aが設けられ、ここにバイパス通路50と連通する吐出通路44が形成されている。吐出通路44とバイパス通路50さらにはピストン上室16の各液圧は同圧である。
バルブストッパ43の外周部下面は下方へ突出する環状のバルブシート43bをなしている。
なお、伸び側減衰バルブ21のバルブ剛性は減衰力可変バルブ51よりも著しく大きく設定される。逆に言えば、減衰力可変バルブ51のバルブ剛性は伸び側減衰バルブ21よりも著しく小さく設定され、開いたとき微小減衰力を発生するが、この減衰力は無視でき得る程度であるように設定されている。
背圧調整室70は連絡通路56を介して背圧室55と連通し、背圧室55とは離れて設けられているが、背圧オリフィス52の下流側に位置する同圧部であるから、この意味では、背圧調整室70と連絡通路56は背圧室55と共に大きな一つの背圧室を構成している。また、背圧室55を第1背圧室、背圧調整室70を第2背圧室とも表現できる。
図2及び図3に示すように、減衰力可変バルブ51は、一枚又は複数枚を積層したディスクバルブからなり、背圧室55の上方を閉じている。背圧室55は背圧オリフィス52のスリット52aを介してピストン上室16に連通する。
なお、減衰力可変バルブ51は必ずしもディスクバルブでなくてもよい。例えば、後述するスプール57と一体化したものでもよい。
スリット52aは周方向に1〜数ケ所設けられている。但し、スリット52aの数、長さ、スリット幅等は仕様に応じて適宜設定できる。
同心円53aは仮想円52dよりも内周側にあるので、スリット52aの先端側は環状突出部53bを越えてその径方向外方へ延出して背圧室55へ連通している。スリット52aの基端側はバイパス通路50の下端部へ連通している。
スリットバルブ形式でない背圧オリフィス52を採用する場合は、バイパス通路50内に設けることもできる。この場合は吐出通路44よりも下流側で、バイパス通路50と背圧室55との連通部よりも上流側に設ける。
このように、スプール57がバルブハウジング53の外周へ摺動可能に設けられるので、バルブハウジング53のスプール57が外嵌される部分における外周サイズを小さくして、減衰力調整構造のコンパクト化を図ることができる。
減衰力可変バルブ51が開くときは、その外周部がスプール57の上端縁部57aを下方へ押すことにより支持バネ59に抗してスプール57が押し下げられる。
減衰力可変バルブ51が閉じるときは支持バネ59の復元力と背圧室圧力によりスプール57が上方へ押し上げられる。
上端縁部57aが減衰力可変バルブ51の背面に当接する位置は、バルブストッパ43のバルブシート43bが減衰力可変バルブ51の表面に当接する位置よりも0.2〜1.0mm程度、減衰力可変バルブ51の内周側に配置する。
このため、減衰力可変バルブ51にせん断荷重がかかるようになり、吐出通路44と背圧室55の圧力を確実にシールすることができ、減衰力を安定させることができる。
このようにすると、ピストン速度の低周波大ストローク領域で、吐出通路44と背圧室55の各液圧はほぼ同圧であるから、受圧面積の大きな背圧室55側からの押し上げにより減衰力可変バルブ51を確実に閉じることができる。
支持バネ59の内周部はバルブハウジング53の環状突出部53bに遊嵌され、バルブハウジング53に連続してそれよりも大径の肩部53c上に支持されている。
また、背圧室55の液圧が上昇して吐出通路44と同圧になれば、支持バネ59の復元及び背圧室55の液圧によりスプール57が上動し、弾性変形していた減衰力可変バルブ51も当初状態へ復元して吐出通路44を閉じる。
図3に示すように、バルブハウジング53は下方に開放された凹部60を備え、バルブハウジング53の下端部で凹部60を囲む周壁61の内面へエンドキャップ62の外周部をネジ止めすることにより凹部60を閉じて背圧調整室70をなしている。
エンドキャップ62には下室連通口63が設けられ、背圧調整室70とピストン下室17を連通している。
ブローバルブ71の開弁圧は、ピストン作動の初期における伸び側減衰バルブ21の開弁圧である減衰力発生圧力と同程度になっている。
また、ブローバルブ71もバルブハウジング53のシート部64上に滑り移動自由に支持され、同様にバネ定数を低く設定できている。
圧縮側行程時には、フロートバルブ72及び背圧調整室スプリング73を弾性変形させてピストン下室17の作動液を速やかに背圧調整室70へ流入させるようになっている。
なお、フロートバルブ72は必ずしもディスクバルブ状でなくてもよく、例えば、蛇腹状等の部材でもよい。要は、背圧調整室70における容積可変部材であって、背圧室55等の液圧上昇遅れ形成手段として機能できるものであればどのようなものでも足りる。
固定部73aは先端側を本体部73cから斜め下方に延ばした腕状をなし、フロートバルブ72の外周をシート部66へ押しつけている。
このようにブローバルブ71の開く条件をリフトバネ73bによって設定すると、リフトバネ73bのバネの強さは簡単に調節することができるので、ブローバルブ71の開くタイミングを容易にチューニングできる。
また、背圧調整室スプリング73を薄板からなる本体部73cの外周部を上下へ交互に切り起こして腕状にすることで、背圧調整室スプリング73を簡単化かつ小型化できる。
また、背圧調整室スプリング73を、固定部73a及びリフトバネ73bが別体である2部材として形成することもできる。
以下、伸び側行程における作動を説明する。図3はピストン作動の初期状態を示し、この領域ではピストン速度は極めて低速でありストロークも微小であるから、ピストン上室16の液圧上昇は僅かである。したがって、ピストン上室16の液圧はバイパス通路50より背圧室55へ伝達されるが、背圧オリフィス52によって絞られないので、背圧室55並びに連絡通路56へ遅れを伴わずに伝達され、それぞれピストン上室16と同圧になる。
まず、図6は低周波大ストローク領域における図3と同様部位を示す。この場合、減衰力発生圧を超えているピストン上室16の液圧がバイパス通路50から背圧室55へ加わる。このとき、バイパス通路50の液圧は、低周波であるから背圧オリフィス52で絞られずに背圧室55へ伝達され、背圧室55の液圧はピストン上室16の液圧と同圧になる。
しかも、ピストン作動の初期領域後における周波数応答特性は、ブローバルブ71の存在にかかわらず、優れた周波数応答特性を従前通りに維持することができる。
したがって、時間0→T1なるピストン作動の初期領域においては、本実施形態は迅速に減衰力の立ち上がりを図ることができるが、図9の参考例ではこのようなことが期待できない。
さらに、本願発明の減衰力調整手段は、伸び側の減衰力調整に適用されるばかりではなく、圧縮側の減衰力調整もしくは伸び側及び圧縮側双方の減衰力調整に適用してもよい。
この減衰力可変バルブの背面に臨み背圧オリフィスを介して前記バイパス通路と連通する背圧室55と、この背圧室と連通する背圧調整室と、この背圧調整室内に設けられて前記背圧室の液圧に応じて変形もしくは変位することにより前記背圧調整室内の容積を可変にする容積可変部材とを備えるとともに、前記背圧調整室を前記背圧室と連通するために開き又は遮断するために閉じるブローバルブを設け、このブローバルブをピストン作動の初期領域で閉じるようにした。これにより、周波数応答型液圧緩衝装置において、周波数感応特性を保持しつつも、ピストン作動の初期領域における迅速な減衰力の立ち上げを可能にする。
Claims (5)
- ピストンロッド(13)の挿入端に設けたピストン(15)を作動液を充填したシリンダ(12)内へ摺動自在に挿入してピストン上室(16)とピストン下室(17)に区画し、ピストン(15)に設けた減衰バルブ(20)に減衰力を発生させるとともに、ピストン(15)に隣接して所定の高周波入力時にバイパス通路(50)を介して作動液をピストン上室(16)又はピストン下室(17)のいずれか一方上側から他方側へ逃がす周波数応答部(30)を設けた周波数応答型液圧緩衝装置において、
前記周波数応答部(30)は、
前記バイパス通路(50)と前記ピストン上室(16)又はピストン下室(17)とを連通する吐出通路(44)と、
この吐出通路(44)の前記ピストン上室(16)又はピストン下室(17)側開口を開閉する減衰力可変バルブ(51)と、
この減衰力可変バルブ(51)の背面に臨み背圧オリフィス(52)を介して前記バイパス通路(50)と連通する背圧室(55)と、
この背圧室(55)と連通する背圧調整室(70)と、
この背圧調整室(70)内に設けられて前記背圧室(55)の液圧に応じて変形もしくは変位することにより前記背圧調整室(70)内の容積を可変にする容積可変部材(72)とを備えるとともに、
前記背圧調整室(70)を前記背圧室(55)と連通するために開き又は遮断するために閉じるブローバルブ(71)を設け、
このブローバルブ(71)をピストン作動の初期領域で閉じることを特徴とする周波数応答型液圧緩衝装置。 - 前記ブローバルブ(71)は、前記背圧室(55)の液圧が、前記ピストン作動の初期領域における必要な減衰力発生圧以下のとき閉じていることを特徴とする請求項1に記載した周波数応答型液圧緩衝装置。
- 前記ブローバルブ(71)は、ディスクバルブ状をなし、下方をリフトバネ(73b)にて弾力支持されるとともに、このリフトバネ(73b)のバネの強さを前記減衰バルブ(20)の必要な減衰力発生圧と同等にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載した周波数応答型液圧緩衝装置。
- 前記容積可変部材(72)は、ディスクバルブ状をなすフロートバルブであり、中央部を撓み変形自在にしたものであることを特徴とする請求項3に記載した周波数応答型液圧緩衝装置。
- 前記ブローバルブ(71)と前記フロートバルブ(72)は共通の弾性部材(73)で弾性支持されるとともに、この弾性部材(73)は前記リフトバネ(73b)をなす部分と、前記フロートバルブ(72)の外周部を押しつけ固定する部分である固定部(73a)とを一体に備えることを特徴とする請求項4に記載した周波数応答型液圧緩衝装置。
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